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発明の名称 農業用トラクタ
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−118909(P2007−118909A)
公開日 平成19年5月17日(2007.5.17)
出願番号 特願2005−317649(P2005−317649)
出願日 平成17年10月31日(2005.10.31)
代理人 【識別番号】100090893
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 敏
発明者 横山 和寿 / 河内 義晴
要約 課題
重量バランス優れ、ウェイトの突っ込みを簡便に防止できる農業用トラクタを提供する。

解決手段
車両下部の左右側面にフロントフレームを配置する農業用トラクタであって、
特許請求の範囲
【請求項1】
車両下部にフロントフレームを配置する農業用トラクタであって、
前記トラクタに配設される前記フロントフレームにウェイブラケットが固設され、前記ウェイトブラケットは、前記ウェイトがフロントフレームよりも上部に取り付けられる構造となっていることを特徴とする農業用トラクタ。
【請求項2】
車両下部にフロントフレームを配置する農業用トラクタであって、
前記トラクタに配設される前記フロントフレームにウェイブラケットが固設され、
前記ウェイトブラケットは、前記ウェイトが車両の左右側面に取り付けられる構造となっていることを特徴とする農業用トラクタ。
【請求項3】
前記農業用トラクタが、小型クローラ式トラクタである、請求項1または2記載の農業用トラクタ。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェイトブラケットが固設される農業用トラクタに関し、より詳細には、フロントフレームよりも上部、車両側方などにウェイトが取り付けられる農業用トラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、従来の小型ホイール式トラクタ97の斜視図である。このトラクタ97は、後輪駆動4輪車であり、一般に、このようなホイール型トラクタは、油圧によって駆動される耕運用アタッチメント、畦整形用アタッチメント、土壌消毒用アタッチメント、栽培床作成用アタッチメント、種芋植え付け用アタッチメント、マルチ作業用アタッチメントなどの作業機が取付けられることが一般的である。しかしながら、ホイール型トラクタ97は接地圧が高いため、軟弱地や不整地での走行性が十分でない場合があり、特に小型トラクタの場合には、小型ゆえに牽引力が十分でない場合がある。このような場合、ホイール型トラクタ97をクローラ式トラクタに改良できれば、接地圧を低減できるため軟弱地や不整地での走行性を向上させることができ、同時に牽引力を増強させることができる。
【0003】
このような技術として、例えばホイール式トラクタの操舵機構部を共用して、新たなクローラ式トラクタに改良するものがある(特許文献1)。該特許文献1は、クローラ式とホイール式での旋回機構の相違、すなわちホイール式のトラクタをクローラ式に改造した場合に、旋回内側の左右いずれかのブレーキペダルを踏み込んで片側のブレーキ装置を作動させ、片側の駆動スプロケットを制動して旋回内側のクローラを減速して車体を旋回させたのでは旋回操作性が良好ではない点に鑑みてなされたものであり、円形のステアリングハンドルの回転操作によってクローラ式トラクタの車体を旋回できるようにするとともに、ホイール式トラクタに備えられている操舵機構部を利用して部品を共用化することによりコストダウンを図ることを目的としたものである。
【0004】
一方、前記したようにクローラ式トラクタは、後部に作業機を取り付けることが一般的であり、このような作業機の取り付けによって車体前部が浮き上がるなどの問題を防止するため、車体前部にバランスウェイトをつけることが一般的である(特許文献2)。該特許文献2では、ホイール式トラクタのフロントアクスル支持部材とフロントウェイト支持部材とを別体に形成し、フロントウェイト支持部材をフロントアクスル支持部材よりも下方に配置したホイール式作業車が開示されている。
【特許文献1】特開2000−159143号公報
【特許文献2】特開平11−208534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記したように、クローラ式トラクタは、接地圧が低いため、湿田での作業に適し、作業機の牽引力を増強させることができるが、特許文献1に示すように、単にホイール式トラクタの駆動輪を駆動スプロケットとして使用したのでは、湿田での作業に適する地上高を確保することができない場合がある。特に、クローラ式トラクタは、左右、上下バランスの調整がより強く求められるため、このような制御がより簡便に調整できれば便利である。この場合、前記特許文献2のように、クローラフレームに取り付け孔を開穿し、車両フレームに該取り付け孔に対応する被取り付け孔を開穿し、これらによって前後、上下方向にずらして固定するする方法では、固定箇所が多くて操作が煩雑である。また、クローラ式トラクタは、左右クローラ式走行装置がホイールと比較して重いため総重量も重くなりやすく、軽量化の必要性がより強く望まれる。
【0006】
さらに、ホイール式トラクタをクローラ式トラクタにした場合に、クローラ式走行装置の最先端部は、ホイール式トラクタの前輪位置よりも同じか後ろ側にある場合が多い。トラクタの後部に作業機を取り付けた場合には、重量バランスを確保するため前部にウェイトを取り付けるが、ホイール式トラクタと同様にウェイトを取り付けるとアプローチアングルが狭くなり、ウェイトが土に突っ込み易く、かつ旋回半径も大きくなる。また、このような突っ込みを防止するため、クローラ式トラクタにはフロントフレーム下部にアンダーガードが配設されることが一般的であるが、これによって更にアプローチアングルが狭くなりやすい。
【0007】
そこで本発明は、農業用トラクタ、特にクローラ式トラクタにおいて広いアプローチアングルを確保しうるクローラ式トラクタを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、クローラ式トラクタに取り付けるウェイトおよびウェイトブラケットについて詳細に検討した結果、フロントフレームにアンダーガードに代えてアンダーガードとウェイトブラケットとが一体化したものを使用すれば、車体から更にウェイトが突出することを防止でき、ウェイトの突っ込みを防止できることを見出し、また、該ウェイトブラケット一体型アンダーガードがフロントフレームより上方にウェイトを取り付ける構造となっていれば、簡便かつ確実に広いアプローチアングルを確保できること見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車両下部のフロントフレームより上部にウェイトが取り付けられるため、広いアプローチアングルを確保することができ、ウェイトの突っ込みを防止することができ、かつ旋回性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の第一は、車両下部の左右側面にフロントフレームを配置する農業用トラクタであって、前記トラクタに配設されるフロントフレームにウェイブラケットが固設され、前記ウェイトブラケットは、前記ウェイトがフロントフレームよりも上部に取り付けられる構造となっていることを特徴とする農業用トラクタである。
【0011】
本発明の農業用トラクは、車両下部にフロントフレームを有し、該フロントフレームより上部にウェイトが取り付けられることを特徴とする。農業用トラクタがクローラ式トラクタの場合、クローラ式走行装置の最先端部は、ホイール式トラクタの前輪位置よりも同じか後ろ側となる。このため、ホイール式トラクタをクローラ式トラクタにした場合、ホイール式トラクタと同様にウェイトブラケットを取り付けたのでは、アプローチアングルが狭くなりやすい。この結果、ウェイトが土に突っ込み易くなり、旋回半径も大きくなってしまう。本発明では、ホイール式トラクタの基本構造を可能な限り利用してクローラ式トラクタを製造した場合でも、車両下部のフロントフレームより上部にウェイトを取り付けることでアプローチアングルを広く確保し、作業性を向上させることができる。
【0012】
本発明の農業用トラクタは、ホイール式トラクタであるかクローラ式トラクタであるかを問わない。しかしながら、ウェイトを取り付けるアプローチアングルが狭くなるという問題は特にクローラ式トラクタの場合に発生しやすいため、クローラ式トラクタを例示し、以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。図1は本発明の一実施例に係る小型クローラ式トラクタの側面図、図2は同トラクタにおける走行部の斜視図、図3は同トラクタの断面平面図、図4は同トラクタにおける駆動部の断面側面図、図5は同トラクタの差動構造を示す図、図6は、クローラ走行装置のフレーム構造の斜視図、図7は従来のホイール型トラクタを示す斜視図、図8は本発明で好適なウェイトブラケットの斜視図であり、図9は従来のウェイトブラケットの斜視図であり、図10はアプローチアングルの説明図であり、図11はウェイトブラケットおよびウェイトを取り付けた小型クローラ式トラクタの斜視図であり、図11〜図14はウェイトブラケットおよびウェイトを取り付けた小型クローラ式トラクタの斜視図である。
【0013】
(1)機体
本発明で対象となる農業用トラクタは、車両下部にフロントフレームが配置されていれば特に制限はない。例えば、図1に示すように、本発明の小型クローラ式トラクタ(機体1)は、該機体1の上方に位置する上部車体90と、下方に位置するクローラ式走行装置80とからなり、前記上部車体90の前方には図示しないエンジンを覆うボンネット2と、該ボンネット2の後ろに機体1の操縦を行うための運転席4が配設されている。該運転キャビン4の前方には機体1の操行を司るステアリングハンドル9が配設され、後方には座席8が、該座席8の左右には、機体の走行や作業機の上げ下げ等を操作するための主変速レバー(図示せず)、副変速レバー(図示せず)及びPTO操作レバー(図示せず)などが配設されている。また、機体が横転したときに運転者を守るため、4本の安全フレームが前記運転席4全体を覆うように形成されている。また、上部車体90の後方には作業に応じて取り外し可能な作業機6を取り付けることができる。なお、本発明の農業用トラクタは、車両下部にフロントフレーム100が配置される。
【0014】
前記クローラ式走行装置80は、図2に示すように、進行方向に延設された左右2本のクローラフレーム81L、81Rと、このクローラフレーム81L、81R間を連結する前後2本のサイドフレーム82、83とを有し、前記クローラフレーム81L、81Rの前後端には、それぞれ従動アイドラ85が回転自在に支持され、該2つの従動アイドラ85R、85F間には複数のイコライザ転輪86が回転自在に支持されている。そして、これら2つの従動アイドラ85R、85Fとイコライザ転輪86との上部に駆動スプロケット60が配設され、この駆動スプロケット60を頂点とし、前記2つの従動アイドラ85R、85F間を結ぶ線を底辺として、略三角形状にクローラベルト95が巻回され、クローラ式走行装置80を形成している。本発明では、クローラフレームの両端に従動アイドラを配置するものであるが、図2に示すように、クローラフレーム81Lに接続部材85'を介して従動アイドラ85Rを接続してもよい。また、クローラフレームは直線である場合に限定されず湾曲してもよく、または図2に示すように前方に屈曲を有し、その先端に従動アイドラ85Fを接続するものであってもよい。なお、図中84(R、L)、87(R、L)は、クローラフレーム81と上部車体90とを連結する支持部材である。
【0015】
(2)アプローチアングル
本発明の農業用トラクタは、車両下部の左右側面にフロントフレームが配置され、このフロントフレームにウェイブラケットが固設される。クローラ式トラクタは、同型のホイール式トラクタと比較して接地圧が低いため、特に後輪駆動のクローラ式トラクタの場合には、クローラ式走行装置の最先端部がホイール式トラクタの前輪位置よりも同じか後ろ側となる。このため、図10に示すように、接地面と、クローラ式走行装置の先端部と上部車体の先端下部とを結ぶ直線とのなす角(θ)で示されるアプローチアングルが、ホイール式トラクタの場合よりも狭くなる。この場合、ホイール式と同様にウェイトを取り付けたると、アプローチアングル(θ')のように更にアプローチアングルが狭くなる。本発明では、クローラ式トラクタに取り付けるウェイトを、ブラケットを介して前記ウェイトがフロントフレームよりも上部に取り付ける。これによって、広いアプローチアングルを確保し、ウェイトが車体前方に突出することを防止し、ウェイトの突込みを防止する。特に、ホイール式トラクタの基本構造を可能な限り利用してクローラ式トラクタを製造した場合でも、上部車体に配置したフロントフレームより上部にウェイトを取り付けることでアプローチアングルを広く確保し、旋回性を向上させることができる。
【0016】
(3)ウェイトブラケット
本発明で使用するウェイトブラケットは、ウェイトが車両のフロントフレームよりも上部に取り付けられる構造となっている。広いアプローチアングルを確保するためである。このようなウェイトブラケットの一例を図8に示し、従来のウェイトブラケットを図9に示す。従来品は、バンパー79にボルトで固定して使用するものであったが、本発明で使用するウェイトブラケットは、バンパー79の上部から二股の足を差し込むことで、特別の固定具を必要とせずに取り付けることができる。また、二股の足を設けたことで、バンパー79よりも高い位置にウェイトを取り付けることができる。なお、該ブラケットは更にバンパーにボルトで固定してもよい。このウェイトブラケット並びにウェイトを取り付けた小型クローラ式トラクタの斜視図を図11に示す。なお、図11は、図8に示すウェイトブラケットをトラクタのバンパーにボルトで固定し、ウェイトはトラクタ前部に一列に並べて固定されている状態を示す。また、図12〜図14に異なる形状のウェイトブラケットを使用し、ウェイトが車両のフロントフレームよりも上部に取り付けられた小型クローラ式トラクタの斜視図を示す。図12、トラクタ前部に、ウェイトを左右に振り分け、車両前部から後方に向かうように固定した状態を示す。また、図13は、トラクタ前部にウェイトブラケットを固定し、かつウェイトを該ブラケットより車体後方に固定した状態を示す。また、図14は、車体下部に配置されたフロントフレーム100にウェイトブラケットを固定し、車体側方にウェイトを固定した状態を示す。このように、本発明では、前記ウェイトブラケットは、前記ウェイトが車両の左右側面に取り付けられる構造となっていてもよい。この場合には、ウェイトが車両のフロントフレームよりも上部であるか下部であるかを問わない。車両の側方であれば、アプローチアングルの低下を防止することができるからである。ただし、ウェイトは、フロントフレームよりも上部に取り付けることが好ましい。地上高を高く維持することができ、作業性が向上するからである。
【0017】
(4)走行系統
本発明の小型クローラ式トラクタは、ギヤの切換で走行の変速を行うギヤ切換式走行変速機構を備え、かつ機体を前後進させる前後進切換え機構より後方の駆動系に機体を旋回させる操向用のHST旋回用ポンプとHST旋回用モータとを含む油圧変速機構を連結していてもよい。例えば図3に示すように、前記エンジン3からの駆動力は、トランスミッションケース23内に配置されたギヤ切換式走行変速機構である主副変速装置39で変速された後、左右のリアアクスルケース40L、40Rに配設された差動機構50L、50Rに入力され、前記クローラ式走行装置80の駆動スプロケット60L、60Rを駆動させる車軸89を回転させる。
【0018】
この際、機体1を前後進させる前後進切換え機構7より後方の駆動系に機体1を旋回させるHST旋回用ポンプ72と、HST旋回用モータ73とが、それぞれ前記ミッションケース23の側方とミッションケース23内の差動機構50Lの上方とに設けられている。
【0019】
(5)動力伝達機構
図4に示すように、前記エンジン3からの出力は、クラッチハウジング5を経由して出力軸31から前後進切換え機構7へと入力される。該前後進切換え機構7では、機体1前進時には、前記出力軸31のギヤ33と主軸37に設けた前進ギア32とが噛合し、一方、機体1の後進時には、前記出力軸31と後進ギア34とが後進用カウンタ軸35のカウンタギア36を介して噛合することにより、機体1の前後進が行なわれる。該前後進切換え機構7を経た動力は主軸37を介して、さらに後方に配置される主副変速装置39へと伝達される。この主軸37と、該主軸37の上方に位置する主変速軸41とは、例えば主変速4段の場合には、異なる歯数を有する4つの主変速ギア42を介して連結される。この主変速ギア42は常に前記主軸のギア37と噛合し、共に回転される。一方、前記主変速ギア42は主変速軸41上に遊嵌され、図示しない主変速レバーによって前記4つの主変速ギア42の何れかを選択的に主変速軸41上に固定することにより、選択された主変速ギア42の歯数に応じて主変速軸41が回転駆動される。
【0020】
この駆動力は、主変速軸41後方に位置し該主変速軸41上に固設された2つのギア62から、副変速ギア46を介して副変速軸45へと伝達される。副変速2段の場合には、該副変速軸45上に異なる歯数を有する2つの副変速ギア46が摺動自在に形成され、図示しない副変速レバーによって、これら2つのギア46が副変速軸45上を前後に摺動し、選択的に前記主変速軸41上の何れかのギア62と噛合することにより、副変速後の動力が得られる。
【0021】
副変速後の動力は、副変速軸45後端に位置するベベルギア47を介して回転方向を前後方向から左右方向へと変え、後述するミッションケース23後方に位置する差動機構50L、50Rへと入力される。次いで、差動機構50L、50R内で動力は、スプロケット60L、60Rを駆動する駆動出力軸59L、59Rに伝達され、その他端に固設されたスプロケット60L、60Rが回転駆動される。
【0022】
(6)差動機構
図5に示すように、前記副変速軸45の駆動力は、該副変速軸45の後端に固設されたベベルギア47と、該ベベルギア47と噛合するピニオン軸22に固設されたベベルギア21とを介して、ピニオン軸22を回転駆動させる。次いで、ピニオン軸22の両端に固設された左右のギア25L、25Rと、左右の入力軸20L、20Rの一端に固設されたギア27L、27Rとが噛合し、前記ピニオン軸22の回転を左右の入力軸20L、20Rに分配させる。さらに、左右それぞれの入力軸20L、20Rの回転は左右の遊星ギア機構50L、50Rのサンギア51L、51Rへと入力される。なお、該遊星ギア機構50L、50Rは、サンギア入力軸20L、20Rに固設されたサンギア51L、51Rと、該サンギア51L、51Rの周りを自公転自在に設けられたプラネタリアギア53L、53Rと、該プラネタリアギア53L、53Rを軸支するとともにサンギア入力軸20L、20Rと車軸59L、59Rとに回転自在に遊嵌されたキャリア55L、55Rとからなり、該キャリア55L、55Rの外周には、さらにキャリアギア56L、56Rが形成されている。前記プラネタリアギア53L、53Rは、左右の駆動出力軸59L、59Rに固設された駆動出力ギア58L、58Rと噛合しており、該駆動出力ギア58L、58Rの回転により、駆動出力軸59L、59Rの他端に固設されたスプロケット60L、60Rが回転駆動される。
【0023】
一方、前記HST旋回用ポンプ72内には可動斜板が配設され、図示しない副変速アームを介してステアリングハンドル9に連係され、該ステアリングハンドル9の操作量に応じて前記HST旋回用ポンプ72からの吐出量が調節される。HST旋回用ポンプ72とHST旋回用モータ73とは、図示しない配管で連結されており、前記HST旋回用ポンプ72からの吐出量に応じてHST旋回用モータ73の出力回転数が制御される。HST旋回用モータ73の出力と前記主副変速装置39からの出力とが、上記差動装置50内で合成され、前記駆動スプロケット60L、60Rが差動回転され、機体1が旋回される。
【0024】
具体的には、ステアリングハンドル9の左右旋回操作時には、該ステアリングハンドル9の操作量に応じて、前記HST旋回用ポンプ72の吐出量が変化され、これに伴い、HST旋回用モータ73のHSTモータ出力ギア38が回転駆動され、その回転に伴い、HSTモータ出力ギア38と噛合する左右2つの逆転ギア52L、52Rがそれぞれ逆回転される。該逆転ギア52L、52Rは、左右の旋回駆動軸43L、43Rのそれぞれ一端に固設されており、該旋回駆動軸43L、43Rを介して、旋回駆動軸43L、43Rの他端に固設された差動ギア44L、44Rが回転駆動され、このため左右の差動ギア44L、44Rが、それぞれ逆回転される。
【0025】
前記差動ギア44L、44Rは、キャリアギア56L、56Rと噛合して、左右のキャリア55L、55Rをそれぞれ逆回転させる。左右のキャリア55L、55Rに軸支されたプラネタリアギア53L、53Rは前記サンギア51L、51R周りを公転駆動するが、この際の公転速度の差により、前記左右の駆動出力軸59L、59Rが差動回転され、機体1が左方向若しくは右方向へと旋回される。
【0026】
機体直進時は、左右の駆動スプロケット60L、60Rの回転が等しい回転数となる場合であり、左右の駆動スプロケット60L、60Rの回転が異なる回転数となるときに機体1が旋回される。
【0027】
(7)油圧変速機構
本発明のクローラ式トラクタは、機体1を前後進させる前後進切換え機構7より後方の駆動系に機体を旋回させる操向用のHST旋回用ポンプ72とHST旋回用モータ73とを含む油圧変速機構を連結している。HST旋回用ポンプ72とHST旋回用モータ73とは、図示しない配管で連結されており、前記HST旋回用ポンプ72からの操行油の吐出量とに応じて、さらにHST旋回用モータ73の出力回転数と回転方向とが制御される。
【0028】
本発明では、前記HST旋回用ポンプ72は可変容量ポンプである。可変容量ポンプを使用することで、運転者のステアリングハンドルの回動操作により、ステアリングハンドルから図示しないリンク機構を介してHST旋回用ポンプの容量を可変することができ、これにより該HST旋回用ポンプの出力を無段階に可変することができる。特に本発明では、機体を前後進させる前後進切換え機構より後方の駆動系に機体を旋回させる操向用の油圧変速機構が連結されるため、後進時にもステアリングハンドルが逆回転することがない。また、可変容量ポンプを使用するため、駆動系の動力に比例したポンプ吐出量を得ることができる。この際、可変容量ポンプに定容量モータを連結すると、主変速と副変速後とを和した動力をHST旋回用ポンプに導入することで、可変容量ポンプの吐出量の調整によって、車速と操向モータの回転とを比例させて旋回半径を一定にさせることができる。
【0029】
一方、本発明では、定容量モータに代えて可変容量モータを使用してもよい。可変容量ポンプの使用による吐出量の変化に加えて、該可変容量モータを使用することで更に吐出量を変化させることができるからである。可変容量ポンプによる吐出量を変更すると、HST旋回用モータ73のHSTモータ出力ギア38の回転駆動力が変化され、その回転に伴うHSTモータ出力ギア38と噛合する左右2つの逆転ギア52L、52Rの回転が変化され、最終的には、旋回駆動軸43L、43Rの他端に固設された差動ギア44L、44Rの回転駆動力が変化され、車速が同じ場合であっても旋回半径を変化させることができる。可変容量ポンプによって例えば2段階に吐出量を変化させた場合には、同じ走行速度でもハンドル切れ角を例えばスピンモードとソフトモードという2種類の旋回速度に制御することが可能となり、この旋回速度に対応して旋回半径を変えることができる。
【0030】
即ち、HST旋回用ポンプの容量に対してHST旋回用モータの容量を小とすることにより、機体の旋回半径を大きくすることができ、前記HST旋回用ポンプの容量に対してHST旋回用モータの容量を大とすることにより、機体の旋回半径を小とすることができる。
【0031】
よって、クローラ式トラクタでのピボットターンなどを行う際、前記旋回モードを変更することにより、作業状況に応じてピボットターン開始ステアリング角を、小さくしたり、大きくしたり設定変更することが可能である。
【0032】
なお、HST旋回用ポンプとHST旋回用モータの配置に限定はないが、HST旋回用ポンプ72はトランスミッション23の側部に、HST旋回用モータはトランスミッション23の上部に配置されることが好ましい。このように配置することで、図4に示すように副変速後の回転動力を、複数のカウンター軸61を経由した後、ベルト65駆動によりHST旋回用ポンプ入力軸63へと入力することができる。なお、HST旋回用ポンプを駆動するための回転動力をカウンタ軸から伝達する方法としては、上記のようにベルトに限定されるものでなく、チェーンやギヤなどであってもよい。このように、カウンタ軸よりベルト等を介して伝達することにより、HST旋回用ポンプの位置を任意の位置に配置することが可能となり、従来ではミッションケース23下部に配置することが多かったHST旋回用ポンプ72を、ミッションケース23の側面に配置することにより、機体1の地上最低高を高くすることができる。
【0033】
また、前記HST旋回用モータ73は、ミッションケース23の上方に配置され、HST旋回用モータ73を修理する場合にも、ミッションケース23内に貯留されるオイルがHST旋回用モータ73から流出することなく、HST旋回用モータのメンテナンスや交換など取り外しが容易になり、作業効率が向上する。更に、HST旋回用モータ73がミッションケース23の上部、特に差動機構50の上部に配置した場合には、HST旋回用モータ73から漏下するオイルを直接差動機構に流下させることができる。
【0034】
(8)上部車体とクローラ式走行装置
本発明のクローラ式トラクタにおいて、クローラ式走行装置の前記クローラフレームは、上部車体と少なくとも2つの支持部材によって固設されることが好ましい。このように少ない部材で固設されると、上部車体に簡便に左右クローラ式走行装置を取り付けることができ分離も容易であり、また、上部車体にオプションで追加した装置などによる重量バランスの変化に応じて、容易に前後に移動させることができる。
【0035】
上部車体と左右クローラ式走行装置との固定箇所は、上部車体との重量バランスによって決定されるため、上部車体が小型の場合には、左右一対のクローラフレーム(81L,81R)の上に支持部材(87R、87L、84R、84L)を介して上部車体(90)を載置および固定するだけで、上部車体を取り付けることができる。しかし、一のクローラフレームに対して一箇所のみで固定したのでは当該箇所のみにクローラフレームの全重量がかかり、後バランスとなるため湿田走行時や後部への作業機装着時にクローラ前部が浮くなどの問題が発生しうる。そこで少なくとも2つの支持部材によって固定する。この際、本発明では、前記した上部車体とクローラフレームとの固定箇所に加え、前記クローラ式走行装置の先端部より車両の後方で支持部材によって前記上部車体と固定させる。従来は、例えば特開2002−2523号公報に記載されるように、クローラ式走行装置よりも車体前部に延出する支持部材によって上部車体と固定していたが、本発明では後記するように駆動系の配置などを工夫して重量バランスを調整することで、前記クローラ式走行装置の先端部より後方で支持部材によって前記上部車体と固定できる。しかも、重心バランスに優れるため、クローラが短くても安定して走行することができる。
【0036】
本発明では、左右のクローラフレームは、それぞれ少なくとも2つの支持部材によって上部車体90に固設され、固設箇所はクローラ式走行装置80の先端部よりいずれも車両の後方である。例えば、図6に示すように、クローラフレーム81Lの前方および後方から上方へ向けて支持部材87R、87L、84R、84Lが配設され、これがそれぞれ上部車体90に固設される。上部車体90の固設箇所に限定はないが、たとえば支持部材87R、87L7は、上部車体90のクラッチハウジングの側面に固定することができ、支持部材84R、84Lは、リアアクスルケース40L、40Rに固定することができる。上部車体の固定箇所は特に限定されるものではないが、本発明では、前記支持部材87R、87L、84R、84Lと上部車体90との固設箇所が、クローラ式走行装置80の先端部より車両の後方側であるため、単に支持部材を介するのみでクローラ式走行装置80の上部に配置されるクラッチハウジングなどの構造物に固設することができ、上部車体下部に特別の固設箇所を設ける必要がない。このため、車両の総重量を低減することができる。
【0037】
加えて、本発明では、図10に示すように、上部車体の全長(L1)に対するクローラ走行装置の接地長さ(L2)、すなわちL2/L1は0.5以上である。本発明では、上記範囲にクローラ走行装置の接地長さを短くできるため旋回操作が容易になる。また、車体前方下部に空間が確保され圃場突出物の巻き込みを防止することができるため、圃場面の状態によらず旋回時が向上し、狭い圃場の角部でも安定した旋回作業が確保される。加えて、クローラ走行装置の接地長さが短いために総重量を低減できる。上記したように車両の総重量が低減されるため、このようにクローラ走行装置の接地長さが短くても接地圧を低く抑えることができ、旋回性も向上させることができる。なお、上部車体の全長(L1)には、前部または後部に取り付ける作業機の長さを含めない。
【0038】
本発明のクローラ式トラクタにおいて、上部車体へのクローラフレームの固定は、図6に示すように、支持部材(87R、87L)をボルトによって上部車体に固定し、および支持部材(84R、84L)をリアアクスルケース40L、40Rにボルトによって固定することが好ましい。ボルトであれば、新たな取付け具を使用することなく、簡便に取り付けることができる。
【0039】
(9)その他
減速は、前記ピニオン軸22の片端に設けられた複数のブレーキ板29を介して行われる。運転者の操作により図示しないブレーキペダルが操作されると、ブレーキアーム28が連動して回動し、該ブレーキアーム28の回動に伴いピニオン軸22にブレーキ作用を発生させ、機体1を減速させる。特に、前記ブレーキ板29は、前記ピニオン軸22の右端に位置しており、前記ブレーキ板や、ブレーキアームなどを収容する図示しないブレーキケースを、前記右側の遊星ギア機構を収容する右リアアクスルケース40Rと一体とすることができる。なお、前記HST旋回用モータ73が、左リアアクスルケース上に位置していると、前記右リアアクスルケース40Rに配置されたブレーキ機構と、前記左リアアクスルケース40Lに配置されたHST旋回用モータ73との重量が調和し、機体1の重量バランスを保つことができる。
【0040】
作業機の駆動は、PTO出力軸を介して行われる。図4に示すように、前記エンジン3の出力の一部が、前記前後進切換え機構7から、PTO変速ギア48を介してPTOカウンタ軸49に連結され、機体後方のPTO出力軸91に伝えられる。
【0041】
本発明の農業用トラクタは、上記したようにクローラ式トラクタに限定されるものでなく、ホイール式トラクタであってもよい。アプローチアングルを広く確保する要請は、クローラ式トラクタに限定されないからである。また、クローラ式トラクタであれば、その形状は特に限定されないが、上記した小型クローラ式トラクタであることが好ましい。上記クローラ式トラクタは、小型かつ上部車体に対するクローラ走行装置の接地長さの比が小さく、旋回性に優れるが、アプローチアングルが狭くなりやすいからである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の小型クローラ式トラクタの一例としての小型クローラ式トラクタを示す側面図である。
【図2】本発明の小型クローラ式トラクタにおける走行部の斜視図を示す斜視図である。
【図3】本発明の小型クローラ式トラクタの断面平面図である。
【図4】本発明の小型クローラ式トラクタにおける駆動部の断面側面図である。
【図5】本発明の小型クローラ式トラクタの差動構造を示す図である。
【図6】本発明の小型クローラ式トラクタのクローラ走行装置のフレーム構造の斜視図である。
【図7】従来のホイール型トラクタを示す斜視図である。
【図8】本発明で使用するウェイトブラケットの斜視図である。
【図9】従来のウェイトブラケットの斜視図である。
【図10】アプローチアングルの説明図である。
【図11】ウェイトブラケットおよびウェイトを取り付けた小型クローラ式トラクタの斜視図である。
【図12】車両前部にはウェイトブラケットおよびウェイトを取り付けた小型クローラ式トラクタの斜視図である。
【図13】車両前部にはウェイトブラケットおよびウェイトを取り付けた小型クローラ式トラクタの斜視図である。
【図14】車両側方にウェイトブラケットおよびウェイトを取り付けた小型クローラ式トラクタの斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
1 クローラ式トラクタ(車両)、2 ボンネット、3 エンジン、4 キャビン、5 クラッチハウジング、6 作業機、7 前後進切換え機構、8 運転席、9 ステアリングハンドル、20L、20R 入力軸、21 ベベルギア、22 ピニオン軸、23 ミッションケース、31 出力軸、37 主軸、38 HSTモータ出力ギア、39 主副変速装置、40L、40R リアアクスルケース、41 主変速軸、42 主変速ギア、45 副変速軸、49 PTOカウンタ軸、50L、50R 差動機構、58L、58R 駆動出力ギア、59L、59R 車軸(車軸)、60L、60R 駆動スプロケット(スプロケット)、61 カウンタ軸、63 旋回用HSTポンプ入力軸、72 旋回用HSTポンプ、73 旋回用HSTモータ、79 バンパー、80 クローラ式走行装置、81L、81R クローラフレーム、84 支持部材、85 従動アイドラ、87 支持部材、91 PTO出力軸、95 クローラベルト、97 ホイール型トラクタ、100 フロントフレーム。




 

 


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