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発明の名称 車両用ブレーキ制御装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−216766(P2007−216766A)
公開日 平成19年8月30日(2007.8.30)
出願番号 特願2006−37990(P2006−37990)
出願日 平成18年2月15日(2006.2.15)
代理人 【識別番号】100100022
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 洋二
発明者 宮脇 陽一 / 新野 洋章 / 佐藤 卓
要約 課題
ブレーキの効き遅れを防止できる車両用ブレーキ制御装置を提供する。

解決手段
緊急ブレーキ時に、第1、第2常開弁SNO1、SNO2や第1〜第4リニア弁SLFL、SLFR、SLRR、SLRRおよび第1、第2モータ11、12への通電の開始に対して、第1、第2常閉弁SWC1、SWC2への通電に遅延時間T1を設けることで、ブレーキペダル1が踏み込まれた直後には調圧回路が遮断されるようにする。このため、調圧回路を通じてブレーキ液が返流されてしまうことが防止でき、W/C圧の立上りが遅れや、それに起因するブレーキの効き遅れを防止することが可能となる。
特許請求の範囲
【請求項1】
ドライバによって操作されるブレーキ操作部材(1)と、
前記ブレーキ操作部材(1)の操作量を検出するブレーキ操作量センサ(2)と、
2つの前輪(FR、FL)それぞれに対応して設けられた前輪用第1、第2ホイールシリンダ(6FR、6FL)、および、2つの後輪(RL、RR)それぞれに対応して設けられた後輪用第1、第2ホイールシリンダ(6RL、6RR)と、
ブレーキ液を貯留しているリザーバ(3f)と、
前記リザーバ(3f)と前記前輪用第1、第2および前記後輪用第1、第2ホイールシリンダ(6FR〜6RR)をつなぎ、前記前輪用第1、第2および前記後輪用第1、第2ホイールシリンダ(6FR〜6RR)それぞれに接続されるように4つに分岐された主管路(C、G、G1〜G4)と、
前記主管路(C、G、G1〜G4)のうち4つに分岐された部位(G1〜G4)それぞれに対して1つずつ配置され、前記リザーバ(3f)に貯留されたブレーキ液を吸入・吐出して、前記前輪用第1ホイールシリンダ(6FR)を加圧する第1ポンプ(7)、前記後輪用第1ホイールシリンダ(6RL)を加圧する第2ポンプ(8)、前記前輪用第2ホイールシリンダ(6FL)を加圧する第3ポンプ(9)および前記後輪用第2ホイールシリンダ(6RR)を加圧する第4ポンプ(10)と、
前記第1、第2ポンプ(7、8)により加圧される系統を第1配管系統として、該第1配管系統に備えられた前記第1、第2ポンプ(7、8)を駆動するための第1モータ(11)と、
前記第3、第4ポンプ(9、10)により加圧される系統を第2配管系統として、該第2配管系統に備えられた前記第3、第4ポンプ(9、10)を駆動するための第2モータ(12)と、
前記第1〜第4ポンプ(7〜10)に並列的に配置され、前記リザーバ(3f)へブレーキ液を返流する管路となる第1〜第4調圧回路(H1〜H4)と、
前記第1〜第4調圧回路(H1〜H4)にそれぞれ対応して配置された第1〜第4リニア弁(SLFR、SLRL、SLFL、SLRR)と、
前記第1〜第4調圧回路(H1〜H4)のうちの少なくとも前記前輪用第1、第2ホイールシリンダ(6FR、6FL)に対応する前記第1、第3調圧回路(H1、H3)の連通・遮断を制御する常閉弁(SWC1、SWC2、SWC)と、
前記ブレーキ操作量センサ(2)の検出信号に基づいて、前記第1〜第4リニア弁(SLFR、SLRL、SLFL、SLRR)、前記第1、第2モータ(11、12)および前記常閉弁(SWC1、SWC2、SWC)を駆動する制御手段(100)と、を備え、
前記制御手段(100)は、前記ブレーキ操作量センサ(2)に基づいて前記ブレーキ操作部材(1)が操作されたことを検出すると、前記第1〜第4リニア弁(SLFR、SLRL、SLFL、SLRR)および前記第1、第2モータ(11、12)への通電を開始すると共に、この通電の開始に対して遅延時間(T1)を設けて前記常閉弁(SWC1、SWC2、SWC)への通電を開始し、前記第1〜第4調圧回路(H1〜H4)のうちの少なくとも前記第1、第3調圧回路(H1、H3)を前記遅延時間(T1)遮断状態とすることを特徴とする車両用ブレーキ制御装置。
【請求項2】
前記制御手段(100)は、前記ブレーキ操作量センサ(2)で検出された前記ブレーキ操作部材(1)の操作量に基づいて、通常ブレーキ時と緊急ブレーキ時を判定する判定手段(120)を有し、該判定手段(120)によって前記緊急ブレーキ時と判定されたときに、前記第1〜第4リニア弁(SLFR、SLRL、SLFL、SLRR)および前記第1、第2モータ(11、12)への通電の開始に対して遅延時間(T1)を設けて前記常閉弁(SWC1、SWC2、SWC)への通電を開始し、前記第1〜第4調圧回路(H1〜H4)のうちの少なくとも前記第1、第3調圧回路(H1、H3)を前記遅延時間(T1)遮断状態とすることを特徴とする請求項1に記載の車両用ブレーキ制御装置。
【請求項3】
前記常閉弁として、前記第1調圧回路(H1)に、前記第1リニア弁(SLFR)と前記リザーバ(3f)の間の連通・遮断を制御する第1常閉御(SWC1)が備えられていると共に、前記第3調圧回路(H3)に、前記第3リニア弁(SLFL)と前記リザーバ(3f)の間の連通・遮断を制御する第2常閉弁(SWC2)が備えられており、
前記制御手段(100)は、前記第1、第2常閉弁(SWC1、SWC2)への通電に前記遅延時間(T1)を設けることにより、前記第1、第3調圧回路(H1、H3)を前記遅延時間(T1)遮断状態とすることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ブレーキ制御装置。
【請求項4】
前記主管路(C、G、G1〜G4)は、前記リザーバ(3f)から1本のみ引き出されてから前記第1配管系統と前記第2配管系統それぞれにブレーキ液を供給するための2本の管路に分岐し、該2本の管路がそれぞれさらに2本ずつに分岐することで前記前輪用第1、第2および前記後輪用第1、第2ホイールシリンダ(6FR〜6RR)につながれており、
該主管路(C、G、G1〜G4)のうち前記第1配管系統として分岐された方の前記管路に、該管路の連通・遮断を制御する第1常閉弁(SWC1)が備えられ、前記第2配管系統として分岐された方の前記管路に該管路の連通・遮断を制御する第2常閉弁(SWC2)が備えられ、
前記制御手段(100)は、前記第1、第2常閉弁(SWC1、SWC2)への通電に前記遅延時間(T1)を設けることにより、前記第1〜第4調圧回路(H1〜H4)を前記遅延時間(T1)遮断状態とすることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ブレーキ制御装置。
【請求項5】
前記主管路(C、G、G1〜G4)は、前記リザーバ(3f)から1本のみ引き出され、1本が4つに分岐して前記前輪用第1、第2および前記後輪用第1、第2ホイールシリンダ(6FR〜6RR)につながれており、
該主管路(C、G、G1〜G4)のうち、前記4つに分岐するよりも上流側において前記常閉弁(SWC)が備えられ、
前記制御手段(100)は、前記常閉弁(SWC)への通電に前記遅延時間(T1)を設けることにより、前記第1〜第4調圧回路(H1〜H4)を前記遅延時間(T1)遮断状態とすることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ブレーキ制御装置。
【請求項6】
プライマリピストン(3c)およびセカンダリピストン(3d)と、これらによって区画されるプライマリ室(3a)とセカンダリ室(3b)と、前記プライマリ室(3a)と前記セカンダリ室(3b)に連通するブレーキ液を貯留した前記リザーバに相当するマスタリザーバ(3f)を有し、前記ブレーキ操作部材(1)が操作されることにより、該ブレーキ操作部材(1)に連結されたプッシュロッドを介して前記プライマリピストン(3c)および前記セカンダリピストン(3d)が押されることで前記プライマリ室(3a)と前記セカンダリ室(3b)に対してマスタシリンダ圧を発生させるように構成されたマスタシリンダ(3)と、
前記プライマリ室(3a)を前記前輪用第1ホイールシリンダ(6FR)に前記前輪用第1ポンプ(7)よりも下流側においてつなぐ第1補助管路(A、E)と、
前記第1補助管路(A、E)に備えられ、該第1補助管路(A、E)の連通・遮断を制御する第1常開弁(SNO1)と、
前記セカンダリ室(3b)を前記前輪用第2ホイールシリンダ(6FL)に前記前輪用第2ポンプ(9)よりも下流側においてつなぐ第2補助管路(B、F)と、
前記第2補助管路(B、F)に備えられ、該第2補助管路(B、F)の連通・遮断を制御するた第2常開弁(SNO2)と、を備え、
前記制御手段(100)は、前記ブレーキ操作量センサ(2)の検出信号より前記ブレーキ操作部材(1)が操作されたことを検出すると、前記第1、第2制御弁(SNO1、SON2)への通電を開始することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両用ブレーキ制御装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプによる加圧によりホイールシリンダ(以下、W/Cという)に圧力(以下、W/C圧という)を発生させられる車両用ブレーキ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1において、各車輪に対応して1つずつポンプを設けると共に、各配管系統毎に1つずつモータを設け、各モータによって各配管系統の2つのポンプを駆動するように構成したブレーキバイワイヤ式の車両用ブレーキ制御装置が提案されている。
【0003】
この車両用ブレーキ制御装置では、ブレーキ操作部材に相当するブレーキペダルに加えられた踏力を検出できるように、踏力センサの検出信号をブレーキECUに入力し、踏力が加えられたときにモータを駆動することでポンプを動作させ、ポンプにてタンク内のブレーキを吸入・吐出することによりW/C圧を発生させる。そして、加えられた踏力に応じて、各車輪に備えられた調圧回路内の調圧絞りの絞り量を制御することでW/C圧を調圧し、検出された踏力に応じたW/C圧が発生させられるようにしている。
【特許文献1】特開平10−203338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来では、ポンプでの加圧によってW/C圧を発生させるに際し、調圧回路を開いた状態(絞り量の無い状態)から発生させたいW/C圧に相当する絞り量に絞り量を可変制御する。このため、W/C圧を発生させるためにポンプでのブレーキ液の吸入・吐出動作を行った瞬間、ポンプからW/Cに向けて吐出したブレーキ液が調圧回路を通じて返流されてしまい、W/C圧の立上りが遅れ、ブレーキの効き遅れが発生する。このようなブレーキの効き遅れは、通常ブレーキ時であれば発生せず問題にならないが、パニック的な緊急を有するようなブレーキ時(以下、緊急ブレーキ時という)にはより早くからブレーキが効く方が良い。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、ブレーキの効き遅れを防止できる車両用ブレーキ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、リザーバ(3f)に貯留されたブレーキ液を吸入・吐出して、第1〜第4ポンプ(7〜10)により前輪用第1、第2および後輪用第1、第2ホイールシリンダ(6FR〜6RR)を独立して加圧できるように構成された車両用ブレーキ制御装置において、第1〜第4ポンプ(7〜10)に並列的に配置された、リザーバ(3f)へブレーキ液を返流する管路となる第1〜第4調圧回路(H1〜H4)と、第1〜第4調圧回路(H1〜H4)にそれぞれ対応して配置された第1〜第4リニア弁(SLFR、SLRL、SLFL、SLRR)と、第1〜第4調圧回路(H1〜H4)のうちの少なくとも前輪用第1、第2ホイールシリンダ(6FR、6FL)に対応する第1、第3調圧回路(H1、H3)の連通・遮断を制御する常閉弁(SWC1、SWC2、SWC)と、を備える。そして、制御手段(100)にて、ブレーキ操作量センサ(2)の検出信号よりブレーキ操作部材(1)が操作されたことを検出すると、第1〜第4リニア弁(SLFR、SLRL、SLFL、SLRR)および第1、第2モータ(11、12)への通電を開始すると共に、この通電の開始に対して遅延時間(T1)を設けて常閉弁(SWC1、SWC2、SWC)への通電を開始し、第1〜第4調圧回路(H1〜H4)のうちの少なくとも第1、第3調圧回路(H1、H3)を遅延時間(T1)遮断状態とすることを特徴としている。
【0007】
このように、第1、第2常閉弁(SWC1、SWC2)への通電に遅延時間T1を設けることで、ブレーキ操作部材(1)が踏み込まれた直後には少なくとも第1、第3調圧回路(H1、H3)が遮断されるようにしている。このため、調圧回路(H1、H3)を通じてブレーキ液が返流されてしまうことが防止でき、W/C圧の立上り遅れや、それに起因するブレーキの効き遅れを防止することが可能となる。
【0008】
例えば、請求項3に示されるように、常閉弁として、第1調圧回路(H1)に、第1リニア弁(SLFR)とリザーバ(3f)の間の連通・遮断を制御する第1常閉御(SWC1)が備えると共に、第3調圧回路(H3)に、第3リニア弁(SLFL)とリザーバ(3f)の間の連通・遮断を制御する第2常閉弁(SWC2)を備えた構成とできる。この場合、制御手段(100)は、第1、第2常閉弁(SWC1、SWC2)への通電に遅延時間(T1)を設けることで、第1、第3調圧回路(H1、H3)を遅延時間(T1)遮断状態とする。このため、調圧回路(H1、H3)を通じてブレーキ液が返流されてしまうことが防止でき、W/C圧の立上り遅れや、それに起因するブレーキの効き遅れを防止することが可能となる。
【0009】
また、請求項4に示されるように、主管路(C、G、G1〜G4)がリザーバ(3f)から1本のみ引き出されてから第1配管系統と第2配管系統それぞれにブレーキ液を供給するための2本の管路に分岐し、該2本の管路がそれぞれさらに2本ずつに分岐することで前輪用第1、第2および後輪用第1、第2ホイールシリンダ(6FR〜6RR)につながれた構成とし、該主管路(C、G、G1〜G4)のうち第1配管系統として分岐された方の管路に該管路の連通・遮断を制御する第1常閉弁(SWC1)を備えると共に、第2配管系統として分岐された方の管路に該管路の連通・遮断を制御する第2常閉弁(SWC2)を備えた構成とすることもできる。この場合にも、制御手段(100)は、第1、第2常閉弁(SWC1、SWC2)により、第1、第3調圧回路(H1、H3)を遅延時間(T1)遮断状態とする。このため、調圧回路(H1、H3)を通じてブレーキ液が返流されてしまうことが防止でき、W/C圧の立上り遅れや、それに起因するブレーキの効き遅れを防止することが可能となる。
【0010】
さらに、請求項5に示されるように、主管路(C、G、G1〜G4)がリザーバ(3f)から1本のみ引き出され、1本が4つに分岐して前輪用第1、第2および後輪用第1、第2ホイールシリンダ(6FR〜6RR)につながれた構成とし、該主管路(C、G、G1〜G4)のうち、4つに分岐するよりも上流側において常閉弁(SWC)を備えた構成とすることもできる。この場合、制御手段(100)は、常閉弁(SWC)により、第1〜第4調圧回路(H1〜H4)を遅延時間(T1)遮断状態とする。このため、調圧回路(H1〜H4)を通じてブレーキ液が返流されてしまうことが防止でき、W/C圧の立上り遅れや、それに起因するブレーキの効き遅れを防止することが可能となる。
【0011】
また、上記各請求項の構成に対して、請求項6に示すように、プライマリピストン(3c)およびセカンダリピストン(3d)と、これらによって区画されるプライマリ室(3a)とセカンダリ室(3b)と、プライマリ室(3a)とセカンダリ室(3b)に連通するブレーキ液を貯留したリザーバに相当するマスタリザーバ(3f)を有し、ブレーキ操作部材(1)が操作されることにより、該ブレーキ操作部材(1)に連結されたプッシュロッドを介してプライマリピストン(3c)およびセカンダリピストン(3d)が押されることでプライマリ室(3a)とセカンダリ室(3b)に対してマスタシリンダ圧を発生させるように構成されたマスタシリンダ(3)と、プライマリ室(3a)を前輪用第1ホイールシリンダ(6FR)に前輪用第1ポンプ(7)よりも下流側においてつなぐ第1補助管路(A、E)と、第1補助管路(A、E)に備えられ、該第1補助管路(A、E)の連通・遮断を制御する第1常開弁(SNO1)と、セカンダリ室(3b)を前輪用第2ホイールシリンダ(6FL)に前輪用第2ポンプ(9)よりも下流側においてつなぐ第2補助管路(B、F)と、第2補助管路(B、F)に備えられ、該第2補助管路(B、F)の連通・遮断を制御するた第2常開弁(SNO2)と、を備えることができる。このような構成の場合、制御手段(100)は、ブレーキ操作量センサ(2)の検出信号よりブレーキ操作部材(1)が操作されたことを検出すると同時に、第1、第2常開弁(SNO1、SON2)への通電を開始する。
【0012】
以上のように、常閉弁(SWC1、SWC2、SWC)の通電に遅延時間(T1)を設けることは、請求項2に示すように、ブレーキ操作量センサ(2)で検出されたブレーキ操作部材(1)の操作量に基づいて、通常ブレーキ時と緊急ブレーキ時を判定する判定手段(120)を制御手段(100)に備えておき、該判定手段(120)によって緊急ブレーキ時と判定されたときにのみ行われるようにしても良い。
【0013】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0015】
(第1実施形態)
本発明の一実施形態を適用した車両用ブレーキ制御装置の油圧回路構成を図1に示す。また、図2に、本実施形態の車両用ブレーキ制御装置の制御系を司るブレーキECU100の信号の入出力の関係を示す。以下、これらの図を参照して、本実施形態の車両用ブレーキ制御装置の構成について説明する。ここでは右前輪−左後輪、左前輪−右後輪の各配管系統を備えるX配管の油圧回路を構成する車両に本実施形態の車両用ブレーキ制御装置を適用した例について説明する。
【0016】
図1に示されるように、車両用ブレーキ制御装置には、上述したブレーキECU100(図2参照)に加えて、ブレーキペダル1、ブレーキ操作量センサ2、マスタシリンダ(以下、M/Cという)3、ストローク制御弁SCSS、ストロークシミュレータ4、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ5、W/C6FL、6FR、6RL、6RRが備えられている。
【0017】
ドライバによってブレーキ操作部材に相当するブレーキペダル1が踏み込まれると、ブレーキペダル1のブレーキ操作量がブレーキ操作量センサ2に入力され、ブレーキ操作量センサ2から操作量に応じた検出信号が出力されるように構成されている。この検出信号はブレーキECU100に入力され、ブレーキECU100でブレーキペダル1のブレーキ操作量が検出される。なお、ブレーキ操作部材の操作量を検出するためのブレーキ操作量センサ2としては、踏力センサやストロークセンサ等を用いても良いし、ストロークセンサの検出信号や後述するM/C圧を検出するための圧力センサ17、18の検出信号に基づいてドライバによるブレーキペダル1の操作状態を検出できるようにしても構わない。
【0018】
ブレーキペダル1には、加えられた踏力をM/C3に伝達するプッシュロッド等が接続されており、このプッシュロッド等が押されることでM/C3に備えられるプライマリ室3aおよびセカンダリ室3bにM/C圧が発生させられるようになっている。
【0019】
M/C3には、プライマリ室3aとセカンダリ室3bを構成するプライマリピストン3cおよびセカンダリピストン3dが備えられ、これらがスプリング3eの弾性力を受けることで、ブレーキペダル1が踏み込まれていないときには各ピストン3c、3dを押してブレーキペダル1を初期位置側に戻すように構成されている。
【0020】
M/C3のプライマリ室3aとセカンダリ室3bからそれぞれブレーキ液圧制御用アクチュエータ5に伸びる管路A、Bが備えられている。
【0021】
また、M/C3には、マスタリザーバ3fが備えられている。マスタリザーバ3fは、ブレーキペダル1が初期位置のときに、プライマリ室3aおよびセカンダリ室3bのそれぞれと図示しない通路を介して接続されるもので、M/C3内にブレーキ液を供給したり、M/C3内の余剰ブレーキ液を貯留する。
【0022】
このマスタリザーバ3fからは、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ5に向けて直接管路Cが延設されている。
【0023】
ストロークシミュレータ4は、管路Bに繋がる管路Dに接続されており、セカンダリ室3b内のブレーキ液を収容する役割を果たす。管路Dには、管路Dの連通・遮断状態を制御できる常閉型の二位置弁により構成されたストローク制御弁SCSSが備えられ、このストローク制御弁SCSSにより、ストロークシミュレータ4へのブレーキ液の流動が制御できるように構成されている。
【0024】
ブレーキ液圧制御用アクチュエータ5は、以下のように構成されている。
【0025】
M/C3のプライマリ室3aと前輪FRに対応するW/C(前輪用第1W/C)6FRを接続するように、管路Aに繋げられる管路Eが備えられている。この管路Eには、第1常開弁(第1制御弁)SNO1が備えられている。第1常開弁SNO1は、非通電時には連通状態、通電時には遮断状態となる二位置弁であり、この第1常開弁SNO1によって管路Eの連通・遮断状態が制御される。
【0026】
また、M/C3のセカンダリ室3bと前輪FLに対応するW/C(前輪用第2W/C)6FLを接続するように、管路Bが繋げられる管路Fが備えられている。この管路Fには、第2常開弁(第2制御弁)SNO2が備えられている。第2常開弁SNO2は、非通電時には連通状態、通電時には遮断状態となる二位置弁であり、この第2常開弁SNO2によって管路Fの連通・遮断状態が制御される。
【0027】
また、マスタリザーバ3fから延設された管路Cが接続される管路Gが設けられている。この管路Gは、管路G1、G2、G3、G4という4本の管路に分岐して、上述した前輪FL、FRに対応するW/C6FL、6FR、および、後輪RL、RRに対応するW/C(後輪用第1、第2W/C)6RL、6RRに接続される。
【0028】
各管路G1〜G4には、それぞれ1つずつポンプ(第1〜第4ポンプ)7、8、9、10が備えられている。各ポンプ7〜10は、例えば静寂性に有効なトロコイドポンプにより構成されている。ポンプ7〜10のうち、ポンプ7、8は、第1モータ11によって駆動され、ポンプ9、10は、第2モータ12によって駆動される。第1、第2モータ11、12としてどのようなモータを用いても良いが、立上りが早いブラシレスモータを用いると好ましい。
【0029】
また、ポンプ7〜10のそれぞれには、並列的に調圧回路を構成する管路H1、H2、H3、H4が備えられている。
【0030】
ポンプ7に対して並列的に接続された管路H1には、直列的に接続された第1常閉弁(第3制御弁)SWC1と第1リニア弁SLFRが備えられ、第1常閉弁SWC1がポンプ7の吸入ポート側(上流側)に第1リニア弁SLFRが吐出ポート側(下流側)に位置するように配置されている。つまり、第1常閉弁SWC1により、管路H1を通じてマスタリザーバ3f側へのブレーキ液の返流を制御できる構成とされている。
【0031】
ポンプ8に対して並列的に接続された管路H2には、第2リニア弁SLRLが備えられている。
【0032】
ポンプ9に対して並列的に接続された管路H3には、直列的に接続された第2常閉弁(第4制御弁)SWC2と第3リニア弁SLFLが備えられ、第2常閉弁SWC2がポンプ9の吸入ポート側(上流側)に第3リニア弁SLFLが吐出ポート側(下流側)に位置するように配置されるている。つまり、第2常閉弁SWC2により、管路H3を通じてマスタリザーバ3f側へのブレーキ液の返流を制御できる構成とされている。
【0033】
ポンプ10に対して並列的に接続された管路H4には、第4リニア弁SLRRが備えられている。
【0034】
そして、管路G1〜G4のうち、各ポンプ7〜10と各W/C6FR〜6RRの間に圧力センサ(第1〜第4圧力センサ)13、14、15、16が配置されることで、各W/C圧が検出できるように構成されていると共に、管路E、Fのうち第1、第2常開弁SNO1、SNO2よりも上流側(M/C3側)にも圧力センサ17、18が配置されることで、M/C3のプライマリ室3aとセカンダリ室3bに発生しているM/C圧を検出できるように構成されている。
【0035】
さらに、前輪FRに対するW/C6FRを加圧するためのポンプ7の吐出ポートおよび前輪FLに対するW/C6FLを加圧するためのポンプ9の吐出ポートには、それぞれ、逆止弁20、21が備えられている。これら逆止弁20、21は、W/C6FR、6FL側からポンプ7、9側へのブレーキ液の流動を禁止するために備えられている。このような構造により、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ5が構成されている。
【0036】
このような車両用ブレーキ制御装置では、上述した管路A、管路Eを通じてプライマリ室3aとW/C6FRを繋ぐ油圧回路(第1補助管路)と、管路C、管路G、G1、G2を通じてマスタリザーバ3fとW/C6FR、6RLを繋ぐ油圧回路(主管路)、および、ポンプ7、8に並列的に接続された管路H1、H2の油圧回路(第1、第2調圧回路)が第1配管系統を構成するものとなる。
【0037】
また、管路B、管路Fを通じてセカンダリ室3bとW/C6FRを繋ぐ油圧回路(第2補助管路)と、管路C、管路G、G3、G4を通じてマスタリザーバ3fとW/C6FL、6RRを繋ぐ油圧回路(主管路)、および、ポンプ9、10に並列的に接続された管路H3、H4の油圧回路(第3、第4調圧回路)が第2配管系統を構成するものとなる。
【0038】
そして、図2に示されるように、上記したブレーキ操作量センサ2や各圧力センサ13〜18の検出信号がブレーキECU100に入力され、これら各検出信号から求められる物理量に基づいて、各種制御弁SCSS、SNO1、SNO2、SWC1、SWC2、SLFR、SLRL、SLFL、SLRRや第1、第2モータ11、12を駆動するための制御信号がブレーキECU100から出力されるようになっている。
【0039】
続いて、上記のように構成される車両用ブレーキ制御装置の作動について、通常ブレーキ時と車両用ブレーキ制御装置に異常が発生した場合(以下、異常時という)および緊急ブレーキ時に分けて説明する。
【0040】
図3は、通常ブレーキ時と異常時および緊急ブレーキ時の各部の駆動状態を示した模式図である。なお、異常が発生したか否かに関しては、従来より行われているイニシャルチェックなどに基づいてブレーキECU100で判定され、一旦異常が発生するとそれが解除されるまでは異常時のブレーキ動作が行われることになる。
【0041】
(1)通常ブレーキ時の動作
通常ブレーキ時には、ブレーキペダル1が踏み込まれ、ブレーキ操作量センサ2の検出信号がブレーキECU100に入力されると、ブレーキECU100が図3に示すような駆動形態となるように各種制御弁SCSS、SNO1、SNO2、SWC1、SWC2、SLFR、SLRL、SLFL、SLRRや第1、第2モータ11、12を駆動する。
【0042】
すなわち、第1、第2常開弁SNO1、SNO2への通電は共にONされ、第1、第2常閉弁SWC1、SWC2への通電も共にONされる。これにより、第1、第2常開弁SNO1、SNO2は共に遮断状態、第1、第2常閉弁SWC1、SWC2は共に連通状態とされる。
【0043】
また、第1〜第4リニア弁SLFR、SLRL、SLFL、SLRRは、通電のON/OFFがデューティ制御(もしくはPWM制御)されることで、単位時間当たりの通電量が調整され、上下流間に発生させる差圧量がリニアに制御される。ストローク制御弁SCSSに関しては、通電がONされる。このため、管路B、Dを通じて、ストロークシミュレータ4がセカンダリ室3bと連通状態となり、ブレーキペダル1が踏み込まれたときに、各ピストン3c、3dが移動しても、セカンダリ室3b内のブレーキ液がストロークシミュレータ4に移動することになる。したがって、ドライバがブレーキペダル1を踏み込んだときに踏み込みに応じた反力が得つつ、M/C圧が高圧になり過ぎることでブレーキペダル1に対して硬い板を踏み込むような感覚(板感)が発生することなく、ブレーキペダル1が踏み込めるようになっている。
【0044】
さらに、第1、第2モータ11、12への通電が共にONされ、ポンプ7〜10によるブレーキ液の吸入・吐出が行われる。このようにして、ポンプ7〜10によるポンプ動作が行われると、各W/C6FR〜6RRに対してブレーキ液が供給される。
【0045】
このとき、第1、第2常開弁SNO1、SNO2が遮断状態とされているため、ポンプ7〜10の下流側のブレーキ液圧、つまり各W/C6FR〜6RRのW/C圧が増加させられることになる。そして、第1、第2常閉弁SWC1、SWC2が連通状態とされ、かつ、第1〜第4リニア弁SLFR、SLRL、SLFL、SLRRへの単位時間当たりの通電量がデューティ制御されているため、デューティ比に応じて各W/C6FR〜6RRのW/C圧が調整される。
【0046】
そして、ブレーキECU100にて、各圧力センサ13〜16の検出信号に基づいて各車輪FR〜RRのW/C6FR〜6RRに発生しているW/C圧をモニタリングし、第1、第2モータ11、12の通電量を調整することで第1、第2モータ11、12の回転数を制御すると共に、第1〜第4リニア弁SLFR、SLRL、SLFL、SLRRへの通電のON/OFFのデューティ比を制御することで、各W/C圧が所望の値となるようにする。
【0047】
これにより、ブレーキペダル1のブレーキ操作量に応じた制動力が発生させられることになる。
【0048】
(2)異常時のブレーキ動作
異常時には、ブレーキECU100から制御信号が出力できなくなるか、もしくは、各種制御弁SCSS、SNO1、SNO2、SWC1、SWC2、SLFR、SLRL、SLFL、SLRRや第1、第2モータ11、12が正常に駆動されない可能性がある。このため、各種制御弁SCSS、SNO1、SNO2、SWC1、SWC2、SLFR、SLRL、SLFL、SLRRや第1、第2モータ11、12すべてに関して、図3に示されるように通電がOFFされる。
【0049】
すなわち、第1、第2常開弁SNO1、SNO2への通電が共にOFFとなるため、これらは共に連通状態となる。第1、第2常閉弁SWC1、SWC2への通電も共にOFFとなるため、これらは共に遮断状態とされる。
【0050】
また、第1〜第4リニア弁SLFR、SLRL、SLFL、SLRRも、すべて通電がOFFとなるため、すべて連通状態となる。ストローク制御弁SCSSも通電がOFFとなるため、ストロークシミュレータ4とセカンダリ室3bの間が遮断状態となる。
【0051】
さらに、第1、第2モータ11、12への通電が共にOFFとなり、ポンプ7〜10によるブレーキ液の吸入・吐出も停止される。
【0052】
このような状態になると、M/C3におけるプライマリ室3aは、管路A、E、G1を介して右前輪FRにおけるW/C6FRとつながった状態となり、セカンダリ室3bは、管路B、F、G3を通じて左前輪FLにおけるW/C6FLとつながった状態となる。
【0053】
このため、ブレーキペダル1が踏み込まれ、加えられた踏力に応じてプッシュロッド等が押されることで、M/C3におけるプライマリ室3aおよびセカンダリ室3bにM/C圧が発生させられると、それが両前輪FL、FRのW/C6FL、6FRに伝えられる。これにより、両前輪FL、FRに対して制動力が発生させられることになる。
【0054】
なお、このような異常時の作動において、前輪側の各W/C6FR、6FLのW/C圧が管路G1、G3に発生することになるが、逆止弁20、21を備えているため、このW/C圧がポンプ7、9に加わることによってポンプ7、9でのブレーキ液漏れが発生し、W/C圧が低下してしまうことを防ぐことが可能となる。
【0055】
(3)緊急ブレーキ時の動作
緊急ブレーキ時の動作は、ブレーキECU100によって緊急ブレーキ時であることが判定されたときに実行される。なお、緊急ブレーキ時と通常ブレーキ時の判定は、後述する緊急ブレーキ判定処理(図4参照)において行われる。
【0056】
この緊急ブレーキ時には、基本的に、通常ブレーキ時と同様の動作が行われるが、ブレーキペダル1の踏み込みが行われた瞬間から遅延時間T1が経過するまでの間の動作が異なっている。
【0057】
すなわち、図3に示されるように、ブレーキペダル1の踏み込みが行われた瞬間から遅延時間T1、第1、第2常閉弁SWC1、SWC2への通電を共に遅延させ、これらを遮断状態とする。
【0058】
このようにすれば、第1、第2常閉弁SWC1、SWC2によって調圧回路が遮断状態とされることになるため、調圧効果が得られなくなるが、ブレーキペダル1を踏み込んだ瞬間に調圧回路を通じてブレーキ液が返流されることが防止できる。このため、その分、W/C6FR、6FLのW/C圧の立上りを早めることができ、ブレーキの効き遅れを防止することが可能となる。特に、第1、第2常閉弁SWC1、SWC2を遮断状態にした場合、より制動力を高めたい前輪FL、FRのW/C6FR、6FLのW/C圧を早くから高めることができるため、緊急時に対応した制動力を発生させることが可能となる。
【0059】
そして、遅延時間T1が経過すると、通常ブレーキ時と同様に、第1、第2常閉弁SWC1、SWC2への通電を行うことで、第1、第2常閉弁SWC1、SWC2を連通状態とする。これにより、調圧回路が連通状態となるため、第1、第3リニア弁SLFR、SLFLへの単位時間当たりの通電量を制御し、上下流間に発生させる差圧を調整することで、W/C6FR、6FLに発生させるW/C圧をブレーキペダル1の踏み込みに応じた大きさに調圧することが可能となる。
【0060】
以上のようにして、本実施形態の車両用ブレーキ制御装置が作動する。次に、上述した通常ブレーキ時と緊急ブレーキ時の判定およびそれに応じたブレーキ動作の処理を実行する緊急ブレーキ判定処理について、図4に示す緊急ブレーキ判定処理のフローチャートを参照して説明する。
【0061】
まず、ステップ110では、ブレーキペダル1が踏み込まれているか否か、すなわち、制動中か非制動中かを判定する。この判定は、ブレーキ操作量センサ2の検出信号に基づいて行われる。このステップで肯定判定されれば、ステップ120に進む。
【0062】
ステップ120では、緊急ブレーキであるか否かを判定する。緊急ブレーキであるか否かは、ブレーキ操作量センサ2の検出信号に基づいて求められる物理量の変化、具体的には単位時間当たりの変化量が閾値を超えているか否か等により判定される。なお、本実施形態の場合、例えば踏力センサを用いた場合は単位時間当たりの踏力の変化が閾値を超えていれば緊急ブレーキと判定し、ストロークセンサを用いる場合にも、単位時間当たりのペダルストローク量の変化が閾値を超えていれば緊急ブレーキと判定し、圧力センサ17、18でM/C圧を検出する場合にも、単位時間当たりの圧力変化量が閾値を超えていれば緊急ブレーキと判定している。
【0063】
そして、ステップ120で否定判定されればステップ130に進み、通常ブレーキ時の動作を行い、肯定判定されればステップ140に進んで緊急ブレーキ時の動作を行う。すなわち、上述したように通常ブレーキ時や緊急ブレーキ時の動作となるように、各種制御弁SCSS、SNO1、SNO2、SWC1、SWC2、SLFR、SLRL、SLFL、SLRRや第1、第2モータ11、12を駆動する。
【0064】
ステップ140で緊急ブレーキ時の動作が行われると、ステップ150に進み、緊急ブレーキ時の動作が開始されたとき、つまりブレーキペダル1が踏み込まれた瞬間から遅延時間T1が経過したか否かを判定する。ここで肯定判定されるまでは、ステップ140の処理を繰り返し、遅延時間T1を経過するとステップ160に進んで通常ブレーキ時の動作に移行する。このような処理が繰り返し行われたのち、ドライバによるブレーキペダル1の踏み込みが解除されると、ステップ170に進んでブレーキ動作を終了する。
【0065】
図5は、緊急ブレーキ時における各部の状態を示したタイミングチャートである。なお、この図中に参考として、本実施形態のような緊急ブレーキ時の動作を行った場合と、図1のブレーキ構成に対して従来のように緊急ブレーキ時の動作を行わない場合、それぞれについて、ブレーキペダル1の操作量に対応してW/C6FL、6FRに発生させたいW/C圧(指示圧力)と実際のW/C圧それぞれの変化を示してある。
【0066】
この図に示されるように、本実施形態のように緊急ブレーキ動作を行う場合、非制動中から制動中に切り替わると、その瞬間から第1、第2モータ11、12への通電がONされると共に、第1、第2常開弁SNO1、SNO2への通電もONされて遮断状態となる。しかしながら、第1、第2常閉弁SWC1、SWC2に関しては、それから遅延時間T1が経過した後に通電がONされる。このため、第1、第2常閉弁SWC1、SWC2は、遅延時間T1中には遮断状態とされ、その後に連通状態となる。なお、従来のように緊急ブレーキ時の動作を行わない場合には、この遅延時間T1が設けられることなく第1、第2常閉弁SWC1、SWC2への通電がONされ、これらが連通状態となる。
【0067】
このため、パニック的な緊急を有するようなブレーキ時において本実施形態のように緊急ブレーキ時の動作が行われる場合には、指示圧力にほぼ追従してW/C圧が早くから立上るが、従来のように緊急ブレーキ時の動作が行われない場合には、指示圧力から遅れてW/C圧が立ち上がることになる。
【0068】
以上説明した本実施形態の車両用ブレーキ制御装置によれば、緊急ブレーキ時に、第1、第2常閉弁SWC1、SWC2への通電に遅延時間T1を設けることで、ブレーキペダル1が踏み込まれた直後には調圧回路が遮断されるようにしている。このため、調圧回路を通じてブレーキ液が返流されてしまうことが防止でき、W/C圧の立上りが遅れや、それに起因するブレーキの効き遅れを防止することが可能となる。
【0069】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して車両用ブレーキ制御装置の構成を一部変更したものであり、基本的には第1実施形態と同様の構成となっているため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0070】
図6は、本実施形態の車両用ブレーキ制御装置の油圧回路構成を示したものである。この図に示されるように、本実施形態の車両用ブレーキ制御装置では、管路Gが2つの管路Ga、Gbに分岐されており、管路Ga(つまり、分岐点よりも下流かつ管路H1、H2の上流側)に第1常閉弁SWC1が備えられ、管路Gb(つまり、分岐点よりも下流かつ管路H3、H4の上流側)に第2常閉弁SWC2が備えられた構成としてある。
【0071】
このような構成においても、緊急ブレーキ時に、第1、第2常閉弁SWC1、SWC2への通電に遅延時間T1を設けることで、ブレーキペダル1が踏み込まれた直後に調圧回路が遮断されるようにできる。これにより、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0072】
また、このような構成によれば、異常時に第1常閉弁SWC1が遮断状態となっても、管路H1、H2の上流側が遮断状態となるだけであるため、ブレーキペダル1の踏み込みによってM/C3のプライマリ室3aにM/C圧が発生させられると、それが右前輪FRのW/C6FRだけでなく左後輪RLのW/C6RLにも伝えられるようにできる。同様に、異常時に第2常閉弁SWC2が遮断状態となっても、管路H3、H4の上流側が遮断状態となるだけであるため、ブレーキペダル1の踏み込みによってM/C3のセカンダリ室3bにM/C圧が発生させられると、それが左前輪FLのW/C6FLだけでなく右後輪RRのW/C6RRにも伝えられるようにできる。
【0073】
このように、本実施形態の車両用ブレーキ制御装置によれば、異常時に4輪FR〜RRのすべてについて、W/C6FR〜6RRにW/C圧を発生させることが可能となる。これにより、よりバランス良い制動力を発生させることができる。
【0074】
なお、本実施形態では、第1実施形態に示した逆止弁20、21を設けていないが、仮にポンプ7、9からブレーキ液漏れが発生したとしても、各ポンプ7、9の上流に位置する第1、第2常閉弁SWC1、SWC2によってブレーキ液が止められることになるため、W/C圧の低下は起こらない。
【0075】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、第2実施形態に対して車両用ブレーキ制御装置の構成を一部変更したものであり、基本的には第2実施形態と同様の構成となっているため、第2実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0076】
図7は、本実施形態の車両用ブレーキ制御装置の油圧回路構成を示したものである。この図に示すように、本実施形態の車両用ブレーキ制御装置は、第1、第2実施形態のように第1、第2常閉弁SWC1、SWC2の2つを備えた構造ではなく、1つの常閉弁SWCのみを2つの配管系統の双方で共用した構造としている。
【0077】
このような構成においても、緊急ブレーキ時に、常閉弁SWCへの通電に遅延時間T1を設けることで、ブレーキペダル1が踏み込まれた直後に調圧回路が遮断されるようにできる。これにより、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0078】
また、このような構成としても、通常ブレーキ時には、4輪FR〜RRのW/C6FR〜6RRのW/C圧を適宜調圧でき、異常時には、4輪FR〜RRのW/C6FR〜6RRに対してブレーキペダル1の踏み込みに応じてM/C3に発生したM/C圧を伝えることが可能となる。
【0079】
さらに、本実施形態では、異常時に、1つの常閉弁SWCにより、2つの配管系統のすべての車輪FR〜RRに対してM/C圧を伝えることが可能となるため、システムをコンパクトな構成とすることが可能となる。
【0080】
なお、本実施形態の車両用ブレーキ制御装置において、常閉弁SWCの駆動形態は、図3に示した第1実施形態の車両用ブレーキ制御装置における第1、第2常閉弁SWC1、SWC2と同様である。
【0081】
(他の実施形態)
上記各実施形態に示した車両用ブレーキ制御装置は、本発明を適用できるブレーキ構成の一例として示したものであり、各実施形態に示したものに限定されるものではなく、様々な形態で変更可能である。
【0082】
例えば、第1〜第3実施形態では、右前輪−左後輪、左前輪−右後輪の各配管系統を備えるX配管の油圧回路を構成する車両に本実施形態の車両用ブレーキ制御装置を適用した例について説明したが、前後配管など他の系統にも本発明を適用可能である。
【0083】
また、上記各実施形態では、マスタリザーバ3fに繋がるのが管路Cの一本のみで、この管路Cを通じて第1、第2配管系統の双方へのブレーキ液の供給が行われるようにした。しかしながら、管路Cの他にもう一本備え、例えば管路Cにて第1配管系統へのブレーキ液の供給を行い、もう一本の管路にて第2配管系統へのブレーキ液の供給を行うようにしても良い。
【0084】
さらに、上記各実施形態では、第1〜第4ポンプ7〜10による加圧が行えない異常時を考慮して、M/C3と第1、第2配管系統を接続した構成とし、通常ブレーキ時や緊急ブレーキ時にはマスタリザーバ3fからブレーキ液が供給されるようにしている。しかしながら、これも単なる一例であり、M/C3と第1、第2配管系統が接続される形態でなくても良いし、M/C3自体が無いようなブレーキ構成であっても構わない。また、ブレーキ液の供給もマスタリザーバ3fからでなく、ブレーキ液を貯留できる他のリザーバから行われるようにしても良い。
【0085】
また、上記実施形態では、特にW/C圧の立上り遅れによるブレーキの効きの遅れを防ぎたい緊急ブレーキ時に限って、第1、第2常閉弁SWC1、SWC2もしくは常閉弁SWCへの通電の開始に遅延時間T1を設けるようにしているが、通常ブレーキ時にも行っても良い。
【0086】
なお、ブレーキ操作部材としてブレーキペダル1を例に挙げたが、ブレーキレバーなどであっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の第1実施形態における車両用ブレーキ制御装置の油圧回路構成を示す図である。
【図2】図1に示す車両用ブレーキ制御装置の制御系を司るブレーキECUの信号の入出力の関係を示すブロック図である。
【図3】通常ブレーキ時と車両用ブレーキ制御装置に異常が発生した場合および緊急ブレーキ時の各部の駆動状態を示した模式図である。
【図4】緊急ブレーキ判定処理のフローチャートである。
【図5】緊急ブレーキ時における各部の状態を示したタイミングチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態における車両用ブレーキ制御装置の油圧回路構成を示す図である。
【図7】本発明の第3実施形態における車両用ブレーキ制御装置の油圧回路構成を示す図である。
【符号の説明】
【0088】
1…ブレーキペダル、2…ブレーキ操作量センサ、3…M/C、3a…プライマリ室、3b…セカンダリ室、3c…プライマリピストン、3d…セカンダリピストン、3e…スプリング、3f…マスタリザーバ、4…ストロークシミュレータ、5…ブレーキ液圧制御用アクチュエータ、6FL、6FR、6RL、6RR…W/C、7〜10…ポンプ、11、12…モータ、13〜18…圧力センサ、20、21…逆止弁、100…ブレーキECU、A、B、C、D、E、F、G1〜G4、H1〜H4、FL、FR、RL、RR…車輪、SCSS…ストローク制御弁、SLFL、SLFR、SLRR、SLRR…第1〜第4リニア弁、SNO1、SNO2…第1、第2常開弁、SWC…常閉弁、SWC1、SWC2…第1、第2常閉弁。




 

 


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