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発明の名称 車両の制動制御装置、及び車両の制動制御方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−69870(P2007−69870A)
公開日 平成19年3月22日(2007.3.22)
出願番号 特願2005−262481(P2005−262481)
出願日 平成17年9月9日(2005.9.9)
代理人 【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
発明者 安部 洋一
要約 課題
走行中の車両にアンチロックブレーキ制御が実行された場合に、車両が走行する路面状態によらず、車両における制動力の低下を抑制すると共に、車両における走行の安定性を確保することができる車両制動制御装置及び車両の制動制御方法を提供する。

解決手段
CPUは、左右の車輪のうち何れか一方の車輪に対してのみアンチロックブレーキ制御が実行されている場合、車両が左右異μ路を走行していると判定する。そして、CPUは、車両安定性制御の実行を禁止する。一方、CPUは、左右の車輪にそれぞれアンチロックブレーキ制御が実行されている場合、及び左右の車輪の何れに対してもアンチロックブレーキ制御が実行されていない場合、車両安定性制御の実行を許可する。
特許請求の範囲
【請求項1】
車両制動時に制動手段(18a,18b,18c,18d)によって車両の各車輪(FR,FL,RR,RL)に付与される制動力を調整することにより該各車輪(FR,FL,RR,RL)がロックすることを抑制するアンチロックブレーキ制御と、車両走行時に前記各車輪(FR,FL,RR,RL)が横方向にスリップすることを抑制する車両安定性制御とを実行可能な車両の制動制御装置(11)において、
前記左側の車輪(FL,RL)が走行する路面のμ値と右側の車輪(FR,RR)が走行する路面のμ値とが異なる左右異μ路を車両が走行しているか否かを判定する左右異μ路判定手段(50)と、
該左右異μ路判定手段(50)による判定結果が肯定判定である場合に、前記車両安定性制御の実行を禁止する一方、前記左右異μ路判定手段(50)による判定結果が否定判定である場合には、前記車両安定性制御の実行を許可する制御手段(50)とを備えた車両の制動制御装置。
【請求項2】
前記アンチロックブレーキ制御は前記車両の車輪(FR,FL,RR,RL)毎に実行されるようになっており、前記左右異μ路判定手段(50)は、前記左右の車輪(FR,FL,RR,RL)のうち何れか一方の車輪のみに前記アンチロックブレーキ制御が実行される場合に、左右異μ路を車両が走行していると判定する請求項1に記載の車両の制動制御装置。
【請求項3】
前記左右の車輪(FR,FL,RR,RL)のスリップ量(SLP)をそれぞれ検出するスリップ量検出手段(SE1,SE2,SE3,SE4,50)をさらに備え、前記左右異μ路判定手段(50)は、前記スリップ量検出手段(SE1,SE2,SE3,SE4,50)が検出した前記左右の車輪(FR,FL,RR,RL)のスリップ量(SLP)を比較することにより、車両が左右異μ路を走行しているか否かを判定する請求項1に記載の車両の制動制御装置。
【請求項4】
前記車両の車輪(FR,FL,RR,RL)毎に前記アンチロックブレーキ制御の開始条件が成立したか否かを判定するABS開始判定手段(50)をさらに備え、前記制御手段(50)は、前記左右異μ路判定手段(50)による判定結果が肯定判定である場合において、前記左右の車輪(FR,FL,RR,RL)のうち低μ側の車輪に対する前記ABS開始判定手段(50)による判定結果が肯定判定であって、且つ高μ側の車輪に対する前記ABS開始判定手段(50)による判定結果が否定判定であるときに、前記低μ路側の車輪には前記アンチロックブレーキ制御を実行すると共に、前記高μ路側の車輪には前記制動手段(18a,18b,18c,18d)によって付与される制動力の増加率が低くなるようにした請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の車両の制動制御装置。
【請求項5】
前記車両の車輪(FR,FL,RR,RL)毎に前記アンチロックブレーキ制御の開始条件が成立したか否かを判定するABS開始判定手段(50)をさらに備え、前記制御手段(50)は、前記左右異μ路判定手段(50)による判定結果が肯定判定である場合において、前記左右の車輪(FR,FL,RR,RL)のうち低μ側の車輪に対する前記ABS開始判定手段(50)による判定結果が肯定判定であって、且つ高μ側の車輪に対する前記ABS開始判定手段(50)による判定結果が否定判定であるときに、前記低μ路側の車輪には前記アンチロックブレーキ制御を実行すると共に、前記高μ側の車輪には前記低μ路側の車輪に実行される前記アンチロックブレーキ制御と同じ制御を実行するように前記制動手段(18a,18b、18c,18d)を制御する請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の車両の制動制御装置。
【請求項6】
前記車両の車輪(FR,FL,RR,RL)毎に前記アンチロックブレーキ制御の開始条件が成立したか否かを判定するABS開始判定手段(50)と、走行中の車両の目標挙動値(TBC)と実挙動値(RBC)との差が予め定めたESC閾値(KBC)以上となったか否かを判定するESC開始判定手段(50)と、前記左右異μ路判定手段(50)による判定結果が否定判定であって、且つ前記左右の車輪(FR,FL,RR,RL)のうち低μ側の車輪に対する前記ABS開始判定手段(50)による判定結果が肯定判定である場合に、前記ESC閾値(KBC)を、前記ABS開始判定手段(50)による判定結果が否定判定である場合に比して大きな値に設定するESC閾値設定手段(50)とをさらに備え、前記制御手段(50)は、前記左右異μ路判定手段(50)による判定結果が否定判定である場合において、前記ESC開始判定手段(50)による判定結果が肯定判定であるときに、前記車両安定性制御を実行する請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の車両の制動制御装置。
【請求項7】
車両制動時に制動手段(18a,18b,18c,18d)によって車両の各車輪(FR,FL,RR,RL)に付与される制動力を調整することにより該各車輪(FR,FL,RR,RL)がロックすることを抑制するアンチロックブレーキ制御と、車両走行時に前記各車輪(FR,FL,RR,RL)が横方向にスリップすることを抑制する車両安定性制御とを実行可能な車両の制動制御方法において、
左側の車輪(FL,RL)が走行する路面のμ値と右側の車輪(FR,RR)が走行する路面のμ値とが異なる左右異μ路を車両が走行しているか否かを判定し、該判定結果が肯定判定である場合には、前記車両安定性制御の実行を禁止する一方、前記判定結果が否定判定である場合には、前記車両安定性制御の実行を許可するようにした車両の制動制御方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制動時に車両の各車輪に対する制動力を制御することにより、各車輪のロックを抑制する車両の制動制御装置、及び車両の制動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アンチロックブレーキ制御(「ABS制御」ともいう。)と、車両安定性制御(「ECS制御」ともいう。)とを共に実行可能な装置及び方法として、例えば特許文献1に記載の車両の制動制御装置及び車両の制動制御方法が提案されている。アンチロックブレーキ制御とは、車両制動時(特に、急ブレーキ時)にスリップ量が基準値以上となった車輪に付与する制動力の減少、増加及び保持を繰り返し実行する制御である。このような制御を行うことにより、特許文献1に記載の車両の制動制御装置では、車両制動時における車輪のロックが抑制されるため、搭乗者がブレーキペダルを踏込んでから車両が停止するまでの距離(すなわち、停止距離)の短縮化が図られるようになっている。
【0003】
また、車両安定性制御とは、車両の旋回時や車線変更(例えば、走行車線から追越し車線への車線変更)時に各車輪が車両の横方向へスリップ(いわゆる横滑り)した場合に、各車輪に対して適量の制動力を個別に付与したり、エンジンから駆動輪に伝達されるトルクの大きさを調整したりする制御である。このような制御を行うことにより、特許文献1に記載の車両の制動制御装置では、車両の姿勢が立て直されるため、車両の横滑りが抑制でき、車両安定性が確保されるようになっている。
【0004】
ところで、上記したアンチロックブレーキ制御と車両安定性制御とが同時に実行された場合には、各車輪に付与される制動力量が低下することがあり、このような場合には、車両を好適に制動できくなることがあった。そのため、特許文献1に記載の車両の制動制御装置は、アンチロックブレーキ制御の実行中には車両安定性制御の実行を禁止するようになっている。すなわち、アンチロックブレーキ制御と車両安定性制御との干渉を抑制することにより、車両の制動力の低下を抑制している。
【特許文献1】特開2001−71879号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の車両の制動制御装置において、車両が左右異μ路(車輪との摩擦力を示すμ値が左輪側と右輪側とで異なる路面)を走行する場合には、アンチロックブレーキ制御と車両安定性制御との干渉が回避されることにより、車両の制動力は確保されることになる。ところが、車両が左右異μ路ではない路面を走行する場合において、その車両が旋回したり、車線変更したりする場合には、車両安定性制御が実行されないことにより、車両が横滑りしてしまうおそれがあった。すなわち、特許文献1に記載の車両の制動制御装置及び車両の制動制御方法では、左右異μ路ではない路面を車両が走行する際にアンチロックブレーキ制御が実行された場合、車両の横滑りが発生し、車両における走行の安定性が低下してしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、走行中の車両にアンチロックブレーキ制御が実行された場合に、車両が走行する路面状態によらず、車両における制動力の低下を抑制すると共に、車両における走行の安定性を確保することができる車両制動制御装置及び車両の制動制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、車両の制動制御装置にかかる請求項1に記載の発明は、車両制動時に制動手段(18a,18b,18c,18d)によって車両の各車輪(FR,FL,RR,RL)に付与される制動力を調整することにより該各車輪(FR,FL,RR,RL)がロックすることを抑制するアンチロックブレーキ制御と、車両走行時に前記各車輪(FR,FL,RR,RL)が横方向にスリップすることを抑制する車両安定性制御とを実行可能な車両の制動制御装置(11)において、前記左側の車輪(FL,RL)が走行する路面のμ値と右側の車輪(FR,RR)が走行する路面のμ値とが異なる左右異μ路を車両が走行しているか否かを判定する左右異μ路判定手段(50)と、該左右異μ路判定手段(50)による判定結果が肯定判定である場合に、前記車両安定性制御の実行を禁止する一方、前記左右異μ路判定手段(50)による判定結果が否定判定である場合には、前記車両安定性制御の実行を許可する制御手段(50)とを備えたことを要旨とする。
【0008】
上記構成では、車両が左右異μ路を走行している場合には、車両安定性制御の実行が禁止されるため、アンチロックブレーキ制御と車両安定性制御が同時に実行されることはない。そのため、車両の左右異μ路走行中にアンチロックブレーキ制御と車両安定性制御とが干渉することにより、車両の制動力が低下することはない。また、車両が左右異μ路を走行していない場合には、車両安定性制御の実行が許可される。そのため、アンチロックブレーキ制御中に車両の旋回や車線変更をしたことにより、車両の横滑りが発生した場合には、車両安定性制御が実行されるため、車両における走行の安定性の低下が抑制される。したがって、走行中の車両にアンチロックブレーキ制御が実行された場合に、車両が走行する路面状態によらず、車両における制動力の低下を抑制すると共に、車両における走行の安定性を確保することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両の制動制御装置において、前記アンチロックブレーキ制御は前記車両の車輪(FR,FL,RR,RL)毎に実行されるようになっており、前記左右異μ路判定手段(50)は、前記左右の車輪(FR,FL,RR,RL)のうち何れか一方の車輪のみに前記アンチロックブレーキ制御が実行される場合に、左右異μ路を車両が走行していると判定することを要旨とする。
【0010】
上記構成では、左右の車輪のうち何れか一方の車輪のみに前記アンチロックブレーキ制御が実行される場合に、車両が左右異μ路を走行していると判定する。すなわち、左右の車輪のスリップ量を比較することにより、車両が左右異μ路を走行しているか否かを判定する場合に比して、制御の処理ステップを低減できる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の車両の制動制御装置において、前記左右の車輪(FR,FL,RR,RL)のスリップ量(SLP)をそれぞれ検出するスリップ量検出手段(SE1,SE2,SE3,SE4,50)をさらに備え、前記左右異μ路判定手段(50)は、前記スリップ量検出手段(SE1,SE2,SE3,SE4,50)が検出した前記左右の車輪(FR,FL,RR,RL)のスリップ量(SLP)を比較することにより、車両が左右異μ路を走行しているか否かを判定することを要旨とする。
【0012】
上記構成では、アンチロックブレーキ制御が左右の車輪に実行される前に、車両が左右異μ路を走行しているか否かを判定できる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の車両の制動制御装置において、前記車両の車輪(FR,FL,RR,RL)毎に前記アンチロックブレーキ制御の開始条件が成立したか否かを判定するABS開始判定手段(50)をさらに備え、前記制御手段(50)は、前記左右異μ路判定手段(50)による判定結果が肯定判定である場合において、前記左右の車輪(FR,FL,RR,RL)のうち低μ側の車輪に対する前記ABS開始判定手段(50)による判定結果が肯定判定であって、且つ高μ側の車輪に対する前記ABS開始判定手段(50)による判定結果が否定判定であるときに、前記低μ路側の車輪には前記アンチロックブレーキ制御を実行すると共に、前記高μ路側の車輪には前記制動手段(18a,18b,18c,18d)によって付与される制動力の増加率が低くなるようにしたことを要旨とする。
【0013】
上記構成では、低μ側の車輪のみにアンチロックブレーキ制御が実行される場合には、アンチロックブレーキ制御が実行されていない高μ側の車輪に付与される制動力の増加率が低くなる。そのため、高μ側の車輪に付与される制動力の増加率を低く設定しない従来の場合に比して、低μ側の制動力と高μ側の制動力との制動力差が大きくなることが抑制される。したがって、低μ側の制動力と高μ側の制動力との制動力差が大きくなることがないので、車両における走行の安定性が低下することを抑制できる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の車両の制動制御装置において、前記車両の車輪(FR,FL,RR,RL)毎に前記アンチロックブレーキ制御の開始条件が成立したか否かを判定するABS開始判定手段(50)をさらに備え、前記制御手段(50)は、前記左右異μ路判定手段(50)による判定結果が肯定判定である場合において、前記左右の車輪(FR,FL,RR,RL)のうち低μ側の車輪に対する前記ABS開始判定手段(50)による判定結果が肯定判定であって、且つ高μ側の車輪に対する前記ABS開始判定手段(50)による判定結果が否定判定であるときに、前記低μ路側の車輪には前記アンチロックブレーキ制御を実行すると共に、前記高μ側の車輪には前記低μ路側の車輪に実行される前記アンチロックブレーキ制御と同じ制御を実行するように前記制動手段(18a,18b、18c,18d)を制御することを要旨とする。
【0015】
上記構成では、低μ側の車輪のみにアンチロックブレーキ制御が実行される場合には、高μ側の車輪にも低μ側の車輪に対して実行されるアンチロックブレーキ制御が実行される。そのため、高μ側の車輪に付与される制動力が増加し続ける従来の場合に比して、低μ側の制動力と高μ側の制動力との制動力差が大きくなることが抑制される。したがって、低μ側の制動力と高μ側の制動力との制動力差が大きくなることがないので、車両における走行の安定性が低下することを抑制できる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の車両の制動制御装置において、前記車両の車輪(FR,FL,RR,RL)毎に前記アンチロックブレーキ制御の開始条件が成立したか否かを判定するABS開始判定手段(50)と、走行中の車両の目標挙動値(TBC)と実挙動値(RBC)との差が予め定めたESC閾値(KBC)以上となったか否かを判定するESC開始判定手段(50)と、前記左右異μ路判定手段(50)による判定結果が否定判定であって、且つ前記左右の車輪(FR,FL,RR,RL)のうち低μ側の車輪に対する前記ABS開始判定手段(50)による判定結果が肯定判定である場合に、前記ESC閾値(KBC)を、前記ABS開始判定手段(50)による判定結果が否定判定である場合に比して大きな値に設定するESC閾値設定手段(50)とをさらに備え、前記制御手段(50)は、前記左右異μ路判定手段(50)による判定結果が否定判定である場合において、前記ESC開始判定手段(50)による判定結果が肯定判定であるときに、前記車両安定性制御を実行することを要旨とする。
【0017】
上記構成では、車両が左右異μ路を走行していない場合において、アンチロックブレーキ制御が実行されているときに、車両安定性制御が実行されるタイミングを、ESC閾値が変更されない場合に比して遅らせることができる。すなわち、アンチロックブレーキ制御のみが車両に対して実行される時間が長くなることにより、車両の速度が充分に低下した状態で車両安定性制御が実行される。そのため、車両の制動力を充分に確保できると共に、車両における走行の安定性も確保できる。
【0018】
一方、車両の制動制御方法にかかる請求項7に記載の発明は、車両制動時に制動手段(18a,18b,18c,18d)によって車両の各車輪(FR,FL,RR,RL)に付与される制動力を調整することにより該各車輪(FR,FL,RR,RL)がロックすることを抑制するアンチロックブレーキ制御と、車両走行時に前記各車輪(FR,FL,RR,RL)が横方向にスリップすることを抑制する車両安定性制御とを実行可能な車両の制動制御方法において、左側の車輪(FL,RL)が走行する路面のμ値と右側の車輪(FR,RR)が走行する路面のμ値とが異なる左右異μ路を車両が走行しているか否かを判定し、該判定結果が肯定判定である場合には、前記車両安定性制御の実行を禁止する一方、前記判定結果が否定判定である場合には、前記車両安定性制御の実行を許可するようにしたことを要旨とする。
【0019】
上記構成では、請求項1に記載の発明の場合と同様の作用効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図6に従って説明する。なお、以下における本明細書中の説明においては、車両の進行方向(前進方向)を前方(車両前方)として説明する。また、特に説明がない限り、以下の記載における左右方向は、車両進行方向における左右方向と一致するものとする。
【0021】
図1に示すように、本実施形態における車両の制動制御装置11は、複数(本実施形態では4つ)ある車輪(右前輪FR、左前輪FL、右後輪RR及び左後輪RL)のうち、前輪FR,FLが駆動輪として機能する車両(いわゆる前輪駆動車)に搭載されている。車両の制動制御装置11は、マスタシリンダ12及びブースタ13を有する液圧発生装置14と、2つの液圧回路15,16を有する液圧制御装置(図1では二点鎖線で示す。)17を備えている。各液圧回路15,16は、液圧発生装置14に接続されると共に、各車輪FR,FL,RR,RLに対応して設けられたホイールシリンダ(制動手段)18a,18b,18c,18dに接続されている。また、車両の制動制御装置11には、液圧制御装置17を制御するための電子制御装置(「ECU」ともいう。)19が設けられている。
【0022】
液圧発生装置14には、ブレーキペダル20が設けられており、このブレーキペダル20が車両の搭乗者によって操作されたことに基づき、液圧発生装置14のマスタシリンダ12及びブースタ13が駆動するようになっている。また、マスタシリンダ12には、2つの出力ポート12a,12bが設けられており、各出力ポート12a,12bのうち一方の出力ポート12aには第1液圧回路15が接続されると共に、他方の出力ポート12bには第2液圧回路16が接続されている。また、液圧発生装置14には、ブレーキペダル20が操作された場合に電子制御装置19に向けて制動制御を開始させるための信号を送信するブレーキスイッチSW1が設けられている。
【0023】
液圧制御装置17には、第1液圧回路15内のブレーキ液圧を昇圧するためのポンプ21と、第2液圧回路16内のブレーキ液圧を昇圧するためのポンプ22と、各ポンプ21,22を同時に駆動させるモータMとが設けられている。また、各液圧回路15,16上にはブレーキオイルが貯留されるリザーバ23,24が設けられており、各リザーバ23,24内のブレーキオイルは、ポンプ21,22の駆動に基づき液圧回路15,16内に供給されるようになっている。また、各液圧回路15,16には、マスタシリンダ12内のブレーキ液圧を検出するための液圧センサPS1,PS2が設けられている。
【0024】
第1液圧回路15には、右前輪FRに対応するホイールシリンダ18aに接続されるホイールシリンダ18a用(右前輪FR用)の右前輪用経路15aと、左後輪RLに対応するホイールシリンダ18dに接続されるホイールシリンダ18d用(左後輪RL用)の左後輪用経路15bとが形成されている。そして、これら各経路15a,15b上には、常開型の電磁弁25,26と常閉型の電磁弁27,28とがそれぞれ設けられている。
【0025】
同様に、第2液圧回路16には、左前輪FLに対応するホイールシリンダ18bに接続されるホイールシリンダ18b用(左前輪FL用)の左前輪用経路16aと、右後輪RRに対応するホイールシリンダ18cに接続されるホイールシリンダ18c用(右後輪RR用)の右後輪用経路16bとが形成されている。そして、これら各経路16a,16b上には、常開型の電磁弁29,30と常閉型の電磁弁31,32とがそれぞれ設けられている。
【0026】
また、第1液圧回路15において各経路15a,15bに分岐された部位よりもマスタシリンダ12側には、常開型の比例電磁弁33が接続されると共に、この比例電磁弁33と並列関係をなすリリーフ弁34が接続されている。そして、比例電磁弁33とリリーフ弁34とにより比例差圧弁35が構成されている。比例差圧弁35は、電子制御装置19による制御に基づき、比例差圧弁35よりもマスタシリンダ12側とホイールシリンダ18a,18d側とで液圧差(ブレーキ液圧の差)を発生させることができる。なお、この液圧差の最大値は、リリーフ弁34を構成するばね34aの付勢力に基づく値となる。また、第1液圧回路15には、リザーバ23とポンプ21との間からマスタシリンダ12側に向けて分岐された分岐液圧路15cが形成されており、この分岐液圧路15c上には常閉型の電磁弁36が接続されている。
【0027】
同様に、第2液圧回路16において各経路16a,16bに分岐された部位よりもマスタシリンダ12側には、常開型の比例電磁弁37が接続されると共に、この比例電磁弁37と並列関係をなすリリーフ弁38が接続されている。そして、比例電磁弁37とリリーフ弁38とにより比例差圧弁39が構成されている。比例差圧弁39は、電子制御装置19による制御に基づき、比例差圧弁39よりもマスタシリンダ12側とホイールシリンダ18a,18d側とで液圧差(ブレーキ液圧の差)を発生させることができる。なお、この液圧差の最大値は、リリーフ弁38を構成するばね38aの付勢力に基づく値となる。また、第2液圧回路16には、リザーバ24とポンプ22との間からマスタシリンダ12側に向けて分岐された分岐液圧路16cが形成されており、この分岐液圧路16c上には常閉型の電磁弁40が接続されている。
【0028】
ここで、上記各電磁弁25〜32のソレノイドコイルが通電状態にある場合及び非通電状態にある場合の各ホイールシリンダ18a〜18d内のブレーキ液圧の変化について説明する。
【0029】
まず、各比例電磁弁33,37が開き状態であると共に、分岐液圧路15c,16c上の電磁弁36,40が閉じ状態である場合について説明する。
各電磁弁25〜32のソレノイドコイルが全て非通電状態にある場合には、常開型の電磁弁25,26,29,30は開き状態のままであると共に、常閉型の電磁弁27,28,31,32は閉じ状態のままである。そのため、マスタシリンダ12からブレーキオイルが各経路15a,15b,16a,16bを介して各ホイールシリンダ18a〜18d内に流入し、各ホイールシリンダ18a〜18d内のブレーキ液圧は上昇することになる。
【0030】
一方、各電磁弁25〜32のソレノイドコイルが全て通電状態にある場合には、常開型の電磁弁25,26,29,30が閉じ状態となると共に、常閉型の電磁弁27,28,31,32が開き状態となる。そのため、各ホイールシリンダ18a〜18d内からブレーキオイルが各経路15a,15b,16a,16bを介してリザーバ23,24へと流出し、各ホイールシリンダ18a〜18d内のブレーキ液圧は降下することになる。
【0031】
そして、各電磁弁25〜32のうち常開型の電磁弁25,26,29,30のソレノイドコイルのみが通電状態にある場合には、全ての電磁弁25〜32が閉じ状態となる。そのため、各経路15a,15b,16a,16bを介したブレーキオイルの流動が規制される結果、各ホイールシリンダ18a〜18d内のブレーキ液圧はその液圧レベルが保持されることになる。
【0032】
次に、各比例電磁弁33,37が閉じ状態であると共に、分岐液圧路15c,16c上の電磁弁36,40が閉じ状態である場合について説明する。
各電磁弁25〜32のソレノイドコイルが全て非通電状態にある場合には、上記ポンプ21,22が駆動することにより、リザーバ23,24内のブレーキオイルが各経路15a,15b,16a,16bを介して各ホイールシリンダ18a〜18d内に流入する。そのため、各ホイールシリンダ18a〜18d内のブレーキ液圧は上昇することになる。
【0033】
一方、各電磁弁25〜32のソレノイドコイルが全て通電状態にある場合には、各ホイールシリンダ18a〜18d内からブレーキオイルが各経路15a,15b,16a,16bを介してリザーバ23,24へと流出する。そのため、各ホイールシリンダ18a〜18d内のブレーキ液圧は降下することになる。
【0034】
そして、各電磁弁25〜32のうち常開型の電磁弁25,26,29,30のソレノイドコイルのみが通電状態にある場合には、各経路15a,15b,16a,16bを介したブレーキオイルの流動が規制される。そのため、各ホイールシリンダ18a〜18d内のブレーキ液圧はその液圧レベルが保持されることになる。
【0035】
図2に示すように、電子制御装置19は、制御手段としてのCPU50、ROM51、及びRAM52などを備えたデジタルコンピュータと、各装置を駆動させるための駆動回路(図示略)とを主体として構成されている。ROM51には、液圧制御装置17(モータM、各電磁弁25〜32,36,40及び比例電磁弁33,37の駆動)を制御するための制御プログラム、及び各種閾値(後述するスリップ量閾値、車輪減速度閾値など)が記憶されている。また、RAM52には、車両の制動制御装置11の駆動中に適宜書き換えられる各種の情報が記憶されるようになっている。
【0036】
また、電子制御装置19の入力側インターフェース(図示略)には、上記ブレーキスイッチSW1、液圧センサPS1,PS2、及び各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度を検出するための車輪速度センサSE1,SE2,SE3,SE4がそれぞれ接続されている。また、入力側インターフェースには、ステアリングホイール(図示略)の操舵角を検出するための操舵角センサSE5、実際に車両に働く横方向加速度(いわゆる「横G」)を検出するための横GセンサSE6、及び実際に車両に働くヨーレイトを検出するためのヨーレイトセンサSE7がそれぞれ接続されている。すなわち、CPU50は、ブレーキスイッチSW1、液圧センサPS1,PS2、車輪速度センサSE1〜SE4、操舵角センサSE5、横GセンサSE6及びヨーレイトセンサSE7からの各信号を受信するようになっている。
【0037】
一方、電子制御装置19の出力側インターフェース(図示略)には、各ポンプ21,22を駆動させるためのモータM、各電磁弁25〜32,36,40及び比例電磁弁33,37が接続されている。そして、CPU50は、上記スイッチSW1及び各センサPS1,PS2,SE1〜SE7からの入力信号に基づき、モータM、各電磁弁25〜32,36,40及び比例電磁弁33,37の動作を個別に制御するようになっている。
【0038】
次に、車両の走行時に本実施形態のCPU50が実行する制御処理ルーチンについて、図3、図4及び図5に示すフローチャートと図6のタイミングチャートに基づき以下説明する。図3にはアンチロックブレーキ制御の実行の有無を設定するためのABS開始処理ルーチンが示されると共に、図4には車両安定性制御の実行の有無を設定するためのESC開始処理ルーチンが示されている。また、図5には左右異μ路を車両が走行中であるか否かを判定するための左右異μ路走行判定処理ルーチンが示されている。
【0039】
最初に図3に示すABS開始処理ルーチンについて説明する。
さて、CPU50は、ブレーキスイッチSW1からの信号を受信している場合、所定周期毎にABS開始処理ルーチンを実行する。そして、このABS開始処理ルーチンにおいて、CPU50は、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度センサSE1〜SE4から受信した信号に基づき、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度VWをそれぞれ検出する(ステップS10)。そして、CPU50は、ステップS10にて検出した各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度VWのうち最も車輪速度VWの速い車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度VWを車両の車体速度VSとして設定する(ステップS11)。
【0040】
続いて、CPU50は、ステップS10にて検出した各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度VWとステップS11にて設定した車両の車体速度VSとから各車輪FR,FL,RR,RLのスリップ量SLPをそれぞれ検出する(ステップS12)。すなわち、各車輪FR,FL,RR,RLのスリップ量SLPは、前輪FR,FLの車輪速度VWから車両の車体速度VSを引いた値となる。この点で、本実施形態では、車輪速度センサSE1〜SE4及びCPU50が、各車輪FR,FL,RR,RLのスリップ量SLPをそれぞれ検出するスリップ量検出手段として機能する。
【0041】
そして、CPU50は、ステップS10にて検出した各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度VWを微分することにより、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪減速度DVWをそれぞれ検出する(ステップS13)。続いて、CPU50は、車輪FR,FL,RR,RLのスリップ量SLPが予め設定したスリップ量閾値KSLP以上であるか否かを判定する(ステップS14)。このスリップ量閾値KSLPは、アンチロックブレーキ制御を開始させるための必要条件となる閾値であり、実験やシミュレーションなどによって設定される。そして、ステップS14の判定結果が否定判定(SLP<KSLP)である場合、CPU50は、ABS開始処理ルーチンを終了する。
【0042】
一方、ステップS14の判定結果が肯定判定(SLP≧KSLP)である場合、CPU50は、車輪FR,FL,RR,RLの車輪減速度DVWが予め設定された車輪減速度閾値KDVW以上であるか否かを判定する(ステップS15)。この車輪減速度閾値KDVWは、アンチロックブレーキ制御を開始させるための必要条件となる閾値であり、実験やシミュレーションなどによって設定されている。そして、ステップS15の判定結果が否定判定(DVW<KDVW)である場合、CPU50は、ABS開始処理ルーチンを終了する。
【0043】
一方、ステップS15の判定結果が肯定判定(DVW≧KDVW)である場合、CPU50は、アンチロックブレーキ制御の開始条件が成立した車輪FR,FL,RR,RLに対してアンチロックブレーキ制御を開始する。すなわち、CPU50は、アンチロックブレーキ制御の開始条件が成立した車輪FR,FL,RR,RLの制動力の減少、増加及び保持を順時実行することにより、車輪FR,FL,RR,RLがロックすることを抑制する。この点で、本実施形態では、CPU50が、車輪FR,FL,RR,RL毎にアンチロックブレーキ制御の開始条件が成立したか否かを判定するABS開始判定手段としても機能する。その後、CPU50は、ABS開始処理ルーチンを終了する。
【0044】
次に図4に示すESC開始処理ルーチンについて説明する。
さて、CPU50は、車両が走行している場合、所定周期毎にESC開始処理ルーチンを実行する。そして、このESC開始処理ルーチンにおいて、CPU50は、操舵角センサSE5、横GセンサSE6及びヨーレイトセンサSE7からの各信号に基づき、搭乗者による車両の運転に対して車両がどのような挙動を示すかを予め設定する車両の目標挙動値TBCを検出(演算)する(ステップS20)。具体的には、CPU50は、操舵角センサSE5からの信号に基づきステアリングホイールの操舵角を検出すると共に、横GセンサSE6からの信号に基づき車両の横方向加速度を検出する。また、CPU50は、ヨーレイトセンサSE7からの信号に基づき車両のヨーレイトを検出する。そして、CPU50は、上記ステアリングホイールの操舵角、車両の横方向加速度及び車両のヨーレイトに基づき演算処理することにより、車両の目標挙動値TBCを検出する。
【0045】
続いて、CPU50は、操舵角センサSE5、横GセンサSE6及びヨーレイトセンサSE7からの各信号に基づき、搭乗者による車両の運転に対して車両が実際にどのような挙動を示したかを示す実挙動値RBCを検出する(ステップS21)。そして、CPU50は、ステップS20にて検出した車両の目標挙動値TBCとステップS21にて検出した車両の実挙動値RBCとの差が予め設定したESC閾値KBC以上であるか否かを判定する(ステップS22)。このESC閾値KBCは、車両安定性制御を開始させるための必要条件となる閾値であり、実験やシミュレーションなどによって設定されている。この点で、本実施形態では、CPU50が、ESC開始判定手段としても機能する。
【0046】
そして、ステップS22の判定結果が否定判定((TBC−RBC)<KBC)である場合、CPU50は、ESC開始処理ルーチンを終了する。一方、ステップS22の判定結果が肯定判定((TBC−RBC)≧KBC)である場合、CPU50は、後述する左右異μ路走行判定処理ルーチンにて車両安定性制御の実行が許可されているか否かを判定する(ステップS23)。この判定結果が否定判定である場合、CPU50は、車両安定性制御の実行が禁止されているものと判断し、ESC開始処理ルーチンを終了する。一方、ステップS23の判定結果が肯定判定である場合、CPU50は、車両安定性制御の実行が許可されているものと判断し、車両安定性制御を実行する。
【0047】
例えば車両が右方向に旋回している場合において、車両が内側(右側)に切れ込んでいってしまういわゆるオーバーステアリングのときには、CPU50は、右側の車輪FR,RR用のホイールシリンダ18a,18c内のブレーキ液圧を減圧することにより、右側の車輪FR,RRの制動力を減少させる。また、CPU50は、左側の車輪FL,RL用のホイールシリンダ18b,18d内のブレーキ液圧を増圧することにより、左側の車輪FL,RLの制動力を増加させる。
【0048】
また、例えば車両が右方向に旋回している場合において、車両が外側(左側)にふくらんでいってしまういわゆるアンダーステアリングのときには、CPU50は、右側の車輪FR,RR用のホイールシリンダ18a,18c内のブレーキ液圧を増圧することにより、右側の車輪FR,RRの制動力を増加させる。また、CPU50は、左側の車輪FL,RL用のホイールシリンダ18b,18d内のブレーキ液圧を減圧することにより、左側の車輪FL,RLの制動力を減少させる。すなわち、CPU50は、各ホイールシリンダ18a〜18dによって各車輪FR,FL,RR,RLに付与される制動力を個別に調整することにより、車両走行時に各車輪FR,FL,RR,RLが横方向にスリップすることを抑制する。その後、CPU50は、ESC開始処理ルーチンを終了する。
【0049】
次に図5に示す左右異μ路走行判定処理ルーチンについて図6に示すタイミングチャート共に説明する。
さて、CPU50は、車両が走行している場合、所定周期毎に左右異μ路走行判定処理ルーチンを実行する。そして、この左右異μ路走行判定処理ルーチンにおいて、CPU50は、各車輪FR,FL,RR,RLのうち少なくとも一つの車輪に対してアンチロックブレーキ制御が実行されているか否かを判定する(ステップS30)。この判定結果が否定判定である場合、CPU50は、何れの車輪FR,FL,RR,RLに対してもアンチロックブレーキ制御が実行されていないものと判断し、その処理を後述するステップS34に移行する。
【0050】
一方、ステップS30の判定結果が肯定判定である場合、CPU50は、車輪との摩擦力を示すμ値が左輪側と右輪側とで異なる左右異μ路を車両が走行中であるか否かを判定する(ステップS31)。具体的には、CPU50は、右側の車輪FR,RRにアンチロックブレーキ制御が実行される一方、左側の車輪FL,RLにアンチロックブレーキ制御が実行されていないと検知した場合に、左右異μ路(この場合、右側が低μ路であると共に左側が高μ路)を車両が走行中であると判断する。また、CPU50は、左側の車輪FL,RLにアンチロックブレーキ制御が実行される一方、右側の車輪FR,RRにアンチロックブレーキ制御が実行されていないと検知した場合に、左右異μ路(この場合、左側が低μ路であると共に右側が高μ路)を車両が走行中であると判断する。一方、CPU50は、左右の各車輪FR,FL,RR,RLにそれぞれアンチロックブレーキ制御が実行されている場合には、車両が左右異μ路を走行していないものと判断する。この点で、CPU50が、左右の車輪FR,FL,RR,RLのうち何れか一方の車輪のみにアンチロックブレーキ制御が実行される場合に、左右異μ路を車両が走行していると判定する左右異μ路判定手段としても機能する。
【0051】
そして、ステップS31の判定結果が肯定判定である場合、CPU50は、車両安定性制御の実行を禁止し、高μ路側の車輪(例えば左側の車輪FL,RL)にホイールシリンダ18b,18dから付与される制動力の増加率を抑制させる(ステップS32)。その後、CPU50は、左右異μ路走行判定処理ルーチンを終了する。
【0052】
ここで、右側が低μ路であると共に左側が高μ路である左右異μ路を走行している場合について説明する。この場合、搭乗者によるブレーキペダル20の踏込みにより各車輪FR,FL,RR,RLに付与される制動力が増加すると、低μ路側となる右側の車輪FR,RRのスリップ量SLPの増加率は、高μ路側となる左側の車輪FL,RLのスリップ量SLPの増加率よりも大きくなる。そのため、図6に示すように、左側の車輪FL,RLのスリップ量SLP≧スリップ量閾値KSLP及び左側の車輪FL,RLの車輪減速度DVW≧車輪減速度閾値KDVWとなる前に、右側の車輪FR,RRのスリップ量SLP≧スリップ量閾値KSLP及び右側の車輪FR,RRの車輪減速度DVW≧車輪減速度閾値KDVWになる。換言すると、左側の車輪FL,RLのアンチロックブレーキ制御の開始条件が満たされる前に、右側の車輪FR,RRのアンチロックブレーキ制御の開始条件が満たされたことになる。
【0053】
すると、図6に実線で示すように、右側の車輪FR,FLに対してアンチロックブレーキ制御が実行される。すなわち、右側の車輪FR,FL用のホイールシリンダ18a,18c内のブレーキ液圧が減圧され、その後、ホイールシリンダ18a,18c内のブレーキ液圧は、増圧、保持及び減圧が繰り返し実行される。そのため、右側の車輪FR,FLにホイールシリンダ18a,18cによって付与される制動力は、ブレーキ液圧の増減変化に対応するように、増加、保持及び減少が繰り返される。
【0054】
上記のように右側の車輪FR,FLに対してアンチロックブレーキ制御が実行されている場合、従来の車両の制動制御方法では、左側の車輪FL,RLにホイールシリンダ18b,18dによって付与される制動力が増加し続ける。すなわち、図6に一点鎖線で示すように、左側の車輪FL,RLにホイールシリンダ18b,18dによって付与される制動力は、左側の車輪FL,RLのスリップ量≧スリップ量閾値KSLP及び左側の車輪FL,RLの車輪減速度DVW≧車輪減速度閾値KDVWとなるまでは増加し続ける。そのため、右側の車輪FR,RRの制動力と左側の車輪FL,RLの制動力とでは、制動力差が大きくなってしまい、車両における走行の安定性が低下するおそれがある。
【0055】
ところが、本実施形態の車両の制動制御方法では、図6に破線で示すように、左側の車輪FL,RLにホイールシリンダ18b,18dによって付与される制動力は、右側の車輪FR,RRのスリップ量SLP≧スリップ量閾値KSLP及び右側の車輪FR,RRの車輪減速度DVW≧車輪減速度閾値KDVWとなると、その増加率が減少する。そのため、本実施形態の車両の制動制御方法では、従来の車両の制動制御方法の場合に比して、右側の車輪FR,RRの制動力と左側の車輪FL,RLの制動力との制動力差が小さくなる。したがって、左右異μ路を車両が走行する際において、低μ側の右側の車輪FR,RRに対してアンチロックブレーキ制御が実行された場合に、車両における走行の安定性の低下が抑制される。
【0056】
一方、ステップS31の判定結果が否定判定である場合、CPU50は、左右の各車輪FR,FL,RR,RLに対してそれぞれアンチロックブレーキ制御が実行されているため、車両が左右異μ路を走行していないものと判断する。そして、CPU50は、ESC閾値KBCを、何れの車輪FR,FL,RR,RLにもアンチロックブレーキ制御が実行されていない場合に比して大きな値に設定し(ステップS33)、その処理を後述するステップS35に移行する。この点で、本実施形態では、CPU50が、ESC閾値設定手段としても機能する。一方、ステップS34において、CPU50は、ESC閾値KBCを、左右の各車輪FR,FL,RR,RLに対してそれぞれアンチロックブレーキ制御が実行されている場合に比して小さな値(通常の閾値)に設定し、その処理を後述するステップS35に移行する。
【0057】
そして、ステップS35において、CPU50は、車両安定性制御の実行を許可する。すなわち、CPU50は、車両が左右異μ路を走行していない場合において、各車輪FR,FL,RR,RLに対してアンチロックブレーキ制御が実行されていても、車両の目標挙動値TBCと実挙動値RBCとの差がステップS33にて設定したESC閾値KBC以上となったときに、車両安定性制御を実行する。また、車両が左右異μ路を走行しているか否かに関わらず、何れの車輪FR,FL,RR,RLにおいてもアンチロックブレーキ制御が実行されていない場合において、車両の目標挙動値TBCと実挙動値RBCとの差がステップS34にて設定したESC閾値KBC以上となったときに、車両安定性制御を実行する。その後、CPU50は、左右異μ路走行判定処理ルーチンを終了する。
【0058】
したがって、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)車両が左右異μ路を走行している場合には、車両安定性制御の実行が禁止されるため、アンチロックブレーキ制御と車両安定性制御が同時に実行されることはない。そのため、車両の左右異μ路走行中にアンチロックブレーキ制御と車両安定性制御とが干渉することにより、車両の制動力が低下することはない。また、車両が左右異μ路を走行していない場合には、車両安定性制御の実行が許可される。そのため、アンチロックブレーキ制御中に車両の旋回や車線変更をしたことにより、車両の横滑りが発生した場合、車両安定性制御が実行されるため、車両における走行の安定性の低下が抑制される。したがって、走行中の車両にアンチロックブレーキ制御が実行された場合に、車両が走行する路面状態によらず、車両における制動力の低下を抑制すると共に、車両における走行の安定性を確保することができる。
【0059】
(2)左右の車輪FR,FL,RR,RLのうち何れか一方の車輪(例えば、右側の車輪FR,RR)のみにアンチロックブレーキ制御が実行される場合に、車両が左右異μ路を走行していると判定する。すなわち、左右の車輪FR,FL,RR,RLのスリップ量SLPを比較することにより、車両が左右異μ路を走行しているか否かを判定する場合に比して、制御の処理ステップを低減できる。
【0060】
(3)低μ側の車輪(例えば右側の車輪FR,RR)のみにアンチロックブレーキ制御が実行される場合には、アンチロックブレーキ制御が実行されていない高μ側の車輪(例えば左側の車輪FL,RL)に付与される制動力の増加率が低くなる。そのため、高μ側の車輪に付与される制動力の増加率を低く設定しない従来の場合に比して、低μ側の制動力と高μ側の制動力との制動力差が大きくなることが抑制される。したがって、低μ側の制動力と高μ側の制動力との制動力差が大きくなることがないので、車両における走行の安定性が低下することを抑制できる。
【0061】
(4)車両が左右異μ路を走行していない場合において、アンチロックブレーキ制御が実行されているときに、車両安定性制御が実行されるタイミングを、ESC閾値KBCが変更されない場合に比して遅らせることができる。すなわち、アンチロックブレーキ制御のみが車両に対して実行される時間が長くなることにより、車両の車体速度VSが充分に低下した状態で車両安定性制御が実行される。そのため、車両の制動力を充分に確保できると共に、車両における走行の安定性も確保できる。
【0062】
なお、実施形態は以下のような別の実施形態(別例)に変更してもよい。
・実施形態において、車両が左右異μ路を走行していない状態でアンチロックブレーキ制御が実行されている場合に、ESC閾値KBCを設定変更しなくてもよい。
【0063】
・実施形態において、低μ側の車輪(例えば右側の車輪FR,RR)のみにアンチロックブレーキ制御が実行される場合、高μ側の車輪(例えば左側の車輪FL,RL)には、低μ側の車輪に実行されるアンチロックブレーキ制御と同じ制御を実行するようにしてもよい。すなわち、低μ側の車輪に対してホイールシリンダ18a,18cから図6に実線で示すような制動力が付与された場合、高μ側の車輪にも、ホイールシリンダ18b,18dから図6に実線で示すような制動力が付与されることになる。このようにした場合、高μ側の車輪に付与される制動力が増加し続ける従来の場合に比して、低μ側の制動力と高μ側の制動力との制動力差が大きくなることが抑制される。したがって、低μ側の制動力と高μ側の制動力との制動力差が大きくなることがないので、車両における走行の安定性が低下することを抑制できる。
【0064】
・実施形態において、左側の車輪FL,RLのスリップ量SLPと右側の車輪FR,RRのスリップ量SLPを比較することにより、車両が左右異μ路を走行しているか否かを判定してもよい。この場合、車輪速度センサSE1〜SE4及びCPU50が、左右異μ路判定手段として機能することになる。このように構成した場合、アンチロックブレーキ制御が左右の車輪FR,FL,RR,RLに実行される前に、車両が左右異μ路を走行しているか否かを判定できる。
【0065】
・実施形態において、ABS開始処理ルーチンでは、ステップS14及びステップS15のうち何れか一方が肯定判定となった場合に、アンチロックブレーキ制御が実行されるようにしてもよい。
【0066】
・実施形態において、車輪速度センサを設け、この車輪速度センサからの信号に基づき、車両の車体速度VSを検出するようにしてもよい。
・実施形態において、前輪駆動車に搭載された車両の制動制御装置11ではなく、後輪駆動車に搭載される車両の制動制御装置に具体化してもよい。また、四輪駆動車に搭載される車両の制動制御装置に具体化してもよい。
【0067】
・実施形態において、第1液圧回路15には右前輪FR用のホイールシリンダ18aと左前輪FL用のホイールシリンダ18bとが接続されると共に、第2液圧回路16には右後輪RR用のホイールシリンダ18cと左後輪RL用のホイールシリンダ18dとが接続されるような回路構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本実施形態における車両の制動制御装置のブロック図。
【図2】本実施形態における電子制御装置のブロック図。
【図3】ABS開始処理ルーチンを示すフローチャート。
【図4】ESC開始処理ルーチンを示すフローチャート。
【図5】左右異μ路走行判定処理ルーチンを示すフローチャート。
【図6】低μ側の車輪に付与される制動力の増減変化と高μ側の車輪に付与される制動力と増減変化をそれぞれ示すタイミングチャート。
【符号の説明】
【0069】
11…車両の制動制御装置、18a〜18d…ホイールシリンダ(制動手段)、50…CPU(左右異μ路判定手段、制御手段、スリップ量検出手段、ABS開始判定手段、ESC閾値判定手段、ESC閾値設定手段)、FL,RL…左側の車輪、FR,RR…右側の車輪、KBC…ESC閾値、RBC…実挙動値、SE1〜SE4…車輪速度センサ(スリップ量検出手段)、SLP…スリップ量、TBC…目標挙動値。




 

 


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