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発明の名称 負圧式倍力装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−55397(P2007−55397A)
公開日 平成19年3月8日(2007.3.8)
出願番号 特願2005−242282(P2005−242282)
出願日 平成17年8月24日(2005.8.24)
代理人 【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
発明者 廣田 宣之
要約 課題
ブレーキの急作動時においても、ブーツの蛇腹部をバルブピストンのストロークに追従してスムーズに撓むようにした。

解決手段
バルブピストン8を覆う軸方向に伸縮可能な蛇腹部26bを形成したブーツ26を備え、該ブーツの一端をブースタシェル1に係合し、ブーツの他端を入力部材20に形成した環状溝23aに嵌合し、該環状溝に嵌合するブーツの平面部26aに大気弁31bに大気を導入する通気穴26cを形成し、ブーツの平面部および該平面部より前記蛇腹部の方向に屈曲する屈曲部26b1の剛性を高めた。
特許請求の範囲
【請求項1】
ブースタシェル(1)を区画部材(4)により変圧室(6)と定圧室(5)とに区画し、該区画部材にバルブピストン(8)の基端部(8a)を固着し、前記変圧室と前記定圧室の圧力差に基づく前記区画部材の出力を前記バルブピストンから出力ロッド(14)に反力部材(17)を介して伝達し、前記反力部材と連携して作用するプランジャ(21)とブレーキペダル(25)によって軸動される入力ロッド(23)とを連結して入力部材(20)とし、負圧弁座(8k)および大気弁座(21b)を前記バルブピストンおよび前記プランジャに形成し、該負圧弁座および前記大気弁座に接離して前記変圧室を前記定圧室および大気に連通、遮断する負圧弁(31a)および大気弁(31b)を設けた負圧式倍力装置において、前記バルブピストンを覆う軸方向に伸縮可能な蛇腹部(26b)を形成したブーツ(26)を備え、該ブーツの一端を前記ブースタシェルに係合し、前記ブーツの他端を前記入力部材に形成した環状溝(23a)に嵌合し、該環状溝に嵌合する前記ブーツの平面部(26a)に前記大気弁に大気を導入する通気穴(26c)を形成し、前記ブーツの平面部および該平面部より前記蛇腹部の方向に屈曲する屈曲部(26b1)の剛性を高めたことを特徴とする負圧式倍力装置。
【請求項2】
請求項1において、前記ブーツの平面部および前記屈曲部の肉厚を大きくしたことを特徴とする負圧式倍力装置。
【請求項3】
請求項1において、前記ブーツの平面部および前記屈曲部に、円周上複数のリブ(126a、126b1)をそれぞれ形成したことを特徴とする負圧式倍力装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかにおいて、前記屈曲部を、前記蛇腹部の少なくとも1山によって構成したことを特徴とする負圧式倍力装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の負圧式倍力装置に関し、特にブレーキ作動時の伸縮追従性に優れたブーツを備えた負圧式倍力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、負圧式倍力装置においては、ブレーキペダルが踏み込まれて、入力ロッドによりプランジャがバルブピストンに対して相対的に前進されると、負圧弁が負圧弁座に当接して変圧室と定圧室との連通を遮断するとともに、大気弁座と大気弁とが開離され、変圧室に外気より大気が導入される。これにより、変圧室と定圧室との圧力差によってバルブピストンが入力ロッドおよびプランジャの前進作動に追従して前方に移動され、マスタピストンが押動されて、ブレーキペダルの踏力に応じたブレーキ油圧がマスタシリンダに発生される。
【0003】
バルブピストンは変圧室と定圧室との圧力差に応じた作動力で反力部材を弾性変形してマスタピストンを押動するため、反力部材の弾性変形により、反力部材がプランジャを後方へ押圧する。これにより、プランジャが後退させられ、大気弁座が大気弁に着座して大気と変圧室との連通を遮断し、所望のブレーキ油圧を保持するようになっている。
【0004】
ところで、ブレーキペダルが急速に踏み込まれた緊急ブレーキ時においては、ジャンピング特性を変化させて通常ブレーキ時より大きなブレーキ力を出力できるようにした緊急ブレーキ機能を備えた負圧式倍力装置が、例えば特許文献1に記載されているように公知である。
【特許文献1】特開2005−170383号公報(段落0035〜0037、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1に記載されたような緊急ブレーキ機能を備えた負圧式倍力装置においては、ブレーキペダルの急速な踏み込みに伴うバルブピストンの前進作動時に、図6に示すように、ブーツ1の蛇腹部1bがスムーズに撓まず、入力ロッド2の嵌合部2aに嵌合するブーツ1の平面部1aだけが円錐状に傾斜するように撓み、最悪の場合、ブーツ1の平面部1aが入力ロッド2の嵌合部2aより離脱する恐れがある。ブーツ1の平面部1aが入力ロッド2の嵌合部2aより離脱すると、バルブピストン3の開口部に配設された消音用のフェルトからなるサイレンサ4が外部に浮き上がる現象を招き、これによってサイレンサ4による消音機能が低下し、ブレーキ作動時のエア吸入音が大きくなる問題を発生する。
【0006】
このような問題は、通常のブレーキ機能を備えた負圧式倍力装置にはほとんど発生しないが、緊急ブレーキ機能を備えた負圧式倍力装置において発生しやすくなる。これは、緊急ブレーキ機能を備えた負圧式倍力装置においては、限られたスペース内に緊急ブレーキ機能部品を組み込まなければならない関係上、サイレンサ等の組み込み状態が窮屈となり、サイレンサによってブーツの平面部が押圧される傾向となるためであり、このために、上記したようにブーツの平面部が撓むと、ブーツの平面部がサイレンサによる押出し作用も手伝って入力ロッドの嵌合部より離脱しやすくなるのである。
【0007】
本発明は係る従来の不具合を解消するためになされたもので、ブレーキの急作動時においても、バルブピストンのストロークに追従してブーツの蛇腹部がスムーズに撓むようにした負圧式倍力装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、ブースタシェルを区画部材により変圧室と定圧室とに区画し、該区画部材にバルブピストンの基端部を固着し、前記変圧室と前記定圧室の圧力差に基づく前記区画部材の出力を前記バルブピストンから出力ロッドに反力部材を介して伝達し、前記反力部材と連携して作用するプランジャとブレーキペダルによって軸動される入力ロッドとを連結して入力部材とし、負圧弁座および大気弁座を前記バルブピストンおよび前記プランジャに形成し、該負圧弁座および前記大気弁座に接離して前記変圧室を前記定圧室および大気に連通、遮断する負圧弁および大気弁を設けた負圧式倍力装置において、前記バルブピストンを覆う軸方向に伸縮可能な蛇腹部を形成したブーツを備え、該ブーツの一端を前記ブースタシェルに係合し、前記ブーツの他端を前記入力部材に形成した環状溝に嵌合し、該環状溝に嵌合する前記ブーツの平面部に前記大気弁に大気を導入する通気穴を形成し、前記ブーツの平面部および該平面部より前記蛇腹部の方向に屈曲する屈曲部の剛性を高めたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記ブーツの平面部および前記屈曲部の肉厚を大きくしたことを特徴とする負圧式倍力装置。
【0010】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記ブーツの平面部および前記屈曲部に、円周上複数のリブ(126a、126b1)をそれぞれ形成したことを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1ないし請求項3のいずれかにおいて、前記屈曲部を、前記蛇腹部の少なくとも1山によって構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
上記のように構成した請求項1に係る発明によれば、バルブピストンを覆うブーツの平面部および平面部より蛇腹部の方向に屈曲する屈曲部の剛性を高めたので、緊急ブレーキ作動時に、バルブピストンが入力ロッドおよびプランジャの前進作動に追従して前進作動されると、平面部および屈曲部が恰も剛体として機能して、蛇腹部がスムーズに伸縮されるようになる。従って、急作動時においても、平面部が傾くことがないので、平面部が入力ロッドの環状溝より抜け出すことがなく、サイレンサの浮き出しを防止でき、サイレンサによる消音機能が低下することがない。
【0013】
上記のように構成した請求項2に係る発明によれば、ブーツの平面部および屈曲部の肉厚を他の蛇腹部の肉厚より大きくするだけの簡単な構成によって、ブーツの平面部および屈曲部の剛性を高めることができる。
【0014】
上記のように構成した請求項3に係る発明によれば、ブーツの平面部および屈曲部に円周上複数のリブを形成するだけの簡単な構成によって、ブーツの平面部および屈曲部の剛性を高めることができる。
【0015】
上記のように構成した請求項4に係る発明によれば、屈曲部を蛇腹部の少なくとも1山によって構成したので、ブーツの平面部および少なくとも1山の蛇腹部を恰も剛体として機能でき、他の蛇腹部をスムーズに伸縮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る負圧式倍力装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、ブースタシェル1は、フロントシェル2およびリアシェル3から構成され、両シェル2,3間には、区画部材としてのフレキシブルなダイヤフラム4が外周縁のビードで気密的に挟着され、ブースタシェル1の内部を定圧室5と変圧室6とに区画している。ダイヤフラム4には円盤状のプレート7が定圧室5側で重合されている。ダイヤフラム4およびプレート7には円筒状のバルブピストン8の基端部8aの外周面が気密的に固着され、基端部8aの前端面が定圧室5に露出している。フロントシェル2には負圧導入管10が取付けられ、定圧室5は負圧導入管10を介してエンジンの吸気マニホールドに連通されてエンジン作動中は常に負圧に維持されている。
【0017】
リアシェル3の中心部は、図2に示すように、外方に屈曲されて円筒状の突出部3aが後方に向けて突設され、軸線上に貫通孔3bが形成されている。バルブピストン8には基端部8aから摺動円筒部8bが後方に突設され、摺動円筒部8bは貫通孔3bを貫通してリアシェル3の突出部3aから後方に突出されている。貫通穴3bの内周面と摺動円筒部8bの外周面との間にはシール9が介在され、変圧室6を大気から遮断している。
【0018】
11はマスタシリンダで、マスタシリンダ11は図1に示すように、後端部11aがフロントシェル2に形成された中心孔を貫通して定圧室5内に気密的に突出し、フランジ部11bがフロントシェル2の前面に当接している。フロントシェル2とリアシェル3とは、両シェルで構成されるブースタシェル1の軸線と外周との略中間位置で軸線と平行に延在する複数本、例えば2本のタイロッド12で結合されてマスタシリンダ11に固定されている。各タイロッド12にはダイヤフラム4に設けた各シール部の摺動穴が気密を保ってそれぞれ摺動自在に嵌合され、定圧室5と変圧室6との間の気密的な区画を維持している。
【0019】
マスタシリンダ11に前後方向に摺動可能に嵌合されたマスタピストン13は、マスタシリンダ11の後端部から定圧室5内に突出し、バルブピストン8の前端面近傍まで延在している。バルブピストン8とマスタピストン13との間には出力ロッド14が介在されている。バルブピストン8は定圧室5と変圧室6との圧力差に基づくダイヤフラム4の出力を反力部材17を介して出力ロッド14に伝達し、出力ロッド14がマスタピストン13を前方に押動する。フロントシェル2とバルブピストン8の前端面との間にはリターンスプリング16が介在され、バルブピストン8を後方に付勢している。
【0020】
図2に示すように、バルブピストン8には前端面から後端面に向けて反力室孔8c、反力室孔8cより小径の係止部材収納孔8d、プランジャ収納孔8e、プランジャ収納孔8eより大径の弁体収納孔8fが軸線上に順次穿設されている。反力室孔8cと係止部材収納孔8dとの段部8gには、鍔付き筒体18が鍔底面を段部8gと同一面にして固定されるとともに、環状凹溝8nが筒体18の鍔を囲んで軸線方向に形成されている。環状凹溝8nには出力ロッド14の後端に形成された環状突起14aが軸線方向に相対移動可能に嵌合され、出力ロッド14と筒体18の鍔底面と段部8gとの間で反力室15が形成され、反力室15内に弾性材料で形成された円盤状の反力部材17が収納されている。
【0021】
21はプランジャ収納孔8e内に前後方向に移動可能に収納されたプランジャで、その先端軸部21aは筒体18の後壁に摺動可能に嵌合して筒体18内に形成された反力穴18a内に延在し、先端面が反力穴18aに摺動自在に嵌合された当接部材19の後端面に当接している。プランジャ21の後端面には大気弁座21bが形成されている。
【0022】
22はH字状のキー部材で、このキー部材22によってバルブピストン8に対するプランジャ21の相対移動量が規制される。キー部材22の両側の直線部の内側がプランジャ21に形成された環状の係合溝21c内に前後方向に所定量相対移動可能に侵入し、両端部は基端部8aとプランジャ収納孔8eとの間に半径方向に穿設された矩形穴8iに両直線部の外側面で摺接して外部に延在している。キー部材22の前後方向の肉厚寸法は、矩形穴8iの前後方向寸法より小さく、キー部材22はバルブピストン8に対しても前後方向に所定量だけ相対移動可能である。また、キー部材22は、バルブピストン8の外周側に突出した両端部にてリアシェル3の突出部3aの端面に当接可能である。これにより、バルブピストン8とプランジャ21とは、矩形穴8iおよび係合溝21cの幅を加算した距離からキー部材22の厚さを2倍した距離を減じた距離だけ軸線方向に相対移動することができる。
【0023】
プランジャ21の後端には入力ロッド23が回動可能に連結され、入力ロッド23は塵芥等の通過を防止するフィルタ24および吸音機能を有するフェルトからなるサイレンサ27を貫通して摺動円筒部8bより後方に延在し、ブレーキペダル25(図1参照)に連結されている。フィルタ24およびサイレンサ27は、バルブピストン8の弁体収納孔8fの後端部(摺動円筒部8bの開口端)に装着されている。かかるプランジャ21と入力ロッド23とにより、ブレーキペダル25によって軸動される入力部材20を構成している。
【0024】
リアシェル3の突出部3aと入力ロッド23との間には、バルブピストン8を覆うブーツ26が設けられている。ブーツ26は前方が開口した有底円筒状をなし、後方底部が入力ロッド23の軸線に直交する平面部26aを構成している。ブーツ26の前方開口部はリアシェル3の突出部3aに係合され、平面部26aの内端(中心部)がバルブピストン8の後方開口部を閉塞するように入力ロッド23の外周に形成された環状溝23aに嵌合されている。ブーツ26の平面部26aより前方に屈曲して延在する円筒部には軸方向に伸縮可能な複数山からなる蛇腹部26bが形成されている。ブーツ26の平面部26aには円周上複数の通気穴26cが開口され、この通気穴26cよりサイレンサ27およびフィルタ24を介してバルブピストン8内に外気が導入されるようになっている。
【0025】
ブーツ26の平面部26aおよびこの平面部26aに連接する蛇腹部26bの1山あるいは2山(以下、これを少なくとも1山の蛇腹部26b1という)は、他の蛇腹部26b2よりも剛性を高めるために、肉厚が大きくとられており、これによって、入力ロッド23の軸動によってブーツ26の平面部26aに軸方向の推力が作用した場合に、平面部26aおよび少なくとも1山の蛇腹部26b1が恰も剛体として機能し、他の蛇腹部26b2がスムーズに伸縮されるように構成されている。かかる少なくとも1山の蛇腹部26b1によって、請求項における屈曲部を構成している。
【0026】
変圧室6を定圧室5または大気に切換えて連通する弁機構30が、バルブピストン8の弁体収納孔8f内に収納されている。弁機構30は弁体収納孔8fに遊嵌する筒状の弁体31を備え、弁体31の前端にはプランジャ収納孔8eと弁体収納孔8fとの接続部に形成された第1負圧弁座8kに接離して変圧室6と定圧室5とを連通、遮断する負圧弁31aが設けられている。第1負圧弁座8kの周囲にはバルブピストン8の側壁を貫通して定圧室5に開口する通路8mが形成され、内側は変圧室6に常時連通されている。プランジャ21の後方端部は弁体31内に侵入され、その後端に弁体31に設けられた大気弁31bに接離して変圧室6と大気とを連通、遮断する大気弁座21bが形成されている。
【0027】
弁体31の後端は、弁体31の軸線方向の移動を許容するベローズ34を介して環状の保持体35に連結されている。保持体35は弁体収納孔8fの内周に嵌合され、入力ロッド23の中央部に係止されたリテーナ37との間に介在された圧縮スプリング38のバネ力により弁体収納孔8fの肩部に押圧されている。
【0028】
弁体31の後端面とリテーナ37との間には圧縮スプリング39が介在され、バルブピストン8に対して弁体31を前方に付勢している。これにより、通常時(ブレーキの非作動時)は、大気弁31bを大気弁座21bに接触させるとともに、負圧弁31aを第1負圧弁座8kに対して僅かに離間した位置に保持し、変圧室6と定圧室5とを互いに連通している。
【0029】
40はプランジャ21を取囲む弁座部材で、弁座部材40はバルブピストン8のプランジャ収納孔8eの内周面にシール41よって気密的にシールされて軸線方向に摺動可能に嵌合されている。弁座部材40の後端には第1負圧弁座8kの内側に対応して第2負圧弁座40bが設けられ、第2負圧弁座40bは通常状態においては、第1負圧弁座8kより僅かに前方に位置していて、負圧弁31aより大きく離間されている。弁座部材40を後方に付勢する圧縮スプリング43が弁座部材40の外周に突設された環状突起40hとプランジャ収納孔8eの内周面に形成された環状段部8hとの間に介在されている。
【0030】
弁座部材40の先端部にはプランジャ21の先端軸部21aの大径部に摺動可能に嵌合する環状の係合部40dが設けられ、係合部40dと後端部(削除:円筒部40a)との間は2本の連結部40eで連結されている。2本の連結部40eは先端軸部21aの両側でH字状のキー部材22の両直線部に挟まれ、キー部材22の横棒部が一方の連結部40eの外周に当接し両直線部の内側面に形成された係止部が他方の連結部40eの外周に係合して抜け止めされている。これにより、弁座部材40はキー部材22によって回り止めされている。2本の連結部40eは、環状段部8hに設けられた切欠き部および環状段部8hに嵌合するプランジャ21の嵌合部に軸線方向に設けられた連通溝を通ってプランジャ収納孔8eから矩形穴8iに延在している。
【0031】
第2負圧弁座40bが第1負圧弁座8kより弁体31から前方に離れるように弁座部材40を圧縮スプリング43のバネ力に抗して通常位置に係止する係止手段44は、係止部材45の後端部に半径方向内側に突設された爪部45aが係合部40dの外周面に突設された環状の係合突起40fに係合して弁座部材40を通常位置に係止している。係止部材45は、中空円錐台を中心軸を通る平面で半割りにした形状をしており、この半割り中空円錐台形状の係止部材45が2個、筒体18の外周面を包囲して係止部材収納孔8d内に収納され、係止部材45の基部内周面に刻設された凹部45bが筒体18外周面に突設された凸部18bに係合されている。係止部材45の基部外周と係止部材収納孔8dの内周面との間にはスペーサ46が介在され、係止部材45が回動するときに外側に移動して凹部45bが凸部18bから浮き上がることを防止している。2個の係止部材45の外周面に刻設された環状溝には環状のガータースプリング47が嵌められ、爪部45aが環状の係合突起40fに係合する内側方向に係止部材45を付勢している。
【0032】
係止手段44は、プランジャ21がバルブピストン8に対して所定量以上相対前進すると、弁座部材40を解放する解放手段48を備えている。解放手段48としてプランジャ21の先端軸部21aの大径部の先端にはテーパ面21eが形成され、係止部材45の中央部内周面にはカム面が形成された突起45cが周方向に形成され、プランジャ21がバルブピストン8に対して所定量以上相対前進するとテーパ面21eが突起45cのカム面に係合して係止部材45を回動して爪部45aを環状の係合突起40fから開離する。
【0033】
また、係止手段44は、プランジャ21がバルブピストン8に対して所定量以上相対前進していない状態で弁座部材40がバルブピストン8に対して相対的に前進されると、爪部45aを環状の係合突起40fに係合して弁座部材40を通常位置に係止する復帰手段49を備えている。弁座部材40の係合部40dの後端がキー部材22に当接した状態で、キー部材22がリアシェル3の突出部3aの段部内面に当接した後に、バルブピストン8がリターンスプリング16のバネ力によって後退されると、弁座部材40がバルブピストン8に対して相対的に前進され、環状の係合突起40fの先端面に形成されたテーパ面40gが爪部45aの端面に形成された傾斜面に係合して爪部45aをガータースプリング47のバネ力に抗して押し広げて通過し、環状の係合突起40fが爪部45aと係合して弁座部材40を通常位置に係止する。
【0034】
次に、上記した実施の形態に係る負圧式倍力装置の作動について説明する。ブレーキペダル25の通常の作動時においては、ブレーキペダル25が踏まれて、入力ロッド23とともにプランジャ21が圧縮スプリング38のバネ力に抗して前進されると、弁体31が圧縮スプリング39のバネ力により前進され、負圧弁31aが第1負圧弁座8kに当接して変圧室6と定圧室5との連通を遮断する。プランジャ21が更に前進されると、大気弁座21bが大気弁31bより開離され、変圧室6がサイレンサ27およびフィルタ24を介して大気に連通される。これにより、バルブピストン8内に大気が導入され、導入された大気は大気弁31bを介して変圧室6に流入する。
【0035】
変圧室6に大気が導入されると、変圧室6と低圧室5との間で圧力差が発生し、この圧力差によりダイヤフラム4、プレート7およびバルブピストン8が前方に移動され、出力ロッド14が反力部材17を介して前進される。従って、マスタピストン13が出力ロッド14により押動され、ブレーキペダル25の踏力に応じたブレーキ油圧がマスタシリンダ11に発生される。
【0036】
なお、上記したブレーキペダル25の通常の作動時においては、バルブピストン8に対する入力部材20の相対移動量が小さいため、弁座部材40と係止部材45は図2に示す係合状態に維持され、第2負圧弁座40bは弁体31より離間されている。
【0037】
バルブピストン8はダイヤフラム4に作用する両室5,6内の圧力差に応じた作動力で反力部材17を弾性変形して出力ロッド14を介してマスタピストン13を押動する。反力部材17の弾性変形により、反力部材17が反力穴8dに流入して当接部材19を介してプランジャ21の先端軸部21aの先端部を後方へ押圧する。このため、プランジャ21が後退され、大気弁座21bが大気弁31bに着座して大気と変圧室6との連通を遮断し、所望のブレーキ油圧を保持する。このとき、ブレーキペダル25を踏む力は、入力ロッド23を介してプランジャ21の先端軸部21aから反力部材17に伝達され、反力部材17が踏力に応じて弾性変形するので、運転者は反力を感じることができる。
【0038】
ブレーキ作動後、ブレーキペダル25が開放されると、入力ロッド23とともにプランジャ21が圧縮スプリング38のバネ力によりバルブピストン8に対して後方に移動されるため、大気弁座21bが大気弁31bに当接して弁体31がバルブピストン8に対して相対的に後方に移動され、負圧弁31aが第1負圧弁座8kから開離される。これにより、定圧室5内の負圧が通路8mを通って変圧室6に導入され、変圧室6と定圧室5との圧力差が無くなる。従って、バルブピストン8、プレート7およびダイヤフラム4がリターンスプリング16のバネ力により後方に移動されるとともに、マスタピストン13が後方に移動されてマスタシリンダ11内の油圧が無くなる。
【0039】
プランジャ21はキー部材22がリアシェル3の突出部3aの段部内面に当接するのと同時に停止し、バルブピストン8はキー部材22に当接して停止する。これにより、ブレーキの非作動時に負圧弁31aが第1負圧弁座8kに極めて接近した状態となり、ブレーキが掛けられたとき弁体31の前方移動により負圧弁31aが第1負圧弁座8kに迅速に当接することができる。
【0040】
次に、運転者がブレーキペダル25を急速に踏み込んだ緊急ブレーキ時の作動について説明する。緊急ブレーキ特性は、ジャンピング特性を変化させて、通常ブレーキ時より大きな推進力が出力部材14に印加されることによって達成される。ジャンピング特性を変化させるためには、当接部材19と反力部材17との間の隙間を大きくすればよい。すなわち、大気弁31bを後方に移動させることによって、隙間を拡大し、当接部材19が反力部材17から反力を受けるまでの出力を大きくして、入力に対する出力の比率が無限大になるいわゆるジャンピング状態での出力を通常状態よりも大きくするようにしている。
【0041】
入力に対する出力の比率が無限大になるジャンピング特性は、負圧弁31aが第1負圧弁座8kに当接し、大気弁31bが大気弁座21bから開離し始めてから当接部材19が反力部材17に当接するまでのプランジャ21の前進距離によって決まる。緊急ブレーキ時には、第2負圧弁座40bが弁体31に形成された負圧弁31aに当接して弁体31を後方に移動するので、大気弁31bが大気弁座21bから開離し始めてから当接部材19が反力部材17に当接するまでのプランジャ21の前進距離が通常ブレーキ時より大きくなって、その間に大気弁31bが大気弁座21bから開離される距離が大きくなり、変圧室6が急速かつ強制的に大気に連通され、通常ブレーキ時より大きい推力が出力部材14に出力されてジャンピング特性が高くなる。
【0042】
運転者がブレーキペダル25を急速に踏み込んだ緊急ブレーキ時には、前述したようにプランジャ21がバルブピストン8に対して所定量以上相対前進されるため、プランジャ21のテーパ面21eが係止部材45の突起45cのカム面を押圧する。これにより、爪部45aが係合突起40fから離脱するように係止部材45がガータースプリング47のバネ力に抗して回動され、係止手段44が弁座部材40を解放する。従って、弁座部材40は圧縮スプリング43のバネ力によってバルブピストン8に対して急速に後退される。
【0043】
このように、弁座部材40が後方に移動すると、弁座部材40の第2負圧弁座40bが負圧弁31aに当接して弁体31を後退させ、大気弁31bを大気弁座21bから開離させる。弁座部材40のバルブピストン8に対する後退は、矩形穴8iの後端面に当接したキー部材22に係合部40dの後端が当接することによって規制される。
【0044】
これにより、変圧室6が急速かつ強制的に大気と連通され、通常ブレーキ時より大きい推力が出力部材14に出力され、大きい液圧がマスタシリンダから送出される。出力が増大されると反力部材17が反力穴18a内に流入して当接部材19を介してプランジャ21を後方に押し戻すため、大気弁座21bが大気弁31bと当接して大気の流入を阻止し、緊急ブレーキ時の出力が決定される。
【0045】
ブレーキペダル25が解放されると、圧縮スプリング36のバネ力によりプランジャ21がバルブピストン8および弁体31に対して相対的に後方に移動され、負圧弁31aが第2負圧弁座40bから開離されて変圧室6と定圧室5とが連通されるため出力が低下し、バルブピストン8がリターンスプリング16によって後方に移動される。キー部材22がリアシェル3の突出部3aの段部内面に当接した後に、バルブピストン8がリターンスプリング16のバネ力によって後退されると、キー部材22に係合部40dの後端で当接していた弁座部材40がバルブピストン8に対して相対的に前進される。これにより、環状の係合突起40fがその先端に形成されたテーパ面40gと爪部45aの端面に形成された傾斜面との係合によって係止部材45をガータースプリング47のバネ力に抗して押し広げて爪部45aを通過し、通過後にガータースプリング47のバネ力によって係止部材45が戻されて爪部45aが環状の係合突起40fと係合し、弁座部材40を通常位置に係止する。
【0046】
ところで、緊急ブレーキ作動時に、バルブピストン8が入力ロッド23およびプランジャ21の前進作動に追従して前進作動されると、ブーツ26が、図3の上半分に示す状態より下半分に示す状態に撓むが、本実施の形態においては、ブーツ26の平面部26aおよび少なくとも1山の蛇腹部26b1が他の蛇腹部26b2よりも肉厚を大きくして剛性を高めているため、平面部26aおよび少なくとも1山の蛇腹部26b1が恰も剛体として機能し、他の蛇腹部26b2がスムーズに伸縮されるようになる。従って、従来(図6参照)のように平面部が円錐状に傾くことがなく、急作動時においても、ブーツ26の平面部26aが入力ロッド23の環状溝23aより抜け出すことがなくなり、これによって、サイレンサ27の浮き出しを防止でき、サイレンサ27による消音機能を低下させることがない。
【0047】
図4および図5は、本発明の第2の実施の形態を示すもので、ブーツ26の平面部26aおよび少なくとも1山の蛇腹部26b1の剛性を、上記した第1の実施の形態と別の構成で高めるようにしたものである。
【0048】
第2の実施の形態においては、図4および図5に示すように、ブーツ26の平面部26aおよび蛇腹部26bの肉厚を全長にわたって一様にし、ブーツ26の平面部26aおよび少なくとも1山の蛇腹部26b1(屈曲部)に、それぞれ円周上複数のリブ126a、126b1を形成することにより、ブーツ26の平面部26aおよび少なくとも1山の蛇腹部26b1の剛性を、他の蛇腹部の剛性より高めたものである。なお、その他の構成については第1の実施の形態と同じ構成であるので、同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0049】
本発明の主要部をなすブーツ26は、緊急ブレーキ時にジャンピング特性を変化させて通常ブレーキ時より大きなブレーキ力を出力できる緊急ブレーキ機能を備えた負圧式倍力装置に適用して効果的であるが、本発明は、緊急ブレーキ機能を持たない負圧式倍力装置にも適用できるものである。
【0050】
上記した実施の形態においては、ブーツ26の平面部26aおよび少なくとも1山の蛇腹部26b1(屈曲部)の肉厚を大きくしたり、平面部26aおよび少なくとも1山の蛇腹部26b1(屈曲部)にリブ126a、126b1を形成することによって、ブーツ26の一部の剛性を高めるようにしたが、屈曲部は必ずしも蛇腹部である必要はなく、平面部26aより蛇腹部26bの方向に屈曲する部分に円筒部を設け、この円筒部の肉厚を大きくしたり、円筒部にリブを形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す負圧式倍力装置の断面図である。
【図2】図1のA−A線に沿って矢視した弁機構部分の拡大断面図である。
【図3】図2の作動状態を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態を示す図である。
【図5】図4のB矢視図である。
【図6】従来のブレーキ作動時のブーツの挙動を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1…ブースタシェル、2…フロントシェル、3…リアシェル、4…区画部材(ダイヤフラム)、5…定圧室、6…変圧室、8…バルブピストン、8b…摺動円筒部、8k…第1負圧弁座、11…マスタシリンダ、13…マスタピストン、14…出力ロッド、15・・・反力室、16…リターンスプリング、17…反力部材、20…入力部材、21…プランジャ、21b…大気弁座、22…キー部材、23…入力ロッド、23a…環状溝、24…フィルタ、25…ブレーキペダル、27…サイレンサ、26…ブーツ、26a…平面部、26b…蛇腹部、26b1…少なくとも1山の蛇腹部(屈曲部)、26b2…他の蛇腹部、126a、126b1…リブ、30…弁機構、31…弁体、31a…負圧弁、31b…大気弁、35…保持体、38,39…スプリング、40…弁座部材、40b…第2負圧弁座、44…係止手段、45…係止部材、48…解放手段、49…復帰手段。




 

 


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