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発明の名称 自動車用自動変速機、およびそれを用いた自動車
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−153335(P2007−153335A)
公開日 平成19年6月21日(2007.6.21)
出願番号 特願2006−327683(P2006−327683)
出願日 平成18年12月5日(2006.12.5)
代理人 【識別番号】100074631
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 幸彦
発明者 射場本 正彦 / 黒岩 弘
要約 課題
摩擦に頼らない滑らかで応答性に優れた変速制御を行ないながら、電動走行および回生制動も可能にする自動車用変速機制御システムを提供する。

解決手段
ツインクラッチ式自動変速機の両クラッチ軸間に電動機を挿入し、電動機のトルクと回転数を制御して滑らかで効率的な変速制御を行うと共に、クリープ制御、アイドルストップ発進制御、R→D、D→Rセレクト制御等を実現可能な変速機。電動機でトルク遷移を行ってから前段ギヤを解放し、電動機で回転数を同期化してからクラッチを掛け替える。クラッチの摩擦制御を行わないので滑らかな変速が可能になると共に、同じ制御方式でクリープ制御、アイドルストップ発進制御、R→D、D→Rセレクト制御等を可能にし、クラッチが摩耗する恐れがなく寿命が向上すると共に、運転性能を大幅に改善できる。また、一つの変速機で多くの機能を実現できるので、相対的にコストを抑制できる。
特許請求の範囲
【請求項1】
内燃機関、該内燃機関の出力を伝達または遮断する第1のクラッチ、該第1のクラッチの出力軸に設けられた第1の変速ギヤ列、前記内燃機関の出力を伝達または遮断する第2のクラッチ、該第2のクラッチの出力軸に設けられた第2の変速ギヤ列、前記第1変速ギヤ列および前記第2変速ギヤ列に接続された出力軸が駆動輪に動力を伝達する自動車の自動変速機であって、前記第1変速ギヤ列は少なくとも一つの奇数番目の変速段と後退変速段、前記第2変速ギヤ列は少なくとも一つの偶数番目の変速段より構成され、前記第1および前記第2変速ギヤ列は各々解放可能であり、前記第1クラッチの出力軸と前記第2クラッチの出力軸との間に回転電機を設け、前記第2クラッチの出力軸と変速機ケースの間にブレーキを設けたことを特徴とする自動車用自動変速機。
【請求項2】
請求項1記載の自動車の自動変速機において、前記ブレーキがワンウエイクラッチであることを特徴とする自動車用自動変速機。
【請求項3】
請求項1記載の自動車の自動変速機において、前記第1のクラッチの出力軸と変速機ケースの間にワンウエイクラッチを設けたことを特徴とする自動車用自動変速機。
【請求項4】
内燃機関と、自動変速機と、前記内燃機関と前記自動変速機とを制御する制御装置とを有する自動車であって、前記自動変速機は、前記内燃機関の出力を伝達または遮断する第1のクラッチと、該第1クラッチの出力軸に設けられ、少なくとも一つの奇数番目の変速段と後退変速段を含む第1の変速ギヤ列と、 前記内燃機関の出力を伝達または遮断する第2のクラッチと、該第2クラッチの出力軸に設けられ、少なくとも一つの偶数番目変速段を含む第2の変速ギヤ列と、前記第1クラッチの出力軸と前記第2クラッチの出力軸との間に設けられた回転電機と、前記第2クラッチの出力軸と変速機ケースの間に設けられたブレーキと、前記第1変速ギヤ列および前記第2変速ギヤ列に接続され、動力を駆動輪に伝達する出力軸とを有し、前記制御装置は、前記第1クラッチが締結、前記第2クラッチが解放して前記第1の変速ギヤ列が締結して駆動中に、前記回転電機により前記第2クラッチの出力軸トルクを漸増することにより、前記第1変速ギヤ列の伝達トルクを漸減し、前記第1の変速ギヤ列の伝達トルクがほぼ0になったところで前記第1変速ギヤ列を解放し、前記回転電機により前記第2クラッチの出力軸トルクを保持しながら、前記第1クラッチの出力軸と前記第2クラッチの出力軸の回転数を漸近させ、前記第1クラッチの出力軸と前記第2クラッチの出力軸の回転数が略等しくなったところで前記第2クラッチを締結すると共に、前記回転電機の発生トルクを0にして前記第1クラッチを解放し、前記制御装置は、前記第2クラッチが締結、前記第1クラッチが解放して前記第2変速ギヤ列が締結して駆動中に、前記回転電機により前記第1クラッチの出力軸トルクを漸増することにより、前記第2変速ギヤ列の伝達トルクを漸減し、前記第2変速ギヤ列の伝達トルクがほぼ0になったところで前記第2変速ギヤ列を解放し、前記回転電機により前記第1クラッチの出力軸トルクを保持しながら、前記第1クラッチの出力軸と前記第2クラッチの出力軸の回転数を漸近させ、前記第1クラッチの出力軸と前記第2クラッチの出力軸の回転数が略等しくなったところで前記第1クラッチを締結すると共に、前記回転電機の発生トルクを0にして前記第2クラッチを解放することを特徴とする自動車。
【請求項5】
請求項4において、前記制御装置は、前記電動機出力トルクが前記内燃機関トルクに略等しくなったことにより、前記第1変速ギヤ列の伝達トルクがほぼ0になったことを判定することを特徴とする自動車。
【請求項6】
内燃機関と、自動変速機と、前記内燃機関と前記自動変速機とを制御する制御装置および該制御装置に指令信号を与えるアクセルペダルとを有する自動車であって、前記自動変速機は、前記内燃機関の出力を伝達/遮断する第1のクラッチと、該第1クラッチの出力軸に設けられ、少なくとも一つの奇数番目の変速段と後退変速段を含む第1の変速ギヤ列と、前記内燃機関の出力を伝達/遮断する第2のクラッチと、該第2クラッチの出力軸に設けられ、少なくとも一つの偶数番目変速段を含む第2の変速ギヤ列と、前記第1クラッチの出力軸と前記第2クラッチの出力軸との間に設けられた回転電機と、前記第2クラッチの出力軸と変速機ケースの間に設けられたブレーキと、前記第1変速ギヤ列および前記第2変速ギヤ列に接続され、動力を駆動輪に伝達する出力軸とを有し、前記制御装置は、前記第1クラッチおよび前記第2クラッチが解放しているとき、前記第1変速ギヤ列および前記ブレーキを結合し、前記回転電機により前記第1クラッチの出力軸トルクを発生することにより、微速走行することが可能な自動車。
【請求項7】
請求項6記載の自動車において、前記アクセルペダルが踏まれていない時に対して、所定以下の範囲で踏まれている時のほうが、前記回転電機のトルクを大きくすることを特徴とする自動車。
【請求項8】
内燃機関と、自動変速機と、前記内燃機関と前記自動変速機とを制御する制御装置とを有する自動車であって、前記自動変速機は、前記内燃機関の出力を伝達/遮断する第1のクラッチと、該第1のクラッチの出力軸に設けられ、少なくとも一つの奇数番目の変速段と後退変速段を含む第1の変速ギヤ列と、前記内燃機関の出力を伝達/遮断する第2のクラッチと、該第2クラッチの出力軸に設けられ、少なくとも一つの偶数番目変速段を含む第2の変速ギヤ列と、前記第1クラッチの出力軸と前記第2クラッチの出力軸の間に設けられた回転電機と、前記第2クラッチの出力軸と変速機ケースの間に設けられたブレーキと、前記第1変速ギヤ列および前記第2変速ギヤ列に接続され、動力を駆動輪に伝達する出力軸とを有し、前記内燃機関を停止して停車中に前記制御装置は、前記第1クラッチを締結して前記第2クラッチを解放し、前記第1変速ギヤ列のギヤおよび前記ブレーキを結合し、前記回転電機によりトルクを発生して前記第1クラッチの出力軸を回転することにより、発進しながら前記内燃機関を始動することを特徴とする自動車。
【請求項9】
請求項8記載の自動車において、前記内燃機関が始動後に該内燃機関のトルクに応じて前記回転電機のトルクを低減し、該回転電機のトルクがほぼ0の状態において、前記ブレーキを解放することを特徴とする自動車。
【請求項10】
内燃機関と、自動変速機と、前記内燃機関と前記自動変速機とを制御する制御装置とを有する自動車であって、前記自動変速機は、前記内燃機関の出力を伝達/遮断する第1のクラッチと、該第1クラッチの出力軸に設けられ、少なくとも一つの奇数番目の変速段と後退変速段を含む第1の変速ギヤ列と、前記内燃機関の出力を伝達/遮断する第2のクラッチと、該第2クラッチの出力軸に設けられ、少なくとも一つの偶数番目変速段を含む第2の変速ギヤ列と、前記第1クラッチの出力軸と前記第2クラッチの出力軸の間に設けられた回転電機と、前記第2クラッチの出力軸と変速機ケースの間に設けられたブレーキと、前記第1変速ギヤ列および前記第2変速ギヤ列に接続され、動力を駆動輪に伝達する出力軸とを有し、前記内燃機関を停止して停車中に前記制御装置は、前記第2クラッチを締結して前記第1クラッチを解放し、前記第1変速ギヤ列を締結して前記第2変速ギヤ列および前記ブレーキを解放し、前記回転電機により前記第2クラッチの出力軸トルクを発生することにより前記内燃機関を始動し、機関始動後は前記回転電機により前記第1クラッチの出力軸トルクを増大させて発進することを特徴とする自動車。
【請求項11】
請求項8乃至10記載の自動車において、前記回転電機の電源となるバッテリの残存容量に応じて、請求項8記載の制御方法と請求項10記載の制御方法を切り替えて走行することを特徴とする自動車。
【請求項12】
内燃機関、該内燃機関の出力を伝達/遮断する第1のクラッチ、該第1のクラッチの出力軸に設けられた第1の変速ギヤ列、前記内燃機関の出力を伝達/遮断する第2のクラッチ、該第2のクラッチの出力軸に設けられた第2の変速ギヤ列、前記第1変速ギヤ列および前記第2変速ギヤ列に接続された出力軸が駆動輪に動力を伝達する自動車の自動変速機であって、前記第1変速ギヤ列は前進1速を含む少なくとも一つの奇数番目の変速段、前記第2変速ギヤ列は少なくとも一つの偶数番目の変速段および後退変速段より構成され、前記第1および第2変速ギヤ列は各々解放可能であり、前記第1クラッチの出力軸と前記第2クラッチの出力軸の間に回転電機を設けたことを特徴とする自動車用自動変速機。
【請求項13】
内燃機関と、自動変速機と、前記内燃機関と前記自動変速機とを制御する制御装置とを有する自動車であって、前記自動変速機は、前記内燃機関の出力を伝達/遮断する第1のクラッチと、該第1クラッチの出力軸に設けられ、少なくとも前進1速の変速段を有する第1の変速ギヤ列と、前記内燃機関の出力を伝達/遮断する第2のクラッチと、該第2クラッチの出力軸に設けられ、少なくとも後退の変速段を有する第2の変速ギヤ列と、前記第1クラッチの出力軸と前記第2クラッチの出力軸との間に設けられた回転電機と、前記第1変速ギヤ列および前記第2変速ギヤ列に接続され、動力を駆動輪に伝達する出力軸とを有し、前記制御装置は、前記第1クラッチが締結、前記第2クラッチが解放して前記第1変速ギヤ列が結合して駆動中には、前記回転電機により前記第2クラッチの出力軸トルクを漸増することにより、前記第1変速ギヤ列の伝達トルクを漸減し、前記第1変速ギヤ列の伝達トルクがほぼ0になったところで前記第1変速ギヤ列を解放し、前記電動機により前記第2クラッチの出力軸トルクを保持しながら、前記第1クラッチの出力軸と前記第2クラッチの出力軸回転数を漸近させ、前記第1クラッチの出力軸と前記第2クラッチの出力軸回転数が略等しくなったところで前記第2クラッチを締結すると共に前記電動機の発生トルクを0にして前記第1クラッチを解放し、前記制御装置は、前記第2クラッチが締結、前記第1クラッチが解放して前記第2変速ギヤ列が結合して駆動中には、前記回転電機により前記第1クラッチの出力軸トルクを漸増することにより、前記第2変速ギヤ列の伝達トルクを漸減し、前記第2変速ギヤ列の伝達トルクがほぼ0になったところで前記第2変速ギヤ列を解放し、前記電動機により前記第1クラッチの出力軸トルクを保持しながら、前記第1クラッチの出力軸と前記第2クラッチの出力軸回転数を漸近させ、前記第1クラッチの出力軸と前記第2クラッチの出力軸回転数が略等しくなったところで前記第1クラッチを締結すると共に前記電動機の発生トルクを0にして前記第2クラッチを解放することを特徴とする自動車。
【請求項14】
内燃機関と、自動変速機と、前記内燃機関と前記自動変速機とを制御する制御装置および該制御装置に指令信号を与えるアクセルペダルとを有する自動車であって、前記自動変速機は、前記内燃機関の出力を伝達/遮断する第1のクラッチと、該第1クラッチの出力軸に設けられ、少なくとも一つの奇数番目の変速段を含む第1の変速ギヤ列と、前記内燃機関の出力を伝達/遮断する第2のクラッチと、該第2クラッチの出力軸に設けられ、少なくとも一つの偶数番目変速段と後退変速段を含む第2の変速ギヤ列と、前記第1クラッチの出力軸と前記第2クラッチの出力軸の間に設けられた回転電機と、前記第1変速ギヤ列および前記第2変速ギヤ列に接続され、動力を駆動輪に伝達する出力軸とを有し、前記制御装置は、前記第1クラッチおよび前記第2クラッチが解放しているとき、前記第1変速ギヤ列の変速段および第2変速ギヤ列の後進変速段を結合し、前記回転電機により前記第1クラッチの出力軸と前記第2クラッチの出力軸の間にトルクを発生することにより微速走行可能な自動車。
【請求項15】
請求項14記載の自動車において、前記アクセルペダルが踏まれていないときに対して、所定以下の範囲で踏まれているときのほうが、前記回転電機のトルクを大きくすることを特徴とする自動車。
【請求項16】
内燃機関と、自動変速機と、前記内燃機関と前記自動変速機とを制御する制御装置とを有する自動車であって、前記自動変速機は、前記内燃機関の出力を伝達/遮断する第1のクラッチと、該第1のクラッチの出力軸に設けられ、少なくとも一つの奇数番目の変速段を含む第1の変速ギヤ列と、前記内燃機関の出力を伝達/遮断する第2のクラッチと、該第2のクラッチの出力軸に設けられ、少なくとも一つの偶数番目変速段と後退変速段を含む第2の変速ギヤ列と、前記第1のクラッチの出力軸と前記第2のクラッチの出力軸との間に設けられた回転電機と、前記第1変速ギヤ列および第2変速ギヤ列に接続され、動力を駆動輪に伝達する出力軸とを有し、前記内燃機関を停止して停車中に前記制御装置は、前記第1クラッチを締結して前記第2クラッチを解放し、前記第1変速ギヤ列の変速段および前記第2変速ギヤ列の後退変速段を締結し、前記回転電機により前記第1クラッチの出力軸と前記第2クラッチの出力軸の間に、前記第1クラッチの出力軸が正方向に回転するようにトルクを発生することにより、前進発進しながら前記内燃機関を始動し、 または前記内燃機関を停止して停車中に前記制御装置は、前記第2クラッチを締結して前記第1クラッチを解放し、前記第1変速ギヤ列の変速段および前記第2変速ギヤ列の後退変速段を締結し、前記回転電機により前記第1クラッチの出力軸と前記第2クラッチの出力軸の間に、前記第2クラッチの出力軸が正方向に回転するようにトルクを発生することにより、後進発進しながら前記内燃機関を始動することを特徴とする自動車。
【請求項17】
内燃機関と、自動変速機と、前記内燃機関と前記自動変速機とを制御する制御装置とを有する自動車であって、前記自動変速機は、前記内燃機関の出力を伝達/遮断する第1のクラッチと、該第1クラッチの出力軸に設けられ、少なくとも一つの奇数番目の変速段を含む第1の変速ギヤ列と、前記内燃機関の出力を伝達/遮断する第2のクラッチと、該第2クラッチの出力軸に設けられ、少なくとも一つの偶数番目変速段と後退変速段を含む第2の変速ギヤ列と、前記第1クラッチの出力軸と前記第2クラッチの出力軸の間に設けられた回転電機と、前記第1変速ギヤ列および前記第2変速ギヤ列に接続され、動力を駆動輪に伝達する出力軸とを有し、前記内燃機関を停止して停車中に前記制御装置は、前記第2クラッチを締結して前記第1クラッチを解放し、前記第1変速ギヤ列の変速段を締結し、前記第2変速ギヤ列の変速段を解放し、前記回転電機により前記第1クラッチの出力軸と前記第2クラッチの出力軸の間に、前記第2クラッチの出力軸が正方向に回転するようにトルクを発生することにより前記内燃機関を始動し、始動後は前記回転電機により前記第1クラッチの出力軸トルクを増大させて前進発進し、または前記内燃機関を停止して停車中に前記制御装置は、前記第1クラッチを締結して前記第2クラッチを解放し、前記第1変速ギヤ列の変速段を解放し、前記第2変速ギヤ列の後退変速段を締結し、前記回転電機により前記第1クラッチの出力軸と前記第2クラッチの出力軸の間に、前記第1クラッチの出力軸が正方向に回転するようにトルクを発生することにより前記内燃機関を始動し、始動後は前記回転電機により前記第2クラッチの出力軸トルクを増大させて後進発進することを特徴とする自動車。
【請求項18】
請求項16乃至17記載の自動車において、前記回転電機の電源となるバッテリの残存容量に応じて、請求項15記載の制御方法と請求項16記載の制御方法を切り替えて走行することを特徴とする自動車。
【請求項19】
内燃機関と、自動変速機と、前記内燃機関と前記自動変速機とを制御する制御装置とを有する自動車であって、前記自動変速機は、前記内燃機関の出力を伝達/遮断する第1のクラッチと、該第1クラッチの出力軸に設けられ、少なくとも一つの奇数番目の変速段を含む第1の変速ギヤ列と、前記内燃機関の出力を伝達/遮断する第2のクラッチと、該第2クラッチの出力軸に設けられ、少なくとも一つの偶数番目変速段と後退変速段を含む第2の変速ギヤ列と、前記第1クラッチの出力軸と前記第2クラッチの出力軸との間に設けられた回転電機と、前記第1変速ギヤ列および前記第2変速ギヤ列に接続され、動力を駆動輪に伝達する出力軸とを有し、前記第2クラッチが締結して前記第1クラッチが解放されて後進走行中に、前進走行指令が与えられた時、前記制御装置は、前記回転電機により前記第1変速ギヤ列の前進変速段を同期させて締結し、前記回転電機により前記第1クラッチの出力軸トルクを逆回転方向に漸増することにより、前記第2変速ギヤ列の後退変速段の伝達トルクを漸減し、前記第2変速ギヤ列の伝達トルクがほぼ0になったところで前記第2変速ギヤ列の後退変速段を解放し、前記電動機により前記第1クラッチの出力軸トルクを保持し、前記第1クラッチの出力軸と前記第2クラッチの出力軸回転数が略等しくなったところで前記第1クラッチを締結すると共に前記電動機の発生トルクを0にして前記第2クラッチを解放し、または前記第1クラッチが締結して前記第2クラッチが解放されて前進走行中に、後進走行指令が与えられた時、前記制御装置は、前記回転電機により前記第2変速ギヤ列の後進変速段を同期させて締結し、前記回転電機により前記第2クラッチの出力軸トルクを逆回転方向に漸増することにより、前記第1変速ギヤ列の前進変速段の伝達トルクを漸減し、前記第1変速ギヤ列の伝達トルクがほぼ0になったところで前記第1変速ギヤ列の前進変速段を解放し、前記電動機により前記第2クラッチの出力軸トルクを保持し、前記第1クラッチの出力軸と前記第2クラッチの出力軸回転数が略等しくなったところで前記第2クラッチを締結すると共に前記電動機の発生トルクを0にして前記第1クラッチを解放することを特徴とする自動車。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動制御および回生制動が可能な自動車用自動変速機、およびそれを用いた自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、従来の自動変速機においては、遊星歯車式あるいは平行軸式変速機構が用いられ、変速比の異なるギヤ段に個別に設けられたクラッチを選択的に締結して変速するようにしている。これらの従来技術は、例えば以下に示された特許文献1に記載されている。
【0003】
上記従来技術を解析した結果を以下に説明する。この解析結果は従来技術をそのまま述べたものではなく、あくまで解析結果である。
【0004】
シフトアップする場合は、次段クラッチを締結開始して半クラッチ状態でトルク伝達力を次第に増していくと、前段クラッチの伝達トルクが次第に減少するいわゆるトルクフェーズのトルク遷移が起こる。全トルクが次段クラッチに遷移した時に前段クラッチを解放すると、エンジン回転数が次段ギヤの入力回転数に向けて減少するいわゆるイナーシャフェーズの回転数遷移が起こる。
【0005】
シフトダウンする場合は、次段クラッチの伝達トルクを増加させても、エネルギポテンシャルの低いハイギヤからエネルギポテンシャルの高いローギヤへのトルク遷移を行うことは原理的にできない。そのため、初めに前段クラッチを滑らせてエンジン回転数を上昇させる回転数遷移を行い、次段クラッチが同期したところでクラッチを掛け変えてトルク遷移を行う。
【特許文献1】特開平10−89456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように従来の変速制御においては、クラッチの摩擦制御によりトルクフェーズにおけるトルク遷移や、イナーシャフェーズにおける慣性エネルギの放出を行っている。しかし、この方法ではクラッチ板の摩擦による損傷が生じて寿命が短くなるという不都合がある。
【0007】
またこの方法によれば、トルク伝達力の加減を摩擦力の調整によって行うが、摩擦力は滑り速度に対して負性抵抗特性を有しているので、トルク伝達力を所定の値に安定に制御することは極めて難しく、ジャダが発生して変速ショックを生じたり、ひどい場合にはクラッチ板が波状に摩耗したりする。特にアクセルペダルを踏み込んで加速しようとするときのダウンシフトにおいては、原理的に初めにトルク遷移を行うことができないので、回転数合わせを先に行って、低速段のクラッチを接続してからトルク遷移を行っている。このため、踏み込んでからトルクが出てくるまでの応答が遅く運転性が良くない。
【0008】
本発明の第1の目的は、上述した従来技術の問題点を改善し、摩擦に頼らない滑らかで応答性に優れた変速制御を行いながら、電動走行および回生制動も可能にする自動車用変速制御システムを提供することである。
【0009】
さらに本発明の第2の目的は、変速制御だけでなく、同一の手段を使用してクリープ制御や発進制御をも可能にすることで、全体機能に対するコストを相対的に引き下げることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、内燃機関の動力を第1の開閉クラッチおよび第1の変速機構を介して駆動軸に伝達する第1の動力伝達経路と、前記内燃機関の動力を第2の開閉クラッチおよび前記第1の変速機構とは変速比の異なる第2の変速機構を介して駆動軸に伝達する第2の動力伝達経路と、前記第1の動力伝達経路にあって前記第1の開閉クラッチよりも駆動軸側の回転軸、および前記第2の動力伝達経路にあって前記第2の開閉クラッチよりも駆動軸側の回転軸にそれぞれ接続された回転子および固定子で構成される回転電機とを設け、変速時のトルク遷移を回転電機の発生トルクにより、イナーシャフェーズの回転数遷移を回転電機の回転数制御により行うことで、クラッチの摩擦制御に頼らない滑らかで応答性のよい変速制御を行うものである。
【0011】
また、電動機の発生トルクにより駆動軸のトルクが制御できることを利用して、エンジンに頼らず微速走行いわゆるクリープ走行を行い、停車時にエンジンを停止させて燃料を節約し、発進しながらエンジンを始動する制御、および前進と後退の切り替え時に連続的に滑らかにトルク変化させる制御を行う。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法によれば、変速過渡時のみならずクリープ時、発進時、セレクト時にもトルク遷移を電動機のトルク制御で行うので、クラッチが摩耗する恐れがなく寿命が向上すると共に、滑らかに車を加速することでき、運転性能を大幅に改善できるという効果が得られる。また、一つの変速機で多くの機能を実現できるので、相対的にコストを抑制できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
『第1の構成例になる構成要素および構成要素の制御方法』
図1に本発明の第1の実施例の原理構成を示す。エンジン1の出力は2個のクラッチ2、3により各変速ギヤ列4、5に接続され、各変速ギヤ列4、5の出力は一つの出力軸6に集められて駆動輪(図示せず)を駆動する。第1クラッチ2にA点で接続された第1の変速ギヤ列4は奇数変速段を構成し、第2クラッチ3にB点で接続された第2の変速ギヤ列5は偶数変速段を構成している。各クラッチと各変速ギヤ列との接続点A、Bを電動機7で接続し、さらに電動機7の片方の軸を固定できるようにしたのが特徴である。本実施例では第2クラッチ3に接続された電動機軸と変速機ケース23の間にブレーキ45を設けている。
【0014】
まず動作原理を説明する。図1の原理構成図において第1クラッチ2を締結、第2クラッチ3を解放した状態で走行している場合、電動機7のトルクが図1のB点からA点に向かう方向を正とすると、下式が成り立つ。
To=i1×T1+i2×T2 (式1)
T2=−Tm (式2)
T1=Te+Tm (式3)
これより出力軸トルクをまとめると、下式が得られる。
To=i1Te+(i1−i2)Tm (式4)
【0015】
第1クラッチ2を解放、第2クラッチ3を締結した状態の場合は対称的な式となり、
To=i1×T1+i2×T2 (式5)
T1=Tm (式6)
T2=Te−Tm (式7)
これより出力軸トルクをまとめると、下式が得られる。
To=i2Te+(i1−i2)Tm (式8)
【0016】
すなわちエンジンに直結したギヤを通して出力軸を駆動するトルクに加えて、モータトルクに変速比の差を掛けたトルクが、出力軸に現われることになる。モータトルクは正負自在に制御できるから、目的に合わせてエンジンに直結していない方のギヤ比を選択し、目的に合わせてモータトルクの極性と大きさを制御すればよい。
【0017】
図2に本発明の第1の実施例に用いる電動機制御系を示す。電動機7は例えば永久磁石同期電動機であれば、バッテリ8に接続されたインバータ9により3相交流U、V、Wを供給される。インバータ9の各相のアームには高速スイッチング素子10が設けられている。これらの高速スイッチング素子10のゲート信号は、電動機制御装置11により制御される。電動機制御装置11はトルク指令および回転数指令を受けると共に、各アームの電流センサ12の出力および回転子の角度を検出する位置センサ13の出力をフィードバックして、電動機7のトルクと回転数を指令通りになるように制御する。このような制御はパワーエレクトロニクスの分野で公知の技術であるので詳しい説明は省略する。
【0018】
このように電動機制御装置11にトルク指令および回転数指令を与えると、電動機のトルクと回転数を図3のようにいわゆる4象限制御を行うことができる。なお、このような4象限制御を行うことができるものであれば、電動機の種類は永久磁石同期電動機に限られたものではなく、誘導電動機や直流電動機であっても良いことは言うまでもない。
【0019】
図4に本発明の第1の実施例における変速機の構成を示す。変速機ケース23はエンジン1に直結し、エンジン出力軸にクラッチ2および3が取り付けられている。クラッチはいわゆるツインクラッチを形成し、第1クラッチ2の出力が外側シャフト37に、第2クラッチ3の出力が内側シャフト38になるように同軸状に配置され、両クラッチのエンジン側の摩擦板2′および3′は一体的に形成されている。各クラッチ2、3はクラッチアクチュエータ20および22により押し付け圧が印加されて締結する。クラッチアクチュエータ20および22は、油圧式、空気圧式あるいは機械式のいずれの形式であってもよい。
【0020】
第1クラッチ2の出力軸37には1速ギヤ24、3速ギヤ25および後退ギヤ28が取り付けられ、第2クラッチ3の出力軸38には2速ギヤ26および4速ギヤ27が取り付けられている。これらの変速ギヤ24〜28に噛み合っている各段の従動ギヤ24′〜28′は、出力軸6上に回動自在に配置されており、シンクロメッシュ機構付のドッグクラッチ29〜31により出力軸6に結合するようになっている。ドッグクラッチ29〜31は、それぞれシフトフォーク32〜34により目的のギヤの方にスライドして噛み合う。シフトフォーク32〜34は各シフトアクチュエータ15、35、36により駆動される。本実施例では個別のシフトアクチュエータを用いた例を示したが、目的のシフトフォークを選択して1個のシフトアクチュエータによりスライドさせても良い。
【0021】
このようなツインクラッチ式自動変速機の構成は公知である。ギヤ配列やドッグクラッチの位置が異なるものの、類似の構造のものが例えば特開平10−89456号公報に示されている。しかしこれはあくまでクラッチの摩擦制御により変速させるものである。
【0022】
両クラッチの出力軸37と38の間には電動機7を接続してある。例えば図4の実施例では第1クラッチの出力軸37に電動機の固定子39を取り付け、第2クラッチの出力軸38に電動機の回転子40を取り付けてある。このようにすると電動機7は接続ギヤ等を用いることなく図1のA点とB点の間に挿入されたことになり、最もシンプルな構成で実現することができる。
【0023】
本発明の特徴は、電動機の回転子40に接続された第2クラッチの出力軸38と変速機ケース23の間にブレーキ45を設けたことにあり、該ブレーキ45を作動させると電動機の回転子40を固定する。該ブレーキ45は後記する実施例の制御に応じて締結/解放制御される。
【0024】
図5に本発明の第1の実施例に用いる変速ギヤ同期結合制御系を示す。図6はその動作を示すフローチャートである。締結していない方のクラッチにつながった変速ギヤ列の、ドッグクラッチを結合するための制御であり変速の準備過程である。モータ回転数指令発生部42に同期結合指令が入力されるとこの制御を開始する。ステップ1で現在の変速段nを読み込み、ステップ2でこれからアップシフトするのかダウンシフトするのか判断して、その結果に従ってステップ3で変速後のギヤ段を決定する。ステップ4で変速後のギヤ比を決定し、ステップ5で変速機出力軸6の回転数Noを読み込むと、ステップ6でモータ回転数指令tTmが算出される。
【0025】
モータ回転数指令tTmを受けてモータ回転数フィードバック制御部43では、ステップ7で電動機制御装置11から得られる実モータ回転数aNmを読み込み、ステップ8でモータ回転数指令tTmとの偏差を計算し、ステップ9でモータ回転数指令部17が制御補償してモータ回転数指令Nmを電動機制御装置11に与える。こうすると実モータ回転数aNmがモータ回転数指令tTmに等しくなるようにフィードバック制御される。
同期判定部44ではステップ10でモータ回転数指令tTmと実モータ回転数aNmがほぼ等しくなったか否かを判定し、非同期状態ならば同期するまで待つ。同期状態と判定されたらステップ11では、ステップ3において決定された変速後ギヤ段に対応するシフトアクチュエータ16、35、36に対して結合信号を出力する。
『変速制御』
【0026】
図7に本発明の第2の実施例である変速制御を行う場合のブロック図を、図8にフローチャートを示す。構成要素およびその制御方法は第1の実施例の場合と同じである。図9は変速時のトルクと回転数の変化を従来方式と比較して示したものである。本制御はすべてブレーキ45を解放した状態で行われる。
【0027】
図7乃至図9を用いて本実施例の動作を説明する。変速指令が与えられて、ステップ1でモータトルク指令部14が所定の増加率でモータトルクを増加させると、次段ギヤの入力トルクが増加し前段ギヤの入力トルクが減少する。これはトルクフェーズと呼ばれるトルク遷移過程である。1→2または3→4アップシフトの場合、モータトルクを負の方向に増加させると、(2)式により変速ギヤ5の入力トルクT2が増加し、(3)式により変速ギヤ4の入力トルクT1が減少し、Tm=−Teに達するとT1=0、T2=Teとなる。回転数は変速ギヤ4の入力回転数N1の方が高いので、図3の電動機動作平面における動作点はA点からB点に移動する。2→3アップシフトの場合、モータトルクを正の方向に増加させると、(6)式により変速ギヤ4の入力トルクT1が増加し、(7)式により変速ギヤ5の入力トルクT2が減少し、Tm=Teに達するとT1=Te、T2=0となる。回転数は変速ギヤ5の入力回転数N2の方が高いので、図3の電動機動作平面における動作点はD点からE点に移動する。
【0028】
4→3または2→1ダウンシフトの場合、モータトルクを正の方向に増加させると、(6)式により変速ギヤ4の入力トルクT1が増加し、(7)式により変速ギヤ5の入力トルクT2が減少し、Tm=Teに達するとT1=Te、T2=0となる。回転数は変速ギヤ4の入力回転数N1の方が高いので、図3の電動機動作平面における動作点はA点からH点に移動する。3→2ダウンシフトの場合、モータトルクを負の方向に増加させると、(2)式により変速ギヤ5の入力トルクT2が増加し、(3)式により変速ギヤ4の入力トルクT1が減少し、Tm=−Teに達するとT1=0、T2=Teとなる。回転数は変速ギヤ5の入力回転数の方が高いので、図3の電動機動作平面における動作点はD点からG点に移動する。
【0029】
トルクフェーズ終了判定部15は前段ギヤの入力トルクが0になったことを判定するものである。前段ギヤの入力トルクを直接検出することが出来ない場合が多いので、電動機の動作点がB点、E点、H点、G点になったことで判定してもよい。すなわちTm=Teとなったときに前段ギヤの入力トルク=0と看做すことができる。このためエンジントルクTeを検出あるいは計算によって求めておく必要があるが、その具体的方法は、例えば本出願人によって出願された特開平5−240073号、特開平6−317242号等に示されている。電動機の実トルク情報aTmは図2に示すように電動機制御装置11から得られる。
【0030】
ステップ2でトルクフェーズ終了を判定したら、ステップ3で前段のシフトアクチュエータ16または35を動作させて前段ギヤを解放する。前段ギヤが解放されるとエンジン回転数は変化できるようになる。
【0031】
ステップ4でモータ回転数指令部17がモータ回転数を低減開始すると、エンジン回転数が次段ギヤの入力回転数に向かって変化する。これはイナーシャフェーズと呼ばれる回転数遷移過程である。1→2または3→4アップシフトの場合、変速ギヤ4の入力に対し変速ギヤ5の入力トルクを増大させたまま、変速ギヤ4の入力回転数を下げるので、図3の電動機動作平面における動作点はB点からC点に移動する。2→3アップシフトの場合、変速ギヤ5の入力に対し変速ギヤ4の入力トルクを増大させたまま、変速ギヤ5の入力回転数を下げるので、図3の電動機動作平面における動作点はE点からF点に移動する。4→3または2→1ダウンシフトの場合、変速ギヤ5の入力に対し変速ギヤ4の入力トルクを増大させたまま、変速ギヤ4の入力回転数を下げるので、図3の電動機動作平面における動作点はH点からF点に移動する。3→2ダウンシフトの場合、変速ギヤ5の入力に対し変速ギヤ4の入力トルクを増大させたまま、変速ギヤ5の入力回転数を下げるので、図3の電動機動作平面における動作点はG点からC点に移動する。
【0032】
イナーシャフェーズ終了判定部18は、エンジン回転数が次段ギヤの入力回転数に等しくなったことによりイナーシャフェーズ終了を判定するが、各ギヤの入力回転数を直接検出することができない場合には、電動機の回転数Nmが0になったことで判定してもよい。電動機の回転数情報は電動機制御装置11から得られる。
【0033】
ステップ5でイナーシャフェーズ終了を判定したら、ステップ6で次段クラッチ制御部19がクラッチアクチュエータ20又は22を動作させて次段クラッチを締結する。ステップ7で前記モータトルク指令部14がモータトルクを0にすると共に、ステップ8で前段クラッチ制御部21が前段クラッチアクチュエータ22又は20を動作させて前段クラッチを解放する。
【0034】
アップシフトの場合、次段ギヤの入力回転数のほうが前段ギヤの入力回転数よりも低いのでポテンシャルエネルギを下げることになり、イナーシャフェーズにおける慣性エネルギは電動機を通してバッテリに回生される。ダウンシフトの場合は、次段ギヤの入力回転数のほうが前段ギヤの入力回転数よりも高いのでポテンシャルエネルギを上げることになり、イナーシャフェーズにおける慣性エネルギは電動機を通してバッテリから供給することになる。
【0035】
図9には、比較のため、従来の自動変速機の変速時の各部トルクと回転数を示してある。従来の変速機は受動的な素子であるクラッチの摩擦制御だけで変速を行うので、ポテンシャルエネルギを下げるアップシフトには対応できるが、ポテンシャルエネルギを上げるダウンシフトには対応できない。そのため、従来のダウンシフトでは、初めに前段クラッチを滑らせて回転数遷移を行い、次段クラッチを同期させてトルク遷移を行っている。このためトルク遷移が急激に生じて「突き上げ」と呼ばれる変速ショックが発生しやすく、その対策のためにトルク遷移に合わせてエンジントルクを低減する制御が必要であった。
【0036】
本発明の変速アルゴリズムはアップシフトの場合はもちろん、ダウンシフトの場合にも全く同じ方法で変速を行うことが出来る。本実施例のように電動機という能動的な素子を用いると、ダウンシフト時に回転数差を保ったままポテンシャルエネルギの高い方にトルク遷移を行うことができるので、変速開始と共に直ちに次段トルクに移行し、かつイナーシャトルクの影響が現われないのでトルク応答性が高く、運転性が向上する。
【0037】
さらに本発明の変速方法を用いると、トルク遷移の変化率はモータトルクの変化率であるので自由に制御することができ、例えば雪道等の低μ路のコーナでシフトダウンする場合は通常よりも緩やかにトルク遷移を行い、急激なエンジンブレーキが掛からないようにしてスリップ事故を防止する制御が可能である。
『クリープ制御』その1
【0038】
図10に本発明の第3の実施例であるクリープ制御を行う場合のブロック図を示し、図11にその制御手順を示すフローチャートを示す。構成要素および構成要素の制御方法は第1の実施例の場合と同じである。図10および図11を用いて動作を説明する。
【0039】
セレクトレバー(図示せず)がPレンジにあるとき発進制御部46はクラッチ2および3、ドッグクラッチ29〜31、およびブレーキ45を解放し、エンジンを停止して停車状態にある。セレクトレバーを入れると発進制御部46がステップ1でレンジを判定し、Dレンジであるならばステップ2でシフトアクチュエータ16を動作させてシフトフォーク32をスライドし、ドッグクラッチ29を1速ギヤ24に結合する。Rレンジであるならばステップ2でシフトアクチュエータ36を動作させてシフトフォーク34をスライドし、ドッグクラッチ31を後退ギヤ28に結合する。いずれのレンジでもない場合はクリープ制御を行わない。ステップ3でブレーキ45を締結して発進準備を完了する。
【0040】
ステップ4でフットブレーキの状態を判定し、踏み込まれていたらステップ6でモータトルク指令部14はモータトルク指令を0にするので電動機制御装置11はモータ電流を遮断する。フットブレーキをゆるめると、ステップ5でアクセル開度の判定を行い、開度0ならモータトルク指令部14は小さなクリープ時モータトルク指令を電動機制御装置11に与える。アクセルペダルを所定値以下の範囲で踏むと、モータトルク指令部14はアクセルペダルを離したときより少し高めのクリープ時モータトルク指令を発生して、坂道発進や縁石乗り越えに対応できる。アクセルペダルを所定値以上踏むと、第4の実施例に示すアイドルストップ制御に移行する。
【0041】
モータ回転数指令部17には電動機制御装置11からの実モータ回転数aNmが入力されており、ステップ7でそのまま同じ値をモータ回転数指令Nmとして電動機制御装置11に与えると、モータ回転数は車両が加速するに従って高くなって行く。クリープ制御の場合には微速運転を要求されているので、ステップ8でモータ回転数を制限する。
【0042】
本実施例の方式を用いれば、エンジンと自動変速機の間にトルクコンバータを設けなくても、従来の自動変速機付自動車と同様のクリープ走行が可能となり、車庫入れ等の微速走行時の運転性を向上させる効果がある。
『アイドルストップ発進制御』その1
【0043】
図12は本発明の第4の実施例であるアイドルストップ制御の発進制御を示すフローチャートである。発進準備を行ってアクセル開度を判定するまでは、第3の実施例で図11のフローチャートに示したクリープ制御と同じである。制御ブロック図は第3の実施例に用いた図10と同じである。構成要素および構成要素の制御方法は第1の実施例の場合と同じである。また制御中の各部のトルクおよび回転数の変化を図13のタイムチャートに示す。
【0044】
アイドルストップ制御の発進制御を図10〜図13を用いて説明する。発進準備は図11の手順で行う。セレクトレバーを入れると発進制御部46がステップ1でレンジを判定し、Dレンジであるならば、ステップ2でシフトアクチュエータ16を動作させてシフトフォーク32をスライドし、ドッグクラッチ29を1速ギヤ24に結合する。Rレンジであるならばステップ2でシフトアクチュエータ36を動作させてシフトフォーク34をスライドし、ドッグクラッチ31を後退ギヤ28に結合する。ステップ3でブレーキ45を締結して、発進準備を完了する。
【0045】
ステップ4でフットブレーキの状態を判定し、フットブレーキをゆるめるとステップ5でアクセル開度の判定を行い、アクセルペダルを所定値以上踏むとアイドルストップ制御の発進制御に移行する。発進制御は図12の手順で行う。図12のステップ1で、発進制御部46はクラッチアクチュエータ22を作動させて第1クラッチ2を締結する。ステップ2で、モータトルク指令部14はアクセル開度に応じた発進時モータトルク指令を電動機制御装置11に与える。電動機7はトルクを発生するが回転子40は固定されているので固定子39が回転し、第1クラッチ軸37を回転させる。これにより1速ギヤ24を通して出力軸6が回転し車両が発進する。一方、第1クラッチ2が締結されているので、モータトルクの一部はエンジンを回転させる。したがって、ステップ2においてはクラッチトルクが負になる。
【0046】
モータ回転数指令部17には電動機制御装置11からの実モータ回転数aNmが入力されていて、ステップ3でそのまま同じ値をモータ回転数指令Nmとして電動機制御装置11に与えるので、モータ回転数は車両が加速するに従って高くなっていく。
【0047】
ステップ4で発進制御部46はモータ回転数すなわちエンジン回転数を判定し、エンジン回転数がアイドル回転数以上になったことを判定したら、ステップ5でエンジンの燃料噴射および点火指令を発生してエンジンを始動する。エンジンが始動すると第1クラッチ出力軸37にはエンジントルクとモータトルクの両方が印加されるので、ステップ6でモータトルク指令部14が発進加速時に必要なトルクを調整する。電動機7はエンジントルクと同じトルクを発生できるので、2倍のエンジントルクを得られることになり、従来のトルクコンバータに匹敵する発進加速制御が可能になる。発進制御が終了するとステップ7でモータトルク指令部14はモータトルクTmを減少させ、ステップ8でモータトルクが0になったことを判定したら、ステップ9でブレーキ45を解放してアイドルストップ制御の発進制御を終了する。
【0048】
次にアイドルストップ制御の停止制御を説明する。アクセル開度が0で車速が低下してくると、変速線に従って1速にダウンシフトするが、さらに車速が低下してエンジン回転数がアイドル回転数以下に達したら、発進制御部46は第1クラッチ2を解放してエンジンを停止させる。車速が0になったら前記したようにレンジ信号に応じて図11のステップ1〜ステップ3を実行して発進準備を行う。
【0049】
本実施例の方法によれば、信号待ち等で自動車が一時停車したとき、エンジンを停め無駄な燃料を節約するので燃費が大幅に向上するという効果がある。さらに発進時に電動機でエンジントルクを補って最大2倍の発進トルクが得られるので、トルクコンバータの代替機能を有しており、トルクコンバータを廃止して廉価なシステムを提供することができる。
【0050】
ところでブレーキ45は、発進時に電動機7が1速ギヤに接続された第1クラッチ出力軸37にトルクを印加する反力を受け止めるために、第2クラッチ出力軸38を変速機ケース23に固定するために設けたものである。電動機7が第1クラッチ出力軸37をエンジン回転方向に回すためには、第2クラッチ出力軸38にはエンジン回転方向とは逆向きの反力が加えられる。したがってブレーキ45はエンジン回転方向とは逆向きの反力さえ受け止めればよいので、バンドブレーキや多板ブレーキの代りにワンウエイクラッチを用いてもよい。発進制御が終了して第2クラッチが締結すると、第2クラッチ出力軸38は常にエンジン回転方向に回転するので、ワンウエイクラッチは常に解放しておりステップ9でブレーキ45を解放したのと同じ状態になる。ワンウエイクラッチを用いた場合ブレーキ45を締結するためのアクチュエータや油圧源・空気圧源等が不要で構造が簡単になり、また制御もステップ3、ステップ8とステップ9を省略できてソフトウエア開発工数が減るという効果がある。
『アイドルストップ発進制御』その2
【0051】
図14は、本発明の第5の実施例であるアイドルストップ制御の発進制御を示すフローチャートである。発進準備を行ってアクセル開度を判定するまでは、第3の実施例で図11のフローチャートに示したクリープ制御と同じである。制御ブロック図は、第3の実施例に用いた図10と同じである。構成要素および構成要素の制御方法は第1の実施例の場合と同じである。また制御中の各部のトルクおよび回転数の変化を図15のタイムチャートに示す。
【0052】
アイドルストップ制御の発進制御を図10、図11、図14、図15を用いて説明する。発進準備は図11の手順で行う。セレクトレバーを入れると発進制御部46が図11のステップ1でレンジを判定し、Dレンジであるならば、ステップ2でシフトアクチュエータ16を動作させてシフトフォーク32をスライドし、ドッグクラッチ29を1速ギヤ24に結合する。Rレンジであるならばステップ2でシフトアクチュエータ36を動作させてシフトフォーク34をスライドし、ドッグクラッチ31を後退ギヤ28に結合する。ステップ3でブレーキ45を締結して発進準備を完了する。
【0053】
ステップ4でフットブレーキの状態を判定し、フットブレーキをゆるめるとステップ5でアクセル開度の判定を行い、アクセルペダルを所定値以上踏むとアイドルストップ制御の発進制御に移行する。発進制御は図14の手順で行う。
【0054】
図14のステップ1で先に締結したブレーキ45を解放する。ブレーキ45にワンウエイクラッチを用いているならばこの手順は省略できる。ステップ2で発進制御部46が第2クラッチ3を締結し、ステップ3でモータトルク指令部14がエンジン始動トルク指令を発生する。これにより電動機7の回転子40は第2クラッチ3を通してエンジンを回転させるが、電動機7の固定子39に現われる反力は第1クラッチの出力軸37を通常と逆方向に回そうとする。しかし発進準備の段階で、図11のステップ2で第1クラッチの出力軸37に設けられた1速ギヤ24あるいは後退ギヤ28が結合しているので、この反力により出力軸6にわずかにトルクが発生するが、車両を動かすほどのものではない。なお、第1クラッチの出力軸37と変速機ケース23との間にワンウエイクラッチを設けておけば、反力トルクが出力軸に現われる心配はない。
【0055】
モータ回転数指令部17には、電動機制御装置11からの実モータ回転数aNmが入力されているので、ステップ4でそのまま同じ値をモータ回転数指令Nmとして電動機制御装置11に与えると、モータ回転数は車両が加速するに従って高くなっていく。ステップ5で発進制御部46はモータ回転数すなわちエンジン回転数を判定し、エンジン回転数がアイドル回転数以上になったことを判定したら、ステップ6でエンジンの燃料噴射および点火指令を発生し、エンジンを始動する。エンジンが始動するとエンジン回転数の方が高くなり、電動機7には回生電流が流れるようになる。ステップ7でモータトルク指令部14が今までと逆向きのトルク指令を発生するとエンジンに負荷が掛かり、エンジントルクは第2クラッチ3、第2クラッチの出力軸38、電動機7を通して第1クラッチの出力軸37、1速ギヤ24あるいは後退ギヤ28に印加されて出力軸6に駆動トルクを発生する。モータトルクをTm=Teまで増加するとエンジン負荷は最大になり、その状態を保ったままステップ8でモータ回転数指令部17がモータ回転数Nmを低減する。発進制御部46はステップ9でNm=0により第1クラッチ2が同期したことを判定したら、ステップ10でクラッチアクチュエータ22を作動させて第1クラッチ2を締結してアイドルストップ制御の発進制御を終了する。
【0056】
エンジン始動後のモータトルクによるエンジン負荷制御、その後のモータ回転数によるクラッチ同期制御は、第2の実施例で説明したアップシフトと同じ動作であり、それぞれトルクフェーズとイナーシャフェーズに相当し、いわば0→1変速であると考えられる。したがってポテンシャルエネルギの高い方から低い方への変化であるので、その間エンジン出力は、バッテリに回生しながら次第に出力軸にエネルギを移して行くことになる。この制御はバッテリ残量が少なくなったときにも安心して行うことができ、信頼性を向上できるという効果がある。
【0057】
図10のブロック図において発進制御部46にバッテリ残量情報を入力しておくと、バッテリ残量が多いときは、第4の実施例の方法で発進制御を行って、高い発進トルクで加速性能を向上させ、バッテリ残量が少ないときは、第5の実施例の方法で発進制御を行って、発進時にバッテリを充電しながら確実に発進するように、両制御方法を切り替えることも可能である。
『クリープ制御』その2
【0058】
本発明の第6の実施例であるクリープ制御のフローチャートを図16に示す。図17に本実施例に用いる変速機の構成を示す。図4の構成と異なるのは、後退ギヤ28を第2クラッチの出力軸38に接続したことと、ブレーキ45がないことである。制御ブロック図は図10と同じである。構成要素の制御方法は第1の実施例の場合と同じである。図10、図16および図17によりクリープ制御の制御手順を説明する。
【0059】
セレクトレバー(図示せず)がPレンジにあるとき発進制御部46はクラッチ2および3、ドッグクラッチ29〜31、およびブレーキ45を解放し、エンジンを停止して停車状態にある。セレクトレバーを入れると発進制御部46が図16のステップ1でレンジを判定し、DレンジまたはRレンジであるならばステップ2でシフトアクチュエータ16と36を動作させてシフトフォーク32と34をスライドし、ドッグクラッチ29を1速ギヤ24に、ドッグクラッチ31を後退ギヤ28に結合して発進準備を完了する。
【0060】
ステップ3でフットブレーキの状態を判定し、踏み込まれていたらステップ5でモータトルク指令部14はモータトルク指令を0にするので電動機制御装置11はモータ電流を遮断する。フットブレーキをゆるめると、ステップ4でアクセル開度の判定を行い、開度0なら、ステップ5で、モータトルク指令部14は小さなクリープ時モータトルク指令を電動機制御装置11に与える。アクセルペダルを所定値以下の範囲で踏むと、モータトルク指令部14はアクセルペダルを離したときより少し高めのクリープ時モータトルク指令を発生して、坂道発進や縁石乗り越えに対応できる。アクセルペダルを所定値以上踏むと、アイドルストップ制御の発進制御に移行する。
【0061】
モータ回転数指令部17には電動機制御装置11からの実モータ回転数aNmが入力されており、ステップ6でそのまま同じ値をモータ回転数指令Nmとして電動機制御装置11に与えると、モータ回転数は車両が加速するに従って高くなって行く。クリープ制御の場合には微速運転を要求されているので、ステップ7でモータ回転数を制限する。
【0062】
本実施例のクリープ制御方式を用いれば、1速ギヤと後退ギヤが同時に結合しているので、出力軸トルクToは前記(4)式または(8)式においてTe=0とした場合に相当し、以下の式で表される。
To=(i1−i2)Tm (式9)
例えば1速ギヤ比i1=2.8、後退ギヤ比i2=−2.3とすればTo=5.1Tmが得られる。すなわちエンジンと自動変速機の間にトルクコンバータを設けて2倍程度のトルク増幅率を得るよりも大きなトルクを発生するので、縁石乗り上げ等を容易に行うことができ、運転性を向上させる効果がある。
【0063】
本実施例の方法によれば1速ギヤ24と後退ギヤ28を締結して発進するので、大きな発進トルクが得られてクリープ制御時の走行特性が改善されるだけでなく、ブレーキ45が不要になり、安価なシステムとすることができる。
『アイドルストップ発進制御』その3
【0064】
本発明の第7の実施例であるアイドルストップ制御のフローチャートを図18に示す。本実施例に用いる変速機の構成は図17である。図4の構成と異なるのは後退ギヤ28を第2クラッチの出力軸38に接続したことと、ブレーキ45がないことである。制御ブロック図は図10と同じである。構成要素の制御方法は第1の実施例の場合と同じである。図10、図18によりアイドルストップ発進制御の手順を説明する。
【0065】
第6の実施例に示した図16のステップ4でアイドルストップ制御の発進制御に移行したところから、図18のフローチャートに移行する。したがって既に図16のステップ2で1速ギヤおよび後退ギヤが接続されている。発進制御部46は図18のステップ1でレンジ判定を行い、Dレンジならステップ2でクラッチアクチュエータ22を作動させて第1クラッチ2を締結する。Rレンジならステップ2でクラッチアクチュエータ20を作動させて第2クラッチ3を締結する。ステップ3でモータトルク指令部14が発進トルク指令を発生する。
【0066】
これによりDレンジなら電動機7の固定子39は第1クラッチの出力軸37を経て1速ギヤ24を駆動する。この反力により電動機7の回転子40は第2クラッチ38を通常と逆方向に回すので、第2クラッチ38に接続された後退ギヤ28を逆転させる。したがって、出力軸6には1速ギヤ24の出力トルクと後退ギヤ28の前進方向のトルクの和が現われ、車両を前進させる。一方電動機7の固定子39のトルクは、第1クラッチ2を経てエンジンを回転させる。
【0067】
Rレンジの場合、電動機を逆転させると、電動機7の固定子39は第1クラッチの出力軸37を経て1速ギヤ24を通常と逆方向に回す。この反力により電動機7の回転子40は、第2クラッチ38を通常方向に回すので、第2クラッチ38に接続された後退ギヤ28を駆動する。したがって、出力軸6には後退ギヤ28の出力トルクと1速ギヤ24の後進方向のトルクの和が現われ、車両を後進させる。一方電動機7の回転子40のトルクの一部は第2クラッチ3を経てエンジンを正方向に回転させる。いずれにしても、目的の方向に車両を走行させながらエンジンを正方向に回転させる。ステップ3においては、クラッチトルクは負になる。
【0068】
モータ回転数指令部17には、電動機制御装置11からの実モータ回転数aNmが入力されているので、ステップ4で、そのまま同じ値をモータ回転数指令Nmとして電動機制御装置11に与えると、モータ回転数は車両が加速するに従って高くなっていく。ステップ5で、発進制御部46はモータ回転数すなわちエンジン回転数を判定し、エンジン回転数がアイドル同転数以上になったことを判定したら、ステップ6で、エンジンの燃料噴射および点火指令を発生してエンジンを始動する。エンジンが始動すると、Dレンジの場合第1クラッチ出力軸37に、Rレンジの場合第2クラッチ出力軸38にエンジントルクとモータトルクの両方が印加されるので、ステップ7で、モータトルク指令部14が発進加速時に必要なトルクを調整する。発進制御が終了するとステップ8でモータトルク指令部14はモータトルクTmを減少させ、ステップ9でモータトルクが0になったことを判定したら、ステップ10でレンジ判定を行い、Dレンジならステップ11でシフトアクチュエータ36を作動させて後退ギヤ28を解放する。Rレンジならステップ11でシフトアクチュエータ16を作動させて1速ギヤ24を解放し、アイドルストップ制御の発進制御を終了する。
【0069】
本実施例の方法によれば1速ギヤ24と後退ギヤ28を締結して発進するので、大きな発進トルクが得られてアイドルストップ発進時の特性が改善されるだけでなく、ブレーキ45が不要になり安価なシステムとすることができる。
【0070】
『アイドルストップ発進制御』その4本発明の第8の実施例であるアイドルストップ制御のフローチャートを図19に示す。本実施例に用いる変速機の構成は図17である。図4の構成と異なるのは後退ギヤ28を第2クラッチの出力軸38に接続したことと、ブレーキ45がないことである。制御ブロック図は図10と同じである。構成要素の制御方法は第1の実施例の場合と同じである。図10、図19によりアイドルストップ発進制御の手順を説明する。
【0071】
第6の実施例に示した図16のステップ4でアイドルストップ制御の発進制御に移行したところから、図19のフローチャートに移行する。したがって既に図16のステップ2で1速ギヤおよび後退ギヤが接続されている。
【0072】
発進制御部46は図19のステップ1でレンジ判定を行い、Dレンジならステップ2でシフトアクチュエータ36を作動させて後退ギヤ28を解放し、ステップ3でクラッチアクチュエータ22を作動させて第2クラッチ3を締結する。ステップ4でモータトルク指令部14がトルク指令を発生すると、電動機7の回転子40は第2クラッチの出力軸38を回すので、第2クラッチ3を介してエンジンを回転させる。このとき電動機7の固定子39に現われる反力は第1クラッチの出力軸37を通常と逆方向に回そうとする。しかし発進準備の段階で、図16のステップ2で第1クラッチの出力軸37に設けられた1速ギヤ24が結合しているので、この反力により出力軸6にわずかにトルクが発生するが車両を動かすほどのものではない。
【0073】
モータ回転数指令部17には電動機制御装置11からの実モータ回転数aNmが入力されているので、ステップ5でそのまま同じ値をモータ回転数指令Nmとして電動機制御装置11に与えると、モータ回転数は次第に高くなっていく。ステップ6で発進制御部46はモータ回転数すなわちエンジン回転数を判定し、エンジン回転数がアイドル回転数以上になったことを判定したら、ステップ7でエンジンの燃料噴射および点火指令を発生してエンジンを始動する。
【0074】
エンジンが始動するとエンジン回転数の方が高くなり、電動機7には回生電流が流れるようになる。ステップ8でモータトルク指令部14が今までと逆向きのトルク指令を発生するとエンジンに負荷が掛かり、エンジントルクは第2クラッチ3、第2クラッチの出力軸38、電動機7を通して第1クラッチの出力軸37、1速ギヤ24に印加されて、出力軸6に駆動トルクを発生する。モータトルクをTm=Teまで増加するとエンジン負荷は最大になり、その状態を保ったままステップ8で、モータ回転数指令部17がモータ回転数Nmを低減する。発進制御部46はステップ9でNm=0により第1クラッチ2が同期したことを判定したら、ステップ10でクラッチアクチュエータ22を作動させ、第1クラッチ2を締結してアイドルストップ制御の発進制御を終了する。ステップ1のレンジ判定結果がRレンジの場合も全く同様にして制御することができ、その手順は図19の右側に示してある。
【0075】
エンジン始動後のモータトルクによるエンジン負荷制御、その後のモータ回転数によるクラッチ同期制御は、第2の実施例で説明したアップシフトと同じ動作であり、それぞれトルクフェーズとイナーシャフェーズに相当し、いわば0→1変速であると考えられる。したがってポテンシャルエネルギの高い方から低い方への変化であるので、その間エンジン出力はバッテリに回生しながら次第に出力軸にエネルギを移して行くことになる。この制御はバッテリ残量が少なくなったときにも安心して行うことができ、信頼性を向上できるという効果がある。
【0076】
図10のブロック図において発進制御部46にバッテリ残量情報を入力しておくと、バッテリ残量が多いときは、第7の実施例の方法で発進制御を行って、高い発進トルクで加速性能を向上させ、バッテリ残量が少ないときは、第8の実施例の方法で発進制御を行って、発進時にバッテリを充電しながら確実に発進するように、両制御方法を切り替えることも可能である。本実施例の方法によればブレーキ45が不要になり安価なシステムとすることができる。
『排気ガス低減制御』
【0077】
一般に自動車の排気ガス中のHC等の有害成分は、一走行期間における排出量の70%以上が、エンジン始動直後の冷機走行時に排出されると言われている。本発明の第9の実施例は、エンジン始動直後における排気ガス有害成分の排出量を大幅に削減するもので、図20に制御手順を示す。本実施例に用いる変速機の構成は図17である。制御ブロック図は図10と同じである。構成要素の制御方法は第1の実施例の場合と同じである。図10、図20により排気ガス低減制御の手順を説明する。
【0078】
セレクトレバーがPレンジでキースイッチを始動位置に回すと、ステップ1でエンジン水温を判定し、設定値以下であるとステップ2で後退ギヤを、ステップ3で第1クラッチを締結する。ステップ4でモータトルク指令部14がエンジンが正方向に回転するようモータトルク指令を発生すると、電動機7の固定子39は第1クラッチの出力軸37を回すので、第1クラッチ2を介してエンジンを回転させる。このとき電動機7の回転子40に現われる反力は第2クラッチの出力軸38を通常と逆方向に回そうとする。しかしパーキング状態になっているので、この反力により出力軸6にトルクが発生することはない。
【0079】
モータ回転数指令部17には電動機制御装置11からの実モータ回転数aNmが入力されているので、ステップ5でそのまま同じ値をモータ回転数指令Nmとして電動機制御装置11に与えると、モータ回転数は次第に高くなっていく。ステップ6で発進制御部46はモータ回転数すなわちエンジン回転数を判定し、エンジン回転数がアイドル回転数以上になったことを判定したら、ステップ7でエンジンの燃料噴射および点火指令を発生してエンジンを始動する。
【0080】
ステップ8でレンジ判定、ステップ9でエンジン水温を判定し、Pレンジにあり水温が設定値以下である間、ステップ10でエンジンに負荷を掛けないように電動機でトルクアシストしながら暖機運転を行う。セレクトレバーがPレンジ以外にセレクトされた時、あるいは水温が設定値以上に上昇した時はこの制御を終了し、ステップ11で後退ギヤを解放し、ステップ12で第1クラッチを解放して、実施例3〜8に示した制御に移行する。
【0081】
本実施例の方法によれば、エンジン負荷トルクを電動機のトルクで軽減しながら、燃料・空気量・点火時期を最適化することができるので、例えば極低温時に潤滑油粘性が高い時にも、冷機時の排気ガス有害成分を最小にすることができる。
『R→D、D→Rセレクト制御』
【0082】
従来の車両ではアイドルストップを行っていない場合は、停車中にセレクトレバーをNからD、あるいはP又はNからRに入れたとき、トルクコンバータのタービン回転数が一時的に0になるのでいわゆるストール状態になり、セレクトショックを発生する。もしセレクトレバーを入れたとき車両が逆方向に動いていると、R→DあるいはD→Rセレクトショックと呼ばれる大きなショックが発生していた。本発明の実施例2〜6の方法によれば、停車中のセレクト時にはエンジンが始動していないので、モータによるクリープ走行からエンジンを始動して滑らかに走行開始出来る。
【0083】
図21は本発明の第10の実施例におけるR→DあるいはD→Rセレクト制御のフローチャートであり、図22にその動作波形のタイムチャートを示す。対象とする変速機は図17のものとする。例として後退走行中にR→Dセレクトしてそのまま連続して前進走行する場合を説明する。この運転方法は、車庫からバックで出て方向転換し、そのまま走り出すいわゆるスイッチターンと呼ばれるもので、日常良く行われる運転パターンである。
【0084】
後退中にエンジンを始動して走行するまでは、実施例6の図18のステップ11までの過程により説明した。アクセルを踏んだまま後退走行中にセレクトレバーをDレンジに入れる場合を想定し、エンジントルクと回転数は一定に保たれるものとする。図21のステップ1でレンジ判定をして、ステップ2でDレンジであれば1速ギヤのドッグクラッチが同期するようモータ回転数を合わせる。これは実施例1として図6のフローチャートに示した同期結合制御を適用する。ステップ3で1速ギヤを結合し、ステップ4において1速ギヤで後進する方向にモータトルクを発生させ増加させる。これは後退ギヤから1速ギヤにトルクを遷移させるためである。これにより後退ギヤのトルクは0になるので、ステップ5でトルク遷移の終了を判定したら、ステップ6で後退ギヤを開放する。ステップ5の判定は実施例2の図8のステップ2に示したように、モータトルクがエンジントルクと等しくなったことにより判定すればよいが、この場合はTm=−Teで判定することになる。
【0085】
ステップ7でモータトルクを反転増加させると前進方向に駆動トルクが発生して後退走行にブレーキが掛かる。モータトルクの増加はエンジントルクに等しくなるまで続くので、ブレーキ力が強すぎるときはアクセルペダルを戻せばよい。ステップ8でトルク遷移が終了したら、通常変速のトルクフェーズが終了した状態と同じになる。すなわち図8のステップ3が終了した状態であるので、あとは図8のステップ4以降と同じ手順になる。ステップ9でモータ回転数を低減し、ステップ10で回転数遷移の終了を判定したら、ステップ11で第1クラッチを締結し、ステップ12でモータトルクを0にしてステップ13で第2クラッチを解放する。通常の変速と違うのは出力軸回転方向が途中で反転することである。1速と後退のギヤ比がほぼ等しいとすると、トルクフェーズが終了した時点ではモータはエンジン回転数の約2倍で逆方向に回っている。ステップ9でモータ回転数を低減する途中、負のモータ回転数がエンジン回転数とほぼ等しくなったとき出力回転数が0になり、車両は後退から前進に転ずる。前進走行中にセレクトレバーをRレンジに入れる場合も全く同じで、図21の右側に併記してある。これらの動作はR→1変速あるいは1→R変速と言えるものである。
『遊星歯車付加構成』
【0086】
図23は本発明の第11の実施例を示す変速機構成図である。図4および図17と異なるのは両クラッチの出力軸37と38の間に遊星歯車41を接続し、該遊星歯車41の第3軸を電動機7の回転子40に接続してある。図23の実施例では遊星歯車41のリングギヤを第1クラッチの出力軸37に接続し、遊星歯車41のキャリヤを2クラッチの出力軸38に、遊星歯車41のサンギヤを電動機7の回転子40に接続してある。電動機7の固定子39は変速機ケース23に固定してある。
【0087】
このような構成にすると電動機7の固定子39が回転しないので、電力の給電に際しスリップリングを用いることなく直接配線することができて構造が簡単になるという効果がある。また図4および図17の実施例において必要な電動機トルクTmは、トルクフェーズ終了間際にTm=Teとする必要があったが、本実施例の方法によれば電動機出力が遊星歯車41により減速されて両クラッチ軸37、38に印加されるので、必要な電動機トルクTmは下式のように小さくなる。
Tm={Zs/(Zs+Zr)}Te (式10)
ここでZsは遊星歯車41のサンギヤの歯数、Zrはリングギヤの歯数である。モータ回転数は図4および図17の場合より高くなるが、高速・低トルクモータは電動機を小型にすることができるという効果がある。
『自動車に搭載した例』
【0088】
図24は本発明の自動変速機を自動車に搭載した第12の実施例である。自動車50のエンジン1に接続された変速機ケース23の中には、前記した第1クラッチ2、第2クラッチ3、第1の変速ギヤ列4、第2の変速ギヤ列5、電動機7より成る本発明の自動変速機が構成されている。該変速機の出力軸6は、デファレンシャルギヤ(図示せず)を介してタイヤ52に接続されている。前記変速機の電動機7には前記インバータ9が接続され、該インバータ9の電源としてバッテリ8が搭載されている。
【0089】
指令部51は、前記電動機制御装置11を介して電動機7のトルクや回転数を指令するモータトルク指令部14およびモータ回転数指令部17を含み、また前記シフトアクチュエータ16、35、36および前記クラッチアクチュエータ20、22に対して動作を指令する。
【0090】
本実施例の自動車によれば、電動機の制御で変速過渡時のトルク遷移や回転数遷移を行うので、イナーシャフェーズにおける慣性分トルクによるトルク変動が無いので滑らかな変速が実現でき、特にダウンシフト時の加速トルクの応答性が早いので、駆動力特性を格段に向上できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1は、本発明の第1の実施例の原理構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、本発明の実施例に用いる電動機制御の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、図2の電動機制御における電動機の動作点の変化を示す電動機特性図である。
【図4】図4は、本発明の第1の実施例における変速機構成を示す構造図である。
【図5】図5は、本発明の実施例に用いる同期結合制御システムの構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、図5の同期結合制御システムのソフトウエア構成を示すフローチャートである。
【図7】図7は、本発明の第2の実施例における変速制御システムの構成を示すブロック図である。
【図8】図8は、図7の変速制御システムのソフトウエア構成を示すフローチャートである。
【図9】図9は、図7の変速制御システムにおける変速時のトルクと回転数の変化を示すタイムチャートである。
【図10】図10は、本発明の第3の実施例におけるクリープ制御システムの構成を示すブロック図である。
【図11】図11は、図10のクリープ制御システムのソフトウエア構成を示すフローチャートである。
【図12】図12は、本発明の第4の実施例における発進制御システムのソフトウエア構成を示すフローチャートである。
【図13】図13は、図12の発進制御システムにおけるトルクと回転数の変化を示すタイムチャートである。
【図14】図14は、本発明の第5の実施例における発進制御システムのソフトウエア構成を示すフローチャートである。
【図15】図15は、図14の発進制御システムにおけるトルクと回転数の変化を示すタイムチャートである。
【図16】図16は、本発明の第6の実施例におけるクリープ制御システムのソフトウエア構成を示すフローチャートである。
【図17】図17は、本発明の第6の実施例に用いる変速機構成を示す構造図である。
【図18】図18は、本発明の第7の実施例における発進制御システムのソフトウエア構成を示すフローチャートである。
【図19】図19は、本発明の第8の実施例における発進制御システムのソフトウエア構成を示すフローチャートである。
【図20】図20は、本発明の第9の実施例における排気ガス低減制御方式のソフトウエア構成を示すフローチャートである。
【図21】図21は、本発明の第10の実施例におけるR→DあるいはD→Rセレクト制御のソフトウエア構成を示すフローチャートである。
【図22】図22は、図21のR→DあるいはD→Rセレクト制御システムにおけるトルクと回転数の変化を示すタイムチャートである。
【図23】図23は、本発明に係る変速機の他の実施例を示す構造図である。
【図24】図24は、本発明に係る変速機を搭載した自動車の構成を示す概念図である。
【符号の説明】
【0092】
1 エンジン、
2 第1クラッチ
3 第2クラッチ
4 第1変速ギア列
5 第2変速ギア列
6 出力軸
7 電動機
23 変速機ケース
45 ブレーキ




 

 


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