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発明の名称 電動ブレーキ装置と、その制御方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−15602(P2007−15602A)
公開日 平成19年1月25日(2007.1.25)
出願番号 特願2005−200395(P2005−200395)
出願日 平成17年7月8日(2005.7.8)
代理人 【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
発明者 菊池 謙司
要約 課題
車両停止時における運転者のブレーキペダル踏み込み時の最大推力を制限し、電動ブレーキ装置で消費する電力と発熱を低減化できる電動ブレーキ装置を提供する。

解決手段
モータMの回転運動を直線運動に変換してブレーキパッド5,5をディスクロータ6に押圧する推力を発生させる電動ブレーキ装置Bは、車両の停止を保持するために必要な推力F0を算出し、必要な推力F0に対して所定の増分αを加算した目標推力F1を算出する手段として演算装置部26を備えると共に、要求推力を目標推力F1に制限して発生させるべく制御するモータドライバ部22を有する電動ブレーキコントローラ3を備える。
特許請求の範囲
【請求項1】
モータの回転運動を直線運動に変換してブレーキパッドをディスクロータに押圧する推力を発生させる推力発生手段を備え、運転者のブレーキペダルの踏み込み操作により要求推力を発生させる電動ブレーキ装置であって、
該電動ブレーキ装置は、車両の停止を保持するために必要な推力を算出し、該推力に対して所定の増分を加算した目標推力を算出する算出手段を備えると共に、
前記要求推力を前記目標推力に制限して発生させるべく制御する推力制御手段を備えることを特徴とする電動ブレーキ装置。
【請求項2】
前記電動ブレーキ装置は、運転者と乗員と積載物とを含めた車重を検出する車重検出手段と、停止時における傾斜状態を検出する手段とを備えており、
前記算出手段は、前記車重検出手段と、前記傾斜状態検出手段との出力に基づいて、前記目標推力を算出することを特徴とする請求項1に記載の電動ブレーキ装置。
【請求項3】
前記電動ブレーキ装置は、前記ブレーキパッドが前記ディスクロータを押圧する実推力を検出する推力センサと、該推力センサで検出された実推力と前記目標推力とを比較する比較手段とを備えており、
前記推力制御手段は、前記実推力が前記目標推力より大きいときに、該目標推力に基づいて前記推力発生手段で発生させる推力を該目標推力に制限することを特徴とする請求項1または2に記載の電動ブレーキ装置。
【請求項4】
前記電動ブレーキ装置は、前記ブレーキパッドを前記ディスクロータに押圧する推力をロック機構により保持して前記車両の停止状態を維持する駐車ブレーキ手段を備え、
前記推力制御手段は、前記駐車ブレーキ手段で保持する推力を前記目標推力に制限することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電動ブレーキ装置。
【請求項5】
前記所定の増分は、前記ブレーキパッドの状態に基づいて算出されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電動ブレーキ装置。
【請求項6】
前記所定の増分は、前記傾斜状態検出手段および/または前記車重検出手段の出力に基づいて算出されることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の電動ブレーキ装置。
【請求項7】
運転者のブレーキペダルの踏み込み操作による要求推力により、ブレーキパッドをディスクロータに押圧して推力を発生させる電動ブレーキ装置の制御方法であって、
車両の停止を保持するために必要な推力を算出すると共に、該推力に対して所定の増分を加算した目標推力を算出し、
前記要求推力が前記目標推力より大きいときは、該目標推力に相当する推力を発生させることを特徴とする電動ブレーキ装置の制御方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの回転運動を直線運動に変換しブレーキパッドをディスクに押圧して制動力を発生する電動ブレーキ装置と、その制御方法に関し、特に、発熱、消費電力を低減できる電動ブレーキ装置と、その制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、油圧ブレーキ装置にかわり、電気信号指令による電動機の回転を応用し、推力を発生させる、電動ブレーキシステムが提案されている。例えば、特許文献1では、停車状態にあるときに運転者のブレーキペダル踏み込みに応じた要求推力が、停車状態を維持するために必要な推力よりも大きいときは、停止状態を維持する推力に補正することで、停車時における無駄な電力消費を回避する電動ブレーキ装置が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−63537号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の従来技術では、車両の停止時に停止を維持するための推力を検出し、運転者のブレーキペダル踏み込みに相当する推力が、停止を維持するための推力より大きいときに、停止を維持するための推力に補正する。このことから、運転者が少しでもブレーキペダルの踏み込みを弱めることで、車両が動き出す可能性があり、運転者は常に一定以上のブレーキペダルの踏み込み量を保たなければならないという問題があった。
【0005】
また、車両停止状態において、例えば、車両をカーキャリア等の運搬車両へ積載したとき等、外的要因により車両が傾くような場合に車両が動き出す可能性があるという問題があった。
【0006】
本発明は、走行中の車両をブレーキペダルを操作して停止させたあとの、停車時における乗員からの無駄な推力要求による消費電力の低減化と、それに伴う発熱を抑えることが可能な電動ブレーキ装置と、その制御方法を提供することにある。また、停止状態が安定し、外乱等が加わっても車両の停止状態を維持できる電動ブレーキ装置と、その制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明に係る電動ブレーキ装置は、モータの回転運動を直線運動に変換してブレーキパッドをディスクロータに押圧する推力を発生させる推力発生手段を備え、運転者のブレーキペダルの踏み込み操作により要求推力を発生させる電動ブレーキ装置であって、この電動ブレーキ装置は、車両の停止を保持するために必要な推力を算出し、該推力に対して所定の増分を加算した目標推力を算出する算出手段を備えると共に、前記要求推力を前記目標推力に制限して発生させるべく制御する推力制御手段を備えることを特徴としている。
【0008】
前記のごとく構成された本発明の電動ブレーキ装置は、ブレーキパッドをディスクロータに押圧するモータへ、必要以上の電流を印加しないように最大推力を制限するため、電流消費量を削減でき発熱を抑えることができる。これにより、車両の燃料消費率を向上させることができる。また、停止させるために必要な推力より所定の増分を加算した推力で車両を停止させるため、安定したブレーキ性能を確保することができ、外乱等による車両の移動を防止できる。
【0009】
また、本発明に係る電動ブレーキ装置の好ましい具体的な態様としては、前記電動ブレーキ装置は、運転者と乗員と積載物とを含めた車重を検出する車重検出手段と、停止時における傾斜状態を検出する手段とを備えており、前記算出手段は、車重検出手段と、傾斜状態検出手段とに基づいて、前記目標推力を算出することを特徴としている。このように構成された電動ブレーキ装置によれば、車重を正確に検出して、この車重と車両の傾斜状態から、車両を停止させるために必要な推力を算出するため、車両を安定した状態で停止させることができ、停止状態を安定して維持することができる。
【0010】
前記電動ブレーキ装置は、ブレーキパッドがディスクロータを押圧する実推力を検出する推力センサと、該推力センサで検出された実推力と目標推力とを比較する比較手段とを備えており、推力制御手段は、実推力が目標推力より大きいときに該目標推力に基づいて前記推力発生手段で発生させる推力を該目標推力に制限することを特徴としている。この構成によれば、運転者のブレーキペダルの踏み込みが必要以上に大きいとき、推力を制限してモータへの電流を低減し、消費電力を抑えて発熱を抑えることができる。
【0011】
前記電動ブレーキ装置は、前記ブレーキパッドを前記ディスクロータに押圧する推力をロック機構により保持して前記車両の停止状態を維持する駐車ブレーキ手段を備え、前記推力制御手段は、前記駐車ブレーキ手段で保持する推力を前記目標推力に制限することが好ましい。この構成によれば、車両の駐車時に停止状態を安定させることができ、外乱等が駐車中に加わっても、車両の移動を防止することができる。
【0012】
前記の必要な推力に加算する所定の増分としては、ブレーキパッドの状態に基づいて算出されることが好ましい。ブレーキパッドが摩耗すると、同じ推力でディスクロータを押圧しても制動力が小さくなるため、増分を大きく設定することにより車両の停止状態を確実とすることができる。また、前記の所定の増分としては、前記傾斜状態検出手段および/または前記車両重量検出手段の出力に基づいて算出されることが好ましい。車両が停止している路面の傾斜角度が大きく、重量が大きい場合は移動しやすいため、傾斜角度や車両重量に応じて増分を算出し、この増分を加算した目標推力に制限することで、停車状態を確実にすることができる。
【0013】
本発明に係る電動ブレーキ装置の制御方法は、運転者のブレーキペダルの踏み込み操作による要求推力により、ブレーキパッドをディスクロータに押圧して推力を発生させる電動ブレーキ装置の制御方法であって、車両の停止を保持するために必要な推力を算出すると共に、該推力に対して所定の増分を加算した目標推力を算出し、前記要求推力が前記目標推力より大きいときは、該目標推力に相当する推力を発生させることを特徴としている。この構成によれば、推力発生手段のモータへ、必要以上の電流を印加しないように最大推力を制限するため、電流消費量を削減でき発熱を抑えることができ、車両の燃料消費率を向上させることができる。また、安定したブレーキ性能を確保することができ、外乱等による車両の移動を防止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電動ブレーキ装置と、その制御方法は、車両停止時において、車両側で車両がどのような状態で停止していることを検出し、運転者のブレーキペダル操作により発生する最大推力を、車両を停止させるために必要な推力に所定の増分を加算した目標推力に制限することで、消費電力の低減を図ることができ、発熱の抑制が可能となり、車両の燃料消費率を高めることができると共に、車両の停止状態を安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る電動ブレーキ装置の一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る電動ブレーキ装置の構成図、図2は、図1の図1の電動ブレーキコントローラ3の内部構成を示すブロック図である。
【0016】
図1において、電動ブレーキ装置Bは、運転者がブレーキペダル1を踏み込む際の踏み込み量を、検出するストロークセンサ2を備えている。ストロークセンサ2の出力は電動ブレーキコントローラ3に入力され、このコントローラで運転者のブレーキペダル1踏み込み量に応じた推力指令を出力し、キャリパ4内のモータMを回転させる。モータMが回転し、回転運動を直線運動に変換する変換機構を介してピストンが推進され、ピストンによりブレーキパッド5,5が、ディスクロータ6を挟み込む推力で制動力が発生する。回転運動を直線運動に変換する変換機構としては図示していないが、ボールランプ機構や、ボールねじ機構等が用いられる。モータMおよび変換機構により推力発生手段が構成される。したがって、電動ブレーキ装置Bはブレーキ操作に応じた推力が発生される。
【0017】
キャリパ4内部には、ブレーキパッド5,5がディスクロータ6を挟み込むことで生じる推力を検出する推力センサ7が組み込まれている。また、キャリパ4内には、車輪の回転速度を検出する車輪速センサ8が組み込まれている。電動ブレーキコントローラ3には、車輪の回転をモニタする車輪速センサ8の検出結果と、車両の車重を検出する車重センサ9、車両の振動や車両発進時の加速度、傾斜状態を検出するGセンサ10からの信号が入力される。
【0018】
ディスクロータ6の外周には駐車ブレーキ11がキャリパ4と別に設置されている。駐車ブレーキ11は、運転者が手動により作動させるものや、モータを用いた電動式のものがある。駐車ブレーキ11はキャリパ4と別のキャリパ内に配置された推力発生手段を構成するモータM1により、ブレーキパッド12,12をディスクロータ6に押圧して制動力を得るもので、その内部には、駐車ブレーキ動作により発生する推力を検出する駐車ブレーキ(PKB)推力センサ13と駐車ブレーキの動作状態を検出する駐車ブレーキ(PKB)動作センサ14が組み込まれており、駐車ブレーキ操作スイッチ(PKBSW)15からの操作信号が電動ブレーキコントローラ3に入力されることにより操作される。本実施形態の駐車ブレーキは、走行中の車両を停止させるキャリパ4と別体の電動駐車ブレーキとして構成されている。
【0019】
そして、駐車ブレーキ動作時に駐車ブレーキ11が発生している推力を検出する駐車ブレーキ推力センサ13、駐車ブレーキ11の動作状態を検出する駐車ブレーキ動作センサ14からの信号は電動ブレーキコントローラ3に入力されており、車両の状態を常に監視する。以上の検出結果より、電動ブレーキコントローラ3は車両が走行中であることや、停止しているかを検出することを可能としている。
【0020】
本実施形態の電動ブレーキ装置Bは、電動ブレーキ用のキャリパ4と駐車ブレーキ11とがそれぞれ独立のものとして、構成されているが、電動ブレーキ用のキャリパ4に駐車ブレーキ11の機能を追加して一体化したものもある。一体化した電動ブレーキ装置では、駐車ブレーキはブレーキパッドをディスクロータに押圧させて発生させた推力をロック機構により保持することで駐車ブレーキとして機能させる。ロック機構としては、ラチェット機構等を用いることができる。
【0021】
運転者のブレーキペダルの踏み込みにおいて、消費電力と発熱が問題となるのは、短時間に最大推力を発生させる踏み込みと、連続したブレーキペダルの踏み込みである。こうした、運転者のブレーキペダル踏み込みによる消費電力の増大と発熱とを低減するために最大推力制限を行う。
【0022】
図2において、電動ブレーキコントローラ3は、バッテリ等の電源が供給される電源部21と、キャリパ4内のモータMに駆動電流を供給するモータドライバ部22と、モータMに供給される電流を検出するモータ電流検出部23と、車輪速センサや推力センサからの信号が入力する電動ブレーキ側インターフェース部24と、車両側に設置された車重センサやGセンサ等からの出力が入力する車両側インターフェース部25と、各種の入力に基づいて演算する演算装置部26とから構成されている。モータドライバ部22が電動ブレーキ装置の推力制御手段を構成する。
【0023】
以下、前記の各部を詳細に説明する。電源部21は、電動ブレーキコントローラ3を構成する各ブロックに、図示していないバッテリから電源を供給する。モータドライバ部22は、運転者からのブレーキペダル1の踏み込みによる要求推力をキャリパ4で発生させるために必要なモータ制御を行なう。すなわち、モータMを正方向に回動させることで制動力を発生させ、逆方向に回動させることで制動力を緩めることができる。
【0024】
モータ電流検出部23では、キャリパ4内部のモータMで消費する電流値を検出し、過電流などの異常検出を行なう。電動ブレーキ側インターフェース部24では、キャリパ4内部の推力センサ7での検出信号や駐車ブレーキ機能内蔵型電動ブレーキであれば、駐車ブレーキ制御などを行なう。車両側インターフェース部25は、図1に示した、ストロークセンサ2からの運転者によるブレーキペダル踏み込み情報や、車重センサ9、Gセンサ(傾斜センサ)10、車輪速センサ8からの信号入力や、電動ブレーキ装置Bでの推力値情報や、電動ブレーキ装置Bの正常動作、異常動作を信号により送受する。
【0025】
演算装置部26では、電源部21からの出力電圧の監視、車両からの入力信号処理、車両への信号出力、モータドライバ部22の制御、モータ電流検出部23からの信号によるモータ消費電流監視、キャリパ4での発生推力値検出等を行なう。また、演算装置部26では、この電動ブレーキ装置Bを装備する車両の停止を保持するために必要な制動力を発生させる必要な推力F0を算出すると共に、この推力に対して所定の増分αを加算した目標推力F1を算出する手段を備えており、電動ブレーキコントローラ3は電動ブレーキ装置Bから発生される制動力を目標推力F1に制限する最大推力制限処理を行なう。
【0026】
本発明の最大推力制限は、車両側インターフェース部25と、電動ブレーキ側インターフェース部24から入力する車輪速センサ8による車速検出信号、車重センサ9の検出信号、Gセンサ10による検出信号、推力センサ7の検出信号、駐車ブレーキ11の操作情報から、車両が停止するために必要な推力値を算出し、最大推力制限を行なう。以下、最大推力制御方法について説明する。
【0027】
先ず、車両を停止させるために必要な推力F0は、車両の重量Wと、車両が停止している路面の傾斜角度θから算出される。車両の重量Wは車重センサ9の出力を使用し、車両自体の重量と乗車している乗員の重量、あるいは積載している荷物等の重量を含んだものとする。また、傾斜角度θはGセンサ10の検出信号を使用する。すなわち、必要な推力F0は、以下の数式(1)から算出される。
必要な推力、F0=Wsinθ・・・(1)
【0028】
そして、演算装置部26は、求められた必要な推力F0に対して所定の増分αを加算した目標推力F1を、以下の数式(2)から算出する。
目標推力、F1=Wsinθ+α・・・(2)
【0029】
この所定の増分αについては、車両の停止している路面の傾斜状態に合わせて設定すると好適である。すなわち、傾斜角度θの路面に停止しているとき、α=k・sinθ(kは比例係数)に設定すると、傾斜角度が大きいときに増分αが大きくなって好ましい。また、ブレーキパッドの摩耗量が所定量以上のときは、新品のときに対して、前記の比例定数を大きく設定する。前記の比例係数は、車重Wの5〜20%程度が好ましい。
【0030】
したがって、この電動ブレーキ装置Bを装備する車両は、電動ブレーキコントローラ3が、停止状態を維持することができる必要な推力F0よりαだけ大きい目標推力F1に相当する制動力で停止されるように最大推力制御処理を行い、加算された目標推力F1に相当する電流がモータドライバ部22から出力され、このモータドライバ部は必要な推力F0に所定の増分αが加算された目標推力F1でブレーキパッド5,5がディスクロータ6を押圧するように、推力発生手段を構成するモータMを回転させるように制御する。
【0031】
図3は、走行中の車両が運転者のブレーキペダル操作により停車し、運転者のブレーキペダル操作のみで車両の停止状態を保持する場合の電動ブレーキコントローラ3で実行される最大推力制限処理のフローチャートを示す。
【0032】
推力制限処理処理(S1)は、車両走行時に、図1の車輪速センサ8で検出した情報から車速情報検出(S2)を行う。運転者のブレーキペダル踏み込み操作(S3)により、車速が「0」(S4)となり車両が停止したことを車輪速センサ8で判断すると、推力センサ7で車両を停止させるために必要とした実推力を検出し、電動ブレーキコントローラ3で最大推力制限を行なう(S5〜S8)。
【0033】
この最大推力制限(S5〜S8)は、推力センサ7で検出した車両を実際に停止させた実推力Fと、車両を停止状態に維持するために必要な推力F0に対して所定の増分αを加算した目標推力F1とを比較して行なう。すなわち、電動ブレーキコントローラ3の演算装置部26では、車両の停止状態から、車両を停止させるために必要な推力F0を算出する(S5)。例えば、車両が平坦な路面に停止しているときは、必要な推力は小さく設定され、傾斜面に停止しているときは傾斜角度θに合わせて必要な推力は大きく設定され、車重が大きいときには必要な推力はさらに大きく設定される。ここで、必要な推力F0は、前記の数式(1)でF0=Wsinθと算出される。
【0034】
電動ブレーキコントローラ3は算出された必要な推力F0に対して、所定の増分αを加算した目標推力F1を前記の数式(2)でF1=Wsinθ+αと算出(S6)する。そして、推力センサ7で検出された実推力Fと目標推力F1とを比較(S7)し、目標推力F1に対して実推力Fが大きい場合は、S8で実推力Fの代わりに目標推力F1に置き換え、目標推力に相当する電流値をモータドライバ部22に出力し、モータドライバ部22は所定の増分αが加算された推力をモータMが発生できる電流値をモータMに出力する。モータMに電流が印加されるとロータが回転し、この回転は変換機構により直線運動に変換され、ブレーキパッド5,5がディスクロータ6を押圧して制動力が発生する。
【0035】
この場合は、実推力Fより小さい目標推力F1を発生させる電流値でモータMを駆動するため、消費電流を削減できると共に、キャリパ4の発熱を防止することができる。しかも、目標推力F1は車両を停止させるのに必要な最低限の推力F0より増分αだけ大きく設定されているため、車両の停止状態は安定しており、外乱等が車両に作用しても車両が移動することはない。S7で、実推力Fが目標推力F1以下の場合は、そのままリターンする。
【0036】
本実施形態の電動ブレーキ装置Bは、電動ブレーキコントローラ3の演算装置部26で、車両を停止させるのに必要な推力F0を算出し、この推力F0に所定の増分αを加算して目標推力F1を設定しているため、モータMに印加される電流値を抑えることができ、消費電力を削減できる。これにより、キャリパ4での発熱を防止して安定したブレーキ性能を発揮できる。しかも、目標推力は必要な推力に対して増分αだけ大きく設定されており、外乱等の影響により車両が移動することを防止できる。
【0037】
この増分αは、前記のように車両が停止している状態により変化させると共に、ブレーキパッドの状態で変化させる。例えば、ブレーキペダルの踏み込み量が同じで発生される推力が同じ場合でも、ブレーキパッドが新品の場合は大きい制動力が発生し、摩耗時には小さい制動力が発生するため、摩耗量により増分αを変化させる。この場合には、摩耗量が所定の範囲では一定の増分を加え、摩耗量が一定以上、すなわち残量が一定以下の場合には増分を増やすように変化させている。この推力の増分は、単純に摩耗量が一定以上のとき、例えば10%増しにするように設定してもよい。
【0038】
これにより、運転者からのブレーキペダルの踏み込みによる必要以上の推力要求に対して最大推力を制限することで無駄な消費電力ならびに発熱を抑制することができる。運転者によりブレーキペダルが解除されると(S9)、最大推力制限は解除され、目標推力は「0」に設定される(S10)。なお、最大推力制限の解除(S10)は、ブレーキペダルの解除の変わりに、車両が再び動き出したことを車輪速センサ8で判断したとき、行うようにしてもよい。
【0039】
図4は、図3のフローチャートにしたがって、最大推力制限処理を行なった場合における、運転者のブレーキペダル踏み込み量に対する発生推力を示したものである。最大推力制限処理は、運転者がブレーキペダル踏み込み操作により、車両を停止させるために必要とした推力を推力センサ7で検出し、その推力値を基に最大推力制限時の推力値設定を行なう。
【0040】
最大推力制限時は、推力センサ7により検出した運転者のブレーキペダル踏み込みによる実推力Fと、車両停車に必要な推力F0に対して、所定の増分αを加算した目標推力F1とを電動ブレーキコントローラ3内の演算装置部26で比較判断し、実推力Fが目標推力F1より大きいときには小さいほうの目標推力に相当する推力を発生させる。最大推力制限処理は、運転者の必要以上のブレーキペダル踏み込みによる必要以上の推力要求に対して消費電力と発熱を抑えることを可能とすると共に、停止している車両に外乱等が作用しても、所定の増分αを加算した目標推力F1で停止させているため、車両の停止状態を安定させることができる。
【0041】
前記した図3と図4に基づく説明は、走行中の車両が運転者のブレーキペダル操作により停車し、運転者のブレーキペダル操作のみで車両の停止状態を維持する場合の最大推力制限制御である。これは、電動ブレーキ用のキャリパ4と駐車ブレーキ11がそれぞれ独立している電動ブレーキ装置Bと、電動ブレーキ用のキャリパ4が駐車ブレーキ機能を兼ね備える一体化した電動ブレーキ装置においても、同様に電動ブレーキコントローラ3で制御可能である。
【0042】
図5は、走行中の車両が運転者のブレーキペダル操作により停車し、その後、運転者の駐車ブレーキ操作により、停車状態を維持する場合の電動ブレーキコントローラ3で実行される最大推力制限処理(S11)のフローチャートを示す。
【0043】
車両走行時は、車輪速センサ8により車速情報検出(S12)を常に行う。運転者のブレーキペダル踏み込み操作により車両が停止し車速が「0」(S13)になり、運転者が駐車ブレーキ操作スイッチ15を押して駐車ブレーキ操作(S14)したことを電動ブレーキコントローラ3で検出すると、最大推力制限を開始する(S15)。この最大推力制限は、図3のS5、S6と同様に、車両を停止状態に維持するのに必要な推力に対して、所定の増分βを加算した目標推力を算出し、目標推力に相当する電流がモータドライバ部から出力され、モータM1が回転することで必要な推力よりわずかに大きい制動力が発生される。車両は必要な推力より大きい目標推力に相当する制動力で停止されるため、停止状態が安定して外乱等が加わっても停止状態を維持することができる。その後、運転者が駐車ブレーキ11を解除(S16)することで最大推力制限が解除(S17)される。
【0044】
次に、図5で示した駐車ブレーキ操作のフローチャートにしたがって、最大推力制限を行なう2つの処理方法について説明する。
【0045】
先ず、第1の処理方法について、図6〜8を参照して以下に説明する。図6は、駐車ブレーキ操作時のディスクロータ6に加わる推力値を示している。駐車ブレーキ操作時は、運転者のブレーキペダル踏み込み操作によらず一定の駐車推力F2がディスクロータ6に加えられ車両の停止状態を維持している。この場合、最大推力制限は、運転者がブレーキペダル踏み込み操作を行なった際に発生させる推力について行う。
【0046】
図7は、最大推力制限時における運転者のブレーキペダル踏み込み量に対するディスクロータに加わる推力を示している。運転者がブレーキペダル操作によりディスクロータに加わる最大推力は、駐車ブレーキがディスクロータに加える推力値に比べて小さく制限し、増分βとする。このように最大推力を一定の駐車推力F2に対して、車両を停止させるために必要な推力と、増分βを加算した目標推力F3(図8参照)に制限することで、運転者からのブレーキペダル踏み込みによる無駄な推力要求に対して、消費電力および発熱を抑えることが可能となると共に、停止状態が安定する。
【0047】
図8は、図6で示した駐車ブレーキ操作時に、図7の運転者がブレーキペダル踏み込み操作を行なった場合におけるディスクロータに加わる推力を示している。この場合、ディスクロータ6に加わる推力F3は、駐車ブレーキが発生している駐車推力F2と、運転者のブレーキペダル操作による増分βとが加えられた値となる。このため駐車ブレーキ操作時に、外乱等が車両に作用した場合でも車両が移動するのを防止でき、車両を安定して停止させることが可能となる。
【0048】
第2の処理方法を、図9を参照して以下に説明する。この処理方法においても、第1の処理方法と同様に最大推力制限処理は、運転者のブレーキペダル踏み込み操作について行われる。図9は、最大推力制限時における運転者のブレーキペダル踏み込み操作によって、ディスクロータに加わる推力を示している。
【0049】
運転者がブレーキペダル操作により、ディスクロータに加わる最大推力は、駐車ブレーキ操作によりディスクロータに加える推力値と同等以上の推力値に制限する。すなわち、駐車ブレーキ発生推力F4に対して、車両を停止させるために必要な推力と、所定の増分γを加算した推力を目標推力F5とする。この方法により、運転者からのブレーキペダルの踏み込みによる必要以上の推力要求に対して、発生させる推力を目標推力F5に制限するため、駐車ブレーキ11で消費する消費電力および発熱を抑えることが可能となる。また、目標推力F5は、車両を停止させるために必要な推力と増分γとが加算されており、停止状態は安定する。
【0050】
この最大推力制限処理方法は、駐車ブレーキ操作時にもかかわらず、何等かのトラブルにより車両に外力が作用した場合や、最大推力制限が解除されない場合においても、車両を停止させるために必要な推力よりも増分γだけ大きい推力を発生させることができるため、車両を安定した状態で停止させることが可能となる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、ブレーキパッドはディスクロータの両側から一対のブレーキパッドで挟む構成を示したが、二対のブレーキパッドで挟むように構成してもよい。また、車両の傾斜状態を検出する手段としてGセンサの例を示したが、Gセンサに限らない傾斜センサを用いてもよいことは勿論である。
【0052】
前記の実施形態では、駐車ブレーキとしてキャリパ部と別体の電動ブレーキの例を示したが、キャリパ部内のモータで変換機構を介してブレーキパッドをディスクロータに押圧して制動力を発生させ、ラチェット機構等を用いて前記の制動力を保持するように構成した内蔵型の駐車ブレーキを用いてもよい。内蔵型の駐車ブレーキでは、別体の駐車ブレーキと比較して構成を簡略化することができる。
【0053】
前記の目標推力と比較する実推力として、推力センサからの出力を用いる例を示したが、ブレーキペダルのストロークセンサからの出力を用いて実推力を算出するように構成し、このようにして算出された実推力と目標推力とを比較するように構成してもよい。このように、ストロークセンサを用いて実際にブレーキパッドがディスクロータを押圧する実推力を算出すると、推力センサを省略することができ、構成を簡略化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の活用例として、この電動ブレーキ装置を用いることによって鉄道車両や、航空機等のブレーキ装置の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態の電動ブレーキ装置を示す構成図。
【図2】図1の電動ブレーキコントローラの内部構成を示すブロック図。
【図3】本発明の運転者のブレーキペダル操作による車両停止維持状態での最大推力制限処理を示すフローチャート。
【図4】図3における最大推力制限時のブレーキペダル踏み込み量に対する目標推力を示した説明図。
【図5】本発明の運転者の駐車ブレーキ操作による車両停止維持状態での最大推力制限処理を示すフローチャート。
【図6】図5における最大推力制限処理方法1での駐車ブレーキ発生推力値を示した説明図。
【図7】図5における最大推力制限処理方法1でのブレーキペダル踏み込み量に対する発生推力値を示した説明図。
【図8】図5における最大推力制限処理方法1でのディスクロータに加わる目標推力を示した説明図。
【図9】図5における最大推力制限処理方法2でのブレーキペダル踏み込み量に対する目標推力を示した説明図。
【符号の説明】
【0056】
1…ブレーキペダル、2…ストロークセンサ、3…電動ブレーキコントローラ、4…キャリパ、5…ブレーキパッド、6…ディスクロータ、7…推力センサ、8…車輪速センサ、9…車重センサ、10…Gセンサ(傾斜センサ)、11…駐車ブレーキ(別体の電動駐車ブレーキ)、12…ブレーキパッド、13…駐車ブレーキ推力センサ、14…駐車ブレーキ動作センサ、15…駐車ブレーキ操作スイッチ、21…電源部、22…モータドライバ部(推力制御手段)、23…モータ電流検出部、24…電動ブレーキ側インターフェース、25…車両側インターフェース部、26…演算装置部(算出手段)、B…電動ブレーキ装置、F…実推力、F0…必要な推力、F1,F3,F5…目標推力、F2,F4…駐車推力、α:所定の増分、β、γ:必要な推力を含む所定の増分




 

 


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