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発明の名称 車両用ブレーキ液圧制御装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−30770(P2007−30770A)
公開日 平成19年2月8日(2007.2.8)
出願番号 特願2005−219429(P2005−219429)
出願日 平成17年7月28日(2005.7.28)
代理人 【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
発明者 黒崎 崇史 / 高橋 進 / 小島 武志 / 吉田 達 / 本庄 史明
要約 課題
真の横加速度に対して大きくかけ離れない推定横加速度の値を求め、好適なブレーキ液圧制御を行う。

解決手段
車輪速度から仮横加速度を計算する仮横加速度計算部21bと、同軸左右の各車輪のブレーキ液圧を推定するブレーキ液圧推定部21dと、推定されたブレーキ液圧のうち液圧が小さい方のブレーキ液圧にから推定横加速度補正用の減算量を取得する減算量取得部21eと、計算された仮横加速度から減算量を減算して推定横加速度を計算する推定横加速度計算部21fと、計算された推定横加速度から車輪ブレーキのブレーキ制御を行うブレーキ制御部とを備え、ブレーキ制御中に、推定横加速度計算部21fは、前回の推定横加速度から減算量をさらに減算して推定横加速度を計算する。
特許請求の範囲
【請求項1】
車輪速度から車両の仮横加速度を計算する仮横加速度計算部と、
同軸に配置された左右の各車輪の車輪ブレーキにおけるブレーキ液圧を推定するブレーキ液圧推定部と、
推定されたブレーキ液圧のうち、液圧が小さい方のブレーキ液圧に基づいて、推定横加速度補正用の減算量を取得する減算量取得部と、
計算された仮横加速度から減算量を減算して推定横加速度を計算する推定横加速度計算部と、
計算された推定横加速度に基づいて前記左右車輪ブレーキのブレーキ圧を個別に制御するブレーキ制御部と、を備え、
ブレーキ制御中における前記推定横加速度計算部は、前回の推定横加速度から前記減算量をさらに減算して今回の推定横加速度を計算することを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項2】
ブレーキ制御中における前記推定横加速度計算部は、前回の推定横加速度、および前記仮横加速度計算部により算出された仮横加速度のうち、小さい方を今回の推定横加速度とすることを特徴とする請求項1に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項3】
前記減算量取得部は、推定されたブレーキ液圧が所定値より小さくなった場合に、前記所定値より小さくなるにしたがい減算量が大きくなるように予め定められた関係に基づいて、減算量を定めることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項4】
前記ブレーキ液圧推定部は、少なくとも前輪側の前記車輪ブレーキのブレーキ液圧を推定することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項5】
車輪速度から車両の仮横加速度を計算する仮横加速度計算部と、
同軸に配置された左右の各車輪の車輪ブレーキにおけるブレーキ液圧を推定するブレーキ液圧推定部と、
推定されたブレーキ液圧のうち、液圧が小さい方のブレーキ液圧に基づいて、推定横加速度補正用の減算量を取得する減算量取得部と、
計算された仮横加速度から減算量を減算して推定横加速度を求める推定横加速度計算部と、
求められた推定横加速度に基づいて前記左右車輪ブレーキのブレーキ圧を個別に制御するブレーキ制御部と、を備えたことを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項6】
前記減算量取得部は、取得した減算量を累積して有しており、
前記推定横加速度計算部は、前記仮横加速度計算部により計算された仮横加速度から累積した減算量を減算して推定横加速度を計算することを特徴とする請求項5に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項7】
前記ブレーキ制御部によるブレーキ制御は、アンチロックブレーキ制御であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ブレーキ液圧制御装置に関し、例えば、同軸に配置された左右の各車輪で路面摩擦係数が異なるような路面、いわゆるスプリット路面における好適な制動を行うことができる車両用ブレーキ液圧制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の旋回時における横加速度(車両の横方向にかかる加速度)を推定して、この推定した推定横加速度に基づいて車輪ブレーキを制御する車両用ブレーキ液圧制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この車両用ブレーキ液圧制御装置では、車輪速度に基づいて左右輪の車輪速度差を演算するとともに、推定車体速度を求め、これらから推定横加速度の計算を行うようになっている。この車両用ブレーキ液圧制御装置によれば、車輪速度からの情報に基づいて推定横加速度が求まることから高価な加速度センサを用いずに推定横加速度の検出が可能である。
【特許文献1】特開平9−86377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来の車両用ブレーキ液圧制御装置では、車輪がスリップすることなく地面に追従して回転していることを前提に推定横加速度を計算している。このため、左右の車輪で路面摩擦係数が異なるスプリット路面などにおいて、ブレーキ操作により左右の車輪のいずれかが路面に追従しなくなってスリップした場合には、横加速度が実際よりも大きく生じているような誤った推定横加速度の値を算出してしまい、好適なブレーキ液圧制御を行うことができないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明では、スプリット路面などにおいても、左右の車輪速度から、真の横加速度に対して大きくかけ離れない推定横加速度の値を求め、好適なブレーキ液圧制御を行うことができる車両用ブレーキ液圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため請求項1に記載の発明は、車輪速度から車両の仮横加速度を計算する仮横加速度計算部と、同軸に配置された左右の各車輪の車輪ブレーキにおけるブレーキ液圧を推定するブレーキ液圧推定部と、推定されたブレーキ液圧のうち、液圧が小さい方のブレーキ液圧に基づいて、推定横加速度補正用の減算量を取得する減算量取得部と、計算された仮横加速度から減算量を減算して推定横加速度を計算する推定横加速度計算部と、計算された推定横加速度に基づいて前記左右車輪ブレーキのブレーキ圧を個別に制御するブレーキ制御部と、を備え、ブレーキ制御中における前記推定横加速度計算部は、前回の推定横加速度から前記減算量をさらに減算して今回の推定横加速度を計算することを特徴とする。
【0007】
このような車両用ブレーキ液圧制御装置によれば、仮横加速度計算部により車輪速度から車両の仮横加速度が算出され、ブレーキ液圧推定部により同軸に配置された左右の各車輪の車輪ブレーキにおけるブレーキ液圧が推定される。減算量取得部は、この推定されたブレーキ液圧のうち、液圧が小さい方のブレーキ液圧に基づいて、推定横加速度補正用の減算量を取得する。つまり、例えば、スプリット路面におけるブレーキ制御時にブレーキ液圧制御等が働いて、左右の車輪の各車輪ブレーキにおける推定されたブレーキ液圧に差が生じたような場合に、ブレーキ液圧が小さく推定された方の車輪の状態(ブレーキ液圧)から、推定横加速度の計算に反映させるべく推定横加速度補正用の減算量が取得される。そして、推定横加速度計算部により、取得された減算量が仮横加速度から減算されて推定横加速度が求められ、この推定横加速度に基づいて制御装置により車輪ブレーキのブレーキ制御が行われる。
【0008】
これによって、ブレーキ液圧制御等によるブレーキ制御時に、左右の車輪のいずれかがスリップして推定横加速度が実際よりも大きく計算され得る状況になっても、仮横加速度から減算量が減算されて推定横加速度に基づいてブレーキ制御が行われることとなる。
【0009】
しかも、推定横加速度計算部は、前回の推定横加速度から減算量をさらに減算して今回の推定横加速度を推定するので、前回行われたブレーキ制御時の、前回の推定横加速度を踏まえてそこからさらに今回の推定横加速度が求められることとなり、真の横加速度に対して大きくかけ離れない推定横加速度の計算が可能となる。
【0010】
また、請求項2に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置は、請求項1に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置において、ブレーキ制御中における前記推定横加速度計算部は、前回の推定横加速度、および前記仮横加速度計算部により算出された仮横加速度のうち、小さい方を今回の推定横加速度とすることを特徴とする。
【0011】
このような車両用ブレーキ液圧制御装置によれば、ブレーキ制御中において推定横加速度計算部が、前回の推定横加速度と仮横加速度計算部により算出された仮横加速度のうち小さいほうを推定横加速度とするので、何らかの原因で仮横加速度よりも前回の推定横加速度のほうが大きくなるような状況下においても、常に、真の横加速度に対して大きくかけ離れないほうが今回の推定横加速度として求められることとなる。
【0012】
さらに、請求項3に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置は、請求項1または請求項2に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置において、前記減算量取得部は、推定されたブレーキ液圧が所定値より小さくなった場合に、前記所定値より小さくなるにしたがい減算量が大きくなるように予め定められた関係に基づいて、減算量を定めることを特徴とする。
【0013】
このような車両用ブレーキ液圧制御装置によれば、推定されたブレーキ液圧が所定値より小さくなった場合に減算量を定めるようになっているので、推定されたブレーキ液圧に基づいて車両がスプリット路面(低μ路)走行中であるか否かを判断して、スプリット路面走行中であると判断されたときに減算量を定めるようにする制御等を行うことができる。
【0014】
また、減算量は、ブレーキ液圧が所定値より小さくなるにしたがい減算量が大きくなるように予め定められた関係に基づいて定められるので、スリップしやすい路面ほど減算量が大きくなり、真の横加速度に対して大きくかけ離れない推定横加速度の計算が可能となる。
【0015】
また、請求項4に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置において、前記ブレーキ液圧推定部は、少なくとも前輪側の前記車輪ブレーキのブレーキ液圧を推定することを特徴とする。
【0016】
このような車両用ブレーキ液圧制御装置によれば、ブレーキ制御時に路面の状況が表れやすい、前輪側を主として車輪ブレーキのブレーキ液圧が推定されるので、より信頼性の高い横加速度の減算量が得られ、これによって、路面状況に合わせた好適なブレーキ制御を行うことができる。
【0017】
さらに、請求項5に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置は、車輪速度から車両の仮横加速度を計算する仮横加速度計算部と、同軸に配置された左右の各車輪の車輪ブレーキにおけるブレーキ液圧を推定するブレーキ液圧推定部と、推定されたブレーキ液圧のうち、液圧が小さい方のブレーキ液圧に基づいて、推定横加速度補正用の減算量を取得する減算量取得部と、計算された仮横加速度から減算量を減算して推定横加速度を求める推定横加速度計算部と、求められた推定横加速度に基づいて前記左右車輪ブレーキのブレーキ圧を個別に制御するブレーキ制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
このような車両用ブレーキ液圧制御装置によれば、仮横加速度計算部により車輪速度から車両の仮横加速度が算出され、ブレーキ液圧推定部により同軸に配置された左右の各車輪の車輪ブレーキにおけるブレーキ液圧が推定される。減算量取得部は、この推定されたブレーキ液圧のうち、液圧が小さい方のブレーキ液圧に基づいて、推定横加速度補正用の減算量を取得する。つまり、例えば、スプリット路面におけるブレーキ制御時にブレーキ液圧制御等が働いて、左右の車輪の各車輪ブレーキにおける推定されたブレーキ液圧に差が生じたような場合に、ブレーキ液圧が小さく推定された方の車輪の状態(ブレーキ液圧)から、推定横加速度の計算に反映させるべく推定横加速度補正用の減算量が取得される。そして、推定横加速度計算部により、取得された減算量が仮横加速度から減算されて推定横加速度が求められ、この推定横加速度に基づいて制御装置により車輪ブレーキのブレーキ制御が行われる。
【0019】
これによって、ブレーキ液圧制御等によるブレーキ制御時に、左右の車輪のいずれかがスリップして推定横加速度が実際よりも大きく計算され得る状況になっても、仮横加速度から減算量が減算されて推定横加速度に基づいてブレーキ制御が行われることとなる。
【0020】
また、請求項6に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置は、請求項5に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置において、前記減算量取得部は、取得した減算量を累積して有しており、前記推定横加速度計算部は、前記仮横加速度計算部により計算された仮横加速度から累積した減算量を減算して推定横加速度を計算することを特徴とする。
【0021】
このような車両用ブレーキ液圧制御装置によれば、減算量取得部が、取得した減算量を累積して有しており、推定横加速度計算部が、仮横加速度から累積した減算量を減算して推定横加速度を計算するので、前回行われたブレーキ制御時の前回推定横加速度を踏まえてさらに今回の推定横加速度が計算されることとなり、真の横加速度に対して大きくかけ離れない推定横加速度の計算が可能となる。
【0022】
さらに、請求項7に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置は、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置において、前記ブレーキ制御部によるブレーキ制御は、アンチロックブレーキ制御であることを特徴とする。
【0023】
このような車両用ブレーキ液圧制御装置によれば、推定横加速度が反映されたアンチロックブレーキ制御をスプリット路面におけるブレーキ時に行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、スプリット路面などにおいても、左右の車輪速度から、真の横加速度に対して大きくかけ離れない推定横加速度の値を求め、好適なブレーキ液圧制御を行うことができる車両用ブレーキ液圧制御装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置を備えた車両のブレーキ系を示す構成図、図2は液圧ユニットの液圧回路図である。
【0026】
図1に示すように、車両用ブレーキ液圧制御装置100は、車両CRの各車輪Tに付与する制動力(ブレーキ液圧)を適宜制御するためのものであり、油路や各種部品が設けられた液圧ユニット10と、この液圧ユニット10内の各種部品を適宜制御するための制御装置20とを主に備えている。また、この車両用ブレーキ液圧制御装置100の制御装置20には、車両CRの各車輪Tの車輪速度、詳細には車輪Tの回転速度を検出するための車輪速センサ30が接続されている。なお、車両CRは、前輪側が駆動輪となる前輪駆動車として説明する。
液圧ユニット10から出力されるブレーキ液圧は、配管を介して各車輪Tに設けられたホイールシリンダHに供給されるようになっており、各ホイールシリンダHを介して各車輪Tに設けられた車輪ブレーキFL,RR,RL,FRにブレーキ液圧が付与されるようになっている。
また、制御装置20は、例えば、CPU、RAM、ROMおよび入出力回路を備えており、各車輪速センサ30からの入力と、ROMに記憶されたプログラムやデータに基づいて各種演算処理を行うことによって、制御を実行する。また、ホイールシリンダHは、マスタシリンダMおよび車両用ブレーキ液圧制御装置100により発生されたブレーキ液圧を各車輪Tに設けられた車輪ブレーキFL,RR,RL,FRの作動力に変換する液圧装置であり、それぞれ配管を介して車両用ブレーキ液圧制御装置100の液圧ユニット10に接続されている。
【0027】
車輪速センサ30は、各車輪Tの車輪速度を検出するセンサであり、各車輪Tのそれぞれに1つずつ設けられている。各車輪速センサ30は、前記のように制御装置20に接続されており、これにより制御装置20が4つの車輪(四輪)Tの全ての車輪速度を取得することが可能となっている。
【0028】
図2に示すように、車両用ブレーキ液圧制御装置100は、運転者がブレーキペダルPに加える踏力に応じたブレーキ液圧を発生するマスタシリンダMと、車輪ブレーキFL,RR,RL,FRとの間に配置されている。マスタシリンダMの二つの出力ポートM1,M2は、基体であるポンプボディ10aの入口ポート121に接続され、ポンプボディ10aの出口ポート122が、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRに接続されている。そして、通常時は車両用ブレーキ液圧制御装置100内の入口ポート121から出口ポート122までが連通した油路となっていることで、ブレーキペダルPの踏力が各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRに伝達されるようになっている。
【0029】
車両用ブレーキ液圧制御装置100には、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRに対応して四つの入口弁1、四つの出口弁2、および四つのチェック弁1aが設けられる。また、出力ポートM1,M2に対応した各出力液圧路81,82に対応して二つのリザーバ3、二つのポンプ4、二つのダンパ5、二つのオリフィス5aが設けられ、二つのポンプ4を駆動するための電動モータ6を備えている。
【0030】
入口弁1は、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRとマスタシリンダMとの間に配置された常開型の電磁弁である。入口弁1は、通常時に開いていることで、マスタシリンダMから各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRへブレーキ液圧が伝達するのを許容している。また、入口弁1は、車輪Tがロックしそうになったときに制御装置20により閉塞されることで、ブレーキペダルPから各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRに伝達する液圧を遮断する。
【0031】
出口弁2は、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRと各リザーバ3との間に配置された常閉型の電磁弁である。出口弁2は、通常時に閉塞されているが、車輪Tがロックしそうになったときに制御装置20により開放されることで、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRに加わるブレーキ液圧を各リザーバ3に逃がす。
【0032】
チェック弁1aは、各入口弁1に並列に接続されている。このチェック弁1aは、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FR側からマスタシリンダM側へのブレーキ液の流入のみを許容する弁であり、ブレーキペダルPからの入力が解除された場合に入口弁1を閉じた状態にしたときにおいても、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FR側からマスタシリンダM側へのブレーキ液の流入を許容する。
【0033】
リザーバ3は、各出口弁2が開放されることによって逃がされるブレーキ液を吸収する機能を有している。
ポンプ4は、リザーバ3で吸収されているブレーキ液を吸入し、そのブレーキ液をダンパ5やオリフィス5aを介してマスタシリンダMへ戻す機能を有している。これにより、リザーバ3によるブレーキ液圧の吸収によって減圧された各出力液圧路81,82の圧力状態が回復される。
【0034】
図3は、実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置100の要部のブロック構成図であり、図4は、横加速度推定部の詳細を示すブロック構成図である。
図3に示すように、制御装置20は、各車輪速センサ30が検出した車輪Tの回転速度に基づき、液圧ユニット10内の各入口弁1および出口弁2(図2参照)の開閉動作を制御して、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRの動作を制御するものである。
制御装置20は、機能部として横加速度推定部21、ブレーキ制御部24とを有する。また、横加速度推定部21はマップ記憶部21Aを有し、ブレーキ制御部24は、目標液圧設定部25および弁駆動部26を有する。
【0035】
横加速度推定部21は、従動輪となる左後輪の車輪速度と右後輪の車輪速度とを車輪速センサ30,30により入力し、車両CRの推定横加速度を計算する。このように、推定横加速度を計算するのに用いる車輪速度は、路面への追従性が良い従動輪のものを用いているが、必ずしもその必要はなく、駆動輪や、4輪全ての車輪速度を用いてもよい。
横加速度推定部21は、図4に示すように、さらに詳細な機能部として、車輪速計算部21a、仮横加速度計算部21b、マスタシリンダ圧推定部21c、ブレーキ液圧推定部21d、減算量取得部21e、推定横加速度計算部21fを備える。
【0036】
車輪速計算部21aは、左後輪、右後輪の車輪速センサ30がそれぞれ出力した車輪Tの回転速度ωRL,ωRRに基づき、車輪Tの半径を乗じて車輪速度V,Vを計算する。計算した車輪速度V,Vは、仮横加速度計算部21bに出力される。
【0037】
仮横加速度計算部21bは、従来と同じ方法により、車輪速度V,Vから仮横加速度Gy′(n)を計算する。例えば、仮横加速度Gy′(n)を、次式
Gy′(n)=(V−V)×(V+V)/2×TR・・・(1)
により計算する。ここで、TRは後輪のトレッド(輪距)である。なお、本明細書において、Gy′などの変数に続けて記す(n)は、今回の計算結果を示し、(n−1)は、前回の計算結果を示す。
【0038】
マスタシリンダ圧推定部21cは、公知の方法によりマスタシリンダMの液圧を推定する。推定方法としては、例えば、ブレーキ開始時に車輪Tの各車輪速センサ30がそれぞれ出力した回転速度ωRL,ωRR,ωFL,ωFRを入力し、これらと前後の車輪Tの減速度との関係から、路面摩擦係数別に作られた図示しないマップなどに基づいてマスタシリンダ圧MCを推定する方法等がある。なお、マスタシリンダ圧MCは、図示しない圧力センサをマスタシリンダMからの油路に設けて検出するようにしてもよいし、また、ブレーキペダルPのストロークを検出する図示しないストロークセンサを設けて、このストロークセンサと予め関連付けられたマップからマスタシリンダ圧MCを推定するようにしてもよい。
【0039】
ブレーキ液圧推定部21dは、同軸に配置された左右の各車輪Tの車輪ブレーキにおけるブレーキ液圧を推定する。本実施形態では、駆動輪となる左前輪と右前輪のブレーキ液圧を推定する。ブレーキ液圧の推定は、アンチロックブレーキ制御中か否かで異なっており、アンチロックブレーキ非制御中においては、マスタシリンダ圧推定部21cで推定したマスタシリンダ圧MCをブレーキ液圧PCAL(n)として推定する。これは、アンチロックブレーキ非制御中は、マスタシリンダMからのブレーキ液圧がポンプボディ10a内の液路を通じて各車輪Tの車輪ブレーキFL,FR,RL,RRに直接かかるからであり、マスタシリンダ圧MCが左前輪と右前輪のブレーキ液圧PCAL(n)となるからである。
【0040】
次に、アンチロックブレーキ制御中においては、ブレーキ液圧が減圧制御されている場合と増圧制御されている場合とで、ブレーキ液圧の推定方法が異なっている。はじめに、ブレーキ液圧が減圧制御されている場合には、前回ブレーキ液圧PCAL(n−1)とゼロ気圧(減圧目標値)との偏差に係数kをかけて、これを、前回のブレーキ液圧PCAL(n−1)から減算してブレーキ液圧PCAL(n)を計算する。このブレーキ液圧PCAL(n)は、次式
PCAL(n)=PCAL(n−1)−(k×(PCAL(n−1)−0))・・・(2)
により求めることができる。ここで、係数kは、入口弁1、出口弁2の駆動時間により設定された所定の値である。
【0041】
また、ブレーキ液圧が増圧制御されている場合には、前回ブレーキ液圧PCAL(n−1)とマスタシリンダ圧MCとの偏差に係数kをかけて、これを、前回ブレーキ液圧PCAL(n−1)に加えてブレーキ液圧PCAL(n)を計算する。このブレーキ液圧PCAL(n)は、次式
PCAL(n)=PCAL(n−1)+(k×(MC(n)−PCAL(n−1)))・・・(3)
により求めることができる。
計算された左右の各車輪Tにおけるブレーキ液圧PCAL(n)は、減算量取得部21eへ出力される。
【0042】
減算量取得部21eは、ブレーキ液圧推定部21dにより推定された同軸の左右の車輪Tにおけるブレーキ液圧のうち、液圧が小さい方のブレーキ液圧を特定し、そのブレーキ液圧に基づいて、推定横加速度補正用の減算量DecGyを取得する。減算量DecGyは、マップ記憶部21Aに記憶されたマップを参照して取得する。
マップ記憶部21Aが記憶しているマップは、例えば、図5に示すようなものである。図5に示すように、マップ記憶部21Aのマップは、推定されたブレーキ液圧が所定値より小さくなった場合に、所定値より小さくなるにしたがい減算量DecGyが大きくなるように定められている。
【0043】
図5のマップをより詳しく説明すると、ブレーキ液圧が中くらいから大きいとき、およそ1.5MPaから3.0MPaでは、減算量DecGyが0となっている。そして、およそ1.5MPaを境に、ブレーキ液圧が小さくなるにしたがい減算量DecGyが大きくなるようになっている。ここで、1.5MPaを境にブレーキ液圧が小さくなる側で減算量が生じるように定めたのは、ブレーキ液圧が小さくなるスプリット路面走行時に減算量が取得されるようにするためであり、そのブレーキ液圧と減算量の設定は任意に行うことができる。また、1.5MPaよりブレーキ液圧が小さくなるにしたがい減算量DecGyが大きくなるようにしたのは、ブレーキ液圧が小さくなるにしたがい、つまり、路面摩擦係数が小さくスリップし易いスプリット路面となるにしたがい、仮横加速度Gy′(n)の計算が誤計算されやすい(真の横加速度からかけ離れた値に計算されやすい)傾向にあるからであり、そのようなスリップし易いスプリット路面において、減算量DecGyを大きくすることにより、推定横加速度Gy(n)を小さく抑えることができる。
【0044】
推定横加速度計算部21fは、仮横加速度計算部21bが計算した仮横加速度Gy′(n)と減算量取得部21eが取得した減算量DecGyとに基づき、アンチロックブレーキ制御中は、次式で推定横加速度(今回の推定横加速度)Gy(n)を計算する。推定横加速度Gy(n)は、
Gy(n)=min(Gy′(n),Gy(n−1)−DecGy(n))・・・(4)
により求めることができる。つまり、ブレーキ制御中における推定横加速度計算部21fは、前回の推定横加速度Gy(n−1)から減算値DecGy(n)を減算した値、および仮横加速度計算部21bにより算出された仮横加速度Gy′(n)の値うち、小さいほうを今回の推定横加速度Gy(n)とする。計算された推定横加速度Gy(n)は、ブレーキ制御部24の目標液圧設定部25へ出力される。
【0045】
目標液圧設定部25は、横加速度推定部21が推定した推定横加速度Gy(n)および車輪速センサ30が検出した車輪Tの回転速度ωに基づき各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRの目標液圧を設定する。この設定の方法は、従来公知の方法により行えばよく、特に限定されない。一例をあげれば、4つの車輪Tの回転速度ωから、各車輪Tの車輪速度Vを計算し、この車輪速度Vから車体速度を推定する。そして、車体速度と車輪速度Vからスリップ率を計算する。さらに、推定横加速度Gy(n)と前後の車体加速度に基づき、合成加速度を演算し、この合成加速度から路面の摩擦係数を推定する。そして、この摩擦係数、スリップ率、および現在のホイールシリンダHの液圧に基づいて各車輪ブレーキFL,RL,FR,RRの目標液圧を設定することができる。
【0046】
弁駆動部26は、各車輪ブレーキFL,RL,FR,RRのホイールシリンダHの液圧が目標液圧設定部25の設定した目標液圧に一致するように、従来公知の方法により液圧ユニット10内の各入口弁1および出口弁2を作動させるパルス信号を液圧ユニット10へ出力する。このパルス信号は、例えば、現在のホイールシリンダHの液圧と目標液圧との偏差が大きいほど多くのパルスを出力するようにする。なお、現在のホイールシリンダHの液圧は、センサにより測定してもよいし、計算により推定してもよい。
【0047】
以上のような車両用ブレーキ液圧制御装置100の動作について、図6および図7を参照しながら説明する。図6は、スプリット路面でアンチロックブレーキ制御が動作した場合の車輪速度(a)、低μ側の車輪のブレーキ液圧(b)、減算量(c)、仮横加速度および計算された推定横加速度(d)のタイミングチャートであり、図7は、横加速度推定部の処理を示すフローチャートである。
【0048】
図6(a)に示すように、車両CRの直進制動中にアンチロックブレーキ制御が始まった場合、例えば、高μ側の車輪Tの車輪速度Vは、徐々に減速されてゆく一方で、低μ側の車輪Tの車輪速度Vは、路面の状況に応じてブレーキ液圧が調整され(図6(b)参照)加減速を繰り返す。これに伴い、高μ側の車輪Tと低μ側の車輪Tとの間にブレーキ液圧の差が生じ、ブレーキ液圧が小さい方のブレーキ液圧、つまり、低μ側の車輪Tのブレーキ液圧に基づいて減算量DecGyが取得される。そして、図6(d)に示すように、仮横加速度Gy′(n)から、取得した減算量DecGyが減算され、推定横加速度Gy(n)が計算される。このとき、前回の推定横加速度Gy(n−1)から減算量DecGyをさらに減算して今回の推定横加速度Gy(n)が推定される。そのため、図6(d)に太線で示すように、推定横加速度Gy(n)の計算結果は、仮横加速度Gy′(n)が変動を繰り返しつつ時間をかけて徐々にゼロとなるのに比べて、早期に推定横加速度Gy(n)の値が小さくなり、ゼロとなる。
【0049】
このときの計算処理は、図7に示すように、まず、車輪速度V,Vから、従来と同様にして仮横加速度Gy′(n)を計算し(S1)、車輪Tの各車輪速センサ30がそれぞれ出力した回転速度ωRL,ωRR,ωFL,ωFRからマスタシリンダ圧MCを推定する(S2)。そして、この推定したマスタシリンダ圧MCをもとに前輪の左右の車輪Tのブレーキ液圧PCAL(n)を推定する(S3)。その後、推定されたブレーキ液圧PCAL(n)のうち、液圧が小さい方のブレーキ液圧PCAL(n)に基づいて、減算量DecGyをマップより取得する(S4)。次に、仮横加速度Gy′(n)から減算量DecGyを減算して推定横加速度Gy(n)を計算する(S5)。このとき、前回の推定横加速度Gy(n−1)から減算量DecGyをさらに減算して今回の推定横加速度Gy(n)を計算するようになっているので、図6(d)に示すように、前回の推定横加速度Gy(n−1)を踏まえてそこからさらに減算量DecGyが減算されることとなり、これによって今回の推定横加速度Gy(n)の変化が非常に小さくなり、直進中であるのに推定横加速度Gy(n)を大きな値に計算してしまうという推定ミスが緩和されて真の横加速度に近づく。また、図6(d)の時間tに示すように、急激に仮横加速度Gy′(n)が大きくなったような場合には、マップにより大きな値の減算量DecGyが取得されるので、推定横加速度Gy(n)の変化量を小さく抑えることができる。なお、ブレーキ制御中における横加速度推定部21は、前回の推定横加速度Gy(n−1)から減算値DecGy(n)を減算した値、および仮横加速度計算部21bにより算出された仮横加速度Gy′(n)の値うち、小さいほうを今回の推定横加速度Gy(n)とする(式(4)参照)ので、何らかの原因で仮横加速度Gy′(n)の値よりも前回の横加速度Gy(n−1)から減算値DecGy(n)を減算した値のほうが大きくなるような状況下においても、常に、推定横加速度Gy(n)の値が小さくなる方向で推定横加速度が計算されることとなる。
【0050】
以上のように、本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置100によれば、スプリット路面において、一部の車輪Tがロックしそうになって左右の車輪Tの推定されたブレーキ液圧PCAL(n)に差が生じたような場合でも、液圧が小さい方のブレーキ液圧PCAL(n)に基づいて仮横加速度Gy′(n)から減算量DecGyが減算され、推定横加速度Gy(n)の変化量を小さく抑えるので、比較的正確に推定横加速度Gy(n)を得ることができる。そのため、この推定横加速度Gy(n)を用いたアンチロックブレーキ制御においても、車両CRの状況を正確に予想して、適切な制御を行うことができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記した実施形態に限定されることなく、適宜変更して実施することができる。
例えば、前記実施形態では、前回の推定横加速度Gy(n−1)から減算量DecGyをさらに減算して今回の推定横加速度Gy(n)を求めるように構成したが、仮横加速度Gy′(n)から減算量DecGyを減算して今回の推定横加速度Gy(n)を求めるようにいてもよい。この場合、減算量取得部21eは、取得した減算量を累積するように構成して、仮横加速度Gy′(n)から累積した減算量を減算して今回の推定横加速度Gy(n)を求めるように構成してもよい。
さらに、ブレーキ液圧の推定は、少なくとも前輪側の車輪ブレーキFL,FRのブレーキ液圧を推定することにより行われるように構成することができる。このように構成することにより、ブレーキ制御時に路面の状況が表れやすい前輪側を主として車輪ブレーキFL,FRのブレーキ液圧が推定されるので、信頼性の高い推定横加速度の減算量が得られ、これによって、路面状況に合わせた好適なブレーキ制御を行うことができる。
また、本発明の横加速度計算方法(装置)は、アンチロックブレーキ制御に適用されるばかりでなく、横加速度を用いる他の制御にも適用することができる。例えば、推定横加速度に応じて適宜一部の車輪ブレーキの制動力やエンジンの出力を制御して車両の姿勢を制御したり、車体の傾きを制御したり、サスペンションの強さを制御したりしてもよい。
また、減算量DecGyを求めるのに、マップを用いたが、関数により求めることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施の形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置を備えた車両のブレーキ系を示す構成図である。
【図2】液圧ユニットの液圧回路図である。
【図3】実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置のブロック構成図である。
【図4】横加速度推定部の詳細を示すブロック構成図である。
【図5】ブレーキ液圧と減算量の関係を示すマップである。
【図6】スプリット路面でアンチロックブレーキ制御が動作した場合の車輪速度(a)、低μ側の車輪のブレーキ液圧(b)、減算量(c)、仮横加速度および推定横加速度(d)のタイミングチャートである。
【図7】横加速度推定部の処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
10 液圧ユニット
10a ポンプボディ
11 液圧ユニット
20 制御装置
21 横加速度推定部
21A マップ記憶部
21a 車輪速計算部
21b 仮横加速度計算部
21c マスタシリンダ圧推定部
21d ブレーキ液圧推定部
21e 減算量取得部
21f 推定横加速度計算部
23 弁駆動部
24 ブレーキ制御部
25 目標液圧設定部
26 弁駆動部
30 車輪速センサ
100 車両用ブレーキ液圧制御装置




 

 


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