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車両用ブレーキ液圧制御装置 - 日信工業株式会社
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発明の名称 車両用ブレーキ液圧制御装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−30757(P2007−30757A)
公開日 平成19年2月8日(2007.2.8)
出願番号 特願2005−219042(P2005−219042)
出願日 平成17年7月28日(2005.7.28)
代理人 【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
発明者 野村 信之 / 小島 武志
要約 課題
モータによる昇圧性能を維持しつつ、作動音および脈動を抑制することが可能な車両用ブレーキ液圧制御装置を提供する。

解決手段
車両用ブレーキ液圧制御装置は、出力液圧路に設けられたカット弁6と、カット弁6よりも車輪ブレーキ側の出力液圧路のブレーキ液圧を加圧可能なポンプ4と、ポンプ4を駆動するモータ9と、モータ9を駆動制御するモータ駆動部24と、各車輪ブレーキの目標液圧を設定する目標液圧設定部21と、各車輪ブレーキのブレーキ液圧を取得する圧力センサ8およびブレーキ液圧計算部22と、を備え、モータ駆動部24は、車輪ブレーキにおいて目標液圧がブレーキ液圧よりも大きく、その差が所定値以上の場合には、モータ9を最大デューティ比で駆動し、車輪ブレーキにおいて目標液圧がブレーキ液圧よりも大きく、その差が所定値未満の場合には、モータ9を最大デューティ比よりも小さいデューティ比で駆動する。
特許請求の範囲
【請求項1】
液圧供給手段に接続された一の液圧路が複数の車輪ブレーキに接続され、前記複数の車輪ブレーキのブレーキ液圧をそれぞれの目標液圧に制御する車両用ブレーキ液圧制御装置であって、
前記一の液圧路に設けられたリニアソレノイド弁と、
前記一の液圧路における前記リニアソレノイド弁よりも前記車輪ブレーキ側のブレーキ液圧を加圧可能なポンプと、
前記ポンプを駆動する回転数制御可能なモータと、
前記モータを回転数制御により駆動制御するモータ駆動部と、
各前記車輪ブレーキの目標液圧を設定する目標液圧設定部と、
各前記車輪ブレーキのブレーキ液圧を取得するブレーキ液圧取得手段と、
を備え、
前記モータ駆動部は、
前記車輪ブレーキにおいて前記目標液圧が前記ブレーキ液圧よりも大きく、その差が所定値以上の場合には、前記モータを最大回転数で駆動し、
前記車輪ブレーキにおいて前記目標液圧が前記ブレーキ液圧よりも大きく、その差が所定値未満の場合には、前記モータを前記最大回転数よりも小さい回転数で駆動する
ことを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項2】
液圧供給手段に接続された一の液圧路が複数の車輪ブレーキに接続され、前記複数の車輪ブレーキのブレーキ液圧をそれぞれの目標液圧に制御する車両用ブレーキ液圧制御装置であって、
前記一の液圧路に設けられたリニアソレノイド弁と、
前記リニアソレノイド弁よりも前記車輪ブレーキ側の液圧路のブレーキ液圧を加圧可能なポンプと、
前記ポンプを駆動する回転数制御可能なモータと、
前記モータを回転数制御により駆動制御するモータ駆動部と、
各前記車輪ブレーキの目標液圧を設定する目標液圧設定部と、
各前記車輪ブレーキのブレーキ液圧を取得するブレーキ液圧取得手段と、
を備え、
前記モータ駆動部は、
少なくとも一つの前記車輪ブレーキにおいて前記目標液圧が前記ブレーキ液圧よりも大きく、その差が所定値以上の場合には、前記モータを最大回転数で駆動し、
少なくとも一つの前記車輪ブレーキにおいて前記目標液圧が前記ブレーキ液圧よりも大きく、かつ全ての前記車輪ブレーキにおいてその差が所定値未満の場合には、前記モータを前記最大回転数よりも小さい回転数で駆動する
ことを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項3】
前記モータ駆動部は、前記モータを前記小さい回転数で駆動する際に、一つの前記車輪ブレーキにおいて前記ブレーキ液圧を前記目標液圧に追従させるように駆動することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項4】
前記ブレーキ液圧取得手段は、各前記車輪ブレーキの推定ブレーキ液圧を取得することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項5】
前記モータ駆動部は、前記モータの回転数制御をデューティ制御により行うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ブレーキ液圧制御装置に関し、特に、マスタシリンダからのブレーキ液圧をポンプによって加圧する車両用ブレーキ液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用ブレーキ装置では、ブレーキペダルの操作によらず、モータによってポンプを駆動し、ブレーキ液圧を増圧することがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、所定時間高回転(デューティ比100%)でモータを駆動し、所定時間経過後には低回転(低デューティ比)でモータを駆動することで、モータの作動音を抑制することが可能な装置が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−203401号公報(段落0038)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、モータの作動音の抑制は十分なものではなく、さらなる作動音の抑制が要求されている。
また、ポンプにより加圧されたブレーキ液の一部をマスタシリンダに戻す場合には、カット弁に帰ってくる脈動によりカット弁の作動音が頻繁に発生しやすい。
【0005】
本発明は、前記した問題を解決すべく創案されたものであり、モータによる昇圧性能を維持しつつ、作動音および脈動を抑制することが可能な車両用ブレーキ液圧制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の請求項1に記載の発明は、液圧供給手段に接続された一の液圧路が複数の車輪ブレーキに接続され、前記複数の車輪ブレーキのブレーキ液圧をそれぞれの目標液圧に制御する車両用ブレーキ液圧制御装置であって、前記一の液圧路に設けられたリニアソレノイド弁と、前記一の液圧路における前記リニアソレノイド弁よりも前記車輪ブレーキ側のブレーキ液圧を加圧可能なポンプと、前記ポンプを駆動する回転数制御可能なモータと、前記モータを回転数制御により駆動制御するモータ駆動部と、各前記車輪ブレーキの目標液圧を設定する目標液圧設定部と、各前記車輪ブレーキのブレーキ液圧を取得するブレーキ液圧取得手段と、を備え、前記モータ駆動部は、前記車輪ブレーキにおいて前記目標液圧が前記ブレーキ液圧よりも大きく、その差が所定値以上の場合には、前記モータを最大回転数で駆動し、前記車輪ブレーキにおいて前記目標液圧が前記ブレーキ液圧よりも大きく、その差が所定値未満の場合には、前記モータを前記最大回転数よりも小さい回転数で駆動することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、液圧供給手段に接続された一の液圧路が複数の車輪ブレーキに接続され、前記複数の車輪ブレーキのブレーキ液圧をそれぞれの目標液圧に制御する車両用ブレーキ液圧制御装置であって、前記一の液圧路に設けられたリニアソレノイド弁と、前記リニアソレノイド弁よりも前記車輪ブレーキ側の液圧路のブレーキ液圧を加圧可能なポンプと、前記ポンプを駆動する回転数制御可能なモータと、前記モータを回転数制御により駆動制御するモータ駆動部と、各前記車輪ブレーキの目標液圧を設定する目標液圧設定部と、各前記車輪ブレーキのブレーキ液圧を取得するブレーキ液圧取得手段と、を備え、前記モータ駆動部は、少なくとも一つの前記車輪ブレーキにおいて前記目標液圧が前記ブレーキ液圧よりも大きく、その差が所定値以上の場合には、前記モータを最大回転数で駆動し、少なくとも一つの前記車輪ブレーキにおいて前記目標液圧が前記ブレーキ液圧よりも大きく、かつ全ての前記車輪ブレーキにおいてその差が所定値未満の場合には、前記モータを前記最大回転数よりも小さい回転数で駆動することを特徴とする。
【0008】
ここでいう「最大回転数」とは、モータが本発明の制御に供される際における回転数の最大値のことをいう。
また、「その差」は、一の車輪ブレーキにおいて目標液圧からブレーキ液圧を引いた値であり、「所定値」は、正の値である。
請求項1または請求項2に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置によれば、モータを最大デューティ比で駆動する時間を、制御の必要に応じて調節することができるので、モータによる昇圧性能を維持しつつ、作動音および脈動を抑制することができる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置であって、前記モータ駆動部は、前記モータを前記小さい回転数で駆動する際に、一つの前記車輪ブレーキにおいて前記ブレーキ液圧を前記目標液圧に追従させるように駆動することを特徴とする。
【0010】
このような車両用ブレーキ液圧制御装置によれば、一つの車輪ブレーキのブレーキ液圧を、モータの駆動により制御することができる。また、モータの駆動量を必要最小限に抑えることができ、作動音および脈動をさらに抑制することができる。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置であって、前記ブレーキ液圧取得手段は、各前記車輪ブレーキの推定ブレーキ液圧を取得することを特徴とする。
【0012】
ブレーキ液圧検出手段が検出するブレーキ液圧としては、実測値(実測ブレーキ液圧)と推定値(推定ブレーキ液圧)とが挙げられる。
実測ブレーキ液圧は、各車輪ブレーキにそれぞれ設けられた圧力センサによって取得することができる。
推定ブレーキ液圧は、例えば、一の液圧路に設けられた圧力センサによって検出された一の液圧路におけるブレーキ液圧と、車両用ブレーキ液圧制御装置の駆動と、に基づく計算によって取得することができる。
このような車両用ブレーキ液圧制御装置によれば、ブレーキ液圧として推定値を取得するので、実測値を取得する場合と比較して圧力センサの数を減らすことができる。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置であって、前記モータ駆動部は、前記モータの回転数制御をデューティ制御により行うことを特徴とする。
【0014】
このような車両用ブレーキ液圧制御装置によれば、モータのデューティ比を制御することにより回転数を制御するので、簡単かつ正確にモータの駆動を制御することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、昇圧性能を維持しつつ、作動音および脈動を抑制することが可能な車両用ブレーキ液圧制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
参照する図において、図1は、本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置を備えた車両の構成図であり、図2は、車両用ブレーキ液圧制御装置のブレーキ液圧回路図である。
図1に示すように、車両用ブレーキ液圧制御装置100は、車両CRの各車輪Tに付与する制動力(ブレーキ液圧)を適宜制御するためのものであり、油路や各種部品が設けられた液圧ユニット10と、液圧ユニット10内の各種部品を適宜制御するための制御装置20とを主に備えている。また、この車両用ブレーキ液圧制御装置100の制御装置20には、車輪Tの車輪速度を検出する車輪速センサ91、ステアリングSTの操舵角を検出する操舵角センサ92、車両CRの横方向に働く加速度を検出する横加速度センサ93と、車両CRの旋回角速度を検出するヨーレートセンサ94、および車両CRの前後方向の加速度を検出する加速度センサ95が接続されている。各センサ91〜95の検出結果は、制御装置20に出力される。
制御装置20は、例えば、CPU、RAM、ROMおよび入出力回路を備えており、車輪速センサ91、操舵角センサ92、横加速度センサ93、ヨーレートセンサ94および加速度センサ95からの入力と、ROMに記憶されたプログラムやデータに基づいて各演算処理を行うことによって、制御を実行する。また、ホイールシリンダHは、マスタシリンダMおよび車両用ブレーキ液圧制御装置100により発生されたブレーキ液圧を各車輪Tに設けられた車輪ブレーキFR,FL,RR,RLの作動力に変換する液圧装置であり、それぞれ配管を介して車両用ブレーキ液圧制御装置100の液圧ユニット10に接続されている。
【0017】
図2に示すように、車両用ブレーキ液圧制御装置100の液圧ユニット10は、運転者がブレーキペダルBPに加える踏力に応じたブレーキ液圧を発生する液圧供給手段であるマスタシリンダMと、車輪ブレーキFR,FL,RR,RLとの間に配置されており、ブレーキ液が流通する油路を有する基体であるポンプボディ10a、油路上に複数配置された入口弁1、出口弁2などから構成されている。マスタシリンダMの二つの出力ポートM1,M2は、ポンプボディ10aの入口ポート121に接続され、ポンプボディ10aの出口ポート122が、各ブレーキFR,FL,RR,RLに接続されている。そして、通常時はポンプボディ10a内の入口ポート121から出口ポート122までが連通した油路となっていることで、ブレーキペダルBPの踏力が各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRに伝達されるようになっている。
【0018】
図2に示すように、車両用液圧制御装置100の液圧ユニット10は、運転者がブレーキペダルBPに加える踏力に応じたブレーキ液圧を発生するマスタシリンダMと、車輪ブレーキFL,FR,RL,RRとの間に配置されている。マスタシリンダMの二つの出力ポートM1,M2は、液圧ユニット10の入口ポート121に接続され、液圧ユニット10の出口ポート122が、各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRに接続されている。そして、通常時は液圧ユニット10内の入口ポート121から出口ポート122までが連通した油路となっていることで、ブレーキペダルBPの踏力が各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRに伝達されるようになっている。
【0019】
ここで、出力ポートM1から始まる油路は、前輪左側の車輪ブレーキFLと後輪右側の車輪ブレーキRRに通じており、出力ポートM2から始まる油路は、前輪右側の車輪ブレーキFRと後輪左側の車輪ブレーキRLに通じている。なお、以下では、出力ポートM1から始まる油路を「第一系統」と称し、出力ポートM2から始まる油路を「第二系統」と称する。
【0020】
液圧ユニット10には、その第一系統に各車輪ブレーキFL,RRに対応して二つの制御弁手段Vが設けられており、同様に、その第二系統に各車輪ブレーキRL,FRに対応して二つの制御弁手段Vが設けられている。また、この液圧ユニット10には、第一系統および第二系統のそれぞれに、リザーバ3、ポンプ4、ダンパ5、オリフィス5a、レギュレータR、吸入弁7、貯留室7aが設けられており、さらに、第一系統のポンプ4と第二系統のポンプ4とを駆動するための共通のモータ(直流モータ)9が設けられている。このモータ9は、回転数制御可能なモータであり、本実施形態では、デューティ制御により回転数制御が行われる。また、本実施形態では、第二系統にのみ圧力センサ8が設けられている。
【0021】
なお、以下では、マスタシリンダMの出力ポートM1,M2から各レギュレータRに至る油路を「出力液圧路A1」と称し、第一系統のレギュレータRから車輪ブレーキFL,RRに至る油路および第二系統のレギュレータRから車輪ブレーキRL,FRに至る油路をそれぞれ「車輪液圧路B」と称する。また、出力液圧路A1からポンプ4に至る油路を「吸入液圧路C」と称し、ポンプ4から車輪液圧路Bに至る油路を「吐出液圧路D」と称し、さらに、車輪液圧路Bから吸入液圧路Cに至る油路を「開放路E」と称する。
ここで、「出力液圧路A1」が特許請求の範囲における「第一の液圧路」に相当し、「車輪液圧路B」が特許請求の範囲における「第二の液圧路」に相当する。
【0022】
制御弁手段Vは、車輪液圧路Bを開放しつつ開放路Eを遮断する増圧状態、車輪液圧路Bを遮断しつつ開放路Eを開放する減圧状態および車輪液圧路Bを遮断しつつ開放路Eを遮断する保持状態を切り換える機能を有しており、入口弁1、出口弁2、チェック弁1aを備えて構成されている。
【0023】
入口弁1は、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRとマスタシリンダMとの間、すなわち車輪液圧路Bに設けられた常開型の電磁弁である。入口弁1は、通常時に開いていることで、マスタシリンダMから各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRへブレーキ液圧が伝達するのを許容している。また、入口弁1は、車輪Tがロックしそうになったときに制御装置20により閉塞されることで、ブレーキペダルBPから各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRに伝達するブレーキ液圧を遮断する。
【0024】
出口弁2は、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRと各リザーバ3との間、すなわち車輪液圧路Bと開放路Eとの間に介設された常閉型の電磁弁である。出口弁2は、通常時に閉塞されているが、車輪Tがロックしそうになったときに制御装置20により開放されることで、各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRに作用するブレーキ液圧を各リザーバ3に逃がす。
【0025】
チェック弁1aは、各入口弁1に並列に接続されている。このチェック弁1aは、各車輪ブレーキFL,FR,RL,RR側からマスタシリンダM側へのブレーキ液の流入のみを許容する弁であり、ブレーキペダルBPからの入力が解除された場合に、入口弁1を閉じた状態にしたときにおいても、各車輪ブレーキFL,FR,RL,RR側からマスタシリンダM側へのブレーキ液の流入を許容する。
【0026】
リザーバ3は、開放路Eに設けられており、各出口弁2が開放されることによって逃がされるブレーキ液圧を吸収する機能を有している。また、リザーバ3とポンプ4との間には、リザーバ3側からポンプ4側へのブレーキ液の流入のみを許容するチェック弁3aが介設されている。
【0027】
ポンプ4は、出力液圧路A1に通じる吸入液圧路Cと車輪液圧路Bに通じる吐出液圧路Dとの間に介設されており、リザーバ3で貯留されているブレーキ液を吸入して吐出液圧路Dに吐出する機能を有している。これにより、リザーバ3によるブレーキ液圧の吸収によって減圧された出力液圧路A1や車輪液圧路Bの圧力状態が回復される。さらに、このポンプ4は、後記するカット弁6が出力液圧路A1から車輪液圧路Bへのブレーキ液の流入を遮断し、且つ、後記する吸入弁7が吸入液圧路Cを開放しているときに、マスタシリンダM、出力液圧路A1、吸入液圧路Cおよび貯留室7aに貯留されているブレーキ液を吸入して吐出液圧路Dに吐出する機能を有している。これにより、非ペダル操作時において各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRにブレーキ液圧を作用させることが可能となる。すなわち、ポンプ4は、出力液圧路A1におけるカット弁6よりも車輪ブレーキFL,RR(RL,FR)側のブレーキ液圧を加圧することができる。なお、ポンプ4によるブレーキ液の吐出量は、モータ9の回転数(デューティ比)に依存している。すなわち、モータ9の回転数(デューティ比)が大きくなると、ポンプ4によるブレーキ液の吐出量も大きくなる。
【0028】
なお、ダンパ5およびオリフィス5aは、その協働作用によってポンプ4から吐出されたブレーキ液の圧力の脈動および後記するレギュレータRが作動することにより発生する脈動を減衰させている。
【0029】
レギュレータRは、出力液圧路A1から車輪液圧路Bへのブレーキ液の流入を許容する状態および遮断する状態を切り換える機能と、出力液圧路A1から車輪液圧路Bへのブレーキ液の流入が遮断されているときに車輪液圧路Bおよび吐出液圧路Dのブレーキ液圧を設定値以下に調節する機能とを有しており、カット弁6およびチェック弁6aを備えて構成されている。
【0030】
カット弁6は、マスタシリンダMに通じる出力液圧路A1と各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRに通じる車輪液圧路Bとの間に介設された常開型のリニアソレノイド弁であり、出力液圧路A1から車輪液圧路Bへのブレーキ液の流入を許容する状態および遮断する状態を切り換えるものである。すなわち、カット弁6は、ソレノイドへの通電を制御することによって開弁圧を調節可能なリニアソレノイド弁である。カット弁6は、通常時に開いていることで、マスタシリンダMから各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRへブレーキ液圧が伝達するのを許容している。また、カット弁6は、非ペダル操作時であってポンプ4を作動させるとき、言い換えれば、非ペダル操作時において各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRにブレーキ液圧を作用させるときに制御装置20の制御により閉塞され、車輪液圧路BからレギュレータRにかかる液圧と、ソレノイドへの通電によって制御される弁を閉じようとする力とのバランスによって、車輪液圧路Bの液圧を適宜出力液圧路A1へ開放して調節することができる。
【0031】
チェック弁6aは、各カット弁6に並列に接続されている。このチェック弁6aは、出力液圧路A1から車輪液圧路Bへのブレーキ液の流れを許容する一方向弁である。
【0032】
吸入弁7は、吸入液圧路Cに設けられた常閉型の電磁弁であり、吸入液圧路Cを開放する状態および遮断する状態を切り換えるものである。吸入弁7は、非ペダル操作時であってカット弁6が出力液圧路A1から車輪液圧路Bへのブレーキ液の流入を遮断する状態にあるとき、言い換えれば、非ペダル操作時において各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRにブレーキ液圧を作用させるときに制御装置20の制御により開放(開弁)される。
【0033】
貯留室7aは、吸入液圧路Cであってポンプ4と吸入弁7との間に設けられている。この貯留室7aは、ブレーキ液を貯留するものであり、これにより、吸入液圧路Cに貯留されるブレーキ液の容量が実質的に増大する。
【0034】
圧力センサ8は、出力液圧路A1のブレーキ液圧を検出するものであり、その検出結果は制御装置20に随時取り込まれる。そして、制御装置20によりマスタシリンダMからブレーキ液圧が出力されているか否か、すなわち、ブレーキペダルBPが踏まれているか否かが判定され、さらに、圧力センサ8で検出されたブレーキ液圧の大きさに基づいて、車両CRの制御が行われる。
【0035】
図3は、制御装置のブロック構成図である。
図3に示すように、制御装置20は、各センサ91〜95から入力された信号に基づき、液圧ユニット10内の制御弁手段V、カット弁6および吸入弁7の開閉動作ならびにモータ9の動作を制御して、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRの動作を制御するものである。制御装置20は、機能部として目標液圧設定部21、ブレーキ液圧計算部22、弁駆動部23およびモータ駆動部24を備えている。
【0036】
目標液圧設定部21は、各センサ91〜95から入力された信号に基づき、制御ロジックを選択し、当該制御ロジックに応じて各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRの目標液圧PPFL,PPRR,PPRL,PPFRを設定する。この設定の方法は、従来公知の方法により行えばよく、特に限定されない。一例を挙げれば、4つの車輪Tの車輪速度から車体速度を計算する。そして、車輪速度と車体速度からスリップ率を計算する。さらに、横加速度と車体CRの前後方向への加速度に基づき、合成加速度を演算し、この合成加速度から路面の摩擦係数を推定する。そして、この摩擦係数、スリップ率および現在のホイールシリンダHのブレーキ液圧PFL,PRR,PRL,PFRに基づき各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRの目標液圧PPFL,PPRR,PPRL,PPFRを設定することができる。
【0037】
また、目標液圧設定部21は、目標液圧PPFL,PPRR,PPRL,PPFRのうち、同系統のもの同士を比較し、これらのうち、最も高い目標液圧をその系統におけるカット弁6の目標液圧PPREGとして設定する。目標液圧PPREGは、カット弁6によって調圧される、カット弁6よりも車輪ブレーキ側における出力液圧路A1の目標液圧である。
設定された各目標液圧PPFL,PPRR,PPRL,PPFR,PPREGは、適宜弁駆動部23およびモータ駆動部24に出力される。
【0038】
ブレーキ液圧計算部22は、圧力センサ8によって検出されたブレーキ液圧と弁駆動部23による各電磁弁1,2,6の駆動量に基づき、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRのブレーキ液圧(推定ブレーキ液圧)PFL,PRR,PRL,PFRを計算する。
すなわち、圧力センサ8とブレーキ液圧計算部22との組み合わせが、特許請求の範囲における「ブレーキ液圧取得手段」の一例である。
計算されたブレーキ液圧は、弁駆動部23およびモータ駆動部24に出力される。
【0039】
弁駆動部23は、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRのホイールシリンダHのブレーキ液圧が目標液圧設定部22の設定した目標液圧に一致するように、従来公知の方法により液圧ユニット10内の各入口弁1、出口弁2、カット弁6および吸入弁7を作動させるパルス信号を液圧ユニット10へ出力する。このパルス信号は、例えば、現在のホイールシリンダHのブレーキ液圧PFL,PRR,PRL,PFRと目標液圧PPFL,PPRR,PPRL,PPFRとの差が大きいほど多くのパルスを出力するようにする。
弁駆動部23は、各目標液圧PPFL,PPRR,PPRL,PPFR,PPREG、カット弁液圧PREGおよび各ブレーキ液圧PFL,PRR,PRL,PFRに基づき各制御弁手段V、カット弁6および吸入弁7の駆動を決定し、駆動するものであり、制御弁手段Vを駆動する制御弁手段駆動部23aと、カット弁6を駆動するカット弁駆動部23bと、吸入弁7を駆動する吸入弁駆動部23cと、を備えている。
【0040】
モータ駆動部24は、各目標液圧PPFL,PPRR,PPRL,PPFR,PPRE、カット弁液圧PREGおよび各ブレーキ液圧PFL,PRR,PRL,PFRに基づきモータ9の回転数を決定し、駆動するものである。すなわち、モータ駆動部24は、回転数制御によりモータ24を駆動するものであり、本実施形態では、デューティ制御により回転数制御を行う。
【0041】
ここで、モータ駆動部24による駆動制御について、より詳細に説明する。
図4(a)は、車輪ブレーキの目標液圧およびブレーキ液圧の時間変化を示すグラフであり、図4(b)は、モータのデューティ比の時間変化を示すグラフである。
図4に示すように、まず、経過時間tの時点で車両用ブレーキ液圧制御装置100による車両CRの挙動安定化制御が開始され、ブレーキ液圧Pと目標液圧PPとの差がα未満のときには(PP−P<α,PP>P,経過時間t〜tの間)、モータ駆動部24は、モータ9を最大回転数よりも小さい回転数、本実施形態では低デューティ比で駆動するともに、ブレーキ液圧Pが目標液圧PPに追従するように、モータ9のデューティ比を調節する。そして、ブレーキ液圧Pと目標液圧PPとの差がα以上になると(PP−P≧α,PP>P,経過時間t〜tの間)、モータ駆動部24は、モータ9を最大回転数、本実施形態ではデューティ比100%で駆動する。そして、ブレーキ液圧Pと目標液圧PPとの差がα未満になると(PP−P<α,PP>P,経過時間t〜tの間)、モータ駆動部24は、モータ9を最大回転数よりも小さい回転数、本実施形態では低デューティ比で駆動するとともに、ブレーキ液圧Pが目標液圧PPに追従するように、モータ9のデューティ比を調節する。この際、モータ駆動部24は、ブレーキ液圧Pが目標液圧PPを超えないように、すなわち、ブレーキ液圧Pが目標液圧PP以下を保ちつつ目標液圧PPに追従するように制御を行う。
したがって、車両用ブレーキ液圧制御装置100は、モータ9を所定時間デューティ比100%で駆動し、その後低デューティ比で駆動する従来の装置と比較して、ポンプ4による昇圧性能を維持しつつモータ9の作動音を抑制することができる。
かかる制御は、四つの車輪ブレーキFL,RR,RL,FRのうち、目標液圧が最大のものに適用することができる。
【0042】
図5は、カット弁に帰ってくる脈動の例を示すグラフであり、(a)はモータをデューティ比100%で駆動した場合を示すグラフ、(b)はモータを低デューティ比で駆動した場合を示すグラフである。各グラフにおいて、縦軸はカット弁6に作用するブレーキ液圧(カット弁液圧)、横軸は経過時間を表し、両グラフの各軸のスケールは同一である。
図5(a)(b)に示すように、モータ9を低デューティ比で駆動する方が、デューティ比100%で駆動するよりも、カット弁6に帰ってくる脈動が小さくなることがわかる。すなわち、ブレーキ液圧Pと目標液圧PPとの差がα以上のときにはモータ9をデューティ比で駆動し、ブレーキ液圧Pと目標液圧PPとの差がα未満のときにはモータ9を低デューティ比で駆動することによって、昇圧性能を維持しつつカット弁6に伝わる脈動を抑制してカット弁6の作動音を低減するとともに、モータ9の作動音を低減することができる。
【0043】
続いて、制御装置20によるモータ駆動処理について説明する。
図6は、制御装置によるモータ駆動処理を示すフローチャートである。
図6に示すように、まず、制御装置20は、挙動安定化制御を実行中であるか否かを判定する(ステップS1)。
挙動安定化制御を実行中の場合には(ステップS1でYes)、各車輪ブレーキの目標液圧とブレーキ液圧との差(目標液圧からブレーキ液圧を引いた値)を計算し、所定値αと比較する(ステップS2,S3,S4,S5)。
各車輪ブレーキの目標液圧とブレーキ液圧との差が、全て所定値α未満である場合(PP−P<α,ただし、少なくとも一つの車輪ブレーキにおいて目標液圧PPがブレーキ液圧Pよりも大きい。なお、本実施形態における挙動安定化制御実行中には、全ての車輪ブレーキにおいて目標液圧PPがブレーキ液圧Pよりも大きくなっている。)には(ステップS2,S3,S4,S5の全てでNo)、制御装置20は、モータ9を低デューティ比で駆動する(ステップS6)。ここで、制御装置20は、車輪ブレーキFL,RR,RL,FRのうち、目標液圧が最大のものについて、ブレーキ液圧が目標液圧に追従するようにモータ9を駆動する。
また、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRの目標液圧とブレーキ液圧との差のいずれかが、所定値α以上である場合には(ステップS2,S3,S4,S5のいずれかでYes)、制御装置20は、モータ9をデューティ比100%で駆動する(ステップS7)。
また、挙動安定化制御を実行していない場合には(ステップS1でNo)、制御装置20は、モータ9を停止する(ステップS8)。
【0044】
前記した車両用ブレーキ液圧制御装置100によれば、以下の効果が得られる。
ブレーキ液圧Pと目標液圧PPとの差がα以上のときにはモータ9をデューティ比100%で駆動し、ブレーキ液圧Pと目標液圧PPとの差がα未満のときにはモータ9を低デューティ比で駆動することによって、ポンプ4の昇圧性能を維持しつつ、作動音および脈動を抑制することができる。
モータ9を低デューティ比で駆動する際に、車輪ブレーキFL,FR,RL,RRのうち目標液圧が最大のもののブレーキ液圧を目標液圧に追従させるように駆動するので、一つの車輪ブレーキのブレーキ液圧を、モータ9の駆動により制御することができる。また、モータ9の駆動量(回転数)を必要最小限に抑えることができ、作動音および脈動をさらに抑制することができる。
各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRにおけるブレーキ液圧を推定するので、圧力センサの数を減らすことができる。
モータ9の回転数制御をデューティ制御により行うので、簡単かつ正確にモータの駆動を制御することができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能である。例えば、ステップS7におけるモータ9の駆動は、当該制御に供される最大デューティ比であれば良く、100%未満のデューティ比であっても良い。また、印加電圧の制御など、デューティ制御以外の手法によりモータ9の回転数制御を行う構成であっても良い。
また、図6のフローチャートによる制御は、挙動安定化制御だけでなく、トラクション制御などの場合にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置を備えた車両の構成図である。
【図2】車両用ブレーキ液圧制御装置のブレーキ液圧回路図である。
【図3】制御装置のブロック構成図である。
【図4】(a)は車輪ブレーキの目標液圧およびブレーキ液圧の時間変化を示すグラフであり、(b)はモータのデューティ比の時間変化を示すグラフである。
【図5】図5は、カット弁に帰ってくる脈動の例を示すグラフであり、(a)はモータをデューティ比100%で駆動した場合を示すグラフ、(b)はモータを低デューティ比で駆動した場合を示すグラフである。
【図6】図6は、制御装置によるモータ駆動処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0047】
4 ポンプ
6 カット弁(リニアソレノイド弁)
8 圧力センサ
9 モータ
21 目標液圧設定部
22 ブレーキ液圧計算部
23 弁駆動部
24 モータ駆動部
100 車両用ブレーキ液圧制御装置
FL,FR,RL,RR 車輪ブレーキ
M マスタシリンダ(液圧供給手段)
V 制御弁手段




 

 


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