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発明の名称 推定横加速度計算方法および推定横加速度計算装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−30735(P2007−30735A)
公開日 平成19年2月8日(2007.2.8)
出願番号 特願2005−218539(P2005−218539)
出願日 平成17年7月28日(2005.7.28)
代理人 【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
発明者 黒崎 崇史 / 高橋 進 / 小島 武志
要約 課題
車輪の径差に起因する推定横加速度の誤差を抑えることが可能な推定横加速度計算装置を提供する。

解決手段
横加速度推定部(推定横加速度計算装置)21は、少なくとも同軸に配置された左右の各車輪の車輪速度に基づき仮横加速度YGを計算する仮横加速度計算部21cと、少なくとも各車輪の車輪速度に基づき各車輪の径差に起因する径差起因横加速度TKYGを計算する径差起因横加速度計算部21dと、仮横加速度YGを径差起因横加速度TKYGによって減少補正し、推定横加速度CYGを計算する推定横加速度計算部21eと、を備えている。
特許請求の範囲
【請求項1】
各車輪の車輪速度に基づいて、車両の推定横加速度を計算する推定横加速度計算方法であって、
前記各車輪の車輪速度を取得する過程と、
少なくとも同軸に配置された左右の各車輪の車輪速度に基づき仮横加速度を計算するとともに、少なくとも前記各車輪の車輪速度に基づき前記車両の車輪の径差に起因する径差起因横加速度を計算する過程と、
前記仮横加速度を前記径差起因横加速度によって減少補正し、推定横加速度を計算する過程と、
を含むことを特徴とする推定横加速度計算方法。
【請求項2】
各車輪の車輪速度に基づいて、車両の推定横加速度を計算する推定横加速度計算装置であって、
少なくとも同軸に配置された左右の各車輪の車輪速度に基づき仮横加速度を計算する仮横加速度計算部と、
少なくとも前記各車輪の車輪速度に基づき前記各車輪の径差に起因する径差起因横加速度を計算する径差起因横加速度計算部と、
前記仮横加速度を前記径差起因横加速度によって減少補正し、推定横加速度を計算する推定横加速度計算部と、
を備えていることを特徴とする推定横加速度計算装置。
【請求項3】
前記各車輪の少なくとも一つの車輪速度に基づき車体速度を計算する車体速度計算部をさらに備えるとともに、
前記径差起因横加速度計算部は、
前記各車輪の車輪速度に基づき同側車輪速度比率を計算する同側車輪速度比率計算部と、
前記同側車輪速度比率に基づき左右異径比率を計算する左右異径比率計算部と、
前記左右異径比率、前記車体速度および前記車両のトレッドに基づいて、径差起因横加速度を推定する径差起因横加速度推定部と、
を備えていることを特徴とする請求項2に記載の推定横加速度計算装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の推定横加速度を計算する推定横加速度計算方法および推定横加速度計算装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンチロック制御などの車両の挙動制御を行う場合には、車体の横方向にかかる加速度(本明細書において「横加速度」という)を検出または推定して制御のための情報として用いることがある。この場合の横加速度は、加速度センサを用いることで直接検出することもできるが、加速度センサを設けるのはコスト面で不利であることから、左右の車輪の車輪速度の差を用いて推定横加速度を計算することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−26089号公報(段落0053〜0054)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の推定横加速度の計算方法は、以下に示す問題を有している。
車両の推定横加速度の計算は、左右の車輪の車輪速度に基づいて行われる。しかし、テンパータイヤ装着時、タイヤ空気圧の低下時などには、車輪径が小さくなる。車輪に設けられた回転パルス発生器(車輪速センサ)の信号に基づく車輪の回転速度(回転数)および設定車輪径(車両のECUなどに予め設定された車輪の周長)から車輪速度を計算する場合に、実際の車輪径が設定車輪径よりも小さくなると、計算により得られる車輪速度が真の車輪速度よりも大きくなる。そして、左右の車輪の車輪径の差が大きい場合には、左右の車輪の車輪速度に差が生じ、推定横加速度の値が真の横加速度からずれるという問題があった。
また、車両の旋回時には、車両の荷重に偏りが生じる。そして、左右の車輪のうち、より荷重がかかる方の車輪径が小さくなり、前記した場合と同様、推定横加速度の値が真の横加速度からずれ、車両安定制御、旋回制御の効果が好適に得られないという問題があった。
【0005】
本発明は、前記した問題を解決すべく創案されたものであり、車輪の径差に起因する推定横加速度の誤差を抑えることが可能な推定横加速度計算方法および推定横加速度計算装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、各車輪の車輪速度に基づいて、車両の推定横加速度を計算する推定横加速度計算方法であって、前記各車輪の車輪速度を取得する過程と、少なくとも同軸に配置された左右の各車輪の車輪速度に基づき仮横加速度を計算するとともに、少なくとも前記各車輪の車輪速度に基づき前記車両の車輪の径差に起因する径差起因横加速度を計算する過程と、前記仮横加速度を前記径差起因横加速度によって減少補正し、推定横加速度を計算する過程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、各車輪の車輪速度に基づいて、車両の推定横加速度を計算する推定横加速度計算装置であって、少なくとも同軸に配置された左右の各車輪の車輪速度に基づき仮横加速度を計算する仮横加速度計算部と、少なくとも前記各車輪の車輪速度に基づき前記各車輪の径差に起因する径差起因横加速度を計算する径差起因横加速度計算部と、前記仮横加速度を前記径差起因横加速度によって減少補正し、推定横加速度を計算する推定横加速度計算部と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
ここでいう「減少補正」とは、推定横加速度が仮横加速度(補正前の推定横加速度)よりもゼロに近づくように(絶対値が小さくなるように)補正されていることをいう。
このような推定横加速度計算方法および推定横加速度計算装置によれば、車輪の径差に起因する見かけ上の横加速度である径差起因横加速度を除いた推定横加速度を得ることができる。
したがって、テンパータイヤ装着時、タイヤ空気圧の低下時などであっても真の横加速度に近い推定横加速度を計算することができる。また、径差起因横加速度によって減少補正するので、車輪径の変化を考慮した補正が推定横加速度を増大させることはない。
また、車輪径を補正する計算を行うことなく推定横加速度を計算するので、短時間での計算が可能である。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の推定横加速度計算装置であって、前記各車輪の少なくとも一つの車輪速度に基づき車体速度を計算する車体速度計算部をさらに備えるとともに、前記径差起因横加速度計算部は、前記各車輪の車輪速度に基づき同側車輪速度比率を計算する同側車輪速度比率計算部と、前記同側車輪速度比率に基づき左右異径比率を計算する左右異径比率計算部と、前記左右異径比率、前記車体速度および前記車両のトレッドに基づいて、径差起因横加速度を推定する径差起因横加速度推定部と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
「同側車輪速度比率」は、「右側車輪速度比率」および「左側車輪速度比率」の総称である。「右側車輪速度比率」は、右前車輪の車輪速度と右後車輪の車輪速度との比であり、「左側車輪速度比率」は、左前車輪の車輪速度と左後車輪の車輪速度との比である。
また、「左右異径比率」は、車両の左右の車輪の車輪径の比を表すものであり、「右側車輪速度比率」と「左側車輪速度比率」との比として計算される。
このような推定横加速度計算装置によれば、左右異径比率に基づいて径差起因横加速度を計算するので、車両の全車輪の車輪径を考慮した推定横加速度を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、左右の車輪の径差に起因する推定横加速度の誤差を抑えることが可能な推定横加速度計算方法および推定横加速度計算装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
参照する図において、図1は、本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置を備えた車両の構成図であり、図2は、車両用ブレーキ液圧制御装置のブレーキ液圧回路図である。
図1に示すように、車両用ブレーキ液圧制御装置100は、車両CRの各車輪Tに付与する制動力(ブレーキ液圧)を適宜制御するためのものであり、油路や各種部品が設けられた液圧ユニット10と、液圧ユニット10内の各種部品を適宜制御するための制御装置20とを主に備えている。また、この車両用ブレーキ液圧制御装置100の制御装置20には、車両CRの各車輪Tの車輪速度、詳細には車輪Tの回転速度(回転数)を検出するための車輪速センサ91が接続されている。
制御装置20は、例えば、CPU、RAM、ROMおよび入出力回路を備えており、車輪速センサ91からの入力と、ROMに記憶されたプログラムやデータに基づいて各演算処理を行うことによって、制御を実行する。また、ホイールシリンダHは、マスタシリンダMおよび車両用ブレーキ液圧制御装置100により発生されたブレーキ液圧を各車輪Tに設けられた車輪ブレーキFR,FL,RR,RLの作動力に変換する液圧装置であり、それぞれ配管を介して車両用ブレーキ液圧制御装置100の液圧ユニット10に接続されている。
【0013】
図2に示すように、車両用ブレーキ液圧制御装置100の液圧ユニット10は、運転者がブレーキペダルPに加える踏力に応じたブレーキ液圧を発生するマスタシリンダMと、車輪ブレーキFR,FL,RR,RLとの間に配置されており、ブレーキ液が流通する油路を有する基体であるポンプボディ10a、油路上に複数配置された入口弁1、出口弁2などから構成されている。マスタシリンダMの二つの出力ポートM1,M2は、ポンプボディ10aの入口ポート121に接続され、ポンプボディ10aの出口ポート122が、各ブレーキFR,FL,RR,RLに接続されている。そして、通常時はポンプボディ10a内の入口ポート121から出口ポート122までが連通した油路となっていることで、ブレーキペダルPの踏力が各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRに伝達されるようになっている。
【0014】
ポンプボディ10aの油路(流路)上には、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRに対応して四つの入口弁1、四つの出口弁2、および四つのチェック弁1aが設けられている。また、ポンプボディ10aには、出力ポートM1,M2に対応した各出力液圧路81,82に対応して二つのリザーバ3、二つのポンプ4、二つのダンパ5、および二つのオリフィス5aが設けられている。また、液圧ユニット10は、二つのポンプ4を駆動するための電動モータ6を備えている。
【0015】
入口弁1は、各車輪ブレーキFR,FL,RR,RLとマスタシリンダMとの間に配置された常開型の電磁弁である。入口弁1は、通常時に開いていることで、マスタシリンダMから各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRへブレーキ液圧が伝達するのを許容している。また、入口弁1は、車輪Tがロックしそうになったときに制御装置20により閉塞されることで、ブレーキペダルPから各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRに伝達するブレーキ液圧を遮断する。
【0016】
出口弁2は、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRと各リザーバ3との間に配置された常閉型の電磁弁である。出口弁2は、通常時に閉塞されているが、車輪Tがロックしそうになったときに制御装置20により開放されることで、各車輪ブレーキFR,FL,RR,RLに加わるブレーキ液圧を各リザーバ3に逃がす。
【0017】
チェック弁1aは、各入口弁1に並列に接続されている。このチェック弁1aは、各車輪ブレーキFR,FL,RR,RLからマスタシリンダM側へのブレーキ液の流入のみを許容する弁であり、ブレーキペダルPからの入力が解除された場合に入口弁1を閉じた状態にしたときにおいても、各車輪ブレーキFR,FL,RR,RL側からマスタシリンダM側へのブレーキ液の流入を許容する。
【0018】
リザーバ3は、各出口弁2が開放されることによって逃がされるブレーキ液を吸収する機能を有している。
ポンプ4は、リザーバ3で吸収されているブレーキ液を吸入し、そのブレーキ液をダンパ5およびオリフィス5aを介してマスタシリンダM側へ戻す機能を有している。これにより、リザーバ3によるブレーキ液の吸収によって減圧された各出力液圧路81,82の圧力状態が回復される。
【0019】
図3は、本発明の実施形態に係る制御装置のブロック構成図であり、図4は、横加速度推定部の詳細を示すブロック構成図である。
図3に示すように、制御装置20は、各車輪Tの車輪センサ91が検出した車輪速度(回転速度)に基づき、液圧ユニット10内の各入口弁1および出口弁2(図2参照)の開閉動作を制御して、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRの動作を制御するものである。
制御装置20は、機能部として横加速度推定部21、目標液圧設定部22および弁駆動部23を備えている。
【0020】
横加速度推定部21は、本発明の推定横加速度計算方法を実施する推定横加速度計算装置に相当するものである。横加速度推定部21は、各車輪Tの車輪速度を取得し、各車輪Tの車輪速度に基づき推定横加速度CYGを計算する。
横加速度推定部21は、さらに詳細な機能部として、車輪速度計算部21a、車体速度計算部21b、仮横加速度計算部21c、径差起因横加速度計算部21dおよび推定横加速度計算部21eを備えている。
【0021】
車輪速度計算部21aは、左前、右後、左後および右前の車輪Tの車輪速センサ91がそれぞれ出力した車輪Tの車輪速度(回転速度)ωFL,ωRR,ωRL,ωFRに車輪Tの車輪径rを乗じて車輪速度VFL,VRR,VRL,VFRを計算する。ここで、車輪径rは、車輪速度計算部21aに予め記憶・設定された値(設定車輪径)であり、通常のタイヤに対応した値である。
計算された車輪速度VFL,VRR,VRL,VFRは、車体速度計算部21bおよび径差起因横加速度計算部21dに出力される。また、車輪速度VRR,VRLは、仮横加速度計算部21cに出力される。
【0022】
車体速度計算部21bは、従来と同じ方法により、車輪速度VFL,VRR,VRL,VFRの少なくとも一つに基づき車体速度(推定車体速度)Vを計算する。例えば、車体速度Vは、車輪速度VRR,VRLに基づき、下記式(1)により求められる。
【0023】
【数1】


計算された車体速度Vは、径差起因横加速度計算部21dに出力される。
【0024】
仮横加速度計算部21cは、従来と同じ方法により、車輪速度VRR,VRLから補正前の推定横加速度である仮横加速度YGを計算する。例えば、仮横加速度YGは、下記式(2)により求められる。
【0025】
【数2】


【0026】
ここで、「TR」は後輪のトレッド(輪距)であり、仮横加速度計算部21cに予め記憶・設定された値である。
計算された仮横加速度YGは、推定横加速度計算部21eに出力される。
なお、仮横加速度YGを計算するのに用いる車輪速度は、路面への追従性が良い従動輪のものがよいが、必ずしもその必要はなく、駆動輪の車輪速度や4輪全ての車輪速度を用いてもよい。
【0027】
径差起因横加速度計算部21dは、車輪速度VFL,VRR,VRL,VFRに基づき径差起因横加速度TKYGを計算する。径差起因横加速度TKYGは、車両CRの左右の車輪Tの径差に起因する見かけ上の横加速度である。径差起因横加速度計算部21dは、さらに詳細な機能部として、同側車輪速度比率計算部21d1、左右異径比率計算部21d2および径差起因横加速度推定部21d3を備えている。
【0028】
同側車輪速度比率計算部21d1は、車輪速度VFL,VRR,VRL,VFRに基づき、同側車輪速度比率である左側車輪速度比率RALおよび右側車輪速度比率RARを計算する。
左側車輪速度比率RALは、左後の車輪Tの車輪速度VRLを所定時間積算したものを左前の車輪Tの車輪速度VFLを所定時間積算したもので割ったものであり、下記式(3)により求められる。また、右側車輪速度比率RARは、右後の車輪Tの車輪速度VRRを所定時間積算したものを右前の車輪Tの車輪速度VFRを所定時間積算したもので割ったものであり、下記式(4)により求められる。
【0029】
【数3】


【0030】
ここで、各車輪速度VFL,VRR,VRL,VFRを所定時間積算したものを使用するのは、車両CRの旋回などによる径差起因横加速度TKYGへの影響を抑えるためである。
計算された左側車輪速度比率RALおよび右側車輪速度比率RARは、左右異径比率計算部21d2に出力される。
【0031】
左右異径比率計算部24d2は、同側車輪速度比率RAL,RARに基づき左右異径比率RAを計算する。
左右異径比率RAは、同側車輪速度比率RAL,RARのうち大きい方を小さい方で割ったものであり、下記式(5)により求められる。
【0032】
【数4】


【0033】
計算された左右異径比率RAは、径差起因横加速度推定部21d3に出力される。
【0034】
径差起因横加速度推定部21d3は、車体速度V、後輪のトレッドTRおよび左右異径比率RAに基づき径差起因横加速度TKYGを推定・計算する。
径差起因横加速度TKYGは、下記式(6)により求められる。
【0035】
【数5】


【0036】
ここで、「g」は重力加速度である。重力加速度「g」および後輪のトレッド「TR」は、径差起因横加速度推定部21d3に予め記憶・設定された値である。
4つの車輪Tの車輪径が全て等しい場合には、一般的に車輪速度VFL,VRR,VRL,VFRが等しいためRAが「1」となり、径差起因横加速度TKYGは「0」となる。そして、左の車輪Tの車輪径と右の車輪Tの車輪径との径差が大きくなるにつれて、言い換えると、左の車輪速度VFL,VRLと右の車輪速度VFR,VRRとの差が大きくなるにつれて、径差起因横加速度TKYGの絶対値が大きくなる。
計算された径差起因横加速度TKYGは、推定横加速度計算部21eに出力される。
【0037】
推定横加速度計算部21eは、仮横加速度YGを径差起因横加速度TKYGによって減少補正し、推定横加速度CYGを計算する。
推定横加速度CYGは、仮横加速度YGが正の値であるときには下記式(7)により求められ、仮横加速度YGが負の値であるときには下記式(8)により求められる。
【0038】
【数6】


【0039】
計算された推定横加速度CYGは、目標液圧設定部22に出力される。
【0040】
目標液圧設定部22は、横加速度推定部21が計算した推定横加速度CYGおよび車輪速センサ91が検出した車輪Tの車輪速度(回転速度)ωFL,ωRR,ωRL,ωFRに基づき各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRの目標液圧を設定する。この設定の方法は、従来公知の方法により行えばよく、特に限定されない。一例を挙げれば、4つの車輪Tの車輪速度(回転速度)ωFL,ωRR,ωRL,ωFRを車輪速度VFL,VRR,VRL,VFRに換算し、これら車輪速度VFL,VRR,VRL,VFRから車体速度Vを計算する。そして、車輪速度VFL,VRR,VRL,VFRと車体速度Vからスリップ率を計算する。さらに、推定横加速度CYGと車両CRの前後方向への加速度に基づき、合成加速度を演算し、この合成加速度から路面の摩擦係数を推定する。そして、この摩擦係数、スリップ率および現在のホイールシリンダHのブレーキ液圧に基づき各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRの目標液圧を設定することができる。
【0041】
弁駆動部23は、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRのホイールシリンダHのブレーキ液圧が目標液圧設定部22の設定した目標液圧に一致するように、従来公知の方法により液圧ユニット10内の各入口弁1および出口弁2を作動させるパルス信号を液圧ユニット10へ出力する。このパルス信号は、例えば、現在のホイールシリンダHのブレーキ液圧と目標液圧との差が大きいほど多くのパルスを出力するようにする。なお、現在のホイールシリンダHのブレーキ液圧は、センサにより測定してもよいし、計算により推定してもよい。
【0042】
続いて、横加速度推定部21による計算処理(推定横加速度計算方法)について説明する。参照する図面において、図5は、横加速度推定部の処理を示すフローチャートである。
図5に示すように、横加速度推定部21は、まず、車輪速センサ91から車輪速度(回転速度)ωFL,ωRR,ωRL,ωFRを取得する(ステップS1)。続いて、車輪速度ωFL,ωRR,ωRL,ωFRを車輪速度VFL,VRR,VRL,VFRに換算する(ステップS2)。続いて、車輪速度VRR,VRLに基づき仮横加速度YGを計算するとともに、車輪速度VFL,VRR,VRL,VFRに基づき径差起因横加速度TKYGを計算する(ステップ3)。続いて、仮横加速度YGを径差起因横加速度TKYGによって減少補正し、推定横加速度CYGを計算する(ステップS4)。この推定横加速度CYGが、車両CRの横加速度として出力され(ステップS5)、車両CRの制御に利用される。
【0043】
このように、本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置100によれば、左右の車輪Tの異径比率に基づき径差起因横加速度TKYGを計算し、仮横加速度YGを径差起因横加速度TKYGによって減少補正して推定横加速度CYGを計算するので、各車輪Tの車輪径に差がある場合であっても真の横加速度に近い推定横加速度CYGを計算により求めることができる。そのため、この推定横加速度CYGを用いたアンチロック制御においても、車両CRの状況を正確に予想し、適切な制御を行うことができる。
また、車輪径を補正する計算を行うことなく推定横加速度CYGを計算するので、短時間での計算が可能である。そのため、車輪速センサ91による車輪速度ωFL,ωRR,ωRL,ωFRの検出から制御実行までに要する時間を短縮でき、より車両CRの状況に即した制御を行うことができる。
また、4つの車輪Tの全ての車輪速度VFL,VRR,VRL,VFRを用いて径差起因横加速度TKYGを計算するので、どの車輪Tの車輪径が変化した場合にも対応可能である。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能である。
例えば、本発明の推定横加速度計算方法(装置)により求められた推定横加速度CYGは、アンチロック制御に限らず、横加速度を用いる他の制御に使用することもできる。例えば、推定横加速度CYGに応じて適宜一部の車輪ブレーキの制動力やエンジンの出力を制御して車両CRの姿勢を制御したり、車体の傾きを制御したり、サスペンションの強さを制御したりしてもよい。
また、前輪の径差起因横加速度と後輪の径差起因横加速度を別途計算し、これらの径差起因横加速度の合計を出す構成であってもよい。
また、車体速度V、仮横加速度YGの計算方法は前記したものに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置を備えた車両の構成図である。
【図2】車両用ブレーキ液圧制御装置のブレーキ液圧回路図である。
【図3】本発明の実施形態に係る制御装置のブロック構成図である。
【図4】横加速度推定部の詳細を示すブロック構成図である。
【図5】横加速度推定部の処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0046】
21 横加速度推定部(推定横加速度計算装置)
21c 仮横加速度計算部
21d 径差起因横加速度計算部
21d1 同側車輪速度比率計算部
21d2 左右異径比率計算部
21d3 径差起因横加速度推定部
21e 推定横加速度計算部




 

 


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