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発明の名称 車両用ブレーキ液圧制御装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−30722(P2007−30722A)
公開日 平成19年2月8日(2007.2.8)
出願番号 特願2005−218165(P2005−218165)
出願日 平成17年7月28日(2005.7.28)
代理人 【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
発明者 黒崎 崇史 / 高橋 進 / 小島 武志
要約 課題
一部の車輪がABS制御中であっても(あるいはスリップが生じても)、精度良くマスタシリンダ圧を推定することができる車両用ブレーキ液圧制御装置を提供することを課題とする。

解決手段
車両の各車輪の車輪速度に基づいて、推定マスタシリンダ圧を推定する車両用ブレーキ液圧制御装置100であって、車両の各車輪の減速度を算出する減速度算出部22と、前記減速度算出部22により算出された前記各車輪の減速度に基づいて、仮のマスタシリンダ圧を車輪ごとに算出する仮マスタシリンダ圧算出部23と、仮マスタシリンダ圧算出部23により算出された前記各車輪の仮マスタシリンダ圧のうち、最も小さい値を今回の推定マスタシリンダ圧として推定する推定マスタシリンダ圧推定部24と、を有する。
特許請求の範囲
【請求項1】
マスタシリンダで発生されたマスタシリンダ圧を各車輪の液圧式ブレーキのホイールシリンダに対して供給するとともに、前記ホイールシリンダに対するブレーキ液圧の供給を制御する車両用ブレーキ液圧制御装置であって、
各車輪の減速度を算出する減速度算出手段と、
前記減速度算出手段により算出された前記各車輪の減速度に基づいて、仮のマスタシリンダ圧を車輪ごとに算出する仮マスタシリンダ圧算出手段と、
前記仮マスタシリンダ圧算出手段により算出された前記各車輪の仮マスタシリンダ圧のうち、最も小さい値を今回の推定マスタシリンダ圧として推定するマスタシリンダ圧推定手段と、
を有することを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項2】
前記ホイールシリンダに対するブレーキ液圧が増減圧制御されているか否かを車輪ごとに判定する増減圧制御判定手段を有し、
前記マスタシリンダ圧推定手段は、前記増減圧制御判定手段により増減圧制御していると判定された車輪の仮マスタシリンダ圧を除外し、その他の車輪の仮マスタシリンダ圧の中から前記今回の推定マスタシリンダ圧を推定することを特徴とする請求項1に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項3】
前記ホイールシリンダに対するブレーキ液圧が増減圧制御されているか否かを車輪ごとに判定する増減圧制御判定手段を有し、
前記マスタシリンダ圧推定手段により推定された前記今回の推定マスタシリンダ圧および前記増減圧制御判定手段により判定された増減圧制御状態に基づき、前記ホイールシリンダにおけるブレーキ液圧を推定するブレーキ液圧推定手段を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ブレーキ液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブレーキ液圧の供給を制御することで、急ブレーキ時等に車輪がロックされることを防止し、安定した車体姿勢と操舵性を確保するアンチロック機能(以下、「ABS」という。)付きの車両用ブレーキ液圧制御装置が知られている。
【0003】
ここで、ブレーキ液圧の供給を適切に制御するためには、マスタシリンダ圧を精度良く推定することが望ましい。例えば、特許文献1には、ブレーキ液圧の増減制御開始前(ABS非制御中)は、車両の減速度を用いてマスタシリンダ圧を推定するマスタシリンダ圧推定装置が開示されている。つまり、ブレーキ液圧の増減制御前は、マスタシリンダ圧は増減圧されておらず、従って、車輪ブレーキのホイールシリンダに対するブレーキ液圧はマスタシリンダ圧とほぼ同一圧力になると考えられる。また、車輪がロックされていない状態では、ブレーキ液圧は車輪にかかる荷重に応じて車両の減速度と一義的に対応するものと考えられる。そこで、車両の減速度から、ブレーキ液圧を推定し、延いては、マスタシリンダ圧を推定(または補正)することができるとする。
【特許文献1】特開平9−323634号公報(段落0014,0015、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の減速度の算出方法として、例えば、車輪速度の変化に基づいて算出するものがある。ここで、マスタシリンダ圧の推定をするための車輪において、ブレーキ液圧の増減制御中(ABS制御中)であるときは、マスタシリンダ圧とブレーキ液圧は一義的に対応せず、マスタシリンダ圧を推定することはできなかった。
また、旋回走行中や左右で摩擦係数の異なる路面(いわゆるスプリット路面)の走行中においては、複数ある各車輪から算出される減速度はそれぞれ異なるものとなり、そのため、各車輪によって、前記マスタシリンダ圧推定装置が推定するマスタシリンダ圧の値は異なる。その結果、各車輪によって、マスタシリンダ圧の推定値の精度が変化する。
【0005】
そこで、本発明では、一部の車輪がABS制御中であっても(あるいはスリップが生じても)、精度良くマスタシリンダ圧を推定することができる車両用ブレーキ液圧制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するため、本発明は、マスタシリンダで発生されたマスタシリンダ圧を各車輪の液圧式ブレーキのホイールシリンダに対して供給するとともに、前記ホイールシリンダに対するブレーキ液圧の供給を制御する車両用ブレーキ液圧制御装置であって、各車輪の減速度を算出する減速度算出手段と、前記減速度算出手段により算出された前記各車輪の減速度に基づいて、仮のマスタシリンダ圧を車輪ごとに算出する仮マスタシリンダ圧算出手段と、前記仮マスタシリンダ圧算出手段により算出された前記各車輪の仮マスタシリンダ圧のうち、最も小さい値を今回の推定マスタシリンダ圧として推定するマスタシリンダ圧推定手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
このような車両用ブレーキ液圧制御装置によれば、各車輪の減速度から算出された車輪ごとの仮マスタシリンダ圧のうち、最も小さい値を今回の推定マスタシリンダ圧として推定する。つまり、減速度が大きな車輪はスリップしている(ロック傾向にある)可能性があるところ、各車輪の減速度に基づいて車輪ごとに算出された仮マスタシリンダ圧のうち、最も小さい値は、路面に対してグリップしている車輪から算出される仮マスタシリンダ圧であると考えられる。そこで、この最も小さい値を今回の推定マスタシリンダ圧であると推定することで、精度の高い値が得られる。また、全ての車輪を推定の対象とし、この中から最適な値を選択するものであるため、一部の車輪がABS制御中であっても、今回の推定マスタシリンダ圧を精度良く推定することができる。
【0008】
また、前記した発明においては、前記ホイールシリンダに対するブレーキ液圧が増減圧制御されているか否かを車輪ごとに判定する増減圧制御判定手段を有し、前記マスタシリンダ圧推定手段は、前記増減圧制御判定手段により増減圧制御していると判定された車輪の仮マスタシリンダ圧を除外し、その他の車輪の仮マスタシリンダ圧の中から前記今回の推定マスタシリンダ圧を推定することができる。
【0009】
このような車両用ブレーキ液圧制御装置によれば、増減圧制御中であると判定された車輪の仮マスタシリンダ圧を除外し、その他の車輪の仮マスタシリンダ圧の中から今回の推定マスタシリンダ圧を推定する。つまり、増減圧制御中の車輪から算出される仮マスタシリンダ圧を今回の推定マスタシリンダ圧の推定には用いず、その他の車輪から算出される仮マスタシリンダ圧の中から最も小さい値を今回の推定マスタシリンダ圧として推定することで、精度の高い値が得られる。
なお、本発明における「増減圧制御」とは、車両用ブレーキ液圧制御装置にてホイールシリンダにおけるブレーキ液圧を増圧、保持、減圧のいずれかの状態に適宜切り替えて制御を行う所謂ABS制御等を含む。
【0010】
また、前記した発明においては、前記ホイールシリンダに対するブレーキ液圧が増減圧制御されているか否かを車輪ごとに判定する増減圧制御判定手段を有し、前記マスタシリンダ圧推定手段により推定された前記今回の推定マスタシリンダ圧および前記増減圧制御判定手段により判定された増減圧制御状態に基づき、前記ホイールシリンダにおけるブレーキ液圧を推定するブレーキ液圧推定手段を有するように構成することができる。
【0011】
このような車両用ブレーキ液圧制御装置によれば、今回の推定マスタシリンダ圧および増減圧制御判定手段により判定された増減圧制御状態に基づいて、ホイールシリンダに対するブレーキ液圧を算出する。つまり、精度良く推定された推定マスタシリンダ圧と増減圧制御状態に基づくため、ブレーキ液圧も精度良く算出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一部の車輪がABS制御中であっても、精度良くマスタシリンダ圧を推定することができ、的確なブレーキ制御を可能にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
参照する図面において、図1は、本発明のブレーキ液圧制御装置を備えた車両の構成図である。
【0014】
図1に示すように、車両CRには、ブレーキペダルPに加えられる踏力に応じたブレーキ液圧を発生するマスタシリンダMと、各車輪Tに制動力を付与する車輪ブレーキFL,FR,RL,RRと、この車輪ブレーキFL,FR,RL,RRに付与するブレーキ液圧を適宜制御する車両用ブレーキ液圧制御装置100が設けられている。
【0015】
車輪ブレーキFL,FR,RL,RRには、ホイールシリンダHが設けられている。ホイールシリンダHは、マスタシリンダMおよび車両用ブレーキ液圧制御装置100により発生され、供給されるブレーキ液圧を作動力(制動力)に変換する液圧装置であり、それぞれ配管を介して後記する車両用ブレーキ液圧制御装置100の液圧ユニット10に接続されている。
なお、以下、適宜、前記マスタシリンダMで発生するブレーキ液圧をマスタシリンダ圧といい、ホイールシリンダHに供給されるブレーキ液圧をホイールシリンダ圧という。
【0016】
車両用ブレーキ液圧制御装置100は、油路や各種部品が設けられた液圧ユニット10と、液圧ユニット10内の各種部品を適宜制御するための制御装置20とを主に備えている。
【0017】
以下、車両用ブレーキ液圧制御装置100の液圧ユニット10について、図2を参照しながら詳細に説明する。参照する図面において、図2は、車両用ブレーキ液圧制御装置のブレーキ液圧回路図である。
【0018】
図2に示すように、車両用ブレーキ液圧制御装置100の液圧ユニット10は、運転者がブレーキペダルPに加える踏力に応じたブレーキ液圧(マスタシリンダ圧)を発生するマスタシリンダMと、ホイールシリンダHにブレーキ液圧(ホイールシリンダ圧)を供給される車輪ブレーキFL,RR,RL,FRとの間に配置されている。マスタシリンダMの二つの出力ポートM1,M2は、後記する液圧ユニット10の入口ポート121に接続され、液圧ユニット10の出口ポート122が、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRに接続されている。そして、通常時は車両用ブレーキ液圧制御装置100内の入口ポート121から出口ポート122までが連通した油路となっていることで、ブレーキペダルPの踏力が各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRに伝達されるようになっている。
【0019】
液圧ユニット10には、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRに対応して四つの入口弁1、四つの出口弁2、および四つのチェック弁1aが設けられる。また、出力ポートM1,M2に対応した各出力液圧路81,82に対応して二つのリザーバ3、二つのポンプ4、二つのダンパ5、二つのオリフィス5aが設けられ、二つのポンプ4を駆動するための電動モータ6を備えている。
【0020】
入口弁1は、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRとマスタシリンダMとの間に配置された常開型の電磁弁である。入口弁1は、通常時に開いていることで、マスタシリンダMから各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRへブレーキ液圧が伝達するのを許容している。また、入口弁1は、車輪がロックしそうになったときに図示せぬ制御装置により閉塞されることで、ブレーキペダルPから各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRに伝達する液圧を遮断する。
【0021】
出口弁2は、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRと各リザーバ3との間に配置された常閉型の電磁弁である。出口弁2は、通常時に閉塞されているが、車輪がロックしそうになったときに図示せぬ制御装置により開放されることで、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRに加わるブレーキ液圧を各リザーバ3に逃がす。
【0022】
チェック弁1aは、各入口弁1に並列に接続されている。このチェック弁1aは、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FR側からマスタシリンダM側へのブレーキ液の流入のみを許容する弁であり、ブレーキペダルPからの入力が解除された場合に入口弁1を閉じた状態にしたときにおいても、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FR側からマスタシリンダM側へのブレーキ液の流入を許容する。
【0023】
リザーバ3は、各出口弁2が開放されることによって逃がされるブレーキ液圧を吸収する機能を有している。
ポンプ4は、リザーバ3で吸収されているブレーキ液を吸入し、そのブレーキ液をダンパ5やオリフィス5aを介してマスタシリンダMへ戻す機能を有している。これにより、リザーバ3によるブレーキ液圧の吸収によって減圧された各出力液圧路81,82の圧力状態が回復される。
【0024】
車両用ブレーキ液圧制御装置100の制御装置20は、例えば、CPU、RAM、ROMおよび入出力回路を備えている。また、図1に示すように、制御装置20には、車両CRの各車輪Tの車輪速度を検出するための車輪速センサ91が接続されており、この車輪速センサ91からの入力と、ROMに記憶されたプログラムやデータに基づいて各種演算処理を行うことによって、制御を実行する。
【0025】
図3は、本実施形態に係る制御装置のブロック構成図、図4は、減速度と仮マスタシリンダ圧との関係を示すマップ図、図5は、制御装置の動作フローチャートである。
【0026】
図3に示すように、制御装置20は、車輪速センサ91が検出した車輪Tの回転速度に基づき、液圧ユニット10内の各入口弁1および出口弁2(図2参照)の開閉動作を制御して、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRの動作を制御するものである。
制御装置20は、機能部として、増減圧制御判定部21、減速度算出部22、仮マスタシリンダ圧算出部23、マップ記憶部23a、推定マスタシリンダ圧推定部24、ホイールシリンダ圧算出部25(ブレーキ液圧推定手段)、目標液圧設定部26、弁駆動部27を有する。
【0027】
増減圧制御判定部21は、各車輪TのホイールシリンダHに対するブレーキ液圧が増減圧制御中か否かを判定する。増減圧制御中であるか否かは、制御装置20内のアンチロックブレーキ制御を行う回路(不図示)から信号を入力されることで、判定するものとする。
【0028】
減速度算出部22は、各車輪速センサ91から入力された信号と、増減圧制御判定部21の判定結果とに基づき、各車輪Tの減速度を算出する。具体的には、増減圧制御判定部21で増減圧制御中でないと判定された車輪Tについては、各車輪速センサ91がそれぞれ出力した車輪の回転速度ωFL,ωRR,ωRL,ωFRに基づき、車輪の半径を乗じて車輪速度を計算する。そして、計算した車輪速度の微分値を減速度AFL,ARR,ARL,AFRとする。一方、減速度算出部22は、増減圧制御中であると判定された車輪Tについては、予め設定された固定減速度として、例えば、1.1Gとする。なお、この固定減速度は、増減圧制御中でない車輪の減速度よりも大きな減速度に設定しておく。
【0029】
仮マスタシリンダ圧算出部23は、減速度算出部22で算出された各車輪Tの減速度AFL,ARR,ARL,AFRから、4つの車輪Tごとに仮の推定マスタシリンダ圧である仮マスタシリンダ圧PFL,PRR,PRL,PFRを算出する。具体的には、仮マスタシリンダ圧算出部23は、車輪減速度と仮マスタシリンダ圧の関係を示したマップ(図4参照)をマップ記憶部23aに記憶しており、各車輪Tの減速度からマップ検索して、車輪Tごとに仮マスタシリンダ圧を算出する。
【0030】
マップ記憶部23aでは、図4に示すように、前輪TF、後輪TRごとのマップを記憶している。このマップでは、減速度が大きくなるに従って仮マスタシリンダ圧が大きくなるように設定されているが、減速度が所定値に立ち上がるまで、同一減速度から求められる仮マスタシリンダ圧は、後輪TRの方が前輪TFより大きめに設定されている。これは、実際に、マスタシリンダM(図1,2参照)からブレーキ液圧が供給されるとき、後輪TRのホイールシリンダ圧は、前輪TFのホイールシリンダ圧よりも若干遅れて立ち上がる結果、減速度も後輪TR側が遅れて立ち上がるためである。
なお、本実施形態では、仮マスタシリンダ圧をマップ検索により求めるものとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、予め記憶された計算式によって求めるものであってもよい。
【0031】
図3に示すように、推定マスタシリンダ圧推定部24は、仮マスタシリンダ圧算出部23で算出された4つの仮マスタシリンダ圧PFL,PRR,PRL,PFRの中から最も小さい値を選択し(min{PFL,PRR,PRL,PFR})、この選択した値を今回の推定マスタシリンダ圧P(n)と推定する。従って、減速度が大きな車輪、つまり、増減圧制御中、または、スリップしている可能性がある車輪Tから算出された仮マスタシリンダ圧PFL,PRR,PRL,PFRが除外されて、減速度が小さな車輪Tから算出された仮マスタシリンダ圧PFL,PRR,PRL,PFRの値が、推定マスタシリンダ圧P(n)とされる。
なお、制御装置20では、車輪Tごとに仮マスタシリンダ圧PFL,PRR,PRL,PFRを算出して、その中から推定マスタシリンダ圧P(n)を特定する。換言すると、減速度が小さな車輪Tを直接特定して、この車輪Tから推定マスタシリンダ圧を算出するものではない。これは、図4に示したマップのように、前輪TFと後輪TRでは、減速度が同じ場合であっても推定される仮マスタシリンダ圧の値が異なることに起因する。
【0032】
ホイールシリンダ圧算出部25は、推定マスタシリンダ圧P(n)および増減圧制御判定部21により判定された増減圧制御状態に基づいて、各車輪Tのホイールシリンダ圧PW(n)を算出する。
具体的には、ABS制御に入る前の車輪Tについては、推定マスタシリンダ圧P(n)をそのままホイールシリンダ圧PW(n)に代入する。
ABS減圧制御時の車輪Tについては、前回のホイールシリンダ圧PW(n−1)と減圧目標値PT(例えば、0気圧)との差に係数k1(<0)をかけて今回の減少分を算出する。
W(n)=PW(n−1)+[k1×(PW(n−1)−PT)]・・・(式1)
増圧時の車輪Tについては、前回ホイールシリンダ圧PW(n−1)と推定マスタシリンダ圧P(n)との差に係数k2(>0)をかけて今回の増加分を算出する。
W(n)=PW(n−1)+{k2×(P(n)−PW(n−1))}・・・(式2)
【0033】
目標液圧設定部26は、ホイールシリンダ圧算出部25が算出したホイールシリンダ圧PW(n)および車輪速センサ91が検出した車輪Tの回転速度ωに基づき、各車輪ブレーキFL,RL,FR,RRの目標液圧を設定する。この設定の方法は、従来公知の方法により行えばよく、特に限定されない。一例をあげれば、4つの車輪Tの回転速度ωから、各車輪Tの車輪速度を計算し、この車輪速度から車体速度を推定する。そして、車体速度と車輪速度からスリップ率を計算し、このスリップ率が所定値を超えないようにするための目標液圧を設定する。この際、左右の車輪T2で、ホイールシリンダ圧に差が開きすぎないように、算出したホイールシリンダ圧PW(n)の値を参照するとよい。
【0034】
弁駆動部27は、各車輪ブレーキFL,RL,FR,RRのホイールシリンダHの現在のホイールシリンダ圧PW(n)が目標液圧設定部26の設定した目標液圧に一致するように、従来公知の方法により液圧ユニット10内の各入口弁1および出口弁2を作動させるパルス信号を液圧ユニット10へ出力する。このパルス信号は、例えば、現在のホイールシリンダHのホイールシリンダ圧PW(n)と目標液圧との偏差が大きいほど多くのパルスを出力するようにする。
【0035】
この制御装置20の動作について、図5を参照しながら(適宜図3を参照)説明する。
まず、図5に示すように、各車輪速センサ91から各車輪Tの回転速度ωFL,ωRR,ωRL,ωFRが検出されるとともに、増減圧制御判定部21(図3参照)が、各車輪Tが増減圧制御中か否かを判定する(ステップS1)。減速度算出部22では、各車輪速センサ91で検出された各車輪Tの回転速度ωFL,ωRR,ωRL,ωFRおよび前記判定結果を用いて、各車輪Tの減速度AFL,ARR,ARL,AFRを算出する(ステップS2)。仮マスタシリンダ圧算出部23では、各車輪Tの減速度AFL,ARR,ARL,AFRから、マップ検索して、車輪Tごとに仮マスタシリンダ圧PFL,PRR,PRL,PFRを算出し(ステップS3)、推定マスタシリンダ圧推定部24では、複数得られた仮マスタシリンダ圧PFL,PRR,PRL,PFRの中から最も小さい値を推定マスタシリンダ圧P(n)として推定する(ステップS4)。そして、ホイールシリンダ圧算出部25では、ステップS4で得られた推定マスタシリンダ圧P(n)および増減圧状態に基づいてホイールシリンダ圧PW(n)を算出して推定する(ステップS5)。
【0036】
次に、具体的に、減圧制御輪である車輪T1と減圧非制御輪である車輪T2から、制御装置20の各部で取得されるデータについて、図6を参照しながら説明する。参照する図面において、図6は、車両の減圧制御輪と減圧非制御輪の制動開始時から停止時までの経過時間における(a)速度、(b)減速度、(c)仮マスタシリンダ圧、を示すタイムチャートであり、また、(d)この車両の制動開始時から停止までの経過時間における推定マスタシリンダ圧を示すタイムチャートである。
【0037】
図6(a)は車輪速度と時間の関係を示すが、例えば、車輪に急ブレーキがかけられたときに、車輪T1が減圧制御され、車輪T2が減圧制御されなかった場合、各車輪速センサ91(図3参照)から検出される各車輪T1,T2の車輪速度VT1,VT2は、図6(a)に示すように、車輪T2では緩やかに下がっていくのに対し、車輪T1ではスリップ率が大きくなったときに速度が乱れる。そして、減速度算出部22(図3参照)で算出される減速度AT1,AT2は、図6(b)に示すように、減圧制御に入らなかった車輪T2では、車輪速度に対応して緩やかに大きくなるのに対し、減圧制御された車輪T1では、予め設定された固定減速度が適用されるため、一気に立ち上がった後一定値を保つ。
【0038】
仮マスタシリンダ圧算出部23で算出される仮マスタシリンダ圧PT1,PT2は、図6(c)に示すように、車輪T2では、緩やかに上がっていくのに対し、車輪T1では、減速度が固定値であることから、一気に立ち上がった後一定値を保つ。つまり、減圧制御されている車輪T1より減圧制御されていない車輪T2のほうが、常に、仮マスタシリンダ圧が小さく算出される。
【0039】
推定マスタシリンダ圧推定部24で推定される推定マスタシリンダ圧は、図6(c)で示された仮マスタシリンダ圧PT1,PT2のうち、小さい値である仮マスタシリンダ圧PT2であり、つまり、図6(d)に示すように、減圧制御されていない車輪T2から算出されたものとなる。
【0040】
以上によれば、本実施形態において以下の効果を得ることができる。
本実施形態では、4つの車輪Tごとに算出された仮マスタシリンダ圧PFL,PRR,PRL,PFRのうち、最も小さい値を今回の推定マスタシリンダ圧P(n)であると推定している。つまり、減速度AFL,ARR,ARL,AFRが大きな車輪Tはスリップしている可能性があるところ、各車輪Tの減速度AFL,ARR,ARL,AFRに基づいて車輪Tごとに算出された仮マスタシリンダ圧PFL,PRR,PRL,PFRのうち最も小さい値は、路面に対してグリップしている車輪Tから算出されるものと考えられる。そこで、この最も小さい値を今回の推定マスタシリンダ圧P(n)であると推定することで、精度の高い値を得ることができる。
【0041】
また、本実施形態では、全ての車輪Tを推定の対象とし、この中から最適な値を選択するものであるため、一部の車輪がABS制御中であっても、今回の推定マスタシリンダ圧P(n)を精度良く推定することができる。
【0042】
さらに、本実施形態では、精度良く推定された推定マスタシリンダ圧P(n)に基づいてホイールシリンダ圧PW(n)を算出するため、算出されたホイールシリンダ圧PW(n)の精度も向上する。従って、推定マスタシリンダ圧P(n)、ホイールシリンダ圧PW(n)を精度良く得られるため、的確なブレーキ制御を行うことができる。
【0043】
以上、本実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、様々な形態で実施される。
本実施形態では、4つの全ての車輪Tを対象に減速度を算出したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、一部の車輪を対象車輪として選択するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のブレーキ液圧制御装置を備えた車両の構成図である。
【図2】車両用ブレーキ液圧制御装置のブレーキ液圧回路図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る制御装置のブロック構成図である。
【図4】減速度と仮マスタシリンダ圧との関係を示すマップ図である。
【図5】制御装置の動作フローチャートである。
【図6】図6は、車両の減圧制御輪と減圧非制御輪の制動開始時から停止時までの経過時間における(a)速度、(b)減速度、(c)仮マスタシリンダ圧、を示すタイムチャートであり、また、(d)この車両の制動開始時から停止までの経過時間における推定マスタシリンダ圧を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0045】
10 液圧ユニット
20 制御装置
21 増減圧制御判定部
22 減速度算出部
23 仮マスタシリンダ圧算出部
24 推定マスタシリンダ圧推定部
25 ホイールシリンダ圧算出部
91 車輪速センサ
100 車両用ブレーキ液圧制御装置
CR 車両
H ホイールシリンダ
M マスタシリンダ
T 車輪




 

 


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