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発明の名称 燃料電池車両の制御装置および燃料電池車両の制御方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−20244(P2007−20244A)
公開日 平成19年1月25日(2007.1.25)
出願番号 特願2005−196186(P2005−196186)
出願日 平成17年7月5日(2005.7.5)
代理人 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
発明者 上野臺 浅雄 / 白坂 卓也 / 池田 透 / 柳田 久則
要約 課題
車両走行用のモータの電源として燃料電池を備える燃料電池車両において、燃料電池を適切に保護しつつ、トラクション制御を適切なタイミングで実行する。

解決手段
運転者要求トルク算出部51は、アクセル開度ACとモータの回転数NMとに基づき、モータから出力されるトルクに対する運転者要求トルクTDを算出する。トルク整合判定部52は、TCSECUから入力されるTCS要求トルクTTと、運転者要求トルクTDとに基づき、何れか小さい方を選択し、モータから出力されるトルクに対するトルク指令TRとして設定する。モータ要求電力算出部53は、モータの回転数NMと、トルク整合判定部52から出力されるトルク指令TRと、マネジメント制御部から入力される駆動電力制限指令とに基づき、モータの消費電力を指示するモータ要求電力PMを算出する。
特許請求の範囲
【請求項1】
車両を駆動可能なモータと、該モータの駆動および回生動作を制御するモータ制御手段と、タイヤと路面との間で作用する駆動力を制御して駆動輪が空転することを抑制するトラクション制御手段と、前記モータの電源をなす燃料電池システムとして、反応ガス供給手段により反応ガスが供給されて電気化学反応により発電する燃料電池と、該燃料電池の発電電力および前記モータの回生電力により充電される蓄電装置と、前記燃料電池の出力を制御する出力制御手段とを備える燃料電池車両の制御装置であって、
前記トラクション制御手段による駆動力制御の実行開始に伴い、前記燃料電池に対する前記反応ガスの供給状態が変化するのに先立って、前記モータの消費電力を制御する制御手段を備えることを特徴とする燃料電池車両の制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記トラクション制御手段による駆動力制御の実行時に、前記反応ガスの供給状態を前記モータの消費電力に応じて制御することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両の制御装置。
【請求項3】
前記モータの回転数を検出する回転数センサを備え、
前記制御手段は、前記モータの消費電力を、前記モータから出力されるトルクに対するトルク指令と、前記回転数センサにより検出される回転数とに基づき算出することを特徴とする請求項2に記載の燃料電池車両の制御装置。
【請求項4】
前記モータの回転数を検出する回転数センサと、運転者のアクセル操作量に係るアクセル開度を検出するアクセル開度センサとを備え、
前記制御手段は、
前記トラクション制御手段による駆動力制御の実行時に、前記モータの消費電力を、前記モータから出力されるトルクに対する指令値であって前記トラクション制御手段の前記駆動力制御に応じたトラクション要求トルクと、前記回転数センサにより検出される回転数とに基づき算出し、
前記トラクション制御手段による駆動力制御の非実行時に、前記モータの消費電力を、前記モータから出力されるトルクに対する指令値であって前記アクセル開度センサにより検出されるアクセル開度に応じた運転者要求トルクと、前記回転数センサにより検出される回転数とに基づき算出することを特徴とする請求項2に記載の燃料電池車両の制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記トラクション制御手段による駆動力制御の実行時に、前記反応ガスの供給状態を前記モータの駆動力に関わらずに制御することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両の制御装置。
【請求項6】
運転者のアクセル操作量に係るアクセル開度を検出するアクセル開度センサを備え、
前記制御手段は、前記トラクション制御手段による駆動力制御の実行時に、前記反応ガスの供給状態を前記アクセル開度センサにより検出されるアクセル開度に応じて制御することを特徴とする請求項5に記載の燃料電池車両の制御装置。
【請求項7】
前記モータの回転数を検出する回転数センサを備え、
前記制御手段は、前記モータの消費電力を、前記モータから出力されるトルクに対する指令値であって前記アクセル開度センサにより検出されるアクセル開度に応じた運転者要求トルクと、前記回転数センサにより検出される回転数とに基づき算出することを特徴とする請求項6に記載の燃料電池車両の制御装置。
【請求項8】
前記モータの回転数を検出する回転数センサを備え、
前記制御手段は、
前記トラクション制御手段による駆動力制御の実行時に、前記モータの消費電力を、前記モータから出力されるトルクに対する指令値であって前記アクセル開度センサにより検出されるアクセル開度に応じた運転者要求トルクと、前記回転数センサにより検出される回転数とに基づき算出し、
前記トラクション制御手段による駆動力制御の非実行時に、前記モータの消費電力を、前記モータから出力されるトルクに対するトルク指令と、前記回転数センサにより検出される回転数とに基づき算出する
ことを特徴とする請求項6に記載の燃料電池車両の制御装置。
【請求項9】
前記蓄電装置の残容量を検出する残容量検出手段を備え、
前記トラクション制御手段による駆動力制御の実行時に、前記残容量検出手段により検出される残容量に応じて、車両の電気負荷での消費電力を超える前記燃料電池の発電電力の余剰電力を前記蓄電装置に充電する充電制御手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の燃料電池車両の制御装置。
【請求項10】
車両を駆動可能なモータと、該モータの駆動および回生動作を制御するモータ制御手段と、タイヤと路面との間で作用する駆動力を制御して駆動輪が空転することを抑制するトラクション制御手段と、前記モータの電源をなす燃料電池システムとして、反応ガス供給手段により反応ガスが供給されて電気化学反応により発電する燃料電池と、該燃料電池の発電電力および前記モータの回生電力により充電される蓄電装置と、前記燃料電池の出力を制御する出力制御手段とを備える燃料電池車両の制御方法であって、
前記トラクション制御手段による駆動力制御の実行開始に伴い、前記燃料電池に対する前記反応ガスの供給状態が変化するのに先立って、前記モータの消費電力を制御することを特徴とする燃料電池車両の制御方法。
【請求項11】
前記トラクション制御手段による駆動力制御の実行時に、前記反応ガスの供給状態を前記モータの消費電力に応じて制御することを特徴とする請求項10に記載の燃料電池車両の制御方法。
【請求項12】
前記モータの消費電力を、前記モータから出力されるトルクに対するトルク指令と、前記モータの回転数とに基づき算出することを特徴とする請求項11に記載の燃料電池車両の制御方法。
【請求項13】
前記トラクション制御手段による駆動力制御の実行時に、前記モータの消費電力を、前記モータから出力されるトルクに対する指令値であって前記トラクション制御手段の前記駆動力制御に応じたトラクション要求トルクと、前記モータの回転数とに基づき算出し、
前記トラクション制御手段による駆動力制御の非実行時に、前記モータの消費電力を、前記モータから出力されるトルクに対する指令値であって運転者のアクセル操作量に係るアクセル開度に応じた運転者要求トルクと、前記モータの回転数とに基づき算出することを特徴とする請求項11に記載の燃料電池車両の制御方法。
【請求項14】
前記トラクション制御手段による駆動力制御の実行時に、前記反応ガスの供給状態を前記モータの駆動力に関わらずに制御することを特徴とする請求項10に記載の燃料電池車両の制御方法。
【請求項15】
前記トラクション制御手段による駆動力制御の実行時に、前記反応ガスの供給状態を運転者のアクセル操作量に係るアクセル開度に応じて制御することを特徴とする請求項14に記載の燃料電池車両の制御方法。
【請求項16】
前記モータの消費電力を、前記モータから出力されるトルクに対する指令値であって運転者のアクセル操作量に係るアクセル開度に応じた運転者要求トルクと、前記モータの回転数とに基づき算出することを特徴とする請求項15に記載の燃料電池車両の制御方法。
【請求項17】
前記トラクション制御手段による駆動力制御の実行時に、前記モータの消費電力を、前記モータから出力されるトルクに対する指令値であって運転者のアクセル操作量に係るアクセル開度に応じた運転者要求トルクと、前記モータの回転数とに基づき算出し、
前記トラクション制御手段による駆動力制御の非実行時に、前記モータの消費電力を、前記モータから出力されるトルクに対するトルク指令と、前記モータの回転数とに基づき算出することを特徴とする請求項15に記載の燃料電池車両の制御方法。
【請求項18】
前記トラクション制御手段による駆動力制御の実行時に、前記蓄電装置の残容量に応じて、車両の電気負荷での消費電力を超える前記燃料電池の発電電力の余剰電力を前記蓄電装置に充電することを特徴とする請求項14に記載の燃料電池車両の制御方法。

発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池車両の制御装置および燃料電池車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両走行用モータの電源として燃料電池および蓄電装置を搭載した車両において、タイヤから路面に対して過大な駆動力が作用して駆動輪が空転することを抑制するトラクション制御として、燃料電池に供給される燃料を制限することで燃料電池から車両走行用モータへ供給される電力を制限し、この電力制限によって車両走行用モータの出力を制限することで駆動輪のグリップ力を増大させる制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−204107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来技術に係る制御装置において、燃料電池に供給される気体状あるいは液体状の流体からなる燃料の供給状態(つまり、圧力や流量等)に対しては、適宜の制御指令が入力されてから、この制御指令に応じた制御状態に到達するまでの時間、つまり応答遅れが相対的に長くなる。
このため、例えば駆動輪の空転発生が検知された時点から、実際に車両走行用モータの出力が制限されて駆動輪のグリップ力が増大するまでに要する時間が長くなり、トラクション制御を適切なタイミングで実行することが困難となる。
【0004】
しかも、例えば凍結等により相対的に摩擦抵抗が低い路面でタイヤが滑る場合のように、車両走行用モータの出力が急激に増大する場合には、この出力増大を検知してから、燃料電池に対する燃料の供給状態を制御して、車両走行用モータへの電力供給の制限を開始するまでに要する時間の間に、燃料電池および蓄電装置から所定の上限電力を超える電力が出力されてしまい、燃料電池および蓄電装置を適切に保護することができなくなる虞がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、車両走行用のモータの電源として燃料電池を備える燃料電池車両において、燃料電池を適切に保護しつつ、トラクション制御を適切なタイミングで実行することが可能な燃料電池車両の制御装置および燃料電池車両の制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の燃料電池車両の制御装置は、車両を駆動可能なモータ(例えば、実施の形態でのモータ16)と、該モータの駆動および回生動作を制御するモータ制御手段(例えば、実施の形態でのモータトルク制御部42およびPDU15)と、タイヤと路面との間で作用する駆動力を制御して駆動輪(例えば、実施の形態での駆動輪W)が空転することを抑制するトラクション制御手段(例えば、実施の形態でのTCSECU22)と、前記モータの電源をなす燃料電池システムとして、反応ガス供給手段(例えば、実施の形態での空気供給装置(A/P)18、水素タンク19aおよび水素供給弁19b)により反応ガスが供給されて電気化学反応により発電する燃料電池(例えば、実施の形態での燃料電池11)と、該燃料電池の発電電力および前記モータの回生電力により充電される蓄電装置(例えば、実施の形態での蓄電装置13)と、前記燃料電池の出力を制御する出力制御手段(例えば、実施の形態での燃料電池発電制御部41および出力制御器17)とを備える燃料電池車両の制御装置であって、前記トラクション制御手段による駆動力制御の実行開始に伴い、前記燃料電池に対する前記反応ガスの供給状態(例えば、実施の形態での流量および圧力)が変化するのに先立って、前記モータの消費電力(例えば、実施の形態でのモータ要求電力PM)を制御する制御手段(例えば、実施の形態での駆動系トルク算出部43)を備えることを特徴としている。
【0006】
上記の燃料電池車両の制御装置によれば、タイヤから路面に対して過大な駆動力が作用して駆動輪が空転することを抑制するトラクション制御の実行開始に伴い、例えば出力制御手段により反応ガス供給手段に対する制御が開始されて燃料電池に供給される反応ガスの供給状態が変化するのに先立って、制御手段によってモータの消費電力が制御される。
これにより、応答遅れが相対的に長くなる反応ガスの供給状態に対する制御とは独立に、相対的に応答遅れが短いモータの消費電力に対する制御の実行を迅速に開始することができると共に、モータの出力を直接的に(つまり燃料電池に対する反応ガスの供給状態に関わらずに)精度良く制御することができ、例えば駆動輪の空転が発生した場合であっても直ちにグリップ力を適正に増大させることができる。
【0007】
さらに、請求項2に記載の本発明の燃料電池車両の制御装置では、前記制御手段は、前記トラクション制御手段による駆動力制御の実行時に、前記反応ガスの供給状態を前記モータの消費電力(例えば、実施の形態でのモータ要求電力PM)に応じて制御することを特徴としている。
【0008】
上記の燃料電池車両の制御装置によれば、トラクション制御手段によりモータの駆動力が制御される状態で、モータの消費電力に応じて反応ガスの供給状態が制御されることから、燃料電池の発電電力が過剰となったり、不必要に増大してしまうことを防止し、例えば燃料電池の発電電力の余剰分を蓄電装置に充電する際の損失等によって、燃料電池車両全体としてのエネルギー効率が低下してしまうことを防止することができる。
【0009】
さらに、請求項3に記載の本発明の燃料電池車両の制御装置は、前記モータの回転数(例えば、実施の形態での回転数NM)を検出する回転数センサ(例えば、実施の形態でのモータ回転数センサ35)を備え、前記制御手段は、前記モータの消費電力を、前記モータから出力されるトルクに対するトルク指令(例えば、実施の形態でのトルク指令TR)と、前記回転数センサにより検出される回転数とに基づき算出することを特徴としている。
【0010】
上記の燃料電池車両の制御装置によれば、モータから出力されるトルクに対するトルク指令は、例えば、運転者のアクセル操作量に係るアクセル開度に応じた運転者要求トルクおよびトラクション制御手段による駆動力制御に応じたトラクション要求トルクに応じて、運転者要求トルクまたはトラクション要求トルクの何れか小さい方と同等の値を有するように設定される。
これにより、例えばトラクション制御手段による駆動力制御の実行時に、運転者要求トルクがトラクション要求トルクよりも大きい状態であっても、モータの駆動力が適切に低減されて、駆動輪のグリップ力を適正に増大させることができる。
そして、反応ガスの供給状態を制御するためのモータの消費電力は、モータのトルク指令と回転数とに基づき算出されることから、モータの運転状態に応じて燃料電池の発電電力を適切に設定することができる。
【0011】
さらに、請求項4に記載の本発明の燃料電池車両の制御装置は、前記モータの回転数(例えば、実施の形態での回転数NM)を検出する回転数センサ(例えば、実施の形態でのモータ回転数センサ35)と、運転者のアクセル操作量に係るアクセル開度(例えば、実施の形態でのアクセル開度AC)を検出するアクセル開度センサ(例えば、実施の形態でのアクセル開度センサ36)とを備え、前記制御手段は、前記トラクション制御手段による駆動力制御の実行時に、前記モータの消費電力を、前記モータから出力されるトルクに対する指令値であって前記トラクション制御手段の前記駆動力制御に応じたトラクション要求トルク(例えば、実施の形態でのTCS要求トルクTT)と、前記回転数センサにより検出される回転数とに基づき算出し、前記トラクション制御手段による駆動力制御の非実行時に、前記モータの消費電力を、前記モータから出力されるトルクに対する指令値であって前記アクセル開度センサにより検出されるアクセル開度に応じた運転者要求トルク(例えば、実施の形態での運転者要求トルクTD)と、前記回転数センサにより検出される回転数とに基づき算出することを特徴としている。
【0012】
上記の燃料電池車両の制御装置によれば、トラクション制御手段による駆動力制御の実行時には、運転者要求トルクには関わらずに、トラクション要求トルクとモータの回転数とに応じてモータの消費電力を設定し、一方、トラクション制御手段による駆動力制御の非実行時には、運転者要求トルクとモータの回転数とに応じてモータの消費電力を設定することにより、反応ガスの供給状態を制御するためのモータの消費電力を、トラクション制御の実行有無に応じて設定することができ、トラクション制御の実行有無に応じて燃料電池の発電電力を適切に設定することができる。
【0013】
さらに、請求項5に記載の本発明の燃料電池車両の制御装置では、前記制御手段は、前記トラクション制御手段による駆動力制御の実行時に、前記反応ガスの供給状態を前記モータの駆動力(例えば、実施の形態でのトルク指令TR)に関わらずに制御することを特徴としている。
【0014】
上記の燃料電池車両の制御装置によれば、トラクション制御手段によりモータの駆動力が制御される状態であっても、モータの駆動力とは独立に反応ガスの供給状態が制御されることから、例えばトラクション制御手段による駆動力制御の実行時に、モータの駆動力が制限されることに応じて燃料電池の発電電力が低減されてしまうことは防止される。このため、例えばトラクション制御手段による駆動力制御の実行が完了して、モータの駆動力に対する制限が解除されると共にモータの駆動力に運転者の運転意志が反映されることによって、モータの駆動力が急激に増大する場合であっても、この時点での燃料電池の発電電力によってモータの消費電力を賄うことが可能となり、応答遅れが相対的に長くなる反応ガスの供給状態を制御して燃料電池の発電電力を増大させるまでの期間において、モータの消費電力が燃料電池の発電電力よりも大きくなることで燃料電池に対する反応ガスの供給量が不足してしまうことを防止することができる。これにより、燃料電池に対する発電電流指令が過大となって反応ガスの供給量が不足することで燃料電池の劣化が促進されてしまうことを防止することができる。
【0015】
さらに、請求項6に記載の本発明の燃料電池車両の制御装置は、運転者のアクセル操作量に係るアクセル開度(例えば、実施の形態でのアクセル開度AC)を検出するアクセル開度センサ(例えば、実施の形態でのアクセル開度センサ36)を備え、前記制御手段は、前記トラクション制御手段による駆動力制御の実行時に、前記反応ガスの供給状態を前記アクセル開度センサにより検出されるアクセル開度に応じて制御することを特徴としている。
【0016】
上記の燃料電池車両の制御装置によれば、トラクション制御手段によりモータの駆動力が制御される状態であっても、このモータの駆動力とは独立に、運転者のアクセル操作量に係るアクセル開度に応じて反応ガスの供給状態が制御されることから、例えばトラクション制御手段による駆動力制御の実行状態からの復帰時、つまりモータの駆動力が、トラクション制御でのトラクション要求トルクに応じて変化する状態からアクセル開度に係る運転者要求トルクに応じて変化する状態への移行時において、モータの駆動力が急激に増大する場合であっても、燃料電池の発電電力つまり反応ガスの供給量が不足してしまうことを防止し、燃料電池の劣化が促進されてしまうことを防止することができる。
【0017】
さらに、請求項7に記載の本発明の燃料電池車両の制御装置は、前記モータの回転数(例えば、実施の形態での回転数NM)を検出する回転数センサ(例えば、実施の形態でのモータ回転数センサ35)を備え、前記制御手段は、前記モータの消費電力を、前記モータから出力されるトルクに対する指令値であって前記アクセル開度センサにより検出されるアクセル開度に応じた運転者要求トルク(例えば、実施の形態での運転者要求トルクTD)と、前記回転数センサにより検出される回転数とに基づき算出することを特徴としている。
【0018】
上記の燃料電池車両の制御装置によれば、トラクション制御手段によりモータの駆動力が制御される状態であっても、モータの消費電力は運転者要求トルクとモータの回転数とに基づき設定されることから、例えばトラクション制御手段による駆動力制御の実行状態からの復帰時、つまりモータの駆動力が、トラクション制御でのトラクション要求トルクに応じて変化する状態から運転者要求トルクに応じて変化する状態への移行時であっても、モータの消費電力が急激に増大して燃料電池の発電電力つまり反応ガスの供給量が不足してしまうことを防止し、燃料電池の劣化が促進されてしまうことを防止することができる。
しかも、燃料電池に対する反応ガスの供給状態はモータの消費電力に応じて変化することから、例えば過給器等からなる反応ガス供給手段の作動状態(例えば、作動音等)が運転者要求トルクに応じて変化し、燃料電池車両の作動状態に運転者の運転意志が適切に反映され、燃料電池車両の作動状態に運転者が違和感を感じてしまうことを防止することができる。
【0019】
さらに、請求項8に記載の本発明の燃料電池車両の制御装置は、前記モータの回転数(例えば、実施の形態での回転数NM)を検出する回転数センサ(例えば、実施の形態でのモータ回転数センサ35)を備え、前記制御手段は、前記トラクション制御手段による駆動力制御の実行時に、前記モータの消費電力を、前記モータから出力されるトルクに対する指令値であって前記アクセル開度センサにより検出されるアクセル開度に応じた運転者要求トルク(例えば、実施の形態での運転者要求トルクTD)と、前記回転数センサにより検出される回転数とに基づき算出し、前記トラクション制御手段による駆動力制御の非実行時に、前記モータの消費電力を、前記モータから出力されるトルクに対するトルク指令(例えば、実施の形態でのトルク指令TR)と、前記回転数センサにより検出される回転数とに基づき算出することを特徴としている。
【0020】
上記の燃料電池車両の制御装置によれば、トラクション制御手段による駆動力制御の実行時には、この駆動力制御に応じたモータのトルクに対する指令値であるトラクション要求トルクには関わらずに、運転者要求トルクとモータの回転数とに応じてモータの消費電力を設定し、一方、トラクション制御手段による駆動力制御の非実行時には、モータから出力されるトルクに対するトルク指令(例えば、運転者要求トルクおよび他の指令値等)とモータの回転数とに応じてモータの消費電力を設定することにより、モータの消費電力に応じて変化する反応ガスの供給状態をトラクション制御の実行有無に応じて設定することができ、燃料電池の発電電力をトラクション制御の実行有無に応じて適切に設定することができる。
【0021】
さらに、請求項9に記載の本発明の燃料電池車両の制御装置は、前記蓄電装置の残容量を検出する残容量検出手段(例えば、実施の形態でのステップS31)を備え、前記トラクション制御手段による駆動力制御の実行時に、前記残容量検出手段により検出される残容量に応じて、車両の電気負荷での消費電力を超える前記燃料電池の発電電力の余剰電力を前記蓄電装置に充電する充電制御手段(例えば、実施の形態でのステップS32)を備えることを特徴としている。
【0022】
上記の燃料電池車両の制御装置によれば、トラクション制御手段によりモータの駆動力が制御される状態であっても、モータの駆動力とは独立に反応ガスの供給状態が制御されることから、モータの駆動力の急激な増大に対して応答遅れが相対的に長くなる燃料電池の発電電力つまり反応ガスの供給量が不足してしまうことを防止し、燃料電池の劣化が促進されてしまうことを防止することができると共に、燃料電池車両全体としてのエネルギー効率が低下してしまうことを抑制することができる。
【0023】
また、請求項10に記載の本発明の燃料電池車両の制御方法は、車両を駆動可能なモータ(例えば、実施の形態でのモータ16)と、該モータの駆動および回生動作を制御するモータ制御手段(例えば、実施の形態でのモータトルク制御部42およびPDU15)と、タイヤと路面との間で作用する駆動力を制御して駆動輪が空転することを抑制するトラクション制御手段(例えば、実施の形態でのTCSECU22)と、前記モータの電源をなす燃料電池システムとして、反応ガス供給手段(例えば、実施の形態での空気供給装置(A/P)18、水素タンク19aおよび水素供給弁19b)により反応ガスが供給されて電気化学反応により発電する燃料電池(例えば、実施の形態での燃料電池11)と、該燃料電池の発電電力および前記モータの回生電力により充電される蓄電装置(例えば、実施の形態での蓄電装置13)と、前記燃料電池の出力を制御する出力制御手段(例えば、実施の形態での燃料電池発電制御部41および出力制御器17)とを備える燃料電池車両の制御方法であって、前記トラクション制御手段による駆動力制御の実行開始に伴い、前記燃料電池に対する前記反応ガスの供給状態(例えば、実施の形態での流量および圧力)が変化するのに先立って、前記モータの消費電力(例えば、実施の形態でのモータ要求電力PM)を制御することを特徴としている。
【0024】
上記の燃料電池車両の制御方法によれば、タイヤから路面に対して過大な駆動力が作用して駆動輪が空転することを抑制するトラクション制御の実行開始に伴い、例えば出力制御手段により反応ガス供給手段に対する制御が開始されて燃料電池に供給される反応ガスの供給状態が変化するのに先立って、制御手段によってモータの消費電力が制御される。
これにより、応答遅れが相対的に長くなる反応ガスの供給状態に対する制御とは独立に、相対的に応答遅れが短いモータの消費電力に対する制御の実行を迅速に開始することができると共に、モータの出力を直接的に(つまり燃料電池に対する反応ガスの供給状態に関わらずに)精度良く制御することができ、例えば駆動輪の空転が発生した場合であっても直ちにグリップ力を適正に増大させることができる。
【0025】
さらに、請求項11に記載の本発明の燃料電池車両の制御方法は、前記トラクション制御手段による駆動力制御の実行時に、前記反応ガスの供給状態を前記モータの消費電力(例えば、実施の形態でのモータ要求電力PM)に応じて制御することを特徴としている。
【0026】
上記の燃料電池車両の制御方法によれば、トラクション制御手段によりモータの駆動力が制御される状態で、モータの消費電力に応じて反応ガスの供給状態が制御されることから、燃料電池の発電電力が過剰となったり、不必要に増大してしまうことを防止し、例えば燃料電池の発電電力の余剰分を蓄電装置に充電する際の損失等によって、燃料電池車両全体としてのエネルギー効率が低下してしまうことを防止することができる。
【0027】
さらに、請求項12に記載の本発明の燃料電池車両の制御方法は、前記モータの消費電力を、前記モータから出力されるトルクに対するトルク指令(例えば、実施の形態でのトルク指令TR)と、前記モータの回転数(例えば、実施の形態での回転数NM)とに基づき算出することを特徴としている。
【0028】
上記の燃料電池車両の制御方法によれば、モータから出力されるトルクに対するトルク指令は、例えば、運転者のアクセル操作量に係るアクセル開度に応じた運転者要求トルクおよびトラクション制御手段による駆動力制御に応じたトラクション要求トルクに応じて、運転者要求トルクまたはトラクション要求トルクの何れか小さい方と同等の値を有するように設定される。
これにより、例えばトラクション制御手段による駆動力制御の実行時に、運転者要求トルクがトラクション要求トルクよりも大きい状態であっても、モータの駆動力が適切に低減されて、駆動輪のグリップ力を適正に増大させることができる。
そして、反応ガスの供給状態を制御するためのモータの消費電力は、モータのトルク指令と回転数とに基づき算出されることから、モータの運転状態に応じて燃料電池の発電電力を適切に設定することができる。
【0029】
さらに、請求項13に記載の本発明の燃料電池車両の制御方法は、前記トラクション制御手段による駆動力制御の実行時に、前記モータの消費電力を、前記モータから出力されるトルクに対する指令値であって前記トラクション制御手段の前記駆動力制御に応じたトラクション要求トルク(例えば、実施の形態でのTCS要求トルクTT)と、前記モータの回転数(例えば、実施の形態での回転数NM)とに基づき算出し、前記トラクション制御手段による駆動力制御の非実行時に、前記モータの消費電力を、前記モータから出力されるトルクに対する指令値であって運転者のアクセル操作量に係るアクセル開度に応じた運転者要求トルク(例えば、実施の形態での運転者要求トルクTD)と、前記モータの回転数とに基づき算出することを特徴としている。
【0030】
上記の燃料電池車両の制御方法によれば、トラクション制御手段による駆動力制御の実行時には、運転者要求トルクには関わらずに、トラクション要求トルクとモータの回転数とに応じてモータの消費電力を設定し、一方、トラクション制御手段による駆動力制御の非実行時には、運転者要求トルクとモータの回転数とに応じてモータの消費電力を設定することにより、反応ガスの供給状態を制御するためのモータの消費電力を、トラクション制御の実行有無に応じて設定することができ、トラクション制御の実行有無に応じて燃料電池の発電電力を適切に設定することができる。
【0031】
さらに、請求項14に記載の本発明の燃料電池車両の制御方法は、前記トラクション制御手段による駆動力制御の実行時に、前記反応ガスの供給状態を前記モータの駆動力(例えば、実施の形態でのトルク指令TR)に関わらずに制御することを特徴としている。
【0032】
上記の燃料電池車両の制御方法によれば、トラクション制御手段によりモータの駆動力が制御される状態であっても、モータの駆動力とは独立に反応ガスの供給状態が制御されることから、例えばトラクション制御手段による駆動力制御の実行時に、モータの駆動力が制限されることに応じて燃料電池の発電電力が低減されてしまうことは防止される。このため、例えばトラクション制御手段による駆動力制御の実行が完了して、モータの駆動力に対する制限が解除されると共にモータの駆動力に運転者の運転意志が反映されることによって、モータの駆動力が急激に増大する場合であっても、この時点での燃料電池の発電電力によってモータの消費電力を賄うことが可能となり、応答遅れが相対的に長くなる反応ガスの供給状態を制御して燃料電池の発電電力を増大させるまでの期間において、モータの消費電力が燃料電池の発電電力よりも大きくなることで燃料電池に対する反応ガスの供給量が不足してしまうことを防止することができる。これにより、燃料電池に対する発電電流指令が過大となって反応ガスの供給量が不足することで燃料電池の劣化が促進されてしまうことを防止することができる。
【0033】
さらに、請求項15に記載の本発明の燃料電池車両の制御方法は、前記トラクション制御手段による駆動力制御の実行時に、前記反応ガスの供給状態を運転者のアクセル操作量に係るアクセル開度(例えば、実施の形態でのアクセル開度AC)に応じて制御することを特徴としている。
【0034】
上記の燃料電池車両の制御方法によれば、トラクション制御手段によりモータの駆動力が制御される状態であっても、このモータの駆動力とは独立に、運転者のアクセル操作量に係るアクセル開度に応じて反応ガスの供給状態が制御されることから、例えばトラクション制御手段による駆動力制御の実行状態からの復帰時、つまりモータの駆動力が、トラクション制御でのトラクション要求トルクに応じて変化する状態からアクセル開度に係る運転者要求トルクに応じて変化する状態への移行時において、モータの駆動力が急激に増大する場合であっても、燃料電池の発電電力つまり反応ガスの供給量が不足してしまうことを防止し、燃料電池の劣化が促進されてしまうことを防止することができる。
【0035】
さらに、請求項16に記載の本発明の燃料電池車両の制御方法は、前記モータの消費電力を、前記モータから出力されるトルクに対する指令値であって運転者のアクセル操作量に係るアクセル開度に応じた運転者要求トルク(例えば、実施の形態での運転者要求トルクTD)と、前記モータの回転数(例えば、実施の形態での回転数NM)とに基づき算出することを特徴としている。
【0036】
上記の燃料電池車両の制御方法によれば、トラクション制御手段によりモータの駆動力が制御される状態であっても、モータの消費電力は運転者要求トルクとモータの回転数とに基づき設定されることから、例えばトラクション制御手段による駆動力制御の実行状態からの復帰時、つまりモータの駆動力が、トラクション制御でのトラクション要求トルクに応じて変化する状態から運転者要求トルクに応じて変化する状態への移行時であっても、モータの消費電力が急激に増大して燃料電池の発電電力つまり反応ガスの供給量が不足してしまうことを防止し、燃料電池の劣化が促進されてしまうことを防止することができる。
しかも、燃料電池に対する反応ガスの供給状態はモータの消費電力に応じて変化することから、例えば過給器等からなる反応ガス供給手段の作動状態(例えば、作動音等)が運転者要求トルクに応じて変化し、燃料電池車両の作動状態に運転者の運転意志が適切に反映され、燃料電池車両の作動状態に運転者が違和感を感じてしまうことを防止することができる。
【0037】
さらに、請求項17に記載の本発明の燃料電池車両の制御方法は、前記トラクション制御手段による駆動力制御の実行時に、前記モータの消費電力を、前記モータから出力されるトルクに対する指令値であって運転者のアクセル操作量に係るアクセル開度に応じた運転者要求トルク(例えば、実施の形態での運転者要求トルクTD)と、前記モータの回転数(例えば、実施の形態での回転数NM)とに基づき算出し、前記トラクション制御手段による駆動力制御の非実行時に、前記モータの消費電力を、前記モータから出力されるトルクに対するトルク指令(例えば、実施の形態でのトルク指令TR)と、前記モータの回転数とに基づき算出することを特徴としている。
【0038】
上記の燃料電池車両の制御方法によれば、トラクション制御手段による駆動力制御の実行時には、この駆動力制御に応じたモータのトルクに対する指令値であるトラクション要求トルクには関わらずに、運転者要求トルクとモータの回転数とに応じてモータの消費電力を設定し、一方、トラクション制御手段による駆動力制御の非実行時には、モータから出力されるトルクに対するトルク指令(例えば、運転者要求トルクおよび他の指令値等)とモータの回転数とに応じてモータの消費電力を設定することにより、モータの消費電力に応じて変化する反応ガスの供給状態をトラクション制御の実行有無に応じて設定することができ、燃料電池の発電電力をトラクション制御の実行有無に応じて適切に設定することができる。
【0039】
さらに、請求項18に記載の本発明の燃料電池車両の制御方法は、前記トラクション制御手段による駆動力制御の実行時に、前記蓄電装置の残容量に応じて、車両の電気負荷での消費電力を超える前記燃料電池の発電電力の余剰電力を前記蓄電装置に充電することを特徴としている。
【0040】
上記の燃料電池車両の制御方法によれば、トラクション制御手段によりモータの駆動力が制御される状態であっても、モータの駆動力とは独立に反応ガスの供給状態が制御されることから、モータの駆動力の急激な増大に対して応答遅れが相対的に長くなる燃料電池の発電電力つまり反応ガスの供給量が不足してしまうことを防止し、燃料電池の劣化が促進されてしまうことを防止することができると共に、燃料電池車両全体としてのエネルギー効率が低下してしまうことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0041】
以上説明したように、本発明の請求項1に記載の燃料電池車両の制御装置によれば、応答遅れが相対的に長くなる反応ガスの供給状態に対する制御とは独立に、相対的に応答遅れが短いモータの消費電力に対する制御の実行を迅速に開始することができると共に、モータの出力を直接的に精度良く制御することができ、例えば駆動輪の空転が発生した場合であっても直ちにグリップ力を適正に増大させることができる。
さらに、請求項2に記載の本発明の燃料電池車両の制御装置によれば、モータの消費電力に応じて反応ガスの供給状態が制御されることから、燃料電池の発電電力が過剰となったり、不必要に増大してしまうことを防止することができる。
【0042】
さらに、請求項3に記載の本発明の燃料電池車両の制御装置によれば、モータの運転状態に応じて燃料電池の発電電力を適切に設定することができる。
さらに、請求項4に記載の本発明の燃料電池車両の制御装置によれば、反応ガスの供給状態を制御するためのモータの消費電力を、トラクション制御の実行有無に応じて設定することができ、トラクション制御の実行有無に応じて燃料電池の発電電力を適切に設定することができる。
【0043】
さらに、請求項5に記載の本発明の燃料電池車両の制御装置によれば、例えばモータの駆動力に応じて相対的に短い応答遅れでモータの消費電力が増大する場合であっても、応答遅れが相対的に長くなる反応ガスの供給状態を制御して燃料電池の発電電力を増大させるまでの期間において、モータの消費電力が燃料電池の発電電力よりも大きくなることで燃料電池に対する反応ガスの供給量が不足してしまうことを防止することができる。これにより、燃料電池に対する発電電流指令が過大となって反応ガスの供給量が不足することで燃料電池の劣化が促進されてしまうことを防止することができる。
【0044】
さらに、請求項6に記載の本発明の燃料電池車両の制御装置によれば、例えばトラクション制御手段による駆動力制御の実行状態からの復帰時、つまりモータの駆動力が、トラクション制御でのトラクション要求トルクに応じて変化する状態からアクセル開度に係る運転者要求トルクに応じて変化する状態への移行時であっても、燃料電池の発電電力つまり反応ガスの供給量が不足してしまうことを防止し、燃料電池の劣化が促進されてしまうことを防止することができる。
【0045】
さらに、請求項7に記載の本発明の燃料電池車両の制御装置によれば、例えばトラクション制御手段による駆動力制御の実行状態からの復帰時、つまりモータの駆動力が、トラクション制御でのトラクション要求トルクに応じて変化する状態から運転者要求トルクに応じて変化する状態への移行時であっても、モータの消費電力が急激に増大して燃料電池の発電電力つまり反応ガスの供給量が不足してしまうことを防止し、燃料電池の劣化が促進されてしまうことを防止することができる。しかも、燃料電池車両の作動状態(例えば、作動音等)に運転者の運転意志が適切に反映され、燃料電池車両の作動状態に運転者が違和感を感じてしまうことを防止することができる。
【0046】
さらに、請求項8に記載の本発明の燃料電池車両の制御装置によれば、モータの消費電力に応じて変化する反応ガスの供給状態をトラクション制御の実行有無に応じて設定することができ、燃料電池の発電電力をトラクション制御の実行有無に応じて適切に設定することができる。
さらに、請求項9に記載の本発明の燃料電池車両の制御装置によれば、燃料電池の発電電力つまり反応ガスの供給量が不足してしまうことを防止し、燃料電池の劣化が促進されてしまうことを防止することができると共に、燃料電池車両全体としてのエネルギー効率が低下してしまうことを抑制することができる。
【0047】
また、本発明の請求項10に記載の燃料電池車両の制御方法によれば、応答遅れが相対的に長くなる反応ガスの供給状態に対する制御とは独立に、相対的に応答遅れが短いモータの消費電力に対する制御の実行を迅速に開始することができると共に、モータの出力を直接的に精度良く制御することができ、例えば駆動輪の空転が発生した場合であっても直ちにグリップ力を適正に増大させることができる。
さらに、請求項11に記載の本発明の燃料電池車両の制御方法によれば、モータの消費電力に応じて反応ガスの供給状態が制御されることから、燃料電池の発電電力が過剰となったり、不必要に増大してしまうことを防止することができる。
【0048】
さらに、請求項12に記載の本発明の燃料電池車両の制御方法によれば、モータの運転状態に応じて燃料電池の発電電力を適切に設定することができる。
さらに、請求項13に記載の本発明の燃料電池車両の制御方法によれば、反応ガスの供給状態を制御するためのモータの消費電力を、トラクション制御の実行有無に応じて設定することができ、トラクション制御の実行有無に応じて燃料電池の発電電力を適切に設定することができる。
【0049】
さらに、請求項14に記載の本発明の燃料電池車両の制御方法によれば、例えばモータの駆動力に応じて相対的に短い応答遅れでモータの消費電力が増大する場合であっても、応答遅れが相対的に長くなる反応ガスの供給状態を制御して燃料電池の発電電力を増大させるまでの期間において、モータの消費電力が燃料電池の発電電力よりも大きくなることで燃料電池に対する反応ガスの供給量が不足してしまうことを防止することができる。これにより、燃料電池に対する発電電流指令が過大となって反応ガスの供給量が不足することで燃料電池の劣化が促進されてしまうことを防止することができる。
【0050】
さらに、請求項15に記載の本発明の燃料電池車両の制御方法によれば、例えばトラクション制御手段による駆動力制御の実行状態からの復帰時、つまりモータの駆動力が、トラクション制御でのトラクション要求トルクに応じて変化する状態からアクセル開度に係る運転者要求トルクに応じて変化する状態への移行時であっても、燃料電池の発電電力つまり反応ガスの供給量が不足してしまうことを防止し、燃料電池の劣化が促進されてしまうことを防止することができる。
【0051】
さらに、請求項16に記載の本発明の燃料電池車両の制御方法によれば、駆動力が、トラクション制御でのトラクション要求トルクに応じて変化する状態から運転者要求トルクに応じて変化する状態への移行時であっても、モータの消費電力が急激に増大して燃料電池の発電電力つまり反応ガスの供給量が不足してしまうことを防止し、燃料電池の劣化が促進されてしまうことを防止することができる。しかも、燃料電池車両の作動状態(例えば、作動音等)に運転者の運転意志が適切に反映され、燃料電池車両の作動状態に運転者が違和感を感じてしまうことを防止することができる。
【0052】
さらに、請求項17に記載の本発明の燃料電池車両の制御方法によれば、モータの消費電力に応じて変化する反応ガスの供給状態をトラクション制御の実行有無に応じて設定することができ、燃料電池の発電電力をトラクション制御の実行有無に応じて適切に設定することができる。
さらに、請求項18に記載の本発明の燃料電池車両の制御方法によれば、燃料電池の発電電力つまり反応ガスの供給量が不足してしまうことを防止し、燃料電池の劣化が促進されてしまうことを防止することができると共に、燃料電池車両全体としてのエネルギー効率が低下してしまうことを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
以下、本発明の第1実施形態に係る燃料電池車両の制御装置および燃料電池車両の制御方法について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による燃料電池車両の制御装置10は、例えば図1に示すように、燃料電池11と、第1のDC−DCコンバータ12と、蓄電装置13と、第2のDC−DCコンバータ14と、PDU(パワードライブユニット)15と、モータ16と、出力制御器17と、空気供給装置(A/P)18と、水素タンク19aおよび水素供給弁19bと、背圧弁20と、パージ弁21と、TCSECU22と、制御装置23と、燃料電池温度センサ31と、システム電圧センサ32と、端子電圧センサ33と、電流センサ34と、モータ回転数センサ35と、アクセル開度センサ36と、車輪速センサ37とを備えて構成されている。
そして、制御装置23は、例えば燃料電池発電制御部41と、モータトルク制御部42と、駆動系トルク算出部43と、マネジメント制御部44とを備えて構成されている。
【0054】
燃料電池11は、陽イオン交換膜等からなる固体高分子電解質膜を、アノード触媒およびガス拡散層からなる燃料極(アノード)と、カソード触媒およびガス拡散層からなる酸素極(カソード)とで挟持してなる電解質電極構造体を、更に一対のセパレータで挟持してなる燃料電池セルを多数組積層して構成され、燃料電池セルの積層体は一対のエンドプレートによって積層方向の両側から挟み込まれている。
【0055】
燃料電池11のカソードには、酸素を含む酸化剤ガス(反応ガス)である空気がエアーコンプレッサー等からなる空気供給装置18から供給され、アノードには、水素からなる燃料ガス(反応ガス)が高圧の水素タンク19aから水素供給弁19bを介して供給される。
そして、アノードのアノード触媒上で触媒反応によりイオン化された水素は、適度に加湿された固体高分子電解質膜を介してカソードへと移動し、この移動に伴って発生する電子が外部回路に取り出され、直流の電気エネルギーとして利用される。このときカソードにおいては、水素イオン、電子及び酸素が反応して水が生成される。
【0056】
なお、水素供給弁19bは、例えば空気式の比例圧力制御弁であって、空気供給装置18から供給される空気の圧力を信号圧として、水素供給弁19bを通過した水素が水素供給弁19bの出口で有する圧力が信号圧に応じた所定範囲の圧力となるように設定されている。
また、エアーコンプレッサー等からなる空気供給装置18は、例えば車両の外部から空気を取り込んで圧縮し、この空気を反応ガスとして燃料電池11のカソードに供給する。そして、空気供給装置18を駆動するモータ(図示略)の回転数は、制御装置23の燃料電池発電制御部41から入力される制御指令に基づき、例えばパルス幅変調(PWM)によるPWMインバータを具備する出力制御器17により制御されている。
【0057】
そして、燃料電池11の水素排出口11aから排出された排出ガスは、制御装置23の燃料電池発電制御部41により開閉制御される排出制御弁(図示略)を介して希釈ボックス(図示略)へ導入され、希釈ボックスにより水素濃度が所定濃度以下に低減されてから、パージ弁21を介して外部(大気中等)へ排出される。
【0058】
なお、燃料電池11の水素排出口11aから排出された未反応の排出ガスの一部は、例えば循環ポンプ(図示略)およびエゼクタ(図示略)等を備える循環流路へと導入されており、水素タンク19aから供給された水素と、燃料電池11から排出された排出ガスとが混合されて燃料電池11に再び供給されている。
そして、燃料電池11の空気排出口11bから排出された未反応の排出ガスは、制御装置23の燃料電池発電制御部41により弁開度が制御される背圧弁20を介して外部(大気中等)へ排出される。
【0059】
第1のDC−DCコンバータ12は、例えばチョッパ型電力変換回路を備えて構成され、例えばチョッパ型電力変換回路のチョッピング動作つまりチョッパ型電力変換回路に具備されるスイッチング素子のオン/オフ動作によって、燃料電池11から取り出される出力電流の電流値を制御しており、このチョッピング動作は制御装置23のマネジメント制御部44から入力される制御パルスのデューティ、つまりオン/オフの比率に応じて制御されている。
【0060】
例えば、燃料電池11から出力電流の取り出しを禁止する場合において、マネジメント制御部44から入力される制御パルスのデューティが0%に設定されると、チョッパ型電力変換回路に具備されるスイッチング素子がオフ状態に固定され、燃料電池11とPDU15とが電気的に遮断される。一方、制御パルスのデューティが100%とされ、スイッチング素子がオン状態に固定されると、いわば燃料電池11とPDU15とが直結状態となり、燃料電池11の出力電圧とPDU15の入力電圧とが同等の値となる。
また、制御パルスのデューティが0%〜100%の間の適宜値に設定されると、第1のDC−DCコンバータ12は、1次側電流とされる燃料電池11の出力電流を制御パルスのデューティに応じて適宜に制限し、制限して得た電流を2次側電流として出力する。
【0061】
蓄電装置13は、例えば電気二重層コンデンサや電解コンデンサ等からなるキャパシタあるいはバッテリ等であって、双方向の第2のDC−DCコンバータ14を介して第1のDC−DCコンバータ12およびPDU15に対して並列に接続されている。
そして、第2のDC−DCコンバータ14は、燃料電池11の発電あるいはモータ16の回生動作に係るシステム電圧VSを降圧して蓄電装置13を充電可能であると共に蓄電装置13の端子電圧VEを昇圧可能である。このため、蓄電装置13の端子電圧VEを検出する端子電圧センサ33および蓄電装置13の充電電流および放電電流を検出する電流センサ34から出力される各検出信号が、制御装置23のマネジメント制御部44に入力されている。
これにより、燃料電池システムを構成する燃料電池11および蓄電装置13は、モータ16の電源とされている。
【0062】
PDU15は、例えばパルス幅変調(PWM)によるPWMインバータを備えており、制御装置23のモータトルク制御部42から出力される制御指令に応じてモータ16の駆動および回生動作を制御する。このPWMインバータは、例えばトランジスタのスイッチング素子を複数用いてブリッジ接続してなるブリッジ回路を具備し、例えばモータ16の駆動時には、モータトルク制御部42から入力されるパルス幅変調信号に基づき、第1のDC−DCコンバータ12および第2のDC−DCコンバータ14から出力される直流電力を3相交流電力に変換してモータ16へ供給する。一方、モータ16の回生時には、モータ16から出力される3相交流電力を直流電力に変換して第2のDC−DCコンバータ14を介して蓄電装置13へ供給し、蓄電装置13を充電する。
なお、モータ16は、例えば界磁として永久磁石を利用する永久磁石式の3相交流同期モータとされており、PDU15から供給される3相交流電力により駆動制御されると共に、車両の減速時において駆動輪W側からモータ16側に駆動力が伝達されると、モータ16は発電機として機能して、いわゆる回生制動力を発生し、車体の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収する。
【0063】
TCSECU22は、車両の各車輪の回転速度(車輪速NW)を検出する複数の車輪速センサ37,…,37から出力される検出信号に基づき、駆動輪Wの空転状態に係る状態量、例えば駆動輪Wと従動輪との回転速度の差(スリップ量)等を算出する。そして、予め設定された所定のTCS要求トルクマップ、例えばスリップ量と駆動輪Wの路面に対する所定のグリップ力を確保するために必要とされるトルクとの対応関係を示すマップ等を参照して、モータ16から出力されるトルクに対する指令値であるTCS(Traction Control System)要求トルクTTを算出する。
なお、所定のTCS要求トルクマップにおいては、例えば、スリップ量が増大することに伴い、TCS要求トルクTTが低下傾向に変化するように設定されている。
また、TCSECU22は、例えば駆動輪Wと従動輪との回転速度の差(スリップ量)が所定値以上となった場合等において、トラクション制御、つまりTCS要求トルクTTに応じて駆動輪Wの駆動力を低減させ、駆動輪Wのタイヤから路面に対して過大な駆動力が作用して駆動輪Wが空転することを抑制する制御の実行状態であるか否かを示すTCS作動フラグのフラグ値(例えば、トラクション制御の実行状態で「1」、非実行状態で「0」)を出力する。
【0064】
制御装置23の燃料電池発電制御部41は、例えば、車両の運転状態や、燃料電池11のアノードに供給される反応ガスに含まれる水素の濃度や、燃料電池11のアノードから排出される排出ガスに含まれる水素の濃度や、燃料電池11の発電状態、例えば各複数の燃料電池セルの端子間電圧や、燃料電池11から取り出される出力電流や、燃料電池11の内部の温度TF等に加えて、マネジメント制御部44から入力される発電電流指令に基づき、燃料電池11に対する発電指令として、空気供給装置18から燃料電池11へ供給される反応ガスの圧力および流量に対する指令値および背圧弁20の弁開度に対する指令値を出力し、燃料電池11の発電状態を制御する。
また、燃料電池発電制御部41は、マネジメント制御部44から入力される発電電流指令に対して、燃料電池11へ供給される反応ガスの圧力および流量の各検出値(実流量および実圧力)に基づき、燃料電池11の発電可能な発電電力の上限値を算出し、この上限値に応じて燃料電池11から取り出される出力電流に対する制限を指示する信号(発電電流制限指令)をマネジメント制御部44へ出力する。
【0065】
制御装置23のモータトルク制御部42は、PDU15に具備されるPWMインバータの電力変換動作を制御しており、例えばモータ16の駆動時においては、駆動系トルク算出部43から入力されるトルク指令に基づき、このトルク指令に応じたトルクをモータ16から出力させるために必要となる駆動要求出力を算出し、この駆動要求出力に応じて、PMWインバータの各スイッチング素子をパルス幅変調(PWM)によりオン/オフ駆動させる各パルスからなるスイッチング指令(つまり、パルス幅変調信号)を設定する。
【0066】
そして、制御装置23のモータトルク制御部42からPDU15にスイッチング指令が入力されると、モータ16の各相のステータ巻線(図示略)への通電が順次転流させられることで各U相,V相,W相の印加電圧の大きさ(つまり振幅)および位相が制御され、トルク指令に応じた各U相,V相,W相の相電流がモータ16の各相へと通電される。
このため、制御装置23のモータトルク制御部42には、例えばPDU15に対する入力電圧とされるシステム電圧VSを検出するシステム電圧センサ32から出力される検出信号と、モータ16の回転数NMを検出するモータ回転数センサ35から出力される検出信号とが入力されている。
なお、モータトルク制御部42は、モータ回転数センサ35から入力されたモータ16の回転数NMの検出信号を駆動系トルク算出部43へ出力する。
【0067】
制御装置23の駆動系トルク算出部43は、例えば図2に示すように、運転者要求トルク算出部51と、トルク整合判定部52と、モータ要求電力算出部53とを備えて構成されている。
運転者要求トルク算出部51は、運転者のアクセル操作量に係るアクセル開度ACを検出するアクセル開度センサ36から出力される検出信号と、モータ回転数センサ35から出力される検出信号とに基づき、例えば予め設定されたアクセル開度ACと回転数NMと運転者要求トルクTDとの所定の対応関係を示す運転者要求トルクマップ等を参照して、モータ16から出力されるトルクに対する指令値として、運転者要求トルクTDを算出する。
【0068】
トルク整合判定部52は、TCSECU22から入力されるTCS要求トルクTTと、運転者要求トルク算出部51から入力される運転者要求トルクTDとに基づき、例えばTCS要求トルクTTまたは運転者要求トルクTDの何れか小さい方を選択し、モータ16から出力されるトルクに対する指令値であるトルク指令TRとして設定する。
【0069】
モータ要求電力算出部53は、例えば、モータ回転数センサ35から出力される回転数NMと、トルク整合判定部52から出力されるトルク指令TRと、マネジメント制御部44から入力される駆動電力制限指令とに基づき、モータ16の消費電力を指示するモータ要求電力PMを算出する。
【0070】
制御装置23のマネジメント制御部44は、駆動系トルク算出部43から入力されるモータ要求電力PMおよび燃料電池発電制御部41から入力される燃料電池11の発電可能な発電電力の上限値に係る発電電流制限指令に基づき、第1のDC−DCコンバータ12の電力変換動作を制御する制御パルスを出力し、燃料電池11から取り出される出力電流の電流値を制御すると共に、第2のDC−DCコンバータ14の電力変換動作を制御する制御パルスを出力し、蓄電装置13の充電および放電を制御する。
【0071】
そして、マネジメント制御部44は、例えば、駆動系トルク算出部43から入力されるモータ要求電力PMと、車両に搭載された各種の電気負荷からなる補機で消費される電力に対応する補機要求電力と、蓄電装置13から放電可能な電力とに基づき、燃料電池11の発電電流を指示する発電電流指令を燃料電池発電制御部41へ出力する。
また、マネジメント制御部44は、燃料電池発電制御部41から入力される発電電流制限指令と、補機要求電力とに基づき、モータ16の消費電力に対する制限を指示する信号として駆動電力制限指令を駆動系トルク算出部43へ出力する。
このため、制御装置23のマネジメント制御部44には、例えば、蓄電装置13の端子電圧VEを検出する端子電圧センサ33および蓄電装置13の充電電流および放電電流を検出する電流センサ34から出力される各検出信号が入力されている。
【0072】
本発明の第1実施形態による燃料電池車両の制御装置10は上記構成を備えており、次に、この燃料電池車両の制御装置10の動作、つまり燃料電池車両の制御方法について添付図面を参照しながら説明する。
【0073】
先ず、例えば図3に示すステップS01においては、後述するモータ要求電力算出処理により、モータ16の消費電力を指示するモータ要求電力PMを算出する。
次に、ステップS02においては、発電電流指令算出処理により、例えば、モータ要求電力PMと、車両に搭載された各種の電気負荷からなる補機で消費される電力に対応する補機要求電力と、蓄電装置13から放電可能な電力とに基づき、燃料電池11の発電電流を指示する発電電流指令を算出する。
次に、ステップS03においては、駆動電力制限指令算出処理により、燃料電池11の発電可能な発電電力の上限値に応じて燃料電池11から取り出される出力電流に対する制限を指示する発電電流制限指令と、補機要求電力とに基づき、モータ16の消費電力に対する制限を指示する駆動電力制限指令を算出し、一連の処理を終了する。
【0074】
以下に、上述したステップS01でのモータ要求電力算出処理について説明する。
先ず、例えば図4に示すステップS11においては、アクセル開度ACと、モータ16の回転数NMとに基づき、例えば予め設定された運転者要求トルクマップ等を参照して、モータ16から出力されるトルクに対する指令値として、運転者要求トルクTDを算出する。
次に、ステップ12においては、算出した運転者要求トルクTDは、TCSECU22から出力されるTCS要求トルクTT以下であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS13に進み、このステップS13においては、モータ16から出力されるトルクに対する指令値であるトルク指令TRとして、運転者要求トルクTDを設定し、後述するステップS15に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS14に進み、このステップS14においては、トルク指令TRとして、TCS要求トルクTTを設定し、ステップS15に進む。
【0075】
そして、ステップS15においては、設定したトルク指令TRおよびモータ16の回転数NMに基づき、モータ16の消費電力を指示するモータ要求電力PMを算出し、一連の処理を終了する。
【0076】
例えば図5に示すように、モータ要求電力PMがモータ16の回転数NMおよびトルク指令TRに応じて変化する状態で、時刻t0から時刻t2に亘る期間において、運転者要求トルクTDおよびTCS要求トルクTTが同等の値となる場合には、運転者要求トルクTDまたはTCS要求トルクTTがトルク指令TRとして設定される。
そして、時刻t2以降において、TCS要求トルクTTが運転者要求トルクTD未満となる場合には、TCS要求トルクTTがトルク指令TRとして設定される。
【0077】
上述したように、本発明の第1実施形態による燃料電池車両の制御装置10および燃料電池車両の制御方法によれば、タイヤから路面に対して過大な駆動力が作用して駆動輪Wが空転することを抑制するトラクション制御の実行開始に伴い、例えば燃料電池発電制御部41の制御により燃料電池11に供給される反応ガスの供給状態が変化するのに先立って、駆動系トルク算出部43によりモータ16の消費電力(つまりモータ要求電力PM)が制御される。これにより、応答遅れが相対的に長くなる反応ガスの供給状態に対する制御とは独立に、相対的に応答遅れが短いモータ16の消費電力に対する制御の実行を迅速に開始することができると共に、モータ16の出力を直接的に(つまり燃料電池11に対する反応ガスの供給状態に関わらずに)精度良く制御することができ、例えば駆動輪Wの空転が発生した場合であっても直ちにグリップ力を適正に増大させることができる。
【0078】
しかも、トラクション制御によりモータ16の駆動力が制御される状態で、モータ要求電力PMに応じて反応ガスの供給状態が制御されることから、燃料電池11の発電電力が過剰となったり、不必要に増大してしまうことを防止し、例えば燃料電池11の発電電力の余剰分を蓄電装置13に充電する際の損失等によって、燃料電池車両全体としてのエネルギー効率が低下してしまうことを防止することができる。
さらに、駆動輪Wのグリップ状態を制御するためのトルク指令TRは、TCS要求トルクTTまたは運転者要求トルクTDの何れか小さい方と同等の値を有するように設定されることから、例えばトラクション制御の実行時に、運転者要求トルクTDがTCS要求トルクTTよりも大きい状態であっても、モータ16の駆動力が適切に低減されて、駆動輪Wのグリップ力を適正に増大させることができる。
そして、反応ガスの供給状態を制御するためのモータ要求電力PMは、モータ16のトルク指令TRと回転数NMとに基づき算出されることから、モータ16の運転状態に応じて燃料電池11の発電電力を適切に設定することができる。
【0079】
なお、上述した本発明の第1実施形態による燃料電池車両の制御装置10および燃料電池車両の制御方法においては、TCS要求トルクTTまたは運転者要求トルクTDの何れか小さい方が設定されるトルク指令TRと、モータ16の回転数NMとからモータ要求電力PMを算出するとしたが、これに限定されず、例えば図6から図8に示す本発明の第1実施形態の変形例に係る燃料電池車両の制御装置10および燃料電池車両の制御方法のように、TCS作動フラグのフラグ値つまりトラクション制御の実行状態であるか否かに応じて選択されるTCS要求トルクTTまたは運転者要求トルクTDの何れか一方と、モータ16の回転数NMとからモータ要求電力PMを算出してもよい。
この第1実施形態の変形例において、上述した第1実施形態による燃料電池車両の制御装置10および燃料電池車両の制御方法と異なる主要な点は、駆動系トルク算出部43のモータ要求電力算出部53および図3に示すステップS01のモータ要求電力算出処理である。
【0080】
この第1実施形態の変形例において、モータ要求電力算出部53は、例えば図6に示すように、モータ回転数センサ35から出力される回転数NMと、運転者要求トルク算出部51から入力される運転者要求トルクTDとに基づき、第1の要求電力pm1を算出する第1の要求電力算出部53aと、モータ回転数センサ35から出力される回転数NMと、TCSECU22から入力されるTCS要求トルクTTとに基づき、第2の要求電力pm2を算出する第2の要求電力算出部53bとを備えて構成されている。そして、TCSECU22から入力されるTCS作動フラグのフラグ値に応じて、フラグ値が「0」であってトラクション制御の非実行状態の場合には、第1の要求電力算出部53aにより算出される第1の要求電力pm1がモータ要求電力PMとして設定され、フラグ値が「1」であってトラクション制御の実行状態の場合には、第2の要求電力算出部53bにより算出される第2の要求電力pm2がモータ要求電力PMとして設定される。
【0081】
以下に、この第1実施形態の変形例に係る燃料電池車両の制御装置10の動作、つまり燃料電池車両の制御方法、特に、上述した図3に示すステップS01のモータ要求電力算出処理について添付図面を参照しながら説明する。
先ず、例えば図7に示すステップS11においては、アクセル開度ACと、モータ16の回転数NMとに基づき、例えば予め設定された運転者要求トルクマップ等を参照して、モータ16から出力されるトルクに対する指令値として、運転者要求トルクTDを算出する。
次に、ステップS12においては、算出した運転者要求トルクTDは、TCSECU22から出力されるTCS要求トルクTT以下であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS13に進み、このステップS13においては、モータ16から出力されるトルクに対する指令値であるトルク指令TRとして、運転者要求トルクTDを設定し、後述するステップS16に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS14に進み、このステップS14においては、トルク指令TRとして、TCS要求トルクTTを設定し、ステップS16に進む。
【0082】
次に、ステップS16においては、TCS作動フラグのフラグ値が「1」であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合、つまりトラクション制御の実行状態の場合には、ステップS17に進み、このステップS17においては、TCS要求トルクTTおよびモータ16の回転数NMに基づき、モータ16の消費電力を指示するモータ要求電力PMを算出し、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「NO」の場合、つまりトラクション制御の非実行状態の場合には、ステップS18に進み、このステップS18においては、運転者要求トルクTDおよびモータ16の回転数NMに基づき、モータ要求電力PMを算出し、一連の処理を終了する。
【0083】
例えば図8に示すように、先ず、TCS要求トルクTTまたは運転者要求トルクTDの何れか小さい方が設定されるモータ16のトルク指令TRに対しては、TCS要求トルクTT(=Tc)が運転者要求トルクTD(=Tb>Tc)未満となる時刻t0から時刻t2に亘る期間において、TCS要求トルクTT(=Tc)がトルク指令TRとして設定される。そして、時刻t2以降において、TCS要求トルクTTが運転者要求トルクTD未満となる場合には、TCS要求トルクTTがトルク指令TRとして設定される。
また、モータ要求電力PMに対しては、TCS作動フラグのフラグ値が「0」である時刻t0から時刻t2に亘る期間において、運転者要求トルクTDおよびモータ16の回転数NMに基づき、モータ要求電力PMが算出される。そして、TCS作動フラグのフラグ値が「1」である時刻t2以降において、TCS要求トルクTTおよびモータ16の回転数NMに基づき、モータ要求電力PMが算出される。
【0084】
上述したように、本発明の第1実施形態の変形例による燃料電池車両の制御装置10および燃料電池車両の制御方法によれば、トラクション制御の実行時には、運転者要求トルクTDには関わらずに、TCS要求トルクTTとモータ16の回転数NMとに応じてモータ要求電力PMを設定し、一方、トラクション制御の非実行時には、運転者要求トルクTDとモータ16の回転数NMとに応じてモータ要求電力PMを設定することにより、反応ガスの供給状態を制御するためのモータ要求電力PMを、トラクション制御の実行有無に応じて設定することができ、トラクション制御の実行有無に応じて燃料電池11の発電電力を適切に設定することができる。
【0085】
以下、本発明の第2実施形態に係る燃料電池車両の制御装置および燃料電池車両の制御方法について添付図面を参照しながら説明する。
【0086】
なお、上述した本発明の第1実施形態による燃料電池車両の制御装置10および燃料電池車両の制御方法においては、トラクション制御の実行時に、反応ガスの供給状態をモータ16の消費電力(例えば、モータ要求電力PM)に応じて制御するとしたが、以下に説明する本発明の第2実施形態に係る燃料電池車両の制御装置および燃料電池車両の制御方法においては、トラクション制御の実行時に、反応ガスの供給状態をモータ16の駆動力に関わらずに制御する。
この第2実施形態による燃料電池車両の制御装置10および燃料電池車両の制御方法において、上述した第1実施形態による燃料電池車両の制御装置10および燃料電池車両の制御方法と異なる主要な点は、駆動系トルク算出部43のモータ要求電力算出部53および図3に示すステップS01のモータ要求電力算出処理である。
【0087】
この第2実施形態において、モータ要求電力算出部53は、例えば図9に示すように、モータ回転数センサ35から出力される回転数NMと、運転者要求トルク算出部51から入力される運転者要求トルクTDとに基づき、モータ16の消費電力を指示するモータ要求電力PMを算出する。
【0088】
以下に、この第2実施形態の変形例に係る燃料電池車両の制御装置10の動作、つまり燃料電池車両の制御方法、特に、上述した図3に示すステップS01のモータ要求電力算出処理について添付図面を参照しながら説明する。
先ず、例えば図10に示すステップS21においては、アクセル開度ACと、モータ16の回転数NMとに基づき、例えば予め設定された運転者要求トルクマップ等を参照して、モータ16から出力されるトルクに対する指令値として、運転者要求トルクTDを算出する。
次に、ステップS22においては、運転者要求トルクTDおよびモータ16の回転数NMに基づき、モータ要求電力PMを算出する。
【0089】
次に、ステップS23においては、算出した運転者要求トルクTDは、TCSECU22から出力されるTCS要求トルクTT以下であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS24に進み、このステップS24においては、モータ16から出力されるトルクに対する指令値であるトルク指令TRとして、運転者要求トルクTDを設定し、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS25に進み、このステップS25においては、トルク指令TRとして、TCS要求トルクTTを設定し、一連の処理を終了する。
【0090】
例えば図11に示すように、先ず、TCS要求トルクTTまたは運転者要求トルクTDの何れか小さい方が設定されるモータ16のトルク指令TRに対しては、時刻t0から時刻t2に亘る期間において、運転者要求トルクTDおよびTCS要求トルクTTが同等の値となる場合には、運転者要求トルクTDまたはTCS要求トルクTTがトルク指令TRとして設定される。
また、モータ要求電力PMに対しては、トルク指令TRつまりTCS要求トルクTTに関わらずに、運転者要求トルクTDおよびモータ16の回転数NMに基づき、モータ要求電力PMが算出される。
【0091】
上述したように、本発明の第2実施形態による燃料電池車両の制御装置10および燃料電池車両の制御方法によれば、トラクション制御によりモータ16の駆動力(つまりトルク指令TR)が制御される状態であっても、モータ16の駆動力とは独立に反応ガスの供給状態が制御されることから、例えばトラクション制御の実行時に、モータ16の駆動力が制限されることに応じて燃料電池11の発電電力が低減されてしまうことは防止される。このため、例えばトラクション制御の実行が完了して、モータ16の駆動力に対する制限が解除されると共にモータ16の駆動力に運転者の運転意志が反映されることによって、モータ16の駆動力が急激に増大する場合であっても、この時点での燃料電池11の発電電力によってモータ16の消費電力を賄うことが可能となり、応答遅れが相対的に長くなる反応ガスの供給状態を制御して燃料電池11の発電電力を増大させるまでの期間において、モータ16の消費電力が燃料電池11の発電電力よりも大きくなることで燃料電池11に対する反応ガスの供給量が不足してしまうことを防止することができる。これにより、燃料電池11に対する発電電流指令が過大となって反応ガスの供給量が不足することで燃料電池11の劣化が促進されてしまうことを防止することができる。
【0092】
しかも、トラクション制御によりモータ16の駆動力が制御される状態であっても、このモータ16の駆動力とは独立に、運転者のアクセル操作量に係るアクセル開度ACに応じて、反応ガスの供給状態を制御するためのモータ16の消費電力(つまり、モータ要求電力PM)は運転者要求トルクTDとモータ16の回転数NMとに基づき設定されることから、例えばトラクション制御の実行状態からの復帰時、つまりモータ16の駆動力が、トラクション制御でのTCS要求トルクに応じて変化する状態から運転者要求トルクTDに応じて変化する状態への移行時であっても、モータ要求電力PMが急激に増大して燃料電池11の発電電力つまり反応ガスの供給量が不足してしまうことを防止し、燃料電池11の劣化が促進されてしまうことを防止することができる。
しかも、燃料電池11に対する反応ガスの供給状態はモータ要求電力PMに応じて変化することから、例えばエアーコンプレッサー等からなる空気供給装置18の作動状態(例えば、作動音等)が運転者要求トルクTDに応じて変化し、燃料電池車両の作動状態に運転者の運転意志が適切に反映され、燃料電池車両の作動状態に運転者が違和感を感じてしまうことを防止することができる。
【0093】
なお、上述した本発明の第2実施形態による燃料電池車両の制御装置10および燃料電池車両の制御方法においては、トルク指令TRつまりTCS要求トルクTTに関わらずに、運転者要求トルクTDと、モータ16の回転数NMとからモータ要求電力PMを算出するとしたが、これに限定されず、例えば図12および図13に示す本発明の第2実施形態の第1変形例に係る燃料電池車両の制御装置10および燃料電池車両の制御方法のように、TCS作動フラグのフラグ値つまりトラクション制御の実行状態であるか否かに応じて選択されるトルク指令TRまたは運転者要求トルクTDの何れか一方と、モータ16の回転数NMとからモータ要求電力PMを算出してもよい。
この第2実施形態の第1変形例において、上述した第2実施形態による燃料電池車両の制御装置10および燃料電池車両の制御方法と異なる主要な点は、駆動系トルク算出部43のモータ要求電力算出部53および図3に示すステップS01のモータ要求電力算出処理である。
【0094】
この第2実施形態の第1変形例において、モータ要求電力算出部53は、例えば図12に示すように、モータ回転数センサ35から出力される回転数NMと、運転者要求トルク算出部51から入力される運転者要求トルクTDとに基づき、第1の要求電力pm1を算出する第1の要求電力算出部53aと、モータ回転数センサ35から出力される回転数NMと、トルク整合判定部52から入力されるトルク指令TRとに基づき、第2の要求電力pm2を算出する第2の要求電力算出部53bとを備えて構成されている。そして、TCSECU22から入力されるTCS作動フラグのフラグ値に応じて、フラグ値が「0」であってトラクション制御の非実行状態の場合には、第1の要求電力算出部53aにより算出される第1の要求電力pm1がモータ要求電力PMとして設定され、フラグ値が「1」であってトラクション制御の実行状態の場合には、第2の要求電力算出部53bにより算出される第2の要求電力pm2がモータ要求電力PMとして設定される。
【0095】
以下に、この第2実施形態の第1変形例に係る燃料電池車両の制御装置10の動作、つまり燃料電池車両の制御方法、特に、上述した図3に示すステップS01のモータ要求電力算出処理について添付図面を参照しながら説明する。
先ず、例えば図13に示すステップS21においては、アクセル開度ACと、モータ16の回転数NMとに基づき、例えば予め設定された運転者要求トルクマップ等を参照して、モータ16から出力されるトルクに対する指令値として、運転者要求トルクTDを算出する。
次に、ステップS23においては、算出した運転者要求トルクTDは、TCSECU22から出力されるTCS要求トルクTT以下であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS24に進み、このステップS24においては、モータ16から出力されるトルクに対する指令値であるトルク指令TRとして、運転者要求トルクTDを設定し、後述するステップS26に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS25に進み、このステップS25においては、トルク指令TRとして、TCS要求トルクTTを設定し、ステップS26に進む。
【0096】
次に、ステップS26においては、TCS作動フラグのフラグ値が「1」であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合、つまりトラクション制御の実行状態の場合には、ステップS27に進み、このステップS27においては、トルク指令TRおよびモータ16の回転数NMに基づき、モータ16の消費電力を指示するモータ要求電力PMを算出し、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「NO」の場合、つまりトラクション制御の非実行状態の場合には、ステップS28に進み、このステップS28においては、運転者要求トルクTDおよびモータ16の回転数NMに基づき、モータ要求電力PMを算出し、一連の処理を終了する。
【0097】
上述したように、本発明の第2実施形態の第1変形例による燃料電池車両の制御装置10および燃料電池車両の制御方法によれば、トラクション制御の実行時には、トルク指令TRとモータ16の回転数NMとに応じてモータ要求電力PMを設定し、一方、トラクション制御の非実行時には、トルク指令TRつまりTCS要求トルクTTに関わらずに、運転者要求トルクTDとモータ16の回転数NMとに応じてモータ要求電力PMを設定することにより、反応ガスの供給状態を制御するためのモータ要求電力PMを、トラクション制御の実行有無に応じて設定することができ、トラクション制御の実行有無に応じて燃料電池11の発電電力を適切に設定することができる。
【0098】
なお、上述した本発明の第2実施形態による燃料電池車両の制御装置10および燃料電池車両の制御方法においては、単に、トルク指令TRつまりTCS要求トルクTTに関わらずに、運転者要求トルクTDと、モータ16の回転数NMとからモータ要求電力PMを算出するとしたが、これに限定されず、例えば図14に示す本発明の第2実施形態の第2変形例に係る燃料電池車両の制御装置10の動作、つまり燃料電池車両の制御方法のように、蓄電装置13の残容量に応じて、車両の電気負荷での消費電力を超える燃料電池11の発電電力の余剰電力を蓄電装置13に充電してもよい。
この第2実施形態の第2変形例において、上述した第2実施形態による燃料電池車両の制御装置10および燃料電池車両の制御方法と異なる主要な点は、図3に示すステップS01のモータ要求電力算出処理である。
【0099】
以下に、この第2実施形態の第2変形例に係る燃料電池車両の制御装置10の動作、つまり燃料電池車両の制御方法、特に、上述した図3に示すステップS01のモータ要求電力算出処理について添付図面を参照しながら説明する。
先ず、例えば図14に示すステップS21においては、アクセル開度ACと、モータ16の回転数NMとに基づき、例えば予め設定された運転者要求トルクマップ等を参照して、モータ16から出力されるトルクに対する指令値として、運転者要求トルクTDを算出する。
次に、ステップS23においては、算出した運転者要求トルクTDは、TCSECU22から出力されるTCS要求トルクTT以下であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS24に進み、このステップS24においては、モータ16から出力されるトルクに対する指令値であるトルク指令TRとして、運転者要求トルクTDを設定し、後述するステップS26に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS25に進み、このステップS25においては、トルク指令TRとして、TCS要求トルクTTを設定し、ステップS26に進む。
【0100】
次に、ステップS26においては、TCS作動フラグのフラグ値が「1」であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合、つまりトラクション制御の実行状態の場合には、ステップS27に進み、このステップS27においては、トルク指令TRおよびモータ16の回転数NMに基づき、モータ16の消費電力を指示するモータ要求電力PMを算出し、後述するステップS31に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合、つまりトラクション制御の非実行状態の場合には、ステップS28に進み、このステップS28においては、運転者要求トルクTDおよびモータ16の回転数NMに基づき、モータ要求電力PMを算出し、ステップS31に進む。
【0101】
そして、ステップS31においては、例えば蓄電装置13の充電電流および放電電流を所定期間毎に積算して積算充電量および積算放電量を算出し、これらの積算充電量および積算放電量を初期状態あるいは充放電開始直前の残容量に加算あるいは減算することで蓄電装置13の残容量を算出する。そして、算出した残容量に基づき、蓄電装置13は充電可能か否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS32に進み、このステップS32においては、車両の電気負荷での消費電力を超える燃料電池11の発電電力の余剰電力を蓄電装置13に充電し、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS32に進み、このステップS32においては、車両の電気負荷での消費電力を超える燃料電池11の発電電力の余剰電力の蓄電装置13への充電を禁止して、一連の処理を終了する。
【0102】
上述したように、本発明の第2実施形態の第2変形例による燃料電池車両の制御装置10の動作、つまり燃料電池車両の制御方法によれば、トラクション制御によりモータ16の駆動力が制御される状態であっても、モータ16の駆動力とは独立に反応ガスの供給状態が制御されることから、モータ16の駆動力の急激な増大に対して応答遅れが相対的に長くなる燃料電池11の発電電力つまり反応ガスの供給量が不足してしまうことを防止し、燃料電池11の劣化が促進されてしまうことを防止することができると共に、燃料電池車両全体としてのエネルギー効率が低下してしまうことを抑制することができる。
【0103】
以下に、上述した第2実施形態による燃料電池車両の制御装置10および燃料電池車両の制御方法、つまりトラクション制御の実行時に、反応ガスの供給状態をモータ16の駆動力に関わらずに制御する第1実施例と、この第1実施例に対して、トラクション制御の実行時に、反応ガスの供給状態をモータ16の駆動力に応じて制御する比較例との比較結果について説明する。
例えば図15に示すように、トラクション制御の実行時に、反応ガスの供給状態をモータ16の駆動力に応じて制御する比較例では、トルク指令TRとしてTCS要求トルクTTが設定され、このトルク指令TRつまりTCS要求トルクTTに応じて、モータ16の消費電力(つまり、モータ要求電力PM)が変化する。
【0104】
このため、例えば図15に示す時刻t0から時刻t2に向かいモータ16の回転数が徐々に増大することに伴い、時刻t2において駆動輪Wの空転を抑制するためにTCS要求トルクTTおよびトルク指令TRが低減されると、このトルク指令TRの低下に応じて、相対的に応答遅れが長くなる反応ガスの供給状態が変更され、燃料電池11の発電可能な発電電力の上限値に応じてモータ16の消費電力に対する制限を指示する駆動電力制限指令が低下傾向に変化する。
そして、例えば時刻t4以降のように、駆動輪Wの路面に対するグリップ力の増大等に応じて、TCS要求トルクTTおよびトルク指令TRが増大すると、相対的に応答遅れが短いモータ16の消費電力(つまり、モータ要求電力PM)および相対的に応答遅れが長くなる駆動電力制限指令が増大傾向に変化することにより、例えば図15に示す時刻t5近傍での領域αのように、モータ16の消費電力が駆動電力制限指令よりも大きくなる場合が生じる。
【0105】
このように、モータ16の消費電力が駆動電力制限指令よりも大きくなり、モータ16の消費電力に応じた出力電流が燃料電池11から取り出されると、燃料電池11に対する反応ガスの供給量が不足した状態となり、このガス供給不足時間が増大することに伴い、例えば図16に示すように、燃料電池11の劣化が促進されることになる。
つまり、上述した第2実施形態による燃料電池車両の制御装置10および燃料電池車両の制御方法のように、トラクション制御の実行時に、反応ガスの供給状態をモータ16の駆動力に関わらずに制御することによって、燃料電池11の劣化が促進されてしまうことを防止することができる。
【0106】
また、比較例ではトルク指令TRに応じてモータ要求電力PMが変化することから、例えばエアーコンプレッサー等からなる空気供給装置18の作動音はトルク指令TRに応じて変化し、例えば図17に示す時刻t2以降のように、運転者要求トルクTDが所定値を維持する状態あるいは低下傾向に変化する状態であっても、空気供給装置18の作動音は
運転者要求トルクTDには関わらずに、トルク指令TRが増加傾向に変化することに伴い、増大傾向に変化することになる。このため、燃料電池車両の作動状態に運転者の運転意志が適切に反映されず、燃料電池車両の作動状態に運転者が違和感を感じてしまうことになる。
【0107】
これに対して、上述した第2実施形態では、例えば図18に示す時刻t2以降のように、駆動輪Wの空転を抑制するためにトルク指令TRとしてTCS要求トルクTTが設定された状態であっても、モータ要求電力PMおよび空気供給装置18の作動音は運転者要求トルクTDに応じて変化する。このため、燃料電池車両の作動状態に運転者の運転意志が適切に反映され、燃料電池車両の作動状態に運転者が違和感を感じてしまうことを防止することができる。
【0108】
以下に、上述した第2実施形態による燃料電池車両の制御装置10および燃料電池車両の制御方法、つまりトラクション制御の実行時に、反応ガスの供給状態をモータ16の駆動力に関わらずに制御する第1実施例と、この第1実施例に対して、トラクション制御の実行時に、反応ガスの供給状態をモータ16の駆動力に応じて制御する比較例と、上述した第2実施形態の第2変形例による燃料電池車両の制御装置10および燃料電池車両の制御方法、つまりトラクション制御の実行時に、反応ガスの供給状態をモータ16の駆動力に関わらずに制御すると共に、蓄電装置13の残容量に応じて、車両の電気負荷での消費電力を超える燃料電池11の発電電力の余剰電力を蓄電装置13に充電する第2実施例との燃費の比較結果について説明する。
例えば図19に示すように、先ず、比較例に対して、第1実施例では、モータ16および車両の電気負荷での消費電力を超える燃料電池11の発電電力が余剰電力となり、この余剰電力だけ燃費が低下する。
この第1実施例に対して、第2実施例では、蓄電装置13が充電可能である場合に、余剰電力を蓄電装置13に充電することから、この充電動作に伴う損失(充放電損失)を余剰電力から減算して得た充電電力だけ燃費が向上する。
つまり、比較例に対して、第2実施例では、燃料電池11の劣化が促進されてしまうことを防止しつつ、燃費の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の第1実施形態に係る燃料電池車両の制御装置の構成図である。
【図2】図1に示す駆動系トルク算出部の構成図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る燃料電池車両の制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第1実施形態での図3に示すモータ要求電力算出処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1実施形態でのアクセル開度と、回転数と、運転者要求トルクと、TCS要求トルクと、トルク指令と、モータ要求電力との時間変化の一例を示すグラフ図である。
【図6】本発明の第1実施形態の変形例に係る駆動系トルク算出部の構成図である。
【図7】本発明の第1実施形態の変形例に係るモータ要求電力算出処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第1実施形態の変形例に係るアクセル開度と、回転数と、運転者要求トルクと、TCS作動フラグと、TCS要求トルクと、トルク指令と、モータ要求電力との時間変化の一例を示すグラフ図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る駆動系トルク算出部の構成図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係るモータ要求電力算出処理を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第2実施形態に係るアクセル開度と、回転数と、運転者要求トルクと、TCS要求トルクと、トルク指令と、モータ要求電力との時間変化の一例を示すグラフ図である。
【図12】本発明の第2実施形態の第1変形例に係る駆動系トルク算出部の構成図である。
【図13】本発明の第2実施形態の第1変形例に係るモータ要求電力算出処理を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第2実施形態の第2変形例に係るモータ要求電力算出処理を示すフローチャートである。
【図15】本発明の第2実施形態に対する比較例に係るアクセル開度と、回転数と、TCS要求トルクと、トルク指令と、駆動電力制限指令と、モータ消費電力との時間変化の一例を示すグラフ図である。
【図16】本発明の第2実施形態に対する比較例に係る燃料電池に対するガス供給不足時間と劣化度との対応関係の一例を示すグラフ図である。
【図17】本発明の第2実施形態に対する比較例において、モータ要求電力をトルク指令に基づき算出する場合でのアクセル開度と、運転者要求トルクと、トルク指令と、モータ要求電力と、空気供給装置(A/P)の作動音の時間変化の一例を示すグラフ図である。
【図18】本発明の第2実施形態において、モータ要求電力を運転者要求トルクに基づき算出する場合でのアクセル開度と、運転者要求トルクと、トルク指令と、モータ要求電力と、空気供給装置(A/P)の作動音の時間変化の一例を示すグラフ図である。
【図19】本発明の第2実施形態に対する比較例に係る燃料電池車両の燃費と、本発明の第2実施形態に係る燃料電池車両の燃費と、本発明の第2実施形態の第2変形例に係る燃料電池車両の燃費との一例を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0110】
10 燃料電池車両の制御装置
11 燃料電池
13 蓄電装置
15 PDU(モータ制御手段)
16 モータ
17 出力制御器(出力制御手段)
18 空気供給装置(反応ガス供給手段)
19a 水素タンク(反応ガス供給手段)
19b 水素供給弁(反応ガス供給手段)
23 TCSECU(トラクション制御手段)
35 モータ回転数センサ(回転数センサ)
36 アクセル開度センサ(アクセル開度センサ)
41 燃料電池発電制御部(出力制御手段)
42 モータトルク制御部(モータ制御手段)
43 駆動系トルク算出部(制御手段)
ステップS31 残容量検出手段
ステップS32 充電制御手段





 

 


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