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発明の名称 車両用乗員膝部保護装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−8215(P2007−8215A)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
出願番号 特願2005−188433(P2005−188433)
出願日 平成17年6月28日(2005.6.28)
代理人 【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
発明者 本澤 養樹 / 藤井 大介 / 西村 秀和 / 天野 洋一
要約 課題
膝保護部材による安定したエネルギー吸収性能を十分に確保するとともに、乗員の前方移動量を抑制する。

解決手段
車両用乗員膝部保護装置20は、車両用シート14に着座している乗員Mnの膝Niに対向した膝保護部材21を配置することで、車両10に衝突エネルギーが作用したときに、膝に作用する衝突エネルギーを膝保護部材によって緩和するものである。この車両用乗員膝部保護装置は、膝保護部材に対する膝の接触荷重を検出する接触荷重検出手段22と、この接触荷重検出手段の検出信号に基づいて、接触荷重を、予め設定された荷重制御目標値まで低減させるとともにその低減した値で維持させるように、制御信号を発する制御手段23と、この制御手段の制御信号に応じて、膝保護部材を車両前後方向に移動させる駆動手段24とを備える。
特許請求の範囲
【請求項1】
車両用シートに着座している乗員の膝に対向した膝保護部材を配置することで、車両に衝突エネルギーが作用したときに、膝に作用する衝突エネルギーを膝保護部材によって緩和する車両用乗員膝部保護装置において、前記車両用乗員膝部保護装置は、
前記膝保護部材に対する前記膝の接触荷重を検出する接触荷重検出手段と、
この接触荷重検出手段の検出信号に基づいて、前記接触荷重を、予め設定された荷重制御目標値まで低減させるとともにその低減した値で維持させるように、制御信号を発する制御手段と、
この制御手段の制御信号に応じて、前記膝保護部材を車両前後方向に移動させる駆動手段とを、
備えたことを特徴とする車両用乗員膝部保護装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、前記制御信号に応じて前記膝保護部材を車両前後方向に駆動するアクチュエータと、このアクチュエータの駆動力を補完するダンパとからなり、
このダンパは、少なくとも前記アクチュエータが、前記膝保護部材を前記膝から後退させる方向に駆動しているときに、その駆動力を補完するように構成したことを特徴とする請求項1記載の車両用乗員膝部保護装置。
【請求項3】
前記荷重制御目標値は、前記膝保護部材に前記膝が接触した初期における初期目標値と、この初期目標値に引き続く終期における終期目標値とであり、前記初期目標値は前記終期目標値よりも大きい値であることを特徴とした請求項1又は請求項2記載の車両用乗員膝部保護装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両へ衝突エネルギーが作用したときに、乗員の膝に作用する衝突エネルギーを緩和することで膝を保護する、車両用乗員膝部保護装置の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に対して衝突エネルギーが作用したときに乗員を保護する、乗員保護装置の開発が進んでいる。このような乗員保護の一貫として、乗員の膝に作用する衝突エネルギーを緩和することで膝を保護する、車両用乗員膝部保護装置の開発も進められている。
【0003】
例えば、車室の前部に膝保護部材を設けた受動的なエネルギー吸収構造の車両用乗員膝部保護装置が開発されている。車両に前方から衝突エネルギーが作用した場合、乗員の膝が慣性で前方へ移動して膝保護部材に当たる。その当たる荷重(接触荷重)によって膝保護部材が塑性変形することにより、接触荷重を吸収して膝を保護する。
このような技術に対して、より積極的に膝を保護する技術の開発が進められている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−122061公報
【0004】
特許文献1に示す従来の車両用乗員膝部保護装置を、次の図10に基づいて説明する。
図10は従来の車両用乗員膝部保護装置の概要図である。従来の車両用乗員膝部保護装置100は、車両101のインストルメントパネル102に、膝保護部材103を車体前後方向へ移動可能に取付けたものである。
【0005】
この車両用乗員膝部保護装置100によれば、イグニッションスイッチをオン操作したときに、膝保護部材103から、シート104に着座している乗員105の膝106までの距離を、位置センサ107で検出し、この距離が予め設定された一定値となるように、電動モータ108で膝保護部材103を膝106へ向かって移動させるというものである。
つまり、膝保護部材103から膝106までの間隙を小さくすることで、衝突時における膝106の移動量を低減させるようにした。
【0006】
車両101に前方から衝突エネルギーが作用した場合、乗員105の膝106は上記一定値だけ前方へ移動して、膝保護部材103に当たる。膝保護部材103は膝106が当たる荷重(衝突エネルギー)に応じて、車体前方へ変位することにより、膝106に作用する衝突エネルギーを吸収する。この結果、膝106を保護することができる。
【0007】
しかし、上記従来の車両用乗員膝部保護装置100においても、膝保護部材103に膝106が当たる荷重に応じて、膝保護部材103を車体前方へ変位させるという、受動的なエネルギー吸収構造であることに変わりはない。
【0008】
実際の衝突において、衝突エネルギーが作用した後における車両101の減速度は、一定であるとは限らず、複雑に変化することの方が多い。膝保護部材103から膝106までの間隙を、事前に一定値に設定しても、衝突後の過程において膝106の慣性力の影響は変化する。このような受動的なエネルギー吸収構造では、衝突した時点の車両101の衝突初速度や減速度が変動した場合であっても、常に所望のエネルギー吸収特性を安定的に確保できるようにするには、改良の余地がある。
【0009】
また、膝保護部材103が車両前方へ変位し始める荷重、つまり変位開始荷重を小さく設定すれば、膝106や大腿部の負担を軽減することができる。しかし、変位開始荷重が小さいと、着座中の乗員105が前方へ移動する量、いわゆる前方移動量が増加してしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、膝保護部材による安定したエネルギー吸収性能を十分に確保することができ、しかも、乗員の前方移動量を抑制することができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、最適制御理論に基づく検討をした結果、膝保護部材と膝との接触荷重が一定となるように、膝保護部材を能動的に制御した場合に、膝や大腿部の負担が最も少なくなることを知見した。
請求項1に係る発明は、車両用シートに着座している乗員の膝に対向した膝保護部材を配置することで、車両に衝突エネルギーが作用したときに、膝に作用する衝突エネルギーを膝保護部材によって緩和する車両用乗員膝部保護装置において、車両用乗員膝部保護装置は、
膝保護部材に対する膝の接触荷重を検出する接触荷重検出手段と、
この接触荷重検出手段の検出信号に基づいて、接触荷重を、予め設定された荷重制御目標値まで低減させるとともにその低減した値で維持させるように、制御信号を発する制御手段と、
制御手段の制御信号に応じて、膝保護部材を車両前後方向に移動させる駆動手段とを、備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1において、駆動手段を、制御信号に応じて膝保護部材を車両前後方向に駆動するアクチュエータと、このアクチュエータの駆動力を補完するダンパとで構成し、このダンパは、少なくともアクチュエータが、膝保護部材を膝から後退させる方向に駆動しているときに、その駆動力を補完するように構成したことを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2において、荷重制御目標値が、膝保護部材に膝が接触した初期における初期目標値と、この初期目標値に引き続く終期における終期目標値とであり、初期目標値を終期目標値よりも大きい値としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、車両に衝突エネルギーが作用したときに、乗員の膝が慣性により前方へ移動して膝保護部材に接触し続ける(当たり続ける)ので、接触しているときの接触荷重を接触荷重検出手段で常に検出し、この検出信号に基づいて制御手段が駆動手段に制御信号を発し、この制御信号に応じて駆動手段が膝保護部材を車両前後方向に移動させるようにした。
【0015】
すなわち、請求項1に係る発明は、接触荷重が大きいときには、膝保護部材を膝から後退させる方向に移動させて、エネルギーを吸収し、また、接触荷重が比較的小さいときには、膝保護部材を現在の位置で維持又は膝へ向かって前進させて、接触荷重を維持するという、能動的なエネルギー吸収構造としたものである。
【0016】
このようにすることで、接触荷重を荷重制御目標値まで迅速に且つ確実に低減させるとともに、その低減した値で維持させることができる。従って、膝保護部材による安定したエネルギー吸収性能を十分に確保することができる。この結果、乗員の膝や大腿部の負担を、より一層十分に軽減することができる。しかも、荷重制御目標値まで低減させた接触荷重を、その低減した値で維持させるので、乗員の前方移動量を抑制することができる。
さらには、車両に衝突エネルギーが作用する前に、膝保護部材が膝へ向かって移動しないので、通常時に乗員にとって煩わしさがなく、快適性を維持することができる。
【0017】
請求項2に係る発明では、制御信号に応じて駆動力を発するアクチュエータと、少なくともアクチュエータが膝保護部材を膝から後退させる方向に駆動しているときに、その駆動力を補完するダンパ(減衰手段)とによって、駆動手段を構成した。
アクチュエータが膝保護部材を現在の位置で維持させる又は膝へ向かって前進させるときは、接触荷重が比較的小さいときであるから、アクチュエータの駆動力をダンパで補完しなくてもすむ。一方、アクチュエータが膝保護部材を膝から後退させるときには、接触荷重が大きいときであるから、アクチュエータの駆動力をダンパで補完すればよい。
このようにすることで、アクチュエータの最大駆動力を軽減することができる。小さい駆動力の小型で安価なアクチュエータを用いても、駆動性能を確保することができる。このため、接触荷重を効率良く制御することができる。
【0018】
請求項3に係る発明では、膝保護部材に膝が接触した初期に、比較的大きい値の初期目標値まで接触荷重を低減させ、その後に引き続いて、初期目標値よりも小さい値の終期目標値まで接触荷重を低減させるようにした。このように大小二段階の目標値に分けて接触荷重を低減させるので、接触荷重を荷重制御目標値まで低減させるときに、オーバーシュートを十分に抑制することができる。
従って、実際の衝突において、衝突エネルギーが作用した後における車両の減速度の変化等の、大きい外乱の中でも、接触荷重を荷重制御目標値まで短時間で低減させることができる。この結果、乗員の膝が前方へ移動して膝保護部材に接触した時点から、接触荷重を荷重制御目標値まで低減させて維持させるまでにわたって、均一なエネルギー吸収をすることができる。膝保護部材による安定したエネルギー吸収性能を、より一層十分に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態を、添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は運転者から見た方向に従い、Frは前側、Rrは後側、Lは左側、Rは右側を示す。
図1は本発明に係る車室前部に車両用乗員膝部保護装置を取付けた車両の右側面図である。図2は本発明に係る車室前部並びに車両用乗員膝部保護装置の斜視図である。図3は本発明に係る車両用乗員膝部保護装置を側方から見た断面図である。
【0020】
図1及び図2に示すように、車両10は、車室11の前部において、車体12に固定されたインストルメントパネル13を備える。
インストルメントパネル13は、シート14に着座した乗員Mn(例えば、運転席14に座った運転者Mn)の前方に配置し、乗員Mnの左右の膝Niを保護する車両用乗員膝部保護装置20を配置した構成である。
【0021】
車体12は、インストルメントパネル13よりも車体前方において、左右のフロントピラー15間に固定バー16を掛け渡したものである。固定バー16は、車幅方向に水平に延びる丸パイプや丸棒等の棒状の固定部材であって、その両端を左右のフロントピラー15に固定したステーである。
なお、図1に示す17は着座している乗員Mnを拘束するシートベルト装置、図2に示す18はコンソールボックスである。
【0022】
車両用乗員膝部保護装置20は、シート14に着座している乗員Mnの膝Niに対向した膝保護部材21を配置することで、車両10に衝突エネルギーが作用したときに、膝Niに作用する衝突エネルギーを膝保護部材21によって緩和する装置である。このような車両用乗員膝部保護装置20は、膝保護部材21と接触荷重検出手段22と制御手段23と駆動手段24とを備える。
車両10に衝突エネルギーが作用したことについては、例えば加速度センサ25によって検出することができる。
【0023】
図2及び図3に示すように、膝保護部材21は、膝Niが当たったときに、膝Niへの衝撃を吸収する膝受け部であって、例えば車幅方向に細長い樹脂成形品からなり、ニーボルスタとも言う。この膝保護部材21は、インストルメントパネル13に有する開口(図示せず)を通して、車両前後方向に移動可能な部材である。
【0024】
接触荷重検出手段22は、乗員Mnの膝Niが前方へ移動して膝保護部材21に当たり、膝保護部材21を車両前方へ押す力fr、いわゆる膝保護部材21に対する膝Niの接触荷重fr(以下、「実接触荷重fr」と言う。)を検出し、検出信号を発するセンサである。
この接触荷重検出手段22は、実接触荷重frを弾性体の変位として検出し、実接触荷重frに応じた電気的な検出信号を発するように膝保護部材21に備えた構成とすることができ、例えば、膝保護部材21に埋設した歪みゲージからなる。
【0025】
なお、接触荷重検出手段22は、十分な検出精度と応答性を有し、且つ、慣性質量が制御の外乱とならない程度に十分小さいものであれば、検出方式や構成を問わない。また、接触荷重検出手段22は、膝保護部材21の慣性質量が制御手段23による制御の外乱とならないように、膝保護部材21のうち膝Niに対向する表面近くの位置に設けることが好ましい。
【0026】
制御手段23は、接触荷重検出手段22の検出信号に基づいて、実接触荷重frを、予め設定された荷重制御目標値まで低減させるとともにその低減した値で維持させるように、制御信号を発する、いわゆる能動的な制御をするものである。制御手段23による制御方式としては、例えばフィードバック制御方式である。
【0027】
駆動手段24は、制御手段23の制御信号に応じて、膝保護部材21を車両前後方向に移動させることで、膝保護部材21に対する膝Niの衝撃を吸収して実接触荷重frを最適状態に保つように、膝保護部材21を車両前後方向に移動させるものである。このような駆動手段24は、荷重発生手段であると考えることができる。駆動手段24は、車体12の一部である固定バー16に取付けた、アクチュエータ30からなる。
【0028】
より具体的には、アクチュエータ30は、車両前後方向に直進運動をするリニアモータ(リニアサーボモータとも言われている。)であり、固定バー16に取付けた固定子31と、固定子31に対して車両前後方向に移動可能に組み合わせた可動子32とからなる。可動子32は一端部に膝保護部材21を取付けた構成である。
なお、固定バー16はガイドレール33を備え、このガイドレール33にて可動子32のスライダ34を車両前後方向に案内することで、可動子32を車両前後方向に移動可能に取付けた構成である。
以上の説明から明らかなように、膝保護部材21は、アクチュエータ30を介して固定バー16に取り付けられることになる。
【0029】
リニアモータとしては、実接触荷重frを制御するのに十分な出力、ストローク(行程)及び応答性を有するものであればよく、例えば電磁リニアモータ、超音波モータ等の電歪リニアモータがある。
【0030】
次に、上記図3に示す制御手段23をマイクロコンピュータとした場合の制御フローについて、図4に基づき説明する。この制御フローは、例えばイグニッションスイッチ(図示せず)をオンにしたときに制御を開始し、イグニッションスイッチをオフにしたときに制御を終了する。図中、ST××はステップ番号を示す。特に説明がないステップ番号については、番号順に進行する。以下、図1及び図3を参照しつつ説明する。なお、制御手段23はタイマを内蔵した構成である。
【0031】
図4は本発明に係る制御手段の制御フローチャートである。
ST01;初期設定をする。具体的には、タイマを停止状態で維持させるとともにタイマのカウント時間Tc=0にセットし、フラグF=0にセットし、アクチュエータ30を停止状態で維持させる。
ST02;加速度センサ25の検出信号を読み込む。加速度センサ25は、車両10に衝突エネルギーが作用したときにオンの検出信号を発する。
ST03;加速度センサ25がオンであるか否かを調べ、YESならST04に進み、NOならST02に戻る。
ST04;実接触荷重frを検出する。実接触荷重frについては、接触荷重検出手段22で検出した検出信号を読み込めばよい。
【0032】
ST05;実接触荷重frが、予め設定されている一定の基準接触荷重fs以上であるか(fsの大きさに達したか)否かを調べ、YESならST06に進み、NOならST13に進む。ST13については後述する。
ここで、「基準接触荷重fs」は、後述する荷重制御目標値fc0よりも小さい値であり、次のように設定される。すなわち、車両10に衝突エネルギーが作用することにより、乗員の膝Niが前方へ移動して膝保護部材21に当たり、膝保護部材21を車両前方へ押すことによって、乗員Mnの膝Niや大腿部に必要以上に負担がかかると判断される値を、基準接触荷重fsとする。
【0033】
ST06;タイマが停止中であるか否かを調べ、YESならST07に進み、NOならカウント中であると判断してST08に進む。
ST07;タイマをスタートさせる。
ST08;カウント時間Tc(経過時間Tc)が、予め設定されている一定の基準時間Tsを経過していないか否かを調べ、YESならST09に進み、NOならST10に進む。基準時間Tsについては、実接触荷重frを低減させるようにフィードバック制御するときに、オーバーシュートを抑制することができる時間に設定される。
【0034】
ST09;荷重制御目標値fc0を、予め設定された一定の初期目標値fc1に設定する。初期目標値fc1は、膝保護部材21に膝Niが接触した初期における目標値である。
ST10;荷重制御目標値fc0を、予め設定された一定の終期目標値fc2に設定する。終期目標値fc2は、初期目標値fc1に引き続く終期における目標値である。
ST11;荷重制御目標値fc0によりアクチュエータ30を駆動制御する。
ST12;アクチュエータ30による実接触荷重frの制御を開始したので、フラグF=1に反転する。その後にST04に戻る。
【0035】
このように、ST04〜ST11を繰り返すことにより、実接触荷重frを、荷重制御目標値fc0まで低減させるとともに、その低減した値で維持させるように、アクチュエータ30に制御信号を発して、アクチュエータ30をフィードバック制御する。
【0036】
ST13;実接触荷重frが基準接触荷重fsを下回ったので、アクチュエータ30を停止させる。
ST14;フラグF=1であるか否かを調べ、YESならこの制御手段23による制御を終了し、NOならST04に戻る。つまり、実接触荷重frが基準接触荷重fsを下回ったので、実接触荷重frの制御が必要な衝突状態は終了したと判断し、YESとなる。
【0037】
以上の説明から明らかなように、荷重制御目標値fc0は、膝保護部材21に膝Niが接触した初期における初期目標値fc1と、この初期目標値fc1に引き続く終期における終期目標値fc2とである。初期目標値fc1は終期目標値fc2よりも大きい値である。すなわち、荷重制御目標値fc0を、膝保護部材21に膝が接触した初期における初期目標値fc1と、この初期目標値fc1に引き続く終期における終期目標値fc2とに、二段階の目標値に分けた。
【0038】
以上の説明をまとめると、次の通りである。
本発明者等は、最適制御理論に基づく検討をした結果、膝保護部材21と膝Niとの接触荷重fr(すなわち、実接触荷重fr)が一定となるように、膝保護部材21を能動的に制御した場合に、膝Niや大腿部の負担が最も少なくなることを知見した。
そこで、接触荷重検出手段22の検出信号に基づいて所定の演算を行うことで、実接触荷重frが予め設定された一定の値、つまり、荷重制御目標値fc0となるように、フィードバック制御を実行するようにした。
【0039】
車両用乗員膝部保護装置20は、このような考え方に基づくものであり、車両10に衝突エネルギーが作用したときに、乗員Mnの膝Niが慣性により前方へ移動して膝保護部材21に接触し続ける(当たり続ける)ので、当たっているときの実接触荷重frを接触荷重検出手段22で常に検出し、この検出信号に基づいて制御手段23が駆動手段24に制御信号を発し、この制御信号に応じて駆動手段24が膝保護部材21を車両前後方向に移動させるようにした。
【0040】
すなわち、車両用乗員膝部保護装置20は、実接触荷重frが大きいときには、膝保護部材21を膝Niから後退させる方向に移動させて、エネルギーを吸収し、また、実接触荷重frが比較的小さいときには、膝保護部材21を現在の位置で維持又は膝Niへ向かって前進させて、実接触荷重frを維持するという、能動的なエネルギー吸収構造としたものである。
【0041】
このようにすることで、実接触荷重frを荷重制御目標値fc0まで迅速に且つ確実に低減させるとともに、その低減した値で維持させることができる。従って、膝保護部材21による安定したエネルギー吸収性能を十分に確保することができる。この結果、乗員Mnの膝Niや大腿部の負担を、より一層十分に軽減することができる。しかも、荷重制御目標値fc0まで低減させた実接触荷重frを、その低減した値で維持させるので、乗員Mnの前方移動量を抑制することができる。
さらには、車両10に衝突エネルギーが作用する前に、膝保護部材21が膝Niへ向かって移動しないので、通常時に乗員Mnにとって煩わしさがなく、快適性を維持することができる。
【0042】
次に、車両用乗員膝部保護装置20の接触荷重特性について、図1及び図3を参照しつつ図5に基づき説明する。
図5は本発明に係る車両用乗員膝部保護装置の接触荷重特性図であり、横軸を経過時間とし、縦軸を実接触荷重fr及び荷重制御目標値fc0として、実接触荷重frが低減する特性を表した。図5において、破線にて示す曲線は比較例の接触荷重特性曲線であり、実線にて示す曲線は実施例の接触荷重特性曲線である。
【0043】
比較例は、終期目標値fc2だけを荷重制御目標値fc0として設定したものである。この場合には、膝保護部材21に膝Niが接触した初期から、大幅に小さい値を荷重制御目標値fc0としたので、実接触荷重frを荷重制御目標値fc0まで低減させるように制御したときに、オーバーシュートが発生し得る。
【0044】
これに対して、実施例(本発明)は、膝保護部材21に膝Niが接触した初期には、初期目標値fc1を荷重制御目標値fc0として設定し、その後、実接触荷重frが初期目標値fc1近くまで低減した(fc1と一致又はその上下を含む)時点Tsで、終期目標値fc2を荷重制御目標値fc0として設定したものである。
【0045】
すなわち、本発明の車両用乗員膝部保護装置20は、膝保護部材21に膝Niが接触した初期に、比較的大きい値の初期目標値fc1まで、実接触荷重frを低減させ、その後に引き続いて、初期目標値fc1よりも小さい値の終期目標値fc2まで、実接触荷重frを低減させるようにした。
【0046】
このように荷重制御目標値fc0を、初期目標値fc1と終期目標値fc2との、大小二段階の目標値に分けて、これらの目標値に合わせて接触荷重を低減させるようにした。このため、実接触荷重frを荷重制御目標値fc0まで低減させるときに、オーバーシュートを十分に抑制することができる。
【0047】
従って、実際の衝突において、衝突エネルギーが作用した後における車両10の減速度の変化等の、大きい外乱の中でも、実接触荷重frを荷重制御目標値fc0まで短時間で低減させることができる。この結果、乗員Mnの膝Niが前方へ移動して膝保護部材21に接触した(当たった)時点から、実接触荷重frを荷重制御目標値fc0まで低減させて維持させるまでにわたって、均一なエネルギー吸収をすることができる。膝保護部材21による安定したエネルギー吸収性能を、より一層十分に確保することができる。
【0048】
すなわち、最終的な終期目標値fc2の他に、第一次目標となる初期目標値fc1を設定することによって、実接触荷重frの収束を早め、乗員Mnの運動エネルギーを衝突の初期から確実に収束させることができる。この結果、車体11の減速が終了した後の、乗員Mnの残存運動エネルギーによる、実接触荷重frの上昇を抑制することができる。
なお、初期目標値fc1と終期目標値fc2との間に、更に1つ以上の中間的な目標値を適宜設定する、つまり目標値を多段階に設定することにより、実接触荷重frが最終目標値fc2へ収束することを、より一層早めることができる。
【0049】
次に、車両用乗員膝部保護装置20の各変形例について説明する。なお、各変形例は、上記図1〜図5に示す実施例の車両用乗員膝部保護装置20と基本的な構成が同じであり、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0050】
上述のように、上記図3に示す車両用乗員膝部保護装置20は、膝保護部材21に作用する実接触荷重frを接触荷重検出手段22によって直接に検出する構成であった。これに対して、第1変形例及び第2変形例の車両用乗員膝部保護装置は、実接触荷重frを間接的に検出するように構成したことを特徴とする。以下、詳しく説明する。
【0051】
図6は本発明に係る第1変形例の車両用乗員膝部保護装置の斜視図である。第1変形例の車両用乗員膝部保護装置20Aは、リニアエンコーダ40によって実接触荷重frを間接的に検出するようにしたことを特徴とする。
第1変形例の膝保護部材21Aは、図3に示す膝Niと対向する接触部21a(表面部21a)が実接触荷重frに応じて車両前後方向に弾性変形するとともに、接触部21aとは反対側の基部21bが、接触部21aに比べてほとんど弾性変形しない構成である。
【0052】
リニアエンコーダ40は、実接触荷重frに応じて接触部21aが弾性変形する変形量を検出し、その検出信号を発するものであり、接触部21aに可動子41を連結するとともに、基部21bに固定子42を連結した構成である。つまり、リニアエンコーダ40は、変形量に応じたパルス数をカウントし、これを検出信号として発する。パルスカウント値を変形速度に変換することができる。この変形速度に基づいて、実接触荷重frを推定する(間接的に求める)ことができる。
【0053】
図7は本発明に係る第2変形例の車両用乗員膝部保護装置の斜視図である。第2変形例の車両用乗員膝部保護装置20Bは、光ファイバ式歪み計50によって実接触荷重frを間接的に検出するようにしたことを特徴とする。
第2変形例の膝保護部材21Aは、上記第1実施例と同様の部材であり、接触部21aが実接触荷重frに応じて車両前後方向に弾性変形するとともに、基部21bが接触部21aに比べてほとんど弾性変形しない構成である。
【0054】
光ファイバ式歪み計50は、実接触荷重frに応じて接触部21aが弾性変形する変形量(ストローク)を検出し、その検出信号を発するものである。接触部21aに光ファイバ式歪み計50を取り付けることで、接触部21aと共に弾性変形した光ファイバの変形による屈折率の変化から、接触部21aが弾性変形する変形量を検出することができる。この変形量に基づいて、実接触荷重frを推定する(間接的に求める)ことができる。
【0055】
このように、図6に示すリニアエンコーダ40や図7に示す光ファイバ式歪み計50の検出信号に基づいて、実接触荷重frを推定する(間接的に求める)ことができる。つまり、制御手段23(図3参照)は、上記図4に示すST04において、実接触荷重frを推定することになる。
第1変形例や第2変形例の車両用乗員膝部保護装置20A,20Bにおいても、上記図1〜図5に示す車両用乗員膝部保護装置20と同様の作用をなし、同様の効果を有する。
【0056】
リニアエンコーダ40や光ファイバ式歪み計50のように、実接触荷重frを推定によって検出する手段は、接触荷重推定手段をなす。この接触荷重推定手段も、接触荷重検出手段と同じ構成であると考えることができる。
なお、接触荷重推定手段としては、リニアエンコーダ40や光ファイバ式歪み計50の他にも、各種の構成にすることができる。
【0057】
ところで、上述のように、上記図3に示す車両用乗員膝部保護装置20は、駆動手段24をアクチュエータ30だけで構成したものであった。これに対して、第3変形例及び第4変形例の車両用乗員膝部保護装置は、駆動手段24をアクチュエータ30とダンパとの組み合わせ構造としたことを特徴とする。以下、詳しく説明する。
【0058】
図8は本発明に係る第3変形例の車両用乗員膝部保護装置を側方から見た断面図である。第3変形例の車両用乗員膝部保護装置20Cは、駆動手段24を、制御手段23の制御信号に応じて膝保護部材21を車両前後方向に駆動する上記アクチュエータ30と、このアクチュエータ30の駆動力を補完するダンパ60とで構成した。
【0059】
ダンパ60は、固定バー16に取り付けたシリンダ61と、膝保護部材21の背面を押すように当てたピストン62とからなる。このダンパ60としては、シリンダ61に封入した液体をオリフィスを介して移動させる、一般的な液封式ダンパを採用すればよい。
この場合の駆動手段24は、アクチュエータ30が制御手段23の制御信号によって能動的なエネルギー吸収を行うとともに、ダンパ60が受動的なエネルギー吸収を行う構造である。
【0060】
図9は本発明に係る第4変形例の車両用乗員膝部保護装置を側方から見た断面図である。第4変形例の車両用乗員膝部保護装置20Dは、上記第3実施例と同様の構成であり、ダンパ60におけるピストン62の先端部を膝保護部材21の背面に連結したことを特徴とする。
【0061】
この場合の駆動手段24は、制御手段23の制御信号によって、アクチュエータ30とダンパ60の両方が能動的なエネルギー吸収を行う、より一層能動的なエネルギー吸収構造とすることができる。つまり、制御手段23は、上記図4に示すST11において、アクチュエータ30及びダンパ60の両方を制御する。
【0062】
この場合のダンパ60については磁性流体、磁気粘性流体、電気粘性流体などを応用した減衰係数を可変させる能動的ダンパを採用すればよい。このようにすることで、膝保護部材21に対して膝Niが当たる速度や、シートベルト装置17やエアバッグ等の例えば、乗員拘束装置の作動状況に合わせて設定された最適な荷重制御目標値fc0に合わせた減衰特性にすることができる。この結果、より幅広い状況においての最適な制御が可能となる。
【0063】
第3変形例や第4変形例の車両用乗員膝部保護装置20C,20Dにおいても、上記図1〜図5に示す車両用乗員膝部保護装置20と同様の作用をなし、同様の効果を有する。
さらに第3変形例及び第4変形例では、制御信号に応じて駆動力を発するアクチュエータ30と、少なくともアクチュエータ30が膝保護部材21を図3に示す膝Niから後退させる方向に駆動しているときに、その駆動力を補完するダンパ60(減衰手段60)とによって、駆動手段24を構成したことを特徴とする。
【0064】
アクチュエータ30が膝保護部材21を現在の位置で維持させるとき、又は膝Niへ向かって前進させるときは、実接触荷重frが比較的小さいときであるから、アクチュエータ30の駆動力をダンパ60で補完しなくてもすむ。一方、アクチュエータ30が膝保護部材21を膝Niから後退させるときには、実接触荷重frが大きいときであるから、アクチュエータ30の駆動力をダンパ60で補完すればよい。
【0065】
このようにすることで、アクチュエータ30の最大駆動力を軽減することができる。小さい駆動力の小型で安価なアクチュエータ30を用いて、上記図3に示す駆動手段24と同等の駆動性能を確保することができる。このため、実接触荷重frを効率良く制御することができる。
【0066】
なお、本発明は実施の形態では、上記図1〜図5に示す車両用乗員膝部保護装置20や各変形例の車両用乗員膝部保護装置20A〜20Dを、適宜組み合わせることができる。
【0067】
また、車両用乗員膝部保護装置20,20A〜20Dは、膝保護部材21の質量やアクチュエータ30の可動子32の質量、膝保護部材21に膝Niが接触したときのこれらの間の「ばね定数」(接触剛性)及び実接触荷重frの減衰率を、予め設定することにより、駆動手段24にかかる負荷の状況(消費電流)を検出し、その検出値から実接触荷重frを推定し、その推定値に基づいて上記と同様の制御を行う構成であってもよい。
【0068】
また、駆動手段24は、アクチュエータ30の他に、これとは異なる駆動方式のアクチュエータを追加し、これらの両方のアクチュエータによって膝保護部材21を駆動する構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の車両用乗員膝部保護装置20,20A〜20Dは、自動車等の車両10に対して衝突エネルギーが作用したときに、乗員Mnの保護性能をより高める乗員保護装置に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る車室前部に車両用乗員膝部保護装置を取付けた車両の右側面図である。
【図2】本発明に係る車室前部並びに車両用乗員膝部保護装置の斜視図である。
【図3】本発明に係る車両用乗員膝部保護装置を側方から見た断面図である。
【図4】本発明に係る制御手段の制御フローチャートである。
【図5】本発明に係る車両用乗員膝部保護装置の接触荷重特性図である。
【図6】本発明に係る第1変形例の車両用乗員膝部保護装置の斜視図である。
【図7】本発明に係る第2変形例の車両用乗員膝部保護装置の斜視図である。
【図8】本発明に係る第3変形例の車両用乗員膝部保護装置を側方から見た断面図である。
【図9】本発明に係る第4変形例の車両用乗員膝部保護装置を側方から見た断面図である。
【図10】従来の車両用乗員膝部保護装置の概要図である。
【符号の説明】
【0071】
10…車両、14…車両用シート、20,20A〜20D…車両用乗員膝部保護装置、21,21A…膝保護部材、22…接触荷重検出手段、23…制御手段、24…駆動手段、30…アクチュエータ、60…ダンパ、fr…接触荷重(実接触荷重)、fc0…荷重制御目標値、fc1…初期目標値、fc2…終期目標値、Mn…乗員、Ni…膝。




 

 


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