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発明の名称 車両のトラクション制御装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−6681(P2007−6681A)
公開日 平成19年1月11日(2007.1.11)
出願番号 特願2005−187358(P2005−187358)
出願日 平成17年6月27日(2005.6.27)
代理人 【識別番号】100077805
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 辰彦
発明者 柳田 久則 / 杉田 由也 / 上野臺 浅雄 / 白坂 卓也
要約 課題
駆動輪の滑りが発生したときに、該駆動輪に接続された電動モータの回生運転により、路面状態やその変化によらずに、駆動輪の滑りの抑制を円滑且つ速やかに行なうことができるトラクション制御装置を提供する。

解決手段
駆動輪2,2には、電動モータ5が接続されている。駆動輪2,2の滑りを検知したとき、その検知後、少なくとも駆動輪2,2の回転速度がピーク値に達するまでの期間内において、電動モータ5に回生トルクを発生させ、このときの回生トルクを路面状態を表す指標パラメータに応じて可変的に制御する。
特許請求の範囲
【請求項1】
車両の駆動輪に接続され、回生運転により回生トルクを発生可能な電動モータと、前記駆動輪の滑りの発生を検知する手段とを備え、前記駆動輪の滑りの発生が検知されたときに前記電動モータに回生トルクを発生させて該駆動輪に制動力を付与することにより該駆動輪の滑りを抑制するようにした車両のトラクション制御装置において、
前記駆動輪の回転速度を検出する駆動輪速度検出手段と、
前記駆動輪の滑りの発生が検知された後、少なくとも前記検出された駆動輪の回転速度の検出値がピーク値に達するまでの期間内において、前記電動モータに回生トルクを発生させつつ、その回生トルクを路面状態を表す所定の指標パラメータの値に応じて可変的に制御する電動モータ制御手段を備えたことを特徴とする車両のトラクション制御装置。
【請求項2】
前記電動モータ制御手段は、前記検出された駆動輪の回転速度が増加しつつ所定の第1閾値を超えた時から、該駆動輪の回転速度が前記ピーク値を経て所定の第2閾値以下に低下するまでの期間において、前記電動モータに回生トルクを発生させつつ、その回生トルクを前記指標パラメータの値に応じて可変的に制御することを特徴とする車両のトラクション制御装置。
【請求項3】
前記車両の加速度を検出または推定する手段を備えると共に、前記電動モータ制御手段は、前記電動モータに回生トルクを発生させる期間において、前記検出または推定された加速度を車両に発生させるために要求される前記電動モータの要求トルクをトラクション制御用要求トルクとして該加速度に応じて求め、その求めたトラクション制御用要求トルクを前記指標パラメータとして用いることを特徴とする請求項1または2記載の車両のトラクション制御装置。
【請求項4】
前記車両の加速度を検出または推定する手段を備え、前記電動モータ制御手段は、前記電動モータに回生トルクを発生させる期間において、前記検出または推定された加速度を前記指標パラメータとして用いることを特徴とする請求項1または2記載の車両のトラクション制御装置。
【請求項5】
前記車両が走行している路面の摩擦係数を推定する手段を備え、前記電動モータ制御手段は、前記電動モータに回生トルクを発生させる期間において、前記推定された摩擦係数を前記指標パラメータとして用いることを特徴とする請求項1または2記載の車両のトラクション制御装置。
【請求項6】
前記車両の運転者による前記車両のアクセルの操作に応じた前記電動モータの要求トルクを運転者要求トルクとして決定する手段を備え、
前記電動モータ制御手段は、前記電動モータに回生トルクを発生させる期間において、該回生トルクを前記決定された運転者要求トルクと前記指標パラメータの値とに応じて可変的に制御することを特徴とする請求項1または2記載の車両のトラクション制御装置。
【請求項7】
前記車両の加速度を検出または推定する手段を備え、
前記電動モータ制御手段は、前記電動モータに回生トルクを発生させる期間において、前記検出または推定された加速度を車両に発生させるために要求される前記電動モータの要求トルクをトラクション制御用要求トルクとして該加速度に応じて求めると共にその求めたトラクション制御用要求トルクを前記指標パラメータとして用い、前記決定された運転者要求トルクと該トラクション制御用要求トルクとの差に応じて前記回生トルクを可変的に制御することを特徴とする請求項6記載の車両のトラクション制御装置。
【請求項8】
前記車両の加速度を検出または推定する手段を備え、前記電動モータ制御手段は、前記電動モータに回生トルクを発生させる期間において、前記検出または推定された加速度を前記指標パラメータとして用いて、該加速度を前記車両に発生させるために要求される前記電動モータの要求トルクを加速度対応トルクとして該加速度に応じて求め、前記決定された運転者要求トルクと、該加速度対応トルクとの差に応じて前記回生トルクを可変的に制御することを特徴とする請求項6記載の車両のトラクション制御装置。
【請求項9】
前記車両が走行している路面の摩擦係数を推定する手段を備え、前記電動モータ制御手段は、前記電動モータに回生トルクを発生させる期間において、前記推定された摩擦係数を前記指標パラメータとして用いて、該摩擦係数に所定の変換係数を乗じることにより該摩擦係数に対応して前記電動モータに要求されるトルクを摩擦係数対応トルクとして求め、前記決定された運転者要求トルクと該摩擦係数対応トルクとの差に応じて前記回生トルクを可変的に制御することを特徴とする請求項6記載のトラクション制御装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動輪に駆動トルクまたは回生トルクを選択的に付与する電動モータを備えた車両のトラクション制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の駆動輪の滑りを抑制するためのトラクション制御装置としては、特開平11−105688号公報(特許文献1)に見られるものが知られている。この特許文献1に見られるトラクション制御装置は、駆動輪の滑りの発生を検知したときに、駆動輪に接続された電動モータと駆動輪の摩擦制動装置とを使用して駆動輪の滑りを抑制する(駆動輪のスリップ比を0に近づける)ようにしたものである。この場合、電動モータの動作は次のように行なわれる。
【0003】
すなわち、駆動輪の滑りが発生したときに、まず、該電動モータに、所定の上限値の回生トルクを発生させる。この上限値の回生トルクは、電動モータの回転速度あるいは蓄電装置の充電状況に応じて決められる。そして、駆動輪速度がピーク時から所定量だけ減少すると、電動モータの回生トルクが所定の減少勾配で減少させられる。この場合の減少勾配は、駆動輪の滑りの回復速度(路面の摩擦係数の状態)に応じて決定される。そして、回生トルクの減少により滑りが増加傾向に転じると、回生トルクが一定に保持される。
【特許文献1】特開平11−105688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に見られる技術では、駆動輪の滑りの発生の検知後、電動モータに駆動輪速度がピーク時から所定量だけ低下するまでは、電動モータの回生トルクが単に、電動モータの回転速度や蓄電装置の充電状態に応じて決定される上限値に制御される。つまり、電動モータの回生トルクが、発生可能な最大トルクに制御される。このため、駆動輪速度が上昇していく過程で、発生した回生トルクが路面状態に対して過大となり、急激に駆動輪の滑りが解消するような場合には、その急激な滑りの解消によって、車両に瞬時的に比較的大きな制動力が作用することがある。そして、このように瞬時的に大きな制動力が車両に作用すると、車両の運転者に不快感を及ぼすものとなる。また、これを解消するために、滑りの発生の検知後の初期における電動モータの回生トルクを単に低めのトルクに抑えようとすると、駆動輪の滑りが十分に少なくなる(駆動輪のスリップ比が0に近づく)までに時間がかかるという不都合がある。
【0005】
本発明は、かかる背景に鑑み、駆動輪の滑りが発生したときに、該駆動輪に接続された電動モータの回生運転により、路面状態やその変化によらずに、駆動輪の滑りの抑制を円滑且つ速やかに行なうことができるトラクション制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両のトラクション制御装置の第1発明は、車両の駆動輪に接続され、回生運転により回生トルクを発生可能な電動モータと、前記駆動輪の滑りの発生を検知する手段とを備え、前記駆動輪の滑りの発生が検知されたときに前記電動モータに回生トルクを発生させて該駆動輪に制動力を付与することにより該駆動輪の滑りを抑制するようにした車両のトラクション制御装置において、前記駆動輪の回転速度を検出する駆動輪速度検出手段と、前記駆動輪の滑りの発生が検知された後、少なくとも前記検出された駆動輪の回転速度がピーク値に達するまでの期間内において、前記電動モータに回生トルクを発生させつつ、その回生トルクを路面状態を表す所定の指標パラメータの値に応じて可変的に制御する電動モータ制御手段を備えたことを特徴とする。
【0007】
かかる第1発明によれば、駆動輪の滑りの発生が検知された後、少なくとも駆動輪の回転速度がピーク値に達するまでの期間内において、電動モータに回生トルクを発生させつつ、その回生トルクを路面状態を表す所定の指標パラメータの値に応じて可変的に制御するので、駆動輪の滑りの発生によって、該駆動輪の回転速度が増加していく段階から電動モータの回生トルクを路面状態に適したトルクに制御することができる。特に、本発明では、駆動輪の回転速度が増加していく途中で路面状態が変化しても、それに合わせて電動モータの回生トルクを変化させることができるので、駆動輪の滑りが急激に解消されて、車両に瞬時的な制動力が発生したり、あるいは、駆動輪の滑りの抑制(駆動輪のスリップ比の低下)に過剰に時間がかかるような事態を防止することが可能となる。従って、第1発明によれば、このため、路面状態やその変化によらずに、駆動輪の滑りが急激に解消されたり、あるいは、駆動輪の滑りの抑制に時間がかかるというような事態を防止しつつ、円滑且つ速やかに駆動輪の滑りを抑制することが可能となる。
【0008】
なお、この場合、基本的には、前記指標パラメータにより表される路面状態が滑りやすいほど(路面の摩擦係数がより小さいほど)、電動モータに発生させる回生トルクを大きくするようにすればよい。
【0009】
かかる第1発明では、前記電動モータ制御手段は、前記検出された駆動輪の回転速度が増加しつつ所定の第1閾値を超えた時から、該駆動輪の回転速度が前記ピーク値を経て所定の第2閾値以下に低下するまでの期間において、前記電動モータに回生トルクを発生させつつ、その回生トルクを前記指標パラメータの値に応じて可変的に制御することが好ましい(第2発明)。
【0010】
この第2発明によれば、駆動輪の回転速度の増加とそれに続く減少の変化パターンを路面状態によらずに、適切なパターンに制御することが可能となる。従って、路面状態によらずに駆動輪の滑りの抑制を円滑且つ速やかに行なうことの効果を高めることができる。
【0011】
前記第1または第2発明における前記指標パラメータとしては次のようなものが好適である。
【0012】
すなわち、前記車両の加速度を検出または推定する手段を備えると共に、前記電動モータ制御手段は、前記電動モータに回生トルクを発生させる期間において、前記検出または推定された加速度を車両に発生させるために要求される前記電動モータの要求トルクをトラクション制御用要求トルクとして該加速度に応じて求め、その求めたトラクション制御用要求トルクを前記指標パラメータとして用いる(第3発明)。
【0013】
この第3発明において、駆動輪の滑りの発生時おける車両の加速度(検出値または推定値)は、駆動輪と路面との摩擦力によって車両に発生させ得る駆動力にほぼ比例するものとなる。従って、この加速度に応じて上記の如く求められるトラクション制御用要求トルクは、路面状態(路面の摩擦係数の状態)を反映しており、基本的には、路面が滑りやすいほど(路面の摩擦係数が小さいほど)、トラクション制御用要求トルクが小さくなる。
【0014】
従って、このトラクション制御用要求トルクを前記指標パラメータとして用いることで、路面状態に応じた電動モータの回生トルクの制御を適切に行なうことができる。なお、車両の加速度は、加速度センサにより直接的に検出してもよいが、例えば車両の従動輪の回転速度を検出し、その検出値から車両の加速度を推定するようにしてもよい。車両の従動輪は、基本的には滑らないので、該従動輪の回転速度は、車両の実際の速度にほぼ比例する。従って、該従動輪の回転速度の検出値から車両の加速度を推定することが可能である。
【0015】
補足すると、電動モータに回生トルクを発生させる期間の終了後には、駆動輪の回転速度(検出値)を所定の目標速度(例えば従動輪の回転速度に近く、且つ該回転速度よりも所定量だけ高い速度)に収束させるようにフィードバック制御則により電動モータの要求トルク(要求駆動トルク)を求め、この要求駆動トルクに応じて電動モータを制御することが望ましい。この場合、前記第3発明では、前記トラクション制御用要求トルク(より具体的には、電動モータに回生トルクを発生させる期間の終了直前に求めたトラクション制御用要求トルク)を、該期間の終了後の電動モータの要求トルクの初期値とし、この初期値からフィードバック制御則により電動モータの要求トルクを求めるようにすることが望ましい。
【0016】
また、前記車両の加速度を検出または推定する手段を備えた場合には、前記電動モータ制御手段は、前記電動モータに回生トルクを発生させる期間において、前記検出または推定された加速度を前記指標パラメータとして用いるようにしてもよい(第4発明)。
【0017】
すなわち、駆動輪の滑りの発生時おける車両の加速度(検出値または推定値)は、前記した如く、駆動輪と路面との摩擦力によって車両に発生させ得る駆動力にほぼ比例するものとなる。このため、路面が滑りやすいほど(路面の摩擦係数が小さいほど)、車両の加速度は、小さくなる。従って、第4発明によれば、車両の加速度(検出値または推定値)を前記指標パラメータとして用いることで、前記第3発明と同様に、路面状態に応じた電動モータの回生トルクの制御を適切に行なうことができる。なお、車両の加速度は、前記第3発明と同様に、加速度センサにより直接的に検出してもよいが、例えば車両の従動輪の回転速度を検出し、その検出値から車両の加速度を推定するようにしてもよい。
【0018】
あるいは、前記車両が走行している路面の摩擦係数を推定する手段を備え、前記電動モータ制御手段は、前記電動モータに回生トルクを発生させる期間において、前記推定された摩擦係数を前記指標パラメータとして用いるようにしてもよい(第5発明)。
【0019】
この第5発明によれば、路面の摩擦係数の推定値を前記指標パラメータとして用いるので、前記第3発明あるいは第4発明と同様に、路面状態に応じた電動モータの回生トルクの制御を適切に行なうことができる。なお、路面の摩擦係数を推定する手法は種々様々の手法が公知になっており、それらの手法により摩擦係数を推定すればよい。
【0020】
前記第1発明または第2発明においては、前記車両の運転者による前記車両のアクセルの操作に応じた前記電動モータの要求トルクを運転者要求トルクとして決定する手段を備え、前記電動モータ制御手段は、前記電動モータに回生トルクを発生させる期間において、該回生トルクを前記決定された運転者要求トルクと前記指標パラメータの値とに応じて可変的に制御する電動モータの回生トルクを制御することが好ましい(第6発明)。なお、運転者要求トルクは基本的には、アクセルの操作量(例えばアクセルペダルの踏み込み量)が大きいほど、大きくなるように決定される。
【0021】
これによれば、路面状態だけでなく、運転者による車両のアクセルの操作を考慮して、電動モータの回生トルクが決定されることとなる。このため、例えばアクセルの操作量が大きい状態(運転者要求トルクが大きい状態)で駆動輪の滑りが発生し、駆動輪のスリップ比が大きくなりやすい状況では電動モータの回生トルクを増やして駆動輪の滑りを速やかに抑制することが可能となる。逆に、アクセルの操作量が比較的小さい状態(運転者要求トルクが小さい状態)で駆動輪の滑りが発生し、駆動輪のスリップ比がさほど大きくならない状況では電動モータの回生トルクを減らして、駆動輪の滑りが急激に解消するような状況を避けることが可能となる。なお、電動モータの回生トルクを制御するに際しては、基本的には、運転者要求トルクが大きいほど、回生トルクを大きくし、また、前記指標パラメータが表す路面状態がより滑りやすい路面状態であるほど、回生トルクを大きくすればよい。
【0022】
補足すると、この第6発明においては、電動モータに回生トルクを発生させる期間の経過後には、前記第3発明に関して補足した場合と同様に駆動輪の回転速度を所定の目標速度に収束させるようにフィードバック制御則により電動モータの要求トルクを求め、この要求トルクと前記運転者要求トルクとのうちの小さい方を電動モータの目標出力トルクとして該電動モータを制御することが望ましい。
【0023】
かかる第6発明では、より具体的には、前記車両の加速度を検出または推定する手段を備え、前記電動モータ制御手段は、前記電動モータに回生トルクを発生させる期間において、前記検出または推定された加速度を車両に発生させるために要求される前記電動モータの要求トルクをトラクション制御用要求トルクとして該加速度に応じて求めると共にその求めたトラクション制御用要求トルクを前記指標パラメータとして用い、前記決定された運転者要求トルクと該トラクション制御用要求トルクとの差に応じて前記回生トルクを可変的に制御する(第7発明)。なお、この第7発明におけるトラクション制御用要求トルクと路面状態との関係は、前記第3発明で説明したものと同じである。
【0024】
この場合、前記運転者要求トルクとトラクション制御用要求トルクとの差(運転者要求トルク−トラクション制御用要求トルク)は、運転者要求トルクが大きいほど、また、路面が滑りやすいほど(トラクション制御用要求トルクが小さいほど)、大きくなる。従って、例えば、上記差が大きいほど、電動モータの回生トルクを大きくするように該電動モータを制御することで、運転者によるアクセルの操作形態と路面状態に適した、駆動輪の滑りの抑制を行なうことが可能となる。また、路面が滑りやすい状態であっても、駆動輪の滑りの発生直前のアクセルの操作量が比較的小さい場合には、大きい場合に比べて電動モータの回生運転の開始時の回生トルクが小さくできるので、電動モータの発生トルクが駆動トルクから大きな回生トルクに急激に変化する頻度を少なくして、電動モータの負担を軽減できる。
【0025】
また、前記第6発明では、前記車両の加速度を検出または推定する手段を備え、前記電動モータ制御手段は、前記電動モータに回生トルクを発生させる期間において、前記検出または推定された加速度を前記指標パラメータとして用いて、該加速度を前記車両に発生させるために要求される前記電動モータの要求トルクを加速度対応トルクとして該加速度に応じて求め、前記決定された運転者要求トルクと、該加速度対応トルクとの差に応じて前記回生トルクを可変的に制御するようにしてもよい(第8発明)。
【0026】
この場合、前記運転者要求トルクと加速度対応トルクとの差(運転者要求トルク−加速度対応トルク)は、運転者要求トルクが大きいほど、また、路面が滑りやすいほど(車両の加速度、ひいては、加速度対応トルクが小さいほど)、大きくなる。従って、第8発明によれば、前記第7発明と同様の作用効果を奏することができる。
【0027】
あるいは、前記第6発明では、前記車両が走行している路面の摩擦係数を推定する手段を備え、前記電動モータ制御手段は、前記電動モータに回生トルクを発生させる期間において、前記推定された摩擦係数を前記指標パラメータとして用いて、該摩擦係数に所定の変換係数を乗じることにより該摩擦係数に対応して前記電動モータに要求されるトルクを摩擦係数対応トルクとして求め、前記決定された運転者要求トルクと該摩擦係数対応トルクとの差に応じて前記回生トルクを可変的に制御するようにしてもよい(第9発明)。
【0028】
この場合、前記運転者要求トルクと摩擦係数対応トルクとの差(運転者要求トルク−摩擦係数対応トルク)は、運転者要求トルクが大きいほど、また、路面が滑りやすいほど(路面の摩擦係数、ひいては、摩擦係数対応トルクが小さいほど)、大きくなる。従って、第9発明によれば、前記第7発明と同様の作用効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の第1実施形態を図1〜図8を参照して説明する。
【0030】
本実施形態における車両は、例えば燃料電池を主たるエネルギー源とする電気走行車両(電気自動車)である。図1は、この電気走行車両の概要構成を示している。
【0031】
同図示の如く、電気走行車両1は、左右一対の前輪2,2を駆動輪として備えると共に、左右一対の後輪3,3を従動輪として備えている。車両1の車体4には、車両1の推進力発生源として電動モータ5が搭載されている。この電動モータ5の駆動軸5aが、変速機、差動歯車装置等から構成された動力伝達機構6を介して駆動輪(前輪)2,2に接続され、電動モータ5の発生トルクが動力伝達機構6を介して駆動輪2,2に伝達されるようになっている。電動モータ5は力行運転と回生運転とを選択的に行い得るモータであり、力行運転時に車両1の推進力となる駆動トルクを発生し、回生運転時には車両1の制動力となる回生トルクを発生する。
【0032】
なお、本実施形態では、前輪2,2を駆動輪、後輪3,3を従動輪としたが、後輪3,3を駆動輪、前輪2,2を従動輪としてもよい。
【0033】
車体4には、電動モータ5の主電源としての燃料電池7と、補助電源としての蓄電器8とが搭載され、これらの燃料電池7および蓄電器8がインバータ回路9を介して電動モータ5に電気的に接続されている。蓄電器8は、2次電池あるいはコンデンサにより構成されたものである。
【0034】
また、車体4には、電動モータ5の運転制御などを行なう制御装置10が搭載されている。該制御装置10は、マイクロコンピュータ等を含む電子回路ユニットから構成され、インバータ回路9を介して、燃料電池7もしくは蓄電器8と電動モータ5との間の通電電流を制御することで、該電動モータ5の運転制御を行なう。この場合、電動モータ5の力行運転時には、燃料電池7もしくは蓄電器8からインバータ回路9を介して電動モータ5に電力が供給され、回生運転時には、電動モータ5の発電電力がインバータ回路9を介して蓄電器8に充電されるようになっている。なお、制御装置10は、本発明における電動モータ制御手段に相当するものである。
【0035】
図2を参照して制御装置10の主要な処理機能を概説する。図2は、制御装置10の処理機能とその処理機能に関連するセンサとを示すブロック図である。
【0036】
同図示の如く、車両1には、各車輪2,3の回転速度Vi(i=1,2,3,4)を検出する車輪速センサ21と、モータの回転速度NEを検出するモータ速度センサ22と、車両1の運転者による図示しないアクセルペダルの操作量(踏み込み量。以下、アクセル操作量という)APSを検出するアクセルセンサ23とが備えられ、これらのセンサ21,22,23の出力(検出値)が制御装置10に入力される。なお、本実施形態の説明では、V1,V2はそれぞれ左右の駆動輪(前輪)2,2の回転速度を示し、V3,V4はそれぞれ左右の従動輪(後輪)3,3の回転速度を示す。また、車輪速センサ21は、本発明における駆動輪速度検出手段としての機能を持つ。
【0037】
そして、制御装置10は、その処理機能として、TCS制御演算部24、運転者要求トルク算出部25、およびモータトルク決定部26を備えている。モータ速度センサ22の出力(NEの検出値)とアクセルセンサ23の出力(APSの検出値)とは運転者要求トルク算出部25に与えられ、車輪速センサ21の出力(Viの検出値)は、TCS制御演算部24に与えられる。
【0038】
運転者要求トルク算出部25は、電動モータ5の回転速度NEの検出値とアクセル操作量APSの検出値とから、あらかじめ定められたマップ等に基づいて運転者要求トルクを求め、それをモータトルク決定部26とに出力する。この運転者要求トルクは、運転者がアクセルペダルの操作によって要求している電動モータ5の発生トルク(駆動トルクの要求値)を意味する。該運転者要求トルクは、基本的には、アクセル操作量APSが大きい程、大きくなる。
【0039】
TCS制御演算部24は、各車輪2,2,3,3の回転速度Viの検出値を基に、駆動輪3,3の滑りを検知しつつ、駆動輪3,3の滑りを抑制する(駆動輪3,3のスリップ比を小さくする)ための電動モータ5の要求トルクをTCS要求トルクとして決定し、それをモータトルク決定部26に出力する。なお、TCS要求トルクは駆動方向の正のトルクである。また、TCS要求トルクは、本発明におけるトラクション制御用要求トルクに相当する。
【0040】
さらに、TCS制御演算部24は、駆動輪3,3の滑りを抑制するための演算処理(以下、TCS演算処理という)を行なっているか否かを示すTCS作動フラグの値と、電動モータ5の回生運転を行なうべき状態であるか否かを示す回生要求フラグの値とを決定し、それらのフラグ値をモータトルク決定部26に出力する。以降の説明では、TCS作動フラグの値と回生要求フラグの値とをそれぞれON・OFFで表す。具体的には、TCS作動フラグの値がONであるときは、前記TCS演算処理を行なっていることを示し、OFFであるときは、前記TCS演算処理を行なっていないことを示す。また、回生要求フラグの値がONであるときは、電動モータ5の回生運転を行なうべき状態であることを示し、OFFであるときは、回生運転を行なうべき状態でないことを示す。
【0041】
モータトルク決定部26は、入力された運転者要求トルク、TCS要求トルク、TCS作動フラグ、回生要求フラグを基に、電動モータ5の目標出力トルクを決定し、その目標出力トルクを電動モータ5に発生させるようにインバータ回路9を制御する。より詳しくは、目標出力トルクに応じて電動モータ5の電流指令値と運転形態(力行運転または回生運転)とを決定し、その決定した運転形態で電流指令値の電流を電動モータ5に流すように、インバータ回路9を介して電動モータ5の通電電流を制御する。なお、モータトルク決定部26で決定される目標出力トルクは、駆動トルクと回生トルクとのいずれかであり、本実施形態では、駆動トルクは正の値、回生トルクは負の値である。
【0042】
次に、制御装置10のより詳細な制御処理を中心に、本実施形態の装置の作動を説明する。制御装置10は、前記運転者要求トルク算出部25、TCS制御演算部24およびモータトルク決定部26の処理を所定の制御処理周期で逐次実行する。
【0043】
すなわち、各制御処理周期において、まず、運転者要求トルク算出部25の処理が前記した如く実行され、電動モータ5の回転速度NEの検出値と、アクセル操作量APSの検出値とから、運転者要求トルクが決定される。
【0044】
次いで、TCS制御演算部24の処理が実行される。このとき、TCS制御演算部24は、図3のフローチャートに示す処理により、TCS要求トルクの算出と、TCS作動フラグおよび回生要求フラグの設定とを行なう。
【0045】
具体的には、まず、STEP301において、前記車輪速センサ21の出力、すなわち、各車輪2,2,3,3の回転速度Vi(i=1,2,3,4)の検出値が読込まれる。
【0046】
次いで、STEP302において、Viの検出値から、駆動輪速度と従動輪速度とが算出される。ここで、駆動輪速度は、駆動輪2,2の回転速度V1,V2から推定される車速(駆動輪2,2の滑りが無いと仮定した場合の車速)を意味し、例えば回転速度V1,V2の平均値に、駆動輪2,2の有効半径の設定値(これはあらかじめ図示しないメモリに記憶保持されている)を乗じることで算出される。また、従動輪速度は、従動輪3,3の回転速度V3,V4から推定される車速(従動輪3,3の滑りが無いと仮定した場合の車速)を意味し、駆動輪速度と同様に、例えば回転速度V3,V4の平均値に、従動輪3,3の有効半径の設定値を乗じることで算出される。この場合、従動輪3,3は基本的には滑りを生じないので、従動輪速度は、実際の車速にほぼ一致する。一方、駆動輪速度は、駆動輪2,2の滑りが生じていない状態では、実際の車速あるいは従動輪速度にほぼ一致するが、駆動輪2,2の滑りが生じている状態では、実際の車速あるいは従動輪速度よりも大きくなる。
【0047】
なお、従動輪速度は、車両1の実際の速度(進行方向の速度)の推定値に相当するものであるから、適宜のセンサにより車両1の実際の速度を検出するようにした場合には、その速度の検出値を従動輪速度の代わりに用いるようにしてもよい。
【0048】
次いで、STEP303において、図4(d)に例示する閾値a,b,c,dと目標駆動輪速度とが設定される。なお、図4(a),(b)は、それぞれ、TCS制御演算部24により設定されるTCSフラグの値の経時変化の例、回生要求フラグの値の経時変化の例を示すグラフであり、図4(c)は電動モータ5の目標出力トルクと運転者要求トルクとTCS要求トルクとの経時変化の例を示すグラフであり、図4(d)は駆動輪速度と従動輪速度との経時変化の例を示すグラフである。
【0049】
ここで、図4(d)を参照して、前記閾値aは、TCSフラグの値をOFFからONに切り換える(前記TCS演算処理を開始する)タイミングを規定する閾値(換言すれば、駆動輪2,2の滑りの発生を検知するための閾値)であり、前記閾値bは、回生要求フラグをOFFからONに切り換えるタイミングを規定する閾値である。また、前記閾値cは、回生要求フラグをONからOFFに切り換えるタイミングを規定する閾値であり、前記閾値dは、TCSフラグの値をONからOFFに切り換える(前記TCS演算処理を終了する)タイミングを規定する閾値である。これらの閾値a〜dは、駆動輪速度を比較対象とする閾値であり、前記STEP302で求められた従動輪速度に応じて設定される。具体的には、閾値a〜dは、それぞれ、従動輪速度が十分に小さい低速度域(ある所定の速度よりも小さい速度域)にあるときには、所定の一定値に設定され、従動輪速度がその低速度域よりも大きくなると、従動輪速度に、ある所定量(閾値a〜d毎の各別の所定量)を加えた値に設定される。
【0050】
また、目標駆動輪速度は、駆動輪2,2の滑りが発生した場合に駆動輪速度を収束させるべき目標値を意味し、閾値a〜dと同様に、前記STEP302で求めた従動輪速度に応じて設定される。すなわち、目標駆動輪速度は、従動輪速度が十分に小さい低速度域(ある所定の速度よりも小さい速度域)にあるときには、所定の一定値に設定され、従動輪速度がその低速度域よりも大きくなると、従動輪速度に、ある所定量を加えた値に設定される。該目標駆動輪速度は、駆動輪2,2のスリップ比(駆動輪速度と従動輪速度との差の、従動輪速度に対する比率)が十分に小さくなるような駆動輪速度である。なお、本実施形態では、任意の従動輪速度に対し、閾値a〜dと目標駆動輪速度との大小関係は、従動輪速度<閾値d<閾値a<目標駆動輪速度<閾値b<閾値cである。
【0051】
補足すると、駆動輪速度を各閾値a〜dと比較するということは、駆動輪2,2の回転速度V1,V2の検出値の平均値を、各閾値a〜dに相当する閾値(各閾値a〜dを駆動輪2,2の有効半径で除算してなる閾値)と比較することと等価である。また、駆動輪速度を目標駆動輪速度に収束させるということは、駆動輪2,2の回転速度V1,V2の検出値の平均値を、目標駆動輪速度に相当する駆動輪2,2の目標回転速度(目標駆動輪速度を駆動輪2,2の有効半径で除算してなる回転速度)に収束させることと等価である。
【0052】
図3の説明に戻って、前記STEP303の処理の次に、STEP304において、TCS作動フラグの現在の値が判断される。なお、TCS作動フラグおよび回生要求フラグの初期値(制御装置10の起動時の値)はいずれもOFFである。
【0053】
このとき、TCS作動フラグ=OFFであるときには、STEP302で求めた駆動輪速度と、STEP303で設定した閾値aとが比較される(STEP305)。この比較処理は、駆動輪2,2の滑りの発生を検知するための処理である。このとき、駆動輪速度≦閾値aであるときには、駆動輪2,2の滑りが生じていないと判断される。そして、この場合には、STEP306において、TCS要求トルクがあらかじめ定めた最大値(MAX)に設定され、TCS制御演算部24の処理(今回の制御処理周期の処理)が終了する。この場合、TCS作動フラグおよび回生要求フラグの値はいずれもOFFに維持される。
【0054】
なお、STEP306におけるTCS要求トルクの最大値は、電動モータ5が発生可能な最大の駆動トルクである。本実施形態では、STEP306でTCS要求トルクを便宜的に最大値に設定したが、必ずしも最大値に設定する必要はなく、任意の値でよい。
【0055】
前記STEP305の比較処理において、駆動輪速度>閾値aであるときには、駆動輪2,2の滑りが発生したと判断される。そして、この場合には、STEP307において、TCS作動フラグの値がONに設定される(OFFからONに切り換えられる)。さらに、TCS要求トルクを後述するようにフィードバック制御処理により決定するに際しての該TCS要求トルクの初期値がSTEP308で決定される。具体的には、従動輪速度の時間微分値として得られる加速度(以下、従動輪加速度という。これは車両1の前後方向の推定加速度を意味する)から、例えば図5のグラフに示す如くあらかじめ定められたテーブルに基づいてTCS要求トルクの初期値が決定される。
【0056】
図5のテーブルは、基本的には、従動輪加速度の増加に伴い、ほぼリニアにTCS要求トルクの初期値が増加していくように設定されている。つまり、TCS要求トルクの初期値が、従動輪加速度にほぼ比例するように図5のテーブルが設定されている。なお、詳細な図示は省略するが、図5のテーブルは、実際には、前記動力伝達機構6に備える変速機の各変速比毎に定められている。この場合、前記動力伝達機構6に備える変速機の各変速比が大きいほど(変速比がローレシオ側であるほど)、従動輪加速度の変化に対するTCS要求トルクの初期値の変化率(グラフの傾き)が小さくなるように、各変速比毎のテーブルが設定されている。
【0057】
上記のように決定されるTCS要求トルクの初期値は、従動輪加速度の値の加速度を車両1に発生させるための電動モータ1の要求トルク(駆動トルク)を意味する。換言すれば、TCS要求トルクの初期値は、従動輪加速度に相当する駆動力(従動輪加速度に車両1の重量を乗じてなる駆動力)を駆動輪2,2に発生させるための電動モータ1の要求トルクを意味する。ここで、駆動輪2,2の滑りが発生するような路面状態では、基本的には、従動輪加速度(車両1の推定加速度)に車両1の重量を乗じてなる駆動力を駆動輪2,2と路面との摩擦力によって車両1に発生させることが可能であると考えられる。従って、上記のように決定されるTCS要求トルクの初期値は、別の言い方をすれば、駆動輪2,2の過大な滑りが生じないないように該駆動輪2,2に伝達し得る電動モータ1の駆動トルクとしての意味を持つ。
【0058】
なお、本実施形態では、TCS要求トルクの初期値を決定するために、従動輪加速度を用いたが、車両1の前後方向の加速度を車体4に搭載した加速度センサで検出し、その加速度の検出値を従動輪加速度の代わりに用いて、TCS要求トルクの初期値を決定するようにしてもよい。また、TCS要求トルクの初期値は、車両1の前後方向の加速度だけでなく、横方向の加速度も考慮して決定するようにしてもよい。例えば、前後方向の加速度と横方向の加速度との合成加速度からデータテーブル等に基づき決定したTCS要求トルクの初期値の候補と、前後方向の加速度から、前記図5に基づき決定したTCS要求トルクの初期値の候補とのうちの大きい方をSTEP307でTCS要求トルクの初期値として決定するようにしてもよい。この場合、横方向の加速度は、加速度センサを用いて検出するようにすればよい。また、前後方向の加速度としては、前記従動輪加速度、あるいは加速度センサによる検出値を使用すればよい。
【0059】
上記のようにSTEP308で決定された初期値が、STEP309において、TCS要求トルク(今回の制御処理周期におけるTCS要求トルク)として決定され(STEP309)、TCS制御演算部24の処理(今回の制御処理周期の処理)が終了する。この場合、回生要求フラグの値はOFFに維持される。
【0060】
前記STEP304において、TCS作動フラグの値がONであるときには、次に、S310において、現在の駆動輪速度(STEP302で求めた駆動輪速度)が前記閾値bよりも大きく、且つ、その駆動輪速度の変化率(単位時間当たりの変化量)が正であるか否かが判断される。なお、駆動輪速度の変化率が正であるということは、駆動輪速度が増加中であることを意味する。従って、駆動輪速度が増加しながら、閾値bを超えたときに、STEP304の判断結果がYESになる。補足すると、閾値bは、本発明における第1閾値に相当する。
【0061】
このとき、STEP304の判断結果がYESである場合には、STEP311において回生要求フラグの現在の値が判断される。そして、この判断において、回生要求フラグの値がOFFであるときには、STEP312において回生要求フラグの値がOFFからONに切り換えられた後、STEP313およびSTEP314の処理に進み、回生要求フラグの値がONであるときには、そのままSTEP313およびSTEP314の処理に進む。
【0062】
このSTEP313およびSTEP314では、それぞれ前記STEP308,309と同じ処理が実行され、TCS要求トルクが初期値に設定される。そして、TCS制御演算部24の処理(今回の制御処理周期の処理)が終了する。この場合、TCS作動フラグの値は、ONに維持される。
【0063】
前記STEP311の判断結果がNOである場合には、STEP315において回生要求フラグの現在の値が判断される。このとき、回生要求フラグの値がONであるときには、さらにS316において、現在の駆動輪速度(STEP302で求めた駆動輪速度)が前記閾値cと比較される。なお、閾値cは本発明における第2閾値に相当する。そして、この比較において、駆動輪速度≧閾値cである場合には、前記STEP313,314の処理が実行されて、TCS要求トルクが初期値に設定された後、TCS制御演算部24の処理(今回の制御処理周期の処理)が終了する。この場合、TCS作動フラグおよび回生要求フラグは共に、ONに維持される。
【0064】
一方、STEP316の比較において、駆動輪速度<閾値cである場合には、STEP317に進み、回生要求フラグの値がONからOFFに切り換えられる。次いで、S318において、駆動輪速度をSTEP303で設定された目標駆動輪速度に収束させるように、フィードバック制御則によりTCS要求トルクの今回値が決定され、TCS制御演算部24の処理(今回の制御処理周期の処理)が終了する。この場合、TCS作動フラグの値はONに維持される。
【0065】
上記STEP318におけるフィードバック制御則としては、本実施形態では、PID制御則が用いられる。すなわち、前記STEP302で求められた駆動輪速度と前記STEP303で設定された目標駆動輪速度との偏差、その偏差の積分値、およびその偏差の微分値にそれぞれ所定のゲインを乗じ、それらを加え合わせることにより、TCS要求トルクが決定される。この場合、前記S309またはS314の処理により最終的に決定されたTCS要求トルクの初期値が、PID制御則における積分項の初期値として設定される。
【0066】
前記STEP315において、回生要求フラグの現在の値がOFFであるときには、さらに、STEP319において、現在の駆動輪速度と前記閾値dとが比較される。このとき、駆動輪速度≧閾値dである場合には、前記STEP318の処理が実行されて、TCS要求トルクがフィードバック制御則により決定され、TCS制御演算部24の処理(今回の制御処理周期の処理)が終了する。この場合、TCS作動フラグの値はONに維持され、回生要求フラグの値はOFFに維持される。
【0067】
また、STEP319の比較において、駆動輪速度<閾値dである場合には、STEP320においてTCS作動フラグの値がONからOFFに切り換えられる。さらに、STEP321において、前記STEP306と同じ処理が実行されて、TCS要求トルクの今回値が最大値(MAX)に設定された後、TCS制御演算部24の処理(今回の制御処理周期の処理)が終了する。この場合、回生要求フラグの値はOFFに維持される。なお、STEP320でTCS要求トルクを便宜的に最大値に設定したが、STEP306の場合と同様、必ずしも最大値に設定する必要はなく、任意の値でよい。
【0068】
以上がTCS制御演算部24の処理である。
【0069】
次に、前記モータトルク決定部26の処理が実行される。このとき、モータトルク決定部26は、図6のフローチャートに示す処理により、電動モータ5の目標出力トルクを決定する。
【0070】
まず、STEP601において、TCS作動フラグの値が判断される。このとき、TCS作動フラグの値がOFFであるときには、STEP602に進んで、前記運転者要求トルク算出部25で求められた運転者要求トルクが目標出力トルクとして設定される。これにより、モータトルク決定部26の今回の制御処理周期の処理が終了する。
【0071】
STEP601において、TCS作動フラグの値がONであるときには、STEP603において、回生要求フラグの値が判断される。このとき、回生要求フラグの値がOFFであるときには、STEP604において、TCS要求トルクと運転者要求トルクとが比較される。この比較において、TCS要求トルク>運転者要求トルクである場合には、前記STEP602の処理が実行されて、運転者要求トルクが目標出力トルクとして設定される。また、TCS要求トルク≦運転者要求トルクである場合には、STEP605において、TCS要求トルクが目標出力トルクとして決定される。これにより、TCSフラグの値がONで、且つ回生要求フラグの値がOFFであるときには、運転者要求トルクおよびTCS要求トルクのうちの小さい方が、STEP602またはSTEP605において目標出力トルクとして決定される。
【0072】
また、STEP603において、回生要求フラグの値がONであるときには、電動モータ5の回生運転を行なうために、STEP606において、電動モータ5の回生トルクが決定される。この回生トルクは路面状態を表す所定の指標パラメータの値に応じて可変的に決定される。本実施形態では、回生要求フラグの値がONであるときにTCS制御演算部24により前述の如く決定されるTCS要求トルクを路面状態を表す指標パラメータとして用い、このTCS要求トルクの値から、あらかじめ定められた図7のテーブルに基づいて決定される。この図7のテーブルは、TCS要求トルクが所定値よりも小さい領域において、TCS要求トルクの低下に伴い、回生トルクの大きさが大きくなるように設定されている。ここで、回生要求フラグの値がONであるときに前述のようにTCS要求トルク(初期値)が決定されることで、TCS要求トルクが小さいほど、駆動輪2,2の滑りが発生し易い路面状態(摩擦係数がより小さい路面状態)であることを意味する。従って、図7のテーブルにより決定される回生トルクの大きさは、路面状態がより滑りやすいほど、より大きく設定されることとなる。
【0073】
補足すると、本実施形態では、回生要求フラグの値がONであるときのTCS要求トルクは、前記したように従動輪加速度(あるいは加速度センサによる検出値)に応じて決定されるので、STEP606では、結果的には、回生トルクは、車両1の加速度に応じて決定されることとなる。
【0074】
次いで、STEP607において、上記の如く決定された回生トルクが目標出力トルクとして決定される。以上により、モータトルク決定部26の今回の制御処理周期の処理が終了する。
【0075】
このようにして、目標出力トルクを決定した後は、制御装置10は、前記した如く、インバータ回路9を介して電動モータ5の発生トルクを目標出力トルクに制御する。
【0076】
以上説明した制御装置10の処理により決定されるTCS要求トルク、目標出力トルク、TCS要求フラグおよび回生要求フラグの値の具体例を図4を参照して説明する。例えば車両1の発進直後に駆動輪2,2の滑りが発生すると、図4(d)に示す如く、駆動輪速度が従動輪速度よりも高い速度に上昇する。そして、駆動輪速度は、あるピーク値に達した後、低下していく。なお、図4(d)では、便宜上、従動輪速度は直線的に上昇していくものとしているが、実際には変動を伴いつつ、上昇していく。
【0077】
駆動輪速度が閾値aを超えると(図4の時刻t1)、駆動輪2,2の滑りの発生が検知され(図3のSTEP305の判断結果がYESになる)、このとき、図4(a)に示す如く、TCS作動フラグの値がOFFからONに切り換えられる。時刻t1までは、TCS要求トルクは、図3のSTEP306の処理によって、図4(c)に示す如く最大値(MAX)に維持される。また、時刻t1では、TCS要求トルクは、図3のSTEP309の処理によって、初期値に設定される。また、時刻t1までは、図6のSTEP602の処理によって、電動モータ5の目標出力トルクとして、運転者要求トルクが設定される。なお、図4の例では、運転者要求トルクは、時刻t1以後、時刻t1での値に維持されるものとする。
【0078】
次いで、駆動輪速度がさらに増加しつつ、閾値bを超えると(図4の時刻t2)、図3のSTEP312の処理によって、図4(b)に示す如く回生要求フラグの値がOFFからONに切り換えられる。この回生要求フラグの値は、図3のSTEP310の判断結果がYESになる場合の処理と、STEP316の判断結果がNOになる場合の処理とによって、駆動輪速度がピーク値に達した後に閾値cを下回る(図4の時刻t3)まで、ONに維持される。そして、このように回生要求フラグの値がONになっている状態では、TCS要求トルクは、図3のSTEP314の処理によって、図4(c)に示す如く、制御装置10の制御処理周期毎に、逐次初期値に設定される。また、この状態では、図6のSTEP607の処理によって、電動モータ5の目標出力トルクとして、路面状態に応じて決定された(路面状態を示すTCS要求トルクに応じて決定された)回生トルクに設定される。
【0079】
なお、図4の時刻t1〜t2までの間の期間では、TCS要求トルクは、図3のSTEP318の処理によって、フィードバック制御則(PID制御則)により決定される。この場合、PID制御則の積分項の初期値は、時刻t1において決定されたTCS要求トルクの初期値に設定される。そして、このように決定されたTCS要求トルクが時刻t1〜t2までの間の期間において、図6のSTEP605の処理によって目標出力トルクとして設定される(ここでは、TCS要求トルク<運転者要求トルクとしている)。
【0080】
図4の時刻t3において回生要求フラグの値がONからOFFに切り換わった後には、TCS要求トルクは、図3のSTEP318の処理によって、フィードバック制御則(PID制御則)により決定される。この場合、PID制御則の積分項の初期値は、時刻t3の直前の時刻において決定されたTCS要求トルクの初期値に設定される。そして、このようにフィードバック制御則により決定されたTCS要求トルクが、時刻t3以後、図6のSTEP605の処理によって目標出力トルクとして設定される(ここでは、TCS要求トルク<運転者要求トルクとしている)。これにより、駆動輪速度は、目標駆動輪速度に収束していく。
【0081】
以上説明した如く、本実施形態では、駆動輪速度が閾値aを超えて、駆動輪2,2の滑りが検知された後、駆動輪速度が増加しながら閾値bを超えた時から、ピーク値を経て低下し、閾値cを下回った時まで、回生要求フラグの値がONに設定される。そして、この状態では、電動モータ5の回生運転が行なわれると共に、その回生トルクが逐次、路面状態を表す指標パラメータとしてのTCS要求トルクに応じて可変的に決定される。すなわち、路面が滑りやすいほど、回生トルクの大きさが大きくなる。このため、滑りの発生後の駆動輪速度を路面状態に合わせた形態で滑らかに変化させ、急減に駆動輪2,2の滑りが解消されたり、あるいは、滑りの抑制に時間が過剰に時間が掛かるような事態を防止することができる。これについて、図8(a),(b)を参照して説明する。図8(a)は、例えば路面状態が氷結路面(アイスバーン)である場合における、本実施形態による目標出力トルクの変化のグラフ(実線のグラフ)を上段に例示し、駆動輪速度および従動輪速度の変化のグラフ(実線のグラフ)を下段に例示している。また、図8(b)は、路面状態が圧雪路面である場合における、本実施形態による目標出力トルクの変化のグラフ(実線のグラフ)を上段に例示し、駆動輪速度および従動輪速度の変化のグラフ(実線のグラフ)を下段に例示している。なお、これらの図8(a),(b)では、運転者要求トルクは、TCS要求トルクよりも大きいものとする。
【0082】
図8(a)に示す如く、路面状態が氷結路面(摩擦係数が0.1よりも小さいような路面)であるときには、電動モータ5の回生運転を行なう期間(回生要求フラグの値がONとなる期間)における目標出力トルク(=回生トルク)はその大きさが比較的大きなものとなる。このため、駆動輪速度は、比較的短い期間内で、従動輪速度に近づくように低下する。同時に、路面の摩擦係数が小さいために、駆動輪速度は、過剰に急激に低下することも無く、ひいては、駆動輪2,2の滑りが急激に解消するような事態も防止される。
【0083】
また、図8(b)に示す如く、路面状態が圧雪路面(摩擦係数が0.3よりも大きいような路面)であるときには、電動モータ5の回生運転を行なう期間(回生要求フラグの値がONとなる期間)における目標出力トルク(=回生トルク)は氷結路面よりも小さくなる。このとき、路面の摩擦係数が氷結路面よりも大きいので、目標出力トルクたる回生トルクの大きさが小さくても、駆動輪速度は、比較的短い期間内で、従動輪速度に近づくように低下する。同時に、回生トルクの大きさが比較的小さいために、駆動輪速度は、過剰に急激に低下することも無く、ひいては、駆動輪2,2の滑りが急激に解消するような事態も防止される。
【0084】
なお、氷結路面において、回生トルクの大きさを、仮に圧雪路面の場合の如く(図8(b)の場合の如く)小さいものとした場合には、図8(a)の下段に仮想線で示す如く、本実施形態の場合よりも駆動輪速度が従動輪速度に近づくまでの期間が長くなり、駆動輪2,2の滑りの抑制が遅れる。また、圧雪路面において、回生トルクの大きさを、仮に氷結路面の場合の如く(図8(a)の場合の如く)大きいものとした場合には、図8(b)の下段に仮想線で示す如く、本実施形態の場合よりも駆動輪速度が急激に従動輪速度に近づき、その結果、駆動輪2,2の滑りが急激に解消されることがある。そして、その場合には、車両1に不意に制動力が作用してしまうことがある。その結果、不快な加速変動が起きることがある。
【0085】
以上のように本実施形態によれば、駆動輪2,2の滑りの抑制を速やかに行なうことと、その滑りの解消が急激に生じるのを回避することとを両立することができ、車両の円滑な加速を得ることができる。
【0086】
また、本実施形態では、駆動輪速度が増加していく段階から(詳しくは、駆動輪速度が増加しつつ、前記閾値bを超えた時から)、ピーク値を経て従動輪速度にある程度近づくまで(詳しくは、駆動輪速度が前記閾値cを下回るまで)の期間において、逐次、回生トルクの大きさを路面状態を表す指標パラメータとしてのTCS要求トルクの応じて可変的に決定しながら、電動モータ5の回生運転を行なう。このため、その回生運転中に路面状態が変化しても、その変化に合わせて回生トルクたる目標出力トルクの大きさが決定されることとなる。そのため、路面状態が変化しても、急激な滑りの解消を防止しつつ、円滑且つ速やかに駆動輪2,2の滑りを抑制することができる。
【0087】
次に本発明の他の実施形態を説明する。なお、以下に説明する各実施形態において、第1実施形態と同一構成部分あるいは同一機能部分については、第1実施形態と同じ図面および参照符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0088】
前記第1実施形態では、路面状態を表す指標パラメータとして、TCS要求トルクを用いたが、例えば、車両1の前後方向の加速度を指標パラメータとして用いてもよい。この場合の実施形態を第2実施形態として以下に説明する。
【0089】
第2実施形態は、前記TCS制御演算部24の処理の一部と、モータトルク決定部26の処理の一部とが第1実施形態と相違する。この場合、第2実施形態では、TCS制御演算部24は、TCS要求トルクの決定、TCS作動要求フラグの設定、回生要求フラグの設定を第1実施形態で説明した如く行なうことに加えて、回生要求フラグの値がONに設定されているとき(電動モータ5の回生運転を行なうとき)に、TCS要求トルク(初期値)を決定するために使用する前記従動輪加速度(車両1前後方向の加速度の推定値)を路面状態を表す指標パラメータとして、前記モータトルク決定部26に逐次出力するようにする。そして、モータトルク決定部26の処理のうちの前記図6のSTEP606では、この従動輪加速度から、例えば図9に示す如くあらかじめ定められたテーブルに基づいて回生トルクを決定する。これ以外は、第1実施形態と同一である。
【0090】
この場合、図9のテーブルは、従動輪加速度が所定値よりも小さい領域において、従動輪加速度の低下に伴い、回生トルクの大きさが大きくなるように設定されている。なお、図9での従動輪加速度は、重力加速度を単位として正規化した値(重力加速度に対する比率)である。ここで、従動輪加速度が小さいほど、駆動輪2,2の滑りが発生し易い路面状態(摩擦係数がより小さい路面状態)であることを意味する。従って、図9のテーブルにより決定される回生トルクの大きさは、路面状態がより滑りやすいほど、より大きく設定されていることとなる。
【0091】
かかる第2実施形態によれば、電動モータ5の回生運転時の回生トルク(目標出力トルク)が路面状態を表す従動輪加速度に応じて可変的に設定されるので、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0092】
なお、第2実施形態では、車両1の前後方向の加速度の推定値たる従動輪加速度を路面状態を表す指標パラメータとして用いたが、車両1の前後方向の加速度を加速度センサにより検出し、その検出値を従動輪加速度の代わりに用いてもよい。
【0093】
次に、本発明の第3実施形態を説明する。本実施形態は、電動モータ5の回生運転時に路面状態を表す指標パラメータとして、路面の摩擦係数の推定値を用いるものである。
【0094】
この第3実施形態は、前記TCS制御演算部24の処理の一部と、モータトルク決定部26の処理の一部とが第1実施形態と相違する。この場合、第3実施形態では、TCS制御演算部24は、TCS要求トルクの決定、TCS作動要求フラグの設定、回生要求フラグの設定を第1実施形態で説明した如く行なうことに加えて、前記図3のSTEP302で求めた駆動輪速度および従動輪速度を前記モータトルク決定部26に逐次出力するようにする。また、モータトルク決定部26には、各駆動輪2の回転軸部に設けた図示しないトルクセンサから、各駆動輪2の駆動トルクが入力される。そして、モータトルク決定部26の処理のうちの前記図6のSTEP606では、まず、各駆動輪2の駆動トルクの検出値と、TCS制御演算部24から与えられる駆動輪速度および従動輪速度とを用いて、路面の摩擦係数μを推定する。そして、この摩擦係数μの推定値から、例えば図10のグラフイで示す如くあらかじめ定められたテーブルに基づいて回生トルクを決定する。これ以外は、第1実施形態と同一である。
【0095】
この場合、図10のテーブルは、摩擦係数μの推定値が所定値よりも小さい領域において、μの低下に伴い、回生トルクの大きさが大きくなるように設定されている。従って、図10のテーブルにより決定される回生トルクの大きさは、路面状態がより滑りやすいほど、より大きく設定されていることとなる。
【0096】
また、摩擦係数μの推定は次のように行なわれる。まず、各駆動輪2の駆動トルクの検出値に該駆動輪2の有効半径を乗じ、それらを加え合わせることにより、車両1の進行方向の駆動力Fが求められる。そして、この駆動力Fを車両1の重量m(これはあらかじめ図示しないメモリに記憶保持されている)で除算することにより、車両1の加速度aが算出される。すなわち、次式(1)により、車両1の加速度aが算出される。
【0097】

a=F/m ……(1)

次いで、駆動輪速度と従動輪速度との差を、従動輪速度で除算することにより、駆動輪2,2のスリップ比が求められる。すなわち、次式(2)により、スリップ比が求められる。
【0098】
スリップ比=(駆動輪速度−従動輪速度)/従動輪速度 ……(2)

そして、このスリップ比と、前記加速度aを、車両1が採り得る最大加速度(これはあらかじめ図示しないメモリに記憶保持されている)で除算してなる値a’(以下、正規化加速度a’という)とを用いて、次式(3)により路面の摩擦係数μの推定値が求められる。
【0099】

μ=a’×K+1×(1−K) ……(3)

ここで、式(3)のKは、図11のグラフで示す如くあらかじめ定められたテーブルにも基づいて、スリップ比から求められる値(0≦K≦1)である。この場合、図11のテーブルでは、スリップ比が例えば10%以下であるときに、スリップ比が所定値以下の微小値である場合を除いて、スリップ比の増加に伴い、Kの値が0から1に向かってリニアに増加するように定められている。なお、スリップ比が微小値である場合のKの値は、0である。
【0100】
これにより、路面の摩擦係数μの推定値が求められ、それが、前記した如く回生トルクを決定するために使用される。なお、摩擦係数μの推定の手法は、上記の手法以外にも種々様々な手法が公知になっており、その公知の手法を用いて摩擦係数μを推定してもよい。また、本実施形態では、摩擦係数μの推定値を求めるために車両1の加速度aを前記式(1)に基づいて推定するようにしたが、その加速度aの代わりに、前記従動輪加速度、あるいは加速度センサによる検出値を用いてもよい。
【0101】
かかる第3実施形態によれば、電動モータ5の回生運転時の回生トルク(目標出力トルク)が路面状態を表す摩擦係数μの推定値に応じて可変的に設定されるので、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0102】
次に、本発明の第4〜第6実施形態を説明する。前記第1〜第3実施形態では、電動モータ5の回生運転時の回生トルクを路面状態を表す指標パラメータだけに応じて可変的に設定するようにしたが、以下に説明する第4〜第6実施形態では、路面状態を表す指標パラメータに加えて、前記運転者要求トルクを考慮して、回生トルクを決定する。
【0103】
以下、説明すると、第4実施形態は、モータトルク決定部26の処理の一部のみが第1実施形態と相違する。すなわち、第4実施形態では、モータトルク決定部26の処理のうちの前記図6のSTEP606において、運転者要求トルクとTCS要求トルクとの差(=運転者要求トルク−TCS要求トルク)から、例えば図12に示す如くあらかじめ定められたテーブルに基づいて回生トルクを決定する。これ以外は、第1実施形態と同一である。
【0104】
この場合、図12のテーブルは、運転者要求トルク−TCS要求トルクが、所定値よりも大きい領域において、運転者要求トルク−TCS要求トルクの値の増加に伴い、回生トルクの大きさが大きくなるように設定されている。従って、図12のテーブルにより決定される回生トルクの大きさは、路面状態が一定であっても、運転者要求トルクが小さいほど、回生トルクの大きさが小さくなる。従って、路面が滑りやすい状態であっても、運転者によるアクセルペダルの操作量が比較的小さく、運転者要求トルクが比較的小さい場合には、電動モータ5の回生運転時の回生トルクが、運転者要求トルクが比較的大きい場合よりも小さめに抑えられることとなる。このため、電動モータ5の回生運転の開始時に、電動モータ5の発生トルクが駆動トルクから大きな回生トルクに急変するような頻度を第1実施形態の場合よりも少なくできる。その結果、駆動輪2,2の滑りの抑制のための電動モータ5の負担を軽減できる。
【0105】
なお、この第4実施形態においては、運転者要求トルクが一定であれば、TCS要求トルクが小さいほど、すなわち、路面が滑りやすいほど、電動モータ5の回生運転時の回生トルクの大きさが大きくなるので、第1実施形態と同様の効果を奏することももちろんである。
【0106】
次に、第5実施形態は、モータトルク決定部26の処理の一部のみが前記第2実施形態と相違する。すなわち、第5実施形態では、前記運転者要求トルクと、前記従動輪加速度(あるいは加速度センサによる車両1の前後方向の加速度の検出値)を電動モータ5の駆動トルクに換算してなるトルク(以下、加速度対応トルクという)との差(=運転者要求トルク−加速度対応トルク)から、例えば図13に示す如くあらかじめ定められたテーブルに基づいて回生トルクを決定する。これ以外は、第2実施形態と同一である。
【0107】
この場合、従動輪加速度(あるいは加速度センサによる車両1の前後方向の加速度の検出値)は、次のように加速度対応トルクに換算される。すなわち、従動輪加速度(あるいは加速度の検出値)に、車両1の重量(これはあらかじめ図示しないメモリに記憶保持されている)を乗じることにより、駆動輪2,2のトータルの駆動力(駆動輪2,2と路面との摩擦力によって車両1に発生させ得る駆動力)が求められる。そして、このトータルの駆動力を駆動輪2,2の有効半径で除算し、さらにその除算結果の値を前記動力伝達機構6の減速比で除算することにより加速度対応トルクが算出される。
【0108】
そして、図13のテーブルは、運転者要求トルク−加速度対応トルクが、所定値よりも大きい領域において、運転者要求トルク−加速度対応トルクの値の増加に伴い、回生トルクの大きさが大きくなるように設定されている。従って、図13のテーブルにより決定される回生トルクの大きさは、前記第4実施形態の場合と同様に、路面状態が一定であっても、運転者要求トルクが小さいほど、回生トルクの大きさが小さくなる。このため、第4実施形態と同様に、電動モータ5の回生運転の開始時に、電動モータ5の発生トルクが駆動トルクから大きな回生トルクに急変するような頻度を第1実施形態あるいは第2実施形態の場合よりも少なくできる。その結果、駆動輪2,2の滑りの抑制のための電動モータ5の負担を軽減できる。
【0109】
なお、この第5実施形態においても、運転者要求トルクが一定であれば、路面が滑りやすいほど(加速度対応トルクが小さいほど)、電動モータ5の回生運転時の回生トルクの大きさが大きくなるので、第1実施形態と同様の効果を奏することももちろんである。
【0110】
次に、第6実施形態は、モータトルク決定部26の処理の一部のみが前記第3実施形態と相違する。すなわち、第6実施形態では、前記運転者要求トルクと、前記摩擦係数μの推定値を電動モータ5の駆動トルクに換算してなるトルク(以下、μ対応トルクという)との差(=運転者要求トルク−μ対応トルク)から、例えば図14に示す如くあらかじめ定められたテーブルに基づいて回生トルクを決定する。これ以外は、第3実施形態と同一である。
【0111】
この場合、摩擦係数μの推定値は、これにあらかじめ定めた所定の変換係数(>0)を乗じることにより、μ対応トルクに換算される。なお、該μ対応トルクは、駆動輪2,2の滑りを生じないように該駆動輪2,2に伝達し得る電動モータ5の駆動トルクを意味する。そして、図14のテーブルは、運転者要求トルク−μ対応トルクが、所定値よりも大きい領域において、運転者要求トルク−μ対応トルクの値の増加に伴い、回生トルクの大きさが大きくなるように設定されている。従って、図14のテーブルにより決定される回生トルクの大きさは、前記第4実施形態の場合と同様に、路面状態が一定であっても、運転者要求トルクが小さいほど、回生トルクの大きさが小さくなる。このため、第4実施形態と同様に、電動モータ5の回生運転の開始時に、電動モータ5の発生トルクが駆動トルクから大きな回生トルクに急変するような頻度を第1実施形態あるいは第3実施形態の場合よりも少なくできる。その結果、駆動輪2,2の滑りの抑制のための電動モータ5の負担を軽減できる。
【0112】
なお、この第6実施形態においても、運転者要求トルクが一定であれば、路面が滑りやすいほど(μの推定値が小さいほど)、電動モータ5の回生運転時の回生トルクの大きさが大きくなるので、第1実施形態と同様の効果を奏することももちろんである。
【0113】
以上説明した第1〜第6実施形態では、電動モータ5だけを車両1の推進力発生源として備えた電気走行車を例に採って説明したが、例えば電動モータとエンジンとを車両の推進力発生源として備えたハイブリッド車両(パラレル型ハイブリッド車両)や、エンジンにより発電する発電機を備えたシリーズ型のハイブリッド車両、あるいは、電源として蓄電器だけを備えた電気自動車などについても本発明を適用することが可能であることはもちろんである。
【0114】
また、前記各実施形態では、2つの駆動輪と2つの従動輪とを備える車両に本発明を適用したものを例に採って説明したが、4個の車輪が駆動輪となる車両(4WD車両)についても本発明を適用できる。この場合には、従動輪速度、従動輪加速度の代わりに、推定車体速度(車体の速度の推定値)、推定車体加速度(車体の加速度の推定値)を用いればよい。これらの推定車体速度、推定車体加速度は、公知の様々の手法によって得ることができる。例えば、車体に加速度センサを取り付け、その加速度センサによる加速度の検出値を推定車体加速度として用い、該加速度の検出値を積分することで、推定車体速度を得るようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の第1実施形態における車両(電気走行車両)の概要構成を示すブロック図。
【図2】図1の車両に備えた制御装置の機能的構成の概略を示すブロック図。
【図3】図2のTCS制御演算部の処理を示すフローチャート。
【図4】(a)TCS作動フラグの値の経時変化例を示すグラフ、(b)は回生要求フラグの値の経時変化を示すグラフ、(c)は運転者要求トルク、TCS要求トルクおよび目標出力トルクの経時変化の例を示すグラフ、(d)は駆動輪速度と従動輪速度の経時変化の例を示すグラフ。
【図5】電動モータの回生運転時におけるTCS要求トルクを決定するためのテーブルを示すグラフ。
【図6】図2のモータトルク決定部の処理を示すフローチャート。
【図7】電動モータの回生トルクを決定するためのテーブルを示すグラフ。
【図8】(a)路面状態が氷結状態であるときの第1実施形態の効果を説明するためのグラフ、(b)は路面状態が圧雪状態であるときの第1実施形態の効果を説明するためのグラフ。
【図9】本発明の第2実施形態における回生トルクを決定するためのテーブルを示すグラフ。
【図10】本発明の第3実施形態における回生トルクを決定するためのテーブルを示すグラフ。
【図11】第3実施形態で路面の摩擦係数を推定するために用いる係数を決定するためのテーブルを示すグラフ。
【図12】本発明の第4実施形態における回生トルクを決定するためのテーブルを示すグラフ。
【図13】本発明の第5実施形態における回生トルクを決定するためのテーブルを示すグラフ。
【図14】本発明の第6実施形態における回生トルクを決定するためのテーブルを示すグラフ。
【符号の説明】
【0116】
1…車両、2…駆動輪、3…従動輪、5…電動モータ、10…制御装置(電動モータ制御手段)、21…車輪速センサ(駆動輪速度検出手段)。




 

 


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