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発明の名称 車両用サスペンション装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−22162(P2007−22162A)
公開日 平成19年2月1日(2007.2.1)
出願番号 特願2005−203648(P2005−203648)
出願日 平成17年7月12日(2005.7.12)
代理人 【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
発明者 鈴木 卓馬 / 玉正 忠嗣 / 御厨 裕
要約 課題
タイヤ接地点の変位を伴うことなく車輪に作用する横力を利用してキャンバ角を適切な値に制御する。

解決手段
タイヤ接地点に横力が作用したとき、横力が増加し且つ車体に対してキャンバ角方向に車輪を傾斜させる第1の仮想リンク11と、この第1の仮想リンク11と車体1との間に仮想的に回動自在に連結され車輪の上下方向の荷重変化に伴って車体1に対して車輪2を上下方向に移動可能な第2の仮想リンク12とに等価的に置き換えることの可能なリンク機構を備えてサスペンション装置を構成する。また、第1の仮想リンク11の位置が変化することに伴うタイヤ接地点の横移動量|Δyl1|を、第2の仮想リンク12の位置が変化することに伴うタイヤ接地点の横移動量|Δyl2|で打ち消し且つ|Δyl2|≧|Δyl1|を満足するように、車体に対する車輪のキャンバ角方向の瞬間回転中心A及び上下方向の瞬間回転中心Bを配置する。
特許請求の範囲
【請求項1】
タイヤ接地点に横力が作用したとき、車輪の上下方向の変位とは独立に、前記横力が増加する方向であり且つ車体に対してキャンバ角方向に車輪を傾斜させる第1の仮想リンクと、前記第1の仮想リンクと車体との間に仮想的に回動自在に連結され且つ車輪の上下方向の荷重変化に伴って車体に対して車輪を上下方向に移動可能な第2の仮想リンクと、に等価的に置き換えることの可能なリンク機構を備えた車両用サスペンション装置であって、
前記タイヤ接地点に横力が作用する状態において、前記第1の仮想リンクの位置が変化することにより生じるタイヤ接地点の変位を、前記第2の仮想リンクの位置が変化することにより生じるタイヤ接地点の変位で打ち消すように、前記車輪の車体に対するキャンバ角方向の回転中心点と、前記車輪の車体に対する上下方向の回転中心点と、を配置することを特徴とする車両用サスペンション装置。
【請求項2】
前記第1の仮想リンクの位置が変化することにより前記タイヤ接地点が旋回内側方向に移動したとき、前記第2の仮想リンクの位置が変化することにより生じる前記タイヤ接地点の旋回外側方向への変位が、前記第1の仮想リンクの位置が変化することにより生じる前記タイヤ接地点の旋回内側方向への変位以上となるように、前記キャンバ角方向の回転中心点と前記上下方向の回転中心点とを配置することを特徴とする請求項1記載の車両用サスペンション装置。
【請求項3】
前記第1の仮想リンクの位置が変化することにより生じる前記タイヤ接地点の旋回内側方向への変位と、前記第2の仮想リンクの位置が変化することにより生じる前記タイヤ接地点の旋回外側方向への変位とが同等となるように、前記キャンバ角方向の回転中心点と前記上下方向の回転中心点とを配置することを特徴とする請求項1記載の車両用サスペンション装置。
【請求項4】
前記キャンバ角方向の回転中心点を地面よりも下に配置し且つ前記上下方向の回転中心点を地面よりも上の左右反対側の車輪側に設けたとき、前記第1の仮想リンクの位置が変化することにより生じる前記タイヤ接地点の横移動量Δyl1、前記第2の仮想リンクの位置が変化することにより生じる前記タイヤ接地点の横移動量Δyl2及びキャンバ角変化γを次式で定義し、これに基づき前記キャンバ角方向の回転中心点と前記上下方向の回転中心点とを配置することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の車両用サスペンション装置。
Δyl1=l1・tanγ
Δyl2=−R〔cosβ−cos(β−α)〕
γ=〔−Fy・l1+(W+ΔW)・l3〕/Kγ
ただし、Rは前記第2の仮想リンクのリンク長、βは定常状態での前記第2の仮想リンクの傾斜角、αは定常状態からの前記第2の仮想リンクの傾斜角の変化角度、l1は前記キャンバ角方向の回転中心点から地面までの垂直距離、Fyはタイヤ接地点に作用する横力、Wは定常状態での輪荷重、ΔWは定常状態からの輪荷重変化、l3は定常状態からのタイヤ接地点の変位、Kγは前記第1の仮想リンクによるキャンバ角方向の剛性値である。
【請求項5】
前記第1の仮想リンクの位置が変化することにより前記車輪が車体側に傾斜したときの前記車輪上部と車体との間の相対距離が、しきい値以上となるように前記キャンバ角方向の回転中心点と前記上下方向の回転中心点とを配置することを特徴とする請求項1記載の車両用サスペンション装置。
【請求項6】
前記キャンバ角方向の回転中心点を地面よりも下に配置し且つ前記上下方向の回転中心点を地面よりも上の左右反対側の車輪側に設けたとき、前記第1の仮想リンクの位置が変化することにより生じる車輪上部の横移動量Δyl1u、前記第2の仮想リンクの位置が変化することにより生じる前記タイヤ接地点の横移動量Δyl2、及びキャンバ角変化γを、次式で定義し、これに基づき前記キャンバ角方向の回転中心点と前記上下方向の回転中心点とを配置することを特徴とする請求項4記載の車両用サスペンション装置。
Δyl1u=l1・tanγ+2r・sinγ
Δyl2=−R〔cosβ−cos(β−α)〕
γ=〔−Fy・l1+(W+ΔW)・l3〕/Kγ
ただし、Rは前記第2の仮想リンクのリンク長、βは定常状態での前記第2の仮想リンクの傾斜角、αは定常状態からの前記第2の仮想リンクの傾斜角の変化角度、l1は前記キャンバ角方向の回転中心点から地面までの垂直距離、rは車輪の半径、Fyはタイヤ接地点に作用する横力、Wは定常状態での輪荷重、ΔWは定常状態からの輪荷重変化、l3は定常状態からのタイヤ接地点の変位、Kγは前記第1の仮想リンクによるキャンバ角方向の剛性値である。
【請求項7】
前記第1の仮想リンクは、弾性部材の剛性を利用して前記キャンバ角を変化させるように構成されることを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載の車両用サスペンション装置。
【請求項8】
車輪を回動自在に支持する回転支持部材と、
上端部が車幅方向で対をなして前記回転支持部材と回動自在に連結される一対のリンクであって、その上下方向の軸の延長線の交点が地面よりも下に位置するように配置される上下方向リンクと、
逆T字状に形成され、その略水平部材の端部に前記上下方向リンクの下端部がそれぞれ回動自在に連結される逆T字状リンクと、
車幅方向に延び、前記逆T字状リンクの略垂直部材と車体側部材との間に上下方向で対をなして回動自在に連結される一対のリンクであって、当該一対のリンクの車幅方向の軸の延長線の交点が車幅方向内側に位置するように配置される車幅方向リンクと、
上下方向に延び、前記車幅方向リンクを構成する一対のリンク及び前記逆T字状リンクの水平部材のうちの何れかと前記車体側部材との間に回動自在に連結され車体重量を支持するばね部材と、を備えることを特徴とする車両用サスペンション装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の姿勢を制御可能な車両用サスペンション装置に関し、特にタイヤに作用するタイヤ横力を利用してキャンバ角を制御するようにした車両用サスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ横力を利用してキャンバ角を変化させるようにしたサスペンション装置として、例えば、特許文献1に記載されたように、車輪の上下動とは独立に車輪のキャンバ角を変更することの可能なサスペンション装置が提案されている。このサスペンション装置では、車輪のキャンバ角方向の運動の瞬間的回転中心位置を地面よりも低い位置に設定し、タイヤ横力が作用したとき、旋回外輪はネガティブキャンバ、旋回内輪はポジティブキャンバを付加することが可能に構成されている。また、キャンバ角方向の運動の瞬間的回転中心位置を地面付近の地面よりも高い位置に設定した場合には、アクチュエータ等を利用することでキャンバ角を制御することができるようになっている。
【特許文献1】特表2003−528771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のような、車輪の上下動とは独立に車輪のキャンバ角を変更することの可能なサスペンション装置は、車輪のキャンバ角方向の運動の瞬間的回転中心位置が所望の位置にくるように、新たにリンクを設けたレイアウトのサスペンション構造である。
ここで、前記キャンバ角方向の運動の瞬間的回転中心位置が、地面より下の、地面よりも離れた位置に設定されている場合には、このキャンバ角方向の運動の瞬間的回転中心位置を中心として車輪がキャンバ角方向に移動するため、キャンバ角が生じることによってタイヤ接地点も横移動することになる。
【0004】
つまり、定常走行している状態でタイヤ横力が作用すると、車輪は、地面よりも離れた位置に設けられたキャンバ角方向の運動の瞬間的回転中心位置を中心として、旋回外輪はネガティブキャンバ、旋回内輪はポジティブキャンバ方向に傾く。このため、タイヤ接地点は車輪旋回内側方向に瞬間的に移動することになり、タイヤ接地点は、車両旋回内側方向に、ある速度で移動することになる。この移動によって、旋回を妨げる方向、つまり、旋回外側方向にタイヤ横力が発生し、キャンバ角を付加したことに対する車両の応答性を低下させてしまうという問題がある。
【0005】
このタイヤ接地点の横変位を零とするため、前記キャンバ角方向の運動の瞬間的回転中心位置を地面付近に設けることも可能である。しかしながら、このように、キャンバ角方向の運動の瞬間的回転中心位置を地面付近に設けると、キャンバ角も零に近づくことになり、キャンバ角による効果を損ねてしまう。
このため、キャンバ角を適値にし、且つ、タイヤ接地点の横変位を小さくするためには、キャンバ角及びタイヤ接地点の横変位をそれぞれ制御するアクチュエータが必要となり、これは、コストの上昇につながるという問題がある。
そこで、この発明は上記従来の問題点に着目してなされたものであり、キャンバ角変化による効果を損ねることなく、タイヤに作用する横力を利用してキャンバ角を適切な値に制御することの可能な車両用サスペンション装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る車両用サスペンション装置は、タイヤ接地点に横力が作用したとき車輪の上下方向の変位とは独立に、前記横力が増加する方向であり且つ車体に対してキャンバ角方向に車輪を傾斜させる第1の仮想リンクと、この第1の仮想リンクと車体との間に仮想的に回動自在に連結され且つ車輪の上下方向の荷重変化に伴って車体に対して車輪を上下方向に移動可能な第2の仮想リンクと、に等価的に置き換えることの可能なリンク機構を備えて構成される。そして、前記車輪の車体に対するキャンバ角方向の回転中心点及び前記車輪の車体に対する上下方向の回転中心点は、タイヤ接地点に横力が作用する状態において、第1の仮想リンクの位置が変化することにより生じるタイヤ接地点の変位を、第2の仮想リンクの位置が変化することにより生じるタイヤ接地点の変位で打ち消すように配置される。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両用サスペンション装置は、タイヤ接地点に横力が作用したとき車輪の上下方向の変位とは独立に、前記横力が増加する方向であり且つ車体に対してキャンバ角方向に車輪を傾斜させる第1の仮想リンクと、この第1の仮想リンクと車体との間に仮想的に回動自在に連結され且つ車輪の上下方向の荷重変化に伴って車体に対して車輪を上下方向に移動可能な第2の仮想リンクと、に等価的に置き換えることの可能なリンク機構を備えて構成する。そして、前記車輪の車体に対するキャンバ角方向の回転中心点及び前記車輪の車体に対する上下方向の回転中心点を、タイヤ接地点に横力が作用する状態において、第1の仮想リンクの位置が変化することにより生じるタイヤ接地点の変位を、第2の仮想リンクの位置が変化することにより生じるタイヤ接地点の変位で打ち消すように配置したから、タイヤ接地点が変位することなく、横力に応じてキャンバ角を調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
まず、第1の実施の形態を説明する。
図1は、本発明による車両用サスペンション装置の原理を示したものであって、車体後方からみた図である。
図1において、1は車体、2は車輪であって、車輪2は回転支持部材3により回動自在に支持される。この回転支持部材3には、略上下方向に延びる、上下方向リンクとしてのリンク4及びリンク5の上端部が、回転部材4a及び5aを介して回動自在に連結され、リンク4及びリンク5の下端部は逆T字状リンクとしてのリンク6に連結されている。このリンク6は略逆T字状に形成され、前記リンク4及びリンク5の下端部は、前記リンク6の略水平方向に延びる水平部6aの両端に、それぞれ回転部材4b、5bを介して回動自在に連結され、リンク4及びリンク5の軸の延長線の交点が地面よりも下に位置するように配置される。
【0009】
また、アッパリンク及びロアリンクに相当し、車幅方向に延びる、車幅方向リンクとしてのリンク7及びリンク8は、その車体側端部が回転部材7a、8aを介して車体1に回動自在に連結され、リンク7の車輪側端部は、前記リンク6の略垂直方向に延びる垂直部6bの端部と回転部材7bを介して回動自在に連結され、リンク8の車輪側端部は、リンク6の垂直部6bの、水平部6aよりの位置に回転部材8bを介して回動自在に連結されている。そして、リンク7及びリンク8の軸の延長線の交点が、車幅方向内側に位置するように配置される。
【0010】
また、前記リンク8と車体1との間には、略上下方向に延び、且つ、車体重量を支持することの可能なショックアブソーバ等に相当するばね部材10が回動自在に連結されている。
これによって、前記リンク6は、路面からの上下方向の力の入力により、車体1に対して上下方向に相対移動可能に支持され、また、前記回転支持部材3は、路面からの横方向の力の入力により、リンク6に対して横方向に相対移動可能に支持される。このときの、前記回転支持部材3の横方向の移動の瞬間回転中心Aは、リンク4及びリンク5の軸の延長線の交点となり、また、前記リンク6の上下方向の瞬間回転中心Bは、リンク7及びリンク8の軸の延長線の交点となる。
【0011】
したがって、車輪2は、路面からの上下方向の力の入力によって、車体1に対して上下方向に変化すると共に、路面からの横方向の力の入力によって、車体1に対してキャンバ角方向に変化すると幾何学的に考えることができる。また、車輪2の上下方向の瞬間回転中心Bは、リンク7及びリンク8の軸の延長線の交点、車輪2のキャンバ角方向の瞬間回転中心Aは、リンク4及びリンク5の軸の延長線の交点と考えることができる。
【0012】
ここで、回転支持部材3は、車輪2を回転自在に支持し、リンク4、リンク5及びリンク6と共にキャンバ角方向の瞬間回転中心Aを決めていることから、図1の回転支持部材3、リンク4、5及び6を、図2に示すように、キャンバ角方向の瞬間回転中心Aと車輪2とを連結する第1の仮想リンク11に等価的に置き換えることができる。また、リンク6と、リンク7及びリンク8とにより、上下方向の瞬間回転中心Bを決めており、リンク7及びリンク8は、リンク6を介して第1の仮想リンク11と連結していると考えることができるから、前記リンク6とリンク7及びリンク8とを、図2に示すように、キャンバ角方向の瞬間回転中心Aで前記第1の仮想リンク11と仮想的に連結され、且つ、前記キャンバ角方向の瞬間回転中心Aと上下方向の瞬間回転中心Bとに仮想的に連結された、第2の仮想リンク12に置き換えることができる。
【0013】
なお、図1では、前記ばね部材10を、リンク8に取り付けているが、車輪2の上下方向の位置を決定する第2の仮想リンク12を構成するサスペンション構成部品の何れかに取り付けられていればよい。
また、図2中、第1の仮想リンク11及び第2の仮想リンク12間に仮想ばね14が設けられているが、この仮想ばね14はタイヤがキャンバ角方向に変位することで生じるオーバーターニングモーメントや、第1の仮想リンク11を構成するサスペンションリンクのフリクションや回転部材のばね要素等により考えられる要因に相当するものであって、第1の仮想リンク11と第2の仮想リンク12との間に設けられていると考えることができる。
【0014】
なお、ここでは、第1の仮想リンク11及び第2の仮想リンク12を説明するために、図1に示すように、ダブルウィッシュボーン形式のサスペンションを用いた場合について説明したが、これに限るものではなく、ストラット形式、マルチリンク形式、また、トレーリングアーム形式のサスペンション方式であっても適用することができ、第1の仮想リンク11及び第2の仮想リンク12に置き換えることの可能なリンク構造を有するサスンションであれば、どのようなサスペンション形式であっても適用することができる。
【0015】
次に、前記キャンバ角方向の瞬間回転中心A及び上下方向の瞬間回転中心Bの設定方法を説明する。
ここで、従来のキャンバ角制御方式のサスペンション装置では、前述のように、タイヤ横力が作用した場合にキャンバ角が変化するように構成している。したがって、図2の第1の仮想リンク11を備えていると考えることができる。そして、第1の仮想リンク11によりキャンバ角を付加させるべく、第1の仮想リンク11の瞬間回転中心、つまり、キャンバ角方向の瞬間回転中心Aを、どの位置に定めるかを決定している。
【0016】
しかしながら、このサスペンション装置では、前述のように、横力に応じてキャンバ角を制御することはできるものの、キャンバ角を付加することによりタイヤ接地点の横移動が生じ、これによりキャンバ角を付加したことに対する車両の応答性を低下させている。つまり、図3に示すように、キャンバ角が制御されていない定常状態(図3(a))において、車輪2のキャンバ角方向の瞬間回転中心Aが地面よりも下に設定されている場合、図3(b)に示すように、タイヤに横力が作用すると、これによって、車輪2がキャンバ角方向の瞬間回転中心Aを中心として回動する。このため、タイヤ接地点が旋回内側方向に瞬間的に移動することになりその結果、タイヤ接地点中心は、車両旋回内側方向に速度Vyで移動することになる。このため、タイヤ接地点中心の前後速度Vとタイヤ進行方向との間にαyの角度が生じることになり、旋回を妨げる方向にタイヤ横力が発生することになる(図3(c))。
【0017】
そこで、この第1の実施の形態では、第1の仮想リンク11によって、キャンバ角方向の瞬間回転中心Aを中心として、キャンバ角が変化した場合のタイヤ接地点の横移動量Δyl1を、上下方向の瞬間回転中心Bを中心として、第2の仮想リンク12が回動することにより生じるタイヤ接地点の横移動量Δyl2により調整する。
ここで、上述のように、第1の仮想リンク11及び第2の仮想リンク12を設けることによって、パッシブなサスペンションにおいて、タイヤ横力が生じた際の車輪2のキャンバ角変化と、タイヤ接地点の横変位とを独立に任意に設定することができる。
【0018】
図4(a)に示すように、タイヤ横力によってキャンバ角変化が生じた場合、キャンバ角方向の瞬間回転中心Aを中心として第1の仮想リンク11が回動し車輪2が回動することから、タイヤ接地点がΔyl1だけ横移動する。一方、タイヤ横力により第1の仮想リンク11が回動すると、第1の仮想リンク11の回動に伴う輪荷重の変化に伴って車体の上下方向の位置を決定する第2の仮想リンク12が、上下方向の瞬間回転中心Bを中心として回動することから、図4(b)に示すように、前記横移動量Δyl1を打ち消す方向にΔyl2だけ横移動することになる。
【0019】
ここで、第1の仮想リンク11及び第2の仮想リンク12が回動することにより生じるタイヤ接地点の横移動量Δyl1、Δyl2、キャンバ角γは、以下の式で表すことができる。
Δyl1=l1・tanγ ……(1)
γ=〔−Fy・l1+(W+ΔW)・L3〕/Kγ ……(2)
Δyl2=−R〔cosβ−cos(β−α)〕 ……(3)
R=〔(l4)2+(l2)21/2 ……(4)
β=cos-1〔(l4)/(l2)〕 ……(5)
α=β+sin-1(ΔZ/R−sinβ)〕 ……(6)
ΔZ
=R・sin〔(ΔW・R・cosβ−Fy・R・cosβ+Kγ・γ)/Kδ〕
……(7)
Kδ=Kw・(R・cosβ)2 ……(8)
ΔW=f(Fy) ……(9)
【0020】
なお、上記式中の、l1〜l4は、図5に示すように規定される値である。つまり、図5(a)に示すように、l1はキャンバ角の瞬間回転中心Aからタイヤ接地点までの垂直距離、l3は瞬間回転中心A周りにキャンバ角が付加されたときの、タイヤ接地点の変位量である。また、図5(b)に示すように、l2は第2の仮想リンク12が移動する前の状態、すなわち定常状態にあるときの瞬間回転中心A及び上下方向の瞬間回転中心Bとの間の水平距離、l4は定常状態にあるときの瞬間回転中心A及び瞬間回転中心B間の垂直距離である。
【0021】
また、Fyはタイヤ接地点における横力、Wは定常状態における輪荷重、ΔWは定常状態からの輪荷重変化、Kγはオーバーターニングモーメント、ブッシュ剛性等の、第1の仮想リンク11によるキャンバ角方向の剛性値、Kwは第2の仮想リンク12に設けられたホイール端相当の仮想ばね、Kδは、図6に示すように、第2の仮想リンク12にホイール端相当のばねとして設けられていた仮想ばねKwを、瞬間回転中心B周りに第2の仮想リンク11に設けたばね相当値、Rは第2の仮想リンク12の長さ(瞬間回転中心A及び瞬間回転中心B間の距離)、βは第2の仮想リンク12の傾斜角、αは第2の仮想リンク12の傾斜角度変化、ΔZはタイヤ接地点の上下変位である。
【0022】
タイヤ横力が入力された場合、第1の仮想リンク11がもたらすキャンバ角γは、タイヤ接地点のモーメント周りの釣り合いから、前記(2)式で表すことができる。ここで、Kγは、瞬間回転中心A周りのモーメントに対して、第1の仮想リンク11が、キャンバ角が生じることを妨げる方向に作用するばね相当(図2における仮想ばね14相当)であり、タイヤのオーバーターニングモーメントや、サスペンション部材の変形等による反発力である。
【0023】
そして、第1の仮想リンクl1によって生じるキャンバ角γにより、第1の仮想リンク11がもたらすタイヤ接地点の横移動量Δyl1は、タイヤ接地点と瞬間回転中心Aとキャンバ角γとの幾何学的な関係より前記(1)式で表すことができる。
また、前記第2の仮想リンク12によるタイヤ接地点の横移動量Δyl2は、前記(3)式で表され、(3)式中の、R、β、αは、それぞれ前記式(4)から(6)式で表される。また、(6)式中のΔZは、前記(7)式で表され、車体の輪荷重と、タイヤに作用する横力と、第1の仮想リンク11によって、瞬間回転中心A回りに生じる、モーメントによって決定される。
【0024】
ここで、輪荷重変化ΔWは、(9)式に示すように、タイヤに作用する横力Fyを変数とする関数値で表すことができる。したがって、ある走行状態におけるタイヤに作用する横力Fyと輪荷重変化ΔWは、関係式によって成り立っていることから、車体の重心位置やロール剛性、輪荷重配分、ロールセンタ高さ等から、ある走行状態において、キャンバ角やタイヤ接地点の横変位が所望とする値となるように、瞬間回転中心Aに対する瞬間回転中心Bを設定することが可能となる。
【0025】
つまり、第1の仮想リンク11によって生じる車輪2のキャンバ角γは、瞬間回転中心Aの位置と、剛性値Kγとによって決まり、タイヤ接地点の横変位は、第1の仮想リンク11によるキャンバ角変位に伴う接地点横変位移動分と、第2の仮想リンク11が瞬間回転中心B回りに回動した際に生じるタイヤ接地点の横移動分との和である。すなわち、第1の仮想リンク11により、ある状態量における所望のキャンバ角γが決定し、その特性に対して瞬間回転中心Bを設定することで、キャンバ角変化と、タイヤ接地点の横変位とをそれぞれ独立に調整することができることになる。
【0026】
そして、この第1の実施の形態では、第1の仮想リンク11によるキャンバ角方向への傾斜がもたらすタイヤ接地点の旋回内側への横移動量Δyl1よりも、第2の仮想リンク12によるタイヤ接地点の横移動量Δyl2の方が大きくなるように、瞬間回転中心Aに対する瞬間回転中心Bを設定する。すなわち、前記(1)式及び(3)式で定義されるタイヤ接地点の横変位において、|Δyl2|≧|Δyl1|を満足するように、瞬間回転中心Bを設定する。
【0027】
これによって、タイヤ接地点は、図7に示すように、少なくとも定常状態よりも旋回外側に移動されることになる。したがって、所望のキャンバ角を実現することができると共に、タイヤ接地点は、定常状態よりも旋回内側方向に移動することはないから、タイヤ接地点が旋回内側方向に移動することに伴って、旋回を妨げる方向にタイヤ横力が発生することを回避することができ、キャンバ角を付加したことに対する車両の応答性の低下を回避することができる。そして、図7に示すように、タイヤ接地点を、定常状態よりも旋回外側に移動するようになっているから、旋回内側にタイヤ横力が発生することになって、キャンバ角の付加に対する応答性を向上させることができる。
【0028】
また、このとき、第1の仮想リンク11によるキャンバ角方向への傾斜がもたらすタイヤ接地点の旋回内側への横移動量Δyl1よりも、第2の仮想リンク12によるタイヤ接地点の横移動量Δyl2の方が大きいときほど、旋回内側に発生するタイヤ横力がより大きくなるから、キャンバ角の付加に対する応答性をより向上させることができる。
また、前記(1)〜(9)式に示すように、第1の仮想リンク11によるキャンバ角γ、第1の仮想リンク11によるタイヤ接地点の横移動量Δyl1、第2の仮想リンク12によるタイヤ接地点の横移動量Δyl2を定義し、その数値的に定義することができるから、横移動量Δyl1及びΔyl2が所定の関係を満足するように瞬間回転中心A及びBの位置を算出することによって、これらの配置位置を容易に決定することができ、アクチュエータ等を用いることなく、容易に実現することができる。
【0029】
また、このように、アクチュエータ等を用いることなく、キャンバ角を制御すると共に、タイヤ接地点の変位を制御することができる。したがって、アクチュエータを用いる場合には、各車輪に対応してアクチュエータを設ける必要があるが、上述のようにアクチュエータを設けることなくキャンバ角を調整することができるから、大幅なコスト削減を図ることができる。
【0030】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。
図8は、第2の実施の形態における車両用サスペンション装置の一例を示す概略構成図であって、車両後方から見た図である。
図8中、31はナックルアームであって、このナックルアーム31に、車輪32及びブレーキロータ33が回転自在に取り付けられている。また、このナックルアーム31には上下方向に延びるリンク34が、2つのブッシュ(弾性部材)35及び36を介して連結され、2つのブッシュ35及び36のそれぞれについてその変形する方向を軸方向としたとき、この軸方向に対して直交する直交軸どうしの交点が、地面よりも下の位置となるように配置される。
【0031】
前記リンク34の上端及び下端には、ピロボール34a、34bを介して、車幅方向に延びるアッパリンク37及びロアリンク38の一端が連結されている。このアッパリンク及びロアリンク38の他端は、図示しない車体側部材に回動自在に連結され、このアッパリンク37及びロアリンク38の延長線の交点が、反対側の車輪側に位置するように配置される。
【0032】
そして、タイヤに横力が作用することにより、ブッシュ35及び36が弾性変形することによって、車輪32のキャンバ角が変化し、また、アッパリンク37及びロアリンク38により車輪32を上下方向に移動させることができるようになっている。なお、図8において、39はブレーキキャリパ、40はホイールハブである。
このサスペンション装置では、2つのブッシュ35及び36の前記軸方向に対して直交する直交軸どうしの交点が、キャンバ角方向の瞬間回転中心Aとなる。また、アッパリンク37及びロアリンク38の延長線どうしの交点が、上下方向の瞬間回転中心Bとなる。
【0033】
したがって、この第2の実施の形態においては、ナックルアーム31は、車輪32を回転自在に保持し、ブッシュ35及び36とリンク34と共にキャンバ角方向の瞬間回転中心Aを決めていることから、ブッシュ35及び36、リンク34及びナックルアーム31は、前記図2に示す、キャンバ角方向の瞬間回転中心Aと車輪2とを結ぶ第1の仮想リンク11として等価的に置き換えることができる。また、アッパリンク37及びロアリンク38と、リンク34とにより、上下方向の瞬間回転中心Bを決めており、アッパリンク37及びロアリンク38は、リンク34を介して第1の仮想リンク11と連結されていると考えることができるから、前記アッパリンク37及びロアリンク38とリンク34とを、図2の前記キャンバ角方向の瞬間回転中心Aと上下方向の瞬間回転中心Bとに連結される第2の仮想リンク12に置き換えることができる。
【0034】
図8において、車輪32に横力が作用するとブッシュ35及び36が変形し、ナックルアーム31が、瞬間回転中心A回りに回動しキャンバ角が変化する。このとき、前記瞬間回転中心Aは、地面より下の位置に設定されているから、タイヤ接地点が横方向に移動することになる。したがって、このタイヤ接地点の旋回内側方向への横変位が生じないように、上下方向の瞬間回転中心Bを設定する。
【0035】
この第2の実施の形態においては、第1の仮想リンク11によるキャンバ角方向への傾斜がもたらすタイヤ接地点の旋回内側への横移動量Δyl1が、第2の仮想リンク12によるタイヤ接地点の旋回内側への横移動量Δyl2とほぼ等しくなるように、キャンバ角方向の瞬間回転中心Aに対して、上下方向の瞬間回転中心Bを設定する。具体的には、前記(1)式及び(3)式で定義されるタイヤ接地点の横移動量Δyl1及びΔyl2が、|Δyl1|=|Δyl2|となるように設定する。つまり次式(10)を満足するように、瞬間回転中心A及びBを設定する。
R=|l1・tanγ|/|cosα| ……(10)
【0036】
これによって、車輪32に横力が作用しキャンバ角変化が生じた場合であっても、横移動量Δyl1及びΔyl2は互いに打ち消し合うことになるから、図9に示すように、タイヤ接地点の横変位はほぼ零となる。したがって、タイヤ接地点が横移動することに伴って旋回を妨げる方向に横力が発生することを回避することができ、この横力の発生に起因して、車両の応答性が低下することを回避することができる。
また、上記第1の実施の形態で説明したように、リンク機構を用いて、第1の仮想リンク11及び第2の仮想リンク12を構成する場合に比較して、ブッシュ35、36を用いることによって、シンプルな構造で且つより安価に実現することができ、また、より軽量化も図ることができる。
【0037】
なお、この第2の実施の形態においては、図9に示すように、タイヤ接地点の横変位がほぼ零となるように、瞬間回転中心A及びBを設定する場合について説明したがこれに限るものではなく、上記第1の実施の形態と同様に、第2の仮想リンク12の回動によるタイヤ接地点の横移動量Δyl2の方が、第1の仮想リンク11の回動によるタイヤ接地点の横移動量Δyl1よりも大きくなるように設定し、タイヤ接地点が、定常状態よりも旋回外側に移動するように構成してもよく、このようにすることによって、車輪32に旋回内側方向への横力が作用するから、キャンバ角を付加したことに対する車両の応答性を向上させることが可能となる。
また、弾性部材としてブッシュを用いた場合について説明したがこれに限るものでなく、例えば、ばね部材等、弾性変形する部材であれば適用することができる。
【0038】
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。
この第3の実施の形態は、上記第1の実施の形態において、瞬間回転中心A及びBの設定方法が異なること以外は同様であるので同一部には同一符号を付与しその詳細な説明は省略する。
この第3の実施の形態においては、図10に示すように、第1の仮想リンク11によるキャンバ角方向への傾斜によって、車輪2の上部が旋回内側方向に移動する際のその横移動量Δyl1uが、第2の仮想リンク12によるタイヤ接地点の横移動量Δyl2とほぼ等しくなるように、瞬間回転中心Aに対する瞬間回転中心Bを設定する。
【0039】
つまり、前記(3)式で定義されるタイヤ接地点の横移動量Δyl2と、車輪2の上部位置の横移動量Δyl1uとが、|Δyl2|≒|Δyl1u|を満足するように、瞬間回転中心A及びBを設定する。
ここで、車輪2の上部位置の横移動量Δyl1uは、次式(11)で表すことができる。
Δyl1u=l1・tanγ+2r・sinγ ……(11)
なお、式(11)中のrは車輪2の半径である。
したがって、|Δyl1u|≒|Δyl2|を実現するためには、次式(12)を満足するように、瞬間回転中心A及びBを設定すればよい。
R=|l1・tanγ+2r・sinγ|/|cosα| ……(12)
【0040】
上記(12)式を満足するように瞬間回転中心A及びBを設定することによって、図11に示すように、キャンバ角の変化に伴い、タイヤ接地点が旋回内側方向に移動することを回避することができると共に、さらに、車輪2の上部位置が旋回内側方向に変化することを回避することができる。したがって、上記第1の実施の形態と同等の作用効果を得ることができると共に、この第3の実施の形態においては、図11に示すように車輪2の上部位置の変化を回避することができる。
【0041】
ここで、車輪2の上部位置が変化した場合、車輪2の上部位置が図11において車体1側に変化する場合には、タイヤハウスクリアランスが変化するため、場合によっては、従来の車体構造では、適用することができない場合がある。しかしながら、この第3の実施の形態では、上述のように、車輪2の上部位置の変化が生じないように瞬間回転中心A及びBを設定しているから、従来の車体構造においても何ら問題なく適用することができる。
【0042】
なお、上記第3の実施の形態においては、キャンバ角の変化に伴い、車輪2の上部位置が旋回内側方向に変化しないように、瞬間回転中心A及びBを設定するようにした場合について説明したが、これに限るものではなく、車輪2の上部位置が旋回内側方向に変化したときのタイヤハウスクリアランスが許容範囲内に収まれば、車輪2の上部位置が旋回内側方向に変化する場合であっても適用することができる。
また、上記第3の実施の形態においては、上記第1の実施の形態に適用した場合について説明したが、上記第2の実施の形態に適用することができることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の車両用サスペンション装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】第1の仮想リンク及び第2の仮想リンクを説明するための説明図である。
【図3】タイヤの横力が作用したときにタイヤに作用する力を説明するための説明図である。
【図4】本発明の動作を説明するための説明図である。
【図5】タイヤ接地点の横移動量Δyl1、Δyl2及びキャンバ角γの算出方法を説明するための説明図である。
【図6】仮想ばねKδを説明するための説明図である。
【図7】第1の実施の形態の動作を説明するための説明図である。
【図8】第2の実施の形態におけるサスペンション装置の一例を示す概略構成図である。
【図9】第2の実施の形態の動作を説明するための説明図である。
【図10】車輪上部位置の横移動量Δyl1uの算出方法を説明するための説明図である。
【図11】第3の実施の形態の動作を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1 車体
2 車輪
3 回転支持部材
4、5 リンク
6 リンク
7、8 リンク
10 仮想ばね
11 第1の仮想リンク
12 第2の仮想リンク
14 仮想ばね
31 ナックルアーム
32 車輪
33 ブレーキロータ
34 リンク
35、36 ブッシュ(弾性部材)




 

 


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