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発明の名称 ステアリング装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−22159(P2007−22159A)
公開日 平成19年2月1日(2007.2.1)
出願番号 特願2005−203455(P2005−203455)
出願日 平成17年7月12日(2005.7.12)
代理人 【識別番号】100119644
【弁理士】
【氏名又は名称】綾田 正道
発明者 森川 邦彦
要約 課題
アクチュエータの複雑な制御を用いることなく、大転舵やその場回転等のさまざまな操舵モードを可能にするステアリング装置を提供する。

解決手段
前後輪の左右車輪間にそれぞれ配置され、軸心回りに回転可能なステアリングシャフト4f,4rと、車輪のナックル回転軸に設けられた車輪操向歯車8f,8rと、ステアリングシャフト4f,4rの回転を車輪操向歯車8f,8rに伝達する第2交差軸歯車7f,7rと、運転者の操舵に応じて前輪側のステアリングシャフト4fを転舵させる操舵力アシストモータ15fおよび第1交差軸歯車3と、運転者の操舵に応じて後輪側のステアリングシャフト4rを転舵させる転舵モータ15rと、ステアリングシャフト4f,4rを左右2分割した間に介装され、分割された左右ステアリングシャフト(4fR,4fL),(4rR,4rL)の回転方向を正逆方向で切り替える正逆転切替機構5f,5rと、を備える。
特許請求の範囲
【請求項1】
前後輪の左右車輪間にそれぞれ配置され、軸心回りに回転可能なステアリングシャフトと、
車輪のナックル回転軸に設けられた車輪操向歯車と、
前記ステアリングシャフトの回転を前記車輪操向歯車に伝達する交差軸歯車と、
運転者の操舵に応じて前後ステアリングシャフトをそれぞれ回転させる転舵手段と、
前記ステアリングシャフトを左右2分割した間に介装され、分割された左右ステアリングシャフトの回転方向を正逆方向で切り替える正逆転切替手段と、
を備えることを特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のステアリング装置において、
前記正逆転切替手段をダブルピニオン式の遊星歯車とし、
この遊星歯車のリングギヤをハウジングに対して断接するロック機構と、サンギヤとキャリアを断接する一体回転クラッチと、を備え、
前記ロック機構および前記一体回転クラッチをそれぞれ電磁式ツーウェイクラッチで構成し、
前記分割された左右ステアリングシャフトの一方を前記サンギヤに連結し、他方を前記キャリアに連結したことを特徴とするステアリング装置。
【請求項3】
請求項2に記載のステアリング装置において、
前記サンギヤと前記リングギヤの歯数比を、0.5に設定したことを特徴とするステアリング装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のステアリング装置において、
前記ロック機構は、非通電時に前記リングギヤを前記ハウジングに固定するとともに、通電時にロック解除し、
前記一体回転クラッチは、非通電時に前記サンギヤと前記キャリアの締結を解放するとともに、通電時に締結することを特徴とするステアリング装置。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載のステアリング装置において、
前記ロック機構と前記一体回転クラッチは、1つの電磁石を共用することを特徴とするステアリング装置。
【請求項6】
請求項2ないし請求項5のいずれか1項に記載のステアリング装置において、
前記一体回転クラッチを、前記ステアリングシャフトの左右があらかじめ決められた位相で噛み合うドグクラッチとしたことを特徴とするステアリング装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のステアリング装置において、
前記車輪操向歯車は、旋回内外輪の切れ角を所定の関係に保つ非円形歯車列であることを特徴とするステアリング装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のステアリング装置において、
車両の操舵モードを設定する操舵モード設定手段と、
ハンドルの操舵角度と操舵速度を検出する操舵状態検出手段と、
設定された操舵モードと検出された操舵角度および操舵速度と車速とに応じて、前後輪の転舵手段を駆動制御する転舵制御手段と、
を備えることを特徴とするステアリング装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリング装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来のステアリング装置では、タイロッド長さ、左右タイロッド間距離あるいは車輪とナックルアームの成す角を変化させるアクチュエータを前後輪のステアリングリンケージに設けることで、通常走行、平行移動や小回りを可能としている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平4−262971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術にあっては、4つのアクチュエータを用いて前後輪のステアリングリンケージの特性を可変する構成であるため、アクチュエータの制御が複雑になるという問題があった。また、リンク機構を用いているため、左右輪逆位相操舵や車輪を90°転舵させる完全横移動は不可能であった。
【0004】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、アクチュエータの複雑な制御を用いることなく、大転舵やその場回転等のさまざまな操舵モードを可能にするステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明では、
前後輪の左右車輪間にそれぞれ配置され、軸心回りに回転可能なステアリングシャフトと、
車輪のナックル回転軸に設けられた車輪操向歯車と、
前記ステアリングシャフトの回転を前記車輪操向歯車に伝達する交差軸歯車と、
運転者の操舵に応じて前後ステアリングシャフトをそれぞれ回転させる転舵手段と、
前記ステアリングシャフトを左右2分割した間に介装され、分割された左右ステアリングシャフトの回転方向を正逆方向で切り替える正逆転切替手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明にあっては、ハンドルの回転が転舵手段によりステアリングシャフトの回転に変換され、ステアリングシャフトの回転が交差軸歯車と車輪操向歯車とによりナックルに伝達される。よって、舵角90°が可能となり、車両を横移動させる操舵モードを実現できる。また、正逆転切替手段の作動により左右ステアリングシャフトの回転方向を正逆一方に切り替えることができるため、左右輪逆位相操舵が可能となり、小回り性能を大幅に向上させることができる。すなわち、前後輪の転舵と正逆転切替手段の切り替えのみで、アクチュエータの複雑な制御を用いることなく、さまざまな操舵モードを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例1,2に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1のステアリング装置の全体構成図である。
実施例1のステアリング装置は、前輪ステアリング装置Aと、後輪ステアリング装置Bと、操舵モード設定スイッチ(操舵モード設定手段)20と、コントロールユニット(転舵制御手段)21と、アクチュエータドライバ22と、を備えている。
【0009】
[前輪ステアリング装置]
図2は、前輪ステアリング装置Aの構成図である。
ハンドル1が連結されたコラムシャフト上には、操舵角、操舵速度の検出手段である操舵角センサ(操舵状態検出手段)2fが配置されている。
【0010】
ハンドル1の回転トルクは操舵力アシストモータ15fで増幅され、第1交差軸歯車(転舵手段)3を介して車幅方向に配されたステアリングシャフト4fRに伝達されるとともに、ステアリングシャフト4fRの回転方向を正逆転方向で切り替える正逆転切替機構(正逆転切替手段)5fを介してステアリングシャフト4fRに伝達される。操舵力アシストモータ15fと第1交差軸歯車3により、転舵手段が構成される。
【0011】
左右のステアリングシャフト4fR,4fLに伝達された回転トルクは、それぞれ等速ジョイント6fR,6fLを介して第2交差軸歯車7fR,7fLに伝達され、非円形歯車列からなる車輪操向歯車8fR,8fLを駆動することにより、左右のナックル9fR,9fLが回転し、車輪10fR,10fLが操向する。
【0012】
車輪10fR,10fLには、駆動モータ14fR,14fLのモータ軸が連結されている。第2交差軸歯車7fR,7fLは、サスペンションサポート11fR,11fLとアッパアーム12fR,12fLにより車体に支持されている。また、駆動モータ14fR,14fLは、ロアアーム13fR,13fLにより車体に支持されている。
【0013】
[後輪ステアリング装置]
図3は、後輪ステアリング装置Bの構成図である。このステアリング装置は、転舵モータ(転舵手段)15rにより駆動される。転舵モータ15rには、転舵モータ15rの回転角を検出するモータ角度センサ2rが付設されている。
【0014】
他の構成は図2と同様であるが、図2における記号の添え字fをrに変更し、区別してある。
【0015】
[操舵モード設定スイッチ]
操舵モード設定スイッチ20は、運転者が通常走行、小回り、その場回転あるいは横移動のいずれかを選択するスイッチであり、操舵モード設定スイッチ20から出力されるモード選択信号は、コントロールユニット21へ出力される。
【0016】
[コントロールユニット]
コントロールユニット21は、操舵角センサ2f、モータ角度センサ2r、操舵モード設定スイッチ20からのモード選択信号、車速等の走行状態に応じて、目標アシスト量、左右輪の目標転舵方向、目標後輪転舵量をそれぞれ算出し、アクチュエータドライバ22へ出力する。
【0017】
アクチュエータドライバ22は、目標アシスト量に応じて操舵力アシストモータ15fを駆動し、運転者の操舵をアシストする。また、左右輪の目標転舵方向に応じて正逆転切替機構5f,5rを切り替える。また、目標後輪転舵量に応じて転舵モータ15rを駆動する。
【0018】
[正逆転切替機構]
図4(a)は、実施例1の正逆転切替機構5fの構成図である。なお、正逆転切替機構5rも同一構造であるため、説明を省略する。
実施例1の正逆転切替機構5fには、ダブルピニオン式遊星歯車が用いられており、サンギヤ51が右側のステアリングシャフト4fRに連結され、キャリア52が左側のステアリングシャフト4fLに連結されている。サンギヤ51とリングギヤ53の歯数比は、0.5に設定されている。なお、これらの結合は左右入れ替えてもよい。
【0019】
リングギヤ53は、電磁式ツーウェイクラッチからなるロック機構54によりケース(ハウジング)57に断接される。サンギヤ軸とキャリア軸すなわち左右のステアリングシャフト4fR,4fLは、電磁式ツーウェイクラッチからなる一体回転クラッチ55により断接される。
【0020】
図4(b)は、ロック機構54の構成を示す。リングギヤ53の外周が内輪転動面54aになっており、外輪はケース57に固定され、その転動面54bは正多角形となっており、カム面を形成している。内輪転動面54aと外輪転動面54bの間には複数個のローラ54cが、各カム面上にばね54gと保持器54dにより等間隔に保持されている。
【0021】
図4(a)に示した電磁石56の非通電時、保持器54dはフリーとなり、リングギヤ53の回転に保持器54dが連れ周り、カム面とローラ54cとの間の隙間がなくなり、リングギヤ53の回転はロックされる。左右いずれの方向の回転もロックすることができる。一方、通電時には電磁石56によって、保持器54dに連結されたアーマチュア54eがケース57に固定された外輪プレート54fに吸着され、保持器54dが中央位置で保持されるため、カム面とローラ54cとの間には隙間があり、リングギヤ53はどちらの方向にも自由に回転することができる。
【0022】
図4(c)は、一体回転クラッチ55の構成を示す。外輪55bがキャリア52に装着されている。内輪はサンギヤ51に連結されたステアリングシャフト4Rに装着されており、その転動面55aは正多角形でカム面を形成し、その各カム面上にローラ55cが保持器55dにより等間隔に保持されている。
【0023】
図4(a)に示した電磁石56が非通電時、内輪カム面55aに対してローラ55cは、スイッチばね55gにより中立位置に保持されるため、内輪は空転する。一方、通電時には電磁石56によって、保持器55dに連結されたアーマチュア55eがキャリアに固定されたロータ55fに吸着され、内輪の回転によりカム面とローラ55cとの間の隙間がなくなり、左右のステアリングシャフト4fR,4fLは、一体回転する。
【0024】
次に、作用を説明する。
[その場回転、横移動モード]
運転者が操舵モード設定スイッチ20により図5に示すその場回転あるいは図6に示す横移動を選択した場合、コントロールユニット21の指令により、アクチュエータドライバ22が前後輪の正逆転切替機構5f、5rと前輪の操舵力アシストモータ15fと後輪の転舵モータ15rの出力制御を行い、自動的の所定の角度まで車輪を操向する。なお、操舵モード設定スイッチ20はデフォルトで通常操舵モードとなるようにしておく。すなわち、エンジンスタート時は常に通常操舵モードとし、車輪が小回り、その場回転、横移動のまま放置されている場合には中立状態に戻す。
【0025】
[小回りモード]
運転者が図7に示す小回りモードを選択した場合には、後輪切れ角が前輪切れ角と大きさが同じで逆位相となるように後輪の転舵モータ15rを出力制御する。
【0026】
[通常操舵モード]
通常操舵モードでは、操舵角センサ2fにより検出される操舵角度と操舵速度および車速から前輪の操舵力アシストモータ15fを最適に制御する。また、操舵角度と操舵速度および車速に応じて後輪の切れ角を前輪と同位相方向にわずかに転舵することにより安定性のある操縦性を得、あるいは逆位相方向にわずかに転舵することによりアンダーステアを少なくすることもできる。図8は、後輪を前輪と同位相でわずかに操舵した例である。
【0027】
[車輪走行歯車の特性]
図9は、非円形歯車列からなる車輪走行歯車8fR,8fLのピッチ曲線を示す。第2交差軸歯車7fR,7fLのピッチ曲線は、中立点から外輪駆動側では比が一定の円弧となっており、内輪駆動側では前記外輪駆動側ピッチ曲線で決まる外輪切れ角βに対して所定の切れ角α0までは下記の式(1)
W/L=cotβ-cotα …(1)
すなわちアッカーマン・ジャントの式を満たし、それ以上の切れ角に対しては、下記の式(2)を満たすピッチ曲線からなっている。
2W/L=cotβ-cotα …(2)
ここで、Lは前後輪の車軸間距離を、Wは左右キングピン間距離を表す。
【0028】
図中、rii,roiは内輪駆動側側の入出力ギヤのピッチ径を表し、rio,rooは外輪駆動側のピッチ径を表し、これらの和は車輪操向歯車の軸間距離に等しい。
【0029】
中立点から外輪駆動側では比が一定の円弧となっており、内輪駆動側では前記外輪駆動側ピッチ曲線で決まる外輪切れ角βに対して所定の切れ角α0まではアッカーマン・ジャントの式(1)を満たし、それ以上の切れ角に対しては式(2)を満たすピッチ曲線からなっている。
【0030】
ここに、Lは前後輪の車軸間距離を、Wは左右キングピン間距離を表す。図中、rii,roiは内輪駆動側側の入出力ギヤのピッチ径を表し、rio,rooは外輪駆動側のピッチ径を表し、これらの和は車輪操向歯車の軸間距離に等しい。
【0031】
図10に示すように、内外輪の切れ角α,βの関係を示す所定の角度α00までは通常操舵モードで使用し、それ以上の領域は小回りモードで使用する。
【0032】
図11,12は、アッカーマン・ジャントの式の操舵機構の原理図である。通常走行時の2輪操舵モードでは、内外輪の切れ角α,βはこの関係を満たし、旋回中心は後輪車軸の延長線上に位置する。
【0033】
なお、小回りモード時の内外輪の切れ角の関係式(式(2))の原理は、図7に示したように、
OE/CE=cotα
OF/DF=cotβ
∴ 2W/L=cotβ-cotα
【0034】
[従来技術の問題点]
特開平4−262971号公報に記載の操舵装置では、タイロッド長さ、左右タイロッド間距離あるいは車輪とナックルアームの成す角を変化させるアクチュエータを備えたリンク機構を要するため、アクチュエータの制御が複雑になるという問題があった。さらに、通常のリンク機構を用いているため、実施例1に示した左右輪逆位相操舵(前後輪逆ハの字)によるその場回転や前後輪を完全に90°転舵させる横移動は不可能である。
【0035】
一方、各車輪に設けたモータで操舵モードに合わせて直接車輪を操舵する方法も知られているが、各車輪に車輪操舵装置が必要になり、構造が複雑になるばかりでなく、各輪の同期を取った複雑な制御も必要になるという問題があった。さらに、各車輪のステアリングシステムが機械的に連結されていないため、システムがフェールしたとき運転者が車輪を操舵できなくなり、安全上も問題があり、そのフェールセーフため非常な高価となる問題があった。
【0036】
[実施例1の操舵作用]
これに対し、実施例1のステアリング装置では、非円形歯車列からなる車輪走行歯車8fR,8fLのピッチ曲線を内外輪の切れ角が所定の関係(所定の切れ角α0までは式(1)、それ以上の角度では式(2))を満たすように設定し、後輪を転舵可能としたため、通常の2輪操舵や高速走行時の前後輪同位相操舵(平行移動)、低速時の大舵角前後輪逆位相操舵(小回り)が可能となるだけでなく、ステアリングシャフトの正逆転切換機構5f,5rを備えるため、左右輪の逆位相操舵が可能となり、前後輪逆ハの字によるその場回転や完全横移動も実現できる。
【0037】
これらさまざまな操舵モードは、ハンドル1の操舵角度や操舵速度および車速に対応して、前輪の操舵力アシストモータ15fと後輪の転舵モータ15rの最適な作動量が算出され、それに基づいて各モータを制御することで実行される。
【0038】
また、実施例1では、正逆転切替機構5f,5rにはダブルピニオン式遊星歯車を用い、一方の車輪につながるステアリングシャフトとサンギヤ51を連結し、他の車輪につながるステアリングシャフトをキャリア52に連結し、リングギヤ53をケース57に断接するロック機構54とサンギヤ軸とキャリア軸を断接する一体回転クラッチ55で構成した。
【0039】
ダブルピニオン式遊星歯車はサンギヤ51とリングギヤ53の歯数比を0.5とすることで、サンギヤ入力、キャリア出力、リングギヤ固定の条件で運転すれば、同じ大きさの回転角で方向が逆の回転を取り出すことができる。図1から図3に示したステアリング機構では、正逆転切換機構5f,5rを逆転モードで作動させたとき、左右輪は同位相で操向し、一体回転モードで作動させると逆位相で操向する。すなわち、通常の2輪操舵や高速走行時の前後輪同位相操舵(平行移動)や低速時の大舵角前後輪逆位相操舵(小回り)では、正逆転切換機構5f,5rを逆転モードで、前後輪逆ハの字によるその場回転や完全横移動操舵では正逆転切換機構5f,5rを一体回転モードで作動させる。
【0040】
実施例1の正逆転切替機構5f,5rでは、ロック機構54は非通電時にロックし通電時に回転可能とし、一方、一体回転クラッチ55は非通電時に回転可能とし、通電時にトルク伝達するようにしたことにより、非通電時に通常の2輪操舵が可能になり、通常操舵モードは正逆転切替機構5f,5rのシステム異常の影響を受けずに作動することができる。
【0041】
また、ハンドル1から車輪走行歯車8fR,8fLまで機械的に連結した構造としたため、ステアリングシステムの異常時にも運転者が直接車輪を操舵することができ、複雑な機構や制御を用いることなくフェールセーフ機能を持たせることができる。
【0042】
さらに、ロック機構54と一体回転クラッチ55の電磁石56を共通としたことにより、システムの簡素化を図るとともに、ロック機構54と一体回転クラッチ55が同時に締結することを防止するインターロック機構を持たせることができる。
【0043】
次に、効果を説明する。
実施例1のステアリング装置にあっては、以下に列挙する効果が得られる。
【0044】
(1) 前後輪の左右車輪間にそれぞれ配置され、軸心回りに回転可能なステアリングシャフト4f,4rと、車輪のナックル回転軸に設けられた車輪操向歯車8f,8rと、ステアリングシャフト4f,4rの回転を車輪操向歯車8f,8rに伝達する第2交差軸歯車7f,7rと、運転者の操舵に応じて前輪側のステアリングシャフト4fを転舵させる操舵力アシストモータ15fおよび第1交差軸歯車3と、運転者の操舵に応じて後輪側のステアリングシャフト4rを転舵させる転舵モータ15rと、ステアリングシャフト4f,4rを左右2分割した間に介装され、分割された左右ステアリングシャフト(4fR,4fL),(4rR,4rL)の回転方向を正逆方向で切り替える正逆転切替機構5f,5rと、を備える。よって、通常の2輪操舵や高速走行時の前後輪同位相操舵、低速時の大舵角前後輪逆位相操舵(小回り)が可能となるだけでなく、左右輪逆位相操舵(前後輪逆ハの字)によるその場回転や全車輪を90°とする完全横移動が可能であり、アクチュエータの複雑な制御を用いることなく、さまざまな操舵モードを実現できる。
【0045】
(2) 正逆転切替機構5f,5rをダブルピニオン式の遊星歯車とし、この遊星歯車のリングギヤ53をケース57に対して断接するロック機構54と、サンギヤ51とキャリア52を断接する一体回転クラッチ55と、を備え、ロック機構54および一体回転クラッチ55をそれぞれ電磁式ツーウェイクラッチで構成し、左右ステアリングシャフトの一方をサンギヤ51に連結し、他方をキャリア52に連結した。よって、シンプルな構成で正逆転切替手段を構成できる。
【0046】
(3) サンギヤ51とリングギヤ53の歯数比を、0.5に設定したため、左右同じ大きさの回転角で方向が逆の回転を取り出すことができ、左右輪の切れ角を同一とすることができる。
【0047】
(4) ロック機構54は、非通電時にリングギヤ53をケース57に固定するとともに、通電時にロック解除し、一体回転クラッチ55は、非通電時にサンギヤ51とキャリア52の締結を解放するとともに、通電時に締結する。よって、非通電時に通常の2輪操舵が可能となり、通常操舵モードは正逆転切替機構5f,5rのシステム異常の影響を受けずに作動することができる。また、ハンドル1から車輪操向歯車(8fR,8fL)まで機械的に連結した構成としたため、ステアリングシステムの異常時にも運転者が直接車輪を操舵することができ、複雑な機構や制御を用いることなくフェールセーフ機能を持たせることができる。
【0048】
(5) ロック機構54と一体回転クラッチ55は、1つの電磁石56を共用するため、システムの簡素化を図ることができるとともに、ロック機構54と一体回転クラッチ55とが同時に締結するのを防止するインターロック機構を持たせることができる。
【0049】
(6) 車輪操向歯車(8fR,8fL),(8rR,8rL)は、旋回内外輪の切れ角の関係を、所定の切れ角α0まではアッカーマン・ジャントの式(1)を満たし、それ以上では式(2)を満たすように設定された非円形歯車列である。よって、小舵角時には前後輪共に横滑りのないアッカーマンステアリングを実現できる。また、大舵角時には旋回中心が前輪車軸と後輪車軸の中間線上に位置する最小の回転半径を得ることができ、小回り性能を大幅に向上させることができる。
【0050】
(7) 車両の操舵モードを設定する操舵モード設定スイッチ20と、ハンドル1の操舵角度と操舵速度を検出する操舵角センサ2fと、設定された操舵モードと検出された操舵角度および操舵速度と車速とに応じて、操舵力アシストモータ15fと転舵モータ15rを駆動制御するコントロールユニット21と、を備える。よって、設定された操舵モードに基づき、ハンドル1の操舵角や操舵角度および車速に対応した最適な前後輪転舵量を設定できる。
【実施例2】
【0051】
実施例2は、正逆転切替機構の一体回転クラッチをドグクラッチ(噛み合いクラッチ)とした例である。
図13は、実施例2の正逆転切替機構の構成図である。なお、図4に示した実施例1と同一の構成には、同一符号を付して説明を省略する。
【0052】
実施例2の正逆転切替機構55は、サンギヤ51に連結されたステアリングシャフト4fR上に、側面に突起55k(図13(b))を持ったクラッチギヤ55hがスプライン等で軸方向移動可能に装着されている。一方、キャリアプレート55iには前記突起55kに嵌合する溝55m(図13(c))が設けられている。アクチュエータ58とレバー55jによりクラッチギヤ55hがキャリアプレート55iに断接される構造となっている。
【0053】
この一体回転クラッチ55の締結状態で、左右輪の中立位置およびトー調整をしておくことにより、クラッチの断接による中立位置のずれやトーの狂いが生じることがなく、操舵性能の悪化やタイヤの偏磨耗を防止することができる。
【0054】
次に、効果を説明する。
実施例2のステアリング装置にあっては、実施例1の効果(1)〜(7)に加え、以下の効果が得られる。
【0055】
(8) 一体回転クラッチ55を、サンギヤ側ステアリングシャフト(4fR)とキャリア側ステアリングシャフト(4fL)とが決まった位相(180°)で噛み合うドグクラッチとしたことにより、左右輪の位相のずれを完全に除去することができる。
【0056】
(他の実施例)
以上、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は、実施例1,2に限定されるものではなく、例えば、本発明のステアリング装置は、電動車両以外の車両にも適用できる。
【0057】
また、実施例1,2では、ハンドルと前輪側のステアリングシャフトとが第1交差軸歯車を介して機械的に連結されたステアリング装置を示したが、本発明は、ハンドルとステアリングシャフトとが機械的に切り離された、いわゆるステア・バイ・ワイヤシステムにも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施例1のステアリング装置の全体構成図である。
【図2】実施例1の前輪ステアリング装置Aの構成図である。
【図3】実施例1の後輪ステアリング装置Bの構成図である。
【図4】実施例1の正逆転切替機構5fの構成図である。
【図5】実施例1のステアリング装置によるその場回転モードの操舵状態図である。
【図6】実施例1のステアリング装置による横移動モードの操舵状態図である。
【図7】実施例1のステアリング装置による小回りモードの操舵状態図である。
【図8】実施例1のステアリング装置による後輪同位相モードの操舵状態図である。
【図9】実施例1のステアリング装置に採用されている非円形歯車列のピッチ曲線を示す図である。
【図10】実施例1の内輪切れ角と外輪切れ角との関係を示す図である。
【図11】実施例1のステアリング装置による通常モードの操舵状態図である。
【図12】アッカーマン・ジャントの式の操舵機構の原理を示す内輪切れ角と外輪切れ角との関係を示す図である。
【図13】実施例2の正逆転切替機構の一体回転クラッチの構成図である。
【符号の説明】
【0059】
A 前輪ステアリング装置
B 後輪ステアリング装置
1 ハンドル
3 第1交差軸歯車
4fR,4fL ステアリングシャフト
5f,5r 正逆転切替機構
7fR,7fL 第2交差軸歯車
8fR,8fL 車輪走行歯車
9fR,9fL ナックル
10fR,10fL 車輪
11fR,11fL サスペンションサポート
12fR,12fL アッパアーム
13fR,13fL ロアアーム
14fR,14fL 駆動モータ
15f 操舵力アシストモータ
20 操舵モード設定スイッチ
21 コントロールユニット
22 アクチュエータドライバ
51 サンギヤ
52 キャリア
53 リングギヤ
54 ロック機構
55 一体回転クラッチ
56 電磁石
57 ケース
58 アクチュエータ




 

 


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