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発明の名称 ハイブリッド車のエンジン始動制御装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−15565(P2007−15565A)
公開日 平成19年1月25日(2007.1.25)
出願番号 特願2005−199485(P2005−199485)
出願日 平成17年7月8日(2005.7.8)
代理人 【識別番号】100119644
【弁理士】
【氏名又は名称】綾田 正道
発明者 恒吉 孝 / 中島 祐樹
要約 課題
エンジン始動時間を犠牲にすることなく、ファイアリング開始直後に発生するエンジンの余剰トルクによる突き上げショックの発生を回避することができるハイブリッド車のエンジン始動制御装置を提供すること。

解決手段
動力源としてエンジンEと少なくとも1つのモータを有し、前記エンジンEと前記モータとの間にエンジンクラッチECを介装し、前記モータをスタータモータとし、クラッチ締結による押しがけで前記エンジンEの始動を行うエンジン始動制御手段を備えたハイブリッド車のエンジン始動制御装置において、前記エンジン始動制御手段は、エンジン始動時、押しがけによる前記エンジンクラッチECの締結中にファイアリングを開始すると、モータトルクを低減する手段とした。
特許請求の範囲
【請求項1】
動力源としてエンジンと少なくとも1つのモータを有し、前記エンジンと前記モータとの間にエンジンクラッチを介装し、前記モータをスタータモータとし、クラッチ締結による押しがけで前記エンジンの始動を行うエンジン始動制御手段を備えたハイブリッド車のエンジン始動制御装置において、
前記エンジン始動制御手段は、エンジン始動時、押しがけによる前記エンジンクラッチの締結中にファイアリングを開始すると、モータトルクを低減することを特徴とするハイブリッド車のエンジン始動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたハイブリッド車のエンジン始動制御装置において、
前記エンジン始動制御手段は、エンジン始動時、前記エンジンクラッチの締結力をエンジンのクランキングからファイアリングに至るまで徐々に増大させるランプ制御とし、前記エンジンクラッチの締結中にファイアリングを開始した後、エンジン回転数がクラッチ回転数に近づき両回転数の差が設定回転数以下となった時点でモータトルクを低減することを特徴とするハイブリッド車のエンジン始動制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載されたハイブリッド車のエンジン始動制御装置において、
前記エンジン始動制御手段は、エンジン始動時、前記エンジンクラッチの締結力をエンジンのクランキング域では徐々に増大させるランプ制御とし、クランキング域からファイアリング域へ移行すると一時的に低下させ、その後、再締結させる制御とし、前記エンジンクラッチの再締結を開始する時点でモータトルクを低減することを特徴とするハイブリッド車のエンジン始動制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載されたハイブリッド車のエンジン始動制御装置において、
前記エンジン始動制御手段は、エンジン始動時、前記エンジンクラッチの締結力をエンジンのクランキング域では徐々に増大させるランプ制御とし、クランキング域からファイアリング域へ移行すると一時的に低下させ、その後、再締結させる制御とし、前記エンジンクラッチの再締結を開始する時点でモータトルクを低減すると共にエンジンの点火時期をリタードすることを特徴とするハイブリッド車のエンジン始動制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載されたハイブリッド車のエンジン始動制御装置において、
前記エンジン始動制御手段は、前記モータによる補償トルクを、モータトルクの低減開始時点にて推定されるエンジン余剰トルクに基づき計算される値を初期値とし、モータトルクの低減開始時点から所定時間にて減衰させることを特徴とするハイブリッド車のエンジン始動制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載されたハイブリッド車のエンジン始動制御装置において、
前記エンジン始動制御手段は、エンジン始動時のエンジン余剰トルクを、エンジンの吸入空気量、空燃比、点火時期に基づいて推定することを特徴とするハイブリッド車のエンジン始動制御装置。
【請求項7】
請求項5に記載されたハイブリッド車のエンジン始動制御装置において、
前記エンジン始動制御手段は、エンジン始動時のエンジン余剰トルクを、エンジンの停止時間及びエンジンの起動後からの時間に基づいて推定することを特徴とするハイブリッド車のエンジン始動制御装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載されたハイブリッド車のエンジン始動制御装置において、
前記動力源として、エンジンと第1モータジェネレータと第2モータジェネレータとを有し、これらの動力源と出力部材とが連結される駆動力合成変速機を備え、
前記駆動力合成変速機は、共線図上に4つ以上の回転要素が配列され、各回転要素のうちの内側に配列される2つの回転要素の一方にエンジンクラッチを介してエンジンからの入力を割り当て、他方に駆動系統への出力部材を割り当てると共に、前記内側の回転要素の両外側に配列される2つの回転要素にそれぞれ第1モータジェネレータと第2モータジェネレータとを割り当てた差動装置を有することを特徴とするハイブリッド車のエンジン始動制御装置。
【請求項9】
動力源としてエンジンと少なくとも1つのモータを有し、前記エンジンと前記モータとの間にエンジンクラッチを介装し、前記モータをスタータモータとし、クラッチ締結による押しがけで前記エンジンの始動を行うハイブリッド車において、
エンジン始動時、押しがけによるエンジンクラッチの締結中にファイアリングを開始すると、ファイアリングの開始直後に発生するエンジンの余剰トルクを吸収するようにモータトルクを低減することを特徴とするハイブリッド車のエンジン始動制御装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源としてエンジンと少なくとも1つのモータを有し、モータをスタータモータとし、エンジンクラッチの締結による押しがけでエンジンの始動を行うハイブリッド車のエンジン始動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンとモータとの間にクラッチを配し、クラッチ締結による押しがけでエンジン始動を行うシステムにおいて、クラッチ締結に伴う引き摺りトルクをモータで補償するハイブリッド車の駆動制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−349310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来のエンジン始動制御方式にあっては、クラッチが完全締結した時点でモータ補償を終了させるため、ファイアリング開始直後に発生するエンジンの余剰トルクによる突き上げショックが発生する、という問題があった。
【0004】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、エンジン始動時間を犠牲にすることなく、ファイアリング開始直後に発生するエンジンの余剰トルクによる突き上げショックの発生を回避することができるハイブリッド車のエンジン始動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、動力源としてエンジンと少なくとも1つのモータを有し、前記エンジンと前記モータとの間にエンジンクラッチを介装し、前記モータをスタータモータとし、クラッチ締結による押しがけで前記エンジンの始動を行うエンジン始動制御手段を備えたハイブリッド車のエンジン始動制御装置において、
前記エンジン始動制御手段は、エンジン始動時、押しがけによる前記エンジンクラッチの締結中にファイアリングを開始すると、モータトルクを低減することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
よって、本発明のハイブリッド車のエンジン始動制御装置にあっては、エンジン始動時、エンジン始動制御手段において、押しがけによるエンジンクラッチの締結中にファイアリングを開始すると、モータトルクが低減される。すなわち、ファイアリング開始直後に発生するエンジンの余剰トルクに対し、エンジン制御やクラッチ制御により余剰トルクを抑えるようにした場合には、エンジン始動の終了タイミングが遅くなり、エンジン始動時間が長くなるのに対し、少なくともエンジン制御を行わず、モータトルクの低減制御により対応するようにしているため、エンジン始動時間を犠牲にすることがない。この結果、エンジン始動時間を犠牲にすることなく、ファイアリング開始直後に発生するエンジンの余剰トルクによる突き上げショックの発生を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明のハイブリッド車のエンジン始動制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1〜実施例3に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
まず、ハイブリッド車の駆動系構成を説明する。
図1は実施例1のエンジン始動制御装置が適用されたハイブリッド車の駆動系を示す全体システム図である。実施例1におけるハイブリッド車の駆動系は、図1に示すように、エンジンEと、第1モータジェネレータMG1と、第2モータジェネレータMG2と、出力ギヤOG(出力部材)と、駆動力合成変速機TMと、を有する。
【0009】
前記エンジンEは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、後述するエンジンコントローラ1からの制御指令に基づいて、スロットルバルブのバルブ開度等が制御される。
【0010】
前記第1モータジェネレータMG1と第2モータジェネレータMG2は、ロータに永久磁石を埋設しステータにコイルが巻き付けられた同期型モータジェネレータであり、後述するモータコントローラ2からの制御指令に基づいて、インバータ3により作り出された三相交流を印加することによりそれぞれ独立に制御される。実施例1では、ステータSの内側にインナーロータIRを配置し、ステータSの外側にアウターロータORを配置し、ステータSのコイルに2つの駆動電流を組み合わせた複合電流を流すことで、外観上は1つのモータでありながら、独立した第1モータジェネレータMG1(アウターロータORとステータS)と第2モータジェネレータMG2(インナーロータIRとステータS)の機能を持たせた構成を採用している。
【0011】
前記駆動力合成変速機TMは、ラビニョウ型遊星歯車列PGR(差動装置)と、ローブレーキLBと、を有し、前記ラビニョウ型遊星歯車列PGRは、第1サンギヤS1と、第1ピニオンP1と、第1リングギヤR1と、第2サンギヤS2と、第2ピニオンP2と、第2リングギヤR2と、互いに噛み合う第1ピニオンP1と第2ピニオンP2とを支持する共通キャリアPCと、によって構成されている。つまり、ラビニョウ型遊星歯車PGRは、第1サンギヤS1と、第1リングギヤR1と、第2サンギヤS2と、第2リングギヤR2と、共通キャリアPCと、の5つの回転要素を有する。この5つの回転要素に対する入出力部材の連結関係について説明する。
【0012】
前記第1サンギヤS1には、第1モータジェネレータMG1が連結されている。前記第1リングギヤR1は、ローブレーキLBを介してケースに固定可能に設けられている。前記第2サンギヤS2には、第2モータジェネレータMG2が連結されている。前記第2リングギヤR2には、エンジンクラッチECを介してエンジンEが連結されている。前記共通キャリアPCには、出力ギヤOGが直結されている。なお、出力ギヤOGからは、図外のディファレンシャルやドライブシャフトを介して左右の駆動輪に駆動力が伝達される。
【0013】
上記連結関係により、図2に示す共線図上において、第1モータジェネレータMG1(第1サンギヤS1)、エンジンE(第2リングギヤR2)、出力ギヤOG(共通キャリアPC)、ローブレーキLB(第1リングギヤR1)、第2モータジェネレータMG2(第2サンギヤS2)の順に配列され、ラビニョウ型遊星歯車列PGRの動作(各回転要素の速度関係)を簡易的に表せる剛体レバーモデルを導入することができる。
ここで、「共線図」とは、差動歯車のギヤ比を考える場合、式により求める方法に代え、より簡単で分かりやすい作図により求める方法で用いられる速度線図であり、縦軸に各回転要素の回転数(回転速度)をとり、横軸に各回転要素をとり、各回転要素の間隔をサンギヤとリングギヤの歯数比に基づく共線図レバー比になるように配置したものである。
【0014】
前記エンジンクラッチECとローブレーキLBは、後述する油圧制御装置5からの油圧により締結される多板摩擦クラッチと多板摩擦ブレーキであり、エンジンクラッチECは、図2の共線図上において、エンジンEと共に第2リングギヤR2の回転速度軸と一致する位置に配置され、ローブレーキLBは、図2の共線図上において、第1リングギヤR1の回転速度軸(出力ギヤOGの回転速度軸と第2サンギヤS2の回転速度軸との間の位置)に配置される。
【0015】
次に、ハイブリッド車の制御系を説明する。
実施例1におけるハイブリッド車の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、インバータ3と、バッテリ4と、油圧制御装置5と、統合コントローラ6と、アクセル開度センサ7と、車速センサ8と、エンジン回転数センサ9と、第1モータジェネレータ回転数センサ10と、第2モータジェネレータ回転数センサ11と、第2リングギヤ回転数センサ12と、車輪速センサ13と、を有して構成されている。
【0016】
前記エンジンコントローラ1は、アクセル開度センサ7からのアクセル開度APとエンジン回転数センサ9からのエンジン回転数Neを入力する統合コントローラ6からの目標エンジントルク指令等に応じ、エンジン動作点(Ne,Te)を制御する指令を、例えば、図外のスロットルバルブアクチュエータへ出力する。
【0017】
前記モータコントローラ2は、レゾルバによる両モータジェネレータ回転数センサ10,11からのモータジェネレータ回転数N1,N2を入力する統合コントローラ6からの目標モータジェネレータトルク指令等に応じ、第1モータジェネレータMG1のモータ動作点(N1,T1)と、第2モータジェネレータMG2のモータ動作点(N2,T2)と、をそれぞれ独立に制御する指令をインバータ3へ出力する。なお、このモータコントローラ2からは、バッテリ4の充電状態をあらわすバッテリS.O.Cの情報が統合コントローラ6に対して出力される。
【0018】
前記インバータ3は、前記第1モータジェネレータMG1と第2モータジェネレータMG2とで共有するステータSのコイルに接続され、モータコントローラ2からの指令により独立した三相交流を設定し、これを複合させた駆動電流を作り出す。このインバータ3には、力行時に放電し回生時に充電するバッテリ4が接続されている。
【0019】
前記油圧制御装置5は、統合コントローラ6からの油圧指令を受け、エンジンクラッチECと、ローブレーキLBと、の締結油圧制御及び開放油圧制御を行う。この締結油圧制御及び開放油圧制御には、滑り締結制御や滑り開放制御による半クラッチ制御も含む。
【0020】
前記統合コントローラ6は、アクセル開度センサ7からのアクセル開度APと、車速センサ8からの車速VSPと、エンジン回転数センサ9からのエンジン回転数Neと、第1モータジェネレータ回転数センサ10からの第1モータジェネレータ回転数N1と、第2モータジェネレータ回転数センサ11からの第2モータジェネレータ回転数N2と、第2リングギヤ回転数センサ12からの入力回転数Ni(以下、「クラッチ回転数Ni」という)と、車輪速センサ13からの車輪速情報等の情報を入力し、所定の演算処理を行う。そして、エンジンコントローラ1、モータコントローラ2、油圧制御装置5に対し演算処理結果にしたがって制御指令を出力する。
【0021】
なお、統合コントローラ6とエンジンコントローラ1、および、統合コントローラ6とモータコントローラ2とは、情報交換のためにそれぞれ双方向通信線14、15により接続されている。
【0022】
次に、ハイブリッド車の走行モードについて説明する。
実施例1のハイブリッド車における走行モードとしては、電気自動車無段変速モード(以下、「EVモード」という。)と、電気自動車固定変速モード(以下、「EV-LBモード」という。)と、ハイブリッド車固定変速モード(以下、「LBモード」という。)と、ハイブリッド車無段変速モード(以下、「E-iVTモード」という。)と、を有する。
【0023】
前記「EVモード」は、図2(a)の共線図に示すように、二つのモータジェネレータMG1.MG2のみで走行する無段変速モードであり、エンジンEは停止でエンジンクラッチECは開放である。
【0024】
前記「EV-LBモード」は、図2(b)の共線図に示すように、ローブレーキLBを締結した状態で、二つのモータジェネレータMG1,MG2のみで走行する固定変速モードであり、エンジンEは停止でエンジンクラッチECは開放である。第1モータジェネレータMG1から出力Outputへの減速比、及び、第2モータジェネレータMG2から出力Outputへの減速比が大きいので駆動力が大きく出るモードである。
【0025】
前記「LBモード」は、図2(c)の共線図に示すように、ローブレーキLBを締結した状態で、エンジンEとモータジェネレータMG1,MG2で走行する固定変速モードであり、エンジンEは運転でエンジンクラッチECは締結である。エンジンEとモータジェネレータMG1,MG2から出力Outputへの減速比が大きいので駆動力が大きく出るモードである。
【0026】
前記「E-iVTモード」は、図2(d)の共線図に示すように、エンジンEとモータジェネレータMG1,MG2で走行する無段変速モードであり、エンジンEは運転でエンジンクラッチECは締結である。
【0027】
そして、前記4つの走行モードのモード遷移制御は、統合コントローラ6により行われる。すなわち、統合コントローラ6には、要求駆動力Fdrv(アクセル開度APにより求められる。)と車速VSPとバッテリS.O.Cによる三次元空間に、図3に示すような前記4つの走行モードを割り振った走行モードマップが予め設定されていて、車両の停止時や走行時には、要求駆動力Fdrvと車速VSPとバッテリS.O.Cの各検知値により走行モードマップが検索され、要求駆動力Fdrvと車速VSPにより決まる車両動作点やバッテリ充電量に応じて最適な走行モードが選択される。なお、図3は三次元走行モードマップをバッテリS.O.Cが充分な容量域のある値で切り取ることにより、要求駆動力Fdrvと車速VSPとの二次元によりあらわした走行モードマップの一例である。
【0028】
前記走行モードマップの選択により、「EVモード」と「EV-LBモード」との間においてモード遷移を行う場合、図4に示すように、ローブレーキLBの締結・開放が行われる。「E-iVTモード」と「LBモード」との間においてモード遷移を行う場合、図4に示すように、ローブレーキLBの締結・開放が行われる。また、「EVモード」と「E-iVTモード」との間においてモード遷移を行う場合、図4に示すように、エンジンEの始動・停止と共にエンジンクラッチECの締結・開放が行われる。「EV-LBモード」と「LBモード」との間においてモード遷移を行う場合、図4に示すように、エンジンEの始動・停止と共にエンジンクラッチECの締結・開放が行われる。
【0029】
次に、作用を説明する。
[エンジン始動制御処理]
図5は実施例1の統合コントローラ6にて実行されるエンジン始動制御処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する(エンジン始動制御手段)。
【0030】
ステップS1では、例えば、「EVモード」から「E-iVTモード」へのモード遷移時等において、停止していたエンジンEを始動する指令が出されると、エンジンクラッチECの締結処理が開始され、ステップS2へ移行する。
ここで、エンジンクラッチECの締結処理は、図6に示すように、クラッチプレート間のクリアランスを詰めるよう一時的にクラッチ油圧指令値を高める油圧指令フェーズ1と、一時的にクラッチ油圧指令値を高めた後に一時的にクラッチ油圧指令値を低くしクラッチ締結の準備体制を整える油圧指令フェーズ2と、クラッチ油圧指令値を最大指令値まで徐々に増大させるランプ制御による油圧指令フェーズ3と、により実行される。
【0031】
ステップS2では、ステップS1でのエンジンクラッチECの締結処理に続き、エンジン回転数センサ9からのエンジン回転数Neがファイアリング開始回転数Ne1以上であるか否かを判断し、YESの場合はステップS3へ移行し、NOの場合はステップS2のエンジン回転数判断を繰り返す。
ここで、「ファイアリング開始回転数Ne1」は、各エンジンのタイプ毎に、予め行われた実験結果等に基づいて決定される。
【0032】
ステップS3では、ステップS2でのNe>Ne1との判断に続き、エンジンコントローラ1に対しファイアリング要求を出し、ステップS4へ移行する。
【0033】
ステップS4では、ステップS3でのファイアリング要求に続き、第2リングギヤ回転数センサ12からのクラッチ回転数Niとエンジン回転数センサ9からのエンジン回転数Neとの回転数差が設定回転数ΔN1以下か否かを判断し、YESの場合はステップS5へ移行し、NOの場合はステップS4の回転数差判断を繰り返す。
ここで、「設定回転数ΔN1」は、エンジンEのファイアリング開始直後に発生しようとするエンジンEの余剰トルクによる突き上げショックの開始タイミングとほぼ同期するように決める。
【0034】
ステップS5では、ステップS4でのNi−Ne≦ΔN1であるとの判断に続き、制御開始時の第1モータジェネレータMG1のトルク低減量であるモータ補償トルク初期値と、制御開始からの時間の経過にしたがってモータトルクを復帰させる減衰勾配を決める時点数とを設定し、モータコントローラ2に対しモータ補償トルク制御指令を出力し、リターンへ移行する。
ここで、前記第1モータジェネレータMG1による補償トルクは、モータトルクの低減開始時点にて推定されるエンジン余剰トルクに基づき計算される値を初期値とし、モータトルクの低減開始時点から所定時間にて減衰させる。そして、エンジン始動時のエンジン余剰トルクは、エンジンEの吸入空気量、空燃比、点火時期等に基づいて推定したり、エンジンEの停止時間及びエンジンEの起動後からの時間に基づいて推定する。
【0035】
[エンジン始動制御作用]
実施例1のハイブリッド車のエンジン始動制御装置では、第1モータジェネレータMG1をスタータモータとし、エンジンクラッチECの締結による押しがけでエンジンEの始動を行うハイブリッド車において、エンジン始動時、押しがけによるエンジンクラッチECの締結中にファイアリングを開始すると、ファイアリングの開始直後に発生するエンジンEの余剰トルクを吸収するように第1モータジェネレータMG1のモータトルクを低減するようにした。
【0036】
すなわち、例えば、「EVモード」から「E-iVTモード」へのモード遷移時等において、停止していたエンジンEを始動する指令が出されると、図5のフローチャートにおいて、ステップS1において、エンジンクラッチECの締結処理が開始され、ステップS2において、エンジン回転数Neがファイアリング開始回転数Ne1以上であるか否かが判断される。そして、エンジン回転数Neがファイアリング開始回転数Ne1以上になると、ステップS3へ進み、ステップS3において、ファイアリング要求を出し、さらに、次のステップS4において、クラッチ回転数Niとエンジン回転数Neとの回転数差が設定回転数ΔN1以下か否かが判断される。そして、Ni−Ne≦ΔN1であると判断されると、ステップS5へ進み、ステップS5において、モータ補償トルク初期値と時点数とを設定し、モータコントローラ2に対しモータ補償トルク制御指令を出力し、ファイアリングの開始直後に発生するエンジンEの余剰トルクを吸収するように第1モータジェネレータMG1のモータトルクが低減される。
【0037】
上記エンジン始動時の動作を、クラッチ油圧指令値・クラッチ回転数・エンジン回転数・エンジン推定トルク・モータトルク指令値・油圧指令フェーズ・エンジンモードを示す図6のタイムチャートにより説明する。
時刻t0からエンジンEの始動制御が開始され、時刻t0から時刻t1までは油圧指令フェーズ1であり、クラッチプレート間のクリアランスを詰めるよう一時的にクラッチ油圧指令値が高められる。そして、時刻t1から時刻t2までは油圧指令フェーズ2により、一時的にクラッチ油圧指令値を低くしクラッチ締結の準備体制を整えられ、さらに、時刻t2以降は油圧指令フェーズ3により、クラッチ油圧指令値を最大指令値まで徐々に増大させるランプ制御が実行される。
【0038】
エンジンクラッチECの締結により、時刻t3になると停止しているエンジンEが回転を開始し、エンジンEの回転数は、その後、徐々に上昇する。そして、時刻t4にてエンジン回転数Neがファイアリング開始回転数Ne1以上になると、ファイアリング要求が出されてエンジンEが自律回転へ移行する。すなわち、時刻t0から時刻t4まではクランキング状態であり、エンジン回転数Neが上昇する時刻t3から時刻t4までは、エンジンEが第1モータジェネレータMG1に回されている状態にあるため、エンジン推定トルクは負のトルクとなる。
【0039】
しかし、時刻t4にてファイアリングが開始されると、エンジン推定トルクは負から正へと移行し、ファイアリングの開始直後の時刻t5において、エンジン推定トルクは一気に立ち上がる(初期の余剰トルク)。そして、時刻t5の直後の時刻t6において、クラッチ回転数Niとエンジン回転数Neとの回転数差が設定回転数ΔN1以下になると、モータ補償トルク初期値によるモータトルク指令値が出力される。そして、時刻t6からモータトルク指令値がゼロとなる時刻t7までは、エンジンEの余剰トルクの減衰に対応するように徐々に減衰するモータトルク指令値が与えられる。
【0040】
したがって、エンジン始動時、押しがけによるエンジンクラッチECの締結中にファイアリングを開始すると、第1モータジェネレータMG1のモータトルクが低減されることで、ファイアリング開始直後に発生するエンジンEからの正の余剰トルクが、第1モータジェネレータMG1による負のモータトルクにより相殺され、エンジンEの余剰トルクによる突き上げショックの発生を回避することができる。
【0041】
しかも、ファイアリング開始直後に発生するエンジンEの余剰トルクに対し、エンジン制御やクラッチ制御により余剰トルクを抑えるようにした場合には、エンジン始動の終了タイミングが遅くなり、エンジン始動時間が長くなるのに対し、少なくともエンジン制御を行わず、モータトルクの低減制御により対応するようにしているため、エンジン始動時間を犠牲にすることがない。
【0042】
さらに、第1モータジェネレータMG1による補償トルクは、モータトルクの低減開始時点にて推定されるエンジン余剰トルクに基づき計算される値を初期値とし、モータトルクの低減開始時点から所定時間にて減衰させる。このため、ファイアリング開始直後に発生するエンジンEの余剰トルク(図6のエンジン推定トルクのハッチング部分)と、モータトルク指令値の低減トルク(図6のモータトルク指令値のハッチング部分)と、がほぼ符合することになり、エンジンEの余剰トルクの相殺不足により突き上げショックを残したり、エンジンEの余剰トルクの相殺過剰により引き込みショックとなることなく、整然とショックの発生を回避することができる。
【0043】
そして、エンジン始動時のエンジン余剰トルクは、エンジンEの吸入空気量、空燃比、点火時期等に基づいて推定したり、エンジンEの停止時間及びエンジンEの起動後からの時間に基づいて推定する。このため、エンジンEのトルクを直接、トルクセンサ等で検出することなく、安価でありながら、精度良くエンジン始動時のエンジン余剰トルクを推定することができる。
【0044】
次に、効果を説明する。
実施例1のハイブリッド車のエンジン始動制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0045】
(1) 動力源としてエンジンEと少なくとも1つのモータを有し、前記エンジンEと前記モータとの間にエンジンクラッチECを介装し、前記モータをスタータモータとし、クラッチ締結による押しがけで前記エンジンEの始動を行うエンジン始動制御手段を備えたハイブリッド車のエンジン始動制御装置において、前記エンジン始動制御手段は、エンジン始動時、押しがけによる前記エンジンクラッチECの締結中にファイアリングを開始すると、モータトルクを低減するため、エンジン始動時間を犠牲にすることなく、ファイアリング開始直後に発生するエンジンEの余剰トルクによる突き上げショックの発生を回避することができる。
【0046】
(2) 前記エンジン始動制御手段は、エンジン始動時、前記エンジンクラッチECの締結力をエンジンEのクランキングからファイアリングに至るまで徐々に増大させるランプ制御とし、前記エンジンクラッチECの締結中にファイアリングを開始した後、エンジン回転数Neがクラッチ回転数Niに近づき両回転数の差が設定回転数ΔN1以下となった時点でモータトルクを低減するため、エンジンクラッチECの締結制御は従来からのランプ制御をそのまま維持したままで、モータトルクの低減制御のみにより、エンジン始動時間を全く犠牲にすることなく、エンジンEの余剰トルクによる突き上げショックの発生を回避することができる。
【0047】
(3) 前記エンジン始動制御手段は、前記モータによる補償トルクを、モータトルクの低減開始時点にて推定されるエンジン余剰トルクに基づき計算される値を初期値とし、モータトルクの低減開始時点から所定時間にて減衰させるため、エンジンEの余剰トルクの相殺するモータ補償トルクの過不足を抑え、整然とショックの発生を回避することができる。特に、エンジン余剰トルクの推定値を、補償開始時の初期値にのみ用いるため、過渡期におけるエンジン余剰トルクの推定精度が得られない場合において、モータ補償トルクの演算精度向上を図ることができる。
【0048】
(4) 前記エンジン始動制御手段は、エンジン始動時のエンジン余剰トルクを、エンジンEの吸入空気量、空燃比、点火時期に基づいて推定するため、エンジントルクに寄与するエンジンEの吸入空気量等の変動に応じて、ダイレクトにモータ補償トルクの初期値を得ることで、モータ補償トルクの演算精度向上を図ることができる。
【0049】
(5) 前記エンジン始動制御手段は、エンジン始動時のエンジン余剰トルクを、エンジンの停止時間及びエンジンの起動後からの時間に基づいて推定するため、エンジンEの動作状況の監視により、初爆トルク発生タイミングとエンジントルク減衰時定数の同定を図ることが可能となり、モータ補償トルク初期値の演算精度向上を図ることができる。
【0050】
(6) 前記動力源として、エンジンEと第1モータジェネレータMG1と第2モータジェネレータMG2とを有し、これらの動力源と出力ギヤOGとが連結される駆動力合成変速機TMを備え、前記駆動力合成変速機TMは、共線図上に4つ以上の回転要素が配列され、各回転要素のうちの内側に配列される2つの回転要素の一方にエンジンクラッチECを介してエンジンEからの入力を割り当て、他方に駆動系統への出力ギヤOGを割り当てると共に、前記内側の回転要素の両外側に配列される2つの回転要素にそれぞれ第1モータジェネレータMG1と第2モータジェネレータMG2とを割り当てた差動装置を有するため、走行モードとして電気自動車モードとハイブリッド車モードを有するパラレル型のハイブリッド車において、電気自動車モードからハイブリッド車モードへのモード遷移時、エンジン始動時間を犠牲にすることなく応答の良いモード遷移を達成しながら、エンジンEの余剰トルクによる突き上げショックの発生を回避することができる。
【実施例2】
【0051】
実施例2は、モータやバッテリに多大な負担をかけることなく、エンジン始動時間の短縮と突き上げショックの抑制との両立を図るようにした例である。なお、基本構成や基本動作については、図1〜図4に示す実施例1のハイブリッド車と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
【0052】
次に、作用を説明する。
[エンジン始動制御処理]
図7は実施例2の統合コントローラ6にて実行されるエンジン始動制御処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する(エンジン始動制御手段)。
【0053】
ステップS21では、例えば、「EVモード」から「E-iVTモード」へのモード遷移時等において、停止していたエンジンEを始動する指令が出されると、エンジンクラッチECの締結処理が開始され、ステップS22へ移行する。
ここで、エンジンクラッチECの締結処理は、図8に示すように、クラッチプレート間のクリアランスを詰めるよう一時的にクラッチ油圧指令値を高める油圧指令フェーズ1と、一時的にクラッチ油圧指令値を高めた後に一時的にクラッチ油圧指令値を低くしクラッチ締結の準備体制を整える油圧指令フェーズ2と、クラッチ油圧指令値をファイアリングが開始されるまで徐々に増大させるランプ制御による油圧指令フェーズ3と、ファイアリング開始後にモータトルク低減制御が開始されるまでクラッチ油圧指令値を低減させる油圧指令フェーズ4と、モータトルク低減制御の開始後、一気に完全締結レベルまで立ち上げる油圧指令フェーズ5と、により実行される。
【0054】
ステップS22では、ステップS21でのエンジンクラッチECの締結処理に続き、エンジン回転数センサ9からのエンジン回転数Neがファイアリング開始回転数Ne1以上であるか否かを判断し、YESの場合はステップS23へ移行し、NOの場合はステップS22のエンジン回転数判断を繰り返す。
ここで、「ファイアリング開始回転数Ne1」は、各エンジンのタイプ毎に、予め行われた実験結果等に基づいて決定される。
【0055】
ステップS23では、ステップS22でのNe>Ne1との判断に続き、エンジンコントローラ1に対しファイアリング要求を出し、ステップS24へ移行する。
【0056】
ステップS24では、ステップS23でのファイアリング要求に続き、エンジンクラッチECへの油圧を低減するクラッチ油圧指令値を出力し、ステップS25へ移行する。
ここで、エンジンクラッチECへの油圧を低減レベルは、ファイアリング開始直後の余剰トルク発生によるショックをクラッチ開放、または、クラッチ滑り締結により逃がすレベルとする。
【0057】
ステップS25では、ステップS24でのクラッチ開放に続き、エンジン回転数センサ9からのエンジン回転数Neと第2リングギヤ回転数センサ12からのクラッチ回転数Niとの回転数差が設定回転数ΔN2以上か否かを判断し、YESの場合はステップS26へ移行し、NOの場合はステップS25の回転数差判断を繰り返す。
ここで、「設定回転数ΔN2」は、クラッチ開放によるエンジン回転数Neの上昇勾配に高まりがあることで、エンジン回転数Neがクラッチ回転数Niをオーバーシュートするが、このオーバーシュートが確認される時点の値とするように決める。なお、実施例2では余剰トルクの発生初期におけるショック低減をクラッチ開放により逃がすようにしているため、エンジン回転数Neがクラッチ回転数Niと一致する時点としても良いし、また、実施例1のようにエンジン回転数Neがクラッチ回転数Niに近づく時点としても良い。
【0058】
ステップS26では、ステップS25でのNe−Ni≧ΔN2であるとの判断に続き、エンジンクラッチECを再締結する指令を出力すると共に、制御開始時の第1モータジェネレータMG1のトルク低減量であるモータ補償トルク初期値と、制御開始からの時間の経過にしたがってモータトルクを復帰させる減衰勾配を決める時点数とを設定し、モータコントローラ2に対しモータ補償トルク制御指令を出力し、リターンへ移行する。
ここで、前記第1モータジェネレータMG1による補償トルクは、実施例1と同様に、モータトルクの低減開始時点にて推定されるエンジン余剰トルクに基づき計算される値を初期値とし、モータトルクの低減開始時点から所定時間にて減衰させる。
【0059】
[エンジン始動制御作用]
実施例2のハイブリッド車のエンジン始動制御装置では、第1モータジェネレータMG1をスタータモータとし、エンジンクラッチECの締結による押しがけでエンジンEの始動を行うハイブリッド車において、エンジン始動時、押しがけによるエンジンクラッチECの締結中にファイアリングを開始すると、ファイアリング開始直後の余剰トルクを逃がすようにエンジンクラッチECの締結力を一時的に低下させ、その後、再締結させ、クラッチ再締結時に発生するエンジンEの余剰トルクを吸収するように第1モータジェネレータMG1のモータトルクを低減するようにした。
【0060】
すなわち、例えば、「EVモード」から「E-iVTモード」へのモード遷移時等において、停止していたエンジンEを始動する指令が出されると、図7のフローチャートにおいて、ステップS21において、エンジンクラッチECの締結処理が開始され、ステップS22において、エンジン回転数Neがファイアリング開始回転数Ne1以上であるか否かが判断される。そして、エンジン回転数Neがファイアリング開始回転数Ne1以上になると、ステップS23へ進み、ステップS23において、ファイアリング要求を出し、さらに、次のステップS24において、ファイアリングの開始直後に発生するエンジンEの余剰トルクを逃がすようにエンジンクラッチECに一時的な開放指令が出される。そして、次のステップS25において、エンジン回転数Neとクラッチ回転数Niとの回転数差が設定回転数ΔN2以上か否かが判断され、Ne−Ni≧ΔN2であると判断されると、ステップS26へ進む。そして、ステップS26において、エンジンクラッチECに再締結指令を出力すると共に、モータ補償トルク初期値と時点数とを設定し、モータコントローラ2に対しモータ補償トルク制御指令を出力し、エンジンクラッチECの再締結時の余剰トルクを吸収するように第1モータジェネレータMG1のモータトルクが低減される。
【0061】
上記エンジン始動時の動作を、クラッチ油圧指令値・クラッチ回転数・エンジン回転数・エンジン推定トルク・モータトルク指令値・油圧指令フェーズ・エンジンモードを示す図8のタイムチャートにより説明する。
時刻t0からエンジンEの始動制御が開始され、時刻t0から時刻t1までは油圧指令フェーズ1であり、クラッチプレート間のクリアランスを詰めるよう一時的にクラッチ油圧指令値が高められる。そして、時刻t1から時刻t2までは油圧指令フェーズ2により、一時的にクラッチ油圧指令値を低くしクラッチ締結の準備体制を整えられ、さらに、時刻t2から時刻t4までは油圧指令フェーズ3により、クラッチ油圧指令値を徐々に増大させるランプ制御が実行される。
【0062】
エンジンクラッチECの締結により、時刻t3になると停止しているエンジンEが回転を開始し、エンジンEの回転数は、その後、徐々に上昇する。そして、時刻t4にてエンジン回転数Neがファイアリング開始回転数Ne1以上になると、ファイアリング要求が出されてエンジンEが自律回転へ移行する。すなわち、時刻t0から時刻t4まではクランキング状態であり、エンジン回転数Neが上昇する時刻t3から時刻t4までは、エンジンEが第1モータジェネレータMG1に回されている状態にあるため、エンジン推定トルクは負のトルクとなる。
【0063】
しかし、時刻t4にてファイアリングが開始されると、エンジン推定トルクは負から正へと移行し、ファイアリングの開始直後の時刻t5において、エンジン推定トルクは一気に立ち上がる。同時に、時刻t4にてファイアリングが開始されると、エンジンクラッチECは一時的に低下させられ、ファイアリングの開始直後に発生するエンジンEの初期余剰トルクが逃がされる。そして、時刻t4からはエンジンクラッチECの開放、または、スリップ締結によりエンジン回転数Neがそれまでよりも大きな勾配にて上昇し、時刻t6において、エンジン回転数Neとクラッチ回転数Niとの回転数差が設定回転数ΔN2以上になると、エンジンクラッチECが再締結されると共に、エンジンクラッチECの再締結時におけるモータ補償トルク初期値によるモータトルク指令値が出力される。そして、時刻t6からモータトルク指令値がゼロとなる時刻t7までは、エンジンEの余剰トルクの減衰に対応するように徐々に減衰するモータトルク指令値が与えられる。
【0064】
したがって、実施例2によれば、ファイアリング開始直後の余剰トルク発生によるショックをエンジンクラッチECの開放またはスリップで逃がし、かつ、クラッチ再締結時の余剰トルク分を第1モータジェネレータMG1のモータトルク低減により吸収する。
このように、クラッチ制御を併用するモータ補償制御としたため、第1モータジェネレータMG1やバッテリ4に多大な負担をかけることなく、エンジン回転数Neの上昇勾配を立ち上げることにより実施例1に比べてエンジン始動時間を短縮することができる。
加えて、クラッチ制御によるファイアリング開始直後の余剰トルク発生によるショックの回避と、モータ補償制御によるクラッチ再締結時の余剰トルク分の吸収との相乗作用により、突き上げショックを整然と抑制することができる。
【0065】
次に、効果を説明する。
実施例2のハイブリッド車のエンジン始動制御装置にあっては、実施例1の(1),(3),(4),(5),(6)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0066】
(7) 前記エンジン始動制御手段は、エンジン始動時、前記エンジンクラッチECの締結力をエンジンEのクランキング域では徐々に増大させるランプ制御とし、クランキング域からファイアリング域へ移行すると一時的に低下させ、その後、再締結させる制御とし、前記エンジンクラッチECの再締結を開始する時点でモータトルクを低減するため、モータやバッテリに多大な負担をかけることなく、エンジン始動時間短縮と突き上げショック抑制との両立を図ることができる。
【実施例3】
【0067】
実施例3は、モータによるショック吸収だけでは足りない場合でも、突き上げショックの抑制を図るようにした例である。
なお、基本構成や基本動作については、図1〜図4に示す実施例1のハイブリッド車と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
【0068】
次に、作用を説明する。
[エンジン始動制御処理]
図9は実施例3の統合コントローラ6にて実行されるエンジン始動制御処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する(エンジン始動制御手段)。
なお、ステップS31〜ステップS35については、図7に示す実施例2のステップS21〜ステップS25とそれぞれ同様であるので、説明を省略する。
【0069】
ステップS36では、ステップS35でのNe−Ni≧ΔN2であるとの判断に続き、エンジンクラッチECを再締結する指令を出力すると共に、制御開始時の第1モータジェネレータMG1のトルク低減量であるモータ補償トルク初期値と、制御開始からの時間の経過にしたがってモータトルクを復帰させる減衰勾配を決める時点数とを設定し、モータコントローラ2に対しモータ補償トルク制御指令を出力し、加えて、エンジンコントローラ1に対し点火時期のリタード指令を出力し、リターンへ移行する。
ここで、前記第1モータジェネレータMG1による補償トルクは、実施例1と同様に、モータトルクの低減開始時点にて推定されるエンジン余剰トルクに基づき計算される値を初期値とし、モータトルクの低減開始時点から所定時間にて減衰させる。また、点火時期のリタード指令は、モータトルク指令値が補償前の値に復帰するまで出力される。
【0070】
[エンジン始動制御作用]
実施例3のハイブリッド車のエンジン始動制御装置では、第1モータジェネレータMG1をスタータモータとし、エンジンクラッチECの締結による押しがけでエンジンEの始動を行うハイブリッド車において、エンジン始動時、押しがけによるエンジンクラッチECの締結中にファイアリングを開始すると、ファイアリング開始直後の余剰トルクを逃がすようにエンジンクラッチECの締結力を一時的に低下させ、その後、再締結させ、クラッチ再締結時に発生するエンジンEの余剰トルクを吸収するように第1モータジェネレータMG1のモータトルクを低減すると共に、エンジンEの点火時期をリタードするようにした。
【0071】
すなわち、例えば、「EVモード」から「E-iVTモード」へのモード遷移時等において、停止していたエンジンEを始動する指令が出されると、図9のフローチャートにおいて、ステップS31において、エンジンクラッチECの締結処理が開始され、ステップS32において、エンジン回転数Neがファイアリング開始回転数Ne1以上であるか否かが判断される。そして、エンジン回転数Neがファイアリング開始回転数Ne1以上になると、ステップS33へ進み、ステップS33において、ファイアリング要求を出し、さらに、次のステップS34において、ファイアリングの開始直後に発生するエンジンEの余剰トルクを逃がすようにエンジンクラッチECに一時的な開放指令が出される。そして、次のステップS35において、エンジン回転数Neとクラッチ回転数Niとの回転数差が設定回転数ΔN2以上か否かが判断され、Ne−Ni≧ΔN2であると判断されると、ステップS36へ進む。そして、ステップS36において、エンジンクラッチECに再締結指令を出力し、モータ補償トルク初期値と時点数とを設定し、モータコントローラ2に対しモータ補償トルク制御指令を出力すると共に、エンジンEの点火時期をリタード(遅角)させる制御指令を出力する。つまり、エンジンクラッチECの再締結時の余剰トルク(点火時期リタード分だけより低下させられたエンジントルク)を吸収するように第1モータジェネレータMG1のモータトルクが低減される。
【0072】
上記エンジン始動時の動作を、クラッチ油圧指令値・クラッチ回転数・エンジン回転数・エンジン推定トルク・モータトルク指令値・油圧指令フェーズ・エンジンモードを示す図10のタイムチャートにより説明する。
時刻t0から時刻t6までは、図8に示す実施例2のタイムチャートと同様な動作を示す。そして、時刻t6において、エンジン回転数Neとクラッチ回転数Niとの回転数差が設定回転数ΔN2以上になると、エンジンクラッチECが再締結され、エンジンクラッチECの再締結時におけるモータ補償トルク初期値によるモータトルク指令値が出力されると共に、エンジンEに点火時期リタード指令が出力される。このため、時刻t6からモータトルク指令値がゼロとなる時刻t7までは、点火時期リタードに伴い実施例2よりも低く抑えられたエンジンEの余剰トルクの減衰に対応するように、初期値が低く、かつ、徐々に減衰するモータトルク指令値が与えられる。
【0073】
したがって、実施例3によれば、ファイアリング開始直後の余剰トルク発生によるショックをエンジンクラッチECの開放またはスリップで逃がし、かつ、クラッチ再締結時の点火時期リタードによるエンジン余剰トルク分を第1モータジェネレータMG1のモータトルク低減により吸収する。
このように、クラッチ制御を併用するモータ補償制御としたため、第1モータジェネレータMG1やバッテリ4に多大な負担をかけることなく、エンジン回転数Neの上昇勾配を立ち上げることにより実施例1に比べてエンジン始動時間を短縮することができる。
また、クラッチ制御によるファイアリング開始直後の余剰トルク発生によるショックの回避と、モータ補償制御によるクラッチ再締結時の余剰トルク分の吸収との相乗作用により、突き上げショックを整然と抑制することができる。
加えて、点火時期リタードによりエンジントルクを低減するため、第1モータジェネレータMG1による吸収だけでは足りない場合であっても、突き上げショックの抑制を図ることができる。
【0074】
次に、効果を説明する。
実施例3のハイブリッド車のエンジン始動制御装置にあっては、実施例1の(1),(3),(4),(5),(6)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0075】
(8) 前記エンジン始動制御手段は、エンジン始動時、前記エンジンクラッチECの締結力をエンジンEのクランキング域では徐々に増大させるランプ制御とし、クランキング域からファイアリング域へ移行すると一時的に低下させ、その後、再締結させる制御とし、前記エンジンクラッチECの再締結を開始する時点でモータトルクを低減すると共にエンジンEの点火時期をリタードするため、モータやバッテリに多大な負担をかけることなく、エンジン始動時間短縮と突き上げショック抑制との両立を図ることができると共に、モータによる吸収だけでは足りない場合であっても、突き上げショックの抑制を図ることができる。
【0076】
以上、本発明のハイブリッド車のエンジン始動制御装置を実施例1〜実施例3に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0077】
実施例1では、エンジン始動制御手段として、ファイアリング開始直後のエンジントルクの余剰分をモータのみで吸収する例を示し、実施例2では、エンジン始動制御手段として、ファイアリング開始直後の余剰トルク発生によるショックをクラッチ開放(スリップ含む)により逃がし、クラッチ再締結時の余剰トルク分をモータで吸収する例を示し、実施例3では、エンジン始動制御手段として、実施例2に加え、クラッチ再締結時にエンジンの点火時期リタード制御を行う例を示した。しかしながら、本発明のエンジン始動制御手段は、要するに、エンジン始動時、押しがけによるエンジンクラッチの締結中にファイアリングを開始すると、ファイアリングの開始直後に発生するエンジンの余剰トルクを吸収するようにモータトルクを低減する手段であれば、これらの実施例に限られるものではない。
【0078】
実施例1〜3では、モータ補償トルクの初期値を、エンジントルクに寄与する空気量等またはエンジンの停止時間等によりエンジントルク推定値を求めて与える例を示したが、例えば、両者の併用によりエンジントルク推定値を求めて与えても良いし、また、予め設定した固定値により与えても良いし、さらに、エンジントルクセンサ等を用いて与えても良い。
【0079】
実施例1〜3では、エンジンクラッチの再締結を開始する時点でモータトルクを低減する例を示したが、例えば、モータの発生トルクに余裕があるときは、モータ補償トルクが0もしくは0近傍の値になるまでエンジンクラッチの再締結を行わないような例としても良い。この場合、エンジンの余剰トルクが発生している間は、要求駆動力をモータで賄うため、エンジンの余剰トルク分の演算が困難な場合においても、エンジン始動に伴うショック発生を回避することができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
実施例1〜3では、1つのエンジンと2つのモータジェネレータを動力源とし、ラビニョウ型遊星歯車列とエンジンクラッチとローブレーキとを有する駆動力合成変速機を備えたハイブリッド車への適用例を示した。しかし、実施例1のエンジン始動制御装置については、例えば、エンジン・エンジンクラッチ・モータジェネレータ・変速機が順に連結されるような駆動系を備えたハイブリッド車にも適用できる。要するに、動力源としてエンジンと少なくとも1つのモータを有し、エンジンとモータとの間にエンジンクラッチを介装し、モータをスタータモータとし、クラッチ締結による押しがけでエンジンの始動を行うハイブリッド車であれば適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】実施例1のエンジン始動制御装置が適用されたハイブリッド車を示す全体システム図である。
【図2】実施例1のエンジン始動制御装置が適用されたハイブリッド車に採用されたラビニョウ型遊星歯車列による各走行モードをあらわす共線図である。
【図3】実施例1のエンジン始動制御装置が適用されたハイブリッド車での走行モードマップの一例を示す図である。
【図4】実施例1のエンジン始動制御装置が適用されたハイブリッド車での4つの走行モード間におけるモード遷移経路を示す図である。
【図5】実施例1の統合コントローラにて実行されるエンジン始動制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】実施例1におけるエンジン始動時のクラッチ油圧指令値・クラッチ回転数・エンジン回転数・エンジン推定トルク・モータトルク指令値・油圧指令フェーズ・エンジンモードの各特性を示すタイムチャートである。
【図7】実施例2の統合コントローラにて実行されるエンジン始動制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】実施例2におけるエンジン始動時のクラッチ油圧指令値・クラッチ回転数・エンジン回転数・エンジン推定トルク・モータトルク指令値・油圧指令フェーズ・エンジンモードの各特性を示すタイムチャートである。
【図9】実施例3の統合コントローラにて実行されるエンジン始動制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】実施例3におけるエンジン始動時のクラッチ油圧指令値・クラッチ回転数・エンジン回転数・エンジン推定トルク・モータトルク指令値・油圧指令フェーズ・エンジンモードの各特性を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0082】
E エンジン
MG1 第1モータジェネレータ
MG2 第2モータジェネレータ
OG 出力ギヤ(出力部材)
TM 駆動力合成変速機
PGR ラビニョウ型遊星歯車列(差動装置)
EC エンジンクラッチ
LB ローブレーキ
1 エンジンコントローラ
2 モータコントローラ
3 インバータ
4 バッテリ
5 油圧制御装置
6 統合コントローラ
7 アクセル開度センサ
8 車速センサ(出力軸回転速度検出手段)
9 エンジン回転数センサ
10 第1モータジェネレータ回転数センサ
11 第2モータジェネレータ回転数センサ
12 第2リングギヤ回転数センサ
13 車輪速センサ




 

 


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