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発明の名称 車両用操舵装置及び車両用操舵方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−15529(P2007−15529A)
公開日 平成19年1月25日(2007.1.25)
出願番号 特願2005−198412(P2005−198412)
出願日 平成17年7月7日(2005.7.7)
代理人 【識別番号】100119644
【弁理士】
【氏名又は名称】綾田 正道
発明者 宮坂 匠吾 / 久保川 範規 / 江口 孝彰
要約 課題
転舵アクチュエータの不要な作動を回避しつつ、中立ズレを起こすことがない車両用操舵装置を提供すること。

解決手段
ステアバイワイヤシステムにおいて、操作状態に基づいて目標転舵力を設定する目標転舵力設定手段と、前記目標転舵力となるように反力アクチュエータの反力を設定する反力設定手段とを設けた。
特許請求の範囲
【請求項1】
運転者が操作する操作部と、
前記操作部に反力を与える反力アクチュエータと、
前記操作部と物理的に切り離し可能な操向輪と、
前記操向輪に対し転舵力を与える転舵アクチュエータと、
前記操向輪に作用する路面反力を検出する路面反力検出手段と、
前記操作部の操作に基づいて前記操向輪の転舵角を制御する転舵制御手段と、
前記路面反力検出手段により検出された路面反力に基づいて前記反力を制御する反力制御手段と、
を備えた車両用操舵装置において、
操作状態に基づいて目標転舵力を設定する目標転舵力設定手段を設け、
前記反力制御手段は、所定の操作状態のとき、前記目標転舵力となるように、前記反力アクチュエータの反力を制御することを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用操舵装置において、
前記操作状態が据え切りかどうかを判断する据え切り判断手段を設け、
前記目標転舵力設定手段は、前記据え切り判断手段により据え切りと判断されたときは、前記目標転舵力を零に設定することを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用操舵装置において、
前記操作状態が手放し状態かどうかを判断する手放し判断手段を設け、
前記目標転舵力設定手段は、前記手放し判断手段により手放しと判断されたときは、前記目標転舵力を零に設定することを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用操舵装置において、
前記手放し判断手段は、前記操作部の操作速度絶対値が一定時間継続して非操作状態を表す所定値以下であり、かつ、前記反力アクチュエータの駆動量が前記操作部のイナーシャ及びフリクションと釣り合う所定駆動量のときは、手放しと判断することを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか1つに記載の車両用操舵装置において、
前記反力制御手段は、所定の操作状態のとき、前記目標転舵力になる前記操作部の位置に追従するように反力を与えることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項6】
運転者が操作する操作部と、
前記操作部に反力を与える反力アクチュエータと、
前記操作部と物理的に切り離し可能な操向輪と、
前記操向輪に対し転舵力を与える転舵アクチュエータと、
前記操向輪に作用する路面反力を検出する路面反力検出手段と、
前記操作部の操作に基づいて前記操向輪の転舵角を制御する転舵制御手段と、
前記路面反力検出手段により検出された路面反力に基づいて前記反力を制御する反力制御手段と、
を備えた車両用操舵装置において、
前記反力制御手段は、所定の操作状態のとき、この操作状態に基づいて目標転舵力を設定し、前記目標転舵力となるように前記反力アクチュエータの反力を制御することを特徴とする車両用操舵方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用操舵装置に関し、特にステアリングホイールと操向輪とが物理的に切り離されたステアバイワイヤ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
操向輪の目標転舵角を設定し、転舵アクチュエータにより目標転舵角を得る技術として、特許文献1に記載の技術が開示されている。この公報には、目標転舵角を得た場合であっても、各種メンバ,操向輪のゴム捩れ,ブッシュ等の応力分と釣り合う転舵モータ電流が流れ続けることを回避するものである。具体的には、据え切り等の転舵時に目標の転舵角δ1を達成する際、一度目標転舵角にそのときのモータ電流値から推定した応力解消分角度αを加えたものを新たな目標転舵角δ2として制御する。次に、実転舵角がδ2におおむね追従してから、再び目標転舵角をδ1に戻すことにより、転舵系に生じる応力を解消し、転舵モータに大電流が継続的に流れつづけることを防止している。
【特許文献1】特開2004-42769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術を、ハンドル操舵角に応じて転舵角を決定する転舵制御を行い、またラック部の軸力に応じて操舵反力を発生する反力生成ロジックを用いているステアバイワイヤ装置に用いた場合、下記に示す課題があった。すなわち、上記従来技術では、一旦転舵側を超過させることにより応力分を解消するため、転舵側の超過時に軸力が超過し、これに応じて大きな反力トルクが発生する虞があった。
【0004】
上記の技術を用いるのは据え切り時に運転者がステアリングホイールから手を放した場合などが考えられるが、そのような場合は、発生した反力トルクによってステアリングホイールが逆側に角度θ2余分に振られてしまう。一方操向輪はステアリングホイールが逆側に振られた超過分を加えた目標転舵角δ*2に追従したあと、最終的な目標転舵角δ*1に追従するので、結果としてステアリングホイールの中立位置と操向輪の中立位置がずれる所謂中立ズレを起こす虞があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、転舵アクチュエータの不要な作動を回避しつつ、中立ズレを起こすことのない車両用操舵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、運転者が操作する操作部と、前記操作部に反力を与える反力アクチュエータと、前記操作部と物理的に切り離し可能な操向輪と、前記操向輪に対し転舵力を与える転舵アクチュエータと、前記操向輪に作用する路面反力を検出する路面反力検出手段と、前記操作部の操作に基づいて前記操向輪の転舵角を制御する転舵制御手段と、前記路面反力検出手段により検出された路面反力に基づいて前記反力を制御する反力制御手段と、を備えた車両用操舵装置において、操作状態に基づいて目標転舵力を設定する目標転舵力設定手段を設け、前記反力制御手段は、所定の操作状態のとき、前記目標転舵力となるように、前記反力アクチュエータの反力を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
よって、反力アクチュエータにより反力を与えることでステアリングホイール操舵角を制御することが可能となり、転舵制御が行われているため結果的に操向輪を制御することができる。尚、転舵制御を維持しているため中立ズレが発生することもない。また、操向輪を制御することで操向輪に作用する転舵力を制御することが可能となり、転舵アクチュエータの不要な作動を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の車両用操舵装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0009】
[車両制御システムの構成]
【0010】
図1は本実施例におけるステアバイワイヤシステムの概要を表す図である。このシステムは主に、反力装置(操舵側)、バックアップ装置、転舵装置(転舵側)によって構成されている。
【0011】
反力装置は、ステアリングホイール1(操作部に相当)の操舵角を検出する操舵角センサ2と、運転者に操舵反力を付与する反力モータ3と、反力モータ3の回転角を検出するエンコーダ等の反力モータ回転角センサ4で構成される。反力モータ3は、ステアリングホイール1に接続された第1ステアリングシャフト1aを回転軸とする電動モータであり、そのケーシングが車体の適所に固定され車体側でモータ反力を支持している。操舵角センサ2はステアリングホイール1と反力モータ3の間に設置されている。反力モータ3は反力コントローラ5により制御される。
【0012】
バックアップ装置は、第1ステアリングシャフト1aと、操舵側プーリ7aに接続された第2ステアリングシャフト1bとを断接するクラッチ6と、操舵側プーリ7aからケーブル8を介して転舵側プーリ7bと連結されたケーブル式コラムから構成される。転舵側プーリ7bにはピニオンシャフト1cが接続されている。フェール時等には、クラッチ6を締結し、第1ステアリングシャフト1aの回転が第2ステアリングシャフト1b→ケーブル式コラム→ピニオンシャフト1cへと伝達され、マニュアルステアを確保している。
【0013】
転舵装置は、ピニオンシャフト1c上に設けられたウォームホイール9aと、ウォームホイール9aと噛合するウォームギヤ9bと、ウォームギヤ9bに接続され車幅方向に対向して配置された2つの転舵モータ(第1転舵モータ10,第2転舵モータ13)から構成されている。ピニオンシャフト1cには、周知のラック&ピニオン機構のピニオン18が設けられ、ラック16のラックギヤ16aと噛合している。ラック16は、ハウジング19に支承されて軸方向に摺動可能とされている。操舵機構は、車体の左右方向に延びて配置されたラック16の両端部に接続されたタイロッド20と、操向輪22を支持するナックルアーム21から構成され、ラック16を軸方向に移動することで操向輪22を転舵する。
【0014】
第1転舵モータ10には、モータ回転角を検出するアブソリュート式レゾルバ等の第1転舵モータ回転角センサ11が設けられ、同様に第2転舵モータ13には、モータ回転角を検出するアブソリュート式レゾルバ等の第2転舵モータ回転角センサ14が設けられている。第1転舵モータ10は第1転舵コントローラ12により制御され、同様に、第2転舵モータ13は第2転舵コントローラ15により制御される。また、ラック16には、転舵時のラック16に作用する軸力を検出する軸力センサ17が左右に1つずつ設けられている。
【0015】
反力コントローラ5,第1転舵コントローラ12及び第2転舵コントローラ15は、CAN通信線23により接続され、相互に情報を送受信可能に構成されている。各コントローラ内には、それぞれステアバイワイヤ制御ロジックが搭載され、上記三つのコントローラ内で選択されたメインコントローラからの指令に基づいて各モータを制御する。
【0016】
実施例1では、反力モータ3,第1転舵モータ10及び第2転舵モータ13としてブラシレスモータを使用しており、ステータ部にホールICを備える構成としたが、ブラシ付きDCモータを使用してもよい。この場合はエンコーダやホールICを省略できる。尚、実施例1では、操向輪22に加わる路面反力を測定するために、タイロッドに軸力センサ17を設けたが、ウオームギヤ9aとピニオン18の中間にトルクセンサを付設して軸力を検出しても良く特に限定しない。
【0017】
(ステアバイワイヤ制御構成)
ステアバイワイヤシステムにおいては、操舵角に応じて転舵モータ10,13を駆動し操向輪22を転舵させる。本実施例では操舵角に応じた角度分だけ操向輪22が転舵するように転舵モータ10,13の目標転舵角を決定する所謂転舵制御を用いている。以下、転舵制御部100と反力制御部200に分けて説明する。
【0018】
〔転舵制御部について〕
図2は転舵制御部100の構成を示す制御ブロック図である。反力モータ回転角θ(ステアリングホイール操舵角に相当)から目標の転舵角δ*を算出する転舵指令角演算部101と、目標転舵角δ*と実際の転舵モータ回転角センサ値δの偏差δeを演算する偏差演算部102と、偏差δeが0になるように転舵モータ10,13の駆動指令電流i*strを算出する転舵モータ制御部103を有する。
【0019】
また、駆動指令電流i*strと実際のモータ電流値istrの偏差Δistrを演算する電流偏差演算部104と、偏差Δistrが0となるように、すなわち実際のモータ電流値istrが目標電流値i*strに追従するようにフィードバック制御し、転舵モータ駆動電流istrを出力する電流制御部105から構成されている。すなわち、反力モータ回転角θが入力されると、目標転舵角となるように転舵モータ10,13が駆動され、ステアリングホイール操舵角に応じた転舵角δ*が達成される。
【0020】
〔反力制御部について〕
操向輪22から入力される路面反力を、操舵力としてステアリングホイール1に返すために、路面反力(軸力)に応じた操舵トルクを反力モータ3により発生させる。これにより、運転者はステアリングホイール1に操舵力を感じることで適正な操舵を可能としている。図3は本実施例での操舵系システムにおける反力制御部200の位置づけを示すブロック図である。
【0021】
運転者からのステアリングホイール1への入力と等価である反力モータ回転角θによって、転舵モータがδ回転する。それによって操向輪が転舵され、軸力Fが発生する。本実施例では、図1に示したようにタイロッド部に設けた軸力センサ17によって軸力を計測する。
【0022】
反力演算部201では、軸力センサ17によって計測した軸力Fを用いて操舵力τ*を決定する。尚、反力演算部201の構成については後述する。
【0023】
このτ*を実現するために、反力モータ制御部202において、反力モータ指令電流i*handを決定する。偏差演算部203では、反力モータ指令電流i*handと実際の反力モータ電流ihandの偏差Δi*handを演算する。電流制御部204では、実電流値ihandがi*handに追従するように偏差Δi*handに基づいてフィードバック制御が行われ、反力モータ駆動電流ihandによって、反力モータが駆動される。このとき、反力モータ3によりトルクτが発生すると、運転者は軸力に応じた操舵フィーリングを得ることが可能となる。
【0024】
図4は反力演算部201の構成を表すブロック図である。反力演算部201には、車速V及び軸力Fに基づいて図5に示す反力生成マップから目標反力トルクτ*を設定する反力生成マップ201aと、軸力Fと目標軸力Fとの偏差Fe、すなわち残留軸力を演算する残留軸力演算部201bと、残留軸力Feが0となる目標反力トルクτ*refを演算するPIコントローラ201cと、操舵角速度dθ,車速V,反力モータの実電流値ihandに基づいてτ*とτ*refを切り換える制御切替判定部201dから構成されている。尚、制御切替判定処理については後述する。
【0025】
ここで、PIコントローラ201について説明する。PIコントローラ201では、残留軸力Feが入力されると、図6に示すように予め設定された目標反力トルクτ*refが設定される。図7の反力−操舵角マップに示すように、目標反力トルクτ*refが設定されると、ステアリングホイール1がθrefだけ回転するトルクとして設定される。
【0026】
すなわち、残留軸力Feが大きいときは、大きな目標反力トルクτ*refが設定され、ステアリングホイール1を大きく回転させる反力が作用する。よって、ステアリングホイール1が残留軸力Feを発生させる方向とは逆向きにステアリングホイール1が回転するため、その操舵角に応じて転舵制御が成され、転舵角も残留軸力Feを小さくする方向に転舵される。この作用を繰り返すことによって、残留軸力Feは徐々に解消されていく。
【0027】
図8は実施例1の制御切替判定部201dにおいて行われる切替判定制御処理を表すフローチャートである。
【0028】
〔通常制御処理〕
ステップ301では、反力生成マップを用いた反力モータ制御が実行される。尚、この制御が行われる場合を通常制御時と定義する。
【0029】
〔手放し判定処理〕
ステップ302では、車速Vが略0かどうか、すなわち車両停止状態かどうかが判定され、車両停止状態と判定されたときは据え切りが成される可能性があると判断してステップ303へ進み、それ以外のときはステップ301へ戻り通常制御を継続する。
【0030】
ステップ303では、操舵角速度の絶対値|dθ|が操舵をしていないと判定できる所定値Θ以下の状態が所定時間Δtだけ継続したかどうかが判定され、条件を満たしたときは、運転者が操舵していない状態と判断してステップ304へ進み、それ以外のとき、すなわち運転者が操舵しているときはステップ301へ戻り通常制御を継続する。
【0031】
ステップ304では、反力モータ3に流れる電流値ihandが、ステアリングホイール1のイナーシャ及びフリクションと釣り合う所定電流値i1に略一致している状態が所定時間Δtだけ継続したかどうかが判断され、条件を満たしたときは、運転者が手放ししている状態と判断してステップ305へ進み、それ以外のとき、すなわち運転者がステアリングホイール1を握っているときはステップ301へ戻り通常制御を継続する。尚、所定電流値i1は、ステアリングホイール1の重量配分が一様でない為に発生するものであり、慣性分は操舵角θによって算出できる。よって、操舵角θから所定電流値i1を設定するマップ等を備えても良い。
【0032】
ステップ305では、手放しと判定してステップ306へ進む。
【0033】
〔残留軸力解消処理〕
ステップ306では、目標軸力値としてFref=0を与える。
【0034】
ステップ307では、反力生成マップ201aからPIコントローラ201cに切り換える。
【0035】
ステップ308では、軸力Fが目標軸力Frefに略一致したかどうかを判断し、略一致したと判断したときはステップ309へ進み、それ以外のときは略一致するまでステップ308を繰り返す。
【0036】
ステップ309では、再び反力生成マップ201aに制御を切り替え、反力生成マップを用いた反力モータ制御を継続する。
【0037】
(切替判定制御処理の作用)
次に、上記切替判定制御処理による作用について説明する。図9は従来技術におけるステアリングホイール1と操向輪22との関係を表す図である。図10は本実施例の反力制御マップ201aからPIコントローラ201cに切り替えた場合のステアリングホイール1と操向輪22との関係を表す図である。図11は、上記図9及び図10における操舵角,各電流値及び軸力の変化を表すタイムチャートである。
【0038】
ステアバイワイヤシステムにおいて、上述したように角度制御を用いる場合、操舵角θに応じた目標転舵角δ*を達成しようとすると、操向輪の捩れ分による残留軸力が解消されずに、転舵モータに電流が流れ続けるという問題が発生する。具体的には、ラック16に軸力を発生させ、操向輪22を転舵するものの、操向輪22と路面との間の摩擦力は操向輪22を転舵前の状態に戻そうとする力(路面反力)が作用する。しかしながら、転舵角が目標転舵角に一致していると、その角度を維持するように転舵モータ10,13が制御されるため、捩れを保持するのに必要な電流が流れ続けてしまう。
【0039】
この問題を解決するために、特開2004-42769に示す従来技術では、下記のように対策していた。すなわち、据え切り・極低速時かつ、運転者がハンドルに手を触れていない状態において、操舵角θに応じた転舵目標角δ1を達成する際、転舵角δがδ1におおむね追従していると判断された時点での転舵モータ電流値から操向輪22の捩れ角αを推定する。このαを用いてδ1に加えたδ2を新たな転舵目標角とし、操向輪22の転舵角δがδ2におおむね追従していると判断した時点で、再び転舵目標角をδ1にすることで、残留軸力を解消した上で操向輪22の転舵角をδ1に追従させる制御を行っている。
【0040】
ステアバイワイヤシステムに、上記従来技術を適用した場合の課題について図9に示すステアリングホイール1と操向輪の関係及び図11のタイムチャートに基づいて説明する。運転者が車両停止時において操舵(据え切り)を行うと、図9(a)に示すように、操舵角θが発生すると、目標転舵角δ*が設定され、軸力Fが発生する。この軸力Fに対応した反力τが反力モータ3により与えられる。
【0041】
次に、時刻t1において運転者がステアリングホイール1から手を放すと、転舵モータ10,13に流れる電流を解消するために、時刻t2において残留軸力を解消する制御が行われる。すると、図9(b)に示すように、操向輪22の捩れ角αを転舵モータ指令角δ*に加え、転舵モータ10,13を駆動すると、軸力F’がオーバーシュートする(図11の点線参照)。そのオーバーシュートした軸力F’は、反力トルク生成マップ201によって操舵トルクτ2としてステアリングホイール1に伝わる。
【0042】
この際、運転者はステアリングホイール1から手を離しているので、τ2によってステアリングホイール1は逆方向に角度θ2オーバーシュートする。すると、図9(c)に示すように、転舵モータ10,13は、その後再び目標転舵角δ*に追従するように動くので、結果として、θ2分の中立ズレが起こってしまう(図11の点線参照)。
【0043】
また、特開2004-42769において、残留軸力を解消するために、転舵モータ電流値から残留軸力、操向輪22の捩れ角αを推定し、それを用いて目標転舵角δ*を補正して転舵角を制御している。しかしながら、推定された各値の精度によっては残留軸力が完全に解消されるロジックとはなっていない。すなわち、上記従来技術をステアバイワイヤシステムに適用したとしても、中立ズレの虞があり、また、確実に残留応力解消による電流消費量の低減を図ることができない。
【0044】
これに対し、本実施例では上の二つの問題に対処するために、以下の方法を用いることとした。図10は本実施例の操舵角と転舵角の関係を表す図である。まず、運転者がステアリングホイール1を操舵(据え切り)すると、図10(a)に示すように残留軸力Feが発生する。次に、時刻t1において、運転者がステアリングホイール1から手を放すと、手放し判定が成され、時刻t2において、図10(b)に示すように、残留軸力Feを解消すべく軸力センサ17で計測した軸力Fが追従するべき目標軸力Frefを設定し、反力トルク生成マップ201をPIコントローラ201cに切替える。
【0045】
このPIコントローラ201cは、軸力FがFrefに追従するような操向輪22の転舵角δrefを得るために、ステアリングホイール1が回転すべき操舵角θrefを達成することを目的とし、ステアリングホイール1がθrefの回転位置に追従するように反力モータ3に与えるべきトルクτrefを決定する(図6,7参照)。また、PIコントローラ201cのパラメータ(ゲイン等)は操舵角θがオーバーシュートすることなくθrefの回転位置に追従する反力トルクτrefを与えるように設定する。
【0046】
すると、反力モータ電流値ihandがステアリングホイール1の慣性分に打ち勝ってステアリングホイール1を滑らかに動かす為に必要なトルクを発生するための電流値が発生し、操舵角θrefが滑らかに発生する(図11の実線参照)。尚、残留軸力Feが大きいときにはτrefも大きくなる。τrefが大きいと、回転する操舵角θrefも大きくなる。
【0047】
それに伴い角度制御された操向輪22がδref分転舵することによって、軸力が減少する。軸力が減少するために必要となるτrefは小さくなり、それにより回転する操舵角θrefも小さくなる。これを繰り返すことによって、軸力Fは目標軸力Frefに追従する(図11の実線参照)。
【0048】
これにより、図10(c)に示すように、フィードバック制御により残留軸力を0とすることが可能となり、転舵モータ消費電流量を0とすることができる。また、角度制御を維持するため、転舵角δと操舵角θの関係が崩れることがなく、中立ズレを防止することができる。尚、軸力Fが目標軸力Frefに追従した後は、PIコントローラ201cによる制御から反力生成マップ201aによる制御に再び切替える。
【0049】
以上説明したように、実施例1の車両用操舵装置にあっては、下記に列挙する作用効果を得ることができる。
【0050】
(1)操作状態に基づいて目標転舵力を設定し、目標転舵力となるように反力モータ3の反力を設定した。よって、反力モータ3により反力を与えることでステアリングホイール操舵角を制御することが可能となり、転舵制御が行われているため結果的に操向輪22を制御することができる。また、操向輪22を制御することで操向輪22に作用する転舵力(軸力)を制御することが可能となり、転舵アクチュエータの不要な作動を回避することができる。
【0051】
(2)ステアリングホイール1の操作が据え切りと判断したときは、目標転舵力を零に設定することとした。据え切り時には操向輪22に作用する路面反力が大きいことから、残留軸力も大きくなる。このとき、残留軸力を解消することが可能となり、転舵モータ10,13に不要な電流が流れ続けることがなく、電流消費量を低減することができる。
【0052】
(3)運転者がステアリングホイール1から手を放していると判断したときは、目標転舵力を零に設定することとした。よって、手放し時であっても、ステアリングホイール1と操向輪22との角度関係を維持しつつ、残留軸力を解消することが可能となり、転舵モータ10,13に不要な電流が流れ続けることがなく、電流消費量を低減することができる。
【0053】
(4)操舵角の操舵角速度絶対値が一定時間継続して非操舵状態を表す所定値以下であり、かつ、反力モータ電流値がステアリングホイール1のイナーシャ及びフリクションと釣り合う所定電流値i1近傍のときは、手放しと判断することとした。よって、操舵側にトルクセンサを備えていないシステムで得あっても、精度良く手放しを判断することができる。
【0054】
(5)PIコントローラ201cは、目標転舵力になるステアリングホイール1の操舵角に追従するように反力を与える。よって、反力モータ3の作動によりステアリングホイール操舵角がオーバーシュートすることがなく、運転者に違和感を与えることなく残留軸力を解消することができる。
【0055】
尚、本実施例では、極低速時に据え切りを行い、その後手放しをした後に残留軸力を解消する制御、すなわち目標軸力Fref=0としたが、目標軸力Frefを所望の値に設定することで、中立ズレを発生させることなく、目標軸力Frefを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施例1のステアバイワイヤシステムを表すシステム構成図である。
【図2】実施例1の転舵制御部を表す制御ブロック図である。
【図3】実施例1の反力制御部を表す制御ブロック図である。
【図4】実施例1の反力演算部の構成を表す制御ブロック図である。
【図5】実施例1の反力生成マップを表す図である。
【図6】実施例1の残留軸力と反力トルクの関係を表すマップである。
【図7】実施例1の反力トルクと操舵角の関係を表すマップである。
【図8】実施例1の制御切替判定部において行われる切替判定制御処理を表すフローチャートである。
【図9】従来技術のステアリングホイールと操向輪との関係を表す図である。
【図10】実施例1の反力制御マップからPIコントローラに切り替えた場合のステアリングホイールと操向輪との関係を表す図である。
【図11】従来技術及び実施例1の操舵角,各電流値及び軸力の変化を表すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0057】
1 ステアリングホイール
2 操舵角センサ
3 反力モータ
4 反力モータ回転角センサ
5 反力コントローラ
6 クラッチ
10,13 転舵モータ
11,14 転舵モータ回転角センサ
12,15 転舵コントローラ
16 ラック
17 軸力センサ
22 操向輪
23 通信線




 

 


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