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発明の名称 乗員保護装置、自動車および乗員保護方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−8194(P2007−8194A)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
出願番号 特願2005−187928(P2005−187928)
出願日 平成17年6月28日(2005.6.28)
代理人 【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
発明者 太田 幸一 / 戸畑 秀夫
要約 課題
車両の側面衝突に対する乗員の保護性能を改善すること。

解決手段
乗員保護装置1は、側面衝突の可能性が高まると、リトラクタ8がベルト5を巻き取ることにより、座席2外側部のシートバック部肩口に備えられた肩部アンカ4とシートクッション部前端部に備えられたスルーアンカ7との間にベルト5が表出し、側面衝突に備える状態となる。そして、側面衝突が発生した場合、肩部アンカ4およびスルーアンカ7が肩部アンカレール3およびスルーアンカレール6に沿って車両内側に引き込まれることにより、乗員を車両内側に拘束する。そのため、車両の側面衝突時における乗員とドア等との衝突エネルギを軽減できると共に、車両側面方向の乗員拘束力を向上させることができる。したがって、車両の側面衝突に対する乗員の保護性能を改善することができる。
特許請求の範囲
【請求項1】
車両の側面衝突から乗員を保護する乗員保護装置であって、
側面衝突発生時に、座席に着座した乗員の車両外側における肩部から大腿部にかけ渡された状態で、乗員の肩部および大腿部を車両内側に拘束する拘束部材と、
前記拘束部材を乗員の乗降を妨げない位置に収納した平常状態と、側面衝突に備えて、前記拘束部材を着座した乗員の肩部から大腿部の側部に表出させた衝突準備状態とを可逆的に切り替える切り替え手段と、
を備えることを特徴とする乗員保護装置。
【請求項2】
車両の側面衝突が発生した場合に、着座した乗員を車両幅方向内側に移動させる移動手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の乗員保護装置。
【請求項3】
前記拘束部材は、柔軟性を有する線状部材によって構成されることを特徴とする請求項1または2記載の乗員保護装置。
【請求項4】
前記拘束部材をベルト状の部材あるいはワイヤ状の部材によって構成したことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の乗員保護装置。
【請求項5】
前記切り替え手段は、
ドアと隣接する座席側面において、座席のシートバック部肩口に備えられた第1のアンカと、
座席のシートクッション部前端部に備えられた第2のアンカと、
を備え、前記第1および第2のアンカのいずれかが前記拘束部材の一端を支持すると共に、前記第1および第2のアンカの他方が前記拘束部材を挿通し、
一端において前記第1あるいは第2のアンカに支持された前記拘束部材の他端を巻き取るリトラクタと、
前記拘束部材における前記第1および第2のアンカ間の所定個所を保持して、前記座席側面に沿った状態に収納させる収納手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の乗員保護装置。
【請求項6】
前記拘束部材はベルト状の部材によって構成され、
前記収納手段は、
前記拘束部材を挿通し、前記座席側面に沿う方向に屈曲可能に構成されたカバー部材と、
該カバー部材を前記座席側面のシートバック部とシートクッション部との連結部付近に引き込む第1の引き込み手段と、
を備えることを特徴とする請求項5記載の乗員保護装置。
【請求項7】
前記カバー部材は蛇腹構造を有し、前記第1の引き込み手段によって引き込まれた場合に、該蛇腹構造部分において屈曲することを特徴とする請求項6記載の乗員保護装置。
【請求項8】
前記第1の引き込み手段は、所定の弾性力で前記カバー部材を引き込む弾性体によって構成されることを特徴とする請求項6記載の乗員保護装置。
【請求項9】
前記第1の引き込み手段は、前記カバー部材に連結された線状部材と、該線状部材を巻き取るリトラクタとによって構成されることを特徴とする請求項6記載の乗員保護装置。
【請求項10】
前記拘束部材はワイヤ状の部材によって構成され、
前記第1のアンカおよび第2のアンカは長板状部材によって構成され、前記シートバック部肩口あるいはシートクッション部前端部に、一方の端部を回転可能に支持されていると共に、他方の端部に前記ワイヤ状の部材を挿通するワイヤホルダ部を備え、
前記収納手段は、
前記ワイヤ状の部材における前記第1および第2のアンカ間の所定個所を保持する帯状の連結部材と、
該連結部材を前記座席側面に引き込む第2の引き込み手段と、
を備えることを特徴とする請求項5記載の乗員保護装置。
【請求項11】
前記帯状の連結部材はエアバッグによって構成され、側面衝突が発生した場合に、該エアバッグが展開することを特徴とする請求項10記載の乗員保護装置。
【請求項12】
前記第1のアンカおよび第2のアンカは、長板状部材の乗員側の面に弾性部材を備えることを特徴とする請求項10または11記載の乗員保護装置。
【請求項13】
車両の側面衝突の可能性を検出する衝突予測手段をさらに備え、
前記衝突予測手段によって側面衝突の可能性が検出された場合に、前記拘束部材が、ドアと隣接する座席側面に沿って収納された収納状態から、着座した乗員とドアとの間に表出する展開状態へと移行することを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の乗員保護装置。
【請求項14】
前記衝突予測手段によって検出された側面衝突の可能性の高さに応じて、前記拘束部材が収納状態から展開状態へと移行する速度を変化させることを特徴とする請求項13記載の乗員保護装置。
【請求項15】
車両の側面衝突が発生した場合に、衝突準備状態とされている前記拘束部材の張力を増加させることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の乗員保護装置。
【請求項16】
前記第1のアンカを摺動可能に保持する第1アンカレールと、該第1アンカレールに沿って前記第1のアンカを前記ドアから離隔する方向に引き込む第1のアクチュエータと、前記第2のアンカを摺動可能に保持する第2アンカレールと、該第2アンカレールに沿って前記第2のアンカを前記ドアから離隔する方向に引き込む第2のアクチュエータとをさらに備え、車両の側面衝突が発生した場合に、前記第1および第2のアクチュエータが第1および第2のアンカを引き込むことにより、乗員を前記ドアから離隔する方向に移動させることを特徴とする請求項4記載の乗員保護装置。
【請求項17】
前記第1あるいは第2のアクチュエータは、火薬の爆発によって引き込み動作を行うことを特徴とする請求項16記載の乗員保護装置。
【請求項18】
前記第1あるいは第2のアクチュエータは、モータによって引き込み動作を行うことを特徴とする請求項16記載の乗員保護装置。
【請求項19】
車両の側面衝突から乗員を保護する乗員保護装置であって、
座席に着座した乗員の車両外側における肩部から大腿部にかけ渡され、側面衝突時に座席側面位置より車両内側に乗員を拘束する拘束部材を、乗員の乗降を妨げない位置に収納された平常状態から側面衝突に備えて表出した衝突準備状態に可逆的に移行させることを特徴とする乗員保護装置。
【請求項20】
車両の側面衝突から乗員を保護する乗員保護装置を備えた自動車であって、
前記乗員保護装置は、
側面衝突発生時に、座席に着座した乗員の車両外側における肩部から大腿部にかけ渡された状態で、乗員の肩部および大腿部を車両内側に拘束する拘束部材と、
前記拘束部材を乗員の乗降を妨げない位置に収納した平常状態と、側面衝突に備えて、前記拘束部材を着座した乗員の肩部から大腿部の側部に表出させた衝突準備状態とを可逆的に切り替える切り替え手段と、
を備えることを特徴とする自動車。
【請求項21】
車両の側面衝突から乗員を保護するための乗員保護方法であって、
座席に着座した乗員の車両外側における肩部から大腿部にかけ渡され、側面衝突時に座席側面位置より車両内側に乗員を拘束する拘束部材を、乗員の乗降を妨げない位置に収納された平常状態から側面衝突に備えて表出した衝突準備状態に可逆的に移行させることを特徴とする乗員保護方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の側面衝突から乗員を保護する乗員保護装置、それを備えた自動車および乗員保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の側面衝突時における乗員の保護方法として、例えば、座席背面あるいは座席側部から展開するエアバッグや、ルーフサイドレールあるいはドアトリムから展開するエアバッグを用いるものが知られている。このようなエアバッグを用いる方法においては、車両の衝突が検出されると、瞬時にガスが充填されることによりエアバッグが展開する。そして、乗員とその衝突対象面との間で、展開したエアバッグが内部のガスを放出しながら緩やかに潰れることで、衝突エネルギが吸収される。
【特許文献1】特開平7−223505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、車両の構造上、座席前部に比べて座席側部は空間が限られているため、エアバッグの潰れにより衝突エネルギを吸収する場合のストロークに関しては、座席側部に備えられるサイドエアバッグの方が、座席前部に備えられるフロントエアバッグよりも小さくならざるを得ない。また、エアバッグの展開のための時間的猶予も少ないことから、エアバッグによる衝突エネルギ吸収量も制限を受けることとなる。
【0004】
さらに、その構造上、サイドエアバッグによって車両側面方向の乗員拘束力を高いものとすることは困難である。
このように、従来の技術においては、車両の側面衝突に対する乗員の保護性能に改善の余地があった。
本発明の課題は、車両の側面衝突に対する乗員の保護性能を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、本発明は、
車両の側面衝突から乗員を保護する乗員保護装置であって、
ドアと隣接する座席側面位置あるいは座席のより内側位置で、側面衝突に対して、着座した乗員の前記ドア側への移動を拘束するための準備段階である衝突準備状態と、該衝突準備状態が解除された平常状態とを切り替える拘束手段を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、側面衝突に備えて衝突準備状態としておくことができ、側面衝突が発生した場合には、迅速に、着座した乗員の前記ドア側への移動を拘束する状態とすることができる。したがって、側面衝突発生時における乗員とドア等との衝突エネルギを軽減できると共に、車両側面方向の乗員拘束力を向上させることができる。即ち、本発明によれば、車両の側面衝突に対する乗員の保護性能を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
(構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る乗員保護装置1の構成を示す図である。
図1において、乗員保護装置1は、乗員が着座する座席2と、座席2の車両外側の側部(以下、「外側部」と言う。)におけるシートバック部肩口に備えられ、肩部アンカ4を摺動可能に保持する肩部アンカレール3と、肩部アンカレール3に摺動可能に保持されると共にベルト5の一端を支持する肩部アンカ4と、肩部アンカ4に一端を支持されると共に、他端をリトラクタ8に巻き取られているベルト5と、座席2の外側部におけるシートクッション部前端部に備えられ、スルーアンカ7を摺動可能に保持するスルーアンカレール6と、スルーアンカレール6に摺動可能に保持されると共にベルト5を挿通する挿通孔を有するスルーアンカ7と、ベルト5の他端(肩部アンカ4に支持された一端の他方の端)を巻き取るリトラクタ8と、ベルト5を挿通し、ベルトリターン用弾性体10の一端が連結されたベルトカバー9と、弾性力を有する部材によって構成され、その弾性力により、座席2の外側部におけるシートバック部とシートクッション部との結合部付近(以下、「平常位置」と言う。)にベルトカバー9を引き込むベルトリターン用弾性体10と、座席2の外側部に近接するドア内に設置され、車両側方からの衝突を検出し、衝突発生の可能性に応じた制御を行う側面衝突センサ部11とを有している。
【0008】
これらのうち、肩部アンカレール3は、座席2のシートバック部肩口において、シートバック部側面から、ヘッドレストが起立している上面に沿ってL字型に形成されたレールであり、肩部アンカ4を摺動可能に保持している(図6(a)参照)。また、肩部アンカレール3内には、レールに沿って車両内側の向き(即ち、ヘッドレストに近づける向き)に肩部アンカ4を引き込むアクチュエータ3aが備えられている。肩部アンカレール3は、側面衝突センサ部11によって側面衝突の発生を示す衝突信号が入力された場合、このアクチュエータ3aを作動させ、肩部アンカ4を車両内側に引き込む。このアクチュエータ3aとしては、例えば火薬の爆発あるいはモータにより作動するもの等を採用することが可能である。火薬により作動するアクチュエータとした場合、ごく短時間で動作させることが可能である。また、モータによるアクチュエータとした場合、可逆的に動作させることができるため、衝突発生前に予めアクチュエータ3aを動作させることができ、乗員の初期拘束性能を向上させることが可能となる。
【0009】
また、肩部アンカレール3は、シートバック部上面のヘッドレストの外側端部付近の位置で、アクチュエータ3aによって引き込まれた肩部アンカ4がヘッドレストと干渉しない位置を起点としてシートバック部の肩(上面と側面との境界部分)に延び、さらにシートバック部側面において上面部分と同程度の距離を下方に延びた構成とされている。
肩部アンカ4は、ベルト5の一端を支持した状態で、衝突の発生時以外においては、シートバック部側面の肩部アンカレール3下端に固定されており、衝突が発生した場合、肩部アンカレール3のアクチュエータ3aによって、シートバック部上面の最も車両内側寄りの位置にレールに沿って引き込まれる(図6(c)参照)。
【0010】
スルーアンカレール6は、座席2のシートクッション部前端部において、シートクッション部側面から前面に沿ってL字型に形成されたレールであり、スルーアンカ7を摺動可能に保持している(図6(a)参照)。また、スルーアンカレール6内には、レールに沿って車両内側の向きにスルーアンカ7を引き込むアクチュエータ6aが備えられている。このアクチュエータ6aも、肩部アンカレール3における場合と同様に、火薬の爆発あるいは電動により作動するもの等を採用可能である。そして、スルーアンカレール6は、側面衝突センサ部11によって側面衝突の発生を示す衝突信号が入力された場合、アクチュエータ6aを作動させ、スルーアンカ6を車両内側に引き込む。
【0011】
また、スルーアンカレール6は、シートクッション部前面の外側端部やや内側位置を起点としてシートクッション部の角(前面と側面との境界部分)に延び、さらにシートクッション部側面において前面部分と同程度の距離を後方に延びた構成とされている。
なお、肩部アンカレール3およびスルーアンカレール6の具体的な長さ、両端の位置等は、衝突発生時にアクチュエータ3a,6aが作動した際の肩部アンカ4およびスルーアンカ7の引き込み量や引き込み速度、あるいはベルト5の乗員の頚への巻き付き防止といった観点から、乗員を車両内側に拘束する動作として適切な設計条件を充足するものが選択される。
【0012】
スルーアンカ7は、衝突の発生時以外においては、シートクッション部側面のスルーアンカレール6後端に固定されており、衝突が発生した場合、スルーアンカレール6のアクチュエータ6aによって、シートクッション部前面の最も車両内側寄りの位置にレールに沿って引き込まれる(図6(c)参照)。
リトラクタ8は、ベルト5の肩部アンカ4に支持された一端に対する他端を支持すると共に、この他端を巻き取る機能を有している。そして、リトラクタ8は、衝突の発生時以外においては、ベルトカバー9がベルトリターン用弾性体10によって平常位置に引き込まれた状態となるようにベルト5を巻き取っている。また、衝突発生の可能性が高まった場合、リトラクタ8は、衝突発生の可能性に応じた巻き取り速度で、ベルト5の巻き取りを行い、ベルト5の張力を上昇させる。そして、リトラクタ8は、衝突が回避され、衝突発生の可能性が低下した場合、巻き取っていたベルト5を解放し、ベルトカバー9が平常位置となる巻き取り状態に戻る。
【0013】
ベルトカバー9は、ベルト5よりやや肉厚・幅広の部材によって構成され、図2(a)に示すように、長さ方向の中央部分に蛇腹構造を有している。また、ベルトカバー9は、長さ方向にベルト5を挿通する挿通孔を有し、図2(b)に示すように、その挿通口にベルト5を摺動自在に挿通している。さらに、ベルトカバー9には、ベルトリターン用弾性体10の一端が連結されており、ベルトリターン用弾性体10の弾性力に基づく引き込み力が作用すると、ベルトカバー9は、その蛇腹構造によって、座席2の側面に沿う方向に略L字型に屈曲する。このベルトカバー9は、側面衝突時に乗員とベルト5あるいはドア等との間に生ずる衝撃を緩衝するために、弾性力を有する部材によって構成することが望ましい。
【0014】
図3は、ベルトカバー9とベルトリターン用弾性体10との連結構造例を示す図であり、図3(a)は、ベルトカバー9とベルトリターン用弾性体10の一端とをベルト等の保持部材を介して連結する構造例を示す図、図3(b)は、ベルトカバー9とベルトリターン用弾性体10とを接続金具によって連結する構造例を示す図である。
図3において、ベルトカバー9の長さ方向の中央部には、蛇腹構造が形成されており、ベルトリターン用弾性体10によって平常位置に引き込まれた場合、この蛇腹位置においてベルトカバー9が略L字型に屈曲し、座席2の外側部に沿う形状となる。また、シートバック部がリクライニングされた場合にも、それに追従して、座席2の外側部に沿う形状となる。
【0015】
このように、ベルトカバー9は、ベルトリターン用弾性体10との連結部材、乗員に対する衝撃を緩衝する緩衝部材、ベルト5を外側面へ収納する収納部材としての機能を有している。
なお、ベルトカバー9とベルトリターン用弾性部材10との連結構造は、上記形態に限られず、これらを直接接続すること等も可能である。
【0016】
ベルトリターン用弾性体10は、弾性力を有する部材によって構成され、側面衝突の可能性がなく、側面衝突も発生していない状態(平常状態)において収縮し、座席2の外側部における平常位置にベルトカバー9を引き込んでいる。また、衝突発生の可能性が高まり、リトラクタ8がベルト5を巻き取ることによりベルト5の張力が増した場合、ベルトリターン用弾性体10は、その弾性により伸長し、着席状態にある乗員の肘付近(肩部アンカ4とスルーアンカ7を結ぶベルト5のほぼ中央付近)にベルトカバー9が位置することを許容している。
側面衝突センサ部11は、車両側方における衝突発生の可能性および側面衝突の発生を検出すると共に、それに応じた乗員保護装置1の制御を行うものであり、衝突予測部11aと、ベルト巻き取り処理部11bと、衝突検出部11cと、プリクラッシュセンサ11dと、クラッシュセンサ11eとをさらに有している。
【0017】
衝突予測部11aは、レーザあるいはミリ波等によるレーダを用いたプリクラッシュセンサ11dによって車両側方からの物体の接近を検出する。そして、衝突予測部11aは、接近する物体との距離および相対速度から側面衝突発生の可能性を判定し、側面衝突発生の可能性レベルを設定する。例えば、衝突予測部11aは、車両側方から接近する物体を検出した場合に、その距離が所定距離以上あるいは相対速度が所定速度以下であると判定したときは、側面衝突発生の可能性をより低いレベル(レベルL1とする)に設定し、接近する物体との距離が所定距離未満かつ相対速度が所定速度を超えると判定したときは、側面衝突発生の可能性をより高いレベル(レベルL2とする)に設定する。ただし、車両側方からの物体の接近が検出されない場合等、レベルL1,L2に該当しない場合には、側面衝突発生の可能性のレベルとしてレベルL0が設定される。なお、これらのレベルは、側面衝突発生の可能性に対応して、より多段階に設定することも可能である。
【0018】
そして、衝突予測部11aは、側面衝突発生の可能性のレベルを示すレベル通知信号をリトラクタ8に出力する。
ベルト巻き取り処理部11bは、衝突予測部11aによって側面衝突発生の可能性がレベルL1に設定された場合、リトラクタ8に対し、低速でベルト5の巻き取りを所定時間行わせる制御信号を出力する。また、ベルト巻き取り処理部11bは、衝突予測部11aによって衝突発生の可能性がレベルL2に設定された場合、リトラクタ8に対し、高速でベルト5の巻き取りを所定時間行わせる制御信号を出力する。このように、側面衝突発生の可能性に応じてベルト5の巻き取り速度を変更することで、その後発生し得る側面衝突に適確な速度で対応することが可能となる。
【0019】
また、ベルト巻き取り処理部11bは、衝突検出部11cによって側面衝突の発生が検出された場合、側面衝突の発生を示す衝突信号をリトラクタ8、肩部アンカレール3およびスルーアンカレール6に出力する。
衝突検出部11cは、加速度センサを用いたクラッシュセンサ11eによって車両側面における衝突の発生を検出する。
【0020】
このような構成の下、側面衝突センサ部11は、以下のようなフローチャートに基づく制御処理を行う。
図4および図5は、側面衝突センサ部11の制御処理を示すフローチャートであり、図4は側面衝突発生の可能性を検出した場合の処理、図5は、側面衝突の発生を検出した場合の処理を示している。なお、側面衝突センサ部11は、イグニションオンの状態において、図4および図5に示す処理を繰り返し実行している。
【0021】
初めに、図4に示すフローチャートについて説明する。
図4において、処理が開始されると、側面衝突センサ部11は、プリクラッシュセンサ11dの検出結果から接近する物体との距離および相対速度に基づいて、衝突予測部11aによって側面衝突発生の可能性を判定し、側面衝突発生の可能性レベルを設定する(ステップS1)。
次に、側面衝突センサ部11は、衝突予測部11aによって、設定した側面衝突発生の可能性のレベルがレベルL1であるか否かの判定を行い(ステップS2)、その可能性のレベルがレベルL1であると判定した場合、ベルト巻き取り処理部11bによって、リトラクタ8に対し、低速でベルト5の巻き取りを所定時間行わせる制御信号を出力する(ステップS3)。
【0022】
一方、ステップS2において、側面衝突発生の可能性のレベルがレベルL1でないと判定した場合、側面衝突センサ部11は、衝突予測部11aによって、側面衝突発生の可能性レベルがレベルL2であるか否かの判定を行い(ステップS4)、その可能性のレベルがレベルL2であると判定した場合、ベルト巻き取り処理部11bによって、リトラクタ8に対し、高速でベルト5の巻き取りを所定時間行わせる制御信号を出力する(ステップS5)。
【0023】
また、ステップS4において、側面衝突発生の可能性のレベルがレベルL2でないと判定した場合およびステップS3,S5の後、側面衝突センサ部11は、ステップS1の処理に移行する。
なお、ステップS3およびステップS5の処理によってベルト5が巻き取られた状態で、側面衝突発生の可能性がレベルL1,L2より低下した状態が一定時間継続した場合、ベルト5が解放され、座席2外側面に収納された状態に戻る。
【0024】
続いて、図5に示すフローチャートについて説明する。
図5において、処理が開始されると、側面衝突センサ部11は、衝突検出部11cによって、クラッシュセンサ11eの検出結果から側面衝突が発生しているか否かの判定を行い(ステップS101)、側面衝突が発生していると判定した場合、側面衝突の発生を示す衝突信号を出力することにより、リトラクタ8に対し、ベルト5を引き込ませてテンショナ機能を作動させ、引き込んだベルト5をロックした状態(拘束状態)とさせる指示を行うと共に、肩部アンカレール3およびスルーアンカレール6に対し、肩部アンカ4およびスルーアンカ7をアクチュエータ3a,6aによって車両内側に引き込ませる指示を行う(ステップS102)。
一方、ステップS101において、側面衝突が発生していないと判定した場合およびステップS102の後、側面衝突センサ部11は、ステップS101の処理を繰り返す。
【0025】
(動作)
次に、乗員保護装置1の動作を説明する。
図6は、乗員保護装置1の動作を示す図である。
図6において、側面衝突発生の可能性が生ずる前の乗員保護装置1は、図6(a)に示すように、肩部アンカ4がシートバック部側面の肩部アンカレール3下端に固定されていると共に、スルーアンカ7がシートクッション部側面のスルーアンカレール6後端に固定されている。また、リトラクタ8は、ベルトカバー9が平常位置となるようにベルト5を巻き取っている(以下、この状態を乗員保護装置1の「平常状態」と称する。)。
そして、側面衝突発生の可能性がレベルL1,L2となった場合、図6(b)に示すように、リトラクタ8がベルト5を巻き取ることにより、ベルトカバー9が平常位置から引き上げられ、乗員の肘付近に移動した状態となる(以下、この状態を乗員保護装置1の「衝突準備状態」と称する。)。
【0026】
その後、側面衝突発生の可能性が回避されると、リトラクタ8は巻き取ったベルト5を解放してベルトカバー9を平常位置に戻す。即ち、乗員保護装置1は、一旦衝突準備状態となった後、可逆的に平常状態とされる。
一方、側面衝突が発生すると、図6(c)に示すように、肩部アンカレール3およびスルーアンカレール6のアクチュエータ6aが、肩部アンカ4およびスルーアンカ7を車両内側に引き込み、緊張したベルト5が乗員を車両内側に拘束する(以下、この状態を乗員保護装置1の「衝突状態」と称する。)。
【0027】
(作用)
次に、本実施の形態に係る乗員保護装置1の作用を説明する。
図7および図8は、乗員着席時における乗員保護装置1の作動前後の状態を示す図であり、図7は側方から見た状態、図8は正面から見た状態を示している。なお、図7においては、ベルトリターン用弾性体10を省略して示している。
図7(a)および図8(a)に示すように、側面衝突発生前においては、乗員保護装置1は、ベルトカバー9が平常位置となる平常状態であり、乗員保護装置1は乗員の動作、特に乗降に支障を与えることなく収納されている。
【0028】
そして、側面衝突発生の可能性が高まり、そのレベルがレベルL1あるいはレベルL2となると、図7(b)および図8(b)に示すように、リトラクタ8がベルト5を巻き取ることにより、ベルトカバー9が乗員の肘付近に移動して、衝突準備状態となる。このとき、衝突発生の可能性レベルがレベルL1である場合、低速でベルト5の巻き取りが所定時間行われ、衝突発生の可能性レベルがL2である場合、高速でベルト5の巻き取りが所定時間行われる。
【0029】
また、側面衝突発生の可能性が解消した場合、衝突準備状態となっていた乗員保護装置1は、可逆的に平常状態に戻される。
さらに、衝突準備状態において側面衝突が発生すると、図7(c)および図8(c)に示すように、リトラクタ8がテンショナ機能を作動させ、ベルト5をロックした拘束状態とすると共に、肩部アンカレール3およびスルーアンカレール6が、肩部アンカ4およびスルーアンカ7を車両内側に引き込み、乗員が車両内側に拘束される衝突状態となる。
【0030】
以上のように、本実施の形態に係る乗員保護装置1によれば、側面衝突に備えて衝突準備状態としておくことができ、側面衝突が発生した場合には、迅速に衝突状態とすることができる。また、側面衝突発生時には、ベルト5等が乗員を車両内側に拘束すると共に、柔軟性を有する線状部材であるベルト5および弾性力を有するベルトカバー9によって乗員に与えられる衝撃が吸収される。したがって、側面衝突発生時における乗員とドア等との衝突エネルギを軽減できると共に、車両側面方向の乗員拘束力を向上させることができる。
即ち、乗員保護装置1によれば、車両の側面衝突に対する乗員の保護性能を改善することができる。
【0031】
(応用例)
本実施の形態において、ベルトリターン用弾性体10の構成は、弾性機能を有し、所定のストロークを確保できるものであれば上記実施の形態に限られるものではなく、他の構成とすることも可能である。
図9は、ベルトリターン用弾性体10の他の構成例を示す図であり、図9(a)は、ベルトリターン用弾性体10としてゴムを用いた構成例、図9(b)は、ベルトリターン用弾性体10としてばねを用いた構成例を示している。また、ベルトリターン用弾性体10自体が弾性機能を有していなくても、非弾性体であるベルトやワイヤと、それをモータやぜんまい等によって弾性的に動作させて巻き取るリトラクタとの組み合わせによって、ベルトリターン用弾性体10を実現することも可能であり、図9(c)は、非弾性体であるベルトとリトラクタとの組み合わせによってベルトリターン用弾性体10を構成した例、図9(d)は、非弾性体であるワイヤとリトラクタとの組み合わせによってベルトリターン用弾性体10を構成した例を示している。非弾性体であるベルトやワイヤとリトラクタとの組み合わせによって、ベルトリターン用弾性体10を実現する場合、ベルトやワイヤの弛みを生じさせることなく巻き取ることができ、部材のレイアウトが容易になると共に、より高度な巻き取り制御を行うことができる。
【0032】
さらに、本実施の形態におけるベルトリターン用弾性体10の作動時に、乗員の腰部付近を保護するためのエアバッグモジュールを備えることも可能である。
図10は、乗員の腰部付近を保護するエアバックモジュール12の構成例を示す図であり、図10(a)はエアバッグの収納状態を示す図、図10(b)はエアバッグの展開状態を示す図である。
【0033】
図10(a)に示すように、エアバックモジュール12は、ベルトカバー9とベルトリターン用弾性体10との連結部分に設置され、乗員保護装置1が衝突準備状態となると、エアバッグモジュール12が乗員の腰部付近に位置することとなる。
ここで、エアバッグモジュール12がベルトリターン用弾性体10と干渉すると、作動時におけるベルト5の展開に支障を生ずるため、エアバッグモジュール12はベルト5に対し、車両外側に所定のオフセットをもって設置される。
【0034】
また、展開したエアバッグが乗員の腰部付近とドアトリムとの間に挟まれるようにするため、図10(b)に示すように、エアバッグの展開方向は車両下向きかつ外向きに設定され、エアバッグモジュール12の固定個所は上端部のみの片持ち状態とされている。
このように設置されたエアバッグモジュール12によって、側面衝突発生時に、乗員の腰部付近がドア等と衝突する場合の衝突エネルギを吸収することができる。
【0035】
なお、上記実施の形態においては、ベルト5が拘束部材を構成し、肩部アンカレール3、肩部アンカ4、スルーアンカレール6、スルーアンカ7、リトラクタ8、ベルトカバー9およびベルトリターン用弾性体12が切り替え手段を構成する。また、肩部アンカレール3、アクチュエータ3a、スルーアンカレール6およびアクチュエータ6aが移動手段を構成し、肩部アンカ4が第1のアンカ、スルーアンカ7が第2のアンカを構成する。また、ベルトカバー9およびベルトリターン用弾性体10が収納手段を構成し、ベルトカバー9がカバー部材を構成し、ベルトリターン用弾性体10が第1の引き込み手段を構成する。また、側面衝突センサ部11が衝突予測手段を構成し、肩部アンカレール3が第1アンカレール、スルーアンカレール6が第2アンカレールを構成し、アクチュエータ3aが第1のアクチュエータ、アクチュエータ6aが第2のアクチュエータを構成する。
【0036】
(第1の実施の形態の効果)
(1)衝突発生の可能性が高まった段階で、切り替え手段が、拘束部材を運転姿勢にある乗員の肩部から大腿部の側部に移動した衝突準備状態とする。
したがって、その後、衝突が発生した場合に、乗員保護装置1を迅速に衝突状態とすることが可能となり、側面衝突の初期拘束性能を高めることができる。また、拘束部材によって、側面衝突の衝突エネルギを吸収できる。さらに、座席側面の位置において、従来保護されなかった、着座した乗員の肩部、大腿部および腰部を結んだ領域を側面衝突から保護することができる。即ち、車両の側面衝突に対する乗員の保護性能が改善される。
【0037】
(2)側面衝突時に、移動手段が、拘束部材を車両内側に引き込むことで、乗員を肩部および大腿部で支持して車両内側に移動させる。
したがって、乗員とドア等との接触の可能性を低下させることができると共に、接触する場合であっても、相対速度を低下させることができることから、衝突エネルギを低減することができる。
(3)車両の側面衝突発生時に、拘束部材が乗員を車両内側に拘束した衝突状態となり、乗員が車両側部のドア等と衝突することを回避したり、ドア等と衝突する場合であっても、その衝撃を軽減したりすることができる。また、車両の側面衝突発生時に、乗員が車両側方に投げ出される事態も防ぐことができる。
【0038】
(4)柔軟性を有する線状部材を拘束部材として用いているため、軽量で移動させ易く、衝突準備状態あるいは衝突状態等に切り替える動作を迅速に行うことができる。また、ベルトを拘束部材とした場合、ベルト自体が一定の幅(面積)を有するため、乗員との接触面積を一定に確保することができ、衝突エネルギを分散して拘束することができる。
【0039】
(5)座席のフレーム(シートバック部およびシートクッション部)に、第1のアンカおよび第2のアンカを介して拘束部材が連結されているため、側面衝突時に乗員を拘束する荷重を分散支持することができると共に、乗員の肩部、大腿部および腰部を結ぶ領域を効果的に保護することができる。また、拘束部材をリトラクタで巻き取ることによって衝突準備状態とすると共に、収納手段によって拘束部材を収納し、平常状態とするため、外側部に拘束部材および切り替え手段を備えた座席の形態で、乗員保護装置を構成することができる。また、拘束部材を挿通するカバー部材を第1の引き込み手段によって平常位置に引き込む構成であるため、座席の外側部に沿って、乗員の乗降を妨げない状態に拘束部材を収納する機能を、簡単な構造によって実現できる。
【0040】
(6)カバー部材は、長さ方向の中央部に蛇腹構造を有しているため、座席がリクライニングされた場合にも、柔軟に追従できると共に、衝突準備状態あるいは衝突状態となる際に、拘束部材の張力が高められることを阻害しない構造とすることができる。
(7)第1の引き込み手段が弾性体によって構成されるため、弾性体が伸長される限度の距離に拘束部材を安定して表出させることができると共に、弾性体の弾性力で引き込むことにより、拘束部材を平常位置に戻すことができる。
【0041】
(8)第1の引き込み手段を、カバー部材に連結された線状部材とそれを巻き取るリトラクタとによって構成したため、拘束部材の弛みを生じさせることなく巻き取ることができ、部材のレイアウトが容易になると共に、より高度な巻き取り制御を行うことができる。
(9)衝突予測手段を備えたため、衝突の可能性を検出することができ、自動的に衝突準備状態に移行させることができる。
(10)衝突予測手段によって検出された衝突の可能性の高さに応じた速度で、衝突準備状態とすることができるため、衝突の可能性に応じて適切に側面衝突に備えることができる。
【0042】
(11)側面衝突発生時に、テンショナ機能が作動するため、衝突時の乗員拘束力を高めることができる。
(12)シートバック部に備えられた第1のアンカおよびシートクッション部に備えられた第2のアンカを第1および第2のアクチュエータによって引き込む構成であるため、乗員を肩部および大腿部において効果的に拘束し、柔軟性を有する拘束部材で乗員を強制的に車両内側に移動させることができる。
【0043】
(13)第1および第2のアクチュエータを火薬により作動するアクチュエータとした場合、ごく短時間で動作させることができる。
(14)第1および第2のアクチュエータをモータによるアクチュエータとした場合、可逆的に動作させることができるため、衝突発生前に予め第1および第2のアクチュエータを動作させることができ、乗員の初期拘束性能を向上させることができる。
【0044】
(第2の実施の形態)
(構成)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図11は、本実施の形態に係る乗員保護装置100の構成を示す図である。
図11に示すように、乗員保護装置100は、乗員が着座する座席101と、長板状部材によって構成され、一方の端部において座席101の外側部におけるシートバック部肩口に回転可能に支持されると共に、他方の端部にワイヤ103が連結された肩部アンカ102と、一端を肩部アンカ102に連結され、スルーアンカ106のワイヤホルダ106a,106bを挿通して他端をリトラクタ107に巻き取られているワイヤ103と、後述する略長方形のエアバッグ104aを、その端縁部にワイヤ103を挿通した状態で収納すると共に、シートバック部側面に設置されているエアバッグユニット104と、エアバッグユニット104と同様の構成で、シートクッション部側面に設置されているエアバッグユニット105と、肩部アンカ102と同様に長板状部材によって構成され、一方の端部において座席101の外側部におけるシートクッション部前端部に回転可能に支持されると共に、ワイヤ103を挿通するワイヤホルダ106a,106bを両端部に備えるスルーアンカ106と、スルーアンカ106のワイヤホルダ106a,106bを挿通されたワイヤ103の他端(肩部アンカ102に連結された一端の他方の端)を巻き取るリトラクタ107と、側面衝突センサ部108とを有している。
【0045】
これらのうち、肩部アンカ102は、上端部のアンカポイントでシートバック部側面の肩口に回転可能に支持され、下端部においてワイヤ103を連結している。そして、肩部アンカ102は、リトラクタ107がワイヤ103を巻き取り、ワイヤ103の張力が増した場合、アンカポイントを軸として、下端がスルーアンカ106のアンカポイントの方向を向くように回転する。また、肩部アンカ102は、ゴムやクッション等の弾性素材を乗員側の面に備えること等により、乗員に与える衝撃を軽減するパッドとして機能する。これにより、乗員と接触した場合の接触面積がベルト等に比べて小さいワイヤ103を使用している場合であっても、肩部アンカ102のパッドとしての機能により、乗員に加えられる力を分散させることが可能となる。
【0046】
エアバッグユニット104は、図12に示すような構成を有し、衝突時にガスの充填により展開すると共に、端縁部においてエアバッグ反力布104bがワイヤ103を挿通しているエアバッグ104aと、エアバッグ104aの端縁部に筒状部を形成し、その筒にワイヤ103を挿通しているエアバッグ反力布104bと、エアバッグ104aの展開時にエアバッグ巻き取り軸104dの吸気口104fを介してガスを供給するエアバッグインフレータ104cと、エアバッグ104aを巻き取って収納する際の軸となるエアバッグ巻き取り軸104dと、エアバッグ104aを巻き取る際の駆動力を発生する巻き取り駆動部104eと、エアバッグ巻き取り軸104dに形成され、インフレータ104cによって供給されたガスをエアバッグ104a内に送出する吸気口104fと、エアバッグ巻き取り軸104dに形成され、エアバッグ104a内のガスを排出させる排気口104gと、エアバッグユニット104を座席102のシートバック部に設置するための取り付けポイント104hとを備えている。
【0047】
このような構成の下、エアバッグユニット104は、平常状態(側面衝突発生の可能性がなく、側面衝突も発生していない状態)においては、図13(a)に示すように、エアバッグ巻き取り軸104dがエアバッグ104aを巻き取り、ワイヤ103をエアバッグユニット104に引き寄せた状態となっている。
また、衝突準備状態(衝突発生の可能性が高まった状態)においては、図13(b)に示すように、リトラクタ107がワイヤ103を巻き取り、ワイヤ103の張力が増すことによりエアバッグ104aが引き出された状態となる。このとき、エアバッグユニット104は、取り付けポイント104hを支点として、ワイヤ103の動きに伴い回転する。
【0048】
さらに、衝突状態(衝突が検出された状態)においては、図13(c)に示すように、エアバッグユニット104が作動し、エアバッグ104が展開した状態となる。
ただし、図13(b)の状態において、衝突発生の可能性が解消された場合、乗員保護装置2は、可逆的に平常状態となり、巻き取り駆動部104eがエアバッグ104aを巻き取ることにより、エアバッグ104aが再びエアバッグ巻き取り軸104dに巻き取られて、ワイヤ103がエアバッグユニット104に引き寄せられた状態となる。
なお、エアバッグユニット105も上述したエアバッグユニット104と同様の構成であるため、ここでは説明を省略する。
【0049】
図11に戻り、スルーアンカ106は、前端部のアンカポイントでシートクッション部側面の前端部に回転可能に支持され、前端部および後端部にワイヤ103を挿通して保持するワイヤホルダ106a,106bを備えている。そして、スルーアンカ106は、リトラクタ107がワイヤ103を巻き取り、ワイヤ103の張力が増した場合、アンカポイントを軸として、後端が肩部アンカ102のアンカポイントの方向を向くように回転する。また、スルーアンカ106は、肩部アンカ102と同様に、ゴムやクッション等の弾性素材を乗員側の面に備えること等により、乗員に与える衝撃を軽減するパッドとして機能する。これにより、乗員と接触した場合の接触面積が小さいワイヤ103を使用している場合であっても、スルーアンカ106のパッドとしての機能により、乗員に与えられる力を分散させることが可能となる。
【0050】
ここで、図11(a)に示すように、乗員保護装置2は、第1の実施の形態における乗員保護装置1と同様に、側面衝突センサ部108を備えている。この側面衝突センサ部108の構成は、第1の実施の形態における側面衝突センサ部11が実行する処理中、ステップS102の処理が異なるものである。即ち、ステップS102においては、テンショナ機能を作動させると共に、肩部アンカ4およびスルーアンカ7を引き込む処理を行うが、本実施の形態における側面衝突センサ部108は、テンショナ機能を作動させると共に、エアバッグユニット104を作動させ、エアバッグ104aを展開させるものである。なお、その他の処理については同様である。
【0051】
(動作)
続いて、乗員保護装置100の動作について説明する。
図14は、衝突発生前と衝突発生時の乗員保護装置100の状態を示す図である。
図14において、衝突発生前の乗員保護装置100は、図14(a)に示すように、肩部アンカ102がシートバック部側面肩口に回転可能に支持されていると共に、スルーアンカ106がシートクッション部側面の前端部に回転可能に支持されている。また、リトラクタ107は、エアバッグユニット104,105がエアバッグを巻き取った状態を維持する張力でベルト103を巻き取っている(乗員保護装置100の平常状態)。
【0052】
そして、衝突発生の可能性がレベルL1,L2となった場合、図14(b)に示すように、リトラクタ107がベルト103を巻き取ることにより、エアバッグユニット104,105のエアバッグが引き出され、エアバッグが収縮した状態でエアバッグユニット外に表出する(乗員保護装置100の衝突準備状態)。
その後、衝突発生の可能性が回避されると、リトラクタ107は巻き取ったベルト103を解放し、エアバッグユニット104,105がエアバッグを巻き取ることにより、平常状態に戻る。
一方、衝突が発生すると、図14(c)に示すように、エアバッグユニット104,105がエアバッグを展開し、乗員を側面衝突の衝撃から保護する状態となる(乗員保護装置100の衝突状態)。
【0053】
(作用)
本実施の形態に係る乗員保護装置100は、上端をシートバック部肩口に回転可能に支持された肩部アンカ102と、後端および前端にワイヤホルダ106a,106bを備えて前端をシートクッション部側面に回転可能に支持されたスルーアンカ106と、肩部アンカ102の下端に連結され、スルーアンカ106の後端に設置されたワイヤホルダ106aおよび前端に設置されたワイヤホルダ106bを挿通するワイヤ103の他端を巻き取るリトラクタ107を備えている。また、シートバック部側面に設置され、ワイヤ103をエアバッグの端縁部に挿通するエアバッグユニット104と、シートクッション部側面に設置され、ワイヤ103をエアバッグの端縁部に挿通するエアバッグユニット105と、側面衝突発生の可能性および側面衝突の発生を検出する側面衝突センサ部108を備えている。
【0054】
そして、側面衝突発生の可能性が高まった場合、リトラクタ107がワイヤ103を巻き取ることにより、ワイヤ103の張力が上昇し、肩部アンカ102およびスルーアンカ103が回転して乗員の側部に表出する。さらに、エアバッグユニット104,105から、ワイヤ103に引き出されたエアバッグが表出し、側面衝突が発生した場合には、エアバッグが展開する。
【0055】
このように、肩部アンカ102、スルーアンカ103およびエアバッグがワイヤ103と相まって乗員を側面衝突の衝撃から保護するため、これらの部材と乗員との接触面積が大きくなり、衝突時に乗員に与えられる力を分散することができる。
また、車両の側面衝突が検出された場合、エアバッグが展開することにより、乗員とドアとの間で生ずる衝撃を緩衝することができると共に、乗員保護装置100を迅速に衝突準備状態から衝突状態とすることが可能となる。
【0056】
なお、上記実施の形態においては、ワイヤ103が拘束部材を構成し、肩部アンカ102、スルーアンカ106、リトラクタ107およびエアバッグユニット104,105が切り替え手段を構成する。また、エアバッグユニット104,105が収納手段を構成する。さらに、エアバッグ104a,105aが連結部材を構成し、エアバッグユニット104,105が第2の引き込み手段を構成する。さらに、側面衝突センサ部108が衝突予測手段を構成する。また、肩部アンカ102が第1のアンカ、スルーアンカ106が第2のアンカを構成する。
【0057】
(第2の実施の形態の効果)
(1)第1および第2のアンカが長板状部材によって構成されているため、乗員との接触面積がベルト等より小さいワイヤ状の部材を拘束部材として用いた場合にも、衝突時における乗員との接触面積を大きくすることができる。
(2)帯状の連結部材がエアバッグによって構成されているため、乗員の肩部から腰部および大腿部における接触位置で、エアバッグが展開することにより衝突エネルギを吸収することができる。
(3)第1あるいは第2のアンカの乗員側の面に弾性部材が備えられているため、側面衝突時の衝突エネルギを吸収することができる。
【0058】
以上、第1および第2の実施形態においては、座席側面に拘束手段を備えることとして説明したが、座席側面位置に表出して側面衝突時に乗員を拘束できる構成であれば、例えば、車室内の天井と床とにベルト5等を渡すことによっても同様の効果を実現することが可能である。また、乗員を拘束する部材として、ベルトやワイヤ以外のもの、例えば、長板状の部材や網状の部材あるいは鎖状の部材を用いることも可能である。
【0059】
また、第2の実施の形態においては、側面衝突の発生時に、肩部アンカ102およびスルーアンカ106を車両内側に引き込んで乗員を拘束する機能を有しない構成を例に挙げて説明したが、第1の実施の形態と同様に、側面衝突が発生した場合に、肩部アンカ102およびスルーアンカ106を車両内側に引き込んで乗員を拘束することとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る乗員保護装置1の構成を示す図である。
【図2】ベルトカバー9の構造を示す図である。
【図3】ベルトカバー9とベルトリターン用弾性体10との連結構造例を示す図である。
【図4】側面衝突発生の可能性を検出した場合の側面衝突センサ部11の処理を示すフローチャートである。
【図5】側面衝突の発生を検出した場合の側面衝突センサ部11の処理を示すフローチャートである。
【図6】乗員保護装置1の動作を示す図である。
【図7】乗員着席時における乗員保護装置1の作動前後の状態を示す側方図である。
【図8】乗員着席時における乗員保護装置1の作動前後の状態を示す正面図である。
【図9】ベルトリターン用弾性体10の他の構成例を示す図である。
【図10】乗員の腰部付近を保護するエアバックモジュール12の構成例を示す図である。
【図11】本実施の形態に係る乗員保護装置100の構成を示す図である。
【図12】エアバッグユニット104aの構成を示す図である。
【図13】エアバッグユニット104の動作を示す図である。
【図14】乗員保護装置100の動作を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1,100 乗員保護装置、2,101 座席、3 肩部アンカレール、3a,6a アクチュエータ、4,102 肩部アンカ、5 ベルト、6 スルーアンカレール、7,106 スルーアンカ、8,107 リトラクタ、9 ベルトカバー、10 ベルトリターン用弾性体、11,108 側面衝突センサ部、11a 衝突予測部、11b ベルト巻き取り処理部、11c 衝突検出部、11d プリクラッシュセンサ、11e クラッシュセンサ、103 ワイヤ、104,105 エアバッグユニット、104a エアバッグ、104b エアバッグ反力布、104c インフレータ、104d エアバッグ巻き取り軸、104e 巻き取り駆動部、104f 吸気口、104g 排気口、104h 取り付けポイント




 

 


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