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発明の名称 車両のキャンバ角制御装置およびキャンバ角制御方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−1501(P2007−1501A)
公開日 平成19年1月11日(2007.1.11)
出願番号 特願2005−186003(P2005−186003)
出願日 平成17年6月27日(2005.6.27)
代理人 【識別番号】100119644
【弁理士】
【氏名又は名称】綾田 正道
発明者 園田 恭幸 / 古性 裕之 / 牧田 光弘
要約 課題
車高調整機構を設けることなく、旋回時の車体ロール角を小さくできる車両のキャンバ角制御装置を提供する。

解決手段
検出された横Gに応じて、車体ロール角θをゼロとするサスペンション取り付け位置角θ'を算出し(ステップS2)、算出したサスペンション取り付け位置角θ'に基づいて、旋回内側のキャンバ角φiを旋回外側のキャンバ角φoよりもネガティブ方向に大きな角度とする(ステップS3)。
特許請求の範囲
【請求項1】
旋回内側のキャンバ角と旋回外側のキャンバ角を独立に制御するキャンバ角制御手段を備えた車両のキャンバ角制御手段において、
前記キャンバ角制御手段は、車両の旋回時、旋回内側のキャンバ角を旋回外側のキャンバ角よりも大きな角度とすることを特徴とする車両のキャンバ角制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両のキャンバ角制御装置において、
車両の横加速度を検出する横加速度検出手段と、
検出された横加速度に応じて、車体ロール角を低減させるサスペンション取り付け位置角を算出するサスペンション取り付け位置角算出手段と、
を備え、
前記キャンバ角制御手段は、算出されたサスペンション取り付け位置角に基づいて、旋回内側のキャンバ角と旋回外側のキャンバ角を制御することを特徴とする車両のキャンバ角制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両のキャンバ角制御装置において、
前記キャンバ角制御手段は、車輪の横滑り角が飽和領域のとき、操舵角に応じて車輪の横滑り角が小さくなる方向に旋回内側のキャンバ角と旋回外側のキャンバ角を変化させることを特徴とする車両のキャンバ角制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車両のキャンバ角制御装置において、
前記キャンバ角制御手段は、旋回内側のキャンバ角を機構上の最大値未満に制限することを特徴とする車両のキャンバ角制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車両のキャンバ角制御装置において、
前記キャンバ角制御手段は、車両ばね上のロール挙動の減衰項の振動を抑制するように、左右キャンバ角を制御することを特徴とする車両のキャンバ角制御装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の車両のキャンバ角制御装置において、
前記キャンバ角制御手段は、常用横加速度域でロール運動における減衰項ができるだけ大きな値となるように、旋回内側のキャンバ角と旋回外側のキャンバ角を制御することを特徴とする車両のキャンバ角制御装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6に記載の車両のキャンバ角制御装置において、
車両の横加速度を検出する横加速度検出手段と、
検出された横加速度に応じて、車体ロール角をゼロとするサスペンション取り付け位置角を算出するサスペンション取り付け位置角算出手段と、
を備え、
前記キャンバ角制御手段は、算出されたサスペンション取り付け位置角に基づいて、旋回内側のキャンバ角と旋回外側のキャンバ角を制御することを特徴とする車両のキャンバ角制御装置。
【請求項8】
旋回内側のキャンバ角と旋回外側のキャンバ角を独立に制御する車両のキャンバ角制御手段において、
車両の旋回時、旋回内側のキャンバ角を旋回外側のキャンバ角よりも大きな角度とし、車体ロール角を減少させることを特徴とする車両のキャンバ角制御方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋回内側のキャンバ角と旋回外側のキャンバ角を独立に制御する車両のキャンバ角制御装置およびキャンバ角制御方法の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両のキャンバ角制御装置では、旋回時にキャンバ角を変化させることでタイヤの限界性能を向上させている。キャンバ角制御は、特に限界横Gの向上に効果的なこと、キャンバによる横力発生が横滑り角による横力発生よりも応答性が高いこと等の利点を有する(例えば、非特許文献1参照)。
【非特許文献1】http://www.fast-cars.ch/Mercedes-Benz_F400_Carving_pictures.htm(Daimler製コンセプトカーF400)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
キャンバ角制御は限界領域のタイヤの性能向上には寄与するが、通常領域では旋回外側のタイヤのキャンバ角をネガティブ方向に傾けるため、サスペンションの取り付け点が下がることにより、旋回時に車体が旋回外側に傾くロール挙動が大きくなるという問題があった。これに対し、上記従来技術では、ロール角の制御に油圧による車高調整を用いているが、システムの複雑化と重量増を招いてしまう。
【0004】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、車高調整機構を設けることなく、旋回時の車体ロール角を小さくできる車両のキャンバ角制御装置およびキャンバ角制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明の車両のキャンバ角制御装置では、
旋回内側のキャンバ角と旋回外側のキャンバ角を独立に制御するキャンバ角制御手段を備えた車両のキャンバ角制御手段において、
前記キャンバ角制御手段は、車両の旋回時、旋回内側のキャンバ角を旋回外側のキャンバ角よりも大きな角度とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、旋回内側のキャンバ角を旋回外側のキャンバ角よりも大きな角度とすることにより、旋回内側のサスペンションの取り付け位置(高さ)を下げることができ、車高調整機構を設けることなく、旋回時の車体ロール角を小さく抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明の車両のキャンバ角制御装置を実現するための最良の形態を、実施例1,2に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の車両のキャンバ角制御装置の構成を示すブロック図であり、実施例1の車両のキャンバ角制御装置は、操舵角検出部1と、制御装置部(キャンバ角制御手段)2と、車両状態検出部3と、右前輪(FR)キャンバアクチュエータ4-1、左前輪(FL)キャンバアクチュエータ4-2、右後輪(RR)キャンバアクチュエータ4-3、左後輪(RL)キャンバアクチュエータ4-4と、を備えている。
【0009】
ドライバは、ステアリングホイールを回転して操舵角を入力する。ドライバの入力した操舵角は、操舵角検出部1で検出され、制御装置部2に伝えられる。車両状態検出部3において検出された各種車両状態も制御装置部2に伝えられる。ここで使用される各種車両状態には、車両運動制御に関わる車両状態である、車速、ヨーレート、横Gの内の1つ以上を指す(横加速度検出手段)。
【0010】
制御装置部2では、操舵角と車両状態量(車速、ヨーレート、横G)から各輪の目標キャンバ角をそれぞれ生成し、生成した目標キャンバ角に応じた指令を、キャンバアクチュエー4-1,4-2,4-3,4-4にそれぞれ伝える。キャンバアクチュエータ4-1,4-2,4-3,4-4は、車輪のキャンバ角を、制御装置部2から指令値に追従させる。
【0011】
ここで、図2,3,4に示すように、操舵角θd、転舵角δf、旋回内側前輪キャンバ角φfi、旋回外側前輪キャンバ角φfo、旋回内側後輪キャンバ角φri、旋回外側後輪キャンバ角φroは、ステアリングホイール5を反時計周りに回す方向を正、車両上方から見て前輪6を反時計周りに回す方向を正、車両後方から見て後輪7を反時計周りに倒す方向を正とする。
【0012】
制御装置部2は、車両の旋回時、少なくとも旋回内側のキャンバ角φiを旋回外側のキャンバ角φoよりもポジティブまたはネガティブ方向に大きく付けることで、旋回内側のサスペンションの取り付け部の地上高を下げ、ばね上車体のロールを抑制する。
【0013】
次に、作用を説明する。
[目標キャンバ角生成方法]
制御装置部2における目標キャンバ角の生成方法を説明する。
まず、ロール方向の動きに関わる各パラメータを以下に示す。一般的でないパラメータに関しては、図5,6,7にも示す。また、参考までに、各パラメータのいくつかには、セダン型乗用車における代表的な値を示す。以降この車両パラメータを持つ車両を参照車両と呼ぶ。
ドライバ操舵角:θd[rad]
前輪転舵角:δf[rad]
後輪転舵角:δr[rad]
前輪対地キャンバ角:φf[rad]
後輪対地キャンバ角:φr[rad]
車両横滑り角:β[rad]
前輪横滑り角:βf[rad]
後輪輪横滑り角:βr[rad]
前輪コーナリングパワー:Cf[N/rad]
後輪コーナリングパワー:Cr[N/rad]
前輪横力:Ff[N]
後輪横力:Fr[N]
【0014】
車速:v[m/s]
車重:m[kg] (参照車両:1,800[kg])
ヨーレート:γ[rad/s]
横G:α[m/s2]
重心-ロールセンター間距離:hCG-RC[m](参照車両:0.55[m])
車両横変位:y[m]
車体ロール角:θ[rad]
ロール剛性:kr[Nm/rad](参照車両:120,000[Nm/rad])
ロール減衰:Cr[Nm/(rad/s)](参照車両:8,000[Nm/(rad/s)])
ばね上慣性モーメント:Ir[kgm2](参照車両:675[kgm2])
ばね上質量:mu[kg](参照車両:1,600[kg])
サスペンションばね定数:ks[N/m](参照車両:2,200[N/m])
サスペンション減衰係数:Cs[N/(m/s)](参照車両:6,000[N/(m/s)])
前輪トレッド:tr[m](参照車両:1.5[m])
内側輪中心軸変位:dh[m]
サスペンション取り付け位置角:θ'[rad]
サスペンション取り付け位置間距離:tr'[m]
タイヤ半径:R[m](参照車両:0.325[m])
内輪車輪対地キャンバ角:φi[rad]
外輪車輪対地キャンバ角:φo[rad]
スタビライザのロール剛性(前後合計):kr_st[Nm/rad](参照車両:52,000[Nm/rad])
【0015】
車両のロールセンタ周りの運動は、重力によるロールモーメントが小さいとして、以下の式(1)で表すことができる。なお、以下の説明において、各パラメータの上方に付記された1つのドット(・)は1階微分値を示し、2つのドット(・・)は2階微分値を示す。
【数1】


【0016】
車輪の対地キャンバ角が常にゼロである場合、サスペンションのロール回転方向の剛性Krと粘性Crは、上下方向の剛性Ksと粘性Csで以下の通りに表すことができる。
【数2】


【0017】
旋回前輪のキャンバ角をφとしたときには、以下の内側輪中心軸変位dhは式(4)の通りとなり、サスペンション取り付け位置角θ'は式(5)の通りとなる。
【数3】


【0018】
サスペンション取り付け位置角θ'の変化は、ロールセンタ周りの運動に影響し、ロールセンタ周りの力のつりあいは、式(6)の通りとなる。
【数4】


【0019】
式(6)を変形すると、式(7)となり、θ'を式(8)となるようにキャンバ角φを動かすことで、式(7)の右辺はゼロとなり、ロール角θは発生しなくなる。
【数5】


【0020】
ここで、式(8)が成り立つためには、θ'を式(9)に示すように横Gに応じた角度とすればよい。θ'を実現するためには旋回内側のキャンバ角φiを式(10)に示すように設定すればよい。
【数6】


【0021】
すなわち、旋回内側のキャンバ角φiは、式(9)と式(10)を用いて横Gより求められる。参照車両において最大横Gを8[m/s2]とすれば式(9)よりθ'の最大値は3.1[deg]程度となり、式(10)としたとき最大のキャンバ角φiは40[deg]程度となる。
旋回内側前輪キャンバ角 :φfi[rad]
旋回外側前輪キャンバ角 :φfo[rad]
旋回内側後輪キャンバ角 :φri[rad]
旋回外側後輪キャンバ角 :φro[rad]
【0022】
キャンバ角に対する横力の比例係数をDとし、添え字fi,fo,ri,roはそれぞれ旋回内側前輪、旋回外側前輪、旋回内側後輪、旋回外側後輪を示す。左右の比例係数の合計を前輪、後輪それぞれ、Df,Drとおく。同じく左右輪のコーナリングパワーの合計を前輪、後輪それぞれCf、Crとしているが、各輪のコーナリングパワーについてはCに添え字fi,fo,ri,roを付けたものとして、式(11)、(12)と表すことができる。
【数7】


【0023】
このとき、水平面内(x-y平面)での車両の横方向の力つりあいの式と重心周りのモーメントのつりあいの式は、それぞれ式(13)、(14)のようになる。
【数8】


【0024】
車両が限界横G付近にあるときには、旋回外側のキャンバ角がネガティブ方向となる方がタイヤはより高い限界を持つことができる。ここで、旋回外側のキャンバ角をネガティブ方向とすると、CfoとCroは旋回外側のキャンバ角に応じて大きな値となるため、式(13)、(14)においてCfとCrが大きな値となり、タイヤの横滑り角は減少する。
【0025】
そこで、タイヤ横滑り角を用いて、タイヤが限界値に近い横滑り角を持つときドライバの操舵に応じて旋回外側のキャンバ角を大きくすることで、限界横Gを向上できる。このときのタイヤの切り増し転舵角dδに対するキャンバの切り増し角dφの比をkδφとすることで、式(15)となるように制御する。
【数9】


【0026】
このとき、kδφは式(13)と式(14)をタイヤ横滑り角βf・βrについて解き、式(16)、式(17)に示すようにβfとβrのδによる偏微分の値が負となるように設定する。もしくは数値計算により、δの微小変位に対してβfとβrが負の微小変位を持つように設定する。
【0027】
旋回内側のキャンバ角についても同じように設定し、タイヤ横滑り角を減らす方に変化させる。
【数10】


【0028】
以上の構成により、通常領域においては車両のロール挙動を改善し、限界付近ではタイヤの限界特性を向上させる。
【0029】
[キャンバ角設定制御処理]
図8は、実施例1の制御装置部2で実行されるキャンバ角設定制御処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。
【0030】
ステップS1では、前輪横滑り角βfがタイヤ限界値に近い所定の横滑り最大値βfmax以下であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS2へ移行し、NOの場合にはステップS4へ移行する。
【0031】
ステップS2では、横Gに応じて、車体ロール角θがゼロとなるサスペンション取り付け位置角θ'を、式(9)により演算し、ステップS3へ移行する(サスペンション取り付け位置角算出手段)。
【0032】
ステップS3では、ステップS2で求めたサスペンション取り付け位置角θ'を実現する旋回内側のキャンバ角φiを、式(10)により演算し、リターンへ移行する。
【0033】
ステップS4では、ドライバの操舵(タイヤの切り増し転舵角dδ)に応じたキャンバ切り増し角dφを、式(15)により演算し、リターンへ移行する。
【0034】
すなわち、前輪のタイヤ横滑り角βfが横滑り最大値βfmax以下である場合には、図8のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3へと進む流れとなり、ステップS3では、ロール角θをゼロとするような旋回内側のキャンバ角φiが算出される。よって、タイヤの横滑り角が限界範囲内となる通常領域では、旋回時の車体ロール角θを小さく抑えることができ、車両のロール挙動が改善される。
【0035】
前輪のタイヤ横滑り角βfが横滑り最大値βfmaxを超える場合には、ステップS1→ステップS4へと進み、ステップS4では、ドライバの操舵に応じて、タイヤ横滑り角βfを減少させるキャンバ角φの切り増し角dφが算出される。よって、タイヤの横滑り角限界付近では、タイヤ横滑り角を減少させ、タイヤの限界特性を向上させることができる。
【0036】
次に、効果を説明する。
実施例1の車両のキャンバ角制御装置にあっては、以下に列記する効果が得られる。
【0037】
(1) 制御装置部2は、車両の旋回時、旋回内側のキャンバ角φiを旋回外側のキャンバ角φoよりも大きな角度とするため、旋回内側のサスペンションの取り付け位置(高さ)を下げることができ、車高調整機構を設けることなく、旋回時の車体ロール角θを小さく抑えることができる。
【0038】
(2) 車両の横Gを検出する車両状態検出部3と、検出された横Gに応じて、車体ロール角θをゼロとするサスペンション取り付け位置角θ'を算出するサスペンション取り付け位置角算出手段(ステップS2)と、を備え、制御装置部2は、算出されたサスペンション取り付け位置角θ'に基づいて、旋回内側のキャンバ角φiと旋回外側のキャンバ角φoを制御する。よって、旋回時の車体ロール角θをゼロに近づけることができる。
【0039】
(3) 制御装置部2は、前輪の横滑り角βfがタイヤ限界付近の横滑り最大値βfmax以上、すなわち、車輪の横滑り角βfが飽和領域のとき、操舵角(タイヤの切り増し転舵角dδ)に応じて、横滑り角βfが減少する方向に旋回内側のキャンバ角φiと旋回外側のキャンバ角φoを変化させる。よって、タイヤ限界付近におけるタイヤの限界特性が高まり、限界横Gの向上を図ることができる。
【実施例2】
【0040】
実施例2は、キャンバ角を機構上の最大値未満に制限する例である。なお、構成については、図1に示した実施例1と同様であるため、説明を省略する。
【0041】
次に、作用を説明する。
[目標キャンバ角生成方法]
実施例2では、キャンバ角φiが機構的な制約から最大キャンバ角φimaxとなる場合には、実施例1の方法ではなく、以下の通りとする。
【0042】
キャンバ角φiがゼロのとき、すなわちθ'がゼロのとき、横Gに対するロール角θの応答は、定常ゲインをGθ、減衰係数をζ、固有振動数をωnとしたとき、式(1)の変形として、以下の式(18)〜(21)に置き換えることができる。
【数11】


【数12】


【0043】
ここで、θ'を以下の式(22)とし、式(6)を代入することで、ロールセンタ周りの運動方程式は、以下の式(23)となる。
【数13】


【0044】
このとき、式(23)を変形し、横Gに対するロール角θの応答は定常ゲインをGθ'、減衰係数をζ'、固有振動数をωn'としたとき、以下の式(24)〜(27)に置き換えることができる。
【数14】


【0045】
このとき、減衰係数ζ'はkの値により自由に設定でき、0.7〜0.8程度とするのがよい。kはζ'を用いて、以下の式(28)のようにおくことができる。
【数15】


θ'は、式(22)と式(24)より導かれる以下の式(29)に従い、横Gに応じて決定する。
【数16】


【0046】
[目標減衰係数ζ'に応じた目標キャンバ角生成ロジック]
キャンバ角φiの機構的条件が厳しく、ロール中にキャンバ角φiが最大キャンバ角φimaxとなる場合には、キャンバ角φiが最大キャンバ角φimaxとなることによりロールの応答が変化することが違和感となる恐れがある。実施例2では、通常の運転で使用する横Gが0.4G程度までであることから、横Gが0.4G以下のときにキャンバ角φiが最大キャンバ角φimaxとならない最も減衰係数ζ'が0.7〜0.8に近い値となるkの値となるようにキャンバ角φiを設定する。実施例2では、kの値を、式(26)においてζ'を0.7程度とするものとして求めている。
【0047】
ここで、減衰係数ζ'を0.7〜0.8とするためには、kを1以上としなければならない場合もあり、この場合には、ζ'がなるべく大きくなようにkの値を設定する。実施例1で述べた参照車両においては、この場合が成立し、減衰係数ζ'を0,55とした場合、kは0.50程度となり、最大キャンバ角φiを30[deg]で成り立たせることができる。
【0048】
また、実施例2では、タイヤ横滑り角βfの大きい領域では、実施例1と同様の手法により、旋回外側のキャンバ角φiをドライバ操舵角θdに応じてネガティブ方向に変化させる。
【0049】
[キャンバ角設定制御処理]
図9は、実施例2の制御装置部2で実行されるキャンバ角設定制御処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。なお、図8に示した実施例1と同様の処理を行うステップには、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0050】
ステップS11では、ロール中にキャンバ角φiが最大キャンバ角φimaxとならないような所望の減衰係数ζ'(例えば、0.7〜0.8)に応じたkを、式(28)により演算し、ステップS12へ移行する。
【0051】
ステップS12では、ステップS11で求めたkと横Gに応じて、サスペンション取り付け位置角θ'を、式(29)により演算し、ステップS3へ移行する。
【0052】
すなわち、前輪のタイヤ横滑り角βfが横滑り最大値βfmax以下である場合には、図9のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS11→ステップS12→ステップs13へと進む流れとなり、ステップS12では、減衰係数ζ'が所望の値(0.7〜0.8)となるようなキャンバ角φiが算出される。よって、キャンバ角φiが最大キャンバ角φimaxとなり、車両のロール応答特性が変化するのを防止できる。また、キャンバ制御に伴う車両ばね上のロール挙動の振動を抑制できる。
【0053】
次に、効果を説明する。
実施例2の車両のキャンバ角制御装置にあっては、実施例1の効果(1)〜(3)に加え、以下に列挙する効果が得られる。
【0054】
(4) 制御装置部2は、旋回内側のキャンバ角φiを機構上の最大値未満に制限するため、ロール中にキャンバ角φiが最大キャンバ角φimaxとなることで、車両のロール応答が変化し、ドライバに違和感を与えるのを防止できる。
【0055】
(5) 制御装置部2は、車両ばね上のロール挙動の減衰項(減衰係数ζ')の振動を抑制するように、旋回内側のキャンバ角φiと旋回外側のキャンバ角φoを制御するため、キャンバ制御に伴う車両ばね上のロール挙動の振動を抑制できる。
【0056】
(6) 制御装置部2は、常用横G域(0.4G)でロール運動における減衰項(減衰係数ζ')ができるだけ大きな値(0.7〜0.8)となるように、旋回内側のキャンバ角φiと旋回外側のキャンバ角φoを制御する。よって、常用横G域において、車両ばね上のロール挙動特性を所望の特性に維持できる。
【0057】
以上、本発明を実施するための最良の形態を、実施例1,2に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は、実施例1,2に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【0058】
例えば、実施例2では、サスペンション取り付け位置角θ'を横Gに応じて、式(22)と式(24)により導かれる式(29)を用いて決定する例を示したが、サスペンション取り付け位置角θ'は、ロール角θとkに応じて式(22)のように決定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施例1の車両のキャンバ角制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施例1の操舵角、前輪転舵角の説明図である。
【図3】実施例1の前輪キャンバ角の説明図である。
【図4】実施例1の後輪キャンバ角の説明図である。
【図5】車体ロールに関わるパラメータの説明図である。
【図6】車体ロールに関わるパラメータ(ばね・ダンパー)の説明図である。
【図7】実施例1の車体ロールに関わるパラメータの説明図である。
【図8】実施例1の制御装置部2で実行されるキャンバ角設定制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】実施例2の制御装置部2で実行されるキャンバ角設定制御処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0060】
1 操舵角検出部
2 制御装置部
3 車両状態検出部
4-1 右前輪キャンバアクチュエータ
4-2 左前輪キャンバアクチュエータ
4-3 右後輪キャンバアクチュエータ
4-4 左後輪キャンバアクチュエータ




 

 


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