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発明の名称 車両用空調制御装置及び車両用空調制御方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−1464(P2007−1464A)
公開日 平成19年1月11日(2007.1.11)
出願番号 特願2005−184864(P2005−184864)
出願日 平成17年6月24日(2005.6.24)
代理人 【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
発明者 辻 正文
要約 課題
乗員の背景温度に応じて空調空気を送風することで乗員の特定部位の検出を継続して行って、乗員の快適性を確実に向上させる。

解決手段
温度設定部25により車室内の目標温度を設定すると共に、乗員検出部22により車室内における乗員の有無を検出して、乗員が検出されている場合に表面温度検出部24で乗員の表面温度を検出し、車室内の目標温度に基づいて、目標表面温度検出部26で乗員の表面温度に対する目標表面温度を算出する。乗員の特定部位の表面温度と目標表面温度とが一致するように風向・吹き出し口決定部27及び制御部28によって空調空気の風温、風量又は風向を制御している時に、乗員の特定部位と背景との温度差に基づいて、温度差が所定値よりも小さくならないように風温、風量又は風向を制御する。
特許請求の範囲
【請求項1】
車両に搭載され、空気を冷却又は加熱して車室内に空調空気として送風させる車両用空調制御装置において、
前記車室内の温度に応じた画素値からなる熱画像を撮像する熱画像撮像手段と、
前記車室内の目標温度を設定する温度設定手段と、
前記熱画像撮像手段により撮像された熱画像から、前記車室内における乗員の有無を検出する乗員検出手段と、
前記乗員検出手段により乗員が検出されている場合に、前記乗員の表面温度を検出する乗員表面温度検出手段と、
前記温度設定手段で設定された車室内の目標温度に基づいて、乗員の表面温度に対する目標表面温度を算出する目標表面温度算出手段と、
前記乗員表面温度検出手段で検出された乗員の特定部位の表面温度と、前記目標温度算出手段で算出された目標表面温度とが一致するように空調空気の風温、風量又は風向を制御し、前記乗員表面温度検出手段で検出された乗員の特定部位の表面温度と、当該乗員の特定部位の背景の温度との温度差に基づいて、当該温度差が所定値よりも小さくならないように空調空気の風温、風量又は風向を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする車両用空調制御装置。
【請求項2】
前記乗員検出手段により乗員が検出されている場合に、前記熱画像撮像手段により撮像された熱画像内の乗員の特定部位の表面温度を検出する特定部位温度検出領域と、当該特定部位温度検出領域に対する背景との境界付近に、当該乗員の特定部位に対する背景の表面温度を検出するための背景温度検出領域とを設定する検出領域設定手段を更に備え、
前記乗員表面温度検出手段は、前記特定部位温度検出領域の熱画像を用いて乗員の特定部位の表面温度を検出すると共に、前記背景温度検出領域の熱画像を用いて背景の表面温度を検出して、乗員の特定部位の表面温度と背景の表面温度との温度差を演算することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記乗員表面温度検出手段で検出された乗員の表面温度と背景の表面温度の差が所定値以下になった場合に、乗員の表面温度と背景の表面温度との温度差が大きくなるように前記空調空気の風温、風量又は風向を制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用空調制御装置。
【請求項4】
空調空気の吹き出し口位置又は所定の空調空気の吹き出し口の風向を決定する風向決定手段を更に備え、
前記風向決定手段は、前記乗員表面温度検出手段で検出された乗員の特定部位の表面温度と背景の表面温度との差が所定値以下になった場合に、乗員の特定部位のうち、乗員の表面温度と背景の表面温度との温度差が大きい部位に空調空気を吹き出させることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の車両用空調制御装置。
【請求項5】
乗員の特定部位に空調空気を吹き出す特定部位用吹き出し口と、乗員の特定部位以外に空調空気を吹き出す他の吹き出し口とを有し、
前記制御手段は、乗員の特定部位の表面温度と背景の表面温度との温度差が所定値以下になった場合に、空調空気の吹き出し口を、前記特定部位用吹き出し口から、前記他の吹き出し口に変更させることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の車両用空調制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、乗員の特定部位の表面温度と背景の表面温度との温度差が所定値以下になった場合に、当該乗員の特定部位に対する空調空気の吹き出しを停止させることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の車両用空調制御装置。
【請求項7】
前記乗員検出手段は、熱画像から、予め設定した温度値の段差以上の画像領域を乗員の特定部位の輪郭部分として抽出し、
前記乗員の特定部位の表面温度と背景の表面温度との温度差と比較される前記所定値は、前記乗員検出手段で乗員の特定部位の輪郭部分を抽出するための予め設定した温度値の段差よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項3乃至請求項6の何れか一項に記載の車両用空調制御装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記乗員検出手段により前記乗員が前記車室内に検出された後の所定期間では、前記目標表面温度算出手段により算出された前記目標表面温度を所定の値だけ増加又は減少させることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の車両用空調制御装置。
【請求項9】
空気を冷却及び加熱して車室内に空調空気として送風させる車両用空調制御方法において、
前記車室内の目標温度を設定すると共に前記車室内における乗員の有無を検出して、乗員が検出されている場合に前記乗員の表面温度を検出し、
前記車室内の目標温度に基づいて、前記乗員の表面温度に対する目標表面温度を算出し、
前記乗員の特定部位の表面温度と、前記目標表面温度とが一致するように空調空気の風温、風量又は風向を制御している時に、前記乗員の特定部位の表面温度と、当該乗員の特定部位の背景の温度との温度差に基づいて、当該温度差が所定値よりも小さくならないように空調空気の風温、風量又は風向を制御することを特徴とする車両用空調制御方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内又は車室外の空気を冷却及び加熱して車室内を空調するために送風させる車両用空調制御装置及び車両用空調制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される車両用空調制御装置においては、例えば真夏日や真冬日など、気温が高い状況や気温が低い状況の下では、車両の車室内に乗員が着座後、乗員の快適性をなるべく早く回復するよう車室内の気温を制御することが要求される。
【0003】
このような従来の空調装置の一例としては、特許文献1に記載されたものが知られている。この特許文献1に開示された空調装置は、車両のエンジンを始動するイグニッションスイッチをオン状態にしてから所定時間(例えば10秒間)が経過するまでの期間、或いは車室内温度が初期状態から所定値(例えば7℃)以上下がるまでの期間、ルーバ(吹き出し口の風向調整板)の向きを制御することで、例えば気温が高い状況の下で乗員の温感を早く下げることを実現している。
【0004】
具体的には、センタグリルに配置されたセンタルーバの向きを運転席及び助手席にそれぞれ着座した乗員に向け、且つ運転席側及び助手席側にそれぞれ設けられたグリルに配置されたサイドルーバの向きを運転席及び助手席にそれぞれ着座した乗員に向けるように制御している。これにより、例えば温度が比較的高い車室内に乗員が乗り込むといった状況の下においても、乗車直後の乗員に対して直接冷風を吹き出すことができるので、乗員が車室内に着座後に感じる暑さを防ぐことができる。
【特許文献1】特開2002−046446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の技術では、環境温度が低く暖房が必要な時に、乗員の温熱的な快適感を向上させるために表面温度情報を用いて空調制御を行う場合には、センタグリルから温風を吹き出すと、乗員の特定の部位(顔)のみならず、当該特定部位の背景の温度も上昇してしまう。したがって、上述した空調装置を暖房時に適用したとしても、背景と顔表面温度との温度差が小さくなって、特定部位の温度検出や、送風すべき人物の特定部位の検出ができなくなる可能性があった。
【0006】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、乗員の背景温度に応じて空調空気を送風することで乗員の特定部位の検出を継続して行って、乗員の快適性を確実に向上させることが可能な車両用空調制御装置及び車両用空調制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、空気を冷却及び加熱して車室内に空調空気として送風させるに際して、車室内の目標温度を設定すると共に車室内における乗員の有無を検出して、乗員が検出されている場合に乗員の表面温度を検出し、車室内の目標温度に基づいて、前記乗員の表面温度に対する目標表面温度を算出する。
【0008】
本発明は、乗員の特定部位の表面温度と目標表面温度とが一致するように空調空気の風温、風量又は風向を制御している時に、乗員の特定部位の表面温度と、当該乗員の特定部位の背景の温度との温度差に基づいて、当該温度差が所定値よりも小さくならないように空調空気の風温、風量又は風向を制御することにより、上述の課題を解決する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、乗員の特定部位の表面温度と、当該乗員の特定部位の背景の温度との温度差が小さくならないように空調空気の風温、風量又は風向を制御するので、乗員の特定部位の表面温度と目標表面温度とが一致するように空調空気の風温、風量又は風向を制御している場合であっても、乗員の特定部位と背景との区別がつかなくなることを回避でき、乗員の特定部位の検出を継続して行って、乗員の快適性を確実に向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0011】
[車両用空調制御装置の構成]
本発明を適用し車両用空調制御装置は、図1に示すように、マイクロコンピュータ1に、赤外線カメラ(以下、IRカメラと称する。)2と、温度設定器3と、吹き出し口位置制御装置4と、吹き出し風温制御装置5と、吹き出し風量制御装置6と、吹き出し風向制御装置7とが接続されて構成されている。
【0012】
IRカメラ2は、物体から放射される遠赤外線光を受光する遠赤外線カメラからなる。このIRカメラ2は、例えば図2に示すように、車両10の車室内前方に配設されたセンターコンソールにおける幅方向の中央部に取り付けられており、車室内の熱画像を撮像してマイクロコンピュータ1に出力する。IRカメラ2は、例えば図3(a)に示すように、運転席及び助手席にそれぞれ着座した運転者100A及び同乗者100Bを撮像するに十分な撮像範囲の熱画像を撮像する。
【0013】
マイクロコンピュータ1は、車両用空調制御装置を構成する各部2〜7と接続されており、図示を省略するメモリに格納されたプログラムに従った処理を行って、当該各部2〜7に制御信号を送受信すると共に、各種情報及びデータを処理することにより車両用空調制御装置の全体を統括的に制御する。
【0014】
また、マイクロコンピュータ1は、IRカメラ2により撮像された熱画像を取得して、画像処理を施し、運転席及び助手席のそれぞれについて乗員が着座している座席を特定することによって、運転者100A及び同乗者100Bの有無を判定する。
【0015】
また、マイクロコンピュータ1は、撮像された熱画像を解析して、図3(b)に運転者100Aのみについての熱画像を示すように、運転者100Aに相当する乗員領域、車両のドアに相当するドア領域101、ドアガラスに相当するドアガラス領域102、車両後部のリアガラスに相当するリアガラス領域103、及び車両の天井に相当するルーフ領域104にそれぞれ領域分割する。更に、運転者100Aに相当する乗員領域については、撮像画像の表面温度分布に基づいて、手部位に相当する手領域100bを抽出すると共に、手領域100bの代表温度を検出する。
【0016】
また、乗員の顔部位100aについては、乗員の左側顔温度検出領域100FL及び当該左側顔温度検出領域100FLに対する背景のヘッドレストとの境界付近に、当該顔部位100aの左側に対する背景の表面温度を検出するための左側背景温度検出領域105Lと、乗員の右側顔温度検出領域100FR及び当該右側顔温度検出領域100FRに対する背景のヘッドレストとの境界付近に、当該顔部位100aの右側に対する背景の表面温度を検出するための右側背景温度検出領域105Rとに分割される。マイクロコンピュータ1は、後述するが、左側顔温度検出領域100FLと左側背景温度検出領域105Lとの温度差を所定温度以内とすると共に、右側顔温度検出領域100FRと右側背景温度検出領域105Rとの温度差を所定温度以内とするように、送風の停止及び継続、継続する場合の吹き出し口位置、吹き出し風温、吹き出し風量、吹き出し風向を制御する。
【0017】
温度設定器3は、例えばセンターコンソールに取り付けられており、乗員が操作することで車室内の目標温度を入力する機能を有している。また、温度設定器3は、入力された目標温度をマイクロコンピュータ1に対して出力する。
【0018】
吹き出し口位置制御装置4は、マイクロコンピュータ1から出力される制御信号に基づいて、車室内に配設された複数の吹き出し口(図示せず)の開閉状態を制御する機構を有している。
【0019】
吹き出し風温制御装置5は、マイクロコンピュータ1から出力される制御信号に基づいて、空調システムのエアミックスダンパの開度を制御することで、吹き出し口から送出する空調空気の温度を制御する機構を有している。
【0020】
吹き出し風量制御装置6は、マイクロコンピュータ1から出力される制御信号に基づいて、空調システムのブロワモータの出力を制御することで、吹き出し口から送出する空調空気の風量を制御する機能を有している。
【0021】
吹き出し風向制御装置7は、マイクロコンピュータ1からの出力される制御信号に基づいて、各吹き出し口に配設された風向調整機構としてのルーバ(調整板)の向きを制御することで、吹き出し口から送出する空調空気の風向を制御する機能を有している。
【0022】
マイクロコンピュータ1は、IRカメラ2により撮像された熱画像に基づいて、特定部位としての顔部分の温度分布から顔の代表温度を検出すると共に、特定部位である顔部分の背景の温度分布から背景の代表温度を検出する。そして、マイクロコンピュータ1は、温度設定器3により設定された車室内の目標温度を取得して、当該車室内の目標温度と、顔の代表温度とから、空調空気を送出対象とする吹き出し口を決定すると共に、空調空気の風温、風量、及び風向を決定し、吹き出し口位置制御装置4、吹き出し風温制御装置5、吹き出し風量制御装置6、及び吹き出し風向制御装置7に対して制御信号を出力する。
【0023】
ここで、主としてマイクロコンピュータ1により実現される機能に注目して表現した機能ブロック図を図4に示す。
【0024】
この車両用空調制御装置は、図4に示すように、熱画像撮像部21と、乗員検出部22と、検出領域設定部23と、表面温度検出部24と、温度設定部25と、目標表面温度算出部26と、風向・吹き出し口決定部27と、制御部28とを備える。これらの乗員検出部22、検出領域設定部23、表面温度検出部24は、マイクロコンピュータ1の処理動作に相当する機能である。なお、図4に示す機能ブロック図において、熱画像撮像部21はIRカメラ2に相当し、乗員検出部22、検出領域設定部23、表面温度検出部24、目標表面温度算出部26、風向・吹き出し口決定部27、及び制御部28は、マイクロコンピュータ1に相当し、温度設定部25は、温度設定器3に相当している。
【0025】
熱画像撮像部21は、上述のIRカメラ2に相当し、車室内の熱画像を撮像する機能を有している。
【0026】
乗員検出部22は、車室内における乗員の有無を検出する機能を有し、後述する乗員検出処理を行う。
【0027】
検出領域設定部23は、熱画像撮像部21の設置位置、画角等の光学パラメータから、乗員の部位を特定して温度検出の対象となる領域を設定する。具体的には、後述の乗員の特定部位である左側顔温度検出領域100FL及び右側顔温度検出領域100FRと、当該特定部位の背景の左側背景温度検出領域105L及び右側背景温度検出領域105Rを設定する機能を有する。
【0028】
表面温度検出部24は、乗員の皮膚露出部位の表面温度を検出する機能を有する。特に、表面温度検出部24は、検出領域設定部23で設定された左側顔温度検出領域100FL及び左側背景温度検出領域105Lそれぞれの温度、及び、右側顔温度検出領域100FR及び右側背景温度検出領域105Rの温度を検出する。
【0029】
温度設定部25は、温度設定器3に相当し、目標とする車室内温度(目標温度)を設定する機能を有する。この温度設定部25は、例えば乗員に操作される操作機構の動きを検知して、操作に応じた車室内における目標温度を設定する。
【0030】
目標表面温度検出部26は、温度設定部25により設定された目標温度と、表面温度検出部24で検出された乗員各部の表面温度とに基づいて、乗員の特定部位の目標表面温度を算出する機能を有している。この目標表面温度検出部26は、後述するが、左側顔温度検出領域100FLについての目標表面温度と、右側顔温度検出領域100FRについての目標表面温度とを算出する。
【0031】
風向・吹き出し口決定部27は、車両10に備え付けられた複数の吹き出し口の各々について、動作又は非動作の調整、風温又は風向を調整する機能を有している。ここで、車両10には、少なくとも、乗員の上半身に空調空気を吹き出す上半身用吹き出し口と、当該上半身用吹き出し口の位置に対して(所定の角度以上)離れて配置されて、乗員の上半身以外に空調空気を吹き出す他の吹き出し口とを有している。したがって、風向・吹き出し口決定部27は、これらの複数の吹き出し口のそれぞれの動作を制御することを決定する。
【0032】
制御部28は、表面温度検出部24で検出された表面温度と、目標表面温度算出部26により算出された目標表面温度とに基づいて、空調空気の吹き出し口、風温及び風量を制御する機能を有している。
【0033】
本実施形態に係る車両用空調制御装置は、乗員の特定部位として顔を選択し、当該左側顔温度検出領域100FLの温度と左側背景温度検出領域105Lの温度との差、及び、右側顔温度検出領域100FRと右側背景温度検出領域105Rとの差に基づいて、当該差が小さくなって顔と背景とが区別不能とならないように空調空気を送風する吹き出し口、風温、風向を制御することによって、乗員の快適性を向上させる。また、この車両用空調制御装置は、冷感時に温風を吹き出す場合に、乗員が車両10に乗車した時の快適性の向上と乗員を確実に検出できることとを両立させることを実現する。以下に、上述したように構成された車両用空調制御装置の空調制御処理について説明する。
【0034】
[車両用空調制御装置による空調制御処理]
つぎに、車両用空調制御装置による空調空気の空調制御処理の一例について、図5を参照しながら説明する。なお、この空調制御処理は、例えば所定期間ごとに繰り返し実行される。
【0035】
車両用空調制御装置のマイクロコンピュータ1は、電源がオンとされて空調制御処理を開始すると、ステップS1において、以降の処理を実行するに際して使用するタイマ、カウンタ、及びフラグの値を初期設定する初期化の処理を実行する。このとき、本プログラムにおける初回の処理であるか否かを示す初回処理識別フラグFlg_Aと、乗員の有無に関する判定を保留する時間(以下、保留時間と称する。)の経過を待っているか否かを示す保留時間識別フラグFlg_Bとに対して、それぞれ値「0」にセットされる。
【0036】
次に、ステップS2において、IRカメラ2(熱画像撮像部21)により車室内の熱画像データを取得し、取得した熱画像データをマイクロコンピュータ1の処理領域に取り込む。このとき取得される熱画像データは、表面温度が高い場所ほど輝度値が高い画素からなるデータとなる。このような熱画像データは、例えば車室内の乗員全てが一枚の画像含まれるように撮像されたものであってもよいし、運転席或いは助手席といった座席毎に複数のIRカメラ2を用意し、各IRカメラ2で乗員の各々を撮像したものであってもよい。
【0037】
本実施形態では、図2に示す位置に設置された一台のIRカメラ2により、運転席及び助手席に着座する乗員二名を、図3(a)に示すように撮像する場合を想定している。また、助手席側の処理は運転席側と同じであるため、以降の説明では、図3(b)のような熱画像データを使用して運転席側の処理を行う場合について説明する。また、検出する乗員の特定部位としては、運転席に着座した運転者100Aの顔領域100aを一例として説明する。
【0038】
次のステップS3において、マイクロコンピュータ1の乗員検出部22により、ステップS2で取得した熱画像データから運転者100Aの有無を検出する。この処理では、IRカメラ2の車両10への取り付け位置に基づいて検出対象とする運転者100Aの位置を画像内から特定して、特定された領域内の温度分布に基づいて運転者100Aの有無を判定する。なお、ステップS3のサブルーチンにおける処理については、図6において詳細を後述する。
【0039】
次のステップS4において、ステップS3で運転席に乗員が存在していると判定されたか否かに基づく分岐処理を行う。ステップS3の結果として、運転席に運転者100Aが存在していると判定された場合にはステップS5に処理を進め、運転席に運転者100Aが存在していないと判定された場合には処理をステップS22に進める。
【0040】
ステップS5においては、マイクロコンピュータ1の検出領域設定部23により、ステップS2で読み込んだ熱画像のデータから、図3に示す熱画像のルーフ領域104の検出温度(天井温度TR−msr)と、運転席における運転者100Aの顔領域100aの位置とを検出する。次に、検出領域設定部23は、熱画像をエッジ抽出することによって得た顔領域100aの位置に基づいて、左側顔温度検出領域100FL及び左側背景温度検出領域105Lを設定すると共に、右側顔温度検出領域100FR及び右側背景温度検出領域105Rを設定する。このとき、検出領域設定部23は、熱画像のエッジとして、予め設定した画素値(温度値)の段差以上の画像領域を顔部位100aの輪郭部分として取り出す。
【0041】
このとき、検出領域設定部23は、先ず、左側顔温度検出領域100FLと左側背景温度検出領域105Lとの境界線を設定し、同様に、右側顔温度検出領域100FRと右側背景温度検出領域105Rとの境界線を設定する。
【0042】
次に、検出領域設定部23は、図3(b)に示すように、右側及び左側それぞれの境界線を跨いで、左側顔温度検出領域100FL及び左側背景温度検出領域105Lを設定し、右側顔温度検出領域100FR及び右側背景温度検出領域105Rを設定する。次に、表面温度検出部24は、左側顔温度検出領域100FL内の温度分布から左側顔温度TFLを検出し、左側背景温度検出領域105L内の温度分布から左側背景温度TBLを検出し、右側顔温度検出領域100FR内の温度分布から右側顔温度TFRを検出し、右側背景温度検出領域105R内の温度分布から右側背景温度TBRを検出する。このとき、検出領域設定部23は、各領域内の平均温度や最大温度を当該領域の代表温度を算出する。
【0043】
次のステップS6においてマイクロコンピュータ1の表面温度検出部24、温度設定部25及び目標表面温度算出部26により、ステップS5で検出された各領域の温度及び位置に基づいて、乗員の温度の検知状態を判定して、当該温度の検知状態に応じて空調空気を送風の制御方法を指定するためのパラメータ(検知状態パラメータCOND)CONDを算出する。なお、このステップS6のサブルーチンにおける処理については、図7において詳細を後述する。
【0044】
次にマイクロコンピュータ1は、ステップS7,ステップS11,ステップS15において、ステップS6で算出した検知状態パラメータCONDを判断する分岐処理を行い、空調空気の送風対象を顔領域100aの全体、左側顔温度検出領域100FL、右側顔温度検出領域100FR、足元(又は送風停止)、の何れかを選択し(ステップS8,ステップS12,ステップS16,ステップS19)、当該選択した送風対象を目標温度とするために参照する検出温度を設定し(ステップS9,ステップS13,ステップS17,ステップS20)、送風を行う吹き出し口及び風向を決定する(ステップS10,ステップS14,ステップS18,ステップS21)。
【0045】
そして、マイクロコンピュータ1は、ステップS7〜ステップS21で決定した送風対象、吹き出し口及び風向で、ステップS26で吹き出し口位置制御装置4、吹き出し風温制御装置5、吹き出し風量制御装置6又は吹き出し風向制御装置7を制御して、風温、風量又は風向の制御を行わせる。ここで、ステップS26においては、以下の説明では、乗員の特定部位と背景との温度差が小さくならないように風向を制御する場合について説明するが、乗員の特定部位の温度と背景の温度との温度差が大きくなるように空調空気の風温、風量を制御しても良い。すなわち、乗員の特定部位と背景との温度差が所定値よりも小さくなっている場合には、風量を弱くしたり、風温を高低させて温度差が小さくなることを抑制しても良い。また、乗員の特定部位と背景との温度差が小さくなったことが検出された乗員の特定部位のうち、乗員の表面温度と背景の表面温度との温度差が大きい他の乗員の部位又は輪郭検知が必要ない他の乗員の部位に空調空気を吹き出させても良い。
【0046】
以下、ステップS7〜ステップS21について順次説明する。
【0047】
ステップS7において、マイクロコンピュータ1は、ステップS6で算出された検知状態パラメータCONDの値に基づいて分岐処理を行い、ステップS6において検知状態パラメータCONDの値が「0」であり、右側顔温度検出領域100FRと右側背景温度検出領域105Rとの温度差と、左側顔温度検出領域100FLと左側背景温度検出領域105Lとの温度差とが共に所定値よりも大きく十分なものであると判定されている場合には、ステップS8に処理を進め、そうでない場合にはステップS11へ進む。
【0048】
ステップS8においては、マイクロコンピュータ1の風向・吹き出し口決定部27により、ステップS6において右側及び左側ともに、顔と背景との温度差が十分にあると判定されているので、空調空気の送風対象として顔全体を選択してステップS9に進める。
【0049】
ステップS9において、マイクロコンピュータ1は、ステップS5で検出した顔領域100aの左側顔温度TFL及び顔領域100aの右側顔温度TFRを用いて、顔の検出温度を、
(TFL+TFR)/2
なる演算式で求める。また、このステップS9において、マイクロコンピュータ1の目標表面温度算出部26は、後述のステップS6で算出した顔領域100aの目標表面温度であるTF−tgt(顔目標温度TF−tgt)を目標表面温度に設定してステップS10に処理を進める。このとき、運転者100Aの乗車直後、すなわち運転者100Aが最初に車室内に検出されてから所定時間(例えば30秒)経過するまでの期間において、当該顔目標温度TF−tgtを基準として、(TFL+TFR)/2で求められる検出温度値が低い場合には所定値(例えば1℃)だけ高く、(TFL+TFR)/2で求められる検出温度値が高い場合には所定値(例えば1℃)だけ低く補正した値を、新たな目標表面温度として設定する。これにより、乗車直後の運転者100Aの快適感を一層素早く向上させることができる。
【0050】
次に、ステップS10において、マイクロコンピュータ1の風向・吹き出し口決定部27により、空調空気を顔全体に均等に送風されるように、吹き出し口及び風向を決定して、ステップS26に処理を進める。
【0051】
検知状態パラメータCONDの値が「0」ではないと判定された後のステップS11においては、マイクロコンピュータ1は、ステップS6で算出された検知状態パラメータCONDに基づいて分岐処理を行い、検知状態パラメータCONDの値が「1」であり、右側顔温度検出領域100FRと右側背景温度検出領域105Rとの温度差が所定値以下と判定されている場合には、ステップS12に処理を進め、そうでない場合にはステップS15に処理を進める。
【0052】
ステップS12においては、マイクロコンピュータ1の風向・吹き出し口決定部27は、ステップS6において右側顔温度検出領域100FRと右側背景温度検出領域105Rとの温度差が所定値以下で十分に大きくないと判定されているので、空調空気の送風対象として左側顔温度検出領域100FLを選択して、ステップS13に処理を進める。これにより、温度差が小さいと判定されている領域を避けて、比較的温度差が大きい領域に空調空気を吹き出させる。
【0053】
次に、ステップS13において、マイクロコンピュータ1の目標表面温度算出部26は、ステップS5で検出した左側顔温度TFLを顔の検出温度に設定し、ステップS6で算出した顔目標温度TF−tgtを目標表面温度に設定し、ステップS14に処理を進める。このとき、乗員の乗車直後、すなわち乗員が車室内に最初に検出されてから所定時間(例えば30秒)経過するまでの期間において、当該顔目標温度TF−tgtを基準として、左側顔温度TFLが低い場合には所定値(例えば1℃)だけ高く、左側顔温度TFLが高い場合には所定値(例えば1℃)だけ低く補正した値を、新たな目標表面温度として設定する。これにより、乗車直後の乗員の快適感を一層素早く向上させることができる。
【0054】
次に、ステップS14において、マイクロコンピュータ1の風向・吹き出し口決定部27は、ステップS5で検出した運転者100Aの左側顔温度検出領域100FLを中心として、空調空気が送風されるように吹き出し口及び風向を決定して、ステップS26に処理を進める。
【0055】
一方、検知状態パラメータCONDの値が「0」、「1」ではないと判定された後のステップS15においては、マイクロコンピュータ1は、ステップS6で算出された検知状態パラメータCONDに基づいて分岐処理を行い、検知状態パラメータCONDの値が「2」であり、左側顔温度検出領域100FLと左側背景温度検出領域105Lとの温度差が所定値以下で大きくないと判定されている場合には、ステップS16に処理を進め、そうでない場合にはステップS19に処理を進める。
【0056】
ステップS16においては、マイクロコンピュータ1の風向・吹き出し口決定部27は、ステップS6において左側顔温度検出領域100FLと左側背景温度検出領域105Lとの温度差が所定値以下で十分に大きくないと判定されているので、空調空気の送風対象として右側顔温度検出領域100FRを選択して、ステップS17に処理を進める。
【0057】
次に、ステップS17において、マイクロコンピュータ1の目標表面温度算出部26は、ステップS5で検出した右側顔温度TFRを顔の検出温度に設定し、ステップS6で算出した顔目標温度TF−tgtを目標表面温度に設定し、ステップS18に処理を進める。このとき、乗員の乗車直後、すなわち乗員が車室内に最初に検出されてから所定時間(例えば30秒)経過するまでの期間において、当該目標表面温度を基準として、右側顔温度TFRが低い場合には所定値(例えば1℃)だけ高く、右側顔温度TFRが高い場合には所定値(例えば1℃)だけ低く補正した値を、新たな目標表面温度として設定する。これにより、乗車直後の乗員の快適感を一層素早く向上させることができる。
【0058】
次に、ステップS18において、マイクロコンピュータ1の風向・吹き出し口決定部27は、ステップS5で検出した運転者100Aの右側顔温度検出領域100FRを中心として、空調空気が送風されるように吹き出し口及び風向を決定して、ステップS26に処理を進める。
【0059】
一方、検知状態パラメータCONDの値が「0」、「1」、「2」の何れでもないと判定された後のステップS19においては、マイクロコンピュータ1は、ステップS6の結果により、右側及び左側の双方について、顔と背景との温度差が所定値以下で大きくないと判定されていることになり、マイクロコンピュータ1の風向・吹き出し口決定部27は、空調空気の送風対象として乗員の足元を選択して、ステップS20に処理を進める。これにより、温度差が小さいと判定されている領域を避けて、比較的温度差が大きい領域に空調空気を吹き出させる。
【0060】
このように、乗員の顔部分に空調空気を吹き出す吹き出し口と、乗員の顔部分以外の足部分に空調空気を吹き出す他の吹き出し口とが設けられている車両10においては、空調空気の吹き出し口を、顔部分用吹き出し口から、足部分用吹き出し口に変更させることができる。
【0061】
ステップS20において、マイクロコンピュータ1は、ステップS5で検出した左側顔温度TFL及び右側顔温度TFRを用いて、顔の代表温度を、
(TFL+TFR)/2
なる演算式で求める。また、このステップS9において、マイクロコンピュータ1の目標表面温度算出部26は、ステップS6で算出した顔目標温度TF−tgtを目標表面温度に設定してステップS21に処理を進める。このとき、運転者100Aの乗車直後、すなわち運転者100Aが最初に車室内に検出されてから所定時間(例えば30秒)経過するまでの期間において、当該顔目標温度TF−tgtを基準として、(TFL+TFR)/2で求められる検出温度値が低い場合には所定値(例えば1℃)だけ高く、(TFL+TFR)/2で求められる検出温度値が高い場合には所定値(例えば1℃)だけ低く補正した値を、新たな顔目標温度TF−tgtとして設定する。これにより、乗車直後の運転者100Aの快適感を一層素早く向上させることができる。
【0062】
次に、ステップS21において、マイクロコンピュータ1の風向・吹き出し口決定部27により、空調空気を足元を中心に送風されるように、吹き出し口及び風向を決定して、ステップS26に処理を進める。
【0063】
なお、検知状態パラメータCONDの値が「0」、「1」、「2」の何れでもない場合には、顔部位100aに対する送風を停止するために足元を送風対象に設定して送風を継続する場合のみならず、人体に対する送風自体を停止しても良い。
【0064】
更に、ステップS4において、乗員が存在していないと判定された後のステップS22においては、ステップS4で運転席に乗員が存在しないと判定されているので、マイクロコンピュータ1の表面温度検出部24は、ステップS2で読み込んだ熱画像のデータから、図3(b)に示す熱画像のルーフ領域104の温度(天井温度TR−msr)を検出してステップS23に処理を進める。
【0065】
次に、ステップS23において、温度設定器3(温度設定部25)によって設定されている設定温度値を取り込んでステップS24に処理を進める。
【0066】
次に、ステップS24において、マイクロコンピュータ1の目標表面温度算出部26は、ステップS23で取り込まれた設定値である目標室温TR−tgtを目標表面温度に設定してステップS25に処理を進める。
【0067】
次に、ステップS25において、マイクロコンピュータ1の風向・吹き出し口決定部27は、車室内全体に空調空気が送風されるように送風対象とする吹き出し口を決定すると共に、風向を算出してステップS26に処理を進める。
【0068】
このように、ステップS10,ステップS14,ステップS18,ステップS21又はステップS25を行った後に、マイクロコンピュータ1の制御部28は、ステップS26において、ステップS5で検出した各部位の表面温度と、ステップS9、ステップS13、ステップS17、ステップS20、又はステップS24で設定した空調空気の送風対象とする部位の目標表面温度とが一致するように、ブロワモータの電圧やエアミックスダンパの開度を演算して、演算結果を吹き出し風量制御装置6及び吹き出し風温制御装置5に対して出力する。また、ステップS10、ステップS14、ステップS18、ステップS21、又はステップS25で決定した吹き出し口から空調空気が送風されるように、吹き出し口位置制御装置4に対して制御信号を出力すると共に、ステップS10、ステップS14、ステップS18、ステップS21、又はステップS25で算出した風向となるように吹き出し風向制御装置7に対して制御信号を出力して、その後にステップS27に処理を進める。
【0069】
次に、ステップS27において、車両用空調制御装置の電源がオフ状態とされたか否かによる分岐処理を行い、電源がオフ状態とされていなければステップS2へ戻り、電源がオフ状態とされていれば空調制御処理を終了する。
【0070】
「乗員有無判定処理」
つぎに、ステップS3における乗員有無判定処理について、図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0071】
乗員有無判定処理が開始すると、先ずステップS31において、マイクロコンピュータ1の乗員検出部22により、ステップS2で読み込んだ熱画像における乗員の着座位置を特定し、特定された着座位置の温度分布から運転席の運転者100Aの有無を検出してステップS32に処理を進める。
【0072】
次に、ステップS32において、マイクロコンピュータ1は、初回処理識別フラグFlg_Aの値に基づいて車両用空調制御装置の電源がオン状態とされた後の最初の処理であるか否かを判定して分岐処理を行う。電源がオン状態とされた後の最初の処理である場合(Flg_A=0)にはステップS40に処理を進め、電源がオン状態とされた後の最初の処理でない場合(Flg_A=1)にはステップS33に処理を進める。
【0073】
ステップS40においては、マイクロコンピュータ1は、ステップS32で電源がオン状態とされた後の最初の処理であると判定されているので、次回以降の処理のため初回処理識別フラグFlg_Aの値を「1」にセットしてステップS41に処理を進める。そして、ステップS41においては、ステップS31で検出した運転席の乗員の有無の検出結果が乗員有りであるか否かを判定して分岐処理を行い、ステップS31で乗員有りと判定されている場合はステップS39に処理を進めて乗員有りと確定し、乗員なしと判定されている場合にはステップS42に処理を進めて乗員無しと確定する。
【0074】
一方、ステップS33においては、乗員検出部22により、ステップS31で検出した乗員有無の検出結果が前回の検出結果から変化したか否かを判定して分岐処理を行い、乗員有無に変化がある場合はステップS34に処理を進め、乗員有無に変化がない場合にはステップS43に処理を進める。
【0075】
ステップS34において、マイクロコンピュータ1は、保留時間を計測する内蔵のタイマTxのカウント値をリセットすると共に、タイマTxのカウントをスタートして、ステップS35に処理を進め、スタートしたタイマTxが動作中であることを示すフラグ、すなわち、保留時間の経過を待っているか否かを示す保留時間識別フラグFlg_Bの値を「1」にセットしてステップS36に処理を進める。
【0076】
一方、ステップS43において、マイクロコンピュータ1は、保留時間の経過を待っているか否かを示す保留時間識別フラグFlg_Bの値が「0」にセットされているか否かを判定して分岐処理を行い、保留時間の経過を待っている場合(Flg_B=1)にはステップS36に処理を進め、保留時間の経過を待っていない場合(Flg_B=0)にはステップS41に処理を進める。
【0077】
ステップS36においては、ドア開閉検出部22によりドアの開閉が行われたかどうかを判定するため、ステップS2で読み込んだ熱画像のデータに基づいて、図3(b)に示すドア領域101の検出温度が短時間に変化したか否かを判定して、当該判定結果により分岐処理を行う。ドア開閉検出部22によりドア領域101の検出温度が短時間に変化した場合はドアの開閉が行われたと判定してステップS44に処理を進め、変化していない場合にはドアの開閉は行われていないと判定してステップS37に処理を進める。
【0078】
ステップS37においては、マイクロコンピュータ1により、タイマTxによる計測時間が所定時間t1以上であるか否かを判定して、当該判定結果に基づいて分岐処理を行う。タイマTxが所定時間t1(例えば10秒)以上である場合は、保留時間が経過していると判定してステップS44に処理を進める。一方、タイマTxが所定時間t1未満である場合には、保留時間中と判定してステップS38に処理を進める。
【0079】
ステップS44においては、マイクロコンピュータ1は、保留時間の計測用のタイマTxのカウントを停止してステップS45に処理を進め、ステップS45において、マイクロコンピュータ1は、保留時間の経過を待っているか否かを示す保留時間識別フラグFlg_Bの値を「0」にセットしてステップS41に処理を進めて、今回のステップS31において判定された乗員の有無に応じてステップS39又はステップS42で乗員の有無を確定させる。
【0080】
ステップS38において、マイクロコンピュータ1は、ステップS3のサブルーチンが前回実行されたときに乗員が着座(存在)していると判定したか否かを判定し、この判定結果に基づいて分岐処理を行う。ステップS3のサブルーチンが前回実行されたときに乗員が着座(存在)していると判定している場合はステップS39に処理を進めて乗員が着座していることを確定し、乗員が着座(存在)していないと判定している場合にはステップS42に処理を進めて乗員が着座していないことを確定する。
【0081】
このように、ステップS36によってドアの開閉が行われていないと判定された場合であっても、所定時間t1を経過するまでは、ステップS38で前回に乗員が存在することが検出されていれば、ステップS39で乗員が存在することを確定できる。
【0082】
このような処理を行うマイクロコンピュータ1は、ステップS2で熱画像データを取り込むごとに、ステップS3において、ステップS31〜ステップS42の処理を行う。これにより、初回の処理においては、ステップS31、ステップS32、ステップS40、ステップS41を行うことにより、ステップS31での判定結果のみで乗員の有無を確定させる。一方、初回の処理ではなく、ドアの開閉が行われた場合には、ステップS36からステップS44,ステップS45及びステップS41の処理を行うことにより、ステップS31での判定結果のみで乗員の有無を確定させる。更に、ドアの開閉が行われておらず乗員有無の変化が検出された後から所定時間t1が経過していない場合には、ステップS36,ステップS37及びステップS38の処理を行うことにより、前回での乗員の有無に応じて、乗員の有無を確定させる。
【0083】
「検知状態算出処理」
つぎに、ステップS6の乗員の検知状態を演算する処理について、図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0084】
先ず、ステップS51においては、マイクロコンピュータ1は、温度設定器3によって設定された車室内の温度設定値である目標室温TR−tgtに基づいて、運転者100Aの顔領域100aの目標表面温度TF−tgtを算出してステップS52に処理を進める。この顔領域100aの目標表面温度TF−tgtの算出処理に際しては、例えば、目標室温TR−tgtに応じた乗員の快適と感じる顔部位の表面温度としての目標表面温度TF−tgtを予めマップ或いはテーブルとして記憶しておき、このマップ或いはテーブルを参照することにより、設定されている目標室温TR−tgtに応じて乗員の顔部位の目標表面温度TF−tgtを決定すればよい。
【0085】
次に、ステップS52において、マイクロコンピュータ1は、ステップS5で検出された左側顔温度TFLと左側背景温度TBLとの温度差である左側温度差ΔTLと、ステップS5で検出された右側顔温度TFRと右側背景温度TBRとの温度差である右側温度差ΔTRとを算出する。
【0086】
次のステップS53において、ステップS52で算出した左側温度差ΔTLの絶対値に基づいて分岐処理を行う。左側温度差ΔTLの絶対値が所定値Thより大きければ、顔部位100aの左側において顔と背景との区別がつかなくならないと判定してステップS54に処理を進め、左側温度差ΔTLの絶対値が所定値Th以下の場合にはステップS55に処理を進める。
【0087】
ここで、所定値Thは、乗員の顔部位100aの輪郭部分を抽出するための予め設定した温度値の段差よりも大きく設定されている。すなわち、現在の状態で乗員の顔部位100aに送風を継続すると、熱画像において顔部位100aの輪郭が明確でなく、顔部位100aと背景との区別が付かなくなって、顔部位100aに対する送風の方向などが制御不能となる虞がある温度差であって、予めマイクロコンピュータ1のメモリ等に記憶されている。
【0088】
ステップS54においては、ステップS53で顔部位100aの左側において顔と背景との区別が十分にできるものと判定されているので、左側顔部位における検知状態パラメータTL−CONDの値を「0」にセットして、ステップS56に処理を進める。一方、ステップS55においては、ステップS53で顔部位100aの左側において顔と背景との区別がつかなくなる虞があると判定されているので、左側顔部位の検知状態を表す検知状態パラメータTL−CONDの値を「2」にセットして、ステップS56に処理を進める。
【0089】
次のステップS56において、ステップS52で算出した右側温度差ΔTRの絶対値に基づいて分岐処理を行う。右側温度差ΔTRの絶対値が所定値Thより大きければ、顔部位100aの右側において顔と背景との区別がつかなくならないと判定してステップS57に処理を進め、右側温度差ΔTRの絶対値が所定値Th以下である場合にはステップS58に処理を進める。
【0090】
ステップS57においては、ステップS56で顔部位100aの右側において顔と背景との区別が十分にできるものと判定されているので、右側顔部位における検知状態パラメータTR−CONDの値を「0」にセットして、ステップS59に処理を進める。一方、ステップS58においては、ステップS53で顔部位100aの右側において顔と背景との区別がつかなくなる虞があると判定されているので、右側顔部位の検知状態を表す検知状態パラメータTR−CONDの値を「1」にセットして、ステップS59に処理を進める。
【0091】
ステップS59においては、これまでの一連の処理で判定された、顔部位100aの左側と背景との温度差を示す検知状態パラメータTL−CONDと、顔部位100aの右側と背景との温度差を示す検知状態パラメータTR−CONDとに基づいて、乗員の検知状態を表すパラメータCONDを以下に示す式により算出し、ステップS7に処理を進める。
【0092】
COND=TL−COND+TR−COND
これにより、ステップS54で検知状態パラメータTL−CONDの値が「0」とされ、ステップS57で検知状態パラメータTR−CONDの値が「0」とされた場合には、検知状態パラメータCONDの値を「0」とすることができ、図5において、ステップS7での判定を「YES」とでき、ステップS8〜ステップS10を行って顔全体を送風対象とすることができる。
【0093】
ステップS55で検知状態パラメータTL−CONDの値が「2」とされ、ステップS58で検知状態パラメータTR−CONDの値が「1」とされた場合には、検知状態パラメータCONDの値を「3」とすることができる。従って、図5において、ステップS15での判定を「NO」とでき、ステップS19〜ステップS21を行って顔への送風を停止できる。
【0094】
また、ステップS54で検知状態パラメータTL−CONDの値が「0」とされ、ステップS58で検知状態パラメータTR−CONDの値が「1」とされた場合には、検知状態パラメータCONDの値を「1」とすることができ、図5において、ステップS11での判定を「YES」とでき、ステップS12〜ステップS14を行って顔部位100aの左側を優先して送風対象とすることができる。これにより、顔部位100aの右側において、顔と背景との温度差が更に近づくことを抑制する。
【0095】
更に、ステップS55で検知状態パラメータTL−CONDの値が「2」とされ、ステップS57で検知状態パラメータTR−CONDの値が「0」とされた場合には、検知状態パラメータCONDの値を「2」とすることができ、図5において、ステップS15での判定を「YES」とでき、ステップS16〜ステップS18を行って顔部位100aの右側を優先して送風対象とすることができる。これにより、顔部位100aの左側において、顔と背景との温度差が更に近づくことを抑制する。
【0096】
[実施形態の効果]
以上説明したように、本発明を適用した車両用空調制御装置によれば、左側顔温度検出領域100FLと左側背景温度検出領域105L、右側顔温度検出領域100FRと右側背景温度検出領域105Rといったように、乗員の特定部位と背景との温度差に基づいて、当該温度差が小さくならないように空調空気の風温、風量又は風向を制御するので、温度差が小さくなる状態を回避して乗員の特定部位の検出を継続して行うことができ、乗員の快適性を確実に向上させることが可能となる。
【0097】
例えば、乗員の表面温度を目標表面温度に一致させるように空調制御を行った場合であっても、乗員の顔と背景との弁別能力が発揮できるように乗員の顔領域と背景領域の温度差を必要以上に小さくさせないので、特に温風を吹き出す場合に、乗員乗車時の快適性向上と乗員検出の信頼性とを両立させることができる。
【0098】
また、この車両用空調制御装置によれば、図3(b)における左側顔温度検出領域100FLと左側背景温度検出領域105L、右側顔温度検出領域100FRと右側背景温度検出領域105Rといったように、相互に境界線を介して隣接する領域を設けて乗員の特定部位と背景との温度差を監視することができるので、乗員が存在しない領域での空調制御に影響を与えることを無くすことができる。
【0099】
更に、この車両用空調制御装置によれば、乗員の表面温度と背景の表面温度の差が所定値以下になった場合に、乗員の表面温度と背景の表面温度との温度差が大きくなるように空調空気の風温、風量又は風向を制御するので、今まで検知できていた乗員の特定部位が検知できなくなることを回避して、常に熱画像から明瞭な乗員の特定部位の輪郭を取得することができる。
【0100】
更にまた、この車両用空調制御装置によれば、例えば乗員の顔部分の一方側と背景との温度差が小さい場合には、他方側の乗員の顔部分に風向を変更するといったように、乗員の特定部位の表面温度と背景の表面温度との差が所定値以下になった場合に、乗員の特定部位のうち、乗員の表面温度と背景の表面温度との温度差が大きい部位に空調空気を吹き出させるので、今まで検知できていた乗員の特定部位が検知できなくなることを確実に回避できる。
【0101】
更にまた、この車両用空調制御装置によれば、顔部分用吹き出し口と、足部分用吹き出し口とが存在し、顔部分の表面温度と背景の表面温度との温度差が所定値以下になった場合に、空調空気の吹き出し口を、顔部分用吹き出し口から、足部分用吹き出し口に変更させるので、確実に顔部分と背景との温度差を所定値以上に回復できる。
【0102】
更にまた、この車両用空調制御装置によれば、乗員の特定部位の表面温度と背景の表面温度との温度差が所定値以下になった場合に、当該乗員の特定部位に対する空調空気の吹き出しを停止させるので、確実に顔部分と背景との温度差を所定値以上に回復できる。
【0103】
更にまた、この車両用空調制御装置によれば、乗員の表面温度と背景の表面温度の差が小さくなっていると判定するための所定値を、顔部位100aの輪郭部分を抽出するための予め設定した温度値の段差よりも大きく設定することにより、顔部位100aの輪郭部分を検知できなくなることを確実に回避できる。
【0104】
更に、この車両用空調制御装置によれば、乗員が車室内に検出された後で所定の時間が経過するまでの期間では、目標表面温度を所定の値だけ増加又は減少させるので、乗員が車両に乗車した直後に、選択された身体部位の目標表面温度を強調することができるため、更に短時間で快適な環境とすることができ、着座乗員の全身の温冷感を素早く低下させることができる。
【0105】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【0106】
すなわち、上述した実施形態においては、顔と背景との温度差が小さくなって、顔の区別がつかなくなる状態を回避することについて説明したが、これに限らず、手部位と背景との温度差が小さくならないように空調制御を行っても良く、乗員の衣服と背景との温度差が小さくならないように空調制御をおこなっても良いことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明を適用した車両用空調制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明を適用した車両用空調制御装置が備えるIRカメラの取り付け位置を示す模式図である。
【図3】本発明を適用した車両用空調制御装置が備えるIRカメラにより撮像される熱画像を説明するための模式図である。
【図4】本発明を適用した車両用空調制御装置により実現される機能を示す機能ブロック図である。
【図5】本発明を適用した車両用空調制御装置による空調制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】本発明を適用した車両用空調制御装置による乗員有無判定に関するサブルーチン処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】本発明を適用した車両用空調制御装置による乗員の熱的状態を算出する処理に関するサブルーチン処理の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0108】
1 マイクロコンピュータ
2 IRカメラ
3 温度設定器
4 吹き出し口位置制御装置
5 吹き出し風温制御装置
6 吹き出し風量制御装置
7 吹き出し風向制御装置
10 車両
21 熱画像撮像部
22 乗員検出部
23 検出領域設定部
24 表面温度検出部
25 温度設定部
26 目標表面温度検出部
27 風向・吹き出し口決定部
28 制御部




 

 


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