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発明の名称 キャンバ角調整装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−1418(P2007−1418A)
公開日 平成19年1月11日(2007.1.11)
出願番号 特願2005−183492(P2005−183492)
出願日 平成17年6月23日(2005.6.23)
代理人 【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
発明者 篠遠 誠司
要約 課題
タイヤ接地点における横剛性を低下させずに、操舵安定性を向上させるのに好適なキャンバ角調整装置を提供する。

解決手段
車高調整式ショックアブソーバによる、左右輪の車両上下移動方向が同方向のときは、キャンバ角の変位を規制し、左右輪の上下移動方向が互いに異なるときは、上方向に移動する車輪のキャンバ角を、該車輪の移動に伴いネガティブ側に変位させ、且つ下方向に移動する車輪のキャンバ角を、該車輪の移動に伴いポジティブ側に変位させるように懸架構造を構成した。
特許請求の範囲
【請求項1】
前輪及び後輪の少なくとも一方に設けられた左右輪を車両上下方向に移動させるストローク手段を備えた車両における前記左右輪のキャンバ角を調整するキャンバ角調整装置であって、
前記ストローク手段による車輪の車両上下方向への移動時において、前記左右輪が共に同方向へと移動したときに、当該左右輪のキャンバ角の変位を規制し、前記左右輪のいずれか一方の上方向への移動、且つ他方の下方向への移動に伴い、前記一方の車輪のキャンバ角をネガティブ側に変位させ、且つ前記他方の車輪のキャンバ角をポジティブ側に変位させるキャンバ角調整手段を備えることを特徴とするキャンバ角調整装置。
【請求項2】
車幅方向に延在し、車幅方向外端部が、前記車輪を回転自在に支持する車輪側部材の上部に結合され、且つ車幅方向内端部が車体側部材に車両前後方向軸周りに回転可能に結合されたアッパアームと、車幅方向に延在し、車幅方向外端部が前記車輪側部材の下部に結合され、且つ車幅方向内端部が車体側部材に車両前後方向軸周りに回転可能に結合されたロアアームとを有するストローク手段を備えた車両における前記左右輪のキャンバ角を調整するキャンバ角調整装置であって、
前記キャンバ角調整手段は、前記左右輪が共に同方向へと移動したときに、当該左右輪にそれぞれ対応する前記アッパアームの車体側部材への結合部の位置が変位するのを規制し、前記左右輪のいずれか一方の上方向への変位、且つ他方の下方向への変位に伴い、一方の車輪側のアッパアームの車体側部材への結合部を車幅方向内側に変位させ、且つ他方の車輪側のアッパアームの車体側部材の結合部を車幅方向外側に変位させるアッパアーム駆動機構を有することを特徴とする請求項1記載のキャンバ角調整装置。
【請求項3】
車幅方向に延在し、車幅方向外端部が、前記車輪を回転自在に支持する車輪側部材の上部に結合され、且つ車幅方向内端部が、前記キャンバ角調整手段の構成部材を介して車体側部材に車両前後方向軸周りに回転可能に結合されたアッパアームと、
車幅方向に延在し、車幅方向外端部が、前記車輪側部材の下部に結合され、且つ車幅方向内端部が、車体側部材に車両前後方向軸周りに回転可能に結合されたロアアームとを有するストローク手段を備えた車両における前記左右輪のキャンバ角を調整するキャンバ角調整装置であって、
前記キャンバ角調整手段は、
前記左右輪にそれぞれ対応し、各一端が、それぞれ対応する前記アッパアームの車幅方向内端部と当該アッパアームが車両前後方向軸周りに回転可能に連結され、各他端が、それぞれ対応する車体側部材に車両前後方向軸周りに回転可能に連結された左右一対の第1リンク部材と、
前記左右輪間における車幅方向内側の車体側部材に配設され、前記左右輪に対応した一の第2リンク部材の中央部を車両前後方向軸周りに回転可能に、且つ当該第2リンク部材を車幅方向に移動可能に支持したスライド機構と、
前記左右輪にそれぞれ対応し、各一端が、それぞれ対応する前記第1リンク部材の中央部に車両前後方向軸周りに回転可能に連結され、各他端が、前記第2リンク部材の回転軸に結合された左右一対の第1アームと、
前記左右輪にそれぞれ対応し、各一端が、それぞれ対応する前記ロアアームの前記車幅方向内端部に車両前後方向軸周りに回転可能に連結され、一方の他端が、前記第2リンク部材の一端に車両前後方向軸周りに回転可能に連結され、他方の他端が、前記第2リンク部材の他端に車両前後方向軸周りに回転可能に連結された左右一対の第2アームとから構成されることを特徴とする請求項1記載のキャンバ角調整装置。
【請求項4】
前記アッパアーム駆動機構は、前記ストローク手段による前記左右輪の上下方向の移動に伴い、当該左右輪の移動方向及び移動量を検出する移動量検出手段と、当該移動量検出手段の検知出力に基づき前記アッパアームの結合部の車幅方向への変位制御を行う変位制御手段と、当該変位制御手段からの制御信号に基づき前記アッパアームの結合部の位置を変位させる結合部変位手段とから構成されることを特徴とする請求項2記載のキャンバ角調整装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の左右輪のキャンバ角を調整するキャンバ角調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような左右輪のキャンバ角を調整する装置としては、例えば、特許文献1記載の車両ホイールのサスペンションシステムがある。このサスペンションシステムは、タイヤの瞬間回転中心がタイヤ接地点のやや下に設定されるリンク配置にすることにより、車両直進時の左右サスペンションが同方向にストロークする場合と、車両旋回時の左右サスペンションがそれぞれ逆方向にストロークする場合に、キャンバ角変化特性をより最適方向(左右輪の対地キャンバ角が0°、または略0°に変位する方向)に設定するものである。
【特許文献1】特表2004−520222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術においては、タイヤに横力が働いたときに、その力のバランスを利用して対地キャンバ角を弱ネガティブ側に変化させるため、キャンバ角の変化初期においてはポジティブ側に変化し、それからネガティブ側に変化するといったように非線形にキャンバ角が変化するため、タイヤ接地点における横剛性が低下し車両旋回時などにおけるタイヤスカッフが大きくなるという問題があった。
そこで、本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであって、タイヤ接地点における横剛性を低下させずに、操舵安定性を向上させるのに好適なキャンバ角調整装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明に係るキャンバ角調整装置は、前輪及び後輪の少なくとも一方に設けられた左右輪を車両上下方向に移動させるストローク手段を備えた車両における前記左右輪のキャンバ角を調整するキャンバ角調整装置であって、
前記ストローク手段による車輪の車両上下方向への移動時において、前記左右輪が共に同方向へと移動したときに、当該左右輪のキャンバ角の変位を規制し、前記左右輪のいずれか一方の上方向への移動、且つ他方の下方向への移動に伴い、前記一方の車輪のキャンバ角をネガティブ側に変位させ、且つ前記他方の車輪のキャンバ角をポジティブ側に変位させるキャンバ角調整手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明に係るキャンバ角調整装置によれば、ストローク手段による、左右輪の車両上下移動方向が同方向のときは、キャンバ角の変位を規制し、左右輪の上下移動方向が互いに異なるときは、上方向に移動する車輪のキャンバ角を、該車輪の移動に伴いネガティブ側に変位させ、且つ下方向に移動する車輪のキャンバ角を、該車輪の移動に伴いポジティブ側に変位させるようにしたので、車体旋回時などにおいて左右輪に横力が発生すると、当該左右輪のうち、旋回内側の車輪のキャンバ角が線形的にネガティブ側に変位し、旋回外側の車輪のキャンバ角が線形的にポジティブ側に変位するので、左右輪の接地面における横剛性を低下させずに操舵安定性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づき説明する。図1〜図3は、本発明に係るキャンバ角調整装置の第1実施形態を示す図である。図1は、本実施形態のキャンバ角調整装置を四輪車両の前後左右輪に適用した場合の概略構成図である。
図1に示すように、各車輪101FL〜101RRと車体102との間に車高調整式ショックアブソーバ103FL〜103RR並びにコイルスプリング104FL〜104RRを介装している。車高調整式ショックアブソーバ103FL〜103RRは、例えば油空圧の制御により伸縮し、結果的に各車輪101FL〜101RRを上下方向にストロークすることができる。
【0007】
本実施形態では、ステアリングホイールに車体ロールスイッチ105を設け、コントロールユニット106は、ステアリングホイールの操舵方向に応じた車体ロールスイッチ105の出力により、例えば、車体が直進状態において、前左右輪が同時にリバウンド又はバウンドしたときに、車高調整式ショックアブソーバ103FL〜103RRを伸張又は短縮して、各車輪101FL〜101RRを下方、即ちリバウンド方向に移動、又は各車輪101FL〜101RRを上方、即ちバウンド方向に移動するようにした。更に、車体旋回時において、旋回外側の車高調整式ショックアブソーバ103FL〜103RRを伸張して旋回外輪101FL〜101RRを下方向に移動し、旋回内側の車高調整式ショックアブソーバ103FL〜103RRを短縮して旋回内輪101FL〜101RRを上方向に移動するようにした。
【0008】
図2(a)及び(b)は、各車輪101FL〜101RRの懸架構造の概略を示す。図は、代表して前左右輪101FL、101FRについてのみ記しているが、後左右輪101RL、101RRも同様である。
図2に示す懸架構造は、所謂ダブルウイッシュボーンタイプのサスペンション構造である。図2(a)中の符号111FL、111FRは、車輪101FL、101FRが回転自在に取付けられるアクスル(車輪側部材)であり、アッパアーム113FL、113FR、ロアアーム112FL、112FRと連結するために上下方向に延長されている。つまり、各アクスル111FL、111FRの上部には、車幅方向に向けて水平又は略水平なアッパアーム113FL、113FRの車幅方向外側端部がそれぞれ1点で結合され、同様に下部には、車幅方向に向けて水平又は略水平なロアアーム112FL、112FRの車幅方向外側端部がそれぞれ1点で結合されている。
【0009】
前記ロアアーム112FL、112FRの車幅方向内側端部は、車体102にそれぞれ連結されており、これらの端部上面に、これらと一体的に連結部112FLJ、112FRJがそれぞれ設けられている。具体的に、各連結点にブッシュを介装し、前後方向軸周りに回転可能となるように連結されている。
更に、前記アッパリンク113FL、113FRの車幅方向内側端部は、第1ワットリンク部材114FL、114FRの上端部にそれぞれ連結され、これら第1ワットリンク部材114FL、114FRの下端部は車体102に連結されている。具体的に、各連結点にブッシュを介装し、前後方向軸周りに回転可能となるように連結されている。
【0010】
一方、前記第1ワットリンク部材114FL、114FRの中央連結部には、第1アーム115FL、115FRの車幅方向外側端部がそれぞれ連結され、前記ロアアーム112FL、112FRの連結部112FLJ、112FRJには、第2アーム118FL、118FRの車幅方向外側端部がそれぞれ連結されている。具体的に、各連結点にブッシュを介装し、前後方向軸周りに回転可能となるように連結されている。
【0011】
更に、車体102における、車輪101FL、101FR間の車幅方向内側中央部には、自己に連結された部品を車幅方向にスライドさせるスライド機構117が設けられ、当該スライド機構117には、第2ワットリンク部材116の中央連結部が連結される。第2ワットリンク部材116の上端部には、第2アーム118FLの車幅方向内側端部が連結され、第2ワットリンク部材116の下端部には、第2アーム118FRの車幅方向内側端部が連結されている。具体的に、各連結点にブッシュを介装し、前後方向軸周りに回転可能となるように連結されている。
【0012】
更に、第2ワットリンク部材116の中央連結部の回転軸上には、第1アーム115FL、115FRの車幅方向内側端部がそれぞれ連結されている。
また、図2(a)では、各アーム部材及び各リンク部材が、一つの平面に並ぶように描かれているが、実際には同じ高さ平面で前後に並んで配設される。例えば、図2(b)は、図2(a)に示す○で囲った範囲Aの拡大図であるが、図中のアッパアーム113FR側の連結点と、ロアアーム112FR側の連結点は、それぞれ前後にずらして配設されている。
【0013】
図2、或いは後述する図3におけるリンク類の白丸はアームとリンク部材との連結点を示している。また、これらの図中の黒丸の内側に白丸があるマークはリンクと車体102(車体側部材含む)との連結点を示している。
以下、図3に基づき、本実施形態の作用効果を説明する。ここで、図3(a)は、前左右輪101FL、101FRの上下移動が無い場合の懸架構造の概略を示す図であり、(b)は、前左右輪101FL、101FRが同時に上方向に移動時の懸架構造の概略を示す図であり、(c)は、前左輪101FLが上方に、前右輪101FRが下方に移動時の懸架構造の概略を示す図である。図3は、代表して前左右輪101FL、101FRについてのみ記しているが、後左右輪101RL、101RRも同様である。
【0014】
前記図2のような懸架構造となっている本実施形態では、図3(a)に示すように、車両が、平坦な路面上を直進しているときに、図3(b)に示すように、路面のアップダウン等により、前左右輪101FL、101FRに同時にバウンド方向の力がかかると、車高調整式ショックアブソーバ103FL、103FRが作動して、前左右輪101FL、101FRを、上方へと移動させる。このとき、アッパアーム113FL、113FRの回動によって発生した力は、第1リンク部材114FL、114FRを介して第1アーム115FL、115FRに対して、それぞれを車幅方向内側に移動させる力として伝達され、これら内側に移動させようとする力は、第2ワットリンク部材116の中央連結部において釣り合う。これにより、アッパアーム113FL、113FRの車幅方向内側の連結部は、前左右輪101FL、101FRの移動前の位置から変位せず、且つ力の釣り合いによってスライド機構117による第2ワットリンク部材116の車幅方向への移動が行われない。
【0015】
一方、ロアアーム112FL、112FRの車幅方向外側一端の上方への回動に伴い、これらの連結部112FLJ、112FRJもそれぞれ同方向に回動し、第2アーム118FL、118FRに対して、これらの車幅方向内側端部を、それぞれ車幅方向内側に向けて移動させようとする力が伝達される。この力の伝達によって、図3(b)に示す矢印のように、第2ワットリンク部材116の上端部に対しては、車幅方向右外側に向かう力が伝達され、一方、第2ワットリンク部材116の下端部に対しては、車幅方向左外側に向かう力が伝達される。前述したように、第2ワットリンク部材116の中央連結部は、その連結点を軸として第2ワットリンク部材116を回転可能にスライド機構117と連結しているので、第2アーム118FL、118FRの移動によって上端部及び下端部に伝達されたそれぞれ逆向きの力によって、第2ワットリンク部材116は右回転する。つまり、前左右輪101FL、101FRの上方向への移動による、第2アーム118FL、118FRの車幅方向内側端部の移動分が、第2ワットリンク部材116の回転によって吸収される。従って、アッパアーム113FL、113FRの車幅方向内側の連結部の位置を変位させずに、前左右輪101FL、101FRを上方向に移動させることができ、これにより、前左右輪101FL、101FRのキャンバ角を、前左右輪101FL、101FRの上方向への移動前の状態に維持することができる。
【0016】
また、前左右輪101FL、101FRに同時にリバウンド方向の力がかかったときは、上記バウンドの場合とは逆に、前左右輪101FL、101FRは下方へと移動することになるので、各アームは、それぞれ上記バウンドの場合とは逆方向に回動し、第1アーム115FL、115FRをそれぞれ車幅方向外側に移動させる力が、第2ワットリンク部材116の中央連結部において釣り合うと共に、第2ワットリンク部材116を左回転させることになる。従って、アッパアーム113FL、113FRの車幅方向内側の連結部の位置を変位させずに、前左右輪101FL、101FRを下方向に移動させることができ、これにより、前左右輪101FL、101FRのキャンバ角を、前左右輪101FL、101FRの下方向への移動前の状態に維持することができる。
【0017】
更に、図3(c)に示すように、車両が左旋回を行った場合は、前左輪101FLの接地点に旋回による横力がかかると共に、前左輪101FLにバウンド方向の力がかかり、前右輪101FRの接地点に旋回による横力がかかると共に、前右輪101FRにリバウンド方向の力がかかる。これにより、車高調整式ショックアブソーバ103FL、103FRが作動して、前左輪101FLが上方に移動し、前右輪101FRが下方へと移動すると、アッパアーム113FLは車幅方向外側の一端を上方に変位する方向に回動し、アッパアーム113FRは車幅方向外側の一端を下方に変位する方向に回動する。これら回動によって発生した力は、図3(c)の各矢印の示すように、第1リンク部材114FL、114FRを介して、第1アーム115FL、115FRに対し、それぞれを同じ方向(車幅方向右外側方向)に移動させようとする力として伝達され、これら伝達された力は、更に、第1アーム115FL、115FRを介して第2ワットリンク部材116の中央連結部に伝達される。
【0018】
一方、前左輪101FLの上方への移動、及び前右輪101FRの下方への移動による、ロアアーム112FLの車幅方向外側一端の上方への回動、及びロアアーム112FRの車幅方向外側一端の下方への回動に伴い、これらの連結部112FLJ、112FRJもそれぞれのロアアームと同方向に回動し、第2アーム118FL、118FRに対して、これらの車幅方向内側端部を、それぞれ同方向(車幅方向右外側方向)に移動させようとする力を伝達する。この力の伝達によって、図3(c)の矢印に示すように、第2ワットリンク部材116の上端部及び下端部に対しては、車幅方向右外側方向の力が伝達される。従って、第2ワットリンク部材116の各連結部には全て車幅方向右外側方向の力が伝達されるので、スライド機構117の機能により、第2ワットリンク部材116は回転することなく車幅方向右外側方向にスライドする。このスライドにより、第2ワットリンク部材116の回転軸に連結された第1アーム115FL、115FRの連結部も車幅方向右外側方向にスライドするため、アッパアーム113FLの車幅方向内側の連結部の位置は、スライドした分だけ車幅方向右外側方向、即ち車幅方向内側へと変位し、一方、アッパアーム113FRの車幅方向内側の連結部の位置は、スライドした分だけ車幅方向右外側方向、即ち車幅方向外側に変位する。これにより、前左輪101FLの上部が車幅方向内側に引き込まれ、前右輪101FRの上部が車幅方向外側に押し出される。従って、前左輪101FLのキャンバ角は、横力によってポジティブ側に変位しようとするのに反しながらネガティブ側に変位し、前右輪101FRのキャンバ角は、横力によってネガティブ側に変位しようとするのに反しながらポジティブ側に変位することになり、左右輪の上部にはキャンバ角を「0°」に近づける方向にそれぞれ力が働くので、車両左旋回時において、左右輪接地点の横剛性の低下を抑え、走行安定性の低下を軽減させることが可能である。
【0019】
なお、車両が右旋回を行った場合も、上記左旋回の場合とは左右輪にかかる力の方向が逆となるだけで、上記左旋回時と同様の原理で、第2ワットリンク部材116が車幅方向左外側方向にスライドし、このスライドにより、第2ワットリンク部材116の回転軸に連結された第1アーム115FL、115FRの連結部も車幅方向左外側方向にスライドするため、アッパアーム113FLの車幅方向内側の連結部の位置は、スライドした分だけ車幅方向外側へと変位し、且つアッパアーム113FRの車幅方向内側の連結部の位置は、スライドした分だけ車幅方向内側に変位する。従って、前左輪101FLのキャンバ角は、横力によってネガティブ側に変位しようとするのに反しながらポジティブ側に変位し、前右輪101FRのキャンバ角は、横力によってポジティブ側に変位しようとするのに反しながらネガティブ側に変位することになり、上記左旋回時と同様に左右輪の上部にはキャンバ角を「0°」に近づける方向にそれぞれ力が働くので、車両右旋回時において、左右輪接地点の横剛性の低下を抑え、操縦安定性の低下を軽減することが可能である。
【0020】
また、上記左旋回又は上記右旋回における車両旋回初期又は後期において、左右輪が上下同方向に移動する状態が発生するようなときに、本実施形態の懸架構造においては、前述したように、左右輪の上下方向の移動に対して、その移動前のキャンバ角を維持するようになっているので、車両旋回の開始から終了までにおいて、キャンバ角の変位量が線形的に変化するようになり、車輪接地点の横剛性の低下をより安定して抑えることが可能となるので、車両旋回時の操縦安定性の低下をより軽減させることが可能である。
【0021】
更に、左右輪の上下方向の移動に対して、ロアアームの端部ではなく、アッパーアームの端部を車幅方向に移動してキャンバ角を変化させる構成としたので、ロアアームの端部を移動させるよりも小さな力でアッパアームの端部を移動してキャンバ角を変化することができるので、効率よくキャンバ角を変化させることが可能である。また、左右輪の上下方向の移動時に発生する力を利用してアッパーアームの端部を車幅方向に移動してキャンバ角を変化させる構成としたので、動力源を用いることなく、キャンバ角を変化させ車両旋回時の操縦安定性の低下を軽減させることが可能である。
【0022】
上記第1実施形態において、第1ワットリンク部材114FL〜114RRは、「第1リンク部材」に対応し、第2ワットリンク部材116は、「第2リンク部材」に対応し、アクスル111FL〜111RRは、「車輪側部材」に対応し、車体ロールスイッチ105、コントロールユニット106及び車高調整式ショックアブソーバ103FL〜103RRからなる車輪101FL〜101RRの上下方向の移動機構は、「ストローク手段」に対応し、第1アーム115FL〜115RR、第2アーム118FL〜118RR、第1ワットリンク部材114FL〜114RR、第2ワットリンク部材116を含んでなる懸架構造は、「キャンバ角調整手段」に対応する。
【0023】
更に、実際に、(1)キャンバ角を調整する機構の無い懸架構造(以下、ノーマル構造という)、(2)上記特許文献1の懸架構造(以下、従来構造という)及び(3)上記第1実施形態の懸架構造(以下、本発明構造という)における旋回時のキャンバ角変化及び車輪接地点の移動量の測定を行った測定結果に基づき、各測定結果の比較を行う。ここで、図4(a)は、前記(1)〜(3)の各懸架構造に対する旋回外輪の上下方向移動量に対するキャンバ角変化の測定結果を示す図であり、(b)は、右旋回時の旋回外輪の横力に対するキャンバ角変化の測定結果を示す図であり、(c)は、旋回外輪の横力に対する車輪接地点の移動量(タイヤスカッフ)の測定結果を示す図である。
【0024】
図4(a)に示すように、ノーマル構造は、旋回外輪の上方への移動に対してはキャンバ角がネガティブ側に変位し、旋回外輪の下方への移動に対してはキャンバ角がポジティブ側に変位している。このようなキャンバ角の変位は、タイヤの接地している面と接地していない面とを発生させ、タイヤの偏摩耗を発生させてしまう。一方、従来構造及び本発明構造は、旋回外輪の上下方向の移動に対して、キャンバ角が略「0°」を保っており、このような特性は、タイヤが路面に対して略偏り無く接地している状態を示すので、タイヤの偏摩耗の発生を抑える。
【0025】
また、図4(b)に示すように、車両が右旋回時に、ノーマル構造は、旋回外輪の接地点にかかる横力に対して、旋回外輪のキャンバ角は横力が大きければ大きいほどポジティブ側に大きく変化している。そのため、横力が大きいほどタイヤの偏摩耗を促進し、且つ横力が大きいほど操縦安定性も低下させる。一方、従来構造及び本発明構造は、横力の大きさに応じて、旋回外輪のキャンバ角がネガティブ側に変位する特性を共に有しており、両者とも、旋回外輪にかかる横力が大きくなっても、それに追随してキャンバ角をネガティブ側に変位するのでタイヤの偏摩耗の発生を抑えると共に、操縦安定性の低下を抑えることが可能である。しかし、従来構造は、旋回初期において、旋回外輪のキャンバ角が一旦ポジティブ側に変位しており、全体的に非線形的な変化をしている。これに対し、本発明構造は、横力の大きさに応じて全体的に略線形的にネガティブ側に変位しており、従来構造よりも、操縦安定性の低下を軽減することができる。
【0026】
また、図4(c)に示すように、従来構造は、車両が右旋回時に、旋回外輪の接地点にかかる横力に対する、該接地点の移動量が、同じ横力に対してノーマル構造及び本発明構造よりも最大で20[mm]近くも大きくなっている。これは、従来構造よりも、ノーマル構造及び本発明構造の方が、タイヤ接地点の横剛性が高いことを示し、車両旋回時のタイヤスカッフを小さくして操縦安定性の低下を軽減できることを示す。
【0027】
次に、本発明の車両操縦装置の第2実施形態を説明する。
本実施形態は、上記第1実施形態と同様の機能を、第1アーム115FL、115FR、第2アーム118FL、118FR、第1ワットリンク部材114FL、114FR及び第2ワットリンク部材116から成るリンク構成に代えて、前左右輪101FL、101FRの上下移動量を検出するストロークセンサと、ストロークセンサの検出結果に基づき、上記第1実施形態おけるアッパアーム113FL、113FRの車幅方向内側端部の位置を変位させる軸力発生装置(モータ)とを用いて実現する構成としたものである。
【0028】
つまり、左右輪の上下移動量に応じた軸力発生装置の回転駆動力によって、アッパアーム113FL、113FRの車幅方向内側端部を、車幅方向内側又は外側に移動させることができるように、ダブルウィッシュボーン式のサスペンションを構成する各リンクにおける、駆動対象のリンクに対して回転駆動力を伝達するように構成した。更に、左右輪の移動方向が同方向である場合に、軸力発生装置からの回転駆動力を発生させないようにし、左右輪の移動方向が互いに逆方向であった場合は、ストロークセンサによって検出された移動量に応じた回転駆動力を軸力発生装置に発生させて、上方に移動した車輪側のアッパアームの車幅方向内側端部を車幅方向内側に引き込み、且つ下方に移動した車輪側のアッパアームの車幅方向内側端部を車幅方向外側に押し出すようにした。なお、本実施形態において、軸力発生装置の制御は、上記第1実施形態におけるコントロールユニット106が行う構成とした。つまり、ストロークセンサの検出結果は、コントロールユニット106に入力され、コントロールユニット106において軸力発生装置の制御信号が生成され、当該制御信号によって、軸力発生装置が駆動する構成とした。
【0029】
このような構成により、例えば、ストロークセンサによって左右輪の移動方向が同方向である検出結果が検出された場合は、アッパアーム113FL、113FRの車幅方向内側端部の位置を移動前の位置に維持するように軸力発生装置が制御され、アッパアーム113FL、113FRの車幅方向内側端部の位置は移動前の位置に維持される。また、車両が旋回を行うことにより、ストロークセンサによって左右輪の移動方向が互いに逆方向となる検出結果が検出された場合は、ストロークセンサによって検出された移動量に応じた回転駆動力を軸力発生装置に発生させ、上方に移動した車輪側のアッパアームの車幅方向内側端部を車幅方向内側に引き込み、且つ下方に移動した車輪側のアッパアームの車幅方向内側端部を車幅方向外側に押し出す。
【0030】
従って、上記第1実施形態と同様に、左右輪が上下方向において同方向に移動した場合は、左右輪のキャンバ角は移動前の状態に維持され、左右輪が上下方向において互いに逆方向に移動した場合は、上方に移動した車輪のキャンバ角がネガティブ側に変位し、且つ下方に移動した車輪のキャンバ角がポジティブ側に変位するので、車輪接地点の横剛性の低下を抑え、車両旋回時の操縦安定性の低下を軽減させることが可能である。更に、上記第1実施形態と同様に、ロアアームの端部ではなく、アッパーアームの端部を車幅方向に移動してキャンバ角を変化させる構成としたので、ロアリンクの端部を移動させるよりも小さな力でアッパアームの端部を移動することができ、効率よくキャンバ角を変化させることが可能である。
上記第2実施形態において、ストロークセンサは、「移動量検出手段」に対応し、コントロールユニット106における軸力発生装置の制御は、「移動制御手段」に対応し、軸力発生装置は、「結合部移動手段」に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施形態のキャンバ角調整装置を四輪車両の前後左右輪に適用した場合の概略構成図である。
【図2】(a)及び(b)は、各車輪101FL〜101RRの懸架構造の概略を示す。
【図3】(a)〜(c)は、第1実施形態の懸架構造の作用を示す図である。
【図4】(a)〜(c)は、実施例の測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
101FL〜101RR 車輪
102 車体
103FL〜103RR 車高調整式ショックアブソーバ
104FL〜104RR コイルスプリング
105 車体ロールスイッチ
106 コントロールユニット
111FL、111FR アクスル(車輪側部材)
112FL、112FR ロアアーム
113FL、113FR アッパアーム
114FL、114FR 第1ワットリンク部材
115FL、115FR 第1アーム
116 第2ワットリンク部材
117 スライド機構
118FL、118FR 第2アーム




 

 


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