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発明の名称 車両の操舵アシスト装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−15608(P2007−15608A)
公開日 平成19年1月25日(2007.1.25)
出願番号 特願2005−200520(P2005−200520)
出願日 平成17年7月8日(2005.7.8)
代理人 【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
発明者 山下 正治 / 藤田 修司
要約 課題
車両の操舵アシスト装置において、操舵フィーリングを悪化させることなく、操舵機構による異音を抑制する。

解決手段
車両の操舵アシスト装置は、操舵アシスト用の電動モータ15を備え、電動モータ15の回転出力はボールねじ機構16により減速されるとともに直線運動に変換されてラックバー14に伝達される。電子制御ユニット24は、操舵トルクセンサ21および車速センサ23により検出された操舵トルクおよび車速に応じて目標電流値を決定し、電流センサ25aにより検出された電動モータ15の実電流値をフィードバックして、電動モータ15に目標電流値に等しい電流を流すように制御する。操舵角センサ22により検出された操舵角に応じて、前記フィードバック制御におけるフィードバックゲインを変更して、操舵機構において発生する異音を抑制する。
特許請求の範囲
【請求項1】
操舵ハンドルの回動操作による操舵輪の操舵に対してアシスト力を付与する電動モータを有し、前記電動モータの実制御量をフィードバックして前記電動モータが目標制御量に従って作動するようにフィードバック制御するようにした車両の操舵アシスト装置において、
操舵ハンドルの操舵角を検出する操舵角検出手段と、
前記検出された操舵角に応じて前記フィードバック制御におけるフィードバックゲインを変更するゲイン変更手段とを設けたことを特徴とする車両の操舵アシスト装置。
【請求項2】
請求項1に記載した車両の操舵アシスト装置において、前記フィードバックゲインは、前記フィードバック制御における比例項および積分項のうちの少なくともいずれか一方に関する制御ゲインである車両の操舵アシスト装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載した車両の操舵アシスト装置において、
前記ゲイン変更手段は、前記検出された操舵角が大きいとき、同操舵角が小さいときに比べて前記フィードバックゲインを小さくなる側に変更し、前記フィードバック制御における応答性が高いために発生する異音を減少させる車両の操舵アシスト装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載した車両の操舵アシスト装置において、
前記ゲイン変更手段は、前記検出された操舵角が大きいとき、同操舵角が小さいときに比べて前記フィードバックゲインを大きくなる側に変更し、前記フィードバック制御における応答性が低いために発生する異音を減少させる車両の操舵アシスト装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれか一つに記載した車両の操舵アシスト装置において、
前記電動モータの目標制御量は、前記電動モータに流される目標電流値であり、かつ
前記電動モータの実制御量は、電流センサによって検出される前記電動モータに流れている実電流値である車両の操舵アシスト装置
【請求項6】
請求項1ないし5のうちのいずれか一つに記載した車両の操舵アシスト装置において、さらに
操舵ハンドルに付与される操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、
車速を検出する車速検出手段と、
前記検出された操舵トルクおよび車速に応じて前記電動モータの目標制御量を決定する目標制御量決定手段とを備えた車両の操舵アシスト装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちのいずれか一つに記載した車両の操舵アシスト装置において、
前記ゲイン変更手段は、前記操舵角検出手段によって検出された操舵角が所定操舵角よりも大きくなると、前記フィードバックゲインを第1のフィードバックゲインから第2のフィードバックゲインに変更するものであり、さらに
操舵ハンドルの操舵速度を検出する操舵速度検出手段と、
前記操舵速度検出手段によって検出された操舵速度が所定操舵速度よりも小さいとき前記ゲイン変更手段によるフィードバックゲインの変更を許容し、同検出された操舵速度が前記所定操舵速度以上であるとき前記ゲイン変更手段によるフィードバックゲインの変更を禁止するゲイン変更制御手段とを設けた車両の操舵アシスト装置。
【請求項8】
請求項7に記載した車両の操舵アシスト装置において、
前記操舵角検出手段によって検出された操舵角および前記操舵速度検出手段によって検出された操舵速度の変化に応じた、前記ゲイン変更手段および前記ゲイン変更制御手段によるフィードバックゲインの変更制御に対して、ヒステリシス特性をもたせた車両の操舵アシスト装置。
【請求項9】
請求項6に記載した車両の操舵アシスト装置において、
前記ゲイン変更手段は、前記操舵角検出手段によって検出された操舵角が所定操舵角よりも大きくなると、前記フィードバックゲインを第1のフィードバックゲインから第2のフィードバックゲインに変更するものであり、かつ
前記目標電流値は車速の増加に従って減少するものであり、さらに
前記電動モータに流れる電流が所定電流よりも大きいとき前記ゲイン変更手段によるフィードバックゲインの変更を許容し、同電動モータに流れる電流が前記所定電流以下であるとき前記ゲイン変更手段によるフィードバックゲインの変更を禁止するゲイン変更制御手段とを設けた車両の操舵アシスト装置。
【請求項10】
請求項9に記載した車両の操舵アシスト装置において、
前記操舵角検出手段によって検出された操舵角および前記電動モータに流れる電流の変化に応じた、前記ゲイン変更手段および前記ゲイン変更制御手段によるフィードバックゲインの変更制御に対して、ヒステリシス特性をもたせた車両の操舵アシスト装置。
【請求項11】
請求項6に記載した車両の操舵アシスト装置において、
前記ゲイン変更手段は、前記操舵角検出手段によって検出された操舵角が所定操舵角よりも大きくなると、前記フィードバックゲインを第1のフィードバックゲインから第2のフィードバックゲインに変更するものであり、さらに
前記操舵トルク検出手段によって検出された操舵トルクの変化率に対する前記電動モータに流れる電流の変化率の比の値を電流変化率として検出する電流変化率検出手段と、
前記電流変化率検出手段によって検出された電流変化率が所定変化率よりも大きいとき前記ゲイン変更手段によるフィードバックゲインの変更を許容し、同検出された電流変化率が前記所定変化率以下であるとき前記ゲイン変更手段によるフィードバックゲインの変更を禁止するゲイン変更制御手段とを設けた車両の操舵アシスト装置。
【請求項12】
請求項11に記載した車両の操舵アシスト装置において、
前記操舵角検出手段によって検出された操舵角および前記電流変化率検出手段によって検出された電流変化率の変化に応じた、前記ゲイン変更手段および前記ゲイン変更制御手段によるフィードバックゲインの変更制御に対して、ヒステリシス特性をもたせた車両の操舵アシスト装置。
【請求項13】
請求項6に記載した車両の操舵アシスト装置において、
前記ゲイン変更手段は、前記操舵角検出手段によって検出された操舵角が所定操舵角よりも大きくなると、前記フィードバックゲインを第1のフィードバックゲインから第2のフィードバックゲインに変更するものであり、さらに
前記車速検出手段によって検出された車速が所定車速未満であるとき前記ゲイン変更手段によるフィードバックゲインの変更を許容し、同車速が前記所定車速以上であるとき前記ゲイン変更手段によるフィードバックゲインの変更を禁止するゲイン変更制御手段とを設けた車両の操舵アシスト装置。
【請求項14】
請求項13に記載した車両の操舵アシスト装置において、
前記操舵角検出手段によって検出された操舵角および前記車速検出手段によって検出された車速の変化に応じた、前記ゲイン変更手段および前記ゲイン変更制御手段によるフィードバックゲインの変更制御に対して、ヒステリシス特性をもたせた車両の操舵アシスト装置。
【請求項15】
請求項1ないし14のうちのいずれか一つに記載した車両の操舵アシスト装置において、
前記ゲイン変更手段は、前記操舵角に応じて変更されたフィードバックゲインをローパスフィルタ処理するローパスフィルタ処理手段を含む車両の操舵アシスト装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵ハンドルの回動操作による操舵輪の操舵に対して、電動モータによるアシスト力を付与する車両の操舵アシスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の操舵アシスト装置においては、下記特許文献1に示されているように、不必要な電動モータの駆動制御を防止するために、ラックバーがストロークエンド付近に達した状態では、電動モータに対する制御電圧を下げて、電動モータによるアシストトルクを減少させ、またはアシストトルクの付与を停止することは知られている。
【特許文献1】特公平6−4417号公報
【0003】
しかし、一般的に、操舵ハンドルを大きな操舵角に操舵している状態では、操舵ハンドルを回動操作するために大きな操舵トルクが必要とされ、上記従来技術のように、ラックバーがストロークエンド付近に達した状態で、電動モータによるアシストトルクを減少またはアシストトルクの付与を停止させてしまうと、運転者は操舵ハンドルの操舵操作に違和感を感じ、操舵フィーリングが悪化するという問題がある。本発明は、この操舵フィーリングの悪化を問題にするとともに、操舵ハンドルから操舵輪までの操舵機構部分における異音の発生を問題視したものである。
【0004】
一般的に、操舵ハンドルを大きく操舵している状態では、操舵アシスト力が大きいために、電動モータの出力トルクは大きくなり、また電動モータの電流の変化率も大きいので、電動モータの出力トルクの変動が大きい。したがって、この状態では、電動モータの出力トルクの応答性と操舵機構の作動応答性との差に起因して、操舵機構内に異音が発生し易くなる。より具体的には、通常の操舵角の範囲内において、電動モータの制御応答性を高くした状態で操舵機構に異音が発生しないように、操舵機構の特性に合わせて電動モータに対する制御がチューニングされている場合、操舵角が大きくなると、電動モータの出力トルクの大きな変動に対して、操舵機構の作動に過補償が生じて異音が発生する。逆に、通常の操舵角の範囲内において、電動モータの制御応答性を低くした状態で操舵機構に異音が発生しないように、操舵機構の特性に合わせて電動モータに対する制御がチューニングされている場合、操舵角が大きくなると、操舵機構の作動に対して電動モータの出力トルクの応答遅れが顕著になり、この場合も大きな異音が発生する。
【発明の開示】
【0005】
本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、操舵フィーリングを悪化させることなく、操舵機構による異音を抑制するようにした車両の操舵アシスト装置を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、操舵ハンドルの回動操作による操舵輪の操舵に対してアシスト力を付与する電動モータを有し、電動モータの実制御量をフィードバックして電動モータが目標制御量に従って作動するようにフィードバック制御するようにした車両の操舵アシスト装置において、操舵ハンドルの操舵角を検出する操舵角検出手段と、前記検出された操舵角に応じてフィードバック制御におけるフィードバックゲインを変更するゲイン変更手段とを設けたことにある。この場合、フィードバックゲインは、フィードバック制御における比例項および積分項のうちの少なくともいずれか一方に関する制御ゲインである。
【0007】
また、ゲイン変更手段は、例えば、前記検出された操舵角が大きいとき、同操舵角が小さいときに比べてフィードバックゲインを小さくなる側に変更し、フィードバック制御における応答性が高いために発生する異音を減少させるようにすればよい。また、ゲイン変更手段は、前記検出された操舵角が大きいとき、同操舵角が小さいときに比べてフィードバックゲインを大きくなる側に変更し、フィードバック制御における応答性が低いために発生する異音を減少させるようにしてもよい。
【0008】
また、電動モータの目標制御量は、例えば電動モータに流される目標電流値であり、かつ電動モータの実制御量は、電流センサによって検出される電動モータに流れている実電流値である。さらに、車両の操舵アシスト装置において、操舵ハンドルに付与される操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、車速を検出する車速検出手段と、前記検出された操舵トルクおよび車速に応じて電動モータの目標制御量を決定する目標制御量決定手段とを備え、電動モータの目標制御量が操舵トルクおよび車速に応じて決まるようにするとよい。
【0009】
上記のように構成した本発明の特徴においては、ゲイン変更手段が、操舵角に応じてフィードバック制御におけるフィードバックゲインを変更する。具体的には、ゲイン変更手段は、例えば、操舵ハンドルの操舵角が大きいとき、同操舵角が小さいときに比べてフィードバックゲインを小さくなる側に変更し、フィードバック制御における応答性が高いために発生する異音を減少させる。また、ゲイン変更手段は、操舵ハンドルの操舵角が大きいとき、同操舵角が小さいときに比べてフィードバックゲインを大きくなる側に変更し、フィードバック制御における応答性が低いために発生する異音を減少させる。このフィードバックゲインの変更により、目標制御量を変更することなく、電動モータの実制御量を目標制御量に近づけるための制御量が変更され、電動モータの現在の状態から目標制御量に対応した状態への変化速度が、操舵角が大きくなって電動モータの出力トルクが大きくなったとき、遅くまたは速く制御されることになる。
【0010】
その結果、操舵角が大きくなっても、同操舵角の大きな状態時に必要とされる電動モータに対する制御量が確保されるので、操舵フィーリングが悪化することはない。また、操舵角に応じたフィードバックゲインの変更制御の結果、電動モータの出力トルクの応答性と操舵機構の応答性の差に起因した異音の発生を回避できる。具体的には、通常の操舵角の範囲内において、電動モータの制御応答性を高くした状態で操舵機構に異音が発生しないように、操舵機構の特性に合わせて電動モータに対する制御がチューニングされている場合、操舵角が大きくなると、電動モータへのフィードバック制御量が減少制御されて、電動モータの出力トルクが変動し難くなるので、操舵機構の過補償に起因した異音の発生が抑制される。逆に、通常の操舵角の範囲内において、電動モータの制御応答性を低くした状態で操舵機構に異音が発生しないように、操舵機構の特性に合わせて電動モータに対する制御がチューニングされている場合、操舵角が大きくなると、電動モータへのフィードバック制御量が増加制御されて、電動モータの出力トルクが変動し易くなるので、操舵機構の作動に対して電動モータの出力トルクの応答遅れが回避され、異音の発生が抑制される。
【0011】
また、本発明の他の特徴は、ゲイン変更手段は、操舵角検出手段によって検出された操舵角が所定操舵角よりも大きくなると、フィードバックゲインを第1のフィードバックゲインから第2のフィードバックゲインに変更するものであり、さらに操舵ハンドルの操舵速度を検出する操舵速度検出手段と、操舵速度検出手段によって検出された操舵速度が所定操舵速度よりも小さいときゲイン変更手段によるフィードバックゲインの変更を許容し、同検出された操舵速度が所定操舵速度以上であるときゲイン変更手段によるフィードバックゲインの変更を禁止するゲイン変更制御手段とを設けたことにある。
【0012】
操舵角が大きい状態で操舵ハンドルが急操舵されると、急激な電圧(電流)上昇を必要とする場合があり、このような状態で、フィードバックゲインを切換えてしまうと、電動モータの制御応答性が過度に急変して、操舵機構における異音および不具合が発生する場合がある。しかし、前記本発明の他の特徴によれば、電動モータへの駆動電流の急激な変化が抑制されて、電動モータ15の急激な制御応答性の変化に伴う操舵機構における異音および不具合の発生が防止される。
【0013】
また、本発明の他の特徴は、操舵角検出手段によって検出された操舵角および操舵速度検出手段によって検出された操舵速度の変化に応じた、ゲイン変更手段およびゲイン変更制御手段によるフィードバックゲインの変更制御に対して、ヒステリシス特性をもたせたことにある。これによれば、操舵角および操舵速度の変化に対して、フィードバックゲインの切換えの頻度が緩和される。その結果、フィードバックゲインの切換え、すなわち電動モータへの駆動電流の頻繁な切換えが緩和されて、操舵機構における異音の発生がより良好に抑制される。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、ゲイン変更手段は、操舵角検出手段によって検出された操舵角が所定操舵角よりも大きくなると、フィードバックゲインを第1のフィードバックゲインから第2のフィードバックゲインに変更するものであり、かつ目標電流値は車速の増加に従って減少するものであり、さらに電動モータに流れる電流が所定電流よりも大きいときゲイン変更手段によるフィードバックゲインの変更を許容し、同電動モータに流れる電流が所定電流以下であるときゲイン変更手段によるフィードバックゲインの変更を禁止するゲイン変更制御手段とを設けたことにある。この場合、電動モータに流れる電流として、目標電流値を用いてもよいし、実電流値を用いてもよい。
【0015】
操舵ハンドルの操舵角が大きくても、電動モータに流れる電流が小さければ、フィードバックゲインは切換えられない。言い換えれば、操舵ハンドルの操舵角が大きくても、車速が高ければ、フィードバックゲインは切換えられない。その結果、操舵ハンドルが大きく操舵される車両の停止時または極低速時に合わせて、操舵機構から異音が発生しないようにフィードバックゲインを設定しても、高速走行時にはフィードバックゲインが切換えられることがなくなり、操舵フィーリングの悪化を防止できる。
【0016】
また、本発明の他の特徴は、操舵角検出手段によって検出された操舵角および電動モータに流れる電流の変化に応じた、ゲイン変更手段およびゲイン変更制御手段によるフィードバックゲインの変更制御に対して、ヒステリシス特性をもたせたことにある。これによれば、操舵角および電動モータに流れる電流値の変化に対して、フィードバックゲインの切換えの頻度が緩和される。その結果、フィードバックゲインの切換え、すなわち電動モータへの駆動電流の頻繁な切換えが緩和されて、操舵機構における異音の発生がより良好に抑制される。
【0017】
また、本発明の他の特徴は、ゲイン変更手段は、操舵角検出手段によって検出された操舵角が所定操舵角よりも大きくなると、フィードバックゲインを第1のフィードバックゲインから第2のフィードバックゲインに変更するものであり、さらに操舵トルク検出手段によって検出された操舵トルクの変化率に対する電動モータに流れる電流の変化率の比の値を電流変化率として検出する電流変化率検出手段と、電流変化率検出手段によって検出された電流変化率が所定変化率よりも大きいときゲイン変更手段によるフィードバックゲインの変更を許容し、同検出された電流変化率が所定変化率以下であるときゲイン変更手段によるフィードバックゲインの変更を禁止するゲイン変更制御手段とを設けたことにある。この場合も、電動モータに流れる電流として、目標電流値を用いてもよいし、実電流値を用いてもよい。
【0018】
電流変化率は、必要なアシスト力に対する電動モータによって発生されるトルク変動の大きさ、すなわちその値の増加により異音が発生し易い状況を示している。そして、電流変化率が小さいときには、ゲイン変更手段によるフィードバックゲインの切換えが禁止され、電流変化率が大きくなると前記フィードバックゲインの切り換えが許容される。その結果、異音が発生し易い状況下で、フィードバックゲインが切換えられ易くなるために、異音の低減と良好な操舵フィーリングの両立が可能となる。
【0019】
また、本発明の他の特徴は、操舵角検出手段によって検出された操舵角および電流変化率計算手段によって検出された電流変化率の変化に応じた、ゲイン変更手段およびゲイン変更制御手段によるフィードバックゲインの変更制御に対して、ヒステリシス特性をもたせたことにある。これによれば、操舵角および電流変化率の変化に対して、フィードバックゲインの切換えの頻度が緩和される。その結果、フィードバックゲインの切換え、すなわち電動モータへの駆動電流の頻繁な切換えが緩和されて、操舵機構における異音の発生がより良好に抑制される。
【0020】
また、本発明の他の特徴は、ゲイン変更手段は、操舵角検出手段によって検出された操舵角が所定操舵角よりも大きくなると、フィードバックゲインを第1のフィードバックゲインから第2のフィードバックゲインに変更するものであり、さらに車速検出手段によって検出された車速が所定車速未満であるときゲイン変更手段によるフィードバックゲインの変更を許容し、同車速が所定車速以上であるときゲイン変更手段によるフィードバックゲインの変更を禁止するゲイン変更制御手段とを設けたことにある。
【0021】
これによれば、操舵ハンドルの操舵角が大きくても、車速が高ければ、フィードバックゲインは切換えられない。その結果、操舵ハンドルが大きく操舵される車両の停止時または極低速時に合わせて、操舵機構から異音が発生しないようにフィードバックゲインを設定しても、高速走行時にフィードバックゲインが切換えられることなくなり、操舵フィーリングの悪化を防止できる。
【0022】
また、本発明の他の特徴は、操舵角検出手段によって検出された操舵角および車速検出手段によって検出された車速の変化に応じた、ゲイン変更手段およびゲイン変更制御手段によるフィードバックゲインの変更制御に対して、ヒステリシス特性をもたせたことにある。これによれば、実操舵角および車速の変化に対して、フィードバックゲインの切換えの頻度が緩和される。その結果、フィードバックゲインの切換え、すなわち電動モータへの駆動電流の頻繁な切換えが緩和されて、操舵機構における異音の発生がより良好に抑制される。
【0023】
さらに、本発明の他の特徴は、ゲイン変更手段が、操舵角に応じて変更されたフィードバックゲインをローパスフィルタ処理するローパスフィルタ処理手段を含むことにある。これにより、変更されたフィードバックゲインはなまされ、ゲイン変更手段によってフィードバックゲインが変更されても、電動モータによるアシスト力の応答特性は滑らかに変化するので、運転者は操舵ハンドルの回動操作に違和感を覚えなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明すると、図1は、本発明に係る操舵アシスト装置を含む車両の操舵装置の全体を示す概略図である。
【0025】
この車両の操舵装置は、操舵ハンドル11に上端を一体回転するように接続したステアリングシャフト12を備え、同シャフト12の下端にはピニオンギヤ13が一体回転するように接続されている。ピニオンギヤ13は、ラックバー14に形成されたラック歯と噛み合ってラックアンドピニオン機構を構成する。ラックバー14の両端には、図示しないタイロッドおよびナックルアームを介して左右前輪FW1,FW2が操舵可能に接続されている。左右前輪FW1,FW2は、ステアリングシャフト12の軸線回りの回転に伴うラックバー14の軸線方向の変位に応じて左右に操舵される。
【0026】
ラックバー14には、操舵アシスト用の電動モータ15が組み付けられている。電動モータ15は、ボールねじ機構16を介してラックバー14に動力伝達可能に接続されていて、その回転により左右前輪FW1,FW2の操舵をアシストする。ボールねじ機構16は、減速器および回転−直線変換器として機能するもので、電動モータ15の回転を減速するとともに直線運動に変換してラックバー14に伝達する。また、電動モータ15をラックバー14に組み付けるのに代えて、電動モータ15をステアリングシャフト12に組み付けて、電動モータ15の回転を減速器を介してステアリングシャフト12に伝達して同シャフト12を軸線周りに駆動するように構成してもよい。
【0027】
次に、電動モータ15の作動を制御する電気制御装置について説明する。電気制御装置は、操舵トルクセンサ21、操舵角センサ22および車速センサ23を備えている。操舵トルクセンサ21は、ステアリングシャフト12に組み付けられていて、操舵ハンドル11の回動操作によってステアリングシャフト12に作用する操舵トルクTを検出する。操舵トルクTは、正負の値により左右前輪FW1,FW2の右方向および左方向の操舵時における操舵トルクTの大きさをそれぞれ表す。また、操舵トルクセンサ21をステアリングシャフト12に組み付けるのに代え、ラックバー14に組み付けて、ラックバー14の軸線方向の歪み量から操舵トルクTをそれぞれ検出するようにしてもよい。
【0028】
操舵角センサ22は、ステアリングシャフト12に組み付けられて、同シャフト12の回転角を検出することにより操舵ハンドル11の実操舵角θを検出する。実操舵角θも、正負の値により操舵ハンドル11の右方向および左方向の操舵時における実操舵角θの大きさをそれぞれ表す。また、操舵角センサ22をステアリングシャフト12に組み付けるのに代え、ラックバー14に組み付けて、ラックバー14の軸線方向の変位量から実操舵角θをそれぞれ検出するようにしてもよい。さらに、電動モータ15の回転角も実操舵角θに比例しているので、電動モータ15の回転角から実操舵角θを検出するようにしてもよい。なお、この実操舵角θは左右前輪FW1,FW2の操舵角に比例するもので、左右前輪FW1,FW2の操舵角を採用しても同等である。車速センサ23は、車速Vを検出する。
【0029】
これらの操舵トルクセンサ21、操舵角センサ22および車速センサ23は、電子制御ユニット24に接続されている。電子制御ユニット24は、CPU,ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータを主要構成部品とし、後述する種々のコンピュータプログラム制御により、駆動回路25を介して電動モータ15を駆動制御する。駆動回路25は、電子制御ユニット24からの制御電圧値Eoを入力して、同制御電圧値Eoに比例した電流を電動モータ15に流すことにより、電動モータ15に制御電圧値Eoに比例したアシストトルクを発生させる。駆動回路25内には電流センサ25aが設けられており、電流センサ25aは電動モータ15に流れる電流の大きさを表す実電流値Iを検出して電子制御ユニット24に供給する。
【0030】
以上が本発明に係る車両の操舵装置のハード構成例であるが、以下、各種制御例について順次説明する。これらの制御例においては、イグニッションスイッチの投入により、電子制御ユニット24内にて、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することにより電動モータ15の回転を制御する。以下の各制御例の説明においては、このCPUによって実行されるプログラムを機能ブロック図により表している。
【0031】
a.第1制御例
まず、第1制御例について図面を用いて詳しく説明すると、図2は、この第1制御例に係る電子制御ユニット24の機能ブロック図である。目標電流値決定部BL1が、操舵トルクセンサ21および車速センサ23によってそれぞれ検出された操舵トルクTおよび車速Vを用いて目標電流値テーブルを参照し、操舵トルクTおよび車速Vに応じて変化する目標電流値I*を決定する。この目標電流値テーブルは、電子制御ユニット24内のROMに予め記憶されており、図3に示すように、複数の代表的な車速値ごとに、操舵トルクTの増加に従って非線形増加する複数の目標電流値I*を記憶している。この目標電流値I*は、同一の操舵トルクTに対して、車速Vが低いほど大きい。なお、この目標電流値テーブルを利用するのに代えて、操舵トルクTおよび車速Vに応じて変化する目標電流値I*を関数により予め定義しておき、同関数を利用して目標電流値I*を計算するようにしてもよい。
【0032】
この決定された目標電流値I*は、電流偏差演算部BL2に供給される。電流偏差演算部BL2は、電流センサ25aによって検出された実電流値Iも入力し、目標電流値I*から実電流値Iを減算することにより電流偏差ΔI(=I*−I)を計算して、積分演算部BL3およびPゲイン制御部BL4(すなわち比例項ゲイン制御部BL4)にそれぞれ供給する。積分演算部BL3は、時間経過に従って変化する電流偏差ΔIに積分演算を施して、Iゲイン制御部BL5(すなわち積分項ゲイン制御部BL5)に供給する。
【0033】
一方、PIゲイン設定部BL6(すなわち比例・積分制御ゲイン設定部BL6)は、操舵角センサ22によって検出された実操舵角θを用いて、Pゲインテーブル(すなわち比例項ゲインテーブル)およびIゲインテーブル(すなわち積分項ゲインテーブル)を参照し、実操舵角θに応じて変化するPゲインKpおよびIゲインKiを設定する。これらのPゲインテーブルおよびIゲインテーブルは、電子制御ユニット24のROM内に予め設けられており、図4(A)(B)に示すように、実操舵角θの絶対値|θ|が、所定の操舵舵角θ1(例えば、500度)以下であるとき大きな値となり、所定の操舵角θ1より大きいとき小さな値となるPゲインKpおよびIゲインKiを記憶している。なお、これらのPゲインテーブルおよびIゲインテーブルを利用するのに代えて、実操舵角θに応じて変化するPゲインKpおよびIゲインKiを関数により予め定義しておき、同関数を利用してPゲインKpおよびIゲインKiを計算するようにしてもよい。
【0034】
Pゲイン制御部BL4は、電流偏差演算部BL2から供給される電流偏差ΔIにPIゲイン設定部BL6から供給されるPゲインKpを乗算した比例制御値Kp・ΔIを加算部BL7に出力する。Iゲイン制御部BL4は、積分演算部BL3から供給される電流偏差積分値∫ΔIdtにPIゲイン設定部BL6から供給されるIゲインKiを乗算した積分制御値Ki・∫ΔIdtを加算部BL7に出力する。加算部BL7は、比例制御値Kp・ΔIと積分制御値Ki・∫ΔIdtを加算して、加算結果Kp・ΔI+Ki・∫ΔIdtを制御電圧値Eoとして駆動回路25に出力する。
【0035】
駆動回路25は、制御電圧値Eoに比例した駆動電流を電動モータ15に流して、電動モータ15の回転をフィードバック制御する。したがって、電動モータ15は回転して、前記制御電圧値Eoに比例した回転トルクを出力する。この電動モータ15の回転は、ボールねじ機構16に伝達され、ボールねじ機構16は電動モータ15の回転を減速するとともに直線運動に変換して、ラックバー14を軸線方向に駆動する。その結果、運転者による操舵ハンドル11の回動操作が電動モータ15によりアシストされ、左右前輪FW1,FW2は運転者による操舵力と電動モータ15によるアシスト力により操舵される。
【0036】
したがって、運転者は、電動モータ15によるアシスト力によってアシストされながら、操舵ハンドル11を回動操作できる。この場合、実操舵角θが大きくなっても、目標電流値I*に応じて電動モータ15は駆動制御され、実操舵角θの大きな状態時に必要される電動モータ15に対する制御量が確保されるので、操舵フィーリングが悪化することはない。また、実操舵角θの絶対値|θ|が所定の操舵角θ1以下であれば、PゲインKpおよびIゲインKiは大きな値に設定される。なお、この大きな値に設定されたゲインKp,Kiを用いる結果、この第1制御例では、実操舵角θの絶対値|θ|が所定の操舵角θ1以内である限り、電動モータ15の制御応答性が高く保たれて、電動モータ15、ボールねじ機構16、ラックバー14などからなる操舵機構による異音の発生が抑制される。また、実操舵角θの絶対値|θ|が大きくなって所定の操舵角θ1を越えると、フィードバックゲインであるゲインKp,Kiが小さな値に変更される。そして、小さなゲインKp,Kiによって電動モータ15をフィードバック制御する結果、制御電圧値Eoの変動が大きくなっても、電動モータ15の出力トルクが変動し難くなるので、前記操舵機構の過補償に起因した異音の発生が抑制される。
【0037】
なお、前記第1制御例においては、実操舵角θの絶対値|θ|が所定の操舵角θ1を境に2値に変化するPゲインKpおよびIゲインKiを記憶したPゲインテーブルおよびIゲインテーブルを利用した。しかし、これらのテーブルに代えて、図5(A)(B)に示すように、実操舵角θの絶対値|θ|が所定の操舵角θ1を挟んで増加するに従って、大きな値から小さな値に徐々に変化するPゲインKpおよびIゲインKiを記憶したPゲインテーブルおよびIゲインテーブルを用いるようにしてもよい。これによれば、実操舵角θの変化に応じて滑らかに変化するPゲインKpおよびIゲインKiを用いてフィードバック制御され、フィードバックゲインの切り換えが滑らかに行われるので、上記第1制御例に比べて、運転者は操舵ハンドル11の回動操作に対して違和感を覚えることがなくなる。
【0038】
また、前記第1制御例およびその変形例においては、実操舵角θの絶対値|θ|が大きくなると、同絶対値|θ|が小さいときに比べて、PゲインKpおよびIゲインKiが小さな値となるようにした。しかし、図6(A)(B)に示すように、実操舵角θの絶対値|θ|が所定の操舵角θ1以下であるとき小さな値をなり、同絶対値|θ|が所定の操舵角θ1を越えると大きな値となるPゲインKpおよびIゲインKiを記憶したPゲインテーブルおよびIゲインテーブルを用いるようにしてもよい。また、この変形例においても、図7(A)(B)に示すように、実操舵角θの絶対値|θ|が所定の操舵角θ1を挟んで増加するに従って、小さな値から大きな値に徐々に変化するPゲインKpおよびIゲインKiを記憶したPゲインテーブルおよびIゲインテーブルを用いるようにしてもよい。
【0039】
前記第1制御例の場合のように、電動モータ15の制御応答性が高く(すなわち周波数応答性が高く)、実操舵角θの絶対値|θ|が大きくない状態で、電動モータ15、ボールねじ機構16およびラックバー14からなる操舵機構に異音が発生しないように電動モータ15に対する制御がチューニングされていることがある。しかし、操舵アシスト装置の中には、実操舵角θの絶対値|θ|が大きくない範囲内において、電動モータ15の制御応答性を低くして(すなわち周波数応答性を低くして)前記操舵機構に異音が発生しないように、操舵機構の特性に合わせて電動モータ15に対する制御がチューニングされている場合もある。この場合には、実操舵角θの絶対値|θ|が大きくなると、操舵機構の作動に対して電動モータ15の出力トルクの応答遅れが顕著になる傾向にある。しかし、前記変形例においては、実操舵角θの絶対値|θ|が大きいときに、前記第1制御例とは逆にPゲインKpおよびIゲインKiが共に大きくなるので、電動モータ15の出力トルクの応答遅れが緩和されて、操舵機構内の異音の発生が抑制される。
【0040】
さらに、上記実施形態においては、PゲインKpおよびIゲインKiの両方を用いて電動モータ15をフィードバック制御したが、これに代えて、PゲインKpおよびIゲインKiのうちのいずれか一方のみを用いて電動モータ15をフィードバック制御するようにしてもよい。また、後述する他の制御例においても、PゲインKpおよびIゲインKiの両方を用いて電動モータ15をフィードバック制御するようにした例について説明するが、これらの他の制御例においても、PゲインKpおよびIゲインKiのうちのいずれか一方のみを用いて電動モータ15をフィードバック制御するようにしてもよい。
【0041】
b.第2制御例
次に、第2制御例について説明すると、この第2制御例に係る電子制御ユニット24の機能ブロック図は図8に示されている。この図8の機能ブロック図は、図2の機能ブロック図に対して、PIゲイン設定部BL6の前段に操舵角判定部BL8が追加されている。また、この図8のPIゲイン設定部BL6は前記図2の機能ブロック図のPIゲイン設定部BL6とは異なる機能を有するが、その他の部分に関しては図2の機能ブロック図の場合と同じであるので、前記第1制御例とは異なる部分についてのみ説明して、その他の部分に関しては説明を省略する。
【0042】
操舵角判定部BL8は、図9のステップS10〜S15からなる操舵角判定プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行して、PゲインおよびIゲインの設定条件を決定するためのフラグFLGを“0”または“1”に設定する。すなわち、操舵角判定部BL8は、操舵角センサ22から実操舵角θを入力し、入力した実操舵角θの絶対値|θ|が所定の操舵角θ1以下であればフラグFLGを“0”に設定し、同絶対値|θ|が所定の操舵角θ1を越えるとフラグFLGを“1”に設定する。
【0043】
PIゲイン設定部BL6は、図10のステップS20〜S24からなるPIゲイン設定プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行し、PゲインマップおよびIゲインマップをそれぞれ参照して、操舵角判定部BL8によって設定されたフラグFLGに応じてPゲインKpおよびIゲインKiを設定する。すなわち、PゲインマップおよびIゲインマップは図11に示されており、フラグFLGが“0”であれば、PゲインKpおよびIゲインKiは通常定数Kp1,Ki1に設定される。また、フラグFLGが“1”であれば、PゲインKpおよびIゲインKiは異音対応定数Kp2,Ki2に設定される。
【0044】
PゲインマップおよびIゲインマップにおいては、電動モータ15の制御応答性が高く、実操舵角θの絶対値|θ|が大きくない状態で、電動モータ15、ボールねじ機構16およびラックバー14からなる操舵機構に異音が発生しないように電動モータ15に対する制御がチューニングされている場合には、上記図4(A)(B)のゲインテーブルと同様に、異音対応定数Kp2,Ki2は通常定数Kp1,Ki1よりもそれぞれ小さな値に設定されている。一方、電動モータ15の制御応答性が低く、実操舵角θの絶対値|θ|が大きくない状態で、前記操舵機構に異音が発生しないように電動モータ15に対する制御がチューニングされている場合には、上記図6(A)(B)のゲインテーブルと同様に、異音対応定数Kp2,Ki2は通常定数Kp1,Ki1よりもそれぞれ大きな値に設定されている。なお、後述する各制御例においても、これらの定数Kp1,Ki1,Kp2,Ki2は用いられるようになっており、同各制御例においても、定数Kp1,Ki1,Kp2,Ki2は前述のように設定されているものとする。
【0045】
上記説明のように、この第2制御例においても、上記第1制御例の場合と同様に、実操舵角θの絶対値|θ|が大きくなると、PゲインKpおよびIゲインKiは通常定数Kp1,Ki1から異音対応定数Kp2,Ki2に切換えられる。したがって、この第2制御例によっても、上記第1制御例の場合と同様に、操舵フィーリングが実操舵角θが変化しても常に良好に保たれるとともに、ボールねじ機構16およびラックバー14からなる操舵機構内の異音の発生が実操舵角θが変化しても常に抑制される。
【0046】
c.第3制御例
次に、第3制御例について説明すると、この第3制御例に係る電子制御ユニット24の機能ブロック図は図12に示されている。この図12の機能ブロック図は、第2制御例に関する図8の機能ブロック図の操舵角判定部BL8が操舵速度演算部BL9およびゲイン変更条件判定部BL10に変更されている。PIゲイン設定部BL6を含む他の部分に関しては、図8の機能ブロック図の場合と同じであるので、前記第2制御例とは異なる部分についてのみ説明して、その他の部分に関しては説明を省略する。
【0047】
操舵速度演算部BL9は、操舵角センサ22から入力した実操舵角θを時間微分して、操舵ハンドル11の操舵速度ω(左右前輪FW1,FW2の操舵速度および電動モータ15の回転速度と同等)を計算する。ゲイン変更条件判定部BL10は、図13のステップS30〜S36からなるゲイン変更条件判定プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行して、実操舵角θおよび操舵速度ωに応じてフラグFLGを“0”または“1”に設定する。すなわち、ゲイン変更条件判定部BL10は、操舵角センサ22から実操舵角θを入力するとともに前記計算された操舵速度ωを入力し、入力した実操舵角θの絶対値|θ|が所定の操舵角θ1以下または入力した操舵速度ωの絶対値|ω|が所定の操舵速度ω1(例えば、100度/秒)以上であるとき、フラグFLGを“0”に設定する。また、実操舵角θの絶対値|θ|が所定の操舵角θ1よりも大きく、かつ操舵速度ωの絶対値|ω|が所定の操舵速度ω1未満であるとき、フラグFLGを“1”に設定する。
【0048】
このような第3制御例においては、第2制御例によるPゲインKpおよびIゲインKiの切換え制御に加えて、実操舵角θの絶対値|θ|が所定の操舵角θ1よりも大きくても、操舵速度ωの絶対値|ω|が所定の操舵速度ω1未満でない限り、PゲインKpおよびIゲインKiは通常定数Kp1,Ki1から異音対応定数Kp2,Ki2に切換えられない。その結果、操舵ハンドル11が大きく操舵されている状態でさらに急に操舵されても、電動モータ15の制御応答性が適切に制御され、操舵機構における異音および不具合の発生が防止される。
【0049】
具体的には、電動モータ15の制御応答性が高く、実操舵角θの絶対値|θ|が大きくない状態で、操舵機構に異音が発生しないように電動モータ15に対する制御がチューニングされている場合には、前記絶対値|θ|が大きい状態で操舵ハンドル11が速く操舵されると、急激な電圧(電流)変化を必要とする場合があり、電動モータ15の制御応答性が悪いと、操舵機構に異音および不具合が発生する場合がある。しかし、この第3制御例によれば、このような場合には、PゲインKpおよびIゲインKiは通常定数Kp1,Ki1から異音対応定数Kp2,Ki2に切換えられないので、すなわち高い値から低い値に切換えられないので、電動モータ15の制御応答性は以前の高い状態に保たれ、操舵機構における異音または不具合の発生が防止される。
【0050】
また、電動モータ15の制御応答性が低く、実操舵角θの絶対値|θ|が大きくない状態で、操舵機構に異音が発生しないように電動モータ15に対する制御がチューニングされている場合には、前記絶対値|θ|が大きい状態で操舵ハンドル11が速く操舵されると、急激な電圧(電流)変化を必要とする場合があり、電動モータ15の制御応答性を急に高くすると、操舵機構の応答性とのずれにより異音が発生し、またシステム異常に至る場合がある。しかし、このような場合には、PゲインKpおよびIゲインKiは通常定数Kp1,Ki1から異音対応定数Kp2,Ki2に切換えられないので、すなわち低い値から高い値に切換えられないので、電動モータ15の制御応答性が急激に過度に高くなることがなく、操舵機構における異音および不具合の発生が防止される。
【0051】
なお、この第3制御例において、実操舵角θおよび操舵速度ωに応じたPゲインKpおよびIゲインKiの変更制御に対してヒステリシス特性をもたせるように変形することも可能である。この変形例においては、ゲイン変更条件判定部BL10は、図13のゲイン変更条件判定プログラムに代えて、図14のゲイン変更条件判定プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行する。
【0052】
このゲイン変更条件判定プログラムにおいては、ゲイン変更条件判定部BL10は、ステップS40におけるプログラムの実行開始後、ステップS41にて実操舵角θおよび操舵速度ωを入力する。そして、ステップS42〜S46の処理によりエンド条件フラグEFLを実操舵角θの変化に応じて“0”または“1”に設定する。すなわち、図15(A)に示すように、エンド条件フラグEFLが“0”に設定されている状態では、実操舵角θの絶対値|θ|が所定の操舵角θ1(例えば、500度)よりも大きくなったときに初めてエンド条件フラグEFLを“1”に変更する。一方、エンド条件フラグEFLが“1”に設定されている状態では、実操舵角θの絶対値|θ|が前記操舵角θ1よりも小さな所定の操舵角θ2(例えば、490度)未満になったときに初めてエンド条件フラグEFLを“0”に変更する。
【0053】
また、ステップS48〜S52の処理により操舵速度条件フラグVFLを操舵速度ωの変化に応じて“0”または“1”に設定する。すなわち、図15(B)に示すように、操舵速度条件フラグVFLが“0”に設定されている状態では、操舵速度ωの絶対値|ω|が所定の操舵速度ω1(例えば、100度/秒)未満になったときに初めて操舵速度条件フラグVFLを“1”に変更する。一方、操舵速度条件フラグVFLが“1”に設定されている状態では、操舵速度ωの絶対値|ω|が前記操舵速度ω1よりも大きな所定の操舵速度ω2(例えば、200度/秒)よりも大きくなったときに初めて操舵速度条件フラグVFLを“0”に変更する。
【0054】
そして、ステップS47,S53〜S55の処理により、エンド条件フラグEFLが“0”であり、または操舵速度条件フラグVFLが“0”であるとき、フラグFLGを“0”に設定する。また、エンド条件フラグEFLが“1”であり、かつ操舵速度条件フラグVFLが“1”であるとき、フラグFLGを“1”に設定する。そして、PIゲイン設定部BL6は、前記第3制御例と同様にして、このフラグFLGに従ってPゲインKpおよびIゲインKiを変更制御する。その結果、実操舵角θおよび操舵速度ωの変化に応じたPゲインKpおよびIゲインKiの変更制御に対してヒステリシス特性が付加される。
【0055】
この第3制御例の変形例によれば、実操舵角θおよび操舵速度ωの変化に対して、PゲインKpおよびIゲインKiの切換えの頻度が緩和される。その結果、PゲインKpおよびIゲインKiの切換え、すなわち電動モータ15への駆動電流の頻繁な切り換えが緩和されて、操舵機構における異音の発生がより良好に抑制される。
【0056】
d.第4制御例
次に、第4制御例について説明すると、この第4制御例に係る電子制御ユニット24の機能ブロック図は図16に示されている。この図16の機能ブロック図は、第3制御例に関する図12の機能ブロック図の操舵速度演算部BL9を省略して、ゲイン変更条件判定部BL10には、操舵速度ωに代えて電流センサ25aによって検出された電動モータ15に流れる実電流値Iが入力されている。その他の部分に関しては、図12の機能ブロック図の場合と同じであるので、前記第3制御例とは異なる部分についてのみ説明して、その他の部分に関しては説明を省略する。
【0057】
ゲイン変更条件判定部BL10は、図13のステップS31,S33の処理をステップS31a,S33aの処理に変更した図17のステップS30〜S36からなるゲイン変更条件判定プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行する。ステップS31aにおいては、前記第3制御例の操舵速度ωに代えて、電流センサ25aによって検出された実電流値Iを入力する。ステップS33aにおいては、実電流値Iの絶対値|I|が所定の電流値I1(例えば、30A)よりも大きいか否かを判定する。なお、この所定の電流値I1は、車速Vがほぼ10km/hである状態で、操舵ハンドル11が操舵角±500度程度に操舵される際(PゲインKpおよびIゲインKiの切換えが行われる際)に電動モータ15に流れる電流値である。
【0058】
そして、この図17のゲイン変更条件判定プログラムの実行により、実操舵角θの絶対値|θ|が所定の操舵角θ1以下または実電流値Iの絶対値|I|が所定の電流値I1以下であるとき、フラグFLGを“0”に設定する。また、実操舵角θの絶対値|θ|が所定の操舵角θ1よりも大きく、かつ実電流値Iの絶対値|I|が所定の電流値I1よりも大きいとき、フラグFLGを“1”に設定する。
【0059】
このような第4制御例においては、第2制御例によるPゲインKpおよびIゲインKiの切換え制御に加えて、実操舵角θの絶対値|θ|が所定の操舵角θ1より大きくても、実電流値Iの絶対値|I|が所定の電流値I1よりも大きくならない限り、PゲインKpおよびIゲインKiは通常定数Kp1,Ki1から異音対応定数Kp2,Ki2に切換えられない。言い換えれば、実操舵角θの絶対値|θ|が所定の操舵角θ1程度になっても、車速Vが高ければ、実電流値Iの絶対値|I|は大きくならないので(図3参照)、PゲインKpおよびIゲインKiは通常定数Kp1,Ki1から異音対応定数Kp2,Ki2に切換えられない。その結果、操舵ハンドル11が大きく操舵される車両の停止時または極低速時に合わせて、操舵機構から異音が発生しないように通常定数Kp1,Ki1および異音対応定数Kp2,Ki2を設定しても、高速走行時にPゲインKpおよびIゲインKiが通常定数Kp1,Ki1から異音対応定数Kp2,Ki2に切換えられることがなくなり、操舵フィーリングの悪化を防止できる。
【0060】
なお、この第4制御例において、実操舵角θおよび実電流値Iに応じたPゲインKpおよびIゲインKiの変更制御に対してヒステリシス特性をもたせるように変形することも可能である。この変形例においても、ゲイン変更条件判定部BL10は、図17のゲイン変更条件判定プログラムに代えて、図14のゲイン変更条件判定プログラムを変形したプログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行する。
【0061】
図14のゲイン変更条件判定プログラムを変形したプログラムにおいては、ステップS41にて操舵速度ωに代えて実電流値Iを入力するとともに、ステップS49の判定処理を図17のステップS33aの判定処理に変更する。また、ステップS50の判定処理を、実電流値Iの絶対値|I|が所定の電流値I1よりも小さな所定の電流値I2未満であるかを判定する処理に変更して、実電流値Iの絶対値|I|が所定の電流値I2未満であればプログラムをステップS52に進め、実電流値Iの絶対値|I|が所定の電流値I2以上であればプログラムをステップS53に進めるようにすればよい。なお、この場合の上記操舵速度条件フラグVFLは、電流条件フラグVFLと読み替えるものとする。
【0062】
その結果、この第4制御例の変形例によっても、実操舵角θおよび実電流値Iの変化に対して、PゲインKpおよびIゲインKiの切換えの頻度が緩和される。したがって、PゲインKpおよびIゲインKiの切換え、すなわち電動モータ15への駆動電流の頻繁な切り換えが緩和されて、操舵機構における異音の発生がより良好に抑制される。
【0063】
なお、前記第4実施形態およびその変形例においては、実電流値IをPゲインKpおよびIゲインKiの切換えの制御に利用した。しかし、この実電流値Iは電動モータ15に流れる電流を表していればよく、目標電流値I*と実電流値Iはほぼ等しいので、実電流値Iに代えて目標電流値I*を利用するようにしてもよい。
【0064】
e.第5制御例
次に、第5制御例について説明すると、この第5制御例に係る電子制御ユニット24の機能ブロック図は図18に示されている。この図18の機能ブロック図は、第3制御例に関する図12の機能ブロック図の操舵速度演算部BL9に代えて電流変化率計算部BL11を用い、ゲイン変更条件判定部BL10には、操舵速度ωに代えて電流変化率計算部BL11によって計算された電流変化率Irtが入力されている。その他の部分に関しては、図12の機能ブロック図の場合と同じであるので、前記第3制御例とは異なる部分についてのみ説明して、その他の部分に関しては説明を省略する。
【0065】
電流変化率計算部BL11は、図19のステップS60〜S65からなる電流変化率計算プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行して、操舵トルクTの変化率に対する目標電流値I*の変化率の比の値を電流変化率Irtとして計算する。具体的には、ステップS61にて、操舵トルクセンサ21によって検出された操舵トルクTおよび目標電流値決定部BL1によって決定された目標電流値I*を入力する。次に、ステップS62にて、今回処理時の操舵トルクTnewから前回処理時の操舵トルクToldを減算し、減算結果Tnew−Toldの絶対値|Tnew−Told|をトルク変化分ΔTとして計算する。次に、ステップS63にて、今回処理時の目標電流値I*newから前回処理時の目標電流値I*oldを減算し、減算結果I*new−I*oldの絶対値|I*new−I*old|を目標電流値変化分ΔI*として計算する。そして、ステップS64にて、目標電流値変化分ΔI*をトルク変化分ΔTで除算して、電流変化率Irtを計算する。
【0066】
ゲイン変更条件判定部BL10は、図13のステップS31,S33の処理をステップS31b,S33bの処理に変更した図20のステップS30〜S36からなるゲイン変更条件判定プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行する。ステップS31bにおいては、前記第3制御例の操舵速度ωに代えて、電流変化率計算部BL11によって計算された電流変化率Irtを入力する。ステップS33bにおいては、電流変化率Irtが所定の電流変化率Irt1(例えば、200A/Nm)よりも大きいか否かを判定する。
【0067】
そして、この図20のゲイン変更条件判定プログラムの実行により、実操舵角θの絶対値|θ|が所定の操舵角θ1以下または電流変化率Irtが所定の電流変化率Irt1以下であるとき、フラグFLGを“0”に設定する。また、実操舵角θの絶対値|θ|が所定の操舵角θ1よりも大きく、かつ電流変化率Irtが所定の電流変化率Irt1よりも大きいとき、フラグFLGを“1”に設定する。
【0068】
このような第5制御例においては、第2制御例によるPゲインKpおよびIゲインKiの切換え制御に加えて、実操舵角θの絶対値|θ|が所定の操舵角θ1より大きくても、電流変化率Irtが所定の電流変化率Irt1よりも大きくならない限り、PゲインKpおよびIゲインKiは通常定数Kp1,Ki1から異音対応定数Kp2,Ki2に切換えられない。この電流変化率Irtは、必要なアシスト力に対する電動モータ15によって発生されるトルク変動の大きさ、すなわちその値の増加により異音が発生し易い状況を示している。そして、この電流変化率Irtが小さいときには、PゲインKpおよびIゲインKiは通常定数Kp1,Ki1から異音対応定数Kp2,Ki2への切換えが禁止され、電流変化率Irtが大きくなると前記PゲインKpおよびIゲインKiの切り換えが許容される。その結果、異音が発生し易い状況下で、PゲインKpおよびIゲインKiは通常定数Kp1,Ki1から異音対応定数Kp2,Ki2へ切換えられ易くなるための、異音の低減と良好な操舵フィーリングの両立が可能となる。
【0069】
なお、この第5制御例において、実操舵角θおよび実電流値Iに応じたPゲインKpおよびIゲインKiの変更制御に対してヒステリシス特性をもたせるように変形することも可能である。この変形例においても、ゲイン変更条件判定部BL10は、図20のゲイン変更条件判定プログラムに代えて、図14のゲイン変更条件判定プログラムを変形したプログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行する。
【0070】
図14のゲイン変更条件判定プログラムを変形したプログラムにおいては、ステップS41にて操舵速度ωに代えて電流変化率Irtを入力するとともに、ステップS49の判定処理を図20のステップS33bの判定処理に変更する。また、ステップS50の判定処理を、電流変化率Irtが所定の電流変化率Irt1よりも小さな所定の電流変化率Irt2未満であるかを判定する処理に変更して、電流変化率Irtが所定の電流変化率Irt2未満であればプログラムをステップS52に進め、電流変化率Irtが所定の電流変化率Irt2以上であればプログラムをステップS53に進めるようにすればよい。なお、この場合の上記操舵速度条件フラグVFLは、電流変化率条件フラグVFLと読み替えるものとする。
【0071】
その結果、この第5制御例の変形例によっても、実操舵角θおよび電流変化率Irtの変化に対して、PゲインKpおよびIゲインKiの切換えの頻度が緩和される。したがって、PゲインKpおよびIゲインKiの切換え、すなわち電動モータ15への駆動電流の頻繁な切り換えが緩和されて、操舵機構における異音の発生がより良好に抑制される。
【0072】
なお、前記第5実施形態およびその変形例においては、目標電流値I*を電流変化率Irtの計算に利用した。しかし、この目標電流値I*は電動モータ15に流れる電流を表していればよく、目標電流値I*と実電流値Iはほぼ等しいので、目標電流値I*に代えて実電流値Iを利用するようにしてもよい。
【0073】
f.第6制御例
次に、第6制御例について説明すると、この第6制御例に係る電子制御ユニット24の機能ブロック図は図21に示されている。この図21の機能ブロック図は、第3制御例に関する図12の機能ブロック図の操舵速度演算部BL9を省略して、ゲイン変更条件判定部BL10には、操舵速度ωに代えて車速センサ23によって検出された車速Vが入力されている。その他の部分に関しては、図12の機能ブロック図の場合と同じであるので、前記第3制御例とは異なる部分についてのみ説明して、その他の部分に関しては説明を省略する。
【0074】
ゲイン変更条件判定部BL10は、図13のステップS31,S33の処理をステップS31c,S33cの処理に変更した図22のステップS30〜S36からなるゲイン変更条件判定プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行する。ステップS31cにおいては、前記第3制御例の操舵速度ωに代えて、車速センサ23によって検出された車速Vを入力する。ステップS33cにおいては、車速Vが所定の車速V1(例えば、10km/h)よりも小さいか否かを判定する。
【0075】
そして、この図22のゲイン変更条件判定プログラムの実行により、実操舵角θの絶対値|θ|が所定の操舵角θ1以下または車速Vが所定の車速V1以上であるとき、フラグFLGを“0”に設定する。また、実操舵角θの絶対値|θ|が所定の操舵角θ1よりも大きく、かつ車速Vが所定の車速V1よりも小さいとき、フラグFLGを“1”に設定する。
【0076】
このような第6制御例においては、第2制御例によるPゲインKpおよびIゲインKiの切換え制御に加えて、実操舵角θの絶対値|θ|が所定の操舵角θ1より大きくても、車速Vが所定の車速V1以下でない限り、PゲインKpおよびIゲインKiは通常定数Kp1,Ki1から異音対応定数Kp2,Ki2に切換えられない。その結果、操舵ハンドル11が大きく操舵される車両の停止時または極低速時に合わせて、操舵機構から異音が発生しないように通常定数Kp1,Ki1および異音対応定数Kp2,Ki2を設定しても、高速走行時にPゲインKpおよびIゲインKiが通常定数Kp1,Ki1から異音対応定数Kp2,Ki2に切換えられることなくなり、操舵フィーリングの悪化を防止できる。
【0077】
なお、この第6制御例において、実操舵角θおよび車速Vに応じたPゲインKpおよびIゲインKiの変更制御に対してヒステリシス特性をもたせるように変形することも可能である。この変形例においても、ゲイン変更条件判定部BL10は、図22のゲイン変更条件判定プログラムに代えて、図14のゲイン変更条件判定プログラムを変形したプログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行する。
【0078】
図14のゲイン変更条件判定プログラムを変形したプログラムにおいては、ステップS41にて操舵速度ωに代えて車速Vを入力するとともに、ステップS49の判定処理を図22のステップS33cの判定処理に変更する。また、ステップS50の判定処理を、車速Vが所定の車速V1よりも大きな所定の車速V2(例えば、20km/h)よりも大きいかを判定する処理に変更して、車速Vが所定の車速V2よりも大きければプログラムをステップS52に進め、車速Vが所定の車速V2以下であればプログラムをステップS53に進めるようにすればよい。なお、この場合の上記操舵速度条件フラグVFLは、車速条件フラグVFLと読み替えるものとする。
【0079】
その結果、この第6制御例の変形例によっても、実操舵角θおよび車速Vの変化に対して、PゲインKpおよびIゲインKiの切換えの頻度が緩和される。したがって、PゲインKpおよびIゲインKiの切換え、すなわち電動モータ15への駆動電流の頻繁な切り換えが緩和されて、操舵機構における異音の発生がより良好に抑制される。
【0080】
g.その他の変形例
上記実施形態のその他の変形例について図面を用いて説明すると、図23ないし図28は上記第1ないし第6制御例の変形例に係る機能ブロックを示している。これらの各機能ブロック図においては、図2、図8、図12、図16、図18および図21に示した第1ないし第6制御例の機能ブロックの各PIゲイン設定部BL6の後段にローパスフィルタ処理部BL12がそれぞれ接続されている。これらのローパスフィルタ処理部BL12は、PIゲイン設定部BL6に設定されるPゲインKpおよびIゲインKiを順次入力して、入力したこれらのPゲインKpおよびIゲインKiにそれぞれローパルフィルタ処理を施してPゲイン制御部BL4およびIゲイン制御部BL5にそれぞれ出力する。
【0081】
これによれば、電流偏差ΔIおよびその積分値∫ΔIdtに乗算されるPゲインKpおよびIゲインKiがなまされ、PゲインKpおよびIゲインKiが切換えられても、制御電圧値Eoが滑らかに変化するとともに電動モータ15に流れる駆動電流も滑らかに変化する。したがって、PゲインKpおよびIゲインKiが切換えられても、電動モータ15による操舵アシスト力は滑らかに変化し、運転者は操舵ハンドル11の回動操作に違和感を覚えなくなる。
【0082】
さらに、本発明は上記実施形態およびその変形例に限定されることなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施形態に係る操舵アシスト機能を有する車両の操舵装置の全体概略図である。
【図2】本発明の第1制御例に係り、図1の電子制御ユニットの機能ブロック図である。
【図3】操舵トルクと、車速と、目標電流値との関係を示すグラフである。
【図4】(A)は操舵角とPゲインとの関係を示すグラフであり、(B) 操舵角とIゲインとの関係を示すグラフである。
【図5】(A)は操舵角とPゲインとの他の関係例を示すグラフであり、(B)は操舵角とIゲインとの他の関係例を示すグラフである。
【図6】(A)は操舵角とPゲインとのさらに他の関係例を示すグラフであり、(B)は操舵角とIゲインとのさらに他の関係例を示すグラフである。
【図7】(A)は操舵角とPゲインとのさらに他の関係例を示すグラフであり、(B)は操舵角とIゲインとのさらに他の関係例を示すグラフである。
【図8】本発明の第2制御例に係り、図1の電子制御ユニットの機能ブロック図である。
【図9】図8の操舵角判定部にて実行される操舵角判定プログラムを示すフローチャートである。
【図10】図8のPIゲイン設定部にて実行されるPIゲイン設定プログラムを示すフローチャートである。
【図11】PゲインおよびIゲインを記憶したメモリマップを説明するための図である。
【図12】本発明の第3制御例に係り、図1の電子制御ユニットの機能ブロック図である。
【図13】図12のゲイン変更条件判定部にて実行されるゲイン変更条件判定プログラムを示すフローチャートである。
【図14】図12のゲイン変更条件判定プログラムの変形例を示すフローチャートである。
【図15】(A)は操舵角とエンド条件フラグとの関係を示すグラフであり、(B)は操舵速度と操舵速度条件フラグとの関係を示すグラフである。
【図16】本発明の第4制御例に係り、図1の電子制御ユニットの機能ブロック図である。
【図17】図16のゲイン変更条件判定部にて実行されるゲイン変更条件判定プログラムを示すフローチャートである。
【図18】本発明の第5制御例に係り、図1の電子制御ユニットの機能ブロック図である。
【図19】図18の電流変化率計算部にて実行される電流変化率計算プログラムを示すフローチャートである。
【図20】図18のゲイン変更条件判定部にて実行されるゲイン変更条件判定プログラムを示すフローチャートである。
【図21】本発明の第6制御例に係り、図1の電子制御ユニットの機能ブロック図である。
【図22】図21のゲイン変更条件判定部にて実行されるゲイン変更条件判定プログラムを示すフローチャートである。
【図23】上記第1制御例の変形例に係り、図1の電子制御ユニットの機能ブロック図である。
【図24】上記第2制御例の変形例に係り、図1の電子制御ユニットの機能ブロック図である。
【図25】上記第3制御例の変形例に係り、図1の電子制御ユニットの機能ブロック図である。
【図26】上記第4制御例の変形例に係り、図1の電子制御ユニットの機能ブロック図である。
【図27】上記第5制御例の変形例に係り、図1の電子制御ユニットの機能ブロック図である。
【図28】上記第6制御例の変形例に係り、図1の電子制御ユニットの機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0084】
11…操舵ハンドル、12…ステアリングシャフト、13…ピニオンギヤ、14…ラックバー、15…電動モータ、16…ボールねじ機構、21…操舵トルクセンサ、22…操舵角センサ、23…車速センサ、24…電子制御ユニット、25…駆動回路、25a…電流センサ




 

 


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