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発明の名称 頭部保護エアバッグ装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−15535(P2007−15535A)
公開日 平成19年1月25日(2007.1.25)
出願番号 特願2005−198519(P2005−198519)
出願日 平成17年7月7日(2005.7.7)
代理人 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
発明者 満尾 哲
要約 課題
低コストな構成で、特にロールオーバー時の乗員の頭部保護性能を向上させる。

解決手段
エアバッグ16の前方側膨張部28と後方側膨張部32との間には非膨張部34が形成されている。この非膨張部34には開口部48が形成されると共にこれを覆う布片52に弛み部56を設けた上で布残部50に縫製されている。ロールオーバー時において、乗員の頭部が頭部保護エリアを越えて(外れて)非膨張部34に車室外側かつ斜め下方へ向けて当接し、車室外側から斜め下方への荷重が入力されると、布片52が車両下方側へ伸びる。従って、乗員の頭部はエアバッグ16にハンモック状に支持される。しかも、布片52に弛み部56を設ける構成であるため、インフレータのガス容量を増やす必要もなく、低コスト化を図ることができる。
特許請求の範囲
【請求項1】
車両の所定位置に配置され、車両の側面衝突時及びロールオーバー時に作動してガスを噴出するインフレータと、
このインフレータと接続されると共に、前方側に位置する乗員の頭部を保護する前方側膨張部と、後方側に位置する乗員の頭部を保護する後方側膨張部と、前方側膨張部と後方側膨張部との間に配置された平面状の非膨張部と、少なくとも非膨張部の下端部に沿って車両前後方向に延在する下端側膨張部と、を含んで構成され、車両上下方向に折り畳まれた状態で車両のルーフサイドレール部に沿って格納されると共にインフレータからのガスの供給により膨張して車室内側の側部に車両下方側へ向けて展開するエアバッグと、
を有する頭部保護エアバッグ装置であって、
前記非膨張部には、車室内側から車室外方向へ向けて所定値以上の荷重が当該非膨張部に入力されることにより、前記下端側膨張部を車両下方側へ変位させる変位手段が設けられている、
ことを特徴とする頭部保護エアバッグ装置。
【請求項2】
前記下端側膨張部が乗員の頭部を包み込む位置まで車両下方側へ変位した状態では、前記所定値以上の荷重の入力によって前記非膨張部が車両後方側から見てハンモック形状とされている、
ことを特徴とする請求項1記載の頭部保護エアバッグ装置。
【請求項3】
前記変位手段は、前記非膨張部に設けられ、前記所定値以上の荷重入力時に前記非膨張部の上端部を基準とした下端部までの長さを延長させる余長部として構成されている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の頭部保護エアバッグ装置。
【請求項4】
前記変位手段は、前記非膨張部に設けられ、所定値以上の荷重入力時に前記非膨張部を部分的に又は全体的に車両上下方向に分断させる脆弱部として構成されている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の頭部保護エアバッグ装置。
【請求項5】
前記エアバッグは、二枚の基布を縫製することにより製作された縫製エアバッグとして構成されており、
一方の基布には、非膨張部に相当する範囲の一部に開口部が形成されており、
他方の基布には、非膨張部に相当する範囲の一部に当該開口部を側面視で塞ぐ布片が形成されており、
当該布片が車両上下方向に弛みを持たせた状態で前記一方の基布における前記開口部が形成されていない部分に縫製されることにより、前記余長部が構成されている、
ことを特徴とする請求項3記載の頭部保護エアバッグ装置。
【請求項6】
前記エアバッグは、二枚の基布を縫製することにより製作された縫製エアバッグ又は一枚の基布を袋状に縫製することにより製作された袋織りエアバッグとして構成されており、
前記脆弱部は、車両前後方向に延びる一又は二以上のスリットである、
ことを特徴とする請求項4記載の頭部保護エアバッグ装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の側面衝突時及びロールオーバー時に車室内側の側部に車両下方側へ向けてエアバッグを展開させる頭部保護エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乗員保護補助装置として、側面衝突時だけでなくロールオーバー時にも、ルーフサイドレール部の下方へカーテン状にエアバッグが展開する頭部保護エアバッグ装置が搭載されるようになってきた。
【0003】
下記特許文献1には、この種の頭部保護エアバッグ装置が開示されている。簡単に説明すると、この頭部保護エアバッグ装置では、前席に着座した乗員の頭部保護エリアに上下に長い円筒状の複数の膨張部(セル)を配置すると共に、後席に着座した乗員の頭部保護エリアに同様構成の複数の膨張部を配置し、両者の間にはガスが流入しない平面的な非膨張部が設定されている。さらに、この非膨張部の下縁側には、前側の膨張部と後側の膨張部とを相互に連通しかつドアベルトラインにオーバーラップするように膨張連通部が設けられている。これにより、エアバッグの下縁全体に車両前後方向に延びるテンションラインが形成され、ロールオーバー時にエアバッグの下縁部がドアベルトラインから外れるのを防止している。
【0004】
また、特許文献2に開示された頭部保護エアバッグ装置では、乗員の頭部保護エリアに対応する部分には上下に長い略円筒状の複数の膨張部を配置すると共に、頭部保護エリアからドアベルトラインの下方位置まで延長されて頭部保護エリアの膨張部よりも薄い膨張部から成る延設膨張エリアが設けられている。なお、この頭部保護エアバッグ装置では、頭部保護膨張エリアを先行して展開させ、続いて延設膨張エリアを展開させるようになっている。
【特許文献1】特開2002−302005号公報
【特許文献2】特許第3520836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された頭部保護エアバッグ装置の場合には、エアバッグの下縁に設定された膨張連通部がドアベルトラインにオーバーラップするようにエアバッグ全体を下方へ大型化する必要があり、又特許文献2に開示された頭部保護エアバッグ装置の場合には、頭部保護エリアよりは薄いといっても延設膨張エリアにガスを供給して膨張させる必要があるため、いずれの先行技術も、ガス供給量の増加は避けられず、インフレータの出力を増加させなければならない。従って、大幅なコストアップを招くという問題があった。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、低コストな構成で、特にロールオーバー時の乗員の頭部保護性能を向上させることができる頭部保護エアバッグ装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、車両の所定位置に配置され、車両の側面衝突時及びロールオーバー時に作動してガスを噴出するインフレータと、このインフレータと接続されると共に、前方側に位置する乗員の頭部を保護する前方側膨張部と、後方側に位置する乗員の頭部を保護する後方側膨張部と、前方側膨張部と後方側膨張部との間に配置された平面状の非膨張部と、少なくとも非膨張部の下端部に沿って車両前後方向に延在する下端側膨張部と、を含んで構成され、車両上下方向に折り畳まれた状態で車両のルーフサイドレール部に沿って格納されると共にインフレータからのガスの供給により膨張して車室内側の側部に車両下方側へ向けて展開するエアバッグと、を有し、非膨張部には、車室内側から車室外方向へ向けて所定値以上の荷重が当該非膨張部に入力されることにより、前記下端側膨張部を車両下方側へ変位させる変位手段が設けられている、ことを特徴としている。
【0008】
請求項2記載の本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、請求項1記載の発明において、前記下端側膨張部が乗員の頭部を包み込む位置まで車両下方側へ変位した状態では、前記所定値以上の荷重の入力によって前記非膨張部が車両後方側から見てハンモック形状とされている、ことを特徴としている。
【0009】
請求項3記載の本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、請求項1又は請求項2記載の発明において、前記変位手段は、前記非膨張部に設けられ、前記所定値以上の荷重入力時に前記非膨張部の上端部を基準とした下端部までの長さを延長させる余長部として構成されている、ことを特徴としている。
【0010】
請求項4記載の本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、請求項1又は請求項2記載の発明において、前記変位手段は、前記非膨張部に設けられ、所定値以上の荷重入力時に前記非膨張部を部分的に又は全体的に車両上下方向に分断させる脆弱部として構成されている、ことを特徴としている。
【0011】
請求項5記載の本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、請求項3記載の発明において、前記エアバッグは、二枚の基布を縫製することにより製作された縫製エアバッグとして構成されており、一方の基布には、非膨張部に相当する範囲の一部に開口部が形成されており、他方の基布には、非膨張部に相当する範囲の一部に当該開口部を側面視で塞ぐ布片が形成されており、当該布片が車両上下方向に弛みを持たせた状態で前記一方の基布における前記開口部が形成されていない部分に縫製されることにより、前記余長部が構成されている、ことを特徴としている。
【0012】
請求項6記載の本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、請求項4記載の発明において、前記エアバッグは、二枚の基布を縫製することにより製作された縫製エアバッグ又は一枚の基布を袋状に縫製することにより製作された袋織りエアバッグとして構成されており、前記脆弱部は、車両前後方向に延びる一又は二以上のスリットである、ことを特徴としている。
【0013】
請求項1記載の本発明によれば、車両の側面衝突時及びロールオーバー時になると、インフレータが作動し、車両のルーフサイドレール部に沿って車両上下方向に折り畳まれた状態で格納されたエアバッグ内へガスが供給される。このため、エアバッグが車室内側の側部に車両下方側へ向けて展開される。エアバッグは、前方に位置する乗員の頭部を保護する前方側膨張部と、後方に位置する乗員の頭部を保護する後方側膨張部と、前方側膨張部と後方側膨張部との間に配置された平面状の非膨張部と、少なくとも非膨張部の下端部に沿って車両前後方向に延在する下端側膨張部と、を含んで構成されているため、前方側に位置する乗員の頭部は前方側膨張部によって保護され、後方側に位置する乗員の頭部は後方側膨張部によって保護される。
【0014】
ここで、本発明では、前方側膨張部と後方側膨張部との間に平面状の非膨張部が配置されていると共に少なくとも非膨張部の下端部に沿って車両前後方向に延在する下端側膨張部を備えているが、側面衝突時及びロールオーバー時(特には、ロールオーバー時)において、乗員の頭部が乗員頭部保護エリアを越えて非膨張部に車室外側でかつ斜め下方へ向けて当接することがある。この場合、本発明では、非膨張部に変位手段を設けたので、非膨張部に車室内側から車室外方向へ向けて所定値以上の荷重が入力されると、当該下端側膨張部が車両下方側へ変位する。従って、ロールオーバー時における乗員の頭部の車室外側への移動が抑制される。
【0015】
しかも、本発明では、前記荷重の作用時には変位手段によって下端側膨張部が車両下方側へ変位するという構成であるので、ロールオーバー対策のためにエアバッグの形状が大型化(エアバッグの容量を増加)したり、それに伴ってインフレータのガス出力を増加させなければならないといった従来技術の問題点が解消される。
【0016】
請求項2記載の本発明によれば、下端側膨張部が乗員の頭部を包み込む位置まで車両下方側へ変位した際には、前記所定値以上の荷重の入力によって乗員の頭部が乗員頭部保護エリアを越えて非膨張部に車室外側でかつ斜め下方へ向けて当接することがあっても、非膨張部が車両後方側から見てハンモック形状とされるので、乗員の頭部の外側部分が非膨張部によって包み込まれる。従って、ハンモック形状とならない頭部保護エアバッグ装置と比べて、乗員の頭部への反力が分散されると共に、下端側膨張部が頭部側面下側に位置して乗員の頭部保持性能(以下、本明細書では、「乗員の頭部保持性能」という言葉を、「本来的には非膨張部が設定される部分は、前方側膨張部及び後方側膨張部とは異なり、下端側膨張部が存在するだけなので、剛性が不足する傾向にあるが、乗員の頭部を包み込むモードが得られることにより不足する剛性を補うことができる」という意味で使用する。)も向上される(乗員の頭部を安定した状態で保持することが可能となる)。
【0017】
請求項3記載の本発明によれば、所定値以上の荷重入力時に非膨張部の上端部を基準とした下端部までの長さを延長させる余長部として変位手段が構成されている。つまり、この発明は、下端側膨張部の下方変位を実現させるために、非膨張部の車両上下方向に沿った長さを延長可能に構成するという着想に立つものである。従って、非膨張部における乗員の頭部当接部位に強度や剛性を大きく左右するような開口や欠損等は生じないので、仮に側面衝突時及びロールオーバー時(特には、ロールオーバー時)に乗員の頭部が乗員頭部保護エリアを越えて非膨張部に車室外側でかつ斜め下方へ向けて当接した場合でも、当該乗員の頭部の外側の側面には非膨張部が必ず存在することになる。
【0018】
請求項4記載の本発明によれば、所定値以上の荷重入力時に非膨張部を部分的に又は全体的に車両上下方向に分断させる脆弱部として変位手段が構成されている。つまり、この発明は、下端側膨張部の下方変位を実現させるために、非膨張部を部分的に又は全体的に上下に分断するという着想に立つものである。従って、エアバッグの非膨張部に新たな縫製が付加されることはないので、エアバッグを製作し易い。
【0019】
請求項5記載の本発明によれば、エアバッグが縫製エアバッグとして構成されており、一方の基布の非膨張部に相当する範囲の一部には開口部を形成すると共に、他方の基布の非膨張部に相当する範囲の一部には開口部を塞ぐ布片を形成し、布片に車両上下方向の弛みを持たせた状態で、当該布片を一方の基布における開口部が形成されていない部分に縫製することにより余長部が構成されているため、二枚の基布の裁断の仕方によって任意の余長の弛み部を形成することができる。
【0020】
請求項6記載の本発明によれば、エアバッグが縫製エアバッグ又は袋織りエアバッグとして構成されており、所定値以上の荷重入力時に非膨張部を部分的に又は全体的に車両上下方向に分断させる脆弱部をスリットで構成したので、エアバッグの製作が非常に容易であると共にスリットの形成位置、個数、長さ等を変えることにより荷重のコントロールも容易に変えることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、車室内側から車室外方向へ向けて所定値以上の荷重が非膨張部に入力されることにより、下端側膨張部を車両下方側へ変位させる変位手段を当該非膨張部に設けたので、ロールオーバー対策のためにエアバッグ容量やガス出力を変える必要がなく、その結果、低コストな構成で、特にロールオーバー時の乗員の頭部保護性能を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0022】
請求項2記載の本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、請求項1記載の発明において、ロールオーバー時に乗員の頭部が乗員頭部保護エリアを越えて非膨張部に車室外側でかつ斜め下方へ向けて当接した場合でも、非膨張部がハンモック形状となって乗員の頭部の外側部分を包み込むため、乗員の頭部保護性能をより一層向上させることができるという優れた効果を有する。
【0023】
請求項3記載の本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、請求項1又は請求項2記載の発明において、変位手段を非膨張部の上端部を基準とした下端部までの長さを延長させる余長部として構成したので、仮にロールオーバー時に乗員の頭部が乗員頭部保護エリアを越えて非膨張部に車室外側でかつ斜め下方へ向けて当接しても非膨張部が延びることによって保護されため、乗員の頭部保護性能を更に向上させることができるという優れた効果を有する。
【0024】
請求項4記載の本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、請求項1又は請求項2記載の発明において、非膨張部を部分的に又は全体的に車両上下方向に分断させる脆弱部として変位手段を構成したので、エアバッグの製作が容易であり、その結果、コスト的に有利であるという優れた効果を有する。
【0025】
請求項5記載の本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、請求項3記載の発明において、エアバッグを縫製エアバッグとし、一方の基布に設けた開口部を他方の基布に設けた布片で塞ぎ、この布片に弛み部を設ける構成としたので、二枚の基布の裁断の仕方によって任意の余長の弛み部を形成することができ、その結果、製作が容易であり、コストを抑制することができるという優れた効果を有する。
【0026】
請求項6記載の本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、請求項4記載の発明において、エアバッグを縫製エアバッグ又は袋織りエアバッグとし、非膨張部にスリットを設ける構成としたので、エアバッグの製作が非常に容易であると共にスリットの形成位置、個数、長さ等を変えることにより荷重のコントロールも容易に変えることができ、その結果、コストの抑制及びチューニングの容易化を図ることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
〔第1実施形態〕
以下、図1〜図3を用いて、本発明に係る頭部保護エアバッグ装置の第1実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。
【0028】
図1には、本実施形態に係る頭部保護エアバッグ装置10が作動してエアバッグ16が展開した状態が側面視で示されている。この図に示されるように、頭部保護エアバッグ装置10は、作動することによりガスを噴出する円柱形状のインフレータ12と、このインフレータ12のガス噴出部と接続されると共に通常は車両上下方向に折り畳まれて車両前後方向に長い長尺状とされてルーフサイドレール部14に沿って格納されたエアバッグ16と、を備えている。
【0029】
なお、インフレータ12は、車体側部の所定位置に配置された図示しない側面衝突センサによって側面衝突状態が検知された場合並びに車体中央部付近に配置された図示しないロールオーバーセンサによってロールオーバー状態が検知された場合に、図示しないエアバッグECUによって作動されるようになっている。
【0030】
エアバッグ16の外周上縁部には所定の間隔で固定点18が設定されており、当該固定点18にてエアバッグ16はフロントピラー(Aピラー)20、ルーフサイドレール部14、クォータピラー(Cピラー)22といったボディー側構成要素に支持されている。
【0031】
また、エアバッグ16は、フロントシート26に着座する乗員の頭部を保護する前方側膨張部28と、リヤシート30に着座する乗員の頭部を保護する後方側膨張部32と、前方側膨張部28と後方側膨張部32との間に配置された矩形平面状の非膨張部34と、非膨張部34の下端部に沿って車両前後方向に延在し前方側膨張部28と後方側膨張部32とを下端側にて連通する下端側膨張部36と、非膨張部34の上端部に沿って車両前後方向に延在し前方側膨張部28と後方側膨張部32とを上端側にて連通する上端側膨張部37と、によって構成されている。前方側膨張部28及び後方側膨張部32は、車両上下方向に長い円筒状の複数のセル38を車両前後方向に隣接して配置することにより構成されている。
【0032】
さらに、エアバッグ16の上端部には、インフレータ12のガス噴出部に接続されるガス導入部40が設けられている。このガス導入部40にインフレータ12のガス噴出部が挿入された状態で一対の取付ブラケット42によって車体側に固定されている。なお、エアバッグ16のガス導入部40にインフレータ12のガス噴出部を直接挿入する必要は必ずしもなく、ディフューザ(パイプ)等を介してガス導入部40とインフレータ12とが接続されるようにしてもよい。
【0033】
ここで、図2に示されるように、上述したエアバッグ16は、二枚の基布44、46を縫製することにより製作された縫製エアバッグとして構成されている。図2(A)に示されるように、一方の基布44の非膨張部34に相当する範囲の一部(下半分)には、側面視で略矩形状の開口部48が形成されている。従って、一方の基布44の非膨張部34に相当する範囲の残り(上半分)には、側面視で略矩形状の布残部50が形成されている。
【0034】
また、他方の基布46の非膨張部34に相当する範囲の一部には、側面視で矩形状の布片52が形成されている。布片52は、他方の基布46における非膨張部34に相当する範囲に側面視で下側が開放されたコ字状の開口部54を形成することにより形成されている。従って、布片52の上下方向寸法Aは、一方の基布44の開口部48の上下方向寸法Bよりも長く設定されている。
【0035】
そして、図2(B)に示されるように、二枚の基布44、46を縫製するに際して、布片52の上端部52Aが一方の基布44の残部50の下端部50Aに縫製されている。これにより、非膨張部34の下部側を構成する布片52に余長部としての弛み部56が形成されている。つまり、前述した開口部48の上下方向寸法Bを超えた布片52の長さ或いは余り代(A−B)が弛み部56を構成する部分となる。
【0036】
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0037】
車両の側面衝突時になると側面衝突センサによってその状態が検知されて、エアバッグECUに入力される。また、ロールオーバー時になるとロールオーバーセンサによってその状態が検知されて、エアバッグECUに入力される。エアバッグECUによって側面衝突又はロールオーバーと判断されると、インフレータ12が作動して、車両のルーフサイドレール部14に沿って折り畳み状態で格納されたエアバッグ16内へガスが供給される。
【0038】
具体的には、エアバッグ16のガス導入部40からガスが供給されて、前方側膨張部28、上端側膨張部37、後方側膨張部32、及び下端側膨張部36を膨張させながら、エアバッグ16を車室内側の側部に車両下方側へ向けてカーテン状に展開させる。なお、リヤシート30に着座している乗員の頭部の位置が図1の一点鎖線で示す位置にある場合には、非膨張部34に車室外側への荷重が入力されることはないので、布片52の弛み部56は下方へ延びることなく、非膨張部34は図1図示状態のまま維持される。
【0039】
一方、側面衝突時及びロールオーバー時(特には、ロールオーバー時)に、図1の二点鎖線で示すように、リヤシート30に着座する乗員の頭部が乗員頭部保護エリア(即ち、後方側膨張部32)を越えて非膨張部34に車室外側でかつ斜め下方(図3の矢印P方向)へ向けて当接することがある。この場合、本実施形態では、非膨張部34に配置した布片52の弛み部56が余長(長さA−長さB)分だけ車両下方側へ延びて、下端側膨張部36をドアベルトライン58とオーバーラップする位置まで変位させる。そして、図3に実線で示すように、当該乗員の頭部は布片52によって車両後方側から見て(車両前方側から見てもよい。)ハンモックのように包み込まれる。従って、ロールオーバー時における乗員の頭部の車室外側への移動が抑制される。なお、この効果は、仮に下端側膨張部36がドアベルトライン58とオーバーラップする位置まで下方変位していなくても、ある程度得られる。下端側膨張部36がドアベルトライン58とオーバーラップする位置まで下方変位すると更に好ましいという意味である。
【0040】
しかも、本実施形態では、矢印P方向への荷重入力時に、非膨張部34の一部を構成する布片52の弛み部56を下方へ延ばす構成であるため、ロールオーバー対策のためにエアバッグの形状が大型化(エアバッグの容量を増加)したり、それに伴ってエアバッグパッケージが大型化したり、インフレータのガス出力を増加させなければならないといった従来技術の問題が解消される。
【0041】
上記より、本実施形態に係る頭部保護エアバッグ装置10によれば、低コストな構成で、ロールオーバー時の乗員の頭部保護性能を向上させることができる。
【0042】
この点について補足しておくと、最近では、頭部保護エアバッグ装置を小型(軽量)化して極力低コスト化を図りたいという要請がある。その場合、エアバッグの下端を切り上げてエアバッグ全体を小型化し、エアバッグを膨張させるのに必要なガス量も減らすことが望ましい。しかし、その一方で、ロールオーバー時の乗員の頭部保護性能を確保することが前提となる。つまり、ロールオーバー時の乗員の頭部保護性能の確保とエアバッグの小型化によるコスト削減は本来的には二律背反する事項であるが、それを敢えて両立させることを可能にしたのが、本実施形態に係る頭部保護エアバッグ装置10ということになる。
【0043】
また、本実施形態では、前記の如く、非膨張部34に乗員の頭部が車室外側かつ斜め下方へ当接すると、当該乗員の頭部を布片52でハンモックのように包み込んで支持するので、ハンモック形状にならない頭部保護エアバッグ装置と比べて、非膨張部34から乗員の頭部へ作用する反力が分散されると共に、下端側膨張部36が頭部側面下側に位置して乗員の頭部保持性能も向上される。すなわち、従来では、ドアトリム59の上端部付近に下端側膨張部36を当接及び支持させて、かかる下端側膨張部36に乗員の頭部を支持させることが必要であったが、本実施形態によれば、仮にドアトリム59が存在しなかったとしても、エアバッグ16による乗員の頭部の包み込みというモードが得られるので、安定した状態で乗員の頭部を保持することが可能となる。従って、本実施形態によれば、乗員の頭部保護性能をより一層向上させることができる。
【0044】
さらに、本実施形態では、所定値以上の荷重入力時に非膨張部34の上端部を基準とした下端部までの長さを延長させる余長部として変位手段が構成されている。つまり、この実施形態に係る頭部保護エアバッグ装置10は、下端側膨張部36の下方変位を実現させるために、非膨張部34の車両上下方向に沿った長さを延長可能に構成するという着想に立つものである。従って、非膨張部34における乗員の頭部当接部位に開口や欠損等は生じない(なお、図1において布片52の前後に多少の隙間が形成されるが、乗員の頭部当接部位ではない。)ので、ロールオーバー時において乗員の頭部が乗員頭部保護エリア(即ち、後方側膨張部32)を越えて非膨張部34に車室外側でかつ斜め下方へ向けて当接した場合に、乗員の頭部の外側の側面には非膨張部34が必ず存在することになる。その結果、本実施形態によれば、乗員の頭部の外側の側面に必ず「布」が存在するという意味において、乗員の頭部保護性能を更に向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態では、エアバッグ16が二枚の基布44、46を縫製することにより製作された縫製エアバッグとして構成されており、一方の基布44の非膨張部34に相当する範囲の一部には開口部48を形成すると共に、他方の基布46の非膨張部34に相当する範囲の一部には開口部を塞ぐ布片52を形成し、布片52に車両上下方向に弛みを持たせ、この状態で当該布片52の上端部52Aを一方の基布44における布残部50の下端部50Aに縫製することにより、余長部としての弛み部56が構成されているため、二枚の基布44、46の裁断の仕方によって任意の余長の弛み部56を形成することができる。その結果、本実施形態によれば、エアバッグ16の製作が容易であり、頭部保護エアバッグ装置10のコストを抑制することができる。
【0046】
〔第2実施形態〕
次に、図4を用いて、本発明に係る頭部保護エアバッグ装置の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0047】
図4に示される実施形態では、エアバッグ60が、第1実施形態と同様に二枚の基布を縫製することにより製作された縫製エアバッグとして構成されているか、又は一枚の基布を袋状に縫製することにより製作された袋織りエアバッグとして構成されている。
【0048】
そして、上記エアバッグ60の非膨張部62の下部側には、車両前後方向に沿って延びる脆弱部としてスリット64を複数段(図示実施形態では上下二段)に亘って形成されている。
【0049】
上記構成によれば、特にロールオーバー時において乗員の頭部が非膨張部62に車室外側かつ斜め下方へ向けて当接すると、スリット64の形成部位の上下の部分が車両上下方向(矢印T1、T2方向)に引っ張られ、略楕円形状の孔が形成される。これにより、非膨張部62の下部は部分的に上下に分断されたかたちになり、車両後方側から見た場合のエアバッグ60の形状をハンモック形状にすることができる。従って、前述した第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。なお、図4において、矢印T1より矢印T2の方を長く記しているのは、T2の方が乗員の頭部によって引っ張られる荷重が大きいという意味である。
【0050】
また、エアバッグ60の非膨張部62に新たな縫製が付加されることはないので、エアバッグ60を製作し易く、コスト的に非常に有利である。
【0051】
さらに、本実施形態では、非膨張部62に設定する脆弱部として複数の細かなスリット64を上下複数段に配置したので、スリット64の形成位置、個数、長さ等を変えることにより荷重のコントロール(換言すれば、下端側膨張部36をどの程度下方へ変位させるかといったチューニング)も容易に行うことができる。その結果、本実施形態によれば、コストの抑制及びチューニングの容易化を図ることができる。
【0052】
〔第3実施形態〕
次に、図5を用いて、本発明に係る頭部保護エアバッグ装置の第3実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0053】
図5に示される実施形態では、エアバッグ70の非膨張部72の中央下部寄りの位置に車両前後方向に延びる大きなスリット74が形成されている。そして、このスリット74を覆う(上下に跨ぐ)ようにして、非膨張部72に側面視で矩形状の別布76が取り付けられている。なお、別布76は、その上端部及び下端部の両方で非膨張部72に縫製されており、弛み部56が設けられている。
【0054】
なお、乗員の頭部をドアベルトライン58で保持する観点からすれば、スリット74の形成位置は下端側膨張部36に近い位置に設定されるのが好ましい。
【0055】
上記構成によれば、特にロールオーバー時において乗員の頭部が非膨張部72に車室外側かつ斜め下方へ向けて当接すると、スリット74の形成部位の強度が低くなるために、スリット74の形成部位の上下の部分が車両上下方向(矢印T1、T2方向)に引っ張られ、略楕円形状に大きな孔が形成される。これにより、非膨張部72は全体的に上下に分断されたかたちになり、更に別布76の弛み部56が車両下方側へ延びる。従って、前述した第1実施形態及び第2実施形態と同様に、車両後方側から見た場合のエアバッグ70の形状をハンモック形状にすることができ、乗員の頭部保護性能を向上させることができる。
【0056】
また、第3実施形態のエアバッグ70の構成は、第1実施形態のエアバッグ16の構成と第2実施形態のエアバッグ60の構成とを組み合わせたものであるので、第1実施形態の効果及び第2実施形態の効果の両方が得られる。
【0057】
〔本実施形態の補足説明〕
なお、上述した各実施形態では、フロントシート26とリヤシート30の二列シートの車両に対して本発明を適用したが、これに限らず、3列シートの車両に対して本発明を適用してもよい。
【0058】
また、上述した各実施形態では、非膨張部34、62、72をエアバッグ16、60、70の基布44、46と同一の材質で形成したが、これに限らず、非膨張部に相当する部分を伸縮性を有するネットで構成してもよい。
【0059】
さらに、上述した第2実施形態及び第3実施形態では、脆弱部としてスリット64、74を形成したが、これに限らず、ミシン目にしたり、薄肉部にする等、種々の手法を採用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】第1実施形態に係る頭部保護エアバッグ装置が作動してエアバッグが展開した状態を示す側面図である。
【図2】図1に示されるエアバッグの製造工程を示す工程図であり、(A)は二枚の基布の裁断形状を示す側面図、(B)は二枚の基布を縫製して完成品とした状態を示す側面図である。
【図3】ロールオーバー時のエアバッグと乗員の頭部との関係を示す図1の3‐3線断面図である。
【図4】第2実施形態に係る頭部保護エアバッグ装置で使用されるエアバッグの要部を抽出し残りを省略して描いた側面図である。
【図5】第3実施形態に係る頭部保護エアバッグ装置で使用されるエアバッグの要部を抽出し残りを省略して描いた側面図である。
【符号の説明】
【0061】
10 頭部保護エアバッグ装置
12 インフレータ
14 ルーフサイドレール部
16 エアバッグ
28 前方側膨張部
32 後方側膨張部
34 非膨張部
36 下端側膨張部
40 エアバッグ導入部
44 一方の基布
46 他方の基布
48 開口部(変位手段)
52 布片(変位手段)
56 弛み部(余長部)
58 ドアベルトライン
60 エアバッグ
62 非膨張部
64 スリット(脆弱部、変位手段)
70 エアバッグ
72 非膨張部
74 スリット(脆弱部、変位手段)
76 別布(変位手段)




 

 


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