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発明の名称 車両のステアリング装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−8285(P2007−8285A)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
出願番号 特願2005−190440(P2005−190440)
出願日 平成17年6月29日(2005.6.29)
代理人 【識別番号】100099645
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 晃司
発明者 渋谷 浩
要約 課題
車両のキングピン軸を望ましい位置に設定することが可能なステアリング装置を提供する。

解決手段
車両の車輪取付部3L、3Rに対して車両の前後方向に離された一対の連結点HLf、HLr又はHRf、HRrにて回転自在に連結される前アーム7L、7R及び後アーム8L、8Rをそれぞれ有し、これらのアームを介して車輪取付部3L、3Rを支持する左右のアーム機構5L、5Rと、各アーム機構の前アーム7L、7R及び後アーム8L、8Rと車輪取付部3L、3Rとの連結点HLf、HLr、HRf、HRrが車両の左右方向外側に互いに異なる変位量で変位するようにアーム機構5L、5Rの前アーム7L、7R及び後アーム8L、8Rのそれぞれを駆動可能なアーム駆動機構6とをステアリング装置1Aに設ける。
特許請求の範囲
【請求項1】
車両の車輪取付部に対して車両の前後方向に離された一対の連結点にて回転自在に連結される前アーム及び後アームをそれぞれ有し、これらのアームを介して前記車輪取付部を支持する左右のアーム機構と、
各アーム機構の前アーム及び後アームと前記車輪取付部との連結点が車両の左右方向外側に互いに異なる変位量で変位するように各アーム機構の前アーム及び後アームのそれぞれを駆動可能なアーム駆動機構と、
を備えたことを特徴とする車両のステリング装置。
【請求項2】
前記アーム機構間に配置されかつ車両の上下方向の回転中心線の周りに回転可能な一対の回転体を有し、一方の回転体には一方のアーム機構の前アームと他方のアーム機構の後アームとが前記回転中心線を挟んで離れた位置にて回転自在に連結され、他方の回転体には一方のアーム機構の後アームと他方のアーム機構の前アームとが前記回転中心線を挟んで離れた位置にて回転自在に連結されたアーム操作部と、
前記一対の回転体のそれぞれを前記回転中心線の周りに回転駆動する回転体駆動部と、
各アーム機構の前アーム又は後アームのいずれか一方のアームの前記回転体に対する回転角を規定する回転角規定手段と、
を前記アーム駆動機構が備えていることを特徴とする請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項3】
各アーム機構の前記前アーム及び後アームに組み込まれて車体と車輪取付部との間で伸縮可能なアクチュエータを前記アーム駆動機構が備えていることを特徴とする請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項4】
車両の直進状態からの操舵部材の操作に連係して、前記車輪取付部に対する前記前アーム及び後アームのそれぞれの連結点が前記直進状態における各連結点よりも車両の左右方向外側に変位し、かつ旋回方向外側のアーム機構では後アームと車輪取付部との連結点の変位量が前アームと車輪取付部との連結点の変位量よりも大きく、旋回方向内側のアーム機構では前アームと車輪取付部との連結点の変位量が後アームと車輪取付部との連結点の変位量よりも大きくなるように、前記アーム駆動機構による前記アームの駆動を制御するステアリング制御手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のステアリング装置。
【請求項5】
左右のアーム機構のそれぞれと、前記アーム駆動機構とが、前記車輪取付部のスピンドルを挟んで上下に二組ずつ設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のステアリング装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、キングピン軸の位置を変化させることができる車両のステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のステアリング装置として、ステアリングホイールの操作をラックアンドピニオン機構を介してタイロッドの左右方向の動作に変換し、そのタイロッドにより、サスペンション機構に支持されたナックルアームをキングピン軸の周りに操作して車輪の向きを変化させる装置が知られている(例えば特許文献1参照)。左右の車輪を結ぶアクスル上に伸縮機構を組み込むことにより、車輪のトレッドを可変とした農業機械用のステアリング装置も知られている(例えば特許文献2及び3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−255527号公報
【特許文献2】特開平9−240500号公報
【特許文献3】特開2001−97237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のステアリング装置では、キングピン軸が車輪近傍の鉛直方向中心線に沿った一定の位置に設定されており、車輪に対してキングピン軸の位置を変化させることはできなかった。トレッド可変式のステアリング装置においても、トレッドの変化に伴ってキングピン軸の位置が左右方向に変化するものの、キングピン軸と車輪との位置関係は変化していない。
【0005】
しかしながら、車輪に対してキングピン軸が上記の位置に固定されている場合、それに起因して不都合が生じる。例えば、従来のステアリング装置では、旋回時に車輪がキングピン軸を中心に左右に捩られて車輪の回転面と車両の進行方向とにずれが生じ、そのずれに起因して横力が発生して旋回が開始される。このため、特に大きな横力が要求される旋回方向外側の車輪において横力発生までのタイムラグが増加する。このタイムラグが大きいと、ステアリング操作に対する車両の旋回挙動の応答が遅れる等、車両の旋回性能に少なからず影響が及ぶ。
【0006】
また、車輪近傍の鉛直中心線に沿ってキングピン軸が設定されている場合、車輪の操向時に車輪の一端側が車体の内側に大きく振られるため、車体が車輪と干渉しないように車輪の収容スペース(タイヤハウス)には十分な余裕を与える必要がある。しかし、車体幅は空気抵抗の低減等の観点からむやみに大きくできないため、車輪の収容スペースを十分に確保すれば、車輪間に位置するエンジンコンパートメント、あるいはキャビンのスペースが犠牲になる。エンジンコンパートメント等の余裕を優先すれば車輪の最大ステア角が制限されて車両の最小回転半径が増加する。
【0007】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたもので、キングピン軸を望ましい位置に設定することが可能なステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のステアリング装置は、車両の車輪取付部に対して車両の前後方向に離された一対の連結点にて回転自在に連結される前アーム及び後アームをそれぞれ有し、これらのアームを介して前記車輪取付部を支持する左右のアーム機構と、各アーム機構の前アーム及び後アームと前記車輪取付部との連結点が車両の左右方向外側に互いに異なる変位量で変位するように各アーム機構の前アーム及び後アームのそれぞれを駆動可能なアーム駆動機構とを備えることにより、上述した課題を解決する(請求項1)。
【0009】
本発明のステアリング装置によれば、前アーム及び後アームの双方を外側に変位させることにより、車輪取付部を直進時よりも左右方向外側に移動させることができる。しかも、各アーム機構における前アームの変位量と後アームの変位量との組み合わせによって車輪に対するキングピン軸の位置を車輪の鉛直中心線に限定することなく適宜の位置に設定することができる。しかも、前後アームの変位量の差に応じた傾きを車輪取付部に与えることができる。例えば、旋回方向内側の車輪取付部に関しては前アーム側の連結点が後アーム側の連結点よりも外側に大きく変位し、旋回方向外側の車輪取付部に関しては後アーム側の連結点が前アーム側の連結点よりも外側に大きく変位するように各連結点の変位量を設定した場合には、旋回方向内側においてキングピン軸が車輪の鉛直中心線よりも車輪の後方に偏り、旋回方向外側においてキングピン軸が車輪の鉛直中心線よりも前方に偏る。その結果、左右の車輪はいずれも車両の外側に押し出されつつ左右方向に傾けられる。このため、横力が迅速に立ち上がり、ステアリング操作に対する車両の旋回挙動の応答性が向上する。また、旋回時に車輪が外側へ張り出してトレッドが増加することにより、ロールの抑制効果も高まる。これらの理由から車両の旋回性能が高まる。
【0010】
さらに、車輪を外側に押し出しつつ操向させることにより、旋回時における車体内側への車輪のせり出し量を減少させることができる。この場合には、車輪の操向角を大きく確保して車両の最小回転半径を縮小し、あるいは車輪の収容スペースを削減して車体幅を縮小させることができる。車体幅を縮小する必要がない場合には、車輪の収容スペースの削減に対応してエンジンコンパートメント、あるいはキャビンを拡大することができる。
【0011】
本発明の一形態においては、前記アーム機構間に配置されかつ車両の上下方向の回転中心線の周りに回転可能な一対の回転体を有し、一方の回転体には一方のアーム機構の前アームと他方のアーム機構の後アームとが前記回転中心線を挟んで離れた位置にて回転自在に連結され、他方の回転体には一方のアーム機構の後アームと他方のアーム機構の前アームとが前記回転中心線を挟んで離れた位置にて回転自在に連結されたアーム操作部と、前記一対の回転体のそれぞれを前記回転中心線の周りに回転駆動する回転体駆動部と、各アーム機構の前アーム又は後アームのいずれか一方のアームの前記回転体に対する回転角を規定する回転角規定手段とを前記アーム駆動機構が備えていてもよい(請求項2)。
【0012】
この形態によれば、キングピン軸の位置、及びキングピン軸に対する車輪取付部の傾きは、各アーム機構に存在する4つの連結点、すなわち、前アーム及び後アームと車輪取付部との連結点、並びに前アーム及び後アームと回転体との連結点のそれぞれの位置によって定まる。これらの連結点のうち、回転体と前後アームのそれぞれの連結点の位置は、直進状態からの回転体の回転角によって一義的に定まる。また、回転角規定手段が回転体に対する前アーム又は後アームの回転角を規定することにより、前アーム又は後アームと車輪取付部との連結点のうち、いずれか一方の連結点の位置も定まる。従って、残る一つの連結点の位置もこれらの3つの連結点の位置に応じて定まる。これにより、回転体の回転角と、回転体に対する前アーム又は後アームの回転角とによってキングピン軸の位置、及びそのキングピン軸に対する車輪取付部の操向角を制御することができる。
【0013】
本発明の他の形態においては、各アーム機構の前記前アーム及び後アームに組み込まれて車体と車輪取付部との間で伸縮可能なアクチュエータを前記アーム駆動機構が備えていてもよい(請求項3)。この形態によれば、アクチュエータにより各アームを伸縮させることにより、車輪取付部と各アームとの連結点の位置を適宜に変化させ、それによりキングピン軸の位置、及びそのキングピン軸に対する車輪取付部の操向角を制御することができる。
【0014】
本発明のステアリング装置は、車両の直進状態からの操舵部材の操作に連係して、前記車輪取付部に対する前記前アーム及び後アームのそれぞれの連結点が前記直進状態における各連結点よりも車両の左右方向外側に変位し、かつ旋回方向外側のアーム機構では後アームと車輪取付部との連結点の変位量が前アームと車輪取付部との連結点の変位量よりも大きく、旋回方向内側のアーム機構では前アームと車輪取付部との連結点の変位量が後アームと車輪取付部との連結点の変位量よりも大きくなるように、前記アーム駆動機構による前記アームの駆動を制御するステアリング制御手段をさらに備えていてもよい(請求項4)。このように各アームと車輪取付部との連結点の変位量を設定することにより、旋回時に車輪を左右方向外側へ押し出しつつ操向させることができる。
【0015】
さらに、本発明の一形態においては、左右のアーム機構のそれぞれと、前記アーム駆動機構とが、前記車輪取付部のスピンドルを挟んで上下に二組ずつ設けられてもよい(請求項5)。車輪取付部を上下二組のアーム機構にて支持することにより、車輪をより安定的に支持することができる。しかも、上下のアーム機構に異なる動作を与えることにより、キングピン軸の左右方向あるいは前後方向に関する傾きを様々に変化させ、それによりトー角、キャスタ角等も任意に設定することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上に説明したように、本発明のステアリング装置によれば、前アーム及び後アームのそれぞれと車輪取付部との連結点を車両の左右方向外側に互いに異なる変位量で変位させることにより、キングピン軸を左右方向外側に移動させつつ、車輪に対するキングピン軸の位置を車輪の鉛直中心線の近傍に限ることなく様々な位置に設定し、さらには前後アームと車輪取付部との連結点の変位量の差に応じた操向角を車輪に与えることができる。これにより、キングピン軸の位置、及びそのキングピン軸の周りの車輪の操向動作に関する設定の自由度が高まり、キングピン軸が車輪の鉛直中心線近傍に固定されている従来のステアリング装置における種々の不都合を解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1の形態]
図1は本発明の第1の形態に係るステアリング装置の車両直進時における状態を、図2はそのステアリング装置の左旋回時における状態をそれぞれ示している。なお、以下の説明において、各構成要素を示す参照符号に添え字L、Rを付して左右を区別するが、特に区別を要しない場合には添え字を省略することがある。図1及び図2のステアリング装置1Aは乗用車の左右の前輪2L、2Rを操向するためのものである。前輪2L、2Rはそれぞれ車輪取付部3L、3Rに取り付けられている。車輪取付部3L、3Rは、前輪2L、2Rの回転中心となるスピンドル4L、4Rを含んだアッセンブリ部品として構成される。あるいは、車輪取付部3はインホイールモータであってもよく、その場合にはインホイールモータの出力軸がスピンドル4を構成する。
【0018】
ステアリング装置1Aは、車輪取付部3に対応して設けられた左右のアーム機構5L、5Rと、それらのアーム機構5を駆動するアーム駆動機構6とを備えている。左側のアーム機構5Lは車両の前後方向(図1において上下方向)に並べられた一対の前アーム7L及び後アーム8Lを有している。それらの前アーム7L、後アーム8Lの外側の端部は、車両の前後方向にスピンドル4Lを挟んで対称的に設定された連結点HLf、HLrにて車輪取付部3Lに回転自在に連結されている。車輪取付部3Lはこれらのアーム7L、8Lを介して車体に支持される。同様に、右側のアーム機構5Rは車両の前後方向に並べられた一対の前アーム7R及び後アーム8Rを有している。それらの前アーム7R、後アーム8Rの外側の端部は、車両の前後方向にスピンドル4Rを挟んで対称的に設定された連結点HRf、HRrにて車輪取付部3Rに回転自在に連結されている。車輪取付部3Rはこれらのアーム7R、8Rを介して車体に支持される。
【0019】
アーム駆動機構6は、アーム7、8を操作するためのアーム操作部10と、回転角規定手段としてのギア機構13とを備えている。アーム操作部10には一対の回転体11、12が設けられている。回転体11、12は車体に設けられた上下方向の回転軸14に互いに独立して回転できるように取り付けられている。これらの回転体11、12は、アーム駆動機構6の第1回転体駆動部21及び第2回転体駆動部22(図4参照)により回転軸14の周りに互いに独立して回転駆動される。回転軸14は車両の前後方向中心線CL上に配置されている。回転体駆動部21、22には、サーボモータ、ロータリアクチュエータといった回転運動を発生する各種の駆動装置を用いてよい。但し、回転体駆動部21、22は、回転体11、12をそれぞれ任意の角度回転させ、かつその回転後の位置で回転体11、12を保持できる機能を有している必要がある。回転体駆動部21、22と回転体11、12とはギア機構等の適宜の伝達機構を介して連結すればよい。あるいは、回転軸14と回転体11、12との間にビルトインモータ等の回転駆動源を組み込んでもよい。図1において回転体11、12は共通の回転軸14上に配置されているが、回転体11、12のそれぞれの回転中心線は必ずしも同軸上であることを要しない。回転体11、12は一方向に延ばされた平板アーム状に形成されているが、それらの形状は任意でよい。
【0020】
図1及び図2に示すように、第1回転体11の前端部は右側の前アーム7Rの内側の端部と連結点JRfにて回転自在に連結され、第1回転体11の後端部は左側の後アーム8Lの内側の端部と連結点JLrにて回転自在に連結されている。一方、第2回転体12の前端部は左側の前アーム7Lの内側の端部と連結点JLfにて回転自在に連結され、第1回転体11の後端部は右側の後アーム8Rの内側の端部と連結点JRrにて回転自在に連結されている。
【0021】
なお、各アームの外側の連結点HLf、HLr、HRf、HRr、及び内側の連結点JLf、JLr、JRf、JRrのそれぞれにおいては、アーム7、8が車両の上下方向の軸線を中心として回転できるように連結構造を定めればよい。但し、ブッシュ、球面軸受等を介して連結することにより、車輪取付部3又は回転体11、12に対してアーム7、8が水平方向の軸線の周りにも幾らか回転できるようにしてもよい。回転体11、12を回転軸14の方向に変位可能とすることにより、車体に対する前輪2L、2Rの上下動を許容してもよい。この場合、車体と回転体11、12との間にばね及びダンパーを設けてもよい。
【0022】
ギア機構13は、第1回転体11の回転軸14上に配置された第1ギア15と、その第1ギア15と噛み合う一対の第2ギア16と、連結点JRf、JLr上にそれぞれ配置されて第2ギア16と噛み合う一対の第3ギア17とを備えている。第1ギア15は回転軸14に同軸的に固定されており、回転不能である。つまり、第1回転体11及び第2回転体12のいずれが回転しても第1ギア15は車体に対して回転しない。第2ギア16は第1回転体11上に回転自在に取り付けられている。従って、第2ギア16は第1回転体11の回転に伴って第1ギア15の周りに回転する。第3ギア17は第1回転体11に対して回転自在かつ連結点JRf、JLr上にて前アーム7R又は後側アーム8Rと一体に回転できるように設けられている。このようなギア機構13を設けることにより、直進状態からの第1回転体11の回転角と、その第1回転体11に対する前アーム7R及び後アーム8Lのそれぞれの回転角とが一義的に対応付けられる。これにより、左側のアーム機構5Lに存在する4つの連結点HLf、HLr、JLf及びJLrのうち、後アーム8L上の連結点HLr及びJLrについては第1回転体11の回転角に応じてそれらの位置が一義的に定まる。また、第2回転体12上に存在する連結点JLfについては、第2回転体12の回転角に応じてその位置が一義的に定まる。従って、残る連結点HLfについても、第1回転体11及び第2回転体12の位置が決まれば一義的に定まることになる。よって、前アーム7L及び後アーム8Lに支持される車輪取付部3Lの位置及び傾きは、第1回転体11及び第2回転体12の回転角を決めれば一義的に定まる。右側のアーム機構5Rに存在する4つの連結点HRf、HRr、JRf及びJRrの位置に関しても同様に第1回転体11及び第2回転体12の回転角に応じて一義的に定まる。
【0023】
第1回転体11及び第2回転体12と車輪取付部3との関係は、回転体11、12が最も接近した状態、言い換えると、回転体11、12上の4つの連結点JLf、JRf、JLr、JLrのそれぞれが車両の左右方向に関して最も内側に位置する状態において、前輪2L、2Rが直進方向を向くように設定されている。この直進状態においてアーム機構5L、5Rは左右対称であり、左側の車輪取付部3L上の連結点HLf、HLrは前後方向に一直線に並び、右側の車輪取付部3R上の連結点HRf、HRrは前後方向に一直線に並んでいる。車両の前後方向中心線CLと前輪2L、2Rの中心線AL、ARまでの距離は互いに等しい。さらに、直進状態において、左側のアーム7L、8Lの延長線の交点ILは前輪2Lの接地中心(この例では前輪2Lの鉛直方向中心線VLと一致する。)よりも車両の左右方向外側に位置している。同様に、右側のアーム7R、8Rの延長線の交点IRは前輪2Rの接地中心(前輪2Rの鉛直方向中心線VRと一致する。)よりも車両の左右方向外側に位置している。交点IL、IRと前輪2L、2Rの接地中心との関係を上記のように設定することにより、回転体11、12の回転を利用して前輪2L、2Rを直進時の位置よりも車両の左右方向外側に押し出しながら操向することが可能となる。
【0024】
次に、図1の直進状態から回転体11、12を回転させた場合の動作を説明する。図1の直進状態から第1回転体11を時計方向に回転させると、右側の前アーム7R及び左側の後アーム8Lのそれぞれが車両の左右方向外側に押し出され、しかも、前アーム7R及び後アーム8Lはギア機構13によって定められる回転角だけ第1回転体11に対して回転する。これにより、連結点HLr及びHRfは、直進時のそれらの位置と比較して車両の左右方向外側でかつ第1回転体11の回転角に応じた位置へ変位する。また、図1の直進状態から第2回転体12を反時計方向に回転させると、左側の前アーム7L及び右側の後アーム8Rのそれぞれが車両の左右方向外側に押し出され、それらのアーム7L、8Rと車輪取付部3との連結点HLf、HRrも直進時のそれらの位置と比較して車両の左右方向外側でかつ第2回転体12の回転角に応じた位置へ変位する。
【0025】
第1回転体11の直進状態からの回転角と、第2回転体12の直進状態からの回転角との間に差を与えることにより、第1回転体11に関連付けられた連結点HLr、HRfの左右方向外側に関する変位量と、第2回転体12に関連付けられた連結点HLf、HRrの左右方向外側に関する変位量との間に差が生じ、その差に応じて前輪2L、2Rが直進状態から左方又は右方に操向される。図2は第2回転体12の回転角が第1回転体11よりも大きく設定された場合を示している。この場合には、第2回転体12に関連付けられた連結点HLf、HRrが第1回転体11に関連付けられた連結点HLr、HRfよりも外側に大きく変位する。このため、前輪2L、2Rが左方に操向されて車両が左旋回する。このとき、左側のキングピン軸(正確には仮想キングピン軸)KPLは前輪2Lの鉛直方向中心線VLよりも後方へ偏り、右側のキングピン軸KPRは前輪2Rの鉛直方向中心線VRよりも前方へ偏る。反対に、第2回転体12の回転角が第1回転体11よりも小さく設定された場合には、前輪2L、2Rが右側に操向されて車両が右旋回し、キングピン軸KPL、KPRは左旋回時は逆方向に移動する。これらのキングピン軸KPL、KPRの位置、及び前輪2L、2Rの操向角は、第1回転体11の回転角と第2回転体12の回転角との組み合わせを調整することにより、適宜に変化させることができる。図2では、キングピン軸KPL、KPRを直進時における前輪2L、2Rの中心線上でかつ前輪2L、2Rの端部に設定しているが、これに限らずキングピン軸KPL、KPRの位置は適宜に設定することができる。
【0026】
以上の説明から明らかなように、本形態のステアリング装置1Aにおいては、旋回時に前輪2L、2Rを外側に押し出しつつ操向させることができるので、特に旋回方向外側の前輪において大きな横力を迅速に発生させてステアリング操作に対する車両の旋回動作の応答性を向上させることができる。また、旋回時に前輪2L、2R間のトレッドが拡大し、ロールの抑制効果も高まる。図3A又は図3Bに示したように前輪2L、2Rを車体BDの外側へ張り出すようにして操向させることにより、前輪2L、2Rの操向角を従来よりも大きく確保して車両の最小回転半径を縮小し、かつ車体BDの内側への前輪2L、2Rのせり出しを抑えて前輪2L、2Rを収容するために必要なスペースを削減することができる。特に、図2に示した位置にキングピン軸KPL、KPRを設定した場合には、車体BDに設けるべき前輪2L、2Rの収容スペースは直進状態の前輪2L、2Rをカバーできる程度で足りる。従って、車体幅を減少させて空気抵抗の削減、これに伴う燃費の向上を図ることができる。あるいは、前輪2L、2Rの収容スペースの削減分をエンジン、キャビン等の他のスペースに充当してエンジンコンパートメント、あるいはキャビンを拡大することができる。なお、図2のようにキングピン軸KPL、KPRを前輪2L、2Rの端部に設定するためには、第1回転体11の回転角を1としたときに、回転板11に対する前アーム7R及び後アーム8Lの回転角が1.4程度となるようにギア機構13のギア比を設定するとよい。
【0027】
次に、車両の不図示の操舵部材(典型的にはステアリングホイール)の操作に連係してアーム7、8を動作させるためにステアリング装置1Aに設けられる制御系について説明する。図4はその制御系のブロック図である。ステアリング装置1Aの制御系は、操舵部材の操作に連係して回転体11、12の動作を制御するステアリング制御手段として、ステアリングコントローラ(以下、コントローラと略称する。)20を備えている。コントローラ20はコンピュータユニットとして構成されている。コントローラ20には、その制御対象として、上述した第1回転体駆動部21及び第2回転体駆動部22が接続されている。コントローラ20には、回転体駆動部21、22の制御において参照すべき各種の物理量を検出するセンサ群23が接続されている。センサ群23は、操舵部材の中立位置(直進時の位置)からの操舵角を検出する操舵角センサ24を含む。なお、ここでいう操舵角は、操舵部材の中立位置からの操作方向を識別可能な情報を含む。その他に、車速センサ25、ヨーレートセンサ26といった車両の運動状態を示すパラメータ(以下、車両運動パラメータと呼ぶ。)を検出する各種のセンサをセンサ群23に含めてよい。参照されるべき車両運動パラメータとしては、車速、ヨーレートの他にも、車体スリップ角、横G等を適宜に選択してよい。
【0028】
図5は、回転体11、12を駆動するためにコントローラ20が実行するステアリング制御ルーチンを示すフローチャートである。このルーチンでは、まずステップS11で操舵角センサ24からの出力信号に基づいて操舵部材の操舵角が検出され、続くステップS12で車速センサ25等の出力信号に基づいて車両運動パラメータが検出される。次のステップS13では、検出した操舵角及び車両運動パラメータに基づいて回転体11、12に与えるべき回転角が決定される。回転角は一例として次の手順により決定することができる。
【0029】
まず、操舵角と回転体11、12の回転角との対応関係を記述したマップを予め作成してコントローラ20のROMに記憶させておく。操舵角と回転体11、12との対応関係は実験、又はシミュレーションにより求めることができる。例えば、図2のようにキングピン軸KPL、KPRを前輪2L、2Rの端部に設定する場合には、それらのキングピン軸KPL、KPRの周りに前輪2L、2Rを操向させたときの連結点HLf、HLr、HRf、HRrのそれぞれの軌跡を求め、得られた軌跡を操舵部材の中立位置からの操舵角と対応付けることにより、操舵角毎に連結点HLf、HLr、HRf、HRrがどの位置に移動しているべきかを把握する。そして、連結点HLf、HLr、HRf、HRrと回転体11、12の回転角との対応関係を利用して操舵角と回転体11、12との対応関係を求めればよい。ステップS13においては、ROMに格納されたマップを参照して操舵角センサ24が検出した操舵角に対応する回転体11、12の回転角を取得し、得られた回転角を、車速、ヨーレート等の車両運動パラメータに応じて適宜に補正して最終的な目標回転角として決定する。あるいは、操舵角と回転体11、12の回転角との対応関係を記述したマップを、車速、ヨーレート等の車両運動パラメータに応じて複数種類用意し、センサ群23が検出した車両運動パラメータを参照して適切なマップを選択し、その選択されたマップにより操舵角に対応する回転体11、12の回転角を決定してもよい。
【0030】
車両運動パラメータと回転体11、12の回転角との関係はその車両運動パラメータが車両の旋回性能に与える影響を考慮して適宜に定めればよい。例えば、センサ群23の検出値から低速旋回時と判断したときには、同一の操舵角に対して前輪2L、2Rがより大きく操向されるように操舵角と回転体11、12との対応関係を設定し、高速旋回時と判断したときには前輪2L、2Rのトレッドが低速旋回時よりも大きく維持されるように操舵角と回転体11、12の回転角との対応関係を設定してもよい。いずれにせよ、本形態のステアリング装置1Aによれば、回転体11、12の回転角の組み合わせに応じてキングピン軸KPL、KPRの位置及び前輪2L、2Rの操向角を様々な状態に設定することができる。
【0031】
図5のステップS13で回転体11、12の回転角が決定された後は、ステップS14でその決定された回転角が回転体11、12に与えられるように第1回転体駆動部21及び第2回転体駆動部22が駆動される。この後、ステップS11へと処理が戻され、以下同様手順が繰り返される。
【0032】
[第2の形態]
図6は本発明の第2の形態に係るステアリング装置の車両直進時における状態を、図7はそのステアリング装置の左旋回時における状態をそれぞれ示している。なお、第1の形態との共通部分には同一の参照符号を付し、それらの説明を省略する。
【0033】
図6のステアリング装置1Bは、第1回転体11上のギア機構13が省略され、これに代わる回転角規定手段として、回転体11、12と前アーム7L、7Rとの連結点JLf、JRfに左アーム駆動部27L及び右アーム駆動部27Rが設けられた点で第1の形態のステアリング装置1Aと異なっている。アーム駆動部27L、27Rは、前アーム7L、7Rを回転体11、12に対して連結点JLf、JRfの周りにそれぞれ回転駆動する。回転体11、12を駆動するための回転体駆動部21、22と同様に、アーム駆動部27には、サーボモータ、ロータリアクチュエータといった回転運動を発生する各種の駆動装置を用いてよい。但し、アーム駆動部27は、前アーム7を任意の角度回転させ、かつその回転後の位置で前アーム7を保持できる機能を有している必要がある。アーム駆動部27の追加に伴って、ステアリング装置1Bを駆動するための制御系においては、図8に示したようにステアリングコントローラ20に対して制御対象としてアーム駆動部27L、27Rがさらに接続される。なお、アーム7、8の延長線の交点IL、IRと前輪2L、2Rの接地中心VL、VRとの関係は第1の形態と同様である。
【0034】
図9は、回転体11、12及び前アーム7L、7Rを駆動するために図8のコントローラ20が実行するステアリング制御ルーチンを示すフローチャートである。このルーチンでは、まずステップS21で操舵角センサ24からの出力信号に基づいて操舵部材の操舵角が検出され、続くステップS22で車速センサ25等の出力信号に基づいて車両運動パラメータが検出され、さらに、ステップS23で、検出した操舵角及び車両運動パラメータに基づいて回転体11、12に与えるべき回転角が決定される。ここまでの手順は図5のステップS11〜S13と同様である。
【0035】
続くステップS24においては、ステップS23で決定した回転体11、12の回転角に基づいて、これらの回転体11、12に対する前アーム7L、7Rの回転角が決定される。ここでは、第1の形態における回転体11、12の回転角と前アーム7L、7Rの回転角との関係と同様の関係が成立するように前アーム7L、7Rの回転角を決定してよい。但し、車両運動パラメータに応じて前アーム7の回転角を様々に変化させてもよい。つまり、第1の形態では回転体11の回転角に応じて前アーム7R及び後アーム8Lの回転角が一義的に規定され、第2回転体12の回転角に応じて前アーム7L及び後アーム8Rの回転角が一義的に規定されるが、本形態では、アーム駆動部27L、27Rにより前アーム7L、7Rを回転体11、12に対して連結点JLf、JRfの周りに相対的に回転させることにより、回転体11、12が決まっても、前アーム7L、7Rの回転角をさらに変化させることができる。従って、車両運動パラメータに応じて、キングピン軸KPL、KPRの位置、あるいは前輪2L、2Rの操向角をさらに柔軟に変化させるようにステップS24にてアーム7の回転角を決定してもよい。
【0036】
ステップS24で前アーム7の回転角が決定された後はステップS25へと処理が進められる。ステップS25においては、ステップS23にて決定された回転角が回転体11、12に与えられるように第1回転体駆動部21及び第2回転体駆動部22が駆動されるとともに、ステップS24にて決定された回転角が前アーム7に与えられるようにアーム駆動部27L、27Rが駆動される。この後、ステップS21へと処理が戻され、以下同様手順が繰り返される。
【0037】
本形態のステアリング装置1Bによれば、旋回時に前輪2L、2Rを外側に押し出しつつ操向させることができ、また、回転体11、12の回転角の組み合わせによってキングピン軸KPL、KPRを様々な位置に設定することができ、さらには前輪2L、2Rの操向角も様々に変化させることができるので、第1の形態と同様の作用効果が得られる。加えて、回転体11、12に対する前アーム7の回転角を任意に変化させることができるので、キングピン軸KPL、KPRの位置、前輪2L、2Rの操向角、トレッド等の調整の自由度がさらに高まる利点がある。
【0038】
[第3の形態]
図10は本発明の第3の形態に係るステアリング装置の車両直進時における状態を、図11はそのステアリング装置の左旋回時における状態をそれぞれ示している。なお、第1の形態との共通部分には同一の参照符号を付し、それらの説明を省略する。
【0039】
上述したステアリング装置1A、1Bと同様に、第3の形態のステアリング装置1Cは、車輪取付部3L、3Rのそれぞれに対応する一対のアーム機構30L、30Rと、それらのアーム機構30を駆動するアーム駆動機構31とを備えている。左側のアーム機構30Lは車両の前後方向に並べられた一対の前アーム32L及び後アーム33Lを有し、右側のアーム機構30Rも車両の前後方向に並べられた一対の前アーム32R及び後アーム33Rを有している。これらのアーム32、33の外側の端部はそれぞれ連結点HLf、HLr、HRf、HRrにて車輪取付部3L、3Rに回転自在に連結されている。また、前アーム32及び後アーム33の内側の端部は連結点JLf、JLr、JRf、JRrにて支持部材34に回転自在に連結されている。支持部材34は車両の前後方向中心線CL上にて車体に固定されている。従って、車輪取付部3Lは前アーム32L及び後アーム33Lを介して車体に支持され、車輪取付部3Rは前アーム32R及び後アーム33Rを介して車体に支持される。
【0040】
なお、この形態においても、各アームの外側の連結点HLf、HLr、HRf、HRr、及び内側の連結点JLf、JLr、JRf、JRrのそれぞれにおいては、アーム32、33が車両の上下方向の軸線を中心として回転できるように連結構造を定めればよい。但し、ブッシュ、球面軸受等を介して連結することにより、車輪取付部3又は支持部材34に対してアーム32、33が水平方向の軸線の周りにも幾らか回転できるようにしてもよい。支持部材34を上下方向に変位可能とすることにより、車体に対する前輪2L、2Rの上下動を許容してもよい。この場合、支持部材34と車体との間にばね及びダンパーを設けてもよい。支持部材34は左右のアーム機構30L、30Rのそれぞれに対して別々に設けられてもよい。
【0041】
アーム駆動機構31は、前アーム32L、32Rのそれぞれに組み込まれた直動型のアクチュエータ35L、35Rと、後アーム33L、33Rのそれぞれに組み込まれた直動型のアクチュエータ36L、36Rとを備えている。すなわち、図11から明らかなように、前アーム32L、32Rのそれぞれは、支持部材34に連結されるチューブ32aと、先端が車輪取付部3に連結され他端側がチューブ32a内に伸縮自在に挿入されるロッド32bとを備えており、それぞれのチューブ32aにはロッド32bを伸縮駆動する前アーム駆動部37L、37Rが取り付けられている。左前アーム32Lにおいては、チューブ32a、ロッド32b及び駆動部37Lによりアクチュエータ35Lが構成され、右前アーム32Rにおいてはチューブ32a、ロッド32b及び駆動部37Rによりアクチュエータ35Rが構成される。また、前アーム32と同様に、後アーム33L、33Rのそれぞれは、支持部材34に連結されるチューブ33aと、先端が車輪取付部3に連結され他端側がチューブ33a内に伸縮自在に挿入されるロッド33bとを備えており、それぞれのチューブ33aにはロッド33bを伸縮駆動する後アーム駆動部38L、38Rが取り付けられている。左後アーム33Lにおいては、チューブ33a、ロッド33b及び駆動部38Lによりアクチュエータ36Lが構成され、右後アーム33Rにおいてはチューブ33a、ロッド33b及び駆動部38Rによりアクチュエータ36Rが構成される。
【0042】
駆動部37、38はそれぞれロッド32b、33bを任意の位置に駆動してその位置で保持できるものであればよく、一例として電動パワーステアリングに用いられる駆動装置を駆動部37、38として用いることができる。そのような駆動装置を前アーム32のアクチュエータ36に適用した一例を図12に示す。図12の例では、電動モータ40の出力軸40aの回転がその出力軸40aに取り付けられたピニオン41からリングギア42に伝達される。リングギア42の中心にはピニオンシャフト43が一体回転可能に設けられ、そのピニオンシャフト43の下端にはピニオン44が一体に形成されている。ロッド32bにはピニオン44と噛み合うラック45が一体に形成されている。従って、リングギア42に伝達された回転はピニオン44及びラック45を介してロッド32bの軸線方向の運動に変換され、これによりロッド32bがチューブ32aに対して伸縮する。後アーム33のアクチュエータ36L、36Rに関しても同様に構成すればよい。なお、アクチュエータ35、36はモータ40によって伸縮動作を行うものに限らず、油圧等を利用して伸縮動作を実現するものでもよい。
【0043】
以上のステアリング装置1Cにおいては、図10に示すようにロッド32b、33bが最も縮められた状態で前輪2L、2Rが直進方向を向くように前アーム32及び後アーム33の伸縮量と車輪取付部3との関係が設定されている。この直進状態においてアーム機構30L、30Rは左右対称であり、左側の車輪取付部3L上の連結点HLf、HLrは前後方向に一直線に並び、右側の車輪取付部3R上の連結点HRf、HRrは前後方向に一直線に並んでいる。車両の中心線CLと前輪2L、2Rの中心線AL、ARまでの距離は互いに等しい。さらに、直進状態において、左側のアーム32L、33Lの延長線の交点ILは前輪2Lの接地中心(この例でも前輪2Lの鉛直方向中心線VLと一致する。)よりも車両の左右方向外側に位置し、右側のアーム32R、33Rの延長線の交点IRは前輪2Rの接地中心(前輪2Rの鉛直方向中心線VRと一致する。)よりも車両の左右方向外側に位置している。
【0044】
直進状態からアーム32、33を車両の左右方向外側に伸張させ、かつ、前側の連結点HLf、HRfの変位量と後側の連結点HLr、HRrの変位量との間に差が生じるようにアーム32、33の伸び量を制御することにより、第1の形態と同様に前輪2L、2Rを外側に押し出しつつ操向させることができる。この場合、キングピン軸KPL、KPRの位置、前輪2L、2Rの操向角、トレッドに関しては、直進状態からのアーム32、33の伸び量の組み合わせを調整することにより任意に変化させることができる。
【0045】
図13はステアリング装置1Cの制御系のブロック図である。ステアリング装置1Cの制御系は、前アーム32L、32R、後アーム33L、33Rにそれぞれ対応したアーム駆動部37L、37R、38L、38Rがコントローラ20に制御対象として接続されている点で図4の制御系と相違する。
【0046】
図14はアーム32、33を伸縮させるために図13のコントローラ20が実行するステアリング制御ルーチンを示すフローチャートである。このルーチンでは、まずステップS31で操舵角センサ24からの出力信号に基づいて操舵部材の操舵角が検出され、続くステップS32で車速センサ25等の出力信号に基づいて車両運動パラメータが検出される。ここまでの手順は図5のステップS11及びS12と同様である。
【0047】
続くステップS33では、検出した操舵角及び車両運動パラメータに基づいてアーム32、33の直進状態からの伸び量が決定される。この場合も、前輪2L、2Rを操舵角に応じた角度だけ操向するために必要な各アームの伸び量を実験やシミュレーションによって予め求めて操舵角と各アームの伸び量との対応関係を記述したマップを作成し、そのマップをコントローラ20のROMに記憶させ、そのマップを参照して操舵角に対応する伸び量を得るようにすればよい。また、得られた伸び量を車両運動パラメータに応じて適宜に修正してよい。
【0048】
ステップS33でアームの伸び量が決定された後はステップS34へと処理が進められる。ステップS34においては、ステップS33にて決定された伸び量が各アームに与えられるようにアーム駆動部37、38が駆動される。この後、ステップS31へと処理が戻され、以下同様手順が繰り返される。
【0049】
本形態のステアリング装置1Cにおいては、左右のアーム機構30L、30Rを互いに独立して駆動することができるので、前輪2L、2Rのそれぞれのキングピン軸KPL、KPRの位置、前輪2L、2Rの操向角を互いに独立して設定することもできる。
【0050】
以上に説明したステアリング装置1A〜1Cでは、一対のアーム機構5L、5R又は30L、30Rによって車輪取付部3を支持しているが、アーム機構を上下に二組設けることにより、車輪取付部を4本のアームで支持してもよい。図1又は図6のアーム機構5L、5Rを上下二組配置した例を図15に示す。この例では、スピンドル4L、4Rを挟んで車輪取付部3L、3Rの上下にアーム機構5L、5Rが配置され、それらのアーム7、8が車輪取付部3L、3Rの上下に連結され、かつ上下のアーム機構5に対してアーム駆動機構6も別々に設けられている。この場合、上下のアーム機構を互いに等しく動作させてもよいが、互いに異なる動作を上下のアーム駆動機構に与えてもよい。上下のアーム機構を別々に駆動する場合には、トー角やキャスタ角を変化させることができる。但し、連結点HLf、HLr、HRf、HRrのそれぞれには球面軸受等を配置して、前アーム7及び後アーム8のそれぞれと車輪取付部3とを鉛直軸線周りのみならず3次元方向に相対回転可能に連結する必要がある。第3の形態のステアリング装置1Cに関しても、図15と同様にアーム機構30L、30R及びアーム駆動機構31を上下二組ずつ配置してもよい。上記の形態では、前後のアームの延長線の交点IL、IRを前輪2L、2Rの接地中心VL、VRよりも左右方向外側に置いているが、交点IL、IRを接地中心VL、VRよりも左右方向内側に配置した場合にはアームの駆動に対する前輪の挙動が上記の各形態とは逆になる。
【0051】
本発明は上述した形態に限ることなく、種々の形態にて実施してよい。例えば、本発明は乗用車に限らず、各種の車両のステアリング装置に適用可能であり、前輪以外の車輪に適用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の形態に係るステアリング装置の直進時の状態を示す図。
【図2】第1の形態に係るステアリング装置の左旋回時の状態を示す図。
【図3A】左旋回時の前輪と車体との関係を示す図。
【図3B】右旋回時の前輪と車体との関係を示す図。
【図4】第1の形態のステアリング装置における制御系のブロック図。
【図5】図4のコントローラが実行するステアリング制御ルーチンを示すフローチャート。
【図6】本発明の第2の形態に係るステアリング装置の直進時の状態を示す図。
【図7】第2の形態に係るステアリング装置の左旋回時の状態を示す図。
【図8】第2の形態のステアリング装置における制御系のブロック図。
【図9】図8のコントローラが実行するステアリング制御ルーチンを示すフローチャート。
【図10】本発明の第3の形態に係るステアリング装置の直進時の状態を示す図。
【図11】第3の形態に係るステアリング装置の左旋回時の状態を示す図。
【図12】アーム駆動部の一例を示す図。
【図13】第3の形態のステアリング装置における制御系のブロック図。
【図14】図13のコントローラが実行するステアリング制御ルーチンを示すフローチャート。
【図15】アーム機構を上下に二組設けた例を示す図。
【符号の説明】
【0053】
1A、1B、1C ステアリング装置
2L、2R 前輪
3L、3R 車輪取付部
4L、4R スピンドル
5L、5R アーム機構
6 アーム駆動機構
7L、7R 前アーム
8L、8R 後アーム
10 アーム操作部
11 第1回転体
12 第2回転体
13 ギア機構(回転角規定手段)
20 ステアリングコントローラ(ステアリング制御手段)
21 第1回転体駆動部
22 第2回転体駆動部
24 操舵角センサ
27L、27R アーム駆動部(回転角規定手段)
30L、30R アーム機構
31 アーム駆動機構
32L、32R 前アーム
32a チューブ
32b ロッド
33L、33R 後アーム
33a チューブ
33b ロッド
34 支持部材
35L、35R、36L、36R アクチュエータ
37L、37R 前アーム駆動部
38L、38R 後アーム駆動部
BD 車体
HLf、HLr、HRf、HRr 連結点
KPL、KPR キングピン軸




 

 


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