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発明の名称 自動車およびその制御方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−8192(P2007−8192A)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
出願番号 特願2005−187863(P2005−187863)
出願日 平成17年6月28日(2005.6.28)
代理人 【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
発明者 奥田 弘一 / 太田 隆史 / 田畑 満弘
要約 課題
スリップが発生した際の運転フィーリングをより向上させる。

解決手段
前軸に動力を出力可能なエンジンとエンジンに取り付けられたオルタネータからの発電電力を用いて後軸に動力を出力可能なモータとを備える自動車において、前輪にスリップが発生したときにスリップ率が許容スリップ率λrefとなるよう前軸に出力されるフロントトルク指令Tf*を制限すると共に要求トルクTdrv*に対して不足分のトルクをリアトルク指令Tr*に設定してエンジンとモータとを制御するスリップ抑制制御を実行し、スリップ抑制制御を実行している最中にアクセルペダルが踏み戻されない等の運転者がより大きなスリップ率での定常走行を要求しているときには大きくなる方向に許容スリップ率λrefを変更する。これにより、運転者のアクセル操作に応じた許容スリップ率λrefで走行することができるから、運転フィーリングをより向上できる。
特許請求の範囲
【請求項1】
自動車であって、
第1の車軸に動力を出力可能な第1の動力出力手段と、
前記第1の車軸とは異なる第2の車軸に動力を出力可能な第2の動力出力手段と、
運転者のアクセル操作に基づいて要求駆動力を設定する要求駆動力設定手段と、
前記第1の車軸に連結された車輪の空転によるスリップの程度を検出するスリップ程度検出手段と、
通常時には前記設定された要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう前記第1の動力出力手段と前記第2の動力出力手段とを制御し、前記車輪の空転によるスリップが発生した際には前記スリップ程度検出手段により検出されるスリップの程度が所定の許容スリップ程度に抑制されるよう前記第1の動力出力手段から出力される動力を制限すると共に前記設定された要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう該第1の動力出力手段と前記第2の動力出力手段とを制御するスリップ抑制制御を実行する制御手段と、
前記スリップ抑制制御が実行されている最中の運転者のアクセル操作に基づいて前記許容スリップ程度を変更する許容スリップ程度変更手段と
を備える自動車。
【請求項2】
前記許容スリップ程度変更手段は、アクセル戻しの操作がなされなかったときを条件の一つとして大きくなる方向に前記許容スリップ程度を変更する手段である請求項1記載の自動車。
【請求項3】
前記許容スリップ程度変更手段は、運転者のアクセル操作が大きな駆動力の出力を要求する操作でないときを条件の一つとして大きくなる方向に前記許容スリップ程度を変更する手段である請求項2記載の自動車。
【請求項4】
前記許容スリップ程度変更手段は、前記スリップ抑制制御の実行が開始されてから所定時間に亘って前記条件が成立しているときに前記許容スリップ程度を変更する手段である請求項2または3記載の自動車。
【請求項5】
前記許容スリップ程度変更手段は、時間の経過と共に徐々に大きくなるよう前記許容スリップ程度を変更する手段である請求項2ないし4いずれか記載の自動車。
【請求項6】
前記許容スリップ程度変更手段は、前記許容スリップ程度を変更している最中にアクセル戻しの操作がなされたときには該変更を停止する手段である請求項2ないし5いずれか記載の自動車。
【請求項7】
請求項1ないし6いずれか記載の自動車であって、
前記許容スリップ程度変更手段により許容スリップ程度が変更されたとき、該変更に係る許容スリップ程度を記憶する記憶手段を備え、
前記制御手段は、次回以降に前記車輪の空転によるスリップが発生した際には前記スリップ程度検出手段により検出されるスリップの程度が前記記憶された許容スリップ程度に抑制されるよう前記第1の動力出力手段を制御する手段である
自動車。
【請求項8】
運転者の交代が予測される所定の条件が成立したときには前記記憶された許容スリップ程度を初期化する初期化手段を備える請求項7記載の自動車。
【請求項9】
前記所定の条件は、運転席の座面付近に取り付けられた重量検出手段により検出された重量に所定の変化が生じたときに成立する条件である請求項8記載の自動車。
【請求項10】
前記所定の条件は、イグニッションスイッチがオンからオフ又はオフからオンされたときに成立する条件である請求項8または9記載の自動車。
【請求項11】
請求項8ないし10いずれか記載の自動車であって、
前記第1の動力出力手段は、前記第1の車軸に動力を出力可能な内燃機関を備え、
前記所定の条件は、前記内燃機関がアイドリング運転または停止された状態が所定時間以上継続したときに成立する条件である
自動車。
【請求項12】
前記制御手段は、前記スリップ抑制制御として前記検出されたスリップの程度と前記許容スリップ程度とに基づいて上限駆動力を設定し、該設定した上限駆動力を上限として前記設定された要求駆動力に基づく駆動力が前記第1の車軸に出力されるよう前記第1の動力出力手段を制御すると共に該第1の車軸に出力される駆動力では前記要求駆動力に対して不足する駆動力が前記第2の車軸に出力されるよう前記第2の動力出力手段を制御する手段である請求項1ないし11いずれか記載の自動車。
【請求項13】
前記第2の動力出力手段は、前記第1の動力出力手段からの動力を用いて電力の変換を伴って前記第2の車軸に動力を出力可能な手段である請求項1ないし12いずれか記載の自動車。
【請求項14】
請求項13記載の自動車であって、
前記第1の動力出力手段は、前記第1の車軸に動力を出力可能な内燃機関と、該内燃機関からの動力を用いて発電する発電機とを備える手段であり、
前記第2の動力出力手段は、前記第2の車軸に動力を出力可能な電動機を備える手段であり、
前記発電機は、前記電動機に供給可能な電力を発電する
自動車。
【請求項15】
第1の車軸に動力を出力可能な第1の動力出力手段と、前記第1の車軸とは異なる第2の車軸に動力を出力可能な第2の動力出力手段と、を備える自動車の制御方法であって、
(a)運転者のアクセル操作に基づいて要求駆動力を設定し、
(b)前記第1の車軸に連結された車輪の空転によるスリップの程度を検出し、
(c)通常時には前記設定された要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう前記第1の動力出力手段と前記第2の動力出力手段とを制御し、前記車輪の空転によるスリップが発生した際には前記スリップ程度検出手段により検出されるスリップの程度が所定の許容スリップ程度に抑制されるよう前記第1の動力出力手段から出力される動力を制限すると共に前記設定された要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう該第1の動力出力手段と前記第2の動力出力手段とを制御するスリップ抑制制御を実行し、
(d)前記スリップ抑制制御が実行されている最中の運転者のアクセル操作に基づいて前記許容スリップ程度を変更する
自動車の制御方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動車としては、前輪を駆動するエンジンと、エンジンに取り付けられた発電機と、後輪を駆動するモータと、発電機およびモータと電力をやり取りするバッテリとを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この自動車では、前輪にスリップが生じたとき発電機の発電量を増大させて前輪を駆動する駆動力を低減すると共にスリップ量に応じてモータから駆動力を出力して後輪を駆動している。
【特許文献1】特開2001−234774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した自動車では、発生したスリップを抑制させる際に運転者に違和感を与える場合が生じる。タイヤの前後方向のグリップ力は通常ある程度の滑りを伴う方が大きくなるから、運転者によってはアクセルペダルの操作によりスリップの程度を調節しながら走行したいと考える場合もある。このため、一律にスリップを確実に抑制するために駆動力を大きく低減させると、運転者に違和感を与え運転フィーリングを損なう場合がある。また、前輪を駆動するエンジンからの動力を用いて発電して後輪を駆動するモータに供給する発電機を備えるタイプの自動車では、エンジンからの動力の一部を電力に変換してこれをモータに供給して後輪を駆動するからエンジンからの動力のすべてを用いて前輪を駆動するものに比してエネルギ効率が悪くなる。
【0004】
本発明の自動車およびその制御方法は、スリップが発生したときに運転者に違和感を与えることなくスリップを抑制することを目的の一つとする。また、本発明の自動車およびその制御方法は、発生したスリップを抑制させる際のエネルギ効率をより向上させることを目的の一つとする。さらに、本発明の自動車およびその制御方法は、スリップが発生してときでも要求駆動力に対応することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の自動車およびその制御方法は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の自動車は、
自動車であって、
第1の車軸に動力を出力可能な第1の動力出力手段と、
前記第1の車軸とは異なる第2の車軸に動力を出力可能な第2の動力出力手段と、
運転者のアクセル操作に基づいて要求駆動力を設定する要求駆動力設定手段と、
前記第1の車軸に連結された車輪の空転によるスリップの程度を検出するスリップ程度検出手段と、
通常時には前記設定された要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう前記第1の動力出力手段と前記第2の動力出力手段とを制御し、前記車輪の空転によるスリップが発生した際には前記スリップ程度検出手段により検出されるスリップの程度が所定の許容スリップ程度に抑制されるよう前記第1の動力出力手段から出力される動力を制限すると共に前記設定された要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう該第1の動力出力手段と前記第2の動力出力手段とを制御するスリップ抑制制御を実行する制御手段と、
前記スリップ抑制制御が実行されている最中の運転者のアクセル操作に基づいて前記許容スリップ程度を変更する許容スリップ程度変更手段と
ことを要旨とする。
【0007】
この本発明の自動車では、運転者のアクセル操作に基づいて要求駆動力を設定し、第1の車軸に連結された車輪の空転によるスリップの程度を検出し、通常時には要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう第1の車軸に動力を出力可能な第1の動力出力手段と第1の車軸とは異なる第2の車軸に動力を出力可能な第2の動力出力手段とを制御し、第1の車軸に連結された車輪の空転によるスリップが発生した際にはスリップの程度が所定の許容スリップ程度に抑制されるよう第1の動力出力手段から出力される動力を制限すると共に要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう第1の動力出力手段と第2の動力出力手段とを制御するスリップ抑制制御を実行し、スリップ抑制制御が実行されている最中の運転者のアクセル操作に基づいて許容スリップ程度を変更する。したがって、運転者のアクセル操作に基づいて許容スリップ程度を変更するから、スリップが発生したときに運転者に違和感を与えることなくスリップを抑制することができる。もとより、スリップが発生してときでも要求駆動力に対応することができる。
【0008】
こうした本発明の自動車において、前記許容スリップ程度変更手段は、前記スリップ抑制制御の実行が開始されてから所定時間に亘ってアクセル戻しの操作がなされなかったときを条件の一つとして大きくなる方向に前記許容スリップ程度を変更する手段であるものとすることもできる。スリップが発生したにも拘わらずアクセル戻しの操作がなされないときは運転者がスリップを許容した走行を要求していると考えられるから、許容スリップ程度を大きくなる方向に変更することにより運転フィーリングをより向上させることができる。この態様の本発明の自動車において、前記許容スリップ程度変更手段は、運転者のアクセル操作が大きな駆動力の出力を要求する操作でないときを条件の一つとして大きくなる方向に前記許容スリップ程度を変更する手段であるものとすることもできる。これらの場合、前記許容スリップ程度変更手段は、前記スリップ抑制制御の実行が開始されてから所定時間に亘って前記条件が成立しているときに前記許容スリップ程度を変更する手段であるものとすることもできる。こうすれば、条件の成立をより適切に判定することができる。さらにこれらの場合、前記許容スリップ程度変更手段は、時間の経過と共に徐々に大きくなるよう前記許容スリップ程度を変更する手段であるものとすることもできる。こうすれば、許容スリップ程度を変更する際のショックを抑制することができる。またこれらの場合、前記許容スリップ程度変更手段は、前記許容スリップ程度を変更している最中にアクセル戻しの操作がなされたときには該変更を停止する手段であるものとすることもできる。許容スリップ程度を変更している最中にアクセル戻しの操作がなされたときにはスリップの程度をこれ以上大きくさせないで走行することを要求していると考えられるから、許容スリップ程度の変更を停止することにより予期しない大きなスリップが生じるのを抑制することができる。
【0009】
また、本発明の自動車において、前記許容スリップ程度変更手段により許容スリップ程度が変更されたとき、該変更に係る許容スリップ程度を記憶する記憶手段を備え、前記制御手段は、次回以降に前記車輪の空転によるスリップが発生した際には前記スリップ程度検出手段により検出されるスリップの程度が前記記憶された許容スリップ程度に抑制されるよう前記第1の動力出力手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、次回以降にスリップが発生した際には直ちに運転者に要求にあう許容スリップ程度をもってスリップ抑制制御を実行することができる。この場合、運転者の交代が予測される所定の条件が成立したときには前記記憶された許容スリップ程度を初期化する初期化手段を備えるものとすることもできる。こうすれば、運転者の交代にも対応することができる。ここで、所定の条件は、運転席の座面付近に取り付けられた重量検出手段により検出された重量に所定の変化が生じたときに成立する条件であるものとすることもできるし、イグニッションスイッチがオンからオフ又はオフからオンされたときに成立する条件であるものとすることもできるし、前記第1の動力出力手段は、前記第1の車軸に動力を出力可能な内燃機関を備え、前記所定の条件は、前記内燃機関がアイドリング運転または停止された状態が所定時間以上継続したときに成立する条件であるものとすることもできる。
【0010】
さらに、本発明の自動車において、前記制御手段は、前記スリップ抑制制御として前記検出されたスリップの程度と前記許容スリップ程度とに基づいて上限駆動力を設定し、該設定した上限駆動力を上限として前記設定された要求駆動力に基づく駆動力が前記第1の車軸に出力されるよう前記第1の動力出力手段を制御すると共に該第1の車軸に出力される駆動力では前記要求駆動力に対して不足する駆動力が前記第2の車軸に出力されるよう前記第2の動力出力手段を制御する手段であるものとすることもできる。
【0011】
また、本発明の自動車において、前記第2の動力出力手段は、前記第1の動力出力手段からの動力を用いて電力の変換を伴って前記第2の車軸に動力を出力可能な手段であるものとすることもできる。こうすれば、許容スリップ程度の変更により電力の変換の程度を調整できるから、エネルギ効率をより向上させることが可能となる。この場合、前記第1の動力出力手段は、前記第1の車軸に動力を出力可能な内燃機関と、該内燃機関からの動力を用いて発電する発電機とを備える手段であり、前記第2の動力出力手段は、前記第2の車軸に動力を出力可能な電動機を備える手段であり、前記発電機は、前記電動機に供給可能な電力を発電するものとすることもできる。
【0012】
本発明の自動車の制御方法は、
第1の車軸に動力を出力可能な第1の動力出力手段と、前記第1の車軸とは異なる第2の車軸に動力を出力可能な第2の動力出力手段と、を備える自動車の制御方法であって、
(a)運転者のアクセル操作に基づいて要求駆動力を設定し、
(b)前記第1の車軸に連結された車輪の空転によるスリップの程度を検出し、
(c)通常時には前記設定された要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう前記第1の動力出力手段と前記第2の動力出力手段とを制御し、前記車輪の空転によるスリップが発生した際には前記スリップ程度検出手段により検出されるスリップの程度が所定の許容スリップ程度に抑制されるよう前記第1の動力出力手段から出力される動力を制限すると共に前記設定された要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう該第1の動力出力手段と前記第2の動力出力手段とを制御するスリップ抑制制御を実行し、
(d)前記スリップ抑制制御が実行されている最中の運転者のアクセル操作に基づいて前記許容スリップ程度を変更する
ことを要旨とする。
【0013】
この本発明の自動車の制御方法によれば、運転者のアクセル操作に基づいて要求駆動力を設定し、第1の車軸に連結された車輪の空転によるスリップの程度を検出し、通常時には要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう第1の車軸に動力を出力可能な第1の動力出力手段と第1の車軸とは異なる第2の車軸に動力を出力可能な第2の動力出力手段とを制御し、第1の車軸に連結された車輪の空転によるスリップが発生した際にはスリップの程度が所定の許容スリップ程度に抑制されるよう第1の動力出力手段から出力される動力を制限すると共に要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう第1の動力出力手段と第2の動力出力手段とを制御するスリップ抑制制御を実行し、スリップ抑制制御が実行されている最中の運転者のアクセル操作に基づいて許容スリップ程度を変更する。したがって、運転者のアクセル操作に基づいて許容スリップ程度を変更するから、スリップが発生したときに運転者に違和感を与えることなくスリップを抑制することができる。もとより、スリップが発生してときでも要求駆動力に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、4輪駆動により走行可能な自動車であり、エンジン22からの動力をトルクコンバータ25やCVT50,ギヤ機構65を介して前軸64に出力して前輪63a,63bを駆動する前輪駆動系と、モータ40からの動力をギヤ機構68を介して後軸67に出力して後輪66a,66bを駆動する後輪駆動系と、装置全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。トルクコンバータ25とCVT50との間にはクラッチC1が設けられており、エンジン22をCVT50側から切り離すことができるようになっている。ハイブリッド自動車20は、この他に、エンジン22からの動力を用いてCVT50やクラッチC1のライン油圧を発生させる機械式オイルポンプ26や低圧バッテリ35から電力の供給を受けてCVT50やクラッチC1のライン圧を発生させる電動オイルポンプ36を備える。
【0016】
エンジン22は、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン22のクランクシャフト23には、オルタネータ32や機械式オイルポンプ26がベルト24により取り付けられている。エンジン22の運転制御、例えば燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などは、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)29により行なわれている。エンジンECU29は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0017】
モータ40は、発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41を介して高圧バッテリ31と電力をやり取りしたりオルタネータ32から電力の供給を受ける。モータ40は、モータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)42により駆動制御されている。モータECU42には、モータ40を駆動制御するために必要な信号、例えばモータ40の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータ40に印加される相電流などが入力されている。モータECU42は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってインバータ41へのスイッチング制御信号を出力することによりモータ40を駆動制御すると共に必要に応じてモータ40の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0018】
高圧バッテリ31は、定格電圧Vh(例えば42[V])の二次電池として構成されており、オルタネータ32から供給された電力を蓄電すると共にモータ40と電力をやり取りする。低圧バッテリ35は、定格電圧Vhよりも低い定格電圧Vl(例えば12[V]程度)の二次電池として構成されており、オルタネータ32からDC/DCコンバータ34を介して供給された電力を蓄電すると共に図示しない補機などの低電圧で作動する機器に電力を供給する。DC/DCコンバータ34は、直流電力を異なる電圧の直流電力に変換する通常のDC/DCコンバータとして構成されており、必要に応じてオルタネータ32からの発電電力を低電圧に変換して低圧バッテリ35に供給する。高圧バッテリ31および低圧バッテリ35,DC/DCコンバータ34は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)30によって管理されている。バッテリECU30には、高圧バッテリ31や低圧バッテリ35を管理するのに必要な信号、例えば、図示しないセンサによって検出された両バッテリの端子間電圧や,充放電電流,電池温度などが入力されており、必要に応じて両バッテリの状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、バッテリECU30では、高圧バッテリ31や低圧バッテリ35を管理するために充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)も演算している。
【0019】
CVT50は、溝幅が変更可能でインプットシャフト51に接続されたプライマリープーリー53と、同じく溝幅が変更可能で駆動軸としてのアウトプットシャフト52に接続されたセカンダリープーリー54と、プライマリープーリー53およびセカンダリープーリー54の溝に架けられたベルト55と、プライマリープーリー53およびセカンダリープーリー54の溝幅を変更する第1アクチュエータ56および第2アクチュエータ57とを備え、第1アクチュエータ56および第2アクチュエータ57を用いてプライマリープーリー53およびセカンダリープーリー54の溝幅を変更することによりインプットシャフト51の動力を無段階に変速してアウトプットシャフト52に出力する。ここで、第1アクチュエータ56は変速比の制御に用いられ、第2アクチュエータ57はCVT50の伝達トルク容量を調節するためのベルト55の狭圧力の制御に用いられる油圧式のアクチュエータとして構成されている。CVT50の変速制御は、CVT用電子制御ユニット(以下、CVTECUという)59により行なわれている。CVTECU59には、インプットシャフト51に取り付けられた回転数センサ61からのインプットシャフト51の回転数Npやアウトプットシャフト52に取り付けられた回転数センサ62からのアウトプットシャフト52の回転数Nsなどトルクコンバータ25に取り付けられた回転数センサ25aからのタービン回転数Ntなどが入力されている。CVTECU59からは第1アクチュエータ56および第2アクチュエータ57への駆動信号やクラッチC1のアクチュエータ90への駆動信号などが出力されている。また、CVTECU59は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってCVT50の変速比を制御すると共に必要に応じてCVT50の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0020】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号や,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ87からの車速V,前輪63a,63bおよび後輪66a,66bに各々取り付けられた車輪速センサ88a〜88dからの車輪速Vfr,Vfl,Vrr,Vrl,運転席の座面に取り付けられて重量を感知するシートスイッチ89からのシートスイッチ信号SWなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70からは、オルタネータ32への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。また、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、エンジンECU29やバッテリECU30,モータECU42,CVTECU59と各種制御信号やデータのやり取りを行なっている。
【0021】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者のアクセル操作に応じて、主としてエンジン22からの動力を前輪に出力して走行し、必要に応じてモータ40からの動力を後輪に出力して4輪駆動により走行する。4輪駆動により走行する場合の例としては、例えばアクセルペダル83が大きく踏み込まれた急加速時や車輪がスリップしたときなどがあげられる。また、走行中にブレーキペダル85が踏み込まれたときなどの減速時には、クラッチC1の接続を解除しエンジン22をCVT50から切り離した状態でエンジン22を停止すると共にモータ40を回生制御して後輪66a,66bに制動力を付与すると共にその運動エネルギを電力に変換して高圧バッテリ31に回収する。
【0022】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に、前輪63a,63bにスリップが発生した際の動作について説明する。図2は、実施例のハイブリッド自動車20のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートであり、図3は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により図2の駆動制御ルーチンと並行して実行され駆動制御ルーチンに用いられる許容スリップ率λrefを設定する許容スリップ率設定ルーチンの一例を示すフローチャートである。これらのルーチンは、共に所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。以下、まず、図2の駆動制御ルーチンについて説明し、その後、図3の許容スリップ率設定ルーチンについて説明する。
【0023】
駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ87からの車速V,車輪速センサ88a〜88dからの車輪速Vfr,Vfl,Vrr,Vrl,許容スリップ率設定ルーチンにより設定された許容スリップ率λrefなどの制御に必要なデータを入力する処理を行なう(ステップS100)。
【0024】
データを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両に要求される要求トルクTdrv*を設定する(ステップS110)。ここで、要求トルクTdrv*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTdrv*との関係を予め求めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶しているマップから対応する要求トルクTdrv*を導出することにより設定するものとした。要求トルク設定用マップの一例を図4に示す。
【0025】
次に、入力した車輪速Vfr,Vfl,Vrr,Vrlに基づいて次式(1)によりスリップ率λを計算する(ステップS120)。ここで、式(1)中の「Vmax」は前輪63a,63bの車輪速Vfr,Vflのうちの最大値を示し、「Vlow」は、車輪速Vfr,Vfl,Vrr,Vrlのうちの最小値を示す。スリップ率λを計算すると、計算したスリップ率λと入力した許容スリップ率λrefとを比較する(ステップS130)。即ち、前輪63a,63bにスリップが発生しているか否かを判定する。
【0026】
λ=(Vmax−Vlow)/Vlow (1)
【0027】
スリップ率λが許容スリップ率λref以下と判定されると、スリップの発生を示すスリップ発生フラグFslipが値1か否かを判定し(ステップS140)、スリップ発生フラグFslipが値1でない即ち値0と判定されると、スリップは発生していないと判断して、スリップ発生フラグFslipに値0を設定すると共に(ステップS150)、前軸64に出力してもよいトルクの上限としてのトルク上限値Tfmaxに前軸64に出力可能な最大フロントトルクを設定する(ステップS160)。
【0028】
トルク上限値Tfmaxを設定すると、要求トルクTdrv*と設定したトルク上限値Tfmaxとを比較して(ステップS210)、要求トルクTdrv*がトルク上限値Tfmax以下と判定されたときには要求トルクTdrv*を前軸64に出力すべきフロントトルク指令Tf*に設定すると共に(ステップS220)値0をリアトルク指令Tr*に設定し(ステップS230)、要求トルクTdrv*がトルク上限値Tfmaxよりも大きいと判定されたときにはトルク上限値Tfmaxをフロントトルク指令Tf*に設定すると共に(ステップS240)要求トルクTdrv*からトルク上限値Tfmaxを減じた値をリアトルク指令Tr*に設定する(ステップS250)。即ち、要求トルクTdrv*のうちトルク上限値Tfmaxを上限としてエンジン22から前軸64にトルクを出力すると共に前軸64に出力するトルクでは要求トルクTdrv*に対して不足するトルクをモータ40から後軸67に出力するのである。
【0029】
こうしてフロントトルク指令Tf*とリアトルク指令Tr*とが設定されると、フロントトルク指令Tf*をエンジンECU29やCVTECU59に送信すると共にリアトルク指令Tr*をモータECU42に送信して(ステップS260)、本ルーチンを終了する。フロントトルク指令Tf*を受信したエンジンECU29やCVTECU59は、フロントトルク指令Tf*に見合うトルクが前軸64に出力されるようエンジン22やCVT50の制御を行ない、リアトルク指令Tr*を受信したモータECU42は、リアトルク指令Tr*に見合うトルクが後軸67に出力されるようインバータ41のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。なお、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、必要に応じてオルタネータ32の制御も行なう。
【0030】
ステップS130でスリップ率λが許容スリップ率λrefよりも大きいと判定されると、スリップの発生を示すフラグとしてのスリップ発生フラグFslipに値1を設定すると共に(ステップS170)、前回このルーチンで設定したトルク上限値(前回Tfmax)から所定トルクT1だけ減じた値を新たなトルク上限値Tfmaxに設定して(ステップS180)、ステップS210以降の処理を行なって本ルーチンを終了する。一方、ステップS130でスリップ率λが許容スリップ率λref以下と判定され且つステップS140でスリップ発生フラグFslipが値1と判定されたときにはその状態が所定時間(例えば、1秒)継続したか否かを判定し(ステップS190)、所定時間継続していないと判定されたときには未だ発生したスリップは収束していないと判断して前回Tfmaxから所定トルクT2だけ加えた値を新たなトルク上限値Tfmaxに設定し(ステップS200)、ステップS210以降の処理を行なって本ルーチンを終了する。このように、スリップ率λが許容スリップ率λrefよりも大きいとトルク上限値Tfmaxを所定トルクT1ずつ徐々に小さくし、スリップ率λが許容スリップ率λref以下となるとトルク上限値Tfmaxを所定トルクT2ずつ徐々に大きくすることにより、スリップが発生したときのスリップ率λを許容スリップ率λrefに抑制するのである。ここで、所定トルクT1,T2は、ステップS240,S250で設定されるフロントトルク指令Tf*やリアトルク指令Tr*が急変することによるトルクショックを抑制するために定められるものである。
【0031】
一方、スリップ率λが許容スリップ率λref以下となってから所定時間継続したと判定されたときには発生したスリップは収束したと判断してスリップ発生フラグFslipに値0を設定すると共に(ステップS150)、トルク上限値Tfmaxに最大フロントトルクを設定し(ステップS160)、ステップS210以降の処理を行なって本ルーチンを終了する。
【0032】
次に、図3の許容スリップ率設定ルーチンについて説明する。許容スリップ率設定ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、図2の駆動制御ルーチンで設定されているスリップ発生フラグFslipが値0か否か(ステップS300)、前回に駆動制御ルーチンで設定されていた前回のスリップ発生フラグFslipが値0か否か(ステップS310)、をそれぞれ判定する。スリップ発生フラグFslipと前回のスリップ発生フラグFslipとが共に値0と判定されたときには、初期許容スリップ率λiniを入力し(ステップS330)、入力した初期許容スリップ率λiniを許容スリップ率λrefに設定して(ステップS340)、本ルーチンを終了する。ここで、初期許容スリップ率λiniは、RAM76の所定領域に記憶されているデータを読み込むことにより入力するものとし、本ルーチンが初めて実行されたときには初期値として値0.1などの比較的低いスリップ率を記憶するものとした。したがって、この場合、図2の駆動制御ルーチンでは、スリップが発生したときにはスリップ率λが比較的低いスリップ率となるようトルク上限値Tfmaxが設定されて前軸64に出力するトルクが制限されることになる。
【0033】
ステップS300でスリップ発生フラグFslipが値0でない即ちスリップが発生していると判定されると、フラグFの値を調べる(ステップS340)。ここで、フラグFは、本ルーチンが初めて実行されたときに図示しない初期化ルーチンにより値0が設定される。フラグFが値0と判定されたときには駆動制御ルーチンで設定された要求トルクTdrv*がトルク上限値Tfmaxよりも大きいか否か,アクセル開度Accの前回値から今回値を減じた値(前回Acc−Acc)が所定値ΔAref(例えば10%)未満であるか否か,アクセル開度Accが所定開度Aref(例えば90%)未満であるか否かを判定する(ステップS350)。要求トルクTdrv*がトルク上限値Tfmaxよりも大きいか否かの判定はスリップ発生により前軸64に出力されるトルクが制限されているか否かの判定となり、アクセル開度Accの前回値から今回値を減じた値が所定値ΔAref未満であるか否かの判定はスリップ発生時にアクセルペダル83が踏み戻されていないか否かの判定となり、アクセル開度Accが所定開度Aref未満であるか否かの判定はスリップ発生時にアクセルペダル83が過剰に踏み込まれていないか否かの判定となる。したがって、上述の各判定は、スリップが発生しているときに運転者がより大きなスリップ率で定常走行することを要求しているか否かの判定となる。これらの判定のうちいずれもが肯定的に判定されると、それが所定時間(例えば1秒)継続したか否かを判定する(ステップS360)。ステップS350の各判定のうちいずれかで否定的な判定がなされたりステップS350の各判定のうちのいずれもで肯定的な判定がなされていてもそれが所定時間継続していないと判定されると、運転者がより大きなスリップ率で定常走行することを要求していないか未だその要求を判定するタイミングにないと判断して、前回このルーチンで設定された許容スリップ率(前回λref)をそのまま今回の許容スリップ率λrefに設定して(ステップS370)、本ルーチンを終了する。一方、ステップS350の各判定のうちのいずれもで肯定的な判定がなされ且つそれが所定時間継続したと判定されると、フラグFに値1を設定すると共に(ステップS380)、前回このルーチンで設定された許容スリップ率(前回λref)から所定値λ1だけ加えた値を新たな許容スリップ率λrefに設定して(ステップS390)、本ルーチンを終了する。以降、本ルーチンが実行されたときにステップS340でフラグFは値1と判定されるから、要求トルクTdrv*がトルク上限値Tfmax以下となるか、アクセル開度Accの前回値から今回値を減じた値が所定値ΔAref以上すなわちアクセルペダル83が踏み戻されるまで(ステップS400,S410)、許容スリップ率λrefを所定値λ1ずつ徐々に大きくし(S390)、要求トルクTdrv*がトルク上限値Tfmax以下となったりアクセルペダル83が踏み戻されたときに許容スリップ率λrefを前回λrefに保持して(ステップS370)、本ルーチンを終了する。このように、基本的には、スリップが発生していても運転者がアクセルペダル83を踏み戻さないときに、アクセルペダル83が踏み戻されるまで許容スリップ率λrefを所定値λ1ずつ大きく設定していくことにより、運転者が希望するスリップ率で前輪63a,63bをスリップさせた状態で走行することができるのである。ここで、所定値λ1は、許容スリップ率λrefの急変を抑制するために定められている。
【0034】
こうして設定された許容スリップ率λrefに基づく図2の駆動制御ルーチンにおける処理によりスリップ率λが許容スリップ率λref以下となって所定時間継続すると、スリップ発生フラグFslipが値1から値0に設定されるから、ステップS300で今回のスリップ発生フラグFslipが値0と判定されると共にステップS310で前回のスリップ発生フラグFslipが値1と判定され、次に、許容スリップ率λrefが変更されたか否か即ちステップS390が実行されたか否かを判定する(ステップS420)。許容スリップ率λrefが変更されていないと判定されるとステップS320に進んで初期許容スリップ率λiniを入力すると共に(ステップS320)、入力した初期許容スリップ率λiniを許容スリップ率λrefに設定して(ステップS330)、本ルーチンを終了し、許容スリップ率λrefが変更されていると判定されると、フラグFに値0を設定し(ステップS430)、前回このルーチンで設定された許容スリップ率(前回λref)から所定値λ2を減じた値を初期許容スリップ率λiniに設定すると共にRAM76の所定領域に格納し(ステップS440)、設定した初期許容スリップ率λiniを許容スリップ率λrefに設定して(ステップS330)、本ルーチンを終了する。このように、運転者のアクセルペダル83の操作によって変更された許容スリップ率λrefは、スリップが発生した際に運転者が要求するスリップ率に近いものと考えられることから、これよりも若干小さい値(所定値λ2を減じた値)を初期許容スリップ率λiniとして更新するのである。なお、初期許容スリップ率λiniの格納は、RAM76の所定領域に書き込まれている初期許容スリップ率λiniを上書きすることにより行なわれる。
【0035】
次に、こうした更新される初期許容スリップ率λiniを初期化する処理について説明する。図5は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される初期化ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、図2の駆動制御ルーチンや図3の許容スリップ率設定ルーチンと並行して所定時間毎(例えば数十msec毎)に繰り返し実行される。
【0036】
初期化ルーチンが実行されると、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号IGやシートスイッチ89からのシートスイッチ信号SWなどのデータを入力し(ステップS500)、入力したイグニッション信号IGがOFFとなったか否か(ステップS510),入力したシートスイッチ信号SWがONからOFFとなったか否か(ステップS520)、をそれぞれ判定する。この処理は、運転者が交代した可能性があるか否かを判定する処理である。イグニッション信号IGがONのままと判定されたりシートスイッチ信号SWがONのままと判定されたときにはそのまま本ルーチンを終了し、イグニッション信号IGがONからOFFとなったりシートスイッチ信号SWがONからOFFとなったと判定されると、運転者が交代した可能性があると判断して、初期許容スリップ率λiniを初期化(実施例では値0.1などの比較的低いスリップ率に設定)して(ステップS530)、本ルーチンを終了する。このように、シートスイッチ信号SWやイグニッション信号IGに基づいて初期許容スリップ率λiniを初期化することにより、図3の許容スリップ率設定ルーチンにより変更された初期許容スリップ率λiniが異なる運転者に適用されるのを防止しているのである。
【0037】
図6に、要求トルクTdrv*とフロントトルク指令Tf*とリアトルク指令Tr*とスリップ率λの時間変化の様子を示す説明図を示す。図示するように、前輪63a,63bにスリップが発生してスリップ率λが許容スリップ率λrefよりも大きくなると(時刻t1)、トルク上限値Tfmaxをもってフロントトルク指令Tf*を制限すると共に(ステップS180,S210,S240)要求トルクTdrv*に対する不足分のトルクをリアトルク指令Tr*に設定することにより(ステップS250)、要求トルクTdrv*に対応しながら前輪63a,63bのスリップを抑制する。そして、要求トルクTdrv*がトルク上限値Tfmaxよりも大きくアクセル開度Accの前回値と今回値との偏差が所定値ΔAref未満でアクセルペダル83が踏み戻されておらず且つアクセル開度Accが所定開度Aref未満でアクセルペダル83が過度に踏み込まれていない状態が所定時間継続すると(時刻t2)、運転者がより大きなスリップ率で定常走行することを要求していると判断し、許容スリップ率λrefを徐々に大きくすることによりトルク上限値Tfmaxを大きくしてフロントトルク指令Tf*の制限を徐々に解除していく(ステップS200,S210,S240)。これにより、フロントトルク指令Tf*が要求トルクTdrv*に対して不足するトルクは小さくなるから、リアトルク指令Tr*は小さくなる(ステップS250)。要求トルクTdrv*がトルク上限値Tfmax以下となったりアクセル開度Accの前回値と今回値との偏差が所定値ΔAref以上となると(時刻t3)、許容スリップ率λrefは保持される。
【0038】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、前輪63a,63bにスリップが発生したときにはスリップ率λが許容スリップ率λref以下で走行するようフロントトルク指令Tf*を設定すると共に設定したフロントトルク指令Tf*では要求トルクTdrv*に対して不足するトルクをリアトルク指令Tr*に設定してスリップ抑制制御を実行し、このスリップ抑制制御が実行されている最中に要求トルクTdrv*がトルク上限値Tfmaxよりも大きくアクセル開度Accの前回値と今回値との偏差が所定値ΔAref未満でアクセルペダル83が踏み戻されておらず且つアクセル開度Accが所定開度Aref未満でアクセルペダル83が過度に踏み込まれていない状態が所定時間継続したときには大きくなる方向に許容スリップ率λrefを変更するから、運転者のアクセルペダル83の操作に応じたスリップ率で走行することができる。この結果、スリップが発生した際の運転フィーリングをより向上させることができる。また、許容スリップ率λrefを大きくすることによりフロントトルク指令Tf*を大きくすると共にリアトルク指令Tr*を小さくすることができるから、エンジン22からの動力がオルタネータ32で一旦電力変換されこの電力を用いてモータ40から動力が出力されることによる電力変換分のエネルギ損失をより小さくすることができ、エネルギ効率をより向上させることができる。もとより、フロントトルク指令Tf*では要求トルクTdrv*に対して不足するトルクをリアトルク指令Tr*に設定して制御するから、スリップの発生に拘わらず要求トルクTdrv*に対応することができる。
【0039】
また、実施例のハイブリッド自動車20によれば、許容スリップ率λrefを変更したときには変更した許容スリップ率λrefに基づいて初期許容スリップ率λiniを設定すると共に格納し、次に前輪63a,63bにスリップが発生したときには格納した初期許容スリップ率λiniを許容スリップ率λrefとしてスリップ抑制制御を実行するから、次回以降の前輪63a,63bにスリップが発生したときに迅速に運転者が要求するスリップ率で走行することができる。しかも、シートスイッチ信号SWやイグニッション信号IGに基づいて運転者の交代が予測されるときには初期許容スリップ率λiniを初期化するから、変更された初期許容スリップ率λiniが異なる運転者に適用されることがない。
【0040】
実施例のハイブリッド自動車20では、前輪63a,63bにスリップが発生したとき、スリップ率λが許容スリップ率λrefよりも大きいときには前回のトルク上限値Tfmaxから所定値T1を減じた値を新たなトルク上限値Tfmaxに設定しスリップ率λが許容スリップ率λref以下のときには前回のトルク上限値Tfmaxに所定値T2を加えた値を新たなトルク上限値Tfmaxに設定するものとしたが、スリップ率λと許容スリップ率λrefとの偏差に基づいてフィードバック制御(比例制御や比例積分制御など)によりトルク上限値Tfmaxを設定するものとしてもよい。
【0041】
実施例のハイブリッド自動車20では、図3の許容スリップ率設定ルーチンのステップS360で要求トルクTdrv*がトルク上限値Tfmaxよりも大きくアクセル開度Accの前回値と今回値との偏差が所定値ΔAref未満で且つアクセル開度Accが所定開度Aref未満となっている状態が所定時間継続したときに許容スリップ率λrefの変更を開始するものとしたが、この所定時間を、ステップS440で初期許容スリップ率λiniに初期値が設定されているときには比較的長い時間(例えば1秒)に設定し、初期許容スリップ率λiniが変更された後は比較的短い時間(例えば0.5秒)に設定するものとしてもよい。
【0042】
実施例のハイブリッド自動車20では、図3の許容スリップ率設定ルーチンにおいて要求トルクTdrv*がトルク上限値Tfmax以下となるかアクセル開度Accの前回値と今回値との偏差が所定値ΔAref以上となるまでステップS390で許容スリップ率λrefを大きくするものとしたが、上限スリップ率(例えば50%)を設けてその範囲内で許容スリップ率λrefを大きくするものとしてもよい。
【0043】
実施例のハイブリッド自動車20では、図5の初期化ルーチンにおいてイグニッション信号IGがONからOFFされたとき又はシートスイッチ信号SWがONからOFFされたときに初期許容スリップ率λiniを初期化するものとしたが、イグニッション信号IGがOFFからONされたとき又はシートスイッチ信号SWがOFFからONされたときに初期許容スリップ率λiniを初期化するものとしてもよい。また、実施例のハイブリッド自動車20では、イグニッション信号IGとシートスイッチ信号SWとに基づいて初期許容スリップ率λiniを初期化するものとしたが、いずれか一方だけに基づいて初期許容スリップ率λiniを初期化するものとしてもよいし、運転者の交代が予測されるものであれば、他の如何なる状態に基づいて初期許容スリップ率λiniを初期化するものとしてもよい。例えば、エンジン22がアイドリング運転とされたり停止されたりした状態が所定時間(例えば30秒)以上継続したときに初期許容スリップ率λiniを初期化するものとしてもよいし、専用のスイッチを設けてそのスイッチがONされたときに初期許容スリップ率λiniを初期化するものとしても構わない。
【0044】
実施例のハイブリッド自動車20では、図3の許容スリップ率設定ルーチンのステップS390により許容スリップ率λrefが変更されたときには、変更された許容スリップ率λrefに基づいて初期許容スリップ率λiniを更新するものとしたが、初期許容スリップ率λiniを更新しないものとしても差し支えない。この場合、図5の初期化ルーチンは実行しないものとしてもよい。
【0045】
実施例のハイブリッド自動車20では、前輪駆動系をエンジン22とトルクコンバータ25とCVT50とにより構成したが、前輪駆動系をエンジン22とトルクコンバータ25と有段変速機とにより構成するものとしてもよいし、前輪駆動系をエンジン22と遊星歯車と二つのモータとにより構成するものとしてもよいし、その他、エンジン22とモータ40との動力により走行するいかなる構成としても差し支えない。また、前輪駆動系と後輪駆動系をいずれもモータにより構成するものとしても差し支えない。また、実施例のハイブリッド自動車20では、前輪駆動系をエンジン22とトルクコンバータ25とCVT50とにより構成すると共に後輪駆動系をモータ40により構成したが、逆に前輪駆動系をモータ40により構成すると共に後輪駆動系をエンジン22とトルクコンバータ25とCVT50とにより構成するなどとしてもよい。
【0046】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、自動車産業に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】実施例のハイブリッド自動車20のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される許容スリップ率設定ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図4】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図5】ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される初期化ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図6】要求トルクTdrv*とフロントトルク指令Tf*とリアトルク指令Tr*とスリップ率λの時間変化の様子を示す説明図である。
【符号の説明】
【0049】
20 ハイブリッド自動車、22 エンジン、23 クランクシャフト、24 ベルト、25 トルクコンバータ、26 機械式オイルポンプ、29 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、30 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、31 高圧バッテリ、32 オルタネータ、34 DC/DCコンバータ、35 低圧バッテリ、36 電動オイルポンプ、40 モータ、41 インバータ、42 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、43 回転位置検出センサ、50 CVT、51 インプットシャフト、52 アウトプットシャフト、53 プライマリープーリー、54 セカンダリープーリー、55 ベルト、56 第1アクチュエータ、57 第2アクチュエータ、59 CVT用電子制御ユニット(CVTECU)、61 回転数センサ、62 回転数センサ、63a,63b 前輪、64 前軸、65,68 ギヤ機構、66a,66b 後輪、67 後軸、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、87 車速センサ、88a〜88d 車輪速センサ、89 シートスイッチ。




 

 


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