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発明の名称 車両用駆動装置の制御装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−1451(P2007−1451A)
公開日 平成19年1月11日(2007.1.11)
出願番号 特願2005−184436(P2005−184436)
出願日 平成17年6月24日(2005.6.24)
代理人 【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
発明者 田端 淳 / 鎌田 淳史 / 井上 雄二
要約 課題
エンジンの出力を第1電動機および出力軸へ分配する差動作用が作動可能な差動機構と、その差動機構から駆動輪への動力伝達経路に設けられた第2電動機とを備える車両用駆動装置において、特に、高速走行時の燃費を向上する制御装置を提供する。

解決手段
切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0を備えることで、変速機構10が無段変速状態と非無段変速状態とに切り換えられて、電気的に変速比が変更させられる変速機の燃費改善効果と機械的に動力を伝達する歯車式伝動装置の高い伝達効率との両長所を兼ね備えた駆動装置が得られる。また、加速要求時或いは減速要求時には、切換制御手段50により差動部11が無段変速状態とされて車速Vに拘わらずハイブリッド制御手段52によりエンジン回転速度Nが自由に設定されるので、加速フィーリング(加速感)或いは減速フィーリング(減速感)が向上する。
特許請求の範囲
【請求項1】
エンジンの出力を第1電動機および伝達部材へ分配する差動機構と該伝達部材から駆動輪への動力伝達経路に設けられた第2電動機とを有して電気的な無段変速機として作動可能な無段変速部を備えた車両用駆動装置の制御装置であって、
前記差動機構に備えられて、該差動機構の差動作用を制限することにより前記無段変速部の電気的な無段変速機としての作動を制限する差動制限装置と、
加速要求時或いは減速要求時には、前記差動制限装置による前記無段変速部の電気的な無段変速機としての作動の制限を解除する差動状態切換制御手段と
を、含むことを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。
【請求項2】
エンジンの出力を第1電動機および伝達部材へ分配する差動機構と該伝達部材から駆動輪への動力伝達経路に設けられた第2電動機とを有する差動部を備えた車両用駆動装置の制御装置であって、
前記差動機構に備えられて、該差動機構の差動作用を制限することにより前記差動部の差動作用を制限する差動制限装置と、
加速要求時或いは減速要求時には、前記差動部を差動作用が働く差動状態とする差動状態切換制御手段と
を、含むことを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。
【請求項3】
前記差動制限装置は、前記差動機構を構成する3つの回転要素のうちの少なくとも2つを相互に連結するか、或いは該3つの回転要素のうちの1つを非回転とする係合要素を備えるものであり、
前記差動状態切換制御手段は、該係合要素を解放することによって前記差動機構を差動作用が働く差動状態とするものである請求項1または2の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項4】
前記差動制限装置は、前記差動機構を構成する3つの回転要素のうちの少なくとも2つを相互に連結するか、或いは該3つの回転要素のうちの1つを非回転とする係合要素を備えるものであり、
前記差動状態切換制御手段は、該係合要素を半係合することによって前記差動機構を差動作用が働く差動状態とするものである請求項1または2の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項5】
前記動力伝達経路の一部を構成し有段変速機として機能する有段変速部と、
加速要求時に該有段変速部のダウン変速が行われる場合には、該ダウン変速の初期に前記エンジンの回転速度を上昇させる回転制御手段と
を、更に備えるものである請求項1乃至4のいずれかの車両用駆動装置の制御装置。
【請求項6】
前記回転制御手段は、加速要求時に前記有段変速部のダウン変速が行われる場合には、該ダウン変速の終期に前記エンジンの回転速度を前記差動機構の差動作用が制限される非差動状態における回転速度となるように前記第1電動機を用いて調整するものである請求項5の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項7】
前記動力伝達経路の一部を構成し有段変速機として機能する有段変速部と、
減速要求時に該有段変速部のアップ変速が行われる場合には、該アップ変速の初期に前記エンジンの回転速度を低下させる回転制御手段と
を、更に備えるものである請求項1乃至4のいずれかの車両用駆動装置の制御装置。
【請求項8】
前記回転制御手段は、減速要求時に前記有段変速部のアップ変速が行われる場合には、該アップ変速の終期に前記エンジンの回転速度を前記差動機構の差動作用が制限される非差動状態における回転速度となるように前記第1電動機を用いて調整するものである請求項7の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項9】
前記差動状態切換制御手段による前記無段変速部の電気的な無段変速機としての作動の制限の解除が行えないときには、アクセル開度の変化に対する該無段変速部の入力トルクの応答性を変更するトルク応答性変更手段を更に含むものである請求項1の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項10】
前記トルク応答性変更手段は、前記エンジンの出力トルクの応答性を変更することによってアクセル開度の変化に対する前記無段変速部の入力トルクの応答性を変更するものである請求項9の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項11】
前記トルク応答性変更手段は、前記エンジンの出力トルク変化を所定なまし量でなますことによってアクセル開度の変化に対する該エンジンの出力トルクの応答性を変更するものである請求項10の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項12】
前記トルク応答性変更手段は、前記第1電動機および/または第2電動機のトルクによって前記エンジンの出力トルク変化を相殺してアクセル開度の変化に対する前記無段変速部の入力トルクの応答性を変更するものである請求項9の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項13】
前記トルク応答性変更手段は、前記第1電動機および/または第2電動機のトルクによって前記エンジンの出力トルク変化を相殺してアクセル開度の変化に対する前記無段変速部の入力トルク変化を所定なまし量でなますものである請求項12の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項14】
前記差動状態切換制御手段により前記差動部を差動作用が働く差動状態とすることができないときには、アクセル開度の変化に対する該差動部の入力トルクの応答性を変更するトルク応答性変更手段を更に含むものである請求項2の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項15】
前記トルク応答性変更手段は、前記エンジンの出力トルクの応答性を変更することによってアクセル開度の変化に対する前記差動部の入力トルクの応答性を変更するものである請求項14の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項16】
前記トルク応答性変更手段は、前記エンジンの出力トルク変化を所定なまし量でなますことによってアクセル開度の変化に対する該エンジンの出力トルクの応答性を変更するものである請求項15の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項17】
前記トルク応答性変更手段は、前記第1電動機および/または第2電動機のトルクによって前記エンジンの出力トルク変化を相殺してアクセル開度の変化に対する前記差動部の入力トルクの応答性を変更するものである請求項14の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項18】
前記トルク応答性変更手段は、前記第1電動機および/または第2電動機のトルクによって前記エンジンの出力トルク変化を相殺してアクセル開度の変化に対する前記差動部の入力トルク変化を所定なまし量でなますものである請求項17の車両用駆動装置の制御装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動作用が作動可能な差動機構と電動機とを備える車両用駆動装置に係り、特に、燃費を向上する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンの出力を第1電動機および出力軸へ分配する差動機構と、その差動機構の出力軸と駆動輪との間に設けられた第2電動機とを、備えた車両用駆動装置が知られている。例えば、特許文献1に記載されたハイブリッド車両用駆動装置がそれである。このようなハイブリッド車両用駆動装置では差動機構が例えば遊星歯車装置で構成され、その差動作用によりエンジンからの動力の主部を駆動輪へ機械的に伝達し、そのエンジンからの動力の残部を第1電動機から第2電動機への電気パスを用いて電気的に伝達することにより変速比が連続的に変更される変速機として機能させられ、例えば電気的な無段変速機として機能させられ、エンジンを最適な作動状態に維持しつつ車両を走行させるように制御装置により制御されて燃費が向上させられる。
【0003】
【特許文献1】特開2003−301731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、無段変速機は車両の燃費を良くする装置として知られている一方、有段式自動変速機のような歯車式伝動装置は伝達効率が良い装置として知られている。しかし、それ等の長所を兼ね備えた動力伝達機構は未だ存在しなかった。例えば、上記特許文献1に示すようなハイブリッド車両用駆動装置では、第1電動機から第2電動機への電気エネルギの電気パスすなわち車両の駆動力の一部を電気エネルギで伝送する伝送路を含むため、エンジンの出力の一部が一旦電気エネルギに変換されて駆動輪に伝達されるので、高速走行などのような車両の走行条件によってはかえって燃費が悪化する可能性があった。上記動力分配機構が電気的に変速比が変更される変速機例えば電気的CVTと称されるような無段変速機として使用される場合も、同様の課題があった。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、エンジンの出力を第1電動機および出力軸へ分配する差動作用が作動可能な差動機構と、その差動機構から駆動輪への動力伝達経路に設けられた第2電動機とを備える車両用駆動装置において、特に、高速走行時の燃費を向上する制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a) エンジンの出力を第1電動機および伝達部材へ分配する差動機構とその伝達部材から駆動輪への動力伝達経路に設けられた第2電動機とを有して電気的な無段変速機として作動可能な無段変速部を備えた車両用駆動装置の制御装置であって、(b) 前記差動機構に備えられて、その差動機構の差動作用を制限することにより前記無段変速部の電気的な無段変速機としての作動を制限する差動制限装置と、(c) 加速要求時或いは減速要求時には、前記差動制限装置による前記無段変速部の電気的な無段変速機としての作動の制限を解除する差動状態切換制御手段とを、含むことにある。
【発明の効果】
【0007】
このようにすれば、車両の駆動装置内の無段変速部が、差動制限装置により差動機構の差動作用が制限されずその差動機構が差動作用が働く差動状態とされることで電気的な無段変速作動可能な無段変速状態とされ、或いはまた、差動制限装置により差動機構の差動作用が制限されることで電気的な無段変速機としての作動が制限されることから、例えば差動機構がその差動作用をしない非差動状態例えばロック状態とされることで電気的な無段変速作動しない非無段変速状態例えば有段変速状態とされ得ることから、電気的に変速比が変更させられる変速機の燃費改善効果と機械的に動力を伝達する歯車式伝動装置の高い伝達効率との両長所を兼ね備えた駆動装置が得られる。
【0008】
例えば、車両の低中速走行および低中出力走行となるようなエンジンの常用出力域において上記無段変速部が無段変速状態とされると、車両の燃費性能が確保される。また、高速走行において無段変速部が非無段変速状態とされると、専ら機械的な動力伝達経路でエンジンの出力が駆動輪へ伝達されて、電気的に変速比が変更させられる変速機として作動させる場合に発生する動力と電気エネルギとの間の変換損失が抑制されるので、燃費が向上させられる。
【0009】
また、加速要求時或いは減速要求時には、差動状態切換制御手段により前記差動制限装置による前記無段変速部の電気的な無段変速機としての作動の制限が解除されるので、エンジンの回転速度が車速に拘束されて自由に設定され得ない無段変速部の電気的な無段変速機としての作動が制限される非無段変速状態と異なり、差動機構の差動作用によりすなわち無段変速部の電気的な無段変速機としての作動が制限されないことにより車速に拘わらずエンジンの回転速度が自由に設定され得る。
【0010】
例えば、加速要求時には、車速に拘束されることなくアクセルペダルの踏み込み操作に合わせてエンジン回転速度を上昇させられ得るので、速やかに車両の駆動トルクが増加され、車両の加速性能が向上して加速フィーリング(加速感)が向上する。また、例えば、減速要求時には、車速に拘束されることなくアクセルペダルの戻し操作に合わせてエンジン回転速度を低下させられ得るので、速やかに車両の駆動トルクが減少され、車両の減速性能が向上して減速フィーリング(減速感)が向上する。
【0011】
ここで、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、(a) エンジンの出力を第1電動機および伝達部材へ分配する差動機構とその伝達部材から駆動輪への動力伝達経路に設けられた第2電動機とを有する差動部を備えた車両用駆動装置の制御装置であって、(b) 前記差動機構に備えられて、その差動機構の差動作用を制限することにより前記差動部の差動作用を制限する差動制限装置と、(c) 加速要求時或いは減速要求時には、前記差動部を差動作用が働く差動状態とする差動状態切換制御手段とを、含むことにある。
【0012】
このようにすれば、車両の駆動装置内の差動部が、差動制限装置により差動機構の差動作用が制限されずその差動機構が差動作用が働く差動状態とされることで差動作用が作動可能な差動状態とされ、或いはまた、差動制限装置により差動機構の差動作用が制限されることで差動作用が制限されることから、例えば差動機構がその差動作用をしない非差動状態例えばロック状態とされることで差動作用が作動しない非差動状態例えばロック状態とされ得ることから、電気的に変速比が変更させられる変速機の燃費改善効果と機械的に動力を伝達する歯車式伝動装置の高い伝達効率との両長所を兼ね備えた駆動装置が得られる。
【0013】
例えば、車両の低中速走行および低中出力走行となるようなエンジンの常用出力域において上記差動部が差動状態とされると、車両の燃費性能が確保される。また、高速走行において差動部が非差動状態とされると、専ら機械的な動力伝達経路でエンジンの出力が駆動輪へ伝達されて、電気的に変速比が変更させられる変速機として作動させる場合に発生する動力と電気エネルギとの間の変換損失が抑制されるので、燃費が向上させられる。
【0014】
また、加速要求時或いは減速要求時には、差動状態切換制御手段により前記差動部が差動作用が働く差動状態とされるので、エンジンの回転速度が車速に拘束されて自由に設定され得ない差動部の差動作用が制限される非差動状態と異なり、差動機構の差動作用によりすなわち差動部の差動作用が制限されないことにより車速に拘わらずエンジンの回転速度が自由に設定され得る。
【0015】
例えば、加速要求時例えばアクセルペダルの踏込み操作時には、車速に拘束されることなくアクセルペダルの踏込み操作に合わせてエンジン回転速度を上昇させられ得るので、速やかに車両の駆動トルクが増加され、車両の加速性能が向上して加速フィーリング(加速感)が向上する。また、例えば、減速要求時例えばアクセルペダルの戻し操作時には、車速に拘束されることなくアクセルペダルの戻し操作に合わせてエンジン回転速度を低下させられ得るので、速やかに車両の駆動トルクが減少され、車両の減速性能が向上して減速フィーリング(減速感)が向上する。
【0016】
また、請求項3にかかる発明では、前記差動制限装置は、前記差動機構を構成する3つの回転要素のうちの少なくとも2つを相互に連結するか、或いはその3つの回転要素のうちの1つを非回転とする係合要素を備えるものであり、前記差動状態切換制御手段は、その係合要素を解放することによって前記差動機構を差動作用が働く差動状態とするものである。このようにすれば、差動機構が係合要素により簡単に差動作用が作動可能な差動状態とされたり、或いはまた差動作用が制限されて、電気的に変速比が変更させられる変速機の燃費改善効果と機械的に動力を伝達する歯車式伝動装置の高い伝達効率との両長所を兼ね備えた駆動装置が得られる。また、加速要求時或いは減速要求時には、係合要素の解放により簡単に差動機構が差動状態とされるので、車速に拘わらずエンジンの回転速度が自由に設定され得る。
【0017】
また、請求項4にかかる発明では、前記差動制限装置は、前記差動機構を構成する3つの回転要素のうちの少なくとも2つを相互に連結するか、或いはその3つの回転要素のうちの1つを非回転とする係合要素を備えるものであり、前記差動状態切換制御手段は、その係合要素を半係合状態とすることによって前記差動機構を差動作用が働く差動状態とするものである。このようにすれば、差動機構が係合要素により簡単に差動作用が作動可能な差動状態とされたり、或いはまた差動作用が制限されて、電気的に変速比が変更させられる変速機の燃費改善効果と機械的に動力を伝達する歯車式伝動装置の高い伝達効率との両長所を兼ね備えた駆動装置が得られる。また、加速要求時或いは減速要求時には、係合要素の半係合により簡単に差動機構が差動状態とされるので、車速に拘わらずエンジンの回転速度が自由に設定され得る。或いはまた、差動機構を差動状態とする為に係合要素が解放されることに比較して、より速やかに係合することが可能である。
【0018】
また、請求項5にかかる発明では、前記動力伝達経路の一部を構成し有段変速機として機能する有段変速部と、加速要求時にその有段変速部のダウン変速が行われる場合には、そのダウン変速の初期に前記エンジンの回転速度を上昇させる回転制御手段とを、更に備えるものである。このようにすれば、有段変速部の変速過渡過程における変速時間に拘わらず、すなわち有段変速部の変速応答性に拘わらず、加速要求時例えばアクセルペダルの踏込み操作時には、ダウン変速初期からアクセルペダルの踏込み操作に合わせて速やかに車両の駆動トルクが増加され、車両の加速性能が向上して加速フィーリング(加速感)が向上する。
【0019】
また、請求項6にかかる発明では、前記回転制御手段は、加速要求時に前記有段変速部のダウン変速が行われる場合には、そのダウン変速の終期に前記エンジンの回転速度を前記差動機構の差動作用が制限される非差動状態における回転速度となるように前記第1電動機を用いて調整するものである。このようにすれば、差動機構を非差動状態とするときのショックの発生が抑制される。
【0020】
また、請求項7にかかる発明では、前記動力伝達経路の一部を構成し有段変速機として機能する有段変速部と、減速要求時にその有段変速部のアップ変速が行われる場合には、そのアップ変速の初期に前記エンジンの回転速度を低下させる回転制御手段とを、更に備えるものである。このようにすれば、有段変速部の変速過渡過程における変速時間に拘わらず、すなわち有段変速部の変速応答性に拘わらず、減速要求時例えばアクセルペダルの戻し操作時には、アップ変速初期からアクセルペダルの戻し操作に合わせて速やかに車両の駆動トルクが減少され、車両の減速性能が向上して減速フィーリング(減速感)が向上する。
【0021】
また、請求項8にかかる発明では、前記回転制御手段は、減速要求時に前記有段変速部のアップ変速が行われる場合には、そのアップ変速の終期に前記エンジンの回転速度を前記差動機構の差動作用が制限される非差動状態における回転速度となるように前記第1電動機を用いて調整するものである。このようにすれば、差動機構を非差動状態とするときのショックの発生が抑制される。
【0022】
また、請求項9にかかる発明では、前記差動状態切換制御手段による前記無段変速部の電気的な無段変速機としての作動の制限の解除が行えないときには、アクセル開度の変化に対するその無段変速部の入力トルクの応答性を変更するトルク応答性変更手段を更に含むものである。このようにすれば、加速要求時或いは減速要求時に無段変速部の電気的な無段変速機としての作動の制限が解除されない為に、エンジンの出力トルク(以下、エンジントルクという)の変化が直接的に駆動輪へ伝達される状態であっても、トルク応答性変更手段によりアクセル開度の変化に対する無段変速部の入力トルクの応答性が変更されることによって駆動輪へ伝達されるトルク変化が緩やかにされて、加速要求時或いは減速要求時のショックの発生が抑制される。
【0023】
また、請求項10にかかる発明では、前記トルク応答性変更手段は、アクセル開度の変化に対する前記エンジンの出力トルクの応答性を変更することによってアクセル開度の変化に対する前記無段変速部の入力トルクの応答性を変更するものである。このようにすれば、アクセル開度の変化に対するエンジン自体が出力するトルクの応答性が変更されることによりアクセル開度の変化に対する無段変速部の入力トルクの応答性が変更され、駆動輪へ伝達されるトルク変化が緩やかにされて加速要求時或いは減速要求時のショックの発生が抑制される。
【0024】
また、請求項11にかかる発明では、前記トルク応答性変更手段は、アクセル開度の変化に対する前記エンジンの出力トルク変化を所定なまし量でなますことによってアクセル開度の変化に対するそのエンジンの出力トルクの応答性を変更するものである。このようにすれば、エンジントルクの変化が緩やかにされることにより無段変速部の入力トルクの変化が緩やかにされ、駆動輪へ伝達されるトルク変化が緩やかにされる。
【0025】
また、請求項12にかかる発明では、前記トルク応答性変更手段は、前記第1電動機および/または第2電動機のトルクによって前記エンジンの出力トルク変化を相殺してアクセル開度の変化に対する前記無段変速部の入力トルクの応答性を変更するものである。このようにすれば、第1電動機および/または第2電動機のトルクによってエンジントルク変化が相殺されることによりアクセル開度の変化に対する無段変速部の入力トルクの応答性が変更され、駆動輪へ伝達されるトルク変化が緩やかにされて加速要求時或いは減速要求時のショックの発生が抑制される。
【0026】
また、請求項13にかかる発明では、前記トルク応答性変更手段は、前記第1電動機および/または第2電動機のトルクによって前記エンジンの出力トルク変化を相殺してアクセル開度の変化に対する前記無段変速部の入力トルク変化を所定なまし量でなますものである。このようにすれば、無段変速部の入力トルクの変化が緩やかにされ、駆動輪へ伝達されるトルク変化が緩やかにされる。
【0027】
また、請求項14にかかる発明では、前記差動状態切換制御手段により前記差動部を差動作用が働く差動状態とすることができないときには、アクセル開度の変化に対するその差動部の入力トルクの応答性を変更するトルク応答性変更手段を更に含むものである。このようにすれば、加速要求時或いは減速要求時に差動部が差動作用が働く差動状態とされない為に、エンジントルクの変化が直接的に駆動輪へ伝達される状態であっても、トルク応答性変更手段によりアクセル開度の変化に対する差動部の入力トルクの応答性が変更されることによって駆動輪へ伝達されるトルク変化が緩やかにされて、加速要求時或いは減速要求時のショックの発生が抑制される。
【0028】
また、請求項15にかかる発明では、前記トルク応答性変更手段は、アクセル開度の変化に対する前記エンジンの出力トルクの応答性を変更することによってアクセル開度の変化に対する前記差動部の入力トルクの応答性を変更するものである。このようにすれば、アクセル開度の変化に対するエンジン自体が出力するトルクの応答性が変更されることによりアクセル開度の変化に対する差動部の入力トルクの応答性が変更され、駆動輪へ伝達されるトルク変化が緩やかにされて加速要求時或いは減速要求時のショックの発生が抑制される。
【0029】
また、請求項16にかかる発明では、前記トルク応答性変更手段は、アクセル開度の変化に対する前記エンジンの出力トルク変化を所定なまし量でなますことによってアクセル開度の変化に対するそのエンジンの出力トルクの応答性を変更するものである。このようにすれば、エンジントルクの変化が緩やかにされることにより差動部の入力トルクの変化が緩やかにされ、駆動輪へ伝達されるトルク変化が緩やかにされる。
【0030】
また、請求項17にかかる発明では、前記トルク応答性変更手段は、前記第1電動機および/または第2電動機のトルクによって前記エンジンの出力トルク変化を相殺してアクセル開度の変化に対する前記差動部の入力トルクの応答性を変更するものである。このようにすれば、第1電動機および/または第2電動機のトルクによってエンジントルク変化が相殺されることによりアクセル開度の変化に対する差動部の入力トルクの応答性が変更され、駆動輪へ伝達されるトルク変化が緩やかにされて加速要求時或いは減速要求時のショックの発生が抑制される。
【0031】
また、請求項18にかかる発明では、前記トルク応答性変更手段は、前記第1電動機および/または第2電動機のトルクによって前記エンジンの出力トルク変化を相殺してアクセル開度の変化に対する前記差動部の入力トルク変化を所定なまし量でなますものである。このようにすれば、差動部の入力トルクの変化が緩やかにされ、駆動輪へ伝達されるトルク変化が緩やかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
ここで、好適には、前記加速要求時或いは減速要求時は、運転者により所定以上の加速要求或いは減速要求が成されたときである。このようにすれば、常時アクセルペダルが操作されたときに加速フィーリング或いは減速フィーリングが向上される為に前記差動状態切換制御手段による制御作動が実施されるのではないので、その制御作動が安定する。
【0033】
具体的には、アクセル開度変化量或いはアクセル開度変化率を判定するアクセル開度判定手段を更に備えるものである。このようにすれば、前記所定以上の加速要求或いは減速要求が判断され得る。
【0034】
例えば、前記アクセル開度判定手段は、アクセルペダルの踏込み操作によって正のアクセル開度変化量が所定のアクセル開度変化量以上となったか否か、或いは正のアクセル開度変化率が所定のアクセル開度変化率以上となったか否かに基づいて、所定以上の加速要求であるか否かを判定する。
【0035】
また、例えば、アクセル開度判定手段は、アクセルペダルの戻し操作によって負のアクセル開度変化量が所定のアクセル開度変化量以上となったか否か、或いは負のアクセル開度変化率が所定のアクセル開度変化率以上となったか否かに基づいて、所定以上の減速要求であるか否かを判定する。
【0036】
また、好適には、前記無段変速部は、前記差動制限装置により前記差動機構が差動作用が働く差動状態とされることで電気的な無段変速作動可能な無段変速状態とされ、差動機構がその差動作用をしない非差動状態例えばロック状態とされて差動作用が制限されることで電気的な無段変速作動しない非無段変速状態例えば有段変速状態とされて電気的な無段変速機としての作動が制限されるものである。このようにすれば、無段変速部が、無段変速状態と非無段変速状態とに切り換えられる。
【0037】
また、好適には、前記差動部は、前記差動状態切換装置により前記差動機構が差動作用が働く差動状態とされることで差動作用が作動可能な差動状態とされ、差動機構がその差動作用をしない非差動状態例えばロック状態とされて差動作用が制限されることで差動作用が作動しない非差動状態例えばロック状態とされて差動作用が制限されるものである。このようにすれば、差動部が、差動状態と非差動状態とに切り換えられる。
【0038】
また、好適には、前記差動機構は、前記エンジンに連結された第1回転要素(第1要素)と前記第1電動機に連結された第2回転要素(第2要素)と前記伝達部材に連結された第3回転要素(第3要素)とを有するものであり、前記差動制限装置は、前記差動機構を差動状態とするために第1要素乃至第3要素を相互に相対回転可能とする、例えば差動機構を差動状態とするために少なくとも第2要素および第3要素を互いに異なる速度にて回転可能とするものである。また、差動制限装置は、差動機構を非差動状態例えばロック状態とするために少なくとも第2要素および第3要素を互いに異なる速度にて回転可能としない、例えば差動機構を非差動状態例えばロック状態とするために第1要素乃至第3要素を共に一体回転させるか或いは第2要素を非回転状態とするものである。このようにすれば、差動機構が差動状態と非差動状態とに切り換えられるように構成される。
【0039】
また、好適には、前記差動制限装置は、前記第1要素乃至第3要素を共に一体回転させるために第1要素乃至第3要素のうちの少なくとも2つを相互に連結するクラッチおよび/または第2要素を非回転状態とするために第2要素を非回転部材に連結するブレーキを備えたものである。このようにすれば、差動機構が差動状態と非差動状態とに簡単に切り換えられるように構成される。
【0040】
また、好適には、前記差動機構は、前記クラッチおよび前記ブレーキの解放により少なくとも前記第2要素および前記第3要素が互いに異なる速度にて回転可能な差動状態とされて電気的な差動装置とされ、前記クラッチの係合により変速比が1である変速機とされるか、或いは前記ブレーキの係合により変速比が1より小さい増速変速機とされるものである。このようにすれば、差動機構が差動状態と非差動状態とに切り換えられるように構成されると共に、単段または複数段の定変速比を有する変速機としても構成され得る。
【0041】
また、好適には、前記差動機構動は遊星歯車装置であり、前記第1要素はその遊星歯車装置のキャリヤであり、前記第2要素はその遊星歯車装置のサンギヤであり、前記第3要素はその遊星歯車装置のリングギヤである。このようにすれば、前記差動機構の軸方向寸法が小さくなる。また、差動機構が1つの遊星歯車装置によって簡単に構成され得る。
【0042】
また、好適には、前記遊星歯車装置はシングルピニオン型遊星歯車装置である。このようにすれば、前記差動機構の軸方向寸法が小さくなる。また、差動機構が1つのシングルピニオン型遊星歯車装置によって簡単に構成される。
【0043】
また、好適には、前記無段変速部の変速比と前記有段変速部の変速比とに基づいて前記駆動装置の総合変速比が形成されるものである。このようにすれば、有段変速部の変速比を利用することによって駆動力が幅広く得られるようになる。また、これによって、無段変速部における無段変速制御の効率が一層高められる。或いはまた、有段変速部において形成される変速比が1より大きい減速変速機とされると、第2電動機の出力トルクは変速部の出力軸に対して低トルクの出力でよいので、第2電動機が小型化され得る。また、無段変速部の無段変速状態において、無段変速部と有段変速部とで無段変速機が構成され、無段変速部の非無段変速状態において、無段変速部と有段変速部とで有段変速機が構成され得る。
【0044】
また、好適には、前記差動部の変速比と前記有段変速部の変速比とに基づいて前記駆動装置の総合変速比が形成されるものである。このようにすれば、有段変速部の変速比を利用することによって駆動力が幅広く得られるようになる。或いはまた、有段変速部において形成される変速比が1より大きい減速変速機とされると、第2電動機の出力トルクは有段変速部の出力軸に対して低トルクの出力でよいので、第2電動機が小型化され得る。また、差動部の差動状態において、差動部と有段変速部とで無段変速機が構成され、差動部の非差動状態において、差動部と有段変速部とで有段変速機が構成され得る。
【0045】
また、前記有段変速部は、有段式の自動変速機である。このようにすれば、前記総合変速比が変速部の変速に伴って段階的に変化させられ得るので、総合変速比が連続的に変化させられることに比較して速やかに変化させられ得る。よって、駆動装置が無段変速機として機能させられて滑らかに駆動トルクを変化させることが可能であると共に、段階的に変速比を変化させて速やかに駆動トルクを得ることも可能となる。
【0046】
また、車両の高速走行では、駆動装置が有段の変速機として作動する非無段変速状態例えば有段変速状態とされる。このようにすれば、車両の低中速走行および低中出力走行では、駆動装置が無段変速状態とされて車両の燃費性能が確保される。また、車両の高速走行では、駆動装置が非無段変速状態とされて専ら機械的な動力伝達経路でエンジンの出力が駆動輪へ伝達され、電気的な無段変速機として作動させる場合に発生する動力と電気エネルギとの間の変換損失が抑制されて燃費が向上させられる。
【0047】
また、手動操作によって駆動装置が非無段変速状態例えば有段変速状態とされる。このようにすれば、ユーザは無段変速機のフィーリングや燃費改善効果が得られる走行を所望すれば駆動装置が無段変速状態とされるように手動操作により選択できる。また、ユーザは有段変速機の変速に伴うリズミカルなエンジン回転速度の変化によるフィーリング向上を所望すれば駆動装置が有段変速状態とされるように手動操作により選択できる。
【0048】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0049】
図1は、本発明の一実施例である制御装置が適用されるハイブリッド車両の駆動装置の一部を構成する変速機構10を説明する骨子図である。図1において、変速機構10は車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース12(以下、ケース12という)内において共通の軸心上に配設された入力回転部材としての入力軸14と、この入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパー(振動減衰装置)などを介して間接に連結された無段変速部としての差動部11と、その差動部11と駆動輪38との間の動力伝達経路で伝達部材(伝動軸)18を介して直列に連結されている有段式の変速機として機能する有段変速部としての自動変速部20と、この自動変速部20に連結されている出力回転部材としての出力軸22とを直列に備えている。この変速機構10は、例えば車両において縦置きされるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパーを介して直接的に連結された走行用の駆動力源として例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン8と一対の駆動輪38(図5参照)との間に設けられて、エンジン8からの動力を動力伝達経路の一部を構成する差動歯車装置(終減速機)36および一対の車軸等を順次介して一対の駆動輪38へ伝達する。
【0050】
このように、本実施例の変速機構10においてはエンジン8と差動部11とは直結されている。この直結にはトルクコンバータやフルードカップリング等の流体式伝動装置を介することなく連結されているということであり、例えば上記脈動吸収ダンパーなどを介する連結はこの直結に含まれる。なお、変速機構10はその軸心に対して対称的に構成されているため、図1の骨子図においてはその下側が省略されている。以下の各実施例についても同様である。
【0051】
差動部11は、第1電動機M1と、入力軸14に入力されたエンジン8の出力を機械的に分配する機械的機構であってエンジン8の出力を第1電動機M1および伝達部材18に分配する差動機構としての動力分配機構16と、伝達部材18と一体的に回転するように設けられている第2電動機M2とを備えている。なお、この第2電動機M2は伝達部材18から駆動輪38までの間の動力伝達経路を構成するいずれの部分に設けられてもよい。本実施例の第1電動機M1および第2電動機M2は発電機能をも有する所謂モータジェネレータであるが、第1電動機M1は反力を発生させるためのジェネレータ(発電)機能を少なくとも備え、第2電動機M2は走行用の駆動力源として駆動力を出力するためのモータ(電動機)機能を少なくとも備える。
【0052】
動力分配機構16は、例えば「0.418」程度の所定のギヤ比ρ1を有するシングルピニオン型の第1遊星歯車装置24と、切換クラッチC0および切換ブレーキB0とを主体的に備えている。この第1遊星歯車装置24は、第1サンギヤS1、第1遊星歯車P1、その第1遊星歯車P1を自転および公転可能に支持する第1キャリヤCA1、第1遊星歯車P1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1を回転要素(要素)として備えている。第1サンギヤS1の歯数をZS1、第1リングギヤR1の歯数をZR1とすると、上記ギヤ比ρ1はZS1/ZR1である。
【0053】
この動力分配機構16においては、第1キャリヤCA1は入力軸14すなわちエンジン8に連結され、第1サンギヤS1は第1電動機M1に連結され、第1リングギヤR1は伝達部材18に連結されている。また、切換ブレーキB0は第1サンギヤS1とケース12との間に設けられ、切換クラッチC0は第1サンギヤS1と第1キャリヤCA1との間に設けられている。それら切換クラッチC0および切換ブレーキB0が解放されるとすなわち解放状態へ切り換えられると、動力分配機構16は第1遊星歯車装置24の3要素である第1サンギヤS1、第1キャリヤCA1、第1リングギヤR1がそれぞれ相互に相対回転可能とされて差動作用が作動可能なすなわち差動作用が働く差動状態とされることから、エンジン8の出力が第1電動機M1と伝達部材18とに分配されるとともに、分配されたエンジン8の出力の一部で第1電動機M1から発生させられた電気エネルギで蓄電されたり第2電動機M2が回転駆動されるので、差動部11(動力分配機構16)は電気的な差動装置として機能させられて例えば差動部11は所謂無段変速状態(電気的CVT状態)とされて、エンジン8の所定回転に拘わらず伝達部材18の回転が連続的に変化させられる。すなわち、動力分配機構16が差動状態とされると差動部11も差動状態とされ、差動部11はその変速比γ0(入力軸14の回転速度/伝達部材18の回転速度)が最小値γ0min から最大値γ0max まで連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能する無段変速状態とされる。
【0054】
この状態で、上記切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0が係合されるとすなわち係合状態へ切り換えられると、動力分配機構16は前記差動作用をしないすなわち差動作用が不能な非差動状態とされる。具体的には、上記切換クラッチC0が係合されて第1サンギヤS1と第1キャリヤCA1とが一体的に連結されると、動力分配機構16は第1遊星歯車装置24の3要素である第1サンギヤS1、第1キャリヤCA1、第1リングギヤR1が共に回転すなわち一体回転させられる連結状態すなわちロック状態とされて前記差動作用をしない非差動状態とされることから、差動部11も非差動状態とされる。また、エンジン8の回転と伝達部材18の回転速度とが一致する状態となるので、差動部11(動力分配機構16)は変速比γ0が「1」に固定された変速機として機能する非無段変速状態例えば定変速状態すなわち有段変速状態とされる。
【0055】
次いで、上記切換クラッチC0に替えて切換ブレーキB0が係合されて第1サンギヤS1がケース12に連結されると、動力分配機構16は第1サンギヤS1が非回転状態とさせられる連結状態すなわちロック状態とされて前記差動作用をしない非差動状態とされることから、差動部11も非差動状態とされる。また、第1リングギヤR1は第1キャリヤCA1よりも増速回転されるので、動力分配機構16は増速機構として機能するものであり、差動部11(動力分配機構16)は変速比γ0が「1」より小さい値例えば0.7程度に固定された増速変速機として機能する非無段変速状態例えば定変速状態すなわち有段変速状態とされる。
【0056】
このように、本実施例では、上記切換クラッチC0および切換ブレーキB0は、差動部11(動力分配機構16)の変速状態を差動状態すなわち非ロック状態(非連結状態)と非差動状態すなわちロック状態(連結状態)とに、すなわち差動部11(動力分配機構16)を電気的な差動装置として作動可能な差動状態例えば変速比が連続的変化可能な電気的な無段変速機として作動する無段変速作動可能な無段変速状態と、電気的な無段変速作動しない非無段変速状態例えば電気的な無段変速機として作動させず無段変速作動を非作動として変速比変化を一定にロックするロック状態すなわち1または2種類以上の変速比の単段または複数段の変速機として作動する電気的な無段変速作動しないすなわち電気的な無段変速作動不能な定変速状態(非差動状態)、換言すれば変速比が一定の1段または複数段の変速機として作動する定変速状態とに選択的に切換える差動状態切換装置として機能している。
【0057】
別の見方をすれば、切換クラッチC0および切換ブレーキB0は、動力分配機構16を非差動状態として動力分配機構16の差動作用を制限することにより、差動部11を非無段変速状態として差動部11の電気的な差動装置としての作動を制限する、すなわち電気的な無段変速機としての作動を制限する差動制限装置として機能している。また、切換クラッチC0および切換ブレーキB0は、動力分配機構16を差動状態として動力分配機構16の差動作用を制限しないことにより、差動部11を無段変速状態として差動部11の電気的な差動装置としての作動を制限しない、すなわち電気的な無段変速機としての作動を制限しない。
【0058】
自動変速部20は、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置26、シングルピニオン型の第3遊星歯車装置28、およびシングルピニオン型の第4遊星歯車装置30を備え、有段式の自動変速機として機能する。第2遊星歯車装置26は、第2サンギヤS2、第2遊星歯車P2、その第2遊星歯車P2を自転および公転可能に支持する第2キャリヤCA2、第2遊星歯車P2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2を備えており、例えば「0.562」程度の所定のギヤ比ρ2を有している。第3遊星歯車装置28は、第3サンギヤS3、第3遊星歯車P3、その第3遊星歯車P3を自転および公転可能に支持する第3キャリヤCA3、第3遊星歯車P3を介して第3サンギヤS3と噛み合う第3リングギヤR3を備えており、例えば「0.425」程度の所定のギヤ比ρ3を有している。第4遊星歯車装置30は、第4サンギヤS4、第4遊星歯車P4、その第4遊星歯車P4を自転および公転可能に支持する第4キャリヤCA4、第4遊星歯車P4を介して第4サンギヤS4と噛み合う第4リングギヤR4を備えており、例えば「0.421」程度の所定のギヤ比ρ4を有している。第2サンギヤS2の歯数をZS2、第2リングギヤR2の歯数をZR2、第3サンギヤS3の歯数をZS3、第3リングギヤR3の歯数をZR3、第4サンギヤS4の歯数をZS4、第4リングギヤR4の歯数をZR4とすると、上記ギヤ比ρ2はZS2/ZR2、上記ギヤ比ρ3はZS3/ZR3、上記ギヤ比ρ4はZS4/ZR4である。
【0059】
自動変速部20では、第2サンギヤS2と第3サンギヤS3とが一体的に連結されて第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第2キャリヤCA2は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第4リングギヤR4は第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第2リングギヤR2と第3キャリヤCA3と第4キャリヤCA4とが一体的に連結されて出力軸22に連結され、第3リングギヤR3と第4サンギヤS4とが一体的に連結されて第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。このように、自動変速部20と伝達部材18とは自動変速部20の変速段を成立させるために用いられる第1クラッチC1または第2クラッチC2を介して選択的に連結されている。言い換えれば、第1クラッチC1および第2クラッチC2は、伝達部材18と自動変速部20との間すなわち差動部11(伝達部材18)と駆動輪38との間の動力伝達経路を、その動力伝達経路の動力伝達を可能とする動力伝達可能状態と、その動力伝達経路の動力伝達を遮断する動力伝達遮断状態とに選択的に切り換える係合装置として機能している。つまり、第1クラッチC1および第2クラッチC2の少なくとの一方が係合されることで上記動力伝達経路が動力伝達可能状態とされ、或いは第1クラッチC1および第2クラッチC2が解放されることで上記動力伝達経路が動力伝達遮断状態とされる。また、この自動変速部20は、解放側係合装置の解放と係合側係合装置の係合とによりクラッチツウクラッチ変速が実行される有段式変速機である。
【0060】
前記切換クラッチC0、第1クラッチC1、第2クラッチC2、切換ブレーキB0、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3(以下、特に区別しない場合はクラッチC、ブレーキBと表す)は、従来の車両用自動変速機においてよく用いられている係合要素としての油圧式摩擦係合装置であって、互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型や、回転するドラムの外周面に巻き付けられた1本または2本のバンドの一端が油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成され、それが介挿されている両側の部材を選択的に連結するためのものである。
【0061】
以上のように構成された変速機構10において、特に、本実施例では動力分配機構16に切換クラッチC0および切換ブレーキB0が備えられており、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかが係合作動させられることによって、差動部11は前述した無段変速機として作動可能な無段変速状態に加え、変速比が一定の変速機として作動可能な非無段変速状態(定変速状態)を構成することが可能とされている。したがって、変速機構10では、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかを係合作動させることで定変速状態とされた差動部11と自動変速部20とで有段変速機として作動する有段変速状態が構成され、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れも係合作動させないことで無段変速状態とされた差動部11と自動変速部20とで電気的な無段変速機として作動する無段変速状態が構成される。言い換えれば、変速機構10は、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかを係合作動させることで有段変速状態に切り換えられ、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れも係合作動させないことで無段変速状態に切り換えられる。また、差動部11も有段変速状態と無段変速状態とに切り換え可能な変速機であると言える。
【0062】
具体的には、差動部11が非無段変速状態とされて変速機構10が有段変速機として機能する場合には、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかが係合させられ、且つ第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3が選択的に係合作動させられることにより、すなわち自動変速部20の変速に関与する係合装置の解放と係合とにより、例えば変速に関与する解放側の油圧式摩擦係合装置(以下解放側係合装置)の解放と変速に関与する係合側の油圧式摩擦係合装置(以下係合側係合装置)の係合とにより変速比が自動的に切り換えられるように、第1速ギヤ段(第1変速段)乃至第5速ギヤ段(第5変速段)のいずれか或いは後進ギヤ段(後進変速段)或いはニュートラルが選択的に成立させられ、略等比的に変化する変速機構10の総合変速比γT(=入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT)が各ギヤ段毎に得られるようになっている。この変速機構10の総合変速比γTは、差動部11の変速比γ0と自動変速部20の変速比γとに基づいて形成される変速機構10全体としてのトータル変速比γTである。
【0063】
例えば、変速機構10が有段変速機として機能する場合には、図2の係合作動表に示されるように、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第3ブレーキB3の係合により、変速比γ1が最大値例えば「3.357」程度である第1速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合により、変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値例えば「2.180」程度である第2速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合により、変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.424」程度である第3速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第2クラッチC2の係合により、変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.000」程度である第4速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1、第2クラッチC2、および切換ブレーキB0の係合により、変速比γ5が第4速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.705」程度である第5速ギヤ段が成立させられる。また、第2クラッチC2および第3ブレーキB3の係合により、変速比γRが第1速ギヤ段と第2速ギヤ段との間の値例えば「3.209」程度である後進ギヤ段が成立させられる。なお、この後進ギヤ段は、通常、差動部11の無段変速状態において成立させられる。また、ニュートラル「N」状態とする場合には、例えば切換クラッチC0のみが係合される。
【0064】
また、差動部11が無段変速状態とされて変速機構10が無段変速機として機能する場合には、切換クラッチC0および切換ブレーキB0が共に解放されて差動部11が無段変速機として機能し、且つ差動部11に直列の自動変速部20が有段変速機として機能することにより、自動変速部20の少なくとも1つの変速段Mに対して自動変速部20に入力される回転速度(以下、自動変速部20の入力回転速度NIN)すなわち伝達部材18の回転速度が無段的に変化させられてその変速段Mにおいて無段的な変速比幅が得られる。したがって、変速機構10のトータル変速比γTが無段階に得られるようになる。
【0065】
例えば、変速機構10が無段変速機として機能する場合には、図2の係合作動表に示されるように、切換クラッチC0および切換ブレーキB0が共に解放された状態で、自動変速部20の第1速、第2速、第3速、第4速(第5速における自動変速部20の係合装置の係合作動は第4速に同じ)の各ギヤ段に対しその自動変速部20の入力回転速度NINが無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって、変速機構10全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られる。
【0066】
図3は、無段変速部或いは第1変速部として機能する差動部11と有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速部20とから構成される変速機構10において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。この図3の共線図は、各遊星歯車装置24、26、28、30のギヤ比ρの関係を示す横軸と、相対的回転速度を示す縦軸とから成る二次元座標であり、3本の横線のうちの下側の横線X1が回転速度零を示し、上側の横線X2が回転速度「1.0」すなわち入力軸14に連結されたエンジン8の回転速度Nを示し、横線XGが伝達部材18の回転速度を示している。
【0067】
また、差動部11を構成する動力分配機構16の3つの要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第2回転要素(第2要素)RE2に対応する第1サンギヤS1、第1回転要素(第1要素)RE1に対応する第1キャリヤCA1、第3回転要素(第3要素)RE3に対応する第1リングギヤR1の相対回転速度を示すものであり、それらの間隔は第1遊星歯車装置24のギヤ比ρ1に応じて定められている。さらに、自動変速部20の5本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7、Y8は、左から順に、第4回転要素(第4要素)RE4に対応し且つ相互に連結された第2サンギヤS2および第3サンギヤS3を、第5回転要素(第5要素)RE5に対応する第2キャリヤCA2を、第6回転要素(第6要素)RE6に対応する第4リングギヤR4を、第7回転要素(第7要素)RE7に対応し且つ相互に連結された第2リングギヤR2、第3キャリヤCA3、第4キャリヤCA4を、第8回転要素(第8要素)RE8に対応し且つ相互に連結された第3リングギヤR3、第4サンギヤS4をそれぞれ表し、それらの間隔は第2、第3、第4遊星歯車装置26、28、30のギヤ比ρ2、ρ3、ρ4に応じてそれぞれ定められている。共線図の縦軸間の関係においてサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔とされるとキャリヤとリングギヤとの間が遊星歯車装置のギヤ比ρに対応する間隔とされる。すなわち、差動部11では縦線Y1とY2との縦線間が「1」に対応する間隔に設定され、縦線Y2とY3との間隔はギヤ比ρ1に対応する間隔に設定される。また、自動変速部20では各第2、第3、第4遊星歯車装置26、28、30毎にそのサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔に設定され、キャリヤとリングギヤとの間がρに対応する間隔に設定される。
【0068】
上記図3の共線図を用いて表現すれば、本実施例の変速機構10は、動力分配機構16(差動部11)において、第1遊星歯車装置24の第1回転要素RE1(第1キャリヤCA1)が入力軸14すなわちエンジン8に連結されるとともに切換クラッチC0を介して第2回転要素(第1サンギヤS1)RE2と選択的に連結され、第2回転要素RE2が第1電動機M1に連結されるとともに切換ブレーキB0を介してケース12に選択的に連結され、第3回転要素(第1リングギヤR1)RE3が伝達部材18および第2電動機M2に連結されて、入力軸14の回転を伝達部材18を介して自動変速部20へ伝達する(入力させる)ように構成されている。このとき、Y2とX2の交点を通る斜めの直線L0により第1サンギヤS1の回転速度と第1リングギヤR1の回転速度との関係が示される。
【0069】
例えば、上記切換クラッチC0および切換ブレーキB0の解放により、第1回転要素RE1乃至第3回転要素RE3を相互に相対回転可能とする無段変速状態(差動状態)、例えば少なくとも第2回転要素RE2および第3回転要素RE3を互いに異なる速度にて回転可能とする無段変速状態(差動状態)に切換えられたときは、第1電動機M1の回転速度を制御することによって直線L0と縦線Y1との交点で示される第1サンギヤS1の回転が上昇或いは下降させられると、直線L0と縦線Y3との交点で示される車速Vに拘束される第1リングギヤR1の回転速度が略一定である場合には、直線L0と縦線Y2との交点で示される第1キャリヤCA1の回転速度すなわちエンジン回転速度Nが上昇或いは下降させられる。
【0070】
また、切換クラッチC0の係合により第1サンギヤS1と第1キャリヤCA1とが連結されると、動力分配機構16は上記3回転要素RE1、RE2、RE3が一体回転して少なくとも第2回転要素RE2および第3回転要素RE3を互いに異なる速度にて回転可能としない非差動状態とされるので、直線L0は横線X2と一致させられ、エンジン回転速度Nと同じ回転で伝達部材18が回転させられる。或いは、切換ブレーキB0の係合により第1サンギヤS1がケース12に連結されると、動力分配機構16は第2回転要素RE2の回転が停止させられて少なくとも第2回転要素RE2および第3回転要素RE3を互いに異なる速度にて回転可能としない非差動状態とされるので、直線L0は図3に示す状態となって差動部11が増速機構として機能させられ、その直線L0と縦線Y3との交点で示される第1リングギヤR1の回転速度すなわち伝達部材18の回転速度は、エンジン回転速度Nよりも増速された回転で自動変速部20へ入力される。
【0071】
また、自動変速部20において第4回転要素RE4は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第5回転要素RE5は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第6回転要素RE6は第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第7回転要素RE7は出力軸22に連結され、第8回転要素RE8は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。
【0072】
自動変速部20では、図3に示すように、第1クラッチC1と第3ブレーキB3とが係合させられることにより、第8回転要素RE8の回転速度を示す縦線Y8と横線X2との交点と第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第1速の出力軸22の回転速度が示される。同様に、第1クラッチC1と第2ブレーキB2とが係合させられることにより決まる斜めの直線L2と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第2速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L3と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第3速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第2クラッチC2とが係合させられることにより決まる水平な直線L4と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第4速の出力軸22の回転速度が示される。上記第1速乃至第4速では、切換クラッチC0が係合させられている結果、エンジン回転速度Nと同じ回転速度で第8回転要素RE8に差動部11すなわち動力分配機構16からの動力が入力される。しかし、切換クラッチC0に替えて切換ブレーキB0が係合させられると、差動部11からの動力がエンジン回転速度Nよりも高い回転速度で入力されることから、第1クラッチC1、第2クラッチC2、および切換ブレーキB0が係合させられることにより決まる水平な直線L5と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第5速の出力軸22の回転速度が示される。
【0073】
図4は、本実施例の変速機構10を制御するための電子制御装置40に入力される信号及びその電子制御装置40から出力される信号を例示している。この電子制御装置40は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン8、第1、第2電動機M1、M2に関するハイブリッド駆動制御、自動変速部20の変速制御等の駆動制御を実行するものである。
【0074】
電子制御装置40には、図4に示すような各センサやスイッチなどから、エンジン水温TEMPを表す信号、シフトポジションPSHを表す信号、エンジン8の回転速度であるエンジン回転速度Nを表す信号、ギヤ比列設定値を表す信号、Mモード(手動変速走行モード)を指令する信号、エアコンの作動を表す信号、出力軸22の回転速度NOUTに対応する車速Vを表す信号、自動変速部20の作動油温を表す信号、サイドブレーキ操作を表す信号、フットブレーキ操作を表す信号、触媒温度を表す信号、運転者の出力要求量に対応するアクセルペダル45(図5参照)の操作量であるアクセル開度Accを表す信号、カム角を表す信号、スノーモード設定を表す信号、車両の前後加速度Gを表す信号、オートクルーズ走行を表す信号、車両の重量(車重)を表す信号、各車輪の車輪速を表す信号、変速機構10を有段変速機として機能させるために差動部11(動力分配機構16)を有段変速状態(ロック状態)に切り換えるための有段スイッチ操作の有無を表す信号、変速機構10を無段変速機として機能させるために差動部11(動力分配機構16)を無段変速状態(差動状態)に切り換えるための無段スイッチ操作の有無を表す信号、第1電動機M1の回転速度NM1(以下、第1電動機回転速度NM1という)を表す信号、第2電動機M2の回転速度NM2(以下、第2電動機回転速度NM2という)を表す信号、蓄電装置60(図5参照)の充電容量(充電状態)SOCを表す信号などが、それぞれ供給される。
【0075】
また、上記電子制御装置40からは、エンジン出力を制御するエンジン出力制御装置43(図5参照)への制御信号例えばエンジン8の吸気管95に備えられた電子スロットル弁96のスロットル弁開度θTHを操作するスロットルアクチュエータ97への駆動信号や燃料噴射装置98による吸気管95或いはエンジン8の筒内への燃料供給量を制御する燃料供給量信号や点火装置99によるエンジン8の点火時期を指令する点火信号、過給圧を調整するための過給圧調整信号、電動エアコンを作動させるための電動エアコン駆動信号、電動機M1およびM2の作動を指令する指令信号、シフトインジケータを作動させるためのシフトポジション(操作位置)表示信号、ギヤ比を表示させるためのギヤ比表示信号、スノーモードであることを表示させるためのスノーモード表示信号、制動時の車輪のスリップを防止するABSアクチュエータを作動させるためのABS作動信号、Mモードが選択されていることを表示させるMモード表示信号、差動部11や自動変速部20の油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを制御するために油圧制御回路42(図5参照)に含まれる電磁弁を作動させるバルブ指令信号、この油圧制御回路42の油圧源である電動油圧ポンプを作動させるための駆動指令信号、電動ヒータを駆動するための信号、クルーズコントロール制御用コンピュータへの信号等が、それぞれ出力される。
【0076】
図5は、電子制御装置40による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図5において、有段変速制御手段54は、例えば記憶手段56に予め記憶された図6の実線および一点鎖線に示す変速線図(関係、変速マップ)から車速Vおよび自動変速部20の要求出力トルクTOUTで示される車両状態に基づいて、変速機構10の変速を実行すべきか否かを判断し、例えば自動変速部20の変速すべき変速段を判断し、その判断した変速段が得られるように自動変速部20の自動変速制御を実行する。このとき、有段変速制御手段54は、例えば図2に示す係合表に従って変速段が達成されるように、切換クラッチC0および切換ブレーキB0を除いた自動変速部20の変速に関与する油圧式摩擦係合装置を係合および/または解放させる指令(変速出力指令、油圧指令)を、すなわち自動変速部20の変速に関与する解放側係合装置を解放すると共に係合側係合装置を係合することによりクラッチツウクラッチ変速を実行させる指令を油圧制御回路42へ出力する。油圧制御回路42は、その指令に従って、例えば変速に関与する解放側係合装置を解放すると共に、変速に関与する係合側係合装置を係合して自動変速部20の変速が実行されるように、油圧制御回路42内の電磁弁を作動させてその変速に関与する油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを作動させる。
【0077】
ハイブリッド制御手段52は、無段変速制御手段として機能するものであり、変速機構10の無段変速状態すなわち差動部11の差動状態においてエンジン8を効率のよい作動域で作動させる一方で、エンジン8と第2電動機M2との駆動力の配分や第1電動機M1の発電による反力を最適になるように変化させて差動部11の電気的な無段変速機としての変速比γ0を制御する。例えば、そのときの走行車速において、運転者の出力要求量としてのアクセル開度Accや車速Vから車両の目標(要求)出力を算出し、その車両の目標出力と充電要求値から必要なトータル目標出力を算出し、そのトータル目標出力が得られるように伝達損失、補機負荷、第2電動機M2のアシストトルク等を考慮して目標エンジン出力を算出し、その目標エンジン出力が得られるエンジン回転速度NとエンジントルクTとなるようにエンジン8を制御するとともに第1電動機M1の発電量を制御する。
【0078】
ハイブリッド制御手段52は、その制御を動力性能や燃費向上などのために自動変速部20の変速段を考慮して実行する。このようなハイブリッド制御では、エンジン8を効率のよい作動域で作動させるために定まるエンジン回転速度Nと車速Vおよび自動変速部20の変速段で定まる伝達部材18の回転速度とを整合させるために、差動部11が電気的な無段変速機として機能させられる。すなわち、ハイブリッド制御手段52は、エンジン回転速度Nとエンジン8の出力トルク(エンジントルク)Tとで構成される二次元座標内において無段変速走行の時に運転性と燃費性とを両立するように予め実験的に求められて例えば記憶手段に記憶された図7の破線に示すようなエンジン8の最適燃費率曲線(燃費マップ、関係)に沿ってエンジン8が作動させられるように、例えば目標出力(トータル目標出力、要求駆動力)を充足するために必要なエンジン出力を発生するためのエンジントルクTとエンジン回転速度Nとなるように、変速機構10のトータル変速比γTの目標値を定め、その目標値が得られるように自動変速部20の変速段を考慮して差動部11の変速比γ0を制御し、トータル変速比γTをその変速可能な変化範囲内例えば13〜0.5の範囲内で制御する。
【0079】
このとき、ハイブリッド制御手段52は、第1電動機M1により発電された電気エネルギをインバータ58を通して蓄電装置60や第2電動機M2へ供給するので、エンジン8の動力の主要部は機械的に伝達部材18へ伝達されるが、エンジン8の動力の一部は第1電動機M1の発電のために消費されてそこで電気エネルギに変換され、インバータ58を通してその電気エネルギが第2電動機M2へ供給され、その第2電動機M2が駆動されて第2電動機M2から伝達部材18へ伝達される。この電気エネルギの発生から第2電動機M2で消費されるまでに関連する機器により、エンジン8の動力の一部を電気エネルギに変換し、その電気エネルギを機械的エネルギに変換するまでの電気パスが構成される。
【0080】
また、ハイブリッド制御手段52は、車両の停止中又は走行中に拘わらず、差動部11の電気的CVT機能によって第1電動機回転速度NM1および/または第2電動機回転速度NM2を制御してエンジン回転速度Nを略一定に維持したり任意の回転速度に回転制御させられる。言い換えれば、ハイブリッド制御手段52は、エンジン回転速度Nを略一定に維持したり任意の回転速度に制御しつつ第1電動機回転速度NM1および/または第2電動機回転速度NM2を任意の回転速度に回転制御することができる。
【0081】
例えば、図3の共線図からもわかるようにハイブリッド制御手段52は車両走行中にエンジン回転速度Nを引き上げる場合には、車速V(駆動輪38)に拘束される第2電動機回転速度NM2を略一定に維持しつつ第1電動機回転速度NM1の引き上げを実行する。また、ハイブリッド制御手段52は自動変速部20の変速中にエンジン回転速度Nを略一定に維持する場合には、エンジン回転速度Nを略一定に維持しつつ自動変速部20の変速に伴う第2電動機回転速度NM2の変化とは反対方向に第1電動機回転速度NM1を変化させる。
【0082】
また、ハイブリッド制御手段52は、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ97により電子スロットル弁96を開閉制御させる他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置98による燃料噴射量や噴射時期を制御させ、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置99による点火時期を制御させる指令を単独で或いは組み合わせてエンジン出力制御装置43に出力して、必要なエンジン出力を発生するようにエンジン8の出力制御を実行するエンジン出力制御手段を機能的に備えている。例えば、ハイブリッド制御手段52は、基本的には図示しない予め記憶された関係からアクセル開度Accに基づいてスロットルアクチュエータ60を駆動し、アクセル開度Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させるようにスロットル制御を実行する。また、このエンジン出力制御装置43は、ハイブリッド制御手段52による指令に従って、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ97により電子スロットル弁96を開閉制御する他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置98による燃料噴射を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置99による点火時期を制御するなどしてエンジントルク制御を実行する。
【0083】
また、ハイブリッド制御手段52は、エンジン8の停止又はアイドル状態に拘わらず、差動部11の電気的CVT機能(差動作用)によってモータ走行させることができる。例えば、前記図6の実線Aは、車両の発進/走行用(以下、走行用という)の駆動力源をエンジン8と電動機例えば第2電動機M2とで切り換えるための、言い換えればエンジン8を走行用の駆動力源として車両を発進/走行(以下、走行という)させる所謂エンジン走行と第2電動機M2を走行用の駆動力源として車両を走行させる所謂モータ走行とを切り換えるための、エンジン走行領域とモータ走行領域との境界線である。この図6に示すエンジン走行とモータ走行とを切り換えるための境界線(実線A)を有する予め記憶された関係は、車速Vと駆動力関連値である出力トルクTOUTとをパラメータとする二次元座標で構成された駆動力源切換線図(駆動力源マップ)の一例である。この駆動力源切換線図は、例えば同じ図6中の実線および一点鎖線に示す変速線図(変速マップ)と共に記憶手段56に予め記憶されている。
【0084】
そして、ハイブリッド制御手段52は、例えば図6の駆動力源切換線図から車速Vと要求出力トルクTOUTとで示される車両状態に基づいてモータ走行領域とエンジン走行領域との何れであるかを判断してモータ走行或いはエンジン走行を実行する。このように、ハイブリッド制御手段52によるモータ走行は、図6から明らかなように一般的にエンジン効率が高トルク域に比較して悪いとされる比較的低出力トルクTOUT域すなわち低エンジントルクT域、或いは車速Vの比較的低車速域すなわち低負荷域で実行される。よって、通常はモータ発進がエンジン発進に優先して実行されるが、例えば車両発進時に図6の駆動力源切換線図のモータ走行領域を超える要求出力トルクTOUTすなわち要求エンジントルクTとされる程大きくアクセルペダル45が踏込操作されるような車両状態によってはエンジン発進も通常実行されるものである。
【0085】
ハイブリッド制御手段52は、このモータ走行時には、停止しているエンジン8の引き摺りを抑制して燃費を向上させるために、差動部11の電気的CVT機能(差動作用)によって、第1電動機回転速度NM1を負の回転速度で制御例えば空転させて、差動部11の差動作用により必要に応じてエンジン回転速度Nを零乃至略零に維持する。
【0086】
また、ハイブリッド制御手段52は、エンジン走行領域であっても、上述した電気パスによる第1電動機M1からの電気エネルギおよび/または蓄電装置60からの電気エネルギを第2電動機M2へ供給し、その第2電動機M2を駆動して駆動輪38にトルクを付与することにより、エンジン8の動力を補助するための所謂トルクアシストが可能である。よって、本実施例のエンジン走行には、エンジン走行+モータ走行も含むものとする。尚、第2電動機M2によるトルクアシストは、モータ走行時にその第2電動機M2の出力トルクを増加するように行われても良い。
【0087】
また、ハイブリッド制御手段52は、車両の停止状態又は低車速状態に拘わらず、差動部11の電気的CVT機能によってエンジン8の運転状態を維持させられる。例えば、車両停止時に蓄電装置60の充電容量SOCが低下して第1電動機M1による発電が必要となった場合には、エンジン8の動力により第1電動機M1が発電させられてその第1電動機M1の回転速度が引き上げられ、車速Vで一意的に決められる第2電動機回転速度Nが車両停止状態により零(略零)となっても動力分配機構16の差動作用によってエンジン回転速度Nが自律回転可能な回転速度以上に維持される。
【0088】
また、ハイブリッド制御手段52は、蓄電装置60からインバータ58を介して供給される第1電動機M1への駆動電流を遮断して第1電動機M1を無負荷状態とする。第1電動機M1は無負荷状態とされると自由回転することすなわち空転することが許容され、差動部11はトルクの伝達が不能な状態すなわち差動部11内の動力伝達経路が遮断された状態と同等の状態であって、且つ差動部11からの出力が発生されない状態とされる。すなわち、ハイブリッド制御手段52は、第1電動機M1を無負荷状態とすることにより差動部11をその動力伝達経路が電気的に遮断される中立状態(ニュートラル状態)とする。
【0089】
増速側ギヤ段判定手段62は、変速機構10を有段変速状態とする際に切換クラッチC0および切換ブレーキB0のいずれを係合させるかを判定するために、例えば車両状態に基づいて記憶手段56に予め記憶された前記図6に示す変速線図に従って変速機構10の変速されるべき変速段が、或いは前記有段変速制御手段54により判断された変速機構10の変速されるべき変速段が、増速側ギヤ段例えば第5速ギヤ段であるか否かを判定する。
【0090】
切換制御手段50は、車両状態に基づいて前記係合装置(切換クラッチC0、切換ブレーキB0)の係合/解放を切り換えることにより、前記無段変速状態と前記有段変速状態とを、すなわち前記差動状態と前記ロック状態とを選択的に切り換える。例えば、切換制御手段50は、記憶手段56に予め記憶された前記図6の破線および二点鎖線に示す切換線図(切換マップ、関係)から車速Vおよび要求出力トルクTOUTで示される車両状態に基づいて、変速機構10(差動部11)の切り換えるべき変速状態を判断して、すなわち変速機構10を無段変速状態とする無段制御領域内であるか或いは変速機構10を有段変速状態とする有段制御領域内であるかを判定して、変速機構10を前記無段変速状態と前記有段変速状態とのいずれかに選択的に切り換える。このように、切換制御手段50は、切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0の係合/解放を切り換えることにより、差動部11を非無段変速状態として差動部11の電気的な差動装置としての作動を制限する、すなわち電気的な無段変速機としての作動を制限する差動制限手段として機能している。
【0091】
具体的には、切換制御手段50は有段変速制御領域内であると判定した場合は、ハイブリッド制御手段52に対してハイブリッド制御或いは無段変速制御を不許可すなわち禁止とする信号を出力するとともに、有段変速制御手段54に対しては、予め設定された有段変速時の変速を許可する。このときの有段変速制御手段54は、記憶手段56に予め記憶された例えば図6に示す変速線図に従って自動変速部20の自動変速制御を実行する。例えば記憶手段56に予め記憶された図2は、このときの変速において選択される油圧式摩擦係合装置すなわちC0、C1、C2、B0、B1、B2、B3の作動の組み合わせを示している。すなわち、変速機構10全体すなわち差動部11および自動変速部20が所謂有段式自動変速機として機能し、図2に示す係合表に従って変速段が達成される。
【0092】
例えば、増速側ギヤ段判定手段62により第5速ギヤ段が判定される場合には、変速機構10全体として変速比が1.0より小さな増速側ギヤ段所謂オーバードライブギヤ段が得られるために切換制御手段50は差動部11が固定の変速比γ0例えば変速比γ0が0.7の副変速機として機能させられるように切換クラッチC0を解放させ且つ切換ブレーキB0を係合させる指令を油圧制御回路42へ出力する。また、増速側ギヤ段判定手段62により第5速ギヤ段でないと判定される場合には、変速機構10全体として変速比が1.0以上の減速側ギヤ段が得られるために切換制御手段50は差動部11が固定の変速比γ0例えば変速比γ0が1の副変速機として機能させられるように切換クラッチC0を係合させ且つ切換ブレーキB0を解放させる指令を油圧制御回路42へ出力する。このように、切換制御手段50によって変速機構10が有段変速状態に切り換えられるとともに、その有段変速状態における2種類の変速段のいずれかとなるように選択的に切り換えられて、差動部11が副変速機として機能させられ、それに直列の自動変速部20が有段変速機として機能することにより、変速機構10全体が所謂有段式自動変速機として機能させられる。
【0093】
しかし、切換制御手段50は、変速機構10を無段変速状態に切り換える無段変速制御領域内であると判定した場合は、変速機構10全体として無段変速状態が得られるために差動部11を無段変速状態として無段変速可能とするように切換クラッチC0および切換ブレーキB0を解放させる指令を油圧制御回路42へ出力する。同時に、ハイブリッド制御手段52に対してハイブリッド制御を許可する信号を出力するとともに、有段変速制御手段54には、予め設定された無段変速時の変速段に固定する信号を出力するか、或いは記憶手段56に予め記憶された例えば図6に示す変速線図に従って自動変速部20を自動変速することを許可する信号を出力する。この場合、有段変速制御手段54により、図2の係合表内において切換クラッチC0および切換ブレーキB0の係合を除いた作動により自動変速が行われる。このように、切換制御手段50により無段変速状態に切り換えられた差動部11が無段変速機として機能し、それに直列の自動変速部20が有段変速機として機能することにより、適切な大きさの駆動力が得られると同時に、自動変速部20の第1速、第2速、第3速、第4速の各ギヤ段に対しその自動変速部20の入力回転速度Nすなわち伝達部材回転速度N18が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって変速機構10全体として無段変速状態となりトータル変速比γTが無段階に得られるようになる。
【0094】
ここで前記図6について詳述すると、図6は自動変速部20の変速判断の基となる記憶手段56に予め記憶された変速線図(関係、変速マップ)であり、車速Vと駆動力関連値である要求出力トルクTOUTとをパラメータとする二次元座標で構成された変速線図の一例である。図6の実線はアップシフト線であり一点鎖線はダウンシフト線である。
【0095】
また、図6の破線は切換制御手段50による有段制御領域と無段制御領域との判定のための判定車速V1および判定出力トルクT1を示している。つまり、図6の破線はハイブリッド車両の高速走行を判定するための予め設定された高速走行判定値である判定車速V1の連なりである高車速判定線と、ハイブリッド車両の駆動力に関連する駆動力関連値例えば自動変速部20の出力トルクTOUTが高出力となる高出力走行を判定するための予め設定された高出力走行判定値である判定出力トルクT1の連なりである高出力走行判定線とを示している。さらに、図6の破線に対して二点鎖線に示すように有段制御領域と無段制御領域との判定にヒステリシスが設けられている。つまり、この図6は判定車速V1および判定出力トルクT1を含む、車速Vと出力トルクTOUTとをパラメータとして切換制御手段50により有段制御領域と無段制御領域とのいずれであるかを領域判定するための予め記憶された切換線図(切換マップ、関係)である。なお、この切換線図を含めて変速マップとして記憶手段56に予め記憶されてもよい。また、この切換線図は判定車速V1および判定出力トルクT1の少なくとも1つを含むものであってもよいし、車速Vおよび出力トルクTOUTの何れかをパラメータとする予め記憶された切換線であってもよい。
【0096】
上記変速線図、切換線図、或いは駆動力源切換線図等は、マップとしてではなく実際の車速Vと判定車速V1とを比較する判定式、出力トルクTOUTと判定出力トルクT1とを比較する判定式等として記憶されてもよい。例えば、この場合には、切換制御手段50は、車両状態例えば実際の車速Vが判定車速V1を越えたか否かを判定し、判定車速V1を越えたときには例えば切換ブレーキB0を係合して変速機構10を有段変速状態とする。また、切換制御手段50は、車両状態例えば自動変速部20の出力トルクTOUTが判定出力トルクT1を越えたか否かを判定し、判定出力トルクT1を越えたときには例えば切換クラッチC0を係合して変速機構10を有段変速状態とする。
【0097】
また、差動部11を電気的な無段変速機として作動させるための電動機等の電気系の制御機器の故障や機能低下時、例えば第1電動機M1における電気エネルギの発生からその電気エネルギが機械的エネルギに変換されるまでの電気パスに関連する機器の故障や機能低下、すなわち第1電動機M1、第2電動機M2、インバータ58、蓄電装置60、それらを接続する伝送路などの故障(フェイル)や、故障とか低温による機能低下が発生したような車両状態となる場合には、無段制御領域であっても車両走行を確保するために切換制御手段50は変速機構10を優先的に有段変速状態としてもよい。例えば、この場合には、切換制御手段50は、差動部11を電気的な無段変速機として作動させるための電動機等の電気系の制御機器の故障や機能低下が発生したか否かを判定し、その故障や機能低下が発生したときには変速機構10を有段変速状態とする。
【0098】
前記駆動力関連値とは、車両の駆動力に1対1に対応するパラメータであって、駆動輪38での駆動トルク或いは駆動力のみならず、例えば自動変速部20の出力トルクTOU、エンジントルクT、車両加速度Gや、例えばアクセル開度Acc或いはスロットル弁開度θTH(或いは吸入空気量、空燃比、燃料噴射量)とエンジン回転速度Nとに基づいて算出されるエンジントルクTなどの実際値や、アクセル開度Acc或いはスロットル弁開度θTH等に基づいて算出される要求(目標)エンジントルクT、自動変速部20の要求(目標)出力トルクTOUT、要求駆動力等の推定値であってもよい。また、上記駆動トルクは出力トルクTOUT等からデフ比、駆動輪38の半径等を考慮して算出されてもよいし、例えばトルクセンサ等によって直接検出されてもよい。上記他の各トルク等も同様である。
【0099】
また、前記判定車速V1は、例えば高速走行において変速機構10が無段変速状態とされるとかえって燃費が悪化するのを抑制するように、その高速走行において変速機構10が有段変速状態とされるように設定されている。つまり、高速走行においては、電気パスを含まないことにより変速機構10を伝達効率の良い遊星歯車式の有段変速機として有効に利用するものである。
【0100】
また、前記判定トルクT1は、例えば車両の高出力走行においては運転者の燃費に対する要求より変速に伴ってエンジン回転速度が変化する変速フィーリングに対する要求が重視されるとの考え方から、その高出力走行において変速機構10が有段変速状態とされるように設定されている。つまり、高出力走行においては、変速機構10を無段変速機として機能させることより変速比が段階的に変化させられる有段変速機として機能させるものである。
【0101】
この図6の関係に示されるように、出力トルクTOUTが予め設定された判定出力トルクT1以上の高トルク領域、或いは車速Vが予め設定された判定車速V1以上の高車速領域が、有段制御領域として設定されているので有段変速走行がエンジン8の比較的高トルクとなる高駆動トルク時、或いは車速の比較的高車速時において実行され、無段変速走行がエンジン8の比較的低トルクとなる低駆動トルク時、或いは車速の比較的低車速時すなわちエンジン8の常用出力域において実行されるようになっている。
【0102】
これによって、例えば、車両の低中速走行および低中出力走行では、変速機構10が無段変速状態とされて車両の燃費性能が確保される。また、実際の車速Vが前記判定車速V1を越えるような高速走行では、変速機構10が有段の変速機として作動する有段変速状態とされて専ら機械的な動力伝達経路でエンジン8の出力が駆動輪38へ伝達され、電気的な無段変速機として作動させる場合に発生する動力と電気エネルギとの間の変換損失が抑制されて燃費が向上させられる。
【0103】
また、出力トルクTOUTなどの前記駆動力関連値が判定トルクT1を越えるような高出力走行では、変速機構10が有段の変速機として作動する有段変速状態とされて、ユーザは例えば図8に示すような有段自動変速走行におけるアップシフトに伴うエンジン回転速度Nの変化すなわち変速に伴うリズミカルなエンジン回転速度Nの変化が楽しめる。
【0104】
図9は複数種類のシフトポジションを人為的操作により切り換える切換装置46の一例を示す図である。この切換装置46は、例えば運転席の横に配設され、複数種類のシフトポジションを選択するために操作されるシフトレバー48を備えている。そのシフトレバー48は、例えば図2の係合作動表に示されるように第1クラッチC1および第2クラッチC2のいずれの係合装置も係合されないような変速機構10内つまり自動変速部20内の動力伝達経路が遮断されたニュートラル状態すなわち中立状態とし且つ自動変速部20の出力軸22をロックするための駐車ポジション「P(パーキング)」、後進走行のための後進走行ポジション「R(リバース)」、変速機構10内の動力伝達経路が遮断された中立状態とする中立ポジション「N(ニュートラル)」、前進自動変速走行ポジション「D(ドライブ)」、または前進手動変速走行ポジション「M(マニュアル)」へ手動操作されるように設けられている。
【0105】
例えば、上記シフトレバー48の各シフトポジションへの手動操作に連動してそのシフトレバー48に機械的に連結された油圧制御回路42内のマニュアル弁が切り換えられて、図2の係合作動表に示す後進ギヤ段「R」、ニュートラル「N」、前進ギヤ段「D」等が成立するように油圧制御回路42が機械的に切り換えられる。また、「D」または「M」ポジションにおける図2の係合作動表に示す1st乃至5thの各変速段は、油圧制御回路42内の電磁弁が電気的に切り換えられることにより成立させられる。
【0106】
上記「P」乃至「M」ポジションに示す各シフトポジションにおいて、「P」ポジションおよび「N」ポジションは、車両を走行させないときに選択される非走行ポジションであって、例えば図2の係合作動表に示されるように第1クラッチC1および第2クラッチC2のいずれもが解放されるような自動変速部20内の動力伝達経路が遮断された車両を駆動不能とする第1クラッチC1および第2クラッチC2による動力伝達経路の動力伝達遮断状態へ切換えを選択するための非駆動ポジションである。また、「R」ポジション、「D」ポジションおよび「M」ポジションは、車両を走行させるときに選択される走行ポジションであって、例えば図2の係合作動表に示されるように第1クラッチC1および第2クラッチC2の少なくとも一方が係合されるような自動変速部20内の動力伝達経路が連結された車両を駆動可能とする第1クラッチC1および/または第2クラッチC2による動力伝達経路の動力伝達可能状態へ切換えを選択するための駆動ポジションでもある。
【0107】
具体的には、シフトレバー48が「P」ポジション或いは「N」ポジションから「R」ポジションへ手動操作されることで、第2クラッチC2が係合されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達遮断状態から動力伝達可能状態とされ、シフトレバー48が「N」ポジションから「D」ポジションへ手動操作されることで、少なくとも第1クラッチC1が係合されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達遮断状態から動力伝達可能状態とされる。また、「D」ポジションは最高速走行ポジションでもあり、「M」ポジションにおける例えば「4」レンジ乃至「L」レンジはエンジンブレーキ効果が得られるエンジンブレーキレンジでもある。
【0108】
上記「M」ポジションは、例えば車両の前後方向において上記「D」ポジションと同じ位置において車両の幅方向に隣接して設けられており、シフトレバー48が「M」ポジションへ操作されることにより、「D」レンジ乃至「L」レンジの何れかがシフトレバー48の操作に応じて変更される。具体的には、この「M」ポジションには、車両の前後方向にアップシフト位置「+」、およびダウンシフト位置「−」が設けられており、シフトレバー48がそれ等のアップシフト位置「+」またはダウンシフト位置「−」へ操作されると、「D」レンジ乃至「L」レンジの何れかが選択される。例えば、「M」ポジションにおいて選択される「D」レンジ乃至「L」レンジの5つの変速レンジは、変速機構10の自動変速制御が可能なトータル変速比γTの変化範囲における高速側(変速比が最小側)のトータル変速比γTが異なる複数種類の変速レンジであり、また自動変速部20の変速が可能な最高速側変速段が異なるように変速段(ギヤ段)の変速範囲を制限するものである。また、シフトレバー48はスプリング等の付勢手段により上記アップシフト位置「+」およびダウンシフト位置「−」から、「M」ポジションへ自動的に戻されるようになっている。また、切換装置46にはシフトレバー48の各シフトポジションを検出するためのシフトポジションセンサ49が備えられており、そのシフトレバー48のシフトポジションPSHを表す信号や「M」ポジションにおける操作回数等を電子制御装置40へ出力する。
【0109】
例えば、「D」ポジションがシフトレバー48の操作により選択された場合には、図6に示す予め記憶された変速マップや切換マップに基づいて切換制御手段50により変速機構10の変速状態の自動切換制御が実行され、ハイブリッド制御手段52により動力分配機構16の無段変速制御が実行され、有段変速制御手段54により自動変速部20の自動変速制御が実行される。例えば、変速機構10が有段変速状態に切り換えられる有段変速走行時には変速機構10が例えば図2に示すような第1速ギヤ段乃至第5速ギヤ段の範囲で自動変速制御され、或いは変速機構10が無段変速状態に切り換えられる無段変速走行時には変速機構10が動力分配機構16の無段的な変速比幅と自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段の範囲で自動変速制御される各ギヤ段とで得られる変速機構10の変速可能なトータル変速比γTの変化範囲内で自動変速制御される。この「D」ポジションは変速機構10の自動変速制御が実行される制御様式である自動変速走行モード(自動モード)を選択するシフトポジションでもある。
【0110】
或いは、「M」ポジションがシフトレバー48の操作により選択された場合には、変速レンジの最高速側変速段或いは変速比を越えないように、切換制御手段50、ハイブリッド制御手段52、および有段変速制御手段54により変速機構10の各変速レンジで変速可能なトータル変速比γTの範囲で自動変速制御される。例えば、変速機構10が有段変速状態に切り換えられる有段変速走行時には変速機構10が各変速レンジで変速機構10が変速可能なトータル変速比γTの範囲で自動変速制御され、或いは変速機構10が無段変速状態に切り換えられる無段変速走行時には変速機構10が動力分配機構16の無段的な変速比幅と各変速レンジに応じた自動変速部20の変速可能な変速段の範囲で自動変速制御される各ギヤ段とで得られる変速機構10の各変速レンジで変速可能なトータル変速比γTの範囲で自動変速制御される。この「M」ポジションは変速機構10の手動変速制御が実行される制御様式である手動変速走行モード(手動モード)を選択するシフトポジションでもある。
【0111】
このように、本実施例の変速機構10(差動部11、動力分配機構16)は無段変速状態(差動状態)と非無段変速状態例えば有段変速状態(ロック状態)とに選択的に切換え可能であって、前記切換制御手段50により車両状態に基づいて差動部11の切り換えるべき変速状態が判断され、差動部11が無段変速状態と有段変速状態とのいずれかに選択的に切り換えられる。
【0112】
そして、例えば差動部11が無段変速状態であるときには、差動作用によってエンジン回転速度Nを自由に変化(設定)させられ得ることから、前記ハイブリッド制御手段52は、エンジン回転速度Nを上昇させたり低下させるようにエンジン出力制御装置43に指令を出力して、駆動トルクを増加させたり減少させたりすることが可能である。
【0113】
例えば、ハイブリッド制御手段52は、加速要求時には、アクセルペダル45の踏み込み操作に応じて車速Vに拘束されることなく速やかにエンジン回転速度Nを上昇させることが可能であるので、速やかに車両の駆動トルクが増加される。また、例えば、ハイブリッド制御手段52は、減速要求時には、アクセルペダル45の戻し操作に応じて車速Vに拘束されることなく速やかにエンジン回転速度Nを低下させることが可能であるので、速やかに車両の駆動トルクが減少される。
【0114】
一方で、例えば差動部11が非無段変速状態であるときには、差動部11も自動変速部20と同様に変速比γ0が固定され、エンジン回転速度Nも自動変速部20の入力回転速度NINと同様に車速Vと自動変速部20の変速比γとで一意的に定められる。つまり、差動部11の無段変速状態と異なりハイブリッド制御手段52により速やかにエンジン回転速度Nを上昇させたり低下させたりできない。
【0115】
そのため、例えば加速要求時には、アクセルペダル45の踏み込み操作に応じて車速Vに拘束されることなく速やかにエンジン回転速度Nを上昇させることができないので、駆動トルクの増加の応答性が低下して加速フィーリングが低下する可能性がある。また、例えば減速要求時には、アクセルペダル45の戻し操作に応じて車速Vに拘束されることなく速やかにエンジン回転速度Nを低下させることができないので、駆動トルクの減少の応答性が低下して減速フィーリングが低下する可能性がある。
【0116】
そこで、加速要求時或いは減速要求時に、加速フィーリング或いは減速フィーリングが向上される為に、ハイブリッド制御手段52により差動作用によってエンジン回転速度Nを自由に変化させられるように、前記切換制御手段50は差動部11が無段変速状態であるときにはそのまま無段変速状態とするか、或いは差動部11が非無段変速状態であるときには無段変速状態へ切り換える。
【0117】
例えば、加速要求時或いは減速要求時に常時、加速フィーリング或いは減速フィーリングが向上される為にハイブリッド制御手段52や切換制御手段50による制御作動を実施するのではなく、運転者により所定以上の加速要求或いは減速要求が成されたときに実施する。例えばこれによってハイブリッド制御手段52や切換制御手段50による制御作動が頻繁に実行されないことからその制御作動が安定する。
【0118】
具体的には、アクセル開度判定手段80は、アクセルオン或いはアクセルオフへの切換えが発生したことを判定する為に、すなわち所定以上の加速要求或いは減速要求を判断する為に、アクセル開度変化量ΔAcc或いはアクセル開度変化率Acc’(=dAcc/dt)を判定する。
【0119】
例えば、アクセル開度判定手段80は、アクセルペダル45の踏込み操作によって正のアクセル開度変化量ΔAccが所定のアクセル開度変化量Acc1以上となったか否か、或いは正のアクセル開度変化率Acc’が所定のアクセル開度変化率Acc1’以上となったか否かに基づいて、所定以上の加速要求であるか否かを判定する。
【0120】
また、例えば、アクセル開度判定手段80は、アクセルペダル45の戻し操作によって負のアクセル開度変化量ΔAccが所定のアクセル開度変化量Acc2以上となったか否か、或いは負のアクセル開度変化率Acc’が所定のアクセル開度変化率Acc2’以上となったか否かに基づいて、所定以上の減速要求であるか否かを判定する。
【0121】
所定のアクセル開度変化量Acc1、Acc2或いは所定のアクセル開度変化率Acc1’、Acc2’は、常時アクセルペダル45が操作されたときに加速フィーリング或いは減速フィーリングが向上される為にハイブリッド制御手段52や切換制御手段50による制御作動を実施するのではなく、所定以上の加速要求或いは減速要求となるアクセルペダル45の操作であるときにそのハイブリッド制御手段52や切換制御手段50による制御作動を実施する為に、予め実験的に求められた運転者による所定以上の加速要求判定値或いは減速要求判定値である。
【0122】
ロック状態判定手段82は、前記アクセル開度判定手段80により所定以上の加速要求或いは所定以上の減速要求が判定された場合には、加速フィーリング或いは減速フィーリングが向上される為にハイブリッド制御手段52や切換制御手段50により制御作動が実施される為に、動力分配機構16がロック状態すなわち差動部11が非無段変速状態とされているか否かを判定する。例えば、ロック状態判定手段82は、切換制御手段50により変速機構10が有段変速状態に切換制御される有段制御領域内か或いは変速機構10が無段変速状態に切換制御される無段制御領域内であるかの判定のための例えば図6に示す切換線図から車速Vおよび出力トルクTOUTで示される車両状態に基づいて変速機構10を非無段変速状態とする有段制御領域内であるか否かによって差動部11が非無段変速状態となっているか否かを判定する。
【0123】
前記切換制御手段50は、前記アクセル開度判定手段80により所定以上の加速要求或いは所定以上の減速要求が判定され、且つロック状態判定手段82により差動部11が非無段変速状態(ロック状態)であると判定された場合には、ハイブリッド制御手段52により差動作用によってエンジン回転速度Nを自由に変化させられる為に、差動部11の電気的な無段変速機としての作動の制限を解除するように、係合されている切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0を解放させる指令を油圧制御回路42へ出力して、差動部11を無段変速状態(差動状態)へ切り換える差動状態切換制御手段として機能する。
【0124】
例えば、切換制御手段50は、前記アクセル開度判定手段80により所定以上の加速要求或いは所定以上の減速要求が判定され、且つロック状態判定手段82により差動部11が非無段変速状態(ロック状態)であると判定された場合には、予め実験的に求めて定められた所定期間だけ差動部11を無段変速状態(差動状態)へ一時的に切り換える。そして、切換制御手段50は、その所定期間経過後に、再び差動部11を非無段変速状態へ切り換える。
【0125】
このとき、切換制御手段50は、係合されている切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0を解放することによって差動部11を無段変速状態へ一時的に切り換えたが、より速やかに再び差動部11を非無段変速状態へ切り換える為に、その解放に替えて、切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0を半係合することによって差動部11を無段変速状態へ一時的に切り換えてもよい。
【0126】
切換制御手段50は、切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0を半係合することにより、差動部11の電気的な無段変速機(差動装置)としての作動を許容しつつ、第1電動機M1が発生するトルクと切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0の半係合トルクとで差動部11へ入力されるエンジントルクTに対する反力トルクを発生させる。
【0127】
また、前記切換制御手段50は、前記アクセル開度判定手段80により所定以上の加速要求或いは所定以上の減速要求が判定され、且つロック状態判定手段82により差動部11が無段変速状態(差動状態)であると判定された場合には、差動部11の電気的な無段変速機としての作動が制限されないように、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の解放を維持することによって差動部11をそのまま無段変速状態(差動状態)とする差動状態切換制御手段として機能する。
【0128】
前記ハイブリッド制御手段52は、前記アクセル開度判定手段80により所定以上の加速要求が判定された場合には、前記切換制御手段50により無段変速状態とされた差動部11において、加速フィーリングが向上される為に、エンジン回転速度Nを上昇させて駆動トルクを増加させる。例えば、ハイブリッド制御手段52は、前述したように図示しない予め記憶された関係からアクセル開度Accに基づいてアクセル開度Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させるようにスロットル制御を実行し、速やかにエンジン回転速度Nを上昇させる。また、ハイブリッド制御手段52は、そのスロットル制御に替えて或いは加え、図示しない予め記憶された関係からアクセル開度Accに基づいてアクセル開度Accが増加するほど第1電動機回転速度NM1を引き上げることによって速やかにエンジン回転速度Nを上昇させても良い。
【0129】
また、ハイブリッド制御手段52は、前記アクセル開度判定手段80により所定以上の減速要求が判定された場合には、前記切換制御手段50により無段変速状態とされた差動部11において、減速フィーリングが向上される為に、エンジン回転速度Nを低下させて駆動トルクを減少させる。例えば、ハイブリッド制御手段52は、前述したように図示しない予め記憶された関係からアクセル開度Accに基づいてアクセル開度Accが減少するほどスロットル弁開度θTHを減少させるようにスロットル制御を実行し、速やかにエンジン回転速度Nを低下させる。また、ハイブリッド制御手段52は、そのスロットル制御に替えて或いは加え、図示しない予め記憶された関係からアクセル開度Accに基づいてアクセル開度Accが減少するほど第1電動機回転速度NM1を引き下げることによって速やかにエンジン回転速度Nを低下させても良い。
【0130】
そして、切換制御手段50により一時的に無段変速状態へ切り換えられた差動部11が再び非無段変速状態へ切り換えられるときには、切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0の係合ショックを抑制する為に、ハイブリッド制御手段52は、エンジン回転速度N或いは第1電動機回転速度NM1を切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0の係合完了後の回転速度に向かって回転制御しても良い。切換制御手段50は、ハイブリッド制御手段52によりエンジン回転速度N或いは第1電動機回転速度NM1が切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0の係合完了後の回転速度に向かって回転制御された後、差動部11を非無段変速状態へ切り換える。切換クラッチC0の係合完了後のエンジン回転速度Nや第1電動機回転速度NM1は、自動変速部20の入力回転速度NIN(=自動変速部20の変速比γ×自動変速部20の出力回転速度NOUT)である。また、切換ブレーキB0の係合完了後のエンジン回転速度Nは差動部11の変速比γ×入力回転速度NINであり、切換ブレーキB0の係合完了後の第1電動機回転速度NM1は零(回転停止)である。
【0131】
このように、ハイブリッド制御手段52は、前記切換制御手段50により無段変速状態とされた差動部11において、エンジン回転速度Nを上昇させたり低下させる回転制御手段として機能する。
【0132】
ところで、本実施例の変速機構10は、差動部11に加え自動変速部20を備えており、有段変速制御手段54により例えば図6に示す変速線図から車両状態に基づいてその変速が実行される。例えば、前記アクセル開度判定手段80により所定以上の加速要求或いは所定以上の減速要求が判定されるようなアクセルペダル45の操作に伴って自動変速部20の変速が実行される場合も考えられる。
【0133】
このような自動変速部20の変速が実行される場合にも、切換制御手段50により無段変速状態とされた差動部11において、ハイブリッド制御手段52によりエンジン回転速度Nが上昇されたり低下される。
【0134】
例えば、ハイブリッド制御手段52は、前記アクセル開度判定手段80により所定以上の加速要求が判定されたときに、有段変速制御手段54により自動変速部20のパワーオンダウンシフトが実行される場合には、前記切換制御手段50により無段変速状態とされた差動部11において、加速フィーリングが向上される為に、その自動変速部20の変速の初期に、例えばアクセル開度判定手段80による加速要求の判定直後からその自動変速部20の変速に伴って入力回転速度NINが変化するまでの間に、速やかにエンジン回転速度Nを上昇させて駆動トルクを増加させる。よって、変速ショックの抑制と変速時間の短縮とが両立するように予め設定されている変速に関与する解放側係合装置および係合側係合装置の係合油圧や解放と係合との作動タイミングによってある程度の変速時間が必要な自動変速部20のダウンシフトが差動部11の非無段変速状態のまま実行される場合に比較して、エンジン回転速度がより早く上昇する。
【0135】
また、例えば、ハイブリッド制御手段52は、前記アクセル開度判定手段80により所定以上の減速要求が判定されたときに、有段変速制御手段54により自動変速部20のアップシフトが実行される場合には、前記切換制御手段50により無段変速状態とされた差動部11において、減速フィーリングが向上される為に、その自動変速部20の変速の初期に、速やかにエンジン回転速度Nを低下させて駆動トルクを減少させる。よって、ある程度の変速時間が必要な自動変速部20のアップシフトが差動部11の非無段変速状態のまま実行される場合に比較して、エンジン回転速度がより早く低下する。
【0136】
また、ハイブリッド制御手段52は、前記アクセル開度判定手段80により所定以上の加速要求或いは所定以上の減速要求が判定されたときに、有段変速制御手段54により自動変速部20の変速が実行される場合には、切換制御手段50により一時的に無段変速状態へ切り換えられた差動部11が再び非無段変速状態へ切り換えられるときの切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0の係合ショックを抑制する為に、その自動変速部20の変速の終期に、例えば自動変速部20の変速に伴って入力回転速度NINの変化が開始してからその変速が終了するまでの間に、エンジン回転速度Nを差動部11の非無段変速状態への切換え後におけるエンジン回転速度Nとなるように、すなわちエンジン回転速度Nを切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0の係合完了後の回転速度となるように、第1電動機M1を用いて調整する。
【0137】
言い換えれば、ハイブリッド制御手段52は、第1電動機回転速度NM1を切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0の係合完了後の回転速度に向かって回転制御する。或いは、ハイブリッド制御手段52は、切換クラッチC0の係合時には第1電動機回転速度Nをエンジン回転速度Nに向かって回転制御し、或いは切換ブレーキB0の係合時には第1電動機回転速度NM1を零に向かって回転制御するとも言える。切換クラッチC0の係合完了後のエンジン回転速度Nや第1電動機回転速度NM1は、変速終了後の自動変速部20の入力回転速度NIN(=変速終了後の自動変速部20の変速比γ×自動変速部20の出力回転速度NOUT)である。また、切換ブレーキB0の係合完了後のエンジン回転速度Nは差動部11の変速比γ×入力回転速度NINであり、切換ブレーキB0の係合完了後の第1電動機回転速度NM1は零(回転停止)である。
【0138】
そして、切換制御手段50は、ハイブリッド制御手段52によりエンジン回転速度Nが切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0の係合完了後の回転速度に向かって回転制御された後、一時的に無段変速状態へ切り換えられた差動部11を非無段変速状態へ切り換える。
【0139】
変速終期判定手段84は、自動変速部20の変速過程において変速終期が始まったか否かを、例えば有段変速制御手段54による自動変速部20の変速判断に伴って解放側係合装置が解放された後、係合側係合装置が係合トルク容量を持ち始めたことにより入力回転速度NINが変化し始めたか否かで判定する。
【0140】
例えば、変速終期判定手段84は、有段変速制御手段54による自動変速部20の変速過程において、実際の入力回転速度NINが予め実験的に定められた所定量変化したか否か、有段変速制御手段54による自動変速部20の変速判断から係合側係合装置が係合トルク容量を持ち始める時間として予め実験的に求められて定められた所定時間経過したか否か、或いは係合側係合装置の係合油圧が係合トルク容量を持ち始める油圧(指令)値として予め実験的に求められて定められた係合過渡油圧(指令)値Pとなったか否かなどに基づいて、係合側係合装置が係合トルク容量を持ち始めたことにより入力回転速度Nが変化し始めたか否かを判定する。
【0141】
また、変速終期判定手段84は、自動変速部20の変速が終了したか否かを、有段変速制御手段54による自動変速部20の変速に伴って入力回転速度NINの変化が開始した後、その入力回転速度NINが変速終了後の入力回転速度NINに略一致したと判断されるか否かで判定する。
【0142】
図10は、電子制御装置40の制御作動の要部すなわち加速要求時或いは減速要求時の差動部11の切換制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。
【0143】
また、図11は、図10のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであり、差動部11の有段変速状態(ロック状態)において自動変速部20の2速→3速アップシフトが実行された場合での制御作動を示している。
【0144】
また、図12は、図10のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであり、差動部11の有段変速状態(ロック状態)において自動変速部20の3速→2速パワーオンダウンシフトが実行された場合での制御作動を示している。
【0145】
先ず、前記アクセル開度判定手段80に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S1において、アクセルペダル45の踏込み操作によって正のアクセル開度変化量ΔAccが所定のアクセル開度変化量Acc1以上となったか否か、或いは正のアクセル開度変化率Acc’が所定のアクセル開度変化率Acc1’以上となったか否かに基づいて、所定以上の加速要求であるか否かが判定される。或いはまた、アクセルペダル45の戻し操作によって負のアクセル開度変化量ΔAccが所定のアクセル開度変化量Acc2以上となったか否か、或いは負のアクセル開度変化率Acc’が所定のアクセル開度変化率Acc2’以上となったか否かに基づいて、所定以上の減速要求であるか否かが判定される。
【0146】
図11のt時点は、所定以上の減速要求が判定されるアクセルペダル45の戻し操作(アクセルオフ)が行われたことを示している。
【0147】
図12のt時点は、所定以上の加速要求が判定されるアクセルペダル45の踏み込み操作(アクセルオン)が行われたことを示している。
【0148】
前記S1の判断が肯定される場合は前記ロック状態判定手段82に対応するS2において、動力分配機構16がロック状態すなわち差動部(無段部)11が非無段変速状態とされているか否かが、例えば図6に示す切換線図から車両状態に基づいて変速機構10を非無段変速状態とする有段制御領域内であるか否かによって差動部11が非無段変速状態となっているか否かが判定される。
【0149】
上記S2の判断が肯定される場合は前記切換制御手段50に対応するS3において、差動部11の電気的な無段変速機としての作動の制限を解除するように、係合されている切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0を解放させる指令を油圧制御回路42へ出力して、差動部11を一時的に無段変速状態(差動状態)へ切り換える。
【0150】
図11のt時点は、所定以上の減速要求が判定されるアクセルオフが行われたことにより差動部(無段部)11が非無段変速状態(ロック状態)から無段変速状態(非ロック状態)へ切り換えられたことを示している。
【0151】
図12のt時点は、所定以上の加速要求が判定されるアクセルオンが行われたことにより差動部(無段部)11が非無段変速状態(ロック状態)から無段変速状態(非ロック状態)へ切り換えられたことを示している。
【0152】
前記S2の判断が否定されるか、或いは上記S3に続いて、前記ハイブリッド制御手段52に対応するS4において、例えば、アクセルペダル45の踏込み操作による所定以上の加速要求である場合には、加速フィーリングが向上される為に、例えばアクセル開度Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させるようにスロットル制御を実行したり、或いはまたアクセル開度Accが増加するほど第1電動機回転速度NM1を引き上げることによって、速やかにエンジン回転速度Nを上昇させて駆動トルクを増加させる。或いは、アクセルペダル45の戻し操作による所定以上の減速要求である場合には、減速フィーリングが向上される為に、例えばアクセル開度Accが減少するほどスロットル弁開度θTHを減少させるようにスロットル制御を実行することによって、速やかにエンジン回転速度Nを低下させて駆動トルクを減少させる。
【0153】
図11のt時点以降に示すように、無段変速状態とされた差動部11において、アクセルオフと同時にエンジン回転速度Nが低下させられる。このときアップシフトが開始される前であることから車速Vが略一定であるならば自動変速部20の入力回転速度Nは略一定であるので、第1電動機回転速度NM1も低下している。見方を換えれば、アクセルオフに応じたスロットル制御によってエンジン回転速度Nを低下させることに替えて或いは加えて、第1電動機回転速度NM1をt時点以降に示すように積極的に低下させてエンジン回転速度Nを低下させても良い。
【0154】
図12のt時点以降に示すように、無段変速状態とされた差動部11において、アクセルオンと同時にエンジン回転速度Nが上昇させられる。このときダウンシフトが開始される前であることから車速Vが略一定であるならば自動変速部20の入力回転速度Nは略一定であるので、第1電動機回転速度NM1も上昇している。見方を換えれば、アクセルオンに応じたスロットル制御によってエンジン回転速度Nを上昇させることに替えて或いは加えて、第1電動機回転速度NM1をt時点以降に示すように積極的に上昇させてエンジン回転速度Nを上昇させても良い。
【0155】
前記S4に続いて、前記有段変速制御手段54に対応するS5において、アクセルペダル45の踏込み操作による所定以上の加速要求時或いはアクセルペダル45の戻し操作による所定以上の減速要求時に、変速を伴うときには、例えば図6に示す変速線図から車両状態に基づいて自動変速部20の変速すべき変速段が判断されるときには、その判断された変速段が得られるように自動変速部20の変速を実行させる指令が油圧制御回路42へ出力される。
【0156】
図11のt時点は、差動部(無段部)11の非無段変速状態(ロック状態)において、自動変速部20の2速→3速アップシフトが判断され、自動変速部20の3速への変速指令が出力されて、解放側係合装置となる第2ブレーキB2の解放油圧PB2の低下が開始されたことを示している。
【0157】
図12のt時点は、差動部(無段部)11の非無段変速状態(ロック状態)において、自動変速部20の3速→2速ダウンシフトが判断され、自動変速部20の2速への変速指令が出力されて、解放側係合装置となる第1ブレーキB1の解放油圧PB1の低下が開始されたことを示している。
【0158】
前記S5に続いて、前記変速終期判定手段84に対応するS6において、自動変速部20の変速過程において変速終期が始まったか否かが、例えば自動変速部20の変速判断に伴って解放側係合装置が解放された後、係合側係合装置が係合トルク容量を持ち始めたことにより入力回転速度NINが変化し始めたか否かで判定される。
【0159】
図11のt時点乃至t時点に示すように、係合側係合装置となる第1ブレーキB1の係合油圧PB1が上昇され、t時点にてその第1ブレーキB1が係合完了されて一連の変速作動が終了する。また、t時点は第1ブレーキB1が係合トルク容量を持ち始めたことにより入力回転速度NINが変化し始め、変速過渡過程において変速終期が始まったことを示している。従って、図11の実施例においては、t時点乃至t時点が変速初期であり、t時点乃至t時点が変速終期である。そして、この変速初期にて、上述したようにエンジン回転速度Nが低下させられる。また、このt時点乃至t時点における解放側係合装置の過渡油圧と係合側係合装置の過渡油圧とは、変速中の入力回転速度NINの変化が変速時間の短縮と変速ショックの抑制とが両立するように予め実験的に求められて定められた所定の変化率となるように予め一律に設定されている。
【0160】
図12のt時点乃至t時点に示すように、係合側係合装置となる第2ブレーキB2の係合油圧PB2が上昇され、t時点にてその第2ブレーキB2が係合完了されて一連の変速作動が終了する。また、t時点は第2ブレーキB2が係合トルク容量を持ち始めたことにより入力回転速度NINが変化し始め、変速過渡過程において変速終期が始まったことを示している。従って、図12の実施例においては、t時点乃至t時点が変速初期であり、t時点乃至t時点が変速終期である。そして、この変速初期にて、上述したようにエンジン回転速度Nが上昇させられる。また、このt時点乃至t時点における解放側係合装置の過渡油圧と係合側係合装置の過渡油圧とは、変速中に伝達部材回転速度N18の変化が予め実験的に求められて定められた上記所定の変化率となるように予め一律に設定されている。また、図に示すように、例えば係合側係合装置の油圧供給開始時にはその係合側係合装置のパッククリアランスを速やかに詰める為に作動油が急速充填されるように高い油圧値指令が出力され、そしてそのまま高い油圧で係合されるとショックが発生する可能性があるので係合開始時点では一旦低い油圧値指令が出力され、その後係合完了時の油圧値に向かって漸増するように油圧値指令が出力される。
【0161】
上記S6の判断が否定される場合は前記S4に戻るが肯定される場合は前記ハイブリッド制御手段52に対応するS7において、例えば差動部11が一時的に無段変速状態へ切り換えられている場合には、自動変速部20の変速過程における入力回転速度NINの変化開始から変速終了までの変速終期中には、エンジン回転速度Nが切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0の係合完了後の回転速度となるように第1電動機M1を用いて調整される。
【0162】
図11のt時点乃至t時点は、エンジン回転速度N(第1電動機回転速度NM1)が切換クラッチC0の係合完了後の回転速度となるように、第1電動機M1を用いて調整されていることを示している。この図11の実施例では、変速初期にエンジン回転速度Nが切換クラッチC0の係合完了後の回転速度となるように低下されている為、この変速終期において入力回転速度NINの低下に拘わらずエンジン回転速度Nがその切換クラッチC0の係合完了後の回転速度に維持されるように、変速初期に一時的に低下した第1電動機回転速度NM1が上昇されていることを示している。また、エンジン回転速度Nにおける破線は、差動部11が無段変速状態へ切り換えられず非無段変速状態において自動変速部20のアップシフトが実行された従来例の場合におけるエンジン回転速度Nの変化を示している。このように、実線で示す本実施例の場合の方が、従来例に比較して先行してエンジン回転速度Nが低下されて、減速フィーリングが向上する。
【0163】
図12のt時点乃至t時点は、エンジン回転速度N(第1電動機回転速度NM1)が切換クラッチC0の係合完了後の回転速度となるように、第1電動機M1を用いて調整されていることを示している。この図12の実施例では、変速初期にエンジン回転速度Nが切換クラッチC0の係合完了後の回転速度となるように上昇されている為、この変速終期において入力回転速度NINの上昇に拘わらずエンジン回転速度Nがその切換クラッチC0の係合完了後の回転速度に維持されるように、変速初期に一時的に上昇した第1電動機回転速度NM1が低下されていることを示している。また、エンジン回転速度Nにおける破線は、差動部11が無段変速状態へ切り換えられず非無段変速状態において自動変速部20のダウンシフトが実行された従来例の場合におけるエンジン回転速度Nの変化を示している。このように、実線で示す本実施例の場合の方が、従来例に比較して先行してエンジン回転速度Nが上昇されて、加速フィーリングが向上する。
【0164】
続いて、前記切換制御手段50に対応するS8において、エンジン回転速度Nが切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0の係合完了後の回転速度に向かって回転制御された後、すなわち第1電動機回転速度NM1が切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0の係合完了後の回転速度に向かって回転制御された後、一時的に無段変速状態へ切り換えられた差動部11が再び非無段変速状態へ切り換えられる。
【0165】
図11のt時点は、エンジン回転速度N(第1電動機回転速度NM1)が切換クラッチC0の係合完了後の回転速度に回転制御(同期制御)されたことにより差動部(無段部)11が一時的な無段変速状態(非ロック状態)から非無段変速状態(ロック状態)へ再び切り換えられたことを示している。
【0166】
図12のt時点は、エンジン回転速度N(第1電動機回転速度NM1)が切換クラッチC0の係合完了後の回転速度に回転制御(同期制御)されたことにより差動部(無段部)11が一時的な無段変速状態(非ロック状態)から非無段変速状態(ロック状態)へ再び切り換えられたことを示している。
【0167】
前記S1の判断が否定される場合はS9において、所定以上の加速要求や所定以上の減速要求がない場合の制御装置40の各種制御手段による制御作動が実行されるか或いは本ルーチンが終了させられる。
【0168】
上述のように、本実施例によれば、差動部11の電気的な差動装置としての作動を制限する差動制限装置としての切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0により、例えば差動部11が無段変速状態と非無段変速状態とに切り換えられることから、電気的に変速比が変更させられる変速機の燃費改善効果と機械的に動力を伝達する歯車式伝動装置の高い伝達効率との両長所を兼ね備えた駆動装置が得られる。
【0169】
例えば、車両の低中速走行および低中出力走行となるようなエンジンの常用出力域において差動部11が無段変速状態とされると、車両の燃費性能が確保される。また、高速走行において差動部11が非無段変速状態とされると、専ら機械的な動力伝達経路でエンジン8の出力が駆動輪へ伝達されて、電気的に変速比が変更させられる変速機として作動させる場合に発生する動力と電気エネルギとの間の変換損失が抑制されるので、燃費が向上させられる。また、高出力走行において差動部11が非無段変速状態とされると、運転者は変速に伴うリズミカルなエンジン回転速度Nの変化が楽しめる。
【0170】
また、加速要求時或いは減速要求時には、切換制御手段50により差動部11が無段変速状態とされて車速Vに拘わらずハイブリッド制御手段52によりエンジン回転速度Nが自由に設定されるので、加速フィーリング(加速感)或いは減速フィーリング(減速感)が向上する。
【0171】
例えば、加速要求時には、ハイブリッド制御手段52によりアクセルペダル45の踏込み操作に応じてエンジン回転速度Nが上昇させられて速やかに駆動トルクが増加され、車両の加速性能が向上して加速フィーリング(加速感)が向上する。また、例えば、減速要求時には、ハイブリッド制御手段52によりアクセルペダル45の戻し操作に応じてエンジン回転速度Nが低下させられて速やかに駆動トルクが減少され、車両の減速性能が向上して減速フィーリング(減速感)が向上する。
【0172】
また、本実施例によれば、切換制御手段50は、係合されている切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0を解放することによって差動部11を差動状態とするので、差動部11がその切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0により簡単に差動状態とされたり、或いはまたロック状態とされて、電気的に変速比が変更させられる変速機の燃費改善効果と機械的に動力を伝達する歯車式伝動装置の高い伝達効率との両長所を兼ね備えた駆動装置が得られる。また、加速要求時或いは減速要求時には、係合されている切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0の解放により簡単に差動部11が差動状態とされるので、ハイブリッド制御手段52により車速Vに拘わらずエンジン回転速度Nが自由に設定され得る。
【0173】
特に、切換制御手段50は、係合されている切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0を半係合することによって差動部11を一時的に差動状態とすれば、差動部11を差動状態とする為に係合されている切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0が解放されることに比較して、より速やかに切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0を再び係合することが可能である。
【0174】
また、本実施例によれば、加速要求時に自動変速部20の変速が行われる場合には、ハイブリッド制御手段52によりそのダウンシフト初期からアクセルペダル45の踏込み操作に応じて速やかに駆動トルクが増加され、自動変速部20の変速時間(変速応答性)に拘わらず車両の加速性能が向上して加速フィーリング(加速感)が向上する。
【0175】
また、本実施例によれば、減速要求時に自動変速部20の変速が行われる場合には、ハイブリッド制御手段52によりそのアップシフト初期からアクセルペダル45の戻し操作に応じて速やかに駆動トルクが減少され、自動変速部20の変速時間(変速応答性)に拘わらず車両の減速性能が向上して減速フィーリング(減速感)が向上する。
【0176】
また、本実施例によれば、ハイブリッド制御手段52は、加速要求時或いは減速要求時に自動変速部20の変速が行われる場合には、その変速終期にエンジン回転速度Nを切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0の係合後の回転速度となるように、第1電動機M1を用いて調整するので、一時的に差動状態とされた差動部11を再び非差動状態とするときの係合ショックの発生が抑制される。
【0177】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において実施例相互に共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0178】
前述の実施例では、加速要求時或いは減速要求時には、加速フィーリング或いは減速フィーリングが向上される為に、ハイブリッド制御手段52により差動作用によってエンジン回転速度Nを自由に変化させられるように、前記切換制御手段50により差動部11が無段変速状態であるときにはそのまま無段変速状態とされるか、或いは差動部11が非無段変速状態であるときには無段変速状態へ切り換えられた。
【0179】
ところで、この加速要求時或いは減速要求時には、前記ハイブリッド制御手段52によりアクセル開度Accや車速Vに応じたエンジントルクTが発生させられる。つまり、加速要求時或いは減速要求時には、アクセルペダル45の踏み込み操作或いはアクセルペダル45の戻し操作(以下、アクセルオン・オフという)に伴ってエンジントルクTが変化させられる。そして、アクセルオン・オフに伴うエンジントルクTの変化は、駆動輪38における駆動トルクに直接的に反映される方が心地がよい(フィーリングがよい)と思われる。反面、このエンジントルクTの変化は駆動輪38へ伝達されてショックが発生する要因となるものであり、エンジントルクTの変化が急である程、またエンジントルクTの変化が大きい程より大きなショックが発生する可能性がある。
【0180】
有段変速機とエンジンとの間の動力伝達経路にトルクコンバータやフルードカップリング等の流体伝動装置を備える良く知られた動力伝達装置においては、その流体伝動装置によってエンジン側と有段変速機側の回転速度差が許容され、エンジントルクTの変化に比較して駆動輪38へ伝達されるトルクの変化が抑制されてアクセルオン・オフに伴うショックが抑制される。
【0181】
本実施例の変速機構10は、エンジン8と自動変速部20との間の動力伝達経路に上記流体伝動装置を備えていないが、加速要求時或いは減速要求時には、差動部11が無段変速状態とされることから、差動部11の差動作用によってエンジン回転速度Nが車速に対して自由に設定され得る。よって、例えば加速要求時には、増加したエンジントルクTはエンジン回転速度Nの変化によりエンジンイナーシャに費やされる為、駆動輪38へ伝達されるトルクの変化が減少してアクセルオンに伴うショックが抑制される。また、例えば減速要求時には、エンジン回転速度Nが自由に低下させられ得て、駆動輪38はエンジンブレーキによる回転速度の低下が急には発生しないので、アクセルオフに伴うショックが発生し難い。
【0182】
ところが、切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0の故障(フェール)等によって、切換制御手段50により差動部11が非無段変速状態から無段変速状態へ切り換えられないことも考えられる。そうすると、加速要求時或いは減速要求時には、アクセル変化に伴うエンジントルクTの変化が直接的に駆動輪38へ伝達されて、差動部11の無段変速状態に比較してアクセルオン・オフに伴ってより大きなショックが発生する可能性がある。
【0183】
そこで、加速要求時或いは減速要求時に切換制御手段50による差動部11の無段変速状態への切換えが行えないときには、アクセルオン・オフに伴うエンジントルクTの変化が直接的に駆動輪38へ伝達される状態であっても、アクセルオン・オフに伴うショックの発生が抑制される為に、駆動輪38へ伝達されるトルク変化が緩やかにされるように、アクセルペダル45の操作に対する例えばアクセルオン・オフに伴うアクセル開度変化量ΔAccに対する差動部11の入力トルクT11の応答性を変更する。以下、入力トルクT11の応答性は、アクセルオン・オフに伴うアクセル開度変化量ΔAccに対する入力トルクT11の応答性のことであり、応答性を変更するとは、応答性を低下させることである。
【0184】
具体的には、図13は、電子制御装置40による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図であって、前記図5に相当する図である。図13において、差動状態切換可否判定手段86は、前記アクセル開度判定手段80により所定以上の加速要求或いは所定以上の減速要求が判定されすなわちアクセルオン或いはアクセルオフへの切換えが発生したと判定され、且つロック状態判定手段82により差動部11が非無段変速状態(ロック状態)であると判定された場合には、前記切換制御手段50により差動部11が非無段変速状態(有段変速状態)から無段変速状態(差動状態)へ切り換えられ得るか否かを、例えば前記油圧制御回路42により係合されている切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0が切換制御手段50による指令に従って解放可能か否かにより判定する。例えば、差動状態切換可否判定手段86は、切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0の摩擦材や油圧アクチュエータのフェール、その油圧アクチュエータを制御するための油圧制御回路42に含まれる電磁弁のフェール、或いはそれら油圧アクチュエータや電磁弁等の機能低下や低油温による応答遅れなどに基づいて、切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0の解放が可能か否かを判定する。低油温による応答遅れなどは、実際には切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0の解放が可能であるものの、アクセルオン・オフに伴うエンジントルクTの変化に比較して遅い為に、そのエンジントルクTの変化が直接的に駆動輪38へ伝達されてしまうということから、実質、無段変速状態へ切り換えられないと判定されるのである。
【0185】
トルク応答性変更手段88は、前記アクセル開度判定手段80により所定以上の加速要求或いは所定以上の減速要求が判定され、且つロック状態判定手段82により差動部11が非無段変速状態であると判定されたときに、前記差動状態切換可否判定手段86により切換制御手段50による差動部11の非無段変速状態(有段変速状態)から無段変速状態(差動状態)への切換えが行えられないと判定された場合には、駆動輪38へ伝達されるトルク変化が緩やかにされるように、差動部11の入力トルクT11の応答性を変更する。
【0186】
具体的には、トルク応答性変更手段88は、アクセルオン・オフに伴うアクセル開度変化量ΔAccに対するエンジントルクTの応答性(以下、エンジントルクTの応答性は、アクセルオン・オフに伴うアクセル開度変化量ΔAccに対するエンジントルクTの応答性のことである。)を変更することによってすなわちエンジントルクの応答性を低下させることによって差動部11の入力トルクT11の応答性を変更する。例えば、トルク応答性変更手段88は、アクセルオン・オフに伴うエンジントルクの変化を所定なまし量でなますことによって、エンジントルクTの応答性を変更する。つまり、トルク応答性変更手段88は、駆動輪38へ伝達されるトルク変化が緩やかにされるように、アクセルオン・オフに伴うエンジントルクTの変化を所定なまし量で緩やかに変化するようになますことによって、差動部11の入力トルクT11の変化を所定なまし量で緩やかに変化するようになまして、差動部11の入力トルクT11の応答性を変更する。
【0187】
図14は、予め設定されたアクセル開度変化率Acc’と差動部11の入力トルクT11の所定なまし量との関係を示す一例である。図14(a)はアクセルオンの加速要求時における入力トルクT11のなまし量であり、(b)はアクセルオフの減速要求時における入力トルクT11のなまし量である。また、差動部11が非無段変速状態とされているとき(ロック時)には、無段変速状態とされているとき(非ロック時)に比較してアクセルオン・オフに伴ってより大きなショックが発生する可能性があることから、図14に示すように、ロック時は非ロック時に比較してなまし量が多くなるように設定されている。但し、非ロック時には、前述した通り、アクセルオン・オフに伴うショックの発生がある程度抑制される為、なまし量が設定されず、トルク応答性変更手段88により差動部11の入力トルクT11がなまされなくとも良い。
【0188】
トルク応答性変更手段88は、図14の関係から実際のアクセル開度変化率Acc’に基づいて差動部11の入力トルクT11のなまし量を設定し、そのなまし量が得られるようにエンジントルクTの変化をなます。これにより、加速要求時にはアクセルオンに伴うエンジントルクTの立ち上がりが所定なまし量で緩やかに変化するようになまされ、駆動輪38へ伝達されるトルク変化が緩やかにされてショックの発生が抑制される。或いは減速要求時にはアクセルオフに伴うエンジントルクTの立ち下がりが所定なまし量で緩やかに変化するようになまされ、駆動輪38へ伝達されるトルク変化が緩やかにされてショックの発生が抑制される。
【0189】
トルク応答性変更手段88は、アクセルオン・オフに伴うエンジントルクTの変化を所定なまし量でなますように、例えば電子スロットル弁94の開度の変化速度によってエンジントルクTの変化を調整する指令をハイブリッド制御手段52に出力する。ハイブリッド制御手段52は、その指令に従って、例えば加速要求時には電子スロットル弁94を所定なまし量が得られる為に予め定められた所定速度で開くことによりエンジントルクTの立ち上がり変化をなます指令をエンジン出力制御装置43に出力する。また、ハイブリッド制御手段52は、その指令に従って、例えば減速要求時には電子スロットル弁94を所定なまし量が得られる為に予め定められた所定速度で閉じることによりエンジントルクTの立ち下がり変化をなます指令をエンジン出力制御装置43に出力する。
【0190】
特に加速要求時には、トルク応答性変更手段88は、アクセルオンに伴うエンジントルクTの変化を所定なまし量でなますように、エンジン8の点火時期を遅角させることによるエンジントルクダウン制御によってエンジントルクTの立ち上がり変化を調整する指令をハイブリッド制御手段52に出力しても良い。ハイブリッド制御手段52は、その指令に従って、加速要求時には点火装置98によりエンジン8の点火時期を所定なまし量が得られる為に予め定められた所定値で遅角させることによってエンジントルクTの立ち上がり変化をなます指令をエンジン出力制御装置43に出力する。
【0191】
また、差動部11の非差動状態においてはエンジン8から駆動輪38への動力伝達経路が機械的に連結されることからエンジントルクTに第1電動機M1および/または第2電動機M2のトルクを加えて(減じて)駆動輪38へトルクが伝達され得る。そこで、トルク応答性変更手段88は、エンジントルクTの応答性を変更することに替えて或いは加えて、第1電動機M1および/または第2電動機M2のトルクによってアクセルオン・オフに伴うエンジントルクTの変化を所定量だけ相殺して差動部11の入力トルクTの応答性を変更しても良い。
【0192】
例えば、トルク応答性変更手段88は、駆動輪38へ伝達されるトルク変化が緩やかにされるように、アクセルオン・オフに伴うエンジントルクTの変化を第1電動機M1および/または第2電動機M2のトルクによって所定量だけ相殺することによって、差動部11の入力トルクT11の変化を所定なまし量で緩やかに変化するようになまして、差動部11の入力トルクT11の応答性を変更する。
【0193】
トルク応答性変更手段88は、前記図14の関係から実際のアクセル開度変化率Acc’に基づいて差動部11の入力トルクT11のなまし量を設定し、そのなまし量が得られるように、エンジントルクTの変化を第1電動機M1および/または第2電動機M2のトルクによって所定量だけ相殺する。これにより、加速要求時にはアクセルオンに伴うエンジントルクTの立ち上がり変化が所定量だけ相殺され、駆動輪38へ伝達されるトルク変化が緩やかにされてショックの発生が抑制される。或いは減速要求時にはアクセルオフに伴うエンジントルクTの立ち下がり変化が所定量だけ相殺され、駆動輪38へ伝達されるトルク変化が緩やかにされてショックの発生が抑制される。また、エンジントルクTの変化をなますことに加えて、第1電動機M1および/または第2電動機M2のトルクによってエンジントルクTの変化を相殺する場合には、トルク応答性変更手段88は、エンジントルクTの変化をなますなまし量と第1電動機M1および/または第2電動機M2のトルクによるエンジントルクTの変化の相殺量とを合わせて、差動部11の入力トルクT11を所定なまし量でなます。
【0194】
トルク応答性変更手段88は、アクセルオン・オフに伴うエンジントルクTの変化を所定量相殺して差動部11の入力トルクT11を所定なまし量でなますように、第1電動機M1および/または第2電動機M2の出力トルクを調整する指令をハイブリッド制御手段52に出力する。ハイブリッド制御手段52は、その指令に従って、例えば加速要求時には所定なまし量が得られる為に予め定められた所定量でエンジントルクTの変化を相殺するように第1電動機M1および/または第2電動機M2から逆駆動トルクを発生させる指令をインバータ58に出力する。また、ハイブリッド制御手段52は、その指令に従って、例えば減速要求時には所定なまし量が得られる為に予め定められた所定量でエンジントルクTの変化を相殺するように第1電動機M1および/または第2電動機M2から駆動トルクを発生させる指令をインバータ58に出力する。
【0195】
尚、第1電動機M1および/または第2電動機M2のトルクによって差動部11の入力トルクT11の変化をなますことは、差動部11がロック状態(非差状態)とされているときに限られるが、差動部11が非ロック状態(差状態)とされているときであっても伝達部材18に伝達されるトルクの変化をなますことは第2電動機M2のトルクによって可能である。そこで、トルク応答性変更手段88は、差動部11の入力トルクT11の変化をなますことと同様に、第2電動機M2のトルクによって伝達部材18に伝達されるトルクの変化をなましても良い。これによって、駆動輪38へ伝達されるトルク変化が緩やかにされてショックの発生を抑制される。
【0196】
図15は、図13の電子制御装置の制御作動すなわち加速要求時或いは減速要求時の差動部11の入力トルクT11の応答性を変更する制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。
【0197】
また、図16は、図15のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであり、差動部11の有段変速状態(ロック状態)においてアクセルペダル45が踏み込み操作された場合での制御作動であって、ロック時と非ロック時とでの差動部11の入力トルクT11変化をなます制御作動の比較を示している。
【0198】
また、図17は、図15のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであり、差動部11の有段変速状態(ロック状態)においてアクセルペダル45が戻し操作された場合での制御作動であって、ロック時と非ロック時とでの差動部11の入力トルクT11変化をなます制御作動の比較を示している。
【0199】
先ず、前記アクセル開度判定手段80に対応するSB1において、アクセルオンへの切換えが発生したか否かが、例えば、アクセルペダル45の踏込み操作によって正のアクセル開度変化量ΔAccが所定のアクセル開度変化量Acc1以上となったか否かによって判定される。或いはまた、アクセルオフへの切換えが発生したか否かが、例えばアクセルペダル45の戻し操作によって負のアクセル開度変化量ΔAccが所定のアクセル開度変化量Acc2以上となったか否かによって判定される。
【0200】
図16のt時点は、差動部11の有段変速状態(ロック状態)において、アクセルペダル45の踏み込み操作(アクセルオン)が行われたことを示している。
【0201】
図17のt時点は、差動部11の有段変速状態(ロック状態)において、アクセルペダル45の戻し操作(アクセルオフ)が行われたことを示している。
【0202】
前記SB1の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合は前記差動状態切換可否判定手段86に対応するSB2において、前記切換制御手段50により差動部11が非無段変速状態(有段変速状態)から無段変速状態(差動状態)へ切り換えられ得るか否かが、例えば係合されている切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0が切換制御手段50による指令に従って解放可能か否かにより判定される。
【0203】
上記SB2の判断が否定される場合は前記トルク応答性変更手段88に対応するSB3において、例えば図14の関係から実際のアクセル開度変化率Acc’に基づいてロック時の差動部11の入力トルクT11の所定なまし量が設定される。つまり、エンジントルクTの変化をなます為のなまし量、および/または第1電動機M1および/または第2電動機M2のトルクによるエンジントルクTの変化の相殺量とが設定される。
【0204】
上記SB2の判断が肯定される場合は前記切換制御手段50に対応するSB4において、差動部11の電気的な無段変速機としての作動の制限を解除するように、係合されている切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0を解放させる指令が油圧制御回路42へ出力されて、差動部11が一時的に無段変速状態(差動状態)へ切り換えられる。また、差動部11の入力トルクT11をなます場合には、このSB4にてトルク応答性変更手段88により例えば図14の関係から実際のアクセル開度変化率Acc’に基づいて非ロック時の差動部11の入力トルクT11の所定なまし量が設定される。つまり、エンジントルクTの変化をなます為のなまし量が設定される。
【0205】
図16のt時点は、差動部(無段部)11が非無段変速状態(ロック状態)から無段変速状態(非ロック状態)へ切り換えられたことを示している。
【0206】
図17のt時点は、差動部(無段部)11が非無段変速状態(ロック状態)から無段変速状態(非ロック状態)へ切り換えられたことを示している。
【0207】
前記SB3或いは前記SB4に続いて、前記トルク応答性変更手段88および前記ハイブリッド制御手段52に対応するSB5において、電子スロットル弁94の開度の変化速度によってエンジントルクTの変化を調整する指令がハイブリッド制御手段52に出力される。その指令に従って、例えば加速要求時にはハイブリッド制御手段52により電子スロットル弁94を所定なまし量が得られる為に予め定められた所定速度で開くことによりエンジントルクTの立ち上がり変化をなます指令がエンジン出力制御装置43に出力される。また、その指令に従って、例えば減速要求時にはハイブリッド制御手段52により電子スロットル弁94を所定なまし量が得られる為に予め定められた所定速度で閉じることによりエンジントルクTの立ち下がり変化をなます指令がエンジン出力制御装置43に出力される。
【0208】
また、差動部11のロック状態においては、エンジントルクTの応答性を変更することに替えて或いは加えて、第1電動機M1および/または第2電動機M2の出力トルクを調整する指令がハイブリッド制御手段52に出力される。その指令に従って、例えば加速要求時にはハイブリッド制御手段52により所定なまし量が得られる為に予め定められた所定量でエンジントルクTの変化を相殺するように第1電動機M1および/または第2電動機M2から逆駆動トルクを発生させる指令がインバータ58に出力される。また、その指令に従って、例えば減速要求時にはハイブリッド制御手段52により所定なまし量が得られる為に予め定められた所定量でエンジントルクTの変化を相殺するように第1電動機M1および/または第2電動機M2から駆動トルクを発生させる指令がインバータ58に出力される。
【0209】
また、加速要求時には、電子スロットル弁94によるエンジントルクTの変化の調整に替えて或いは加えて、エンジン8の点火時期を遅角させることによるエンジントルクダウン制御によってエンジントルクTの立ち上がり変化を調整する指令がハイブリッド制御手段52に出力されても良い。その指令に従って、ハイブリッド制御手段52により点火装置98にってエンジン8の点火時期を所定なまし量が得られる為に予め定められた所定値で遅角させることによってエンジントルクTの立ち上がり変化をなます指令がエンジン出力制御装置43に出力される。
【0210】
加速要求時の非ロック時に差動部11の入力トルクT11の変化をなます場合には、図16のt時点乃至t時点に示すように入力トルクT11の立ち上がりがなまされる。また、ロック時には非ロック時より多いなまし量でなまされることから、図16のt時点乃至t時点に示すように、入力トルクT11の立ち上がりが非ロック時に比較してより緩やかにされている。また、この図16の実施例は、単独で或いはエンジントルクT変化のなましと合わせて第1電動機M1および/または第2電動機M2によって差動部11の入力トルクT11の変化(或いは伝達部材18に伝達されるトルク)をなます場合であって、第1電動機M1および/または第2電動機M2から逆駆動トルクが発生させられる。
【0211】
減速要求時の非ロック時に差動部11の入力トルクT11の変化をなます場合には、図17のt時点乃至t時点に示すように入力トルクT11の立ち下がりがなまされる。また、ロック時には非ロック時より多いなまし量でなまされることから、図17のt時点乃至t時点に示すように、入力トルクT11の立ち下がりが非ロック時に比較してより緩やかにされている。また、この図17の実施例は、単独で或いはエンジントルクT変化のなましと合わせて第1電動機M1および/または第2電動機M2によって差動部11の入力トルクT11の変化(或いは伝達部材18に伝達されるトルク)をなます場合であって、第1電動機M1および/または第2電動機M2から駆動トルクが発生させられる。
【0212】
上述のように、本実施例によれば、加速要求時或いは減速要求時に切換制御手段50による差動部11の電気的な無段変速機としての作動の制限の解除が行えないときには、すなわち切換制御手段50による差動部11の無段変速状態への切換えが行えないときには、トルク応答性変更手段88により差動部11の入力トルクT11の応答性が変更されるので、加速要求時或いは減速要求時に差動部11の電気的な無段変速機としての作動の制限が解除されない為に、エンジントルクTの変化が直接的に駆動輪38へ伝達される状態であっても、駆動輪38へ伝達されるトルクの変化が緩やかにされて、加速要求時或いは減速要求時のショックの発生が抑制される。
【0213】
また、本実施例によれば、トルク応答性変更手段88によりエンジントルクTの応答性が変更されることによって例えばエンジントルクTの変化が所定なまし量でなまされることによって、差動部11の入力トルクT11の応答性が変更される例えば差動部11の入力トルクT11の変化が所定なまし量でなまされる。よって、エンジントルクTの変化が緩やかにされることにより差動部11の入力トルクT11の変化が緩やかにされ、駆動輪38へ伝達されるトルク変化が緩やかにされて加速要求時或いは減速要求時のショックの発生が抑制される。
【0214】
また、本実施例によれば、トルク応答性変更手段88により第1電動機M1および/または第2電動機M2のトルクによってエンジントルクTの変化が相殺されることによって、差動部11の入力トルクT11の応答性が変更される例えば差動部11の入力トルクT11の変化が所定なまし量でなまされる。よって、差動部11の入力トルクT11の変化が緩やかにされ、駆動輪38へ伝達されるトルク変化が緩やかにされて加速要求時或いは減速要求時のショックの発生が抑制され
【実施例3】
【0215】
図18は本発明の他の実施例における変速機構70の構成を説明する骨子図、図19はその変速機構70の変速段と油圧式摩擦係合装置の係合の組み合わせとの関係を示す係合表、図20はその変速機構70の変速作動を説明する共線図である。
【0216】
変速機構70は、前述の実施例と同様に第1電動機M1、動力分配機構16、および第2電動機M2を備えている差動部11と、その差動部11と出力軸22との間で伝達部材18を介して直列に連結されている前進3段の自動変速部72とを備えている。動力分配機構16は、例えば「0.418」程度の所定のギヤ比ρ1を有するシングルピニオン型の第1遊星歯車装置24と切換クラッチC0および切換ブレーキB0とを有している。自動変速部72は、例えば「0.532」程度の所定のギヤ比ρ2を有するシングルピニオン型の第2遊星歯車装置26と例えば「0.418」程度の所定のギヤ比ρ3を有するシングルピニオン型の第3遊星歯車装置28とを備えている。第2遊星歯車装置26の第2サンギヤS2と第3遊星歯車装置28の第3サンギヤS3とが一体的に連結されて第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第2遊星歯車装置26の第2キャリヤCA2と第3遊星歯車装置28の第3リングギヤR3とが一体的に連結されて出力軸22に連結され、第2リングギヤR2は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結され、第3キャリヤCA3は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結されている。
【0217】
以上のように構成された変速機構70では、例えば、図19の係合作動表に示されるように、前記切換クラッチC0、第1クラッチC1、第2クラッチC2、切換ブレーキB0、第1ブレーキB1、および第2ブレーキB2が選択的に係合作動させられることにより、第1速ギヤ段(第1変速段)乃至第4速ギヤ段(第4変速段)のいずれか或いは後進ギヤ段(後進変速段)或いはニュートラルが選択的に成立させられ、略等比的に変化する変速比γ(=入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT)が各ギヤ段毎に得られるようになっている。特に、本実施例では動力分配機構16に切換クラッチC0および切換ブレーキB0が備えられており、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかが係合作動させられることによって、差動部11は前述した無段変速機として作動する無段変速状態に加え、変速比が一定の変速機として作動する定変速状態を構成することが可能とされている。したがって、変速機構70では、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかを係合作動させることで定変速状態とされた差動部11と自動変速部72とで有段変速機として作動する有段変速状態が構成され、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れも係合作動させないことで無段変速状態とされた差動部11と自動変速部72とで電気的な無段変速機として作動する無段変速状態が構成される。言い換えれば、変速機構70は、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかを係合作動させることで有段変速状態に切り換えられ、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れも係合作動させないことで無段変速状態に切り換えられる。
【0218】
例えば、変速機構70が有段変速機として機能する場合には、図19に示すように、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合により、変速比γ1が最大値例えば「2.804」程度である第1速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合により、変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.531」程度である第2速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第2クラッチC2の係合により、変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.000」程度である第3速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1、第2クラッチC2、および切換ブレーキB0の係合により、変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.705」程度である第4速ギヤ段が成立させられる。また、第2クラッチC2および第2ブレーキB2の係合により、変速比γRが第1速ギヤ段と第2速ギヤ段との間の値例えば「2.393」程度である後進ギヤ段が成立させられる。なお、ニュートラル「N」状態とする場合には、例えば切換クラッチC0のみが係合される。
【0219】
しかし、変速機構70が無段変速機として機能する場合には、図19に示される係合表の切換クラッチC0および切換ブレーキB0が共に解放される。これにより、差動部11が無段変速機として機能し、それに直列の自動変速部72が有段変速機として機能することにより、自動変速部72の第1速、第2速、第3速の各ギヤ段に対しその自動変速部72の入力回転速度NINすなわち伝達部材回転速度N18が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって変速機構70全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られるようになる。
【0220】
図20は、無段変速部或いは第1変速部として機能する差動部11と有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速部72とから構成される変速機構70において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。切換クラッチC0および切換ブレーキB0が解放される場合、および切換クラッチC0または切換ブレーキB0が係合させられる場合の動力分配機構16の各要素の回転速度は前述の場合と同様である。
【0221】
図20における自動変速機72の4本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7は、左から順に、第4回転要素(第4要素)RE4に対応し且つ相互に連結された第2サンギヤS2および第3サンギヤS3を、第5回転要素(第5要素)RE5に対応する第3キャリヤCA3を、第6回転要素(第6要素)RE6に対応し且つ相互に連結された第2キャリヤCA2および第3リングギヤR3を、第7回転要素(第7要素)RE7に対応する第2リングギヤR2をそれぞれ表している。また、自動変速機72において第4回転要素RE4は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第5回転要素RE5は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第6回転要素RE6は自動変速機72の出力軸22に連結され、第7回転要素RE7は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。
【0222】
自動変速部72では、図20に示すように、第1クラッチC1と第2ブレーキB2とが係合させられることにより、第7回転要素RE7(R2)の回転速度を示す縦線Y7と横線X2との交点と第5回転要素RE5(CA3)の回転速度を示す縦線Y5と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、出力軸22と連結された第6回転要素RE6(CA2,R3)の回転速度を示す縦線Y6との交点で第1速の出力軸22の回転速度が示される。同様に、第1クラッチC1と第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L2と出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第2速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第2クラッチC2とが係合させられることにより決まる水平な直線L3と出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第3速の出力軸22の回転速度が示される。上記第1速乃至第3速では、切換クラッチC0が係合させられている結果、エンジン回転速度Nと同じ回転速度で第7回転要素RE7に差動部11からの動力が入力される。しかし、切換クラッチC0に替えて切換ブレーキB0が係合させられると、差動部11からの動力がエンジン回転速度Nよりも高い回転速度で入力されることから、第1クラッチC1、第2クラッチC2、および切換ブレーキB0が係合させられることにより決まる水平な直線L4と出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第4速の出力軸22の回転速度が示される。
【0223】
本実施例の変速機構70においても、無段変速部或いは第1変速部として機能する差動部11と、有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速部72とから構成されるので、前述の実施例と同様の効果が得られる。
【実施例4】
【0224】
図21は、手動操作により動力分配機構16の差動状態(非ロック状態)と非差動状態(ロック状態)すなわち変速機構10の無段変速状態と有段変速状態との切換えを選択するための変速状態手動選択装置としてのシーソー型スイッチ44(以下、スイッチ44と表す)の一例でありユーザにより手動操作可能に車両に備えられている。このスイッチ44は、ユーザが所望する変速状態での車両走行を選択可能とするものであり、無段変速走行に対応するスイッチ44の無段と表示された無段変速走行指令釦或いは有段変速走行に対応する有段と表示された有段変速走行指令釦がユーザにより押されることで、それぞれ無段変速走行すなわち変速機構10を電気的な無段変速機として作動可能な無段変速状態とするか、或いは有段変速走行すなわち変速機構10を有段変速機として作動可能な有段変速状態とするかが選択可能とされる。
【0225】
前述の実施例では、例えば図6の関係図から車両状態の変化に基づく変速機構10の変速状態の自動切換制御作動を説明したが、その自動切換制御作動に替えて或いは加えて例えばスイッチ44が手動操作されたことにより変速機構10の変速状態が手動切換制御される。つまり、切換制御手段50は、スイッチ44の無段変速状態とするか或いは有段変速状態とするかの選択操作に従って優先的に変速機構10を無段変速状態と有段変速状態とに切り換える。例えば、ユーザは無段変速機のフィーリングや燃費改善効果が得られる走行を所望すれば変速機構10が無段変速状態とされるように手動操作により選択する。またユーザは有段変速機の変速に伴うリズミカルなエンジン回転速度の変化によるフィーリング向上を所望すれば変速機構10が有段変速状態とされるように手動操作により選択する。
【0226】
また、スイッチ44に無段変速走行或いは有段変速走行の何れも選択されない状態である中立位置が設けられる場合には、スイッチ44がその中立位置の状態であるときすなわちユーザによって所望する変速状態が選択されていないときや所望する変速状態が自動切換のときには、変速機構10の変速状態の自動切換制御作動が実行されればよい。
【0227】
例えば、自動切換制御作動に替えてスイッチ44が手動操作されたことにより変速機構10の変速状態が手動切換制御される場合には、前述の実施例の図10に示すフローチャートのステップS2において、スイッチ44が手動操作によって動力分配機構16のロック状態すなわち変速機構10の非無段変速状態が選択されていることに基づいて動力分配機構16がロック状態すなわち差動部11が非無段変速状態とされているか否かが判定される。
【0228】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0229】
例えば、前述の実施例の図10、図11、および図12では、所定以上の加速要求或いは減速要求が成されたときに自動変速部20の変速を伴う場合であったが、所定以上の加速要求或いは減速要求が成されたときに変速を伴わない場合であっても、本発明は適用され得る。
【0230】
また、前述の実施例ではロック状態判定手段82(図10のステップS2)は、動力分配機構16がロック状態とされているか否かを例えば図6に示す切換線図から車両状態に基づいて有段制御領域内であるか否かによって判定したが、切換制御手段50による変速機構10が有段制御領域内か或いは無段制御領域内であるかの判定に基づいて動力分配機構16がロック状態とされているか否かを判定してもよい。
【0231】
また、前述の実施例ではトルク応答性変更手段88は、第1電動機M1および/または第2電動機M2のトルクによってアクセルオン・オフに伴うエンジントルクTの変化を所定量だけ相殺して差動部11の入力トルクT11の応答性を変更したが、エンジン8に作動的に連結される電動機M3を更に備え、その電動機M3のトルクよってアクセルオン・オフに伴うエンジントルクTの変化を所定量だけ相殺して差動部11の入力トルクT11の応答性を変更しても良い。この場合には、差動部11が無段変速状態とされていても電動機M3のトルクよってエンジントルクTの変化を相殺して入力トルクT11の応答性を変更できる。また、この電動機M3としては、エンジンスターターなどが用いられても良い。
【0232】
また、前述の実施例では、トルク応答性変更手段88により差動部11の入力トルクT11のなまし量が設定されるときに用いられた図14に示すような関係は、アクセル開度変化率Acc’と差動部11の入力トルクT11の所定なまし量との関係を示すものであったが、アクセル開度変化率Acc’に替えてエンジントルクT(変化率)やスロットル弁開度θTH(変化率)が用いられても良い。
【0233】
また、前述の実施例の変速機構10、70は、差動部11(動力分配機構16)が電気的な無段変速機として作動可能な差動状態とそれを非作動とする非差動状態(ロック状態)とに切り換えられることで無段変速状態と有段変速状態とに切り換え可能に構成され、この無段変速状態と有段変速状態との切換えは差動部11が差動状態と非差動状態とに切換えられることによって行われていたが、例えば差動部11が差動状態のままであっても差動部11の変速比を連続的ではなく段階的に変化させることにより有段変速機として機能させられ得る。言い換えれば、差動部11の差動状態/非差動状態と、変速機構10、70の無段変速状態/有段変速状態とは必ずしも一対一の関係にある訳ではないので、差動部11は必ずしも無段変速状態と有段変速状態とに切換可能に構成される必要はなく、変速機構10、70(差動部11、動力分配機構16)が差動状態と非差動状態とに切換え可能に構成されれば本発明は適用され得る。
【0234】
また、前述の実施例の動力分配機構16では、第1キャリヤCA1がエンジン8に連結され、第1サンギヤS1が第1電動機M1に連結され、第1リングギヤR1が伝達部材18に連結されていたが、それらの連結関係は、必ずしもそれに限定されるものではなく、エンジン8、第1電動機M1、伝達部材18は、第1遊星歯車装置24の3要素CA1、S1、R1のうちのいずれと連結されていても差し支えない。
【0235】
また、前述の実施例では、エンジン8は入力軸14と直結されていたが、例えばギヤ、ベルト等を介して作動的に連結されておればよく、共通の軸心上に配置される必要もない。
【0236】
また、前述の実施例では、第1電動機M1および第2電動機M2は、入力軸14に同心に配置されて第1電動機M1は第1サンギヤS1に連結され第2電動機M2は伝達部材18に連結されていたが、必ずしもそのように配置される必要はなく、例えばギヤ、ベルト、減速機等を介して作動的に第1電動機M1は第1サンギヤS1に連結され、第2電動機M2は伝達部材18に連結されてもよい。また、第2電動機M2が伝達部材18に連結されていたが、出力軸22に連結されていてもよいし、自動変速部20、72内の回転部材に連結されていてもよい。第2電動機M2がギヤ、ベルト、減速機等を介して伝達部材18や出力軸22等に連結される様な形態も、伝達部材から駆動輪への動力伝達経路に設けられた一態様である。
【0237】
また、前述の動力分配機構16には切換クラッチC0および切換ブレーキB0が備えられていたが、切換クラッチC0および切換ブレーキB0は必ずしも両方備えられる必要はない。また、上記切換クラッチC0は、サンギヤS1とキャリヤCA1とを選択的に連結するものであったが、サンギヤS1とリングギヤR1との間や、キャリヤCA1とリングギヤR1との間を選択的に連結するものであってもよい。要するに、第1遊星歯車装置24の3要素のうちのいずれか2つを相互に連結するものであればよい。
【0238】
また、前述の実施例の変速機構10、70では、ニュートラル「N」とする場合には切換クラッチC0が係合されていたが、必ずしも係合される必要はない。
【0239】
また、前述の実施例では、切換クラッチC0および切換ブレーキB0などの油圧式摩擦係合装置は、パウダー(磁粉)クラッチ、電磁クラッチ、噛み合い型のドグクラッチなどの磁粉式、電磁式、機械式係合装置から構成されていてもよい。
【0240】
また、前述の実施例では、差動部11すなわち動力分配機構16の出力部材である伝達部材18と駆動輪38との間の動力伝達経路に、自動変速部20、72が介挿されていたが、例えば自動変速機の一種である無段変速機(CVT)、手動変速機としてよく知られた常時噛合式平行2軸型ではあるがセレクトシリンダおよびシフトシリンダによりギヤ段が自動的に切り換えられることが可能な自動変速機、手動操作により変速段が切り換えられる同期噛み合い式の手動変速機等の他の形式の動力伝達装置(変速機)が設けられていてもよい。その無段変速機(CVT)の場合には、動力分配機構16が定変速状態とされることで全体として有段変速状態とされる。有段変速状態とは、電気パスを用いないで専ら機械的伝達経路で動力伝達することである。或いは、上記無段変速機は有段変速機における変速段に対応するように予め複数の固定された変速比が記憶され、その複数の固定された変速比を用いて自動変速部20、72の変速が実行されてもよい。また、自動変速部20、72は、必ずしも備えられなくとも本発明は適用され得る。
【0241】
また、前述の実施例では、自動変速部20、72は伝達部材18を介して差動部11と直列に連結されていたが、入力軸14と平行にカウンタ軸が設けられそのカウンタ軸上に同心に自動変速部20、72が配設されてもよい。この場合には、差動部11と自動変速部20、72とは、例えば伝達部材18としてのカウンタギヤ対、スプロケットおよびチェーンで構成される1組の伝達部材などを介して動力伝達可能に連結される。
【0242】
また、前述の実施例の差動機構としての動力分配機構16は、例えばエンジンによって回転駆動されるピニオンと、そのピニオンに噛み合う一対のかさ歯車が第1電動機M1および第2電動機M2に作動的に連結された差動歯車装置であってもよい。
【0243】
また、前述の実施例の動力分配機構16は、1組の遊星歯車装置から構成されていたが、2以上の遊星歯車装置から構成されて、非差動状態(定変速状態)では3段以上の変速機として機能するものであってもよい。また、その遊星歯車装置はシングルピニオン型に限られたものではなくダブルピニオン型の遊星歯車装置であってもよい。
【0244】
また、前述の実施例の切換装置46は、複数種類のシフトポジションを選択するために操作されるシフトレバー48を備えていたが、そのシフトレバー48に替えて、例えば押しボタン式のスイッチやスライド式スイッチ等の複数種類のシフトポジションを選択可能なスイッチ、或いは手動操作に因らず運転者の音声に反応して複数種類のシフトポジションを切り換えられる装置や足の操作により複数種類のシフトポジションを切り換えられる装置等であってもよい。また、シフトレバー48が「M」ポジションへ操作されることにより、変速レンジが設定されるものであったが変速段が設定されることすなわち各変速レンジの最高速変速段が変速段として設定されてもよい。この場合、自動変速部20、72では変速段が切り換えられて変速が実行される。例えば、シフトレバー48が「M」ポジションにおけるアップシフト位置「+」またはダウンシフト位置「−」へ手動操作されると、自動変速部20では第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段の何れかがシフトレバー48の操作に応じて設定される。
【0245】
また、前述の実施例のスイッチ44はシーソー型のスイッチであったが、例えば押しボタン式のスイッチ、択一的にのみ押した状態が保持可能な2つの押しボタン式のスイッチ、レバー式スイッチ、スライド式スイッチ等の少なくとも無段変速走行(差動状態)と有段変速走行(非差動状態)とが択一的に切り換えられるスイッチであればよい。また、スイッチ44に中立位置が設けられる場合にその中立位置に替えて、スイッチ44の選択状態を有効或いは無効すなわち中立位置相当が選択可能なスイッチがスイッチ44とは別に設けられてもよい。また、スイッチ44に替えて或いは加えて、手動操作に因らず運転者の音声に反応して少なくとも無段変速走行(差動状態)と有段変速走行(非差動状態)とが択一的に切り換えられる装置や足の操作により切り換えられる装置等であってもよい。
【0246】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0247】
【図1】本発明の一実施例であるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図である。
【図2】図1の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が無段或いは有段変速作動させられる場合における変速作動とそれに用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせとの関係を説明する作動図表である。
【図3】図1の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が有段変速作動させられる場合における各ギヤ段の相対的回転速度を説明する共線図である。
【図4】図1の実施例の駆動装置に設けられた電子制御装置の入出力信号を説明する図である。
【図5】図4の電子制御装置の制御作動の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図6】車速と出力トルクとをパラメータとする同じ二次元座標に構成された、自動変速部の変速判断の基となる予め記憶された変速線図の一例と、変速機構の変速状態の切換判断の基となる予め記憶された切換線図の一例と、エンジン走行とモータ走行とを切り換えるためのエンジン走行領域とモータ走行領域との境界線を有する予め記憶された駆動力源切換線図の一例とを示す図であって、それぞれの関係を示す図でもある。
【図7】図7の破線はエンジン8の最適燃費率曲線であって燃費マップの一例である。また、無段変速機でのエンジン作動(破線)と有段変速機でのエンジン作動(一点鎖線)の違いを説明する図でもある。
【図8】有段式変速機におけるアップシフトに伴うエンジン回転速度の変化の一例である。
【図9】シフトレバーを備えた複数種類のシフトポジションを選択するために操作されるシフト操作装置の一例である。
【図10】図5の電子制御装置の制御作動すなわち加速要求時或いは減速要求時の差動部の切換制御作動を説明するフローチャートである。
【図11】図10のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであり、差動部の有段変速状態(ロック状態)において自動変速部の2速→3速アップシフトが実行された場合での制御作動を示している。
【図12】図10のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであり、差動部の有段変速状態(ロック状態)において自動変速部の3速→2速パワーオンダウンシフトが実行された場合での制御作動を示している。
【図13】図4の電子制御装置の制御作動の要部を説明する機能ブロック線図であって、図5に相当する図である。
【図14】予め設定されたアクセル開度変化率と差動部の入力トルクの所定なまし量との関係を示す一例である。(a)はアクセルオンの加速要求時における入力トルクのなまし量であり、(b)はアクセルオフの減速要求時における入力トルクのなまし量である。
【図15】図13の電子制御装置の制御作動すなわち加速要求時或いは減速要求時の差動部の入力トルクの応答性を変更する制御作動を説明するフローチャートである。
【図16】図15のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであり、差動部11の有段変速状態(ロック状態)においてアクセルペダルが踏み込み操作された場合での制御作動であって、ロック時と非ロック時とでの差動部の入力トルク変化をなます制御作動の比較を示している。
【図17】図15のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであり、差動部の有段変速状態(ロック状態)においてアクセルペダルが戻し操作された場合での制御作動であって、ロック時と非ロック時とでの差動部の入力トルク変化をなます制御作動の比較を示している。
【図18】本発明の他の実施例におけるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図であって、図1に相当する図である。
【図19】図18の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が無段或いは有段変速作動させられる場合における変速作動とそれに用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせとの関係を説明する作動図表であって、図2に相当する図である。
【図20】図18の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が有段変速作動させられる場合における各ギヤ段の相対的回転速度を説明する共線図であって、図3に相当する図である。
【図21】切換装置としてのシーソー型スイッチであって変速状態を選択するためにユーザによって操作される変速状態手動選択装置の一例である。
【符号の説明】
【0248】
8:エンジン
10、70:変速機構(駆動装置)
11:差動部(無段変速部)
16:動力分配機構(差動機構)
18:伝達部材
20、72:自動変速部(有段変速部)
38:駆動輪
40:電子制御装置(制御装置)
50:切換制御手段(差動状態切換制御手段)
52:ハイブリッド制御手段(回転制御手段)
88:トルク応答性変更手段
M1:第1電動機
M2:第2電動機
C0:切換クラッチ(差動制限装置)
B0:切換ブレーキ(差動制限装置)




 

 


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