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発明の名称 水圧転写用フィルム、水圧転写体の製造方法、及び水圧転写体
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−55244(P2007−55244A)
公開日 平成19年3月8日(2007.3.8)
出願番号 特願2006−195440(P2006−195440)
出願日 平成18年7月18日(2006.7.18)
代理人 【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
発明者 戸田 陽子 / 永田 寛知 / 鈴木 尚 / 浅田 匡彦
要約 課題
クレーター状表面欠陥等の美観損失等のない水圧転写体を提供することにあり、該水圧転写体を製造し得る水圧転写用フィルムを提供する。

解決手段
水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムと前記支持体フィルム上に設けた有機溶剤に可溶な転写層を有し、該転写層が活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも一種で硬化可能な硬化性樹脂層を有する水圧転写フィルムであって、前記硬化性樹脂層が、導入圧3kPaの条件下におけるトルエンの平衡吸着量が2ml(STP)g−1 以上である粒子を含有する水圧転写フィルム、水圧転写フィルムの製造方法、水圧転写体、及び、水圧転写フィルムに使用する粒子の選択する手段として、容量法のガス吸着測定装置を使用する粒子の選択方法。
特許請求の範囲
【請求項1】
水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムと前記支持体フィルム上に設けた有機溶剤に可溶な転写層を有し、該転写層が活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも一種で硬化可能な硬化性樹脂層を有する水圧転写フィルムであって、前記硬化性樹脂層が、導入圧3kPaの条件下におけるトルエンの平衡吸着量が2ml(STP)g−1 以上である粒子を含有することを特徴とする水圧転写フィルム。
【請求項2】
前記粒子を、硬化性樹脂層中の樹脂に対する固形分比において1質量%〜50質量%含有する請求項1に記載の水圧転写フィルム。
【請求項3】
前記粒子の導入圧3kPaの条件下におけるトルエンの平衡吸着量が2ml(STP)g−1 〜20ml(STP)g−1 である、請求項1に記載の水圧転写フィルム。
【請求項4】
水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルム上に、活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも一種で硬化可能であり、トルエンの平衡吸着量が導入圧3kPaの条件下において2ml(STP)g−1以上である粒子を含有し、有機溶剤に溶解可能な硬化性樹脂層を設けたフィルム(A)と、
剥離性フィルム上に印刷インキ皮膜または塗料皮膜からなる有機溶剤に溶解可能な装飾層を設けたフィルム(B)とを、
前記フィルム(A)の硬化性樹脂層と前記フィルム(B)の装飾層とが相対するように重ねてドライラミネーションにより貼り合わせることを特徴とする水圧転写用フィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1の水圧転写フィルムを使用することを特徴とする水圧転写体。
【請求項6】
請求項1の水圧転写フィルムに使用する粒子の選択する手段として、容量法のガス吸着測定装置を使用することを特徴とする粒子の選択方法。



発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は各種成形品などの被転写体の表面に硬化性樹脂層、または硬化性樹脂層と装飾層を同時に水圧転写できる水圧転写用フィルムとその製造方法、及び該水圧転写用フィルムを用いて製造される水圧転写体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水圧転写法は、水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムと意匠性を付与する転写層を有する水圧転写フィルムを、支持体フィルムを下方にして水面に浮かべ、活性化剤と呼ばれる有機溶剤を噴霧して転写層を柔軟化させた後、被転写体をその上方から押し付けながら水中に沈めることにより、転写層を被転写体に転写する方法である。
最近では、転写層として、意匠性を付与する装飾層と保護を目的とした硬化性樹脂層とを有する水圧転写フィルムを使用した、1ステップ工程で行う水圧転写法も開発されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、転写層を被転写体に転写した後、支持体フィルムを水洗除去し、光又は熱で保護層となる硬化性樹脂層を硬化させる。
【0003】
活性化剤と呼ばれる有機溶剤で転写層を柔軟化させる工程を、通常活性化と呼ぶ。活性化とは、有機溶剤により皮膜化した転写層を再溶解させることであり、活性化させることにより複雑な三次元形状の成型品の表面に水圧転写フィルムを追従させることが可能となる。
活性化工程では、単層または複合層の転写層構造または/及び積層構造を保持しつつ、装飾層を含む場合はこれを崩さず、且つ三次元形状に追従が可能になる程度まで該層を柔軟化させるのに必要な活性化剤となる有機溶剤を噴霧する。従って、転写層を被転写体に転写した直後の各層は柔軟化しているため、支持体フィルムを水洗除去する際に、硬化性樹脂層に洗浄跡及びクレーター状表面欠陥等が付くことがあり、得られる水圧転写体の美観を損なうことがあった。
【0004】
水洗除去する際に付く洗浄跡を改善するため、支持体フィルムを水洗除去の前に硬化性樹脂層をあらかじめ予備硬化させておく方法がある(例えば特許文献2参照)。該方法は洗浄跡の改善には効果があるが、クレーター状表面欠陥を完全に無くすことができなかった。
【0005】
【特許文献1】特開昭64−022378号公報
【特許文献2】特開2003−305998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、クレーター状表面欠陥等の美観損失等のない水圧転写体を提供することにあり、該水圧転写体を製造し得る水圧転写用フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、クレーター状表面欠陥の発生は、活性化時に噴霧した活性化剤となる有機溶剤(以下、活性化剤として使用する有機溶剤を、活性化剤と略す)が、支持体フィルムは活性化剤との親和性が低いため、硬化性樹脂層と支持体フィルム層との界面で凝集して溶剤溜を形成し、該溶剤が支持体フィルム水洗除去時に流されてしまい、溶剤溜の跡がクレーター状となることが原因であることを見出した。
更に、硬化性樹脂層に、活性化剤を特定量以上吸着するような粒子を添加すると該表面欠陥の発生が抑えられること、粒子の活性化剤の吸着の度合いは、容量法のガス吸着測定装置によるトルエンの平衡吸着量で概算できることを見いだし、上記課題を解決した。
【0008】
即ち、本発明は、水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムと前記支持体フィルム上に設けた有機溶剤に可溶な転写層を有し、該転写層が活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも一種で硬化可能な硬化性樹脂層を有する水圧転写フィルムであって、前記硬化性樹脂層が、導入圧3kPaの条件下におけるトルエンの平衡吸着量が2ml(STP)g−1 以上である粒子を含有する水圧転写フィルムを提供する。
【0009】
また、本発明は、水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルム上に、活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも一種で硬化可能であり、トルエンの平衡吸着量が導入圧3kPaの条件下において2ml(STP)g−1以上である粒子を含有し、有機溶剤に溶解可能な硬化性樹脂層を設けたフィルム(A)と、
剥離性フィルム上に印刷インキ皮膜または塗料皮膜からなる有機溶剤に溶解可能な装飾層を設けたフィルム(B)とを、
前記フィルム(A)の硬化性樹脂層と前記フィルム(B)の装飾層とが相対するように重ねてドライラミネーションにより貼り合わせる水圧転写用フィルムの製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、前記水圧転写フィルムを使用する水圧転写体を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記水圧転写フィルムに使用する粒子の選択する手段として、容量法のガス吸着測定装置を使用する粒子の選択方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水圧転写フィルムは、トルエン吸着量が特定の範囲の粒子を添加した硬化性樹脂層を有する。該粒子は、転写時、噴霧した活性化剤を吸着し有機溶媒の凝集を妨げるので、クレーター状の表面欠陥が発生せず、所望の装飾及び表面を再現した水圧転写体を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(支持体フィルム)
本発明の水圧転写用フィルムに用いる支持体フィルムは、水溶性もしくは水膨潤性の樹脂から成るフィルムである。
水溶性もしくは水膨潤性の樹脂から成る樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、アセチルセルロース、ポリアクリルアミド、アセチルブチルセルロース、ゼラチン、にかわ、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が使用できる。なかでも一般に水圧転写用フィルムとして用いられているPVAフィルムが水に溶解し易く、入手が容易で、硬化性樹脂層の印刷にも適しており、特に好ましい。これらの樹脂層は単層でも多層でも良く、層厚みは10〜200μm程度が好ましい。
【0014】
(転写層(硬化性樹脂層、装飾層))
転写層は、硬化性樹脂層、あるいは、硬化性樹脂層と装飾層とが積層された複合層からなる。
【0015】
(硬化性樹脂層)
本発明においては、硬化性樹脂層は、活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも1種で硬化可能な硬化性樹脂、及び、粒子を含有する。
【0016】
(粒子)
硬化性樹脂層に添加する粒子は、容量法のガス吸着測定装置によるトルエンの平衡吸着量が導入圧3kPaの条件下において2ml(STP) g−1 以上である。2ml(STP) g−1 以上であれば、活性化剤の余剰分を吸着することができ、本発明の効果を得ることができる。トルエン吸着量が2ml(STP)g−1に満たない場合、クレーター状表面欠陥が残りやすい。好ましくは、平衡吸着量が2ml(STP)g−1 〜20ml(STP)g−1 である。尚、現在容易に入手できる粒子は、トルエンの平衡吸着量は大体20ml(STP)g−1 以下である。
【0017】
容量法のガス吸着測定装置としては、導入圧3kPaで平衡吸着量を測定できるような測定装置であれば特に限定はない。本発明においては、日本ベル社製の容量法ガス吸着測定装置BELSORP18を用い、測定温度25℃、導入圧3kPa、平衡時間300secの条件で平衡吸着量を測定した。
本発明においては、クレーター状表面欠陥の原因となる、余剰の活性化剤を特定の範囲量吸着できる粒子を選択する手段として、容量法のガス吸着測定装置を使用している。容量法ガス吸着測定装置は、気体の吸着平衡圧力と容積を測定し、圧力の変化量から気体の状態方程式を利用して、吸着量を容積の大きなガス状態で求める。硬化性樹脂層中で粒子が実際に吸着するのは液状の活性化剤であるが、液体の吸着量は求めにくく、またその差が生じにくい。しかし容積の大きなガス吸着量は求めやすいので数値化が容易である。
一般に、個々の粒子の吸着量は、液体気体といった状態には左右されず、粒子自体が有する吸着能に大きく左右される。従って、容量法のガス吸着測定装置によるトルエンの平衡吸着量と、実際の活性化剤の吸着量とは相関があると考えられ、該方法で選択した粒子を添加することで、クレーター状表面欠陥の生じない水圧転写体が得られるものと考えられる。
また、吸着するガスは、活性化剤の1成分として最もよく使用される有機溶剤である、トルエンを選択した。
【0018】
前記粒子の添加量は、少なすぎるとクレーター状表面欠陥が残りやすく、多すぎると硬化性樹脂層が膜としての機能を保持できない恐れがある。好ましい範囲としては、硬化性樹脂層中の樹脂に対する固形分比において1質量%〜50質量%の範囲である。中でも5〜30質量%が好ましく、5〜20質量%が最も好ましい。
【0019】
また、前記粒子の添加量は、トルエン吸着量の多い程少量で済む傾向がある。目安としては、トルエン吸着量の少ない粒子は、硬化性樹脂層中の樹脂に対する固形分比が高くなるように、トルエン吸着量の多い粒子は固形分比が低くなるように添加量を定めるとよい。例えば、硬化性樹脂層の膜厚が20μmの水圧転写フィルムにおいては、トルエン吸着量と固形分比との積が20ml(STP)g−1質量%〜700ml(STP)g−1質量%の範囲であると、膜としての機能を保持でき、得られる水圧転写体はクレーター状の表面欠陥がなく、意匠性に優れるため好ましく、50ml(STP)g−1質量%〜200ml(STP)g−1質量%の範囲が最も好ましい。
【0020】
前記粒子において、微粉末であれば比表面積が大きいことが期待でき、一般にトルエンの吸着量が大きくなることが予想されるので好ましい。具体的には、粒子径が25μm以下であるか、または比表面積が500m−1以上の微粉末が好ましい。
攪拌等により細粒化しやすい粒子を使用する場合は、径の比較的大きい粒子を添加後、よく攪拌することで、該粒子の吸着量を高くすることができる。
【0021】
前記条件を満たすような粒子であれば、特に種類に制限はなく、公知の粒子を使用できる。活性化剤に対する溶解性は問わず、活性化剤に可溶、膨潤、不溶なものも使用できる。
無機質粒子としては、無機顔料、カーボン、酸化チタン、グラファイト、亜鉛華等の無機着色顔料;炭酸石灰粉、沈降性炭酸カルシウム、石膏、粘土鉱物、シリカ粉、珪藻土、タルク、カオリン、アルミナホワイト、硫酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、バライト粉、砥の粉等の無機体質顔料;等の無機顔料や、シリコーン、ガラスビーズ、無機結晶などがあげられる。
【0022】
有機質粒子としては、有機着色顔料、有機結晶やポリマー微粒子があげられる。
有機着色顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、スレン顔料、キナクリドン顔料等の汎用の顔料があげられる。これらの顔料は、粒径や添加量により、転写層中の装飾層、あるいは装飾層を持たない場合は下地(転写基材)の隠蔽効果が異なる。従って、本発明の効果を損なわない範囲で、要求される意匠によって適宜粒径や添加量を調節するのが好ましい。装飾層が積層されているときは、得られる水圧転写体の装飾層の意匠性が良く発現できることから、硬化性樹脂層は透明であることが好ましい。但し、水圧転写体の要求特性、及び、意匠性によるが、基本的に得られる水圧転写体の装飾層の色や柄が透けて見えれば良く、硬化性樹脂層は完全に透明であることを要せず、透明から半透明なものまでを含む。また、着色されていてもよい。
有機結晶としては、結晶性ポリ尿素、結晶性ポリウレタン、結晶性ポリアミド、結晶性アミノ酸、結晶性ポリペプチド、結晶性有機金属錯体等が挙げられる。
また、ポリマー微粒子としては、架橋アクリル系微粒子、架橋ポリスチレン系樹脂微粒子、架橋ウレタン微粒子、フェノール樹脂微粒子、シリコーン樹脂微粒子、ポリエチレン微粒子、フッ素微粒子、メラミン微粒子、ポリカーボネート微粒子およびフェノール微粒子などをあげることができる。
【0023】
前記粒子の中でも、多孔質の粒子、例えばカーボン、合成粘土鉱物、シリカ粉等は、トルエン吸着量が大きく、少量の添加量で効果を発揮できるので好ましい。
また前記粒子の中で、主につや消し剤として使用される、炭酸石灰粉、沈降性炭酸カルシウム、石膏、粘土鉱物 (China Clay)、シリカ粉、珪藻土、タルク、カオリン、アルミナホワイト、硫酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、バライト粉、砥の粉等の無機体質顔料、架橋アクリル系微粒子、架橋ポリスチレン系樹脂微粒子、架橋ウレタン微粒子、フェノール樹脂微粒子、シリコーン樹脂微粒子、ポリエチレン微粒子、フッ素微粒子、メラミン微粒子、ポリカーボネート微粒子およびフェノール微粒子などの有機微粒子等を使用すると、表面物性に優れ、かつ、高級な意匠感を与える艶消し調を呈する水圧転写体を得ることができる。
中でもシリカ粉は、少量の添加で高い艶消し効果が得られ、且つ、本発明の効果であるクレーターの表面欠陥の発生を抑えることができるので、つや消し調の水圧転写体を得る場合には最も好ましい。
【0024】
(硬化性樹脂)
硬化性樹脂層の成分である活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも1種で硬化可能な樹脂は、具体的には下記の(1)〜(6)が挙げられる。
(1)活性エネルギー線硬化性樹脂を含む硬化性樹脂層。
(2)活性エネルギー線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を含む硬化性樹脂層。
(3)熱硬化性樹脂を含む硬化性樹脂層。
(4)熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を含む硬化性樹脂層。
(5)活性エネルギー線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂を含む硬化性樹脂層。
(6)活性エネルギー線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂を含む硬化性樹脂層。
次に、硬化性樹脂層の上記具体的構成(1)〜(6)について説明する。
【0025】
(1)活性エネルギー線硬化性樹脂を含む硬化性樹脂層
活性エネルギー線硬化性樹脂は、1分子中に活性エネルギー線によって硬化可能な重合性基や構造単位を有するオリゴマーとポリマーである。ここでいう活性エネルギー線とは紫外線と電子線であり、これらにより硬化するオリゴマーとポリマーはいずれも使用可能であるが、特に紫外線硬化性樹脂が好適である。
【0026】
紫外線源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が用いられる。
【0027】
活性エネルギー線によって硬化可能な重合性基や構造単位は、例えば、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニルエステル、ビニルエーテル、マレイミド基などの重合性不飽和二重結合を有する基や構造単位が挙げられ、なかでも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。なかでも、1分子中に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する活性エネルギー線硬化性のオリゴマーまたはポリマーが好ましい。より具体的には、1分子中に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する質量平均分子量が300〜1万、より好ましくは300〜5000の活性エネルギー線硬化性のオリゴマーまたはポリマーが好ましく用いられる。
【0028】
(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーまたはポリマーは、塗料用樹脂として使用されるものであれば問題なく使用することができ、具体例を挙げれば、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリアクリル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等が挙げられ、中でもポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートおよびエポキシ(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0029】
特に、1分子中に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する質量平均分子量が300〜1万、より好ましくは300〜5000の紫外線硬化型のポリウレタン(メタ)アクリレートが活性エネルギー線硬化性樹脂として特に好ましく用いられる。これらは、1種類だけでも、2種類以上混合して用いても良い。
【0030】
これらの活性エネルギー線硬化性樹脂を含む硬化性樹脂層には、必要に応じて慣用の光重合開始剤や光増感剤が含まれて良い。光重合開始剤の代表的なものとしては、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトンの如きアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインイソプロピルエーテルの如きベンゾイン系化合物;2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシドの如きアシルホスフィンオキシド系化合物;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノンの如きベンゾフェノン系化合物;2,4−ジメチルチオキサントンの如きチオキサントン系化合物;4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノンの如きアミノベンゾフェノン系化合物;ポリエーテル系マレイミドカルボン酸エステル化合物などが挙げられ、これらは併用して使用することもできる。
【0031】
光重合開始剤の使用量は用いる活性エネルギー線硬化性樹脂に対して、通常、0.1〜15質量%、好ましくは0.5〜8質量%である。光増感剤としては、例えば、トリエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチルの如きアミン類が挙げられる。さらに、ベンジルスルホニウム塩やベンジルピリジニウム塩、アリールスルホニウム塩などのオニウム塩は、光カチオン開始剤として知られており、これらの開始剤を用いることも可能であり、上記の光重合開始剤と併用することもできる。
【0032】
(2)活性エネルギー線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を含む硬化性樹脂層
活性エネルギー線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を含む硬化性樹脂層は上述した活性エネルギー線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂を活性エネルギー線硬化性樹脂と併せて用いることは硬化性樹脂層の粘着性低減とガラス転移温度(Tg)の向上および硬化性樹脂層の凝集破壊強度の向上に極めて効果的である。但し、硬化性樹脂層に含ませる熱可塑性樹脂の量が多いと硬化性樹脂の硬化反応を阻害するので、硬化性樹脂層の全樹脂量100質量部に対して熱可塑性樹脂は70質量部を超えない範囲で添加することが好ましい。
【0033】
熱可塑性樹脂は用いる活性エネルギー線硬化性樹脂に相溶できるものであり、具体例としては、ポリメタアクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステルなどが挙げられる。これらはホモポリマーまたは複数のモノマーが共重合したものであって良い。熱可塑性樹脂は、非重合性であることが好ましい。
【0034】
なかでも、ポリスチレンおよびポリメタアクリレートは、Tgが高く硬化性樹脂層の粘着性低減に適しているために好ましく、特にポリメチルメタアクリレートを主成分としたポリメタアクリレートが透明性、耐溶剤性および耐擦傷性に優れる点で好ましい。
【0035】
また、熱可塑性樹脂の分子量とTgは塗膜形成能に大きな影響を与える。硬化性樹脂の流動性を抑制し、かつ硬化性樹脂層の有機溶剤による活性化を容易にするために、熱可塑性樹脂の質量平均分子量は好ましくは3,000〜40万、より好ましくは1万〜20万であり、Tgは好ましくは35℃〜200℃、より好ましくは35℃〜150℃である。Tgが35℃付近の比較的低いTgを有する熱可塑性樹脂を用いる場合は、熱可塑性樹脂の質量平均分子量は10万以上であることが好ましい。
【0036】
活性エネルギー線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を含む硬化性樹脂層としては、これらのなかでも、1分子中に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する質量平均分子量300〜1万、より好ましくは300〜5000である活性エネルギー線硬化性樹脂と、この活性エネルギー線硬化性樹脂に相溶するTgが35℃〜200℃、好ましくは35℃〜150℃で、質量平均分子量が3000〜40万、好ましくは1万〜20万である熱可塑性樹脂を含有する硬化性樹脂層が好ましい。さらに、前記活性エネルギー線硬化性樹脂が、1分子中に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン(メタ)アクリレートであり、熱可塑性樹脂がポリメタアクリレート、特にポリメチルメタアクリレートである硬化性樹脂層がとりわけ好ましい。
【0037】
(3)熱硬化性樹脂を含む硬化性樹脂層
熱硬化性樹脂は、熱または触媒の作用により重合する官能基を分子中に有する化合物であるか、または主剤となる熱硬化性化合物に硬化剤となる熱反応性化合物を配合したものである。熱または触媒の作用により重合する官能基としては、例えば、N−メチロール基、N−アルコキシメチル基、エポキシ基、メチロール基、酸無水物、炭素−炭素二重結合などが挙げられる。
【0038】
炭素−炭素二重結合を分子内に有し重合による架橋反応が可能なものは、活性エネルギー線硬化性樹脂と同種の硬化性樹脂が使用可能であり、これらの硬化性樹脂と加熱によってラジカルソースを発生する熱重合開始剤とを組み合わせることにより熱硬化性樹脂として用いることができる。この際の熱重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリルなどの通常の熱重合開始剤が用いられる。
【0039】
主剤と硬化剤の具体的な組み合わせとしては、例えば、水酸基やアミノ基を有する主剤樹脂と硬化剤としてイソシアネート;水酸基やカルボキシル基を有する主剤樹脂と硬化剤としてN−メチロール化またはN−アルコキシメチル化メラミン、ベンゾグアナミン等のアミノ樹脂;エポキシ基や水酸基を有する主剤樹脂と硬化剤として無水フタル酸の如き酸無水物;カルボキシル基や炭素−炭素二重結合、ニトリル基、エポキシ基を有する主剤樹脂と硬化剤としてフェノール樹脂;カルボキシル基やアミノ基を有する主剤樹脂と硬化剤としてエポキシ基含有化合物などを用いることができる。
【0040】
これらの熱硬化性樹脂は常温でも保存中に徐々に硬化反応が進行するものが多い。保存期間中に硬化反応が進むと、有機溶剤による転写層の活性化が十分行われず転写不良を起こす原因となる。このため、熱硬化性樹脂の中でも主剤としてポリオール、硬化剤としてブロックイソシアネートを用いる系が好ましい。
【0041】
ブロックイソシアネートはイソシアネート基を慣用のブロック剤で保護したものを用いることができ、これら慣用のブロック剤は、フェノール、クレゾール、芳香族第2アミン、第3級アルコール、ラクタム、オキシムなどが挙げられる。
【0042】
ブロックイソシアネートは装飾層の耐熱性や被転写体の耐熱性に合わせてブロック基の脱離温度が好適なものを選べば良い。
ポリオールとしては、アクリルポリオール、ポリ−p−ヒドロキシスチレン、ポリエステルポリオール、ポリエチレンビニルアルコール共重合体などが挙げられるが、特にアクリルポリオールが好ましく、なかでも、質量平均分子量が3,000〜10万のアクリルポリオール、より好ましくは1万〜7万のアクリルポリオールが好適である。
【0043】
熱硬化性樹脂も印刷性または塗工性が必要であることから、硬化前の樹脂の分子量は高いほうが好ましく、質量平均分子量1000〜10万が好ましく、さらに好ましくは3,000〜3万である。より具体的には、質量平均分子量が3,000〜10万、より好ましくは1万〜7万のポリオール(特に好ましくはアクリルポリオール)を主剤とし、ブロックイソシアネートを硬化剤として含むものが好ましく用いられる。
【0044】
(4)熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を含む硬化性樹脂層
熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を含む硬化性樹脂層としては、(3)に記載した熱硬化性樹脂と、(2)に記載した熱可塑性樹脂を含むものである。
用いる熱硬化性樹脂は(3)で記載した熱硬化性樹脂と同様であり、好ましい熱硬化性樹脂も(3)と同様にブロックイソシアネートとポリオールであり、特にポリオールはアクリルポリオールであり、なかでも質量平均分子量が3,000〜10万、より好ましくは1万〜7万のものである。
【0045】
熱硬化性樹脂としてブロックイソシアネートとポリオールを用いる場合は、一般にポリオールが塗膜形成能を有するので、併用する熱可塑性樹脂の量は少なくてよい。用いる熱可塑性樹脂は用いる熱硬化性樹脂と相溶する必要があり、熱硬化性樹脂としてブロックイソシアネートとポリオールを用いる場合は、ポリオールに溶解する熱可塑性樹脂が好ましい。また、熱可塑性樹脂は、Tgが35℃〜200℃、より好ましくはTgが35℃〜150℃、質量平均分子量が3000〜40万の熱可塑性樹脂が好ましく用いられ、中でもポリメタアクリレートとりわけポリメチルメタアクリレートが好ましい。熱可塑性樹脂は、非重合性であることが好ましい。
【0046】
(5)活性エネルギー線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂を含む硬化性樹脂層
活性エネルギー線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂を含む硬化性樹脂層としては、それぞれ(1)に記載した活性エネルギー線硬化性樹脂と、(3)に記載した熱硬化性樹脂を用いることが出来る。例えば、1分子中に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートと、ブロックイソシアネートとポリオールとを含むものである。
【0047】
なかでも、(1)に記載した活性エネルギー線硬化性樹脂の好ましい樹脂と、(3)に記載した熱硬化性樹脂の各々の好ましい樹脂をそれぞれ含むものが好ましく、例えば、質量平均分子量300〜1万、より好ましくは300〜5000の1分子中に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーまたはポリマー、なかでも好ましくはポリウレタン(メタ)アクリレート、またはブロックイソシアネートと質量平均分子量が3,000〜10万、より好ましくは1万〜7万のアクリルポリオールを含むものである。
【0048】
(6)活性エネルギー線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂を含む硬化性樹脂層
活性エネルギー線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂を含む硬化性樹脂層は、(1)に記載した活性エネルギー線硬化性樹脂と、(3)に記載した熱硬化性樹脂、および(2)に記載した活性エネルギー線硬化性樹脂と併用する熱可塑性樹脂を含む硬化性樹脂層である。熱可塑性樹脂は、非重合性であることが好ましい。
【0049】
硬化性樹脂層は、水圧転写の際、活性化剤によって活性化出来なければならない。そのため、硬化性樹脂層は膜厚の増加に伴い、活性化剤に対する溶解性を向上させなければならない。しかしながら、硬化性樹脂層は、未硬化状態の硬化性樹脂層を有する水圧転写フィルムとしての形状安定性(保存安定性)も必要であり、このような二律背反する要求のバランスを取るために、硬化性樹脂層に熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
本発明の活性化では、活性化剤が転写層に着地し、活性化剤は速やかに浸透し、硬化性樹脂層を溶解(活性化)することができる。また、熱可塑性樹脂を含ませることにより硬化性樹脂層は、活性化剤の浸透に対して、適度の抵抗と、硬化前においてもしっかりした自己保持力を有し、より穏やかに活性化されることが可能になり、急激な活性化による硬化性樹脂層の溶解ムラや装飾層の柄割れなどを抑制することができる。
【0050】
硬化性樹脂層の転写時における溶解性を確保するためには、溶解性の高い活性エネルギー線と加熱の少なくとも一種で硬化可能な樹脂を45質量%以上用いることが好ましい。
一方、硬化性樹脂層の形成能、乾燥性、保存安定性をより良く確保するためには、硬化性樹脂層中に含まれる熱可塑性樹脂量が25質量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは30質量%以上である。
したがって、本発明の熱可塑性樹脂に対する活性エネルギー線と加熱の少なくとも一種で硬化可能な樹脂の質量比P:(ラジカル重合性化合物の質量総和)/(熱可塑性樹脂の質量総和)は、45/55以上75/25以下が好ましく、50/50以上70/30以下が更に好ましく、最も好適には60/40である。
【0051】
有機溶剤による活性化をしやすくするためには、熱可塑性樹脂として質量平均分子量2万以上30万以下のポリアクリレート、あるいは質量平均分子量5000以上5万以下のポリエステルを用いることが好ましい。
使用する熱可塑性樹脂の分子量が上記範囲を上回ると、活性化時の硬化性樹脂層の粘度を調整する点では効果があるが、水圧転写を行なう時間内における活性化剤による活性化が困難になり易い。一方、分子量が上記範囲を下回ると、未硬化の硬化性樹脂層の流動性や粘着性を抑制しにくく、かつ硬化後の塗膜では高温において熱可塑樹脂が塗膜表面に移行して塗膜性能を低下させる。
また、塗膜形成時の乾燥性を高めるには、熱可塑性樹脂として質量平均分子量15万以上のポリアクリレート、あるいは質量平均分子量3万以上のポリエステルを用いることが好ましい。
一方、熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、25℃〜250℃、更には50℃〜150℃であることが好ましい。熱可塑性樹脂のTgが20℃未満であると、未硬化の硬化性樹脂層の粘着性を抑制しにくく、かつ硬化後の塗膜の耐熱性に悪影響を及ぼし、反対に250℃を超えて大きいと硬化性樹脂との混和が困難になる。
【0052】
上述した硬化性樹脂層は、その乾燥膜厚が厚いほど、得られる水圧転写体の表面保護効果は大きく、また装飾層の凹凸を吸収する効果が大きいために成形品に優れた光沢を持たせることができて好ましい。したがって、保護層としての機能や装飾層の凹凸を吸収する効果を満足させるためには、硬化性樹脂層の乾燥膜厚は3〜200μmであることが好ましく、未硬化の硬化性樹脂層の保存安定性の観点から100μm以下であることが好ましい。しかし、乾燥膜厚が厚過ぎると活性化剤による硬化性樹脂層の活性化(可溶化)が不十分になり易い。従って、活性化剤による硬化性樹脂層の活性化が十分なされ、かつ、保護層としての機能、及び、意匠性を満足させるには、5〜50μmであることが好ましく、10〜45μmであることがさらに好ましい。
硬化性樹脂層は硬化性樹脂の有機溶剤溶液(塗料)を塗布、乾燥することにより、形成することができるが、塗布時の粘度は塗布方式に適した粘度に適宜調整すればよい。粘度の調整は塗料濃度により調整することができる。
【0053】
上記(1)〜(6)には、前期粒子の他、意匠性、硬化性を阻害しない限り、消泡剤、沈降防止剤、顔料分散剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定化剤、紫外線吸収剤などの慣用の各種添加剤を加えてもよい。これらの添加剤は液体でも固体でもよいし、溶解するものであっても、分散するだけであってもよい。
【0054】
(装飾層)
本発明の水圧転写用フィルムの装飾層形成に用いる印刷インキ又は塗料は、活性化剤によって活性化されて被転写体に転写層を転写する際に十分な柔軟性が得られることが好ましく、特に高画質画像を得やすいという観点からグラビア印刷インキにより形成されることが好ましい。また絵柄のない着色層を塗布によって形成することもできる。
【0055】
装飾層に使用される樹脂、すなわち印刷インキ又は塗料に用いられる基材樹脂は、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ウレア樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂(塩ビ、酢ビ、塩ビ−酢ビ共重合樹脂)、ビニリデン樹脂(ビニリデンクロライド、ビニリデンフルオネート)、エチレン−ビニルアセテート樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化オレフィン樹脂、エチレン−アクリル樹脂、石油系樹脂、セルロース誘導体樹脂などの熱可塑性樹脂が用いられる。これらの中でもポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、塩ビ−酢ビ共重合樹脂が、有機溶剤への溶解性、流動性、顔料分散性、転写性に優れることから好ましく用いられ、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂が好ましく、ポリウレタン樹脂が特に好ましい。
【0056】
前記印刷インキ又は塗料に用いられるポリウレタン樹脂は、数平均分子量(ポリスチレン検量線によるGPCによる測定値)が2,000〜60,000、より好ましくは2,500〜56,000、更に好ましくは2,500〜40,000であるものが有機溶剤への溶解性および剥離性フィルムとの適度な密着性を有することから好ましい。ポリウレタン樹脂の数平均分子量が2,000より小さいと、耐候性が低下し、数平均分子量が60,000を超えて大きいと、ガラス転移温度が高くなり、印刷インキ又は塗料の密着性、流動性、顔料分散性、転移性が低下する。また、ポリウレタン樹脂のガラス転移温度は、−5℃以上70℃以下であることが、有機溶剤への溶解性および被転写物との適度な密着性を有することから好ましい。
【0057】
ポリウレタン樹脂の水酸基価は低いものが好ましく、水酸基を有しないポリウレタンが好ましい。ポリウレタン樹脂の水酸基価が大きいほど、ポリウレタン樹脂分子同士が水素結合等により巨大分子化しやすく、ガラス転移温度が高くなり転写性が低下する傾向がある。
【0058】
前記印刷インキ又は塗料に用いられるポリエステル樹脂は、数平均分子量は、2,000〜8,000であると、剥離性フィルムと適度な密着性を有するために好ましく、より好ましくは2,500〜7,500、最も好ましくは2,500〜7,000である。数平均分子量が2,000より小さいと、柔軟性や破断伸度が低下して、転写時の被転写体への追随性が低下し、得られる水圧転写体に形成される装飾層の画質が低下する。数平均分子量が8,000を超えて大きいと、ポリエステル樹脂分子同士が水素結合等により巨大分子化しやすく、ガラス転移温度が高くなり、転写性が低下する。また、印刷インキ又は塗料に用いるポリエステル樹脂のガラス転移温度は、−5℃以上70℃以下であると、被転写物と適度な密着性を有することから好ましい。
【0059】
前記ポリエステル樹脂は、水酸基の少ないポリエステルが好ましく、具体的には水酸基価が5以下であるポリエステルが好ましい。
ポリエステル樹脂の水酸基価が大きいと、ポリエステル樹脂分子同士が水素結合等により巨大分子化しやすくなり、ガラス転移温度が高くなって、印刷インキ又は塗料の転移性が低下する傾向がある。他の樹脂を配合してインキや塗料のガラス転移温度を低く調製する場合は、ポリエステル樹脂以外の樹脂として、上記のポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0060】
装飾層と剥離性フィルムとの剥離力を調整するために装飾層に剥離剤を含有させてもよい。用いる剥離剤は、インキ化又は塗料化した装飾層に分散可能であれば何ら制限されないが、フッ素系化合物やシリコーン系化合物を用いることが好ましく、分子量や化学構造を制御しやすいことから、シリコーン系化合物が特に好ましい。シリコーン系化合物の中でも、ポリエーテル変性ポリシロキサン、ポリシロキサン−ポリエーテルブロック共重合体を好適に用いることができる。
印刷インキ又は塗料中のシリコーン系化合物の含有量は、不揮発分中0.01質量%以上6.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.05質量%以上4.0質量%以下である。0.01質量%未満では剥離剤の効果が不十分であり、6.0質量%を超えると、後述する多層印刷性時にはじきなどが起こり、印刷性が低下しやすくなる、あるいは、本発明の水圧転写フィルムを使用する際、装飾層と硬化性樹脂層との間で剥離を引き起こしやすくなる。
【0061】
前記印刷インキ又は塗料には、前記基材樹脂のほか、顔料又は染料等の着色剤を含む。着色剤の配合量は装飾目的に応じて適宜決定すればよいが、通常、1〜50質量部の範囲であり、より好ましくは3〜30質量部の範囲である。
【0062】
着色剤としては、例えば、黒色顔料としてカーボンブラック;黄色顔料として、黄鉛、アントラキノンイエロー、ミネラルファストイエロー、チタンイエロー;赤色顔料として、ベンガラ、カドミウムレッド、キナクリドンレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ;青色顔料として、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー;緑色顔料として、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ;白色顔料として、チタンホワイト等を使用できる。
【0063】
前記印刷インキ又は塗料には、必要に応じて可塑剤、界面活性化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、艶消し剤、溶媒などを含有させてよい。
【0064】
装飾層の形成は、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷などにより行うことができ、高画質画像を得やすいため、グラビア印刷が好ましい。装飾層の乾燥膜厚は0.5〜15μmであることが好ましく、更に好ましくは、1〜7μmである。
【0065】
装飾層の印刷インキ又は塗料を希釈する目的で使用する有機溶剤としては、公知のものを使用すればよく、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒などを挙げることができる。有機溶剤の配合量は、印刷インキ又は塗料全体の100質量部に対して20〜80質量部が好ましく、より好ましくは30〜60質量部である。配合量が20質量部より少ないと、粘度が高くなって作業性が低下し、また熱可塑性樹脂への着色剤の分散が十分行われない。一方、有機溶剤の配合量が80質量部を超えて多いと、印刷後の乾燥に長時間を要し生産性が低下する。
【0066】
装飾層の乾燥膜厚は、水圧転写時の活性化と装飾性とのバランスを考え、0.5〜15μmの範囲が好ましい。さらに好ましくは、1〜7μmである。なお、意匠性や展延性を阻害しない限り、装飾層中に消泡剤、沈降防止剤、顔料分散剤、流動性改質剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定化剤、紫外線吸収剤などの慣用の各種添加剤を加えても構わない。
【0067】
(剥離性フィルム)
本発明の水圧転写用フィルムは、剥離性フィルム上に積層にして製造し、水圧転写に際して、該剥離フィルムから剥離して使用する態様を挙げることができる。
剥離フィルムを有する水圧転写フィルムの製造方法の一例を下記に示す。
【0068】
装飾層を、剥離性フィルム(A)上に塗工または印刷した剥離性フィルム(A)と、硬化性樹脂層を積層した支持体フィルム(B)とを、ドライラミネーション(乾式積層法)により貼り合わせて製造することができる。その際には、フィルム繰り出し等の作業や取扱で装飾層が剥がれ落ちない剥離力で剥離性フィルム上に固着されている必要がある。
【0069】
このため、装飾層と剥離性フィルムとの界面における剥離力を測定し、好ましい剥離性フィルムと転写層の組み合わせを選定することが好ましい。また、必要に応じて、剥離性フィルムにさらに表面処理を行うことにより、剥離力をさらに小さくすることも可能である。
【0070】
剥離性フィルムとして、具体的には、ポリプロピレンやポリエチレン、ポリエステル、ナイロン、ポリ塩化ビニルなどの素材からなるフィルムを用いることができ、その厚みは20μm〜250μmであるものが好ましい。
【0071】
(水圧転写用フィルムの製造方法)
次に、本発明の水圧転写用フィルムの製造方法の一例を下記に示す。
本発明の水圧転写用フィルムの製造方法は、水溶性もしくは水膨潤性の樹脂から成る支持体フィルム上に前記硬化性樹脂層を設けたフィルム(A)と、剥離性フィルム上に印刷インキ皮膜または塗料皮膜からなる有機溶剤(即ち活性化剤)に溶解可能な疎水性の装飾層を設けたフィルム(B)とを、フィルム(A)の硬化性樹脂層と、フィルム(B)の装飾層とが相対するように重ねてドライラミネーション(乾式積層法)により貼り合わせることが好ましい。
【0072】
転写層に装飾層を有さず、転写層が硬化性樹脂層からなる場合は、支持体フィルム上に硬化性樹脂層を有するフィルム(A)と剥離性フィルムとを、フィルム(A)の硬化性樹脂層と剥離性フィルムとが相対するように重ねてドライラミネーション(乾式積層法)により貼り合わせる。
【0073】
本発明の水圧転写用フィルムの製造はドライラミネーターを用いて行うことが好ましい。すなわち、ドライラミネーターの一方の繰り出しロール(第1の繰り出しロール)に支持体フィルムを装着し、もう一方の繰り出しロール(第2の繰り出しロール)に予め剥離性フィルムに絵柄模様の装飾層を印刷したフィルム(B)を装着する。第1の繰り出しロールから繰り出された支持体フィルムの水溶性もしくは水膨潤性の樹脂層面に前記硬化性樹脂の有機溶剤溶液が塗布され、さらにドライヤーにて乾燥されて支持体フィルム上に硬化性樹脂層が形成されたフィルム(A)が得られる。次いで、このフィルム(A)の硬化性樹脂層と、第2の繰り出しロールから繰り出されるフィルム(B)の装飾層とが相対するように重ね合わされ、加熱圧着ロールで貼り合わされて巻き取りロールに巻き取られることにより、本発明の水圧転写用フィルムが製造される。
【0074】
支持体フィルムに前記硬化性樹脂の有機溶剤溶液を塗布するには、スリットリバースコーター、ダイコーター、コンマコーター、バーコーター、ナイフコーター、グラビアコーター、グラビアリバースコーター、マイクログラビアコーター、フレキソコーター、ブランケットコーター、ロールコーター、エアナイフコーター等を用いることが出来る。
【0075】
また、剥離性フィルムに積層した支持体フィルムを用いることにより、塗工または印刷基材として、たるみの影響をほとんど受けず、寸法安定性が良好であるため、前記硬化性樹脂の有機溶剤溶液の塗布膜厚を精密に制御することが可能になる。
【0076】
剥離性フィルム上に装飾層を有するフィルム(B)の製造は、塗布でも良いが印刷により行うことが好ましく、特に柄模様を印刷する場合は、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷またはシルク印刷が好ましい。剥離性フィルム上に装飾層を塗布または印刷後、乾燥してフィルム(B)を得る。
【0077】
装飾層は、
(i)支持体フィルム上の硬化性樹脂層上へ塗布または印刷する方法、
あるいは、
(ii)支持体フィルム上に硬化性樹脂層が形成されたフィルム(A)と剥離性フィルム(2)上に装飾層を有するフィルム(B)とのドライラミネートする方法
により水圧転写用フィルム中に積層することができる。
(i)の支持体フィルム上の硬化性樹脂層上へ塗工または印刷する場合、硬化性樹脂層表面の濡れ性等の塗装または印刷に対する適正が必要になる。また、グラビア印刷機を用いた多層印刷により柄のついた装飾層を導入する場合、通常のベタから淡い柄、濃い柄へと印刷していくのとは順序が逆になるので、転写時に被転写体と密着するベタ層の平滑性を確保し難くなる。更に、印刷工程における、前の版で印刷されたインキが後の版に取られてしまう現象、所謂、逆転移が起こりやすくなる。
【0078】
これに対して、(ii)のあらかじめ剥離フィルム上に装飾層を形成する場合は、通常の印刷で対応することができ、上記のような問題が起こらない。このため、(ii)の剥離性フィルム上に装飾層を有するフィルム(B)と支持体フィルム上に硬化性樹脂層が形成されたフィルム(A)とのドライラミネートにより積層する方法が好ましい。
【0079】
支持体フィルム上に硬化性樹脂層を設けたフィルム(A)と、剥離性フィルム上に装飾層を設けたフィルム(B)とを貼り合わせる工程では、一般に、PVAフィルムをはじめとする支持体フィルムの耐熱性が低く、130℃を超える温度で貼り合わせると、フィルムの収縮やラミネートじわが入りやすくなる問題が生じ易いことから、フィルム(A)の乾燥、加熱加圧による貼り合わせは、40〜120℃の温度範囲で行うことが好ましく、40〜100℃の温度範囲で行うことがより好ましい。
【0080】
ドライラミネーターを用いて、硬化性樹脂層のみを有する水圧転写用フィルムを製造するには、支持体フィルム上に硬化性樹脂層が形成されたフィルム(A)の製造までは、上述の硬化性樹脂層と装飾層を有する水圧転写用フィルムの製造と同様である。次いで、製造されたフィルム(A)の硬化性樹脂層と第2の繰り出しロールから繰り出される剥離性フィルムが重ね合わされ、加熱圧着ロールで貼り合わされて巻き取りロールに巻き取られることにより、硬化性樹脂層のみを有する水圧転写用フィルムが製造される。
【0081】
得られた本発明の水圧転写用フィルムは、ロールに巻き取って遮光紙で覆い、倉庫などの暗所に保管すれば硬化反応が不必要に進行することはなく、保存中にフィルムのブロッキングが発生せず、水圧転写の際にロールからの繰り出しが良好で、鮮明な装飾層の水圧転写が可能なものであり、積極的に紫外線や太陽光に曝さない限り十分な市場流通性を有するものである。本発明の水圧転写用フィルムは、従来の水圧転写用フィルムの水圧転写と同様な方法で水圧転写を行うことができる。
【0082】
(水圧転写体の製造方法)
本発明の水圧転写体は、本発明の水圧転写用フィルムを、(剥離性フィルムがあるときは剥離性フィルムを剥離した後に)転写層を上にして、支持体フィルムを下にして水に浮かべ、活性化剤により転写層を活性化し(活性化は水に浮かべる前に行っても良い)、転写層を被転写体に転写し、支持体フィルムを除去し、次いで転写層の硬化性樹脂層を活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも一種で硬化させることにより得られる。
【0083】
具体的には、剥離性フィルムを剥離した水圧転写用フィルムの支持体フィルムを下にして水槽中の水に浮かべ、支持体フィルムを水で溶解もしくは膨潤させる。
次に、転写層に活性化剤を塗布または噴霧することにより装飾層と硬化樹脂層からなる転写層を活性化させる。なお、転写層の活性化剤による活性化は、フィルムを水に浮かべる前に行っても良い。
次に、転写層に被転写体を押し付けながら、被転写体と水圧転写用フィルムを水中に沈めて行き、水圧によって転写層を被転写体に密着させて転写する。
最後に、水から出した被転写体から支持体フィルムを除去し、被転写体に転写された転写層の硬化性樹脂層を活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも一種により硬化させて、硬化した樹脂層もしくは硬化した樹脂層と装飾層とを有する水圧転写体を得る。
【0084】
(水)
水圧転写における水槽の水は、転写層を転写する際に水圧転写用フィルムの硬化性樹脂層もしくは硬化性樹脂層と装飾層とを被転写体の三次元曲面に密着させる水圧媒体として働く他、支持体フィルムを膨潤または溶解させるものであり、具体的には、水道水、蒸留水、イオン交換水などの水で良く、また用いる支持体フィルムによっては、水にホウ酸等の無機塩類を10%以下、またはアルコール類を50%以下溶解させてもよい。
【0085】
(活性化剤)
本発明に用いる活性化剤は、転写層、すなわち、硬化性樹脂層と装飾層とを可溶化させる有機溶剤である。本発明に用いる活性化剤は、一般の水圧転写に用いる活性化剤と同様なものを用いることができ、具体的には、トルエン、キシレン、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトールアセテート、カルビトール、カルビトールアセテート、セロソルブアセテート、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソブチル、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、ソルフィットアセテートなど及びそれらの混合物が挙げられる。
【0086】
この活性化剤中に印刷インキ又は塗料と成形品との密着性を高めるために、若干の樹脂成分を含ませてもよい。例えば、ポリウレタン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂といった、インキのバインダーに類似の構造のものを1〜10%含ませることによって密着性が高まることがある。
活性化剤の噴霧量は、一般的には転写層に対し、単位面積あたり90〜150質量%の範囲が好ましい。本発明においては、活性化剤をあまり多量に噴霧してしまうと、活性化されすぎてしまう場合がある。
噴霧量をこの範囲とすることで、噴霧直後の転写層即ち硬化性樹脂層は、計算上、40〜53%の固形分濃度の有機溶剤溶液を塗工した状態と同じとなる。
【0087】
被転写体に転写層を水圧転写した後、支持体フィルムを水で溶解もしくは剥離して除去した後、乾燥させる。
支持体フィルムを水洗除去するには、静水浸漬、流水、放水、水シャワー、水散布、水噴霧等を用いればよく、これらの1種を採用してもよいし、2種以上組み合わせてもよい。
静水浸漬では支持体フィルムの除去に長時間を要し、工業的に適さないので、水圧を掛けて短時間に支持体フィルムを除去する方法(流水、放水、水シャワー、水散布、水噴霧等)が好ましい。
【0088】
活性エネルギー線硬化性樹脂を含む硬化性樹脂層については、水圧転写体を乾燥させた後に活性エネルギー線照射を行い、硬化性樹脂層の硬化を行う。熱硬化性樹脂を含む硬化性樹脂層であれば、乾燥とともに硬化性樹脂層の硬化を行うことができる。
【0089】
被転写体は、その表面に前記転写層が十分密着することが好ましく、必要に応じて被転写体表面にプライマー層を設ける。プライマー層を形成する樹脂は、プライマー層として慣用の樹脂を特に制限なく用いることができ、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。また、密着性の良好なABS樹脂やSBSゴムなどの溶媒吸収性の高い樹脂成分からなる被転写体にはプライマー処理は不要である。被転写体の材質は、必要に応じて防水加工を施すことにより水中に沈めても形状が崩れないものであれば、金属、プラスチック、木材、パルプモールド、ガラス等のいずれであっても良く特に限定されない。
【実施例】
【0090】
以下、本発明を実施例により説明する。特に断わりのない限り「部」、「%」は質量基準である。
硬化性樹脂層に添加する粒子のトルエン吸着量の測定方法と吸着量は、以下の通りである。
【0091】
(トルエン吸着量 容量法ガス吸着測定)
粒子約200mgを試料とした。日本ベル社製の容量法ガス吸着測定装置BELSORP18を用い、測定温度25℃、導入圧3kPa、平衡時間300secの条件で平衡吸着量を測定した。
【0092】
(粒子のトルエン吸着量)
各々の粒子のトルエン吸着量を表1に示した。
【0093】
【表1】


【0094】
表1中の略語は、以下を表す。
F−A1:富士シリシア製の「サイリシア350D」
F−A2:コープケミカル製の「ルーセンタイトSPN」
F−A3:富士シリシア製の「サイロホービック200」
F−A4:富士シリシア製の「サイロホービック704」
F−A5:デグサ製の「シペルナートD10」
F−A6:東ソー・シリカ製の「Nipsil SS−50B」
F−A7:綜研化学製の「ケミスノーMX−150」
F−A8:ワッカー製の「CAVASOL W7M」
【0095】
(表面欠陥の有無)
水圧転写体の表面外観を目視し、表面欠陥の有無を判断した。
○:クレーター状表面欠陥等なし
×:クレーター状表面欠陥等あり(補修不可能なレベル)
【0096】
(硬化性樹脂層用の組成物の調整例)
表2−1、表2−2の組成に従い、硬化性樹脂層用の組成物を調整した。
【0097】
【表2】


【0098】
【表3】


【0099】
表2−1、表2−2中の略語は、以下を表す。
UA−1:大日本インキ化学工業(株)製ウレタンアクリレート「ユニディック17−813」(質量平均分子量1,500)
パラロイドA−11:ロームアンドハース社製のアクリル樹脂(Tg100℃、質量平均分子量125,000)
パラロイドB−60:ロームアンドハース社製のアクリル樹脂(Tg75℃、質量平均分子量50,000)
I−184:チバ・スペシャリティケミカルス社製の光重合開始剤「イルガキュア184」
【0100】
(装飾層を有するフィルム(C)C1の製造)
剥離性フィルムとして、東洋紡社製の厚さ50μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(以下、PPフィルムと略す)を用い、該フィルムにウレタンインキ(商品名:ユニビアA)をグラビア4色印刷機にて厚さ3μmの木目柄を印刷して、装飾フィルム(C)C1を製造した。
【0101】
<インキ組成、黒、茶、白>
ポリウレタン(荒川化学社製ポリウレタン2569):20部
顔料(黒、茶、白):10部
酢酸エチル・トルエン(1/1):60部
ワックス等添加剤:10部
【0102】
(実施例1:水圧転写フィルムの製造)
支持体フィルムであるアイセロ化学社製の厚さ30μmのPVAフィルムへ、前記硬化性樹脂層用の組成物B1を酢酸エチルとトルエンの混合溶媒(混合比1:1)に固形分濃度50%となるように溶解した溶液を、コンマコーターで所定の乾燥膜厚(20μm)になるように塗布した。60℃で2分間乾燥した後に、硬化性樹脂層と装飾フィルムC1の装飾層とを向き合わせて60℃でラミネートし、気温40℃、18時間エージングすることにより水圧転写用フィルムD1を作製した。
水圧転写用フィルムD1から剥離性フィルムを剥離すると、インキ層がPVAフィルム側に欠陥なく転移した。
【0103】
(実施例2:水圧転写フィルムの製造)
前記硬化性樹脂層用の組成物B2を用い、実施例1と同様の方法で水圧転写用フィルムD2を作製した。この水圧転写用フィルムD2から剥離性フィルムを剥離すると、インキ層がPVAフィルム側に欠陥なく転移した。
【0104】
(実施例3:水圧転写フィルムの製造)
前記硬化性樹脂層用の組成物B3を用い、実施例1と同様の方法で水圧転写用フィルムD3を作製した。この水圧転写用フィルムD3から剥離性フィルムを剥離すると、インキ層がPVAフィルム側に欠陥なく転移した。
【0105】
(実施例4:水圧転写フィルムの製造)
前記硬化性樹脂層用の組成物B4を用い、実施例1と同様の方法で水圧転写用フィルムD4を作製した。この水圧転写用フィルムD4から剥離性フィルムを剥離すると、インキ層がPVAフィルム側に欠陥なく転移した。
【0106】
(実施例5:水圧転写フィルムの製造)
前記硬化性樹脂層用の組成物B5を用い、実施例1と同様の方法で水圧転写用フィルムD5を作製した。この水圧転写用フィルムD5から剥離性フィルムを剥離すると、インキ層がPVAフィルム側に欠陥なく転移した。
【0107】
(実施例6:水圧転写フィルムの製造)
前記硬化性樹脂層用の組成物B6を用い、実施例1と同様の方法で水圧転写用フィルムD6を作製した。この水圧転写用フィルムD6から剥離性フィルムを剥離すると、インキ層がPVAフィルム側に欠陥なく転移した。
【0108】
(実施例7:水圧転写フィルムの製造)
前記硬化性樹脂層用の組成物B7を用い、実施例1と同様の方法で水圧転写用フィルムD7を作製した。この水圧転写用フィルムD7から剥離性フィルムを剥離すると、インキ層がPVAフィルム側に欠陥なく転移した。
【0109】
(実施例8:水圧転写フィルムの製造)
支持体フィルムであるアイセロ化学社製の厚さ30μmのPVAフィルムへ、前記硬化性樹脂層用の組成物B8を酢酸エチルとトルエンの混合溶媒(混合比1:1)に固形分濃度50%となるように溶解した溶液を、コンマコーターで所定の乾燥膜厚(20μm)になるように塗布したところ、粘度が高く所定膜厚に塗工することが困難であった。そこで、前記B6を酢酸エチルとトルエンの混合溶媒(混合比1:1)に固形分濃度30%となるように溶解した溶液を、コンマコーターで所定の乾燥膜厚(20μm)になるように塗布し、60℃で2分間乾燥した後に、硬化性樹脂層と装飾フィルムC1の装飾層とを向き合わせて60℃でラミネートし、気温40℃、18時間エージングすることにより水圧転写用フィルムD8を作製した。この水圧転写用フィルムD8から剥離性フィルムを剥離すると、インキ層がPVAフィルム側に欠陥なく転移した。
【0110】
(比較例1:水圧転写フィルムの製造)
前記硬化性樹脂層用の組成物B9を用い、実施例1と同様の方法で水圧転写用フィルムD9を作製した。この水圧転写用フィルムD9から剥離性フィルムを剥離すると、インキ層がPVAフィルム側に欠陥なく転移した。
【0111】
(比較例2:水圧転写フィルムの製造)
前記硬化性樹脂層用の組成物B10を用い、実施例1と同様の方法で水圧転写用フィルムD10を作製した。この水圧転写用フィルムD10から剥離性フィルムを剥離すると、インキ層がPVAフィルム側に欠陥なく転移した。
実施例1〜8及び比較例1〜2で得られた水圧転写フィルムの仕様及び製造方法を表3にまとめた。
【0112】
【表4】


表中、実は実施例を、比は比較例を表す。
【0113】
(実施例9)水圧転写
水槽に25℃の水を入れ、剥離性フィルムを剥離した水圧転写用フィルムD1のPVA側を下にして水面に浮かべた。活性化剤(トルエン/ダイアセトナルコール/酢酸ブチル/ソルフィットアセテート/イソブタノール=40/25/15/15/5)を30g/m噴霧し、15秒後、A4版のABS板(厚さ3mm)を水圧転写フィルムから水中に向かって挿入し水圧転写した。
PVAを日伸精機株式会社製ジェットウォッシャーJW−350Bを用い、28Hz、20℃、2分間の条件で水洗除去した後80℃で30分間乾燥させた。次にUV照射装置を用いて、2400mJ/cmのUV光を照射することにより、硬化性樹脂層を硬化させ、硬化樹脂層を具備し、鮮明な絵柄模様を有する装飾水圧転写体を得た。評価結果を表4に示す。
【0114】
(実施例10)水圧転写
水圧転写用フィルムD2を用い、実施例9と同様の方法で、硬化樹脂層を具備し、鮮明な絵柄模様を有する装飾水圧転写体を得た。評価結果を表4に示す。
【0115】
(実施例11)水圧転写
水圧転写用フィルムD3を用い、実施例9と同様の方法で水圧転写体を得た。評価結果を表4に示す。
【0116】
(実施例12)水圧転写
水圧転写用フィルムD4を用い、実施例9と同様の方法で水圧転写体を得た。評価結果を表4に示す。
【0117】
(実施例13)水圧転写
水圧転写用フィルムD5を用い、実施例9と同様の方法で水圧転写体を得た。評価結果を表4に示す。
【0118】
(実施例14)水圧転写
水圧転写用フィルムD6を用い、実施例9と同様の方法で水圧転写体を得た。評価結果を表4に示す。
【0119】
(実施例15)水圧転写
水圧転写用フィルムD7を用い、実施例9と同様の方法で水圧転写体を得た。評価結果を表4に示す。
【0120】
(実施例16)水圧転写
水圧転写用フィルムD8を用い、実施例9と同様の方法で水圧転写体を得た。評価結果を表4に示す。
【0121】
(比較例3)水圧転写
水圧転写用フィルムD9を用い、実施例9と同様の方法で水圧転写体を得た。評価結果を表4に示す。
【0122】
(比較例4)水圧転写
水圧転写用フィルムD10を用い、実施例9と同様の方法で水圧転写体を得た。評価結果を表4に示す。
【0123】
本実施例で示されるように、PVAフィルムへの塗工、ラミネートにより、簡便に水圧転写フィルムを製造することが可能であり、硬化性樹脂層を有する水圧転写体を得ることができる。転写条件及び転写物の物性を表4に示した。
【0124】
【表5】


【0125】
以上の結果より、硬化性樹脂層への添加剤としてFA−1〜FA−6を使用した実施例9〜16は、表面欠陥がなく表面意匠性に優れたものが得られた。実施例9及び12〜16は、表面欠陥がなく、かつ、艶消し調を呈する水圧転写体が得られた。また実施例10及び11は、表面欠陥がなく、且つ、高光沢性の水圧転写体が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の水圧転写体は、テレビ、ビデオ、エアコン、ラジオカセット、携帯電話、冷蔵庫等の家庭電化製品;パーソナルコンピューター、ファックスやプリンター等のOA機器;ファンヒーターやカメラなどの家庭製品のハウジング部分;テーブル、タンス、柱などの家具部材;バスタブ、システムキッチン、扉、窓枠などの建築部材;電卓、電子手帳などの雑貨;自動車内装パネル、自動車やオートバイの外板、ホイールキャップ、スキーキャリヤ、自動車用キャリアバッグなどの車内外装品;ゴルフクラブ、スキー板、スノーボード、ヘルメット、ゴーグルなどのスポーツ用品;広告用立体像、看板、モニュメントなどが挙げられ、曲面を有しかつ意匠性を必要とする成形品に特に有用に用いられ、極めて広い分野で使用可能である。






 

 


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