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水圧転写用シート - 大日本印刷株式会社
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発明の名称 水圧転写用シート
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−90836(P2007−90836A)
公開日 平成19年4月12日(2007.4.12)
出願番号 特願2005−286969(P2005−286969)
出願日 平成17年9月30日(2005.9.30)
代理人 【識別番号】100083839
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 泰男
発明者 郡山 香代子 / 林 慶寿
要約 課題
真にインキジェット印刷に適した水圧転写用シートを提供することを主たる課題とする。

解決手段
水圧転写法に用いられる水圧転写用シートを、水溶性若しくは水膨潤性の支持体シートと、少なくとも無機顔料とバインダー樹脂とからなる多孔質層と、を積層し構成する。
特許請求の範囲
【請求項1】
水圧転写用シート上にインクジェット印刷により印刷模様層を形成し、
次いで、前記印刷模様層に活性剤を塗布し、
次いで、印刷模様層が形成された面が上になるように水圧転写用シートを水面に浮遊せしめ、
次いで、被転写体を前記印刷模様層に押圧して、水圧により被転写体表面に印刷模様層を転写する、水圧転写法に用いられる水圧転写用シートであって、
水溶性若しくは水膨潤性の支持体シートと、
少なくとも無機顔料とバインダー樹脂とからなる多孔質層と、
を積層してなることを特徴とする、水圧転写用シート。
【請求項2】
前記多孔質層は、溶媒中に無機顔料10〜30体積%、バインダー樹脂10体積%を溶解または分散した塗工液を支持体シート上に塗工し、これを乾燥することにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の水圧転写用シート。
【請求項3】
前記塗工液を支持体シート上に塗工するに際し、その塗工量が1〜4g/mであることを特徴とする請求項2に記載の水圧転写用シート。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる水圧転写方法を実施する際に用いられる水圧転写用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、凹凸による立体面を有する成形品の表面に転写印刷により印刷模様を形成する手段として、いわゆる水圧転写法が公知である。水圧転写法については、例えば特許文献1〜3に記載されている。
【0003】
上記特許文献に記載されている水圧転写方法は、これに用いる水圧転写用シートを製造する際、被転写物(成形品)のロットの大小、サイズの如何に関わらず、版を作成した上で、輪転印刷機を用いてグラビア印刷又はオフセット印刷等により印刷を形成していた。
【0004】
しかしながら、上記従来の方法で水圧転写用シートを製造すると、小ロットの場合でも、大ロットの場合と同様のリードタイム(製版、輪転印刷機の稼働準備にかかる時間)が必要である。しかも、被印刷原反、インキ等も輪転印刷機を稼働させる為の最少必要量が多く、コストが上昇してしまうという問題があった。また、上記従来の方法では、転写シートの製造の際に版を使用することから、版の保管のためのスペース、管理に係る労力、コストがかかる。さらに、製版にも時間と労力が必要であるという問題があった。そうすると、結果的に従来の方法では、多品種少ロット生産が不可能であり、又短納期で必要な時に必要な量だけ製造する、いわゆるオンデマンド生産も不可能であった。その為、各顧客の個別の希望に応じた絵柄を印刷して水圧転写することが困難であった。
【0005】
このような問題を解決するため、水圧転写用シートを製造するに際し、グラビア印刷やオフセット印刷により印刷模様を印刷するのではなく、インキジェット印刷により印刷模様を印刷する技術が近年開発されている。インキジェット印刷によれば、従来の方法に比べ、小ロットの製品を安価かつ短納期で製造することが可能となり、いわゆるオンデマンド生産にも対応が可能となる(例えば、特許文献4)。
【特許文献1】特公昭52−041683号公報
【特許文献2】特公平07−555999号公報
【特許文献3】特許第2757346号公報
【特許文献4】特開2003−145997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、グラビア印刷やオフセット印刷に用いられるインキと、インキジェット印刷に用いられるインキとは、その成分が異なるため、単純に従来から一般的に用いられている水圧転写用シートを用いてインキジェット印刷すると、1)インキが弾かれてしまい印刷が上手くできない、2)水圧転写用シートがインキによって溶解してしまう、3)印刷自体は可能であるが、これを被転写物(成形品)表面へ水圧転写すると、印刷模様の色濃度が低下してしまう、などの様々な問題が生じることが分かった。
【0007】
なお、グラビア印刷やオフセット印刷で印刷模様を印刷する場合に用いられている一般的な水圧転写用シートとは、例えばポリビニルアルコール樹脂などに代表される水溶性若しくは水膨潤性の樹脂のみ(単層構造)からなるシート等である。
【0008】
特許文献4には、水圧転写用シートとして、ポリビニルアルコール樹脂などからなる支持体シート上に防水プライマー層を形成することにより、水圧転写用シートがインキジェット印刷によるインキによって溶解してしまうこと(上記2)の問題点)を防止する技術については開示されているが、上記1)や3)の問題点については着目されておらず、改良の余地があった。
【0009】
本発明はこのような状況においてなされたものであり、真にインキジェット印刷に適した水圧転写用シートを提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための、本願発明は、水圧転写用シート上にインクジェット印刷により印刷模様層を形成し、次いで、前記印刷模様層に活性剤を塗布し、次いで、印刷模様層が形成された面が上になるように水圧転写用シートを水面に浮遊せしめ、次いで、被転写体を前記印刷模様層に押圧して、水圧により被転写体表面に印刷模様層を転写する、水圧転写法に用いられる水圧転写用シートであって、水溶性若しくは水膨潤性の支持体シートと、少なくとも無機顔料とバインダー樹脂とからなる多孔質層と、を積層してなることを特徴とする。
【0011】
また、前記発明においては、前記多孔質層は、溶媒中に無機顔料10〜30体積%、バインダー樹脂10体積%を溶解または分散した塗工液を支持体シート上に塗工し、これを乾燥することにより形成されていることが好ましい。
【0012】
また、前記発明においては、前記塗工液を支持体シート上に塗工するに際し、その塗工量が1〜4g/mであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上記の発明によれば、インキジェット印刷を用いた水圧転写法において用いられる水圧転写用シートは、印刷模様層が形成される面に無機顔料とバインダー樹脂とからなる多孔質層が形成されているので、印刷インキを微細な孔で保持することができ、インキを弾くことがない。また、当該多孔質層に含有される無機顔料の作用により、印刷インキが当該多孔質層の下に位置する水溶性若しくは水膨潤性の支持体シートまで浸透することを防止することができ、支持体シートが当該印刷インキによって溶解してしまうことを防止することができる。さらに、当該多孔質層は印刷インキを保持しつつ、水圧転写時にはそのまま被転写物に転写されるので、印刷模様の色濃度が低下することがない。
【0014】
さらにまた、従来の水圧転写用シートにあっては、水圧転写時において、支持体シートが溶解若しくは膨潤する際に印刷模様が延びてしまう問題が生じる場合があったが、本発明によれば、多孔質層は水に接触しても溶解・膨潤することはなく、前述の如く、支持体シート上に設けられた多孔質層が印刷インキを保持したまま被転写物に転写されるので、印刷模様が支持体シートに追従して延びてしまうことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明のインキジェット印刷を用いた水圧転写法に用いられる水圧転写用シートについて、図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の水圧転写用シートの概略断面図である。
【0017】
図1に示すように、本発明の水圧転写用シート1は、支持体シート2と、その表面に積層された多孔質層3とから構成される。
【0018】
(1)支持体シート
まず支持体シート2について説明する。
【0019】
本発明の水圧転写用シート1を構成する支持体シート2は、水溶性又は水膨潤性を有するシートであればよく、従来から水圧転写用シートとして一般に用いられている材料を適宜選択して用いることができる。具体的な材料としては、ポリビニルアルコール樹脂、デキストリン、ゼラチン、にかわ、カゼイン、セラック、アラビアゴム、澱粉、蛋白質、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルメチルエーテル、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体、酢酸ビニルとイタコン酸との共重合体、ポリビニルピロリドン、アセチルセルロース、アセチルブチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、アルギン酸ソーダ等が挙げられる。支持体シート2の厚さは10〜100μmが好ましい。
【0020】
(2)多孔質層
次に多孔質層3について説明する。
【0021】
本発明の水圧転写用シート1を構成する多孔質層3は、前記支持体シート2表面に設けられる薄層であり、少なくとも無機顔料3aとバインダー樹脂3bとからなる。このような多孔質層3は、その名が示すように、表面および内部に多数の孔が形成されているため、その表面にインキジェット印刷を施した場合に、インキを保持する一方で、当該インキが前記支持体シート1まで浸透することを防止する機能を果たす層である。
【0022】
当該多孔質層3の形成方法については特に限定されることはなく、例えば、溶媒中に無機顔料3aと、バインダー樹脂3bとを溶解または分散した塗工液を用意し、これを支持体シート1上に塗工し、乾燥することにより(乾燥時に溶媒は揮発する。)形成してもよい。この場合の塗工方法については、例えば、スプレーコート法、ロールコート法、バーコート法などを挙げることができる。
【0023】
多孔質層3を構成する無機顔料3aとしては、従来公知の無機顔料を適宜選択して用いることが可能であるが、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、硫酸バリウム、カオリナイト、タルク等を挙げることができる。当該無機顔料3aの粒径については、0.1〜10μm程度が好ましい。さらに、当該無機顔料3aの含有量については、前記塗工液に用いられる溶媒に対し10〜30体積%程度が好ましく、15〜25体積%が特に好ましい。体質顔料3aの含有量が10体積%より少ないと、インキ保持性能が低下してしまい、インキの弾きや、転写後の印刷模様の色濃度の低下を招く場合がある。一方で、体質顔料3aの含有量が30体積%より多いと、多孔質層3が柔軟性に欠けてしまい、曲線部を有する被転写物に転写した場合に、印刷模様が割れてしまう場合がある。転写時には当該多孔質層3aも被転写物表面に転写されることとなるため、多孔質層3aはある程度の柔軟性が要求されるのである。
【0024】
多孔質層3を構成するバインダー樹脂3bとしては、硝化綿、酢酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース系、カチオン性の高分子(四級化窒素を含む高分子)、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクチル酸ブチル共重合体、(メタ)アクル酸メチル−(メタ)アクリル酸2ヒドロキシエチル共重合体等のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂等の1種単独又は2種以上の混合物を挙げることができる。
【0025】
さらに、これら無機顔料3aとバインダー樹脂3bを溶解または分散せしめる溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等、あるいはこれらの混合液であるガソリン、石油、ベンジン、トルエン、キシレン、シクロへキサン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、トリクロルエチレン、パークロルエチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール等の1価アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、エチレングリコール・モノ・メチルエーテル、エチレングリコール・モノ・エチルエーテル、ジエチレングリコール・モノ・メチルエーテル、ジエチレングリコール・モノ・エチルエーテル、ジエチレングリコール・モノ・ブチルエーテル、ジエチレングリコール・ジ・ブチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、エチレングリコール・モノ・エチルエーテル・アセテート、ジエチレングリコール・モノエチルエーテル・アセテート等の酢酸エステル類、酪酸エステル等のエステル類を単独あるいは混合液として用いることができる。
【0026】
上述のような無機顔料3aおよびバインダー樹脂3bを溶解または分散せしめた溶媒を支持体シート1表面に塗工するにあっては、その塗工量は1〜4g/mであることが好ましく、2〜3g/mが特に好ましい。塗工量が1g/mより少ないとインキジェット印刷した際のインキが支持体シート1へ浸透してしまうことを防止することができず、当該インキによって支持体シート1が溶解または膨潤してしまう場合がある。一方で、塗工量が4g/mより多いと、多孔質層3の柔軟性が低下してしまい、前記無機顔料を30体積%より多く入れた場合と同様の問題が生じる可能性がある。
【0027】
なお上記で説明した塗工液を乾燥して形成される多孔質層3にあっては、溶媒のほとんどは揮発して存在せず、無機顔料3aがバインダー樹脂3bにより担持された形態となっている。この状態における成分割合は、無機顔料3a:バインダー樹脂3b=21.5:4程度となっている。
【0028】
(3)水圧転写方法
次に、上記で説明した本発明の水圧転写用シート1を用い、インキジェット印刷により印刷模様層を形成する水圧転写方法について図面を用いて説明する。
【0029】
図2は、本発明の水圧転写用シート1を用いた水圧転写方法の工程図である。
【0030】
図2(a)に示すように、まず始めに本発明の水圧転写シート1の多孔質層3上に所望の印刷模様層4をインキジェット印刷により印刷する。
【0031】
インキジェット印刷をする際に用いる印刷機については、例えば家庭用のインキジェットプリンタ等を用いることができ、いわゆるオンデマンド生産が可能である。
【0032】
ここで、印刷模様層4を形成するインキ(インキジェット印刷において用いられるインキ)は、水溶性であることが好ましい。
【0033】
水溶性のインキとしては、例えば、セルロースアセテートブチレート樹脂に代表される水溶性もしくは水膨潤性樹脂等のビヒクルに染料、顔料等の着色剤をはじめとして、必要に応じて分散剤、可塑剤、体質顔料等を添加し、水で適当な粘度になるように希釈した組成物を用いることができる。着色剤としては、例えばイソインドリノンイエロー、キナクリドンレッド、フタロシアニンブルー、アニリンブラック等の有機顔料、黄鉛、弁柄、群青、墨等の無機顔料等公知のものが用いられる。水溶性もしくは水膨潤性樹脂等のビヒクルとしては、其他にも前記した支持体シートの材料として例示したものを用いることができる。
【0034】
次に、図2(b)に示すように、印刷模様層4に活性剤5を塗布する。
【0035】
当該活性剤5は、前記で説明した印刷模様層4の一部を溶解若しくは膨潤せしめて非転写物へ転写しやすくすると共に、非転写物と印刷模様層との密着性を向上せしめるために用いるものであり、このような作用効果を示す活性剤であれば、任意に選択して用いることができる。具体的には、例えば、前述の多孔質層3を形成する際に用いる塗工液において溶媒として例示したものの中から適宜印刷模様層のバインダー成分に応じて選択することができる。
【0036】
また、活性剤5は上記溶媒のみから構成してもよいが、印刷模様層4が被転写物の表面に転写される工程が水面上で完了するまでは蒸発することがなく、さらには被転写物の表面を浸蝕することのないものであることが好ましい。このような活性剤としては、前記した印刷模様層4を活性化させる溶剤中に、下記の樹脂を溶剤の5〜60質量%程度添加してなる膨潤化液を用いることができる。上記膨潤化液は、活性剤の粘度調整が容易であり、塗工液の塗付手段を幅広く利用可能であり、転写工程に時間がかかった場合でも安定した接着性を得ることができるといった利点がある。
【0037】
膨潤化液に添加される樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル重合体、ポリスチレン並びにスチレンのその誘導体の重合体、ポリ酢酸ビニル等のビニルエステル重合体、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸又はフマル酸等の不飽和カルボン酸類のエステル誘導体の重合体、同ニトリル誘導体又は同酸アミド誘導体の重合体、あるいは上記の不飽和カルボン酸類の酸アミド誘導体のN−メチロール誘導体及び同N−アルキルメチロールエーテル誘導体、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリルグリシジルエーテル、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、2−ヒドロキシエチル−(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル−(メタ)アクリレート、エチレン、エチレングリコール−モノ(メタ)アクリレート等の単量体の単独又は共重合体等の熱可塑性樹脂、若しくは初期縮合物、天然樹脂、ロジン、及びその誘導体、セルロース誘導体、天然又は合成ゴム、石油樹脂等の樹脂が挙げられる。尚、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートの意味である。
【0038】
活性剤5の印刷模様層4上への塗工手段としては、グラビアオフセットコート、グラビアコート、ロールコート、バーコート、スプレーコート、超音波コート等を用いることができ、活性剤の塗工量は2〜30g/m程度、好ましくは3〜15g/m程度である。
【0039】
次に、図2(c)に示すように印刷模様層4が形成された面が上になるように水圧転写用シート1を水面に浮遊せしめ、被転写物6を前記印刷模様層に押圧して、水圧により被転写体表面に印刷模様層を転写する。
【0040】
水圧転写シート1を水面に浮べるには、枚葉状の水圧転写用シート1を1枚ずつ浮べることもできるし(図2(c)参照)、水を一方向から流しながら、連続シートとして形成されているロール状の水圧転写用シート1を、連続的に水面に浮べることもできる。この際、転写シート1の支持体シート2側が水面に接するように下側となるように浮べるが、水圧転写用シート1と水面との間に気泡が入らないようにし、また水圧転写用シート1に皺が発生しないように注意する必要がある。
【0041】
次に、被転写物6を、水面の上方から水圧転写用シート1上に押圧して、被転写物6の被転写面が下方となるようにして下降させ、被転写物6の一部あるいは全部を水中に沈降させると共に、水圧転写用シート1と被転写体6との間に気泡が入らないように維持しながら水圧転写用シート1を被転写物6の被転写面形状に沿って延展させ、水圧によって被転写物6の所要部分に該転写シート1を被覆密着させる。
【0042】
水圧転写用シート1を水面に浮べると、支持体シート2は水と接して、水膨潤性の場合には膨潤し、水溶性の場合は溶解する。支持体シート2が水膨潤性の場合には、該支持体シート2は印刷模様層4および多孔質層3と一緒に被転写体6表面に密着する。又、支持体シート2が水溶性の場合、材質によっては完全に水に溶解してしまって、印刷模様層4と多孔質層3のみが水面上に存在する状態になる場合(この場合は、被転写体押圧時点で支持体シートは消失している)と、支持体シート2の一部が溶解し一部が残存している場合とがある。支持体シート2が完全に溶解してしまっている場合、被転写体6には印刷模様層4と多孔質層3のみが被覆密着した状態となる。
【0043】
このように、支持体シート2が膨潤もしくは溶解する際に、従来の方法にあっては印刷模様層4が支持体シート2に追従して延びてしまうことがあったが、本発明の水圧転写シート1によれば、印刷模様層4は多孔質層3に保持されているので、このようなことがなく、所望の印刷模様を正確に転写することができる。
【0044】
印刷模様層4が被転写面に十分に密着した後、支持体シートの少なくとも一部が溶解せずに残存している場合には、支持体シート2を除去する。支持体シート2の除去には、水を用いてシャワー洗浄する。被転写物6表面に付着している支持体シート2が、完全に除去されると共に、転写の際に生ずる汚れ等も除去される。このシャワー洗浄の条件は、支持体シート2の種類等によっても異なるが、通常、水温が15〜60℃が好ましく、又洗浄時間は1〜10分が好ましい。
【0045】
最後に、被転写体6を十分乾燥して水分を蒸発させ、印刷模様層3が被転写体6の表面に転写されて意匠が付与された目的とする製品が得られる。
【実施例】
【0046】
次に、本発明の水圧転写シートについて実施例を用いて説明する。
【0047】
(実施例1)
厚さ40μmのポリビニルアルコール樹脂を支持体シートとして用い、この表面に多孔質層を形成して、本発明の実施例1の水圧転写シートを製造した。
【0048】
多孔質層の形成方法としては、まず化粧紙印刷用グラビアインキ(株式会社ザ・インクテック製:MPF(NM)ミキサー)を塗工液として用いた。なお、このインキ中には、沈降性硫酸バリウムとシリカと粘土(クレー)からなる無機顔料を22体積%と、酢酸セルロースとヒドロキシプロピルセルロースとメラミン樹脂からなるバインダー樹脂を4体積%とが溶解せしめてられている。そして、その塗工液を前記ポリビニルアルコール樹脂からなる支持体の表面に塗工量2g/mで塗布し、乾燥させて多孔質層を形成した。
【0049】
次いで、多孔質層の表面に、水性インキを用いてインキジェット印刷により印刷模様層を形成した。
【0050】
次いで、図2に示すような方法で被転写物に水圧転写により印刷模様層を転写した。
【0051】
(比較例1〜4)
本発明の実施例1と比較するため、以下の表1に示すような比較例1〜4の水圧転写用シートを形成し、それぞれ上記実施例1と同様の方法で被転写物に水圧転写により印刷模様層を転写した。
【0052】
なお、各比較例は、支持体シート上に形成される多孔質層の成分を変化させたものであり、より具体的には、当該多孔質層を形成する際に用いられる塗工液の成分を変化させたものである。
【0053】
【表1】


(結果)
表1からも明らかなように、本発明の水圧転写シートを用いることにより、水性インキを用いインキジェット印刷により印刷模様層を形成しても、インキが弾かれることなく、支持体シートがインキにより溶解することもなく、また転写後の印刷模様が薄れることもなく、所望の意匠を被転写物に施すことができた。一方、比較例1〜4に示した水圧転写シートを用いた場合には、インキが弾かれたり、支持体シートがインキにより溶解してしまったり、さらには転写後の色濃度が低下してしまったりと、種々の問題が生じた。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の水圧転写シートの概略断面図である。
【図2】水圧転写法の工程図である。
【符号の説明】
【0055】
1 … 水圧転写シート
2 … 支持体シート
3 … 多孔質層
3a … 無機顔料
3b … バインダー樹脂
4 … 印刷模様層




 

 


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