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発明の名称 粉末成形装置及び粉末成形方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−245186(P2007−245186A)
公開日 平成19年9月27日(2007.9.27)
出願番号 特願2006−71604(P2006−71604)
出願日 平成18年3月15日(2006.3.15)
代理人 【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
発明者 西澤 剛一
要約 課題
粉末成形の短サイクル化に対応することのできる、液状潤滑剤の金型への塗布、乾燥が可能な粉末成形装置の提供を課題とする。

解決手段
粉末組成物を加圧成形して成形体を作製する粉末成形装置であって、鉛直方向に貫通するダイホールを有するダイと、ダイホール内に供給された粉末組成物に加圧力を付与する下パンチ14及び上パンチと、を備え、下パンチ14には、下パンチ14の側壁面に開口され、かつ外部から供給された潤滑剤をダイの内壁面に向けて吐出する複数の潤滑剤吐出口30aと、下パンチ14の側壁面に開口され、かつ外部から供給されたガスをダイの内壁面に向けて吐出する複数のガス吐出口30bが形成され、複数の潤滑剤吐出口30aと複数のガス吐出口30bは、鉛直方向に所定間隔隔てて配置されている。
特許請求の範囲
【請求項1】
粉末組成物を加圧成形して成形体を作製する粉末成形装置であって、
鉛直方向に貫通するダイホールを有するダイと、
前記ダイホール内に供給された前記粉末組成物に加圧力を付与する第1のパンチ及び第2のパンチと、を備え、
前記第1のパンチには、
前記第1のパンチの側壁面に開口され、かつ外部から供給された潤滑剤を前記ダイの内壁面に向けて吐出する複数の潤滑剤吐出口と、
前記第1のパンチの側壁面に開口され、かつ外部から供給されたガスを前記ダイの内壁面に向けて吐出する複数のガス吐出口が形成され、
複数の前記潤滑剤吐出口と複数の前記ガス吐出口は、鉛直方向に所定間隔隔てて配置されていることを特徴とする粉末成形装置。
【請求項2】
前記第1のパンチが前記ダイに対して相対的に移動する方向の上流側に複数の前記潤滑剤吐出口を、また下流側に前記ガス吐出口を配置し、当該移動の際に、前記潤滑剤吐出口から前記潤滑剤を吐出するとともに、前記ガス吐出口から前記ガスを吐出することを特徴とする請求項1に記載の粉末成形装置。
【請求項3】
複数の前記潤滑剤吐出口は、前記第1のパンチの前記側壁面の周方向に沿って形成され、
複数の前記ガス吐出口は、前記第1のパンチの前記側壁面の周方向に沿って形成され、かつ複数の前記潤滑剤吐出口を挟んで鉛直方向の両側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の粉末成形装置。
【請求項4】
前記第1のパンチが前記ダイに対して相対的に移動する際に、前記潤滑剤吐出口から前記潤滑剤を吐出するとともに、前記移動する方向の下流側に位置する前記ガス吐出口から前記ガスを吐出することを特徴とする請求項3に記載の粉末成形装置。
【請求項5】
ダイのダイホールに形成されたキャビティ内の粉末組成物から第1のパンチ及び第2のパンチを用いて成形体を作製する粉末成形方法であって、
前記ダイホールに面する前記ダイの内壁面に対して、前記第1のパンチの側壁面から液状の潤滑剤を供給する工程(a)と、
前記液状の潤滑剤が塗布された前記ダイの内壁面に対して、前記第1のパンチの側壁面からガスを吹付ける工程(b)と、
前記キャビティに所定量の前記粉末組成物を供給する工程(c)と、
前記キャビティ内に供給された前記粉末組成物を前記第1のパンチ及び前記第2のパンチによって加圧成形する工程(d)と、
を備えることを特徴とする粉末成形方法。
【請求項6】
前記工程(a)と前記工程(b)は、前記第1のパンチが前記ダイに対して相対的に上昇又は下降する過程で行われることを特徴とする請求項5に記載の粉末成形方法。
【請求項7】
前記上昇又は下降する過程は、
前記工程(d)の終了後であって、前記加圧成形により得られた成形体を前記キャビティから排出する過程、及び、
前記成形体を前記キャビティから排出した後に、前記キャビティを形成する過程の少なくとも一方であることを特徴とする請求項6に記載の粉末成形方法。
【請求項8】
前記粉末組成物がR−T−B系焼結磁石の原料粉末であり、前記ガスが非酸化性ガスであることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の粉末成形方法。
ただし、RはYを含む希土類元素の1種又は2種以上、TはFe又はFe及びCoを示す。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末組成物を圧縮成形するための粉末成形装置及び粉末成形方法に関し、特に、圧縮成形の際に潤滑剤を供給することのできる粉末成形装置及び粉末成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、粉末冶金法を利用して焼結磁石等が作製されている。一般的な粉末冶金法では、数百ミクロン以下にまで微粉化した原料合金粉末を加圧成形し、得られた粉末成形体(圧粉体)を所定温度で加熱保持して焼結することによって焼結磁石等の焼結体が作製される。
【0003】
特に、モータ等に対して利用頻度が高いNd−Fe−B系焼結磁石は、まず、原料合金を粗粉砕及び微粉砕を行ってミクロンオーダまで微粉化する。次いで、この微粉末を磁場中で加圧成形した後、焼結及び時効処理を行うことによってNd−Fe−B系焼結磁石は作製される。
この加圧成形は、鉛直方向に貫通するダイホールを備えたダイと、ダイホールに上方から進退可能な上パンチと、ダイホール内にダイと相対移動可能に配設された下パンチとを備える粉末成形装置を用いて行われる。そして、下パンチをダイホール内の所定位置に配置することによってダイのダイホール内にキャビティを形成し、このキャビティ内に上記微粉末(磁石粉末)を上方から落下させて充填した後、上パンチをダイホール内に挿入して下パンチと協働して加圧して成形体を得る。
【0004】
Nd−Fe−B系の磁石粉末に代表される希土類磁石粉末は流動性が悪く、その圧縮成形の工程においてダイにかじりが発生する問題があった。このかじりとは、被成形体である粉末が、摩擦熱によりダイに少量付着することをいう。ダイに付着した粉末は、付着力が強いため、そのまま成形を続けると、付着した粉末によって成形体にキズや割れ、クラック等が発生して、成形体の品質低下を招いてしまう。
【0005】
上述したような問題を解消するために、特許文献1には、磁石粉末に潤滑剤を添加する技術が開示されている。この特許文献1には、Nd−Fe−B系磁石粉末に、潤滑剤(ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛及びビスアマイドのうち少なくとも1種を含む)を混合することによって、成形性を改善して、かじりによる成形体へのキズ等の発生を抑制できることが開示されている。特許文献1では、固体状の潤滑剤を溶剤に溶解又は分散させた液状の潤滑剤を成形対象である磁石粉末に添加している。
【0006】
特許文献1のように磁石粉末に潤滑剤を添加する方法は、成形性向上に一定の効果がある。しかし、成形性をさらに向上させようとすると、必要以上の量の潤滑剤を添加することが必要である。磁石粉末に添加する方法では、成形性の向上に寄与しない潤滑剤が相当量存在するからである。潤滑剤は有機物から構成されているため、必要以上の量の潤滑剤を添加すると、保磁力等の磁気特性を低下させる要因の一つである炭素量の増加に繋がる。
【0007】
一方、潤滑剤をダイに塗布する方法も開示されている。例えば、特許文献2には、下パンチの上部側壁面の周囲に溝を設け、この溝内に複数のノズルから液状の潤滑剤をダイの内壁面に向かって流出させる技術が開示されている。特許文献3には、固体潤滑剤を融点以上に加熱し溶融して液状とした後噴霧して、粉末、金型内壁面に噴霧して潤滑剤の表面被膜を形成することが開示されている。
【0008】
磁石粉末の金型へのかじりに対する対策として、液状の潤滑剤を金型に塗布することは、新たな問題を提起する。すなわち、上述の磁石粉末のように流動性が悪い粉末を、フィーダボックスから金型キャビティに充填する際に均一に充填できない問題が発生する。これは、充填時に磁石粉末が金型に塗布されている潤滑剤を吸収して凝集し、あるいはダイ壁面に付着することにより、キャビティ内で磁石粉末が均一状態になりにくいためである。このような磁石粉末の不均一な充填状態は、焼結後にクラックや変形の要因となる。
【0009】
【特許文献1】特開平4−214803号公報
【特許文献2】特開平3−291307号公報
【特許文献3】特開平9−104902号公報
【特許文献4】特開平11−100602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上の問題を解消するためには、金型に塗布された液状の潤滑剤を固化させればよい。例えば、特許文献4は、金型内の上部に加熱手段を、また下部に冷却手段を設け、加熱手段に対応する領域では潤滑剤を溶融して液状とし、冷却手段に対応する領域では潤滑剤を固体状とさせることを開示している。しかるに、特許文献4は、液状の潤滑剤は当該領域ではそのまま液状として使用することを前提としており、液状で塗布された潤滑剤を固化することを示唆するものではない。
【0011】
近時、製造コスト低減のために、磁石粉末の加圧成形の1サイクルは短くなってきている。このサイクル化された粉末の加圧成形の中で潤滑剤の金型への塗布、乾燥を行う必要がある。ところが、上述した特許文献1〜4は、この課題について開示、示唆するところがない。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、粉末成形の短サイクル化に対応することのできる、液状潤滑剤の金型への塗布、乾燥が可能な粉末成形装置の提供を課題とする。また本発明は、そのような粉末成形装置を用いた粉末成形方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
加圧成形の際にパンチから液状潤滑剤をダイの内壁面に向けて吐出し、さらに潤滑剤が塗布されたダイの内壁面に向けてガスをパンチから吐出して液状潤滑剤を乾燥させることとすれば、加圧成形サイクルの過程で液状潤滑剤の塗布、乾燥を行うことができる。この場合、液状潤滑剤の塗布、乾燥が加圧成形サイクルの過程で行われるので、新たな工程を付加する必要がない。したがって、粉末成形の短サイクル化に対応することができる。
すなわち本発明の粉末成形装置は、粉末組成物を加圧成形して成形体を作製する粉末成形装置であって、鉛直方向に貫通するダイホールを有するダイと、ダイホール内に供給された粉末組成物に加圧力を付与する第1のパンチ及び第2のパンチと、を備え、第1のパンチには、第1のパンチの側壁面に開口され、かつ外部から供給された潤滑剤をダイの内壁面に向けて吐出する複数の潤滑剤吐出口と、
第1のパンチの側壁面に開口され、かつ外部から供給されたガスをダイの内壁面に向けて吐出する複数のガス吐出口が形成され、複数の潤滑剤吐出口と複数のガス吐出口は、鉛直方向に所定間隔隔てて配置されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の粉末成形装置において、第1のパンチがダイに対して相対的に移動する方向の上流側に複数の潤滑剤吐出口を、また下流側にガス吐出口を配置することが好ましい。そうすることにより、第1のパンチの移動の際に、潤滑剤吐出口から潤滑剤を吐出するとともに、ガス吐出口からガスを吐出すると、潤滑剤の塗布をガスの吐出が追いかける形になり、液状潤滑剤の乾燥効率を高くすることができる。なお、本発明において、移動する方向の上流側又は下流側とは、移動先を上流として定められるものとする。したがって、たとえば、上方に移動する過程では、相対的に上にある領域は上流側に位置し、相対的に下にある領域は下流側に位置することになる。
【0014】
本発明の粉末成形装置において、複数の潤滑剤吐出口を、第1のパンチの側壁面の周方向に沿って形成する。また、複数のガス吐出口を、第1のパンチの側壁面の周方向に沿って形成するが、さらに複数の潤滑剤吐出口を挟んで鉛直方向の両側に配置することができる。この形態は、鉛直方向に、ガス吐出口、潤滑剤吐出口及びガス吐出口が順に配置されることを示唆している。
この形態を採用することにより、第1のパンチの往復動のいずれにおいても、上述した効率の高い潤滑剤の塗布を実現することができる。つまり、第1のパンチがダイに対して相対的に移動する際に、潤滑剤吐出口から潤滑剤を吐出するとともに、移動する方向の下流側に位置するガス吐出口からガスを吐出すればよい。
【0015】
本発明は、ダイのダイホールに形成されたキャビティ内の粉末組成物から第1のパンチ及び第2のパンチを用いて成形体を作製する粉末成形方法であって、ダイホールに面するダイの内壁面に対して、第1のパンチの側壁面から液状の潤滑剤を供給する工程(a)と、液状の潤滑剤が塗布されたダイの内壁面に対して、第1のパンチの側壁面からガスを吹付ける工程(b)と、キャビティに所定量の粉末組成物を供給する工程(c)と、キャビティ内に供給された粉末組成物を第1のパンチ及び第2のパンチによって加圧成形する工程(d)と、を備える新規な粉末成形方法を提供する。
この新規な粉末成形方法において、工程(a)と工程(b)は、ともに第1のパンチがダイに対して相対的に上昇又は下降する過程で行なうことが好ましい。そして、この上昇又は下降する過程は、粉末組成物における通常の成形サイクルに存在する。例えば、工程(d)の終了後であって、加圧成形により得られた成形体をキャビティから排出する過程である。また、成形体をキャビティから排出した後に、次の加圧成形の粉末組成物充填のためにキャビティを形成する際にも、第1のパンチがダイに対して相対的に上昇又は下降する。
【0016】
本発明の粉末成形方法は、R−T−B系焼結磁石に適用することができる。この場合、R−T−B系焼結磁石の原料粉末の酸化を防止するために、ガス吐出口から吐出するガスを非酸化性ガスとすることが好ましい。ここで、RはYを含む希土類元素の1種又は2種以上を、TはFe又はFe及びCoを示す。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明は、加圧成形の際にパンチから液状潤滑剤をダイの内壁面に向けて吐出し、さらに潤滑剤が塗布されたダイの内壁面に向けてガスをパンチから吐出して吹付けて液状潤滑剤を乾燥することができる。そうすることにより、加圧成形サイクルの過程で液状潤滑剤の塗布、乾燥を行うことができる。したがって、粉末成形の短サイクル化に対応することができる。しかも、潤滑剤は適切に乾燥されるため、キャビティに充填される粉末組成物の密度の均一性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態による粉末成形装置10の概略構成を示す図である。なお、粉末成形装置10は、粉末組成物である磁性粉末Pに所定方向の磁場を印加しつつ加圧成形するものであるが、以下の説明では磁場を印加するためのコイル等の記載、言及を省略する。
粉末成形装置10は、鉛直方向に貫通するダイホール12を有するダイ11と、ダイ11のダイホール12に対して上方から進退可能に構成された上パンチ13と、ダイ11のダイホール12内に嵌装された下パンチ14とを備える。
【0019】
粉末成形装置10において、下パンチ14は基台15に固定されているが、ダイ11は、図示しないアクチュエータによって昇降可能に構成されている。したがって、下パンチ14はダイ11に対して鉛直方向に相対的に昇降可能である。
図1に示すように、ダイ11が下パンチ14に対して所定位置まで上昇した状態では、下パンチ14によってダイ11のダイホール12内にキャビティ16が形成されている。
【0020】
ダイ11の上面には、フィーダボックス17が配設されている。フィーダボックス17は、内部に成形対象である磁性粉末Pを収容している。磁性粉末Pとしては、例えば希土類焼結磁石の原料である磁石粉末を用いることができる。もっとも、本発明の成形対象はこの磁石粉末に限らず、他の如何なる成形用の粉末組成物を用いることができる。フィーダボックス17は、図示しないアクチュエータによって、ダイ11の上面を図中左右方向にスライドさせることができる。
ダイ11の上面と接しているフィーダボックス17内の磁性粉末Pは、フィーダボックス17がキャビティ16の上方までスライドされると、キャビティ16内に自由落下して充填される。キャビティ16内に充填された磁性粉末Pは、ダイホール12に挿入された上パンチ13と下パンチ14とによって加圧成形される。
【0021】
図2に下パンチ14の正面図、図3に図2のA−A矢視断面図、図4に図2のB−B矢視断面図を示す。
下パンチ14は、ダイホール12に対応する矩形断面を有するパンチヘッド14aとパンチヘッド14aの下部に位置する矩形断面の基部14bとから構成される。パンチヘッド14aの側壁面には潤滑剤を供給するための開口である複数の潤滑剤吐出口30aが略同一平面上に形成されている。また、パンチヘッド14aの側壁面には非酸化性ガスを供給するための開口である複数のガス吐出口30bが略同一平面上に形成されている。
【0022】
潤滑剤吐出口30aは、パンチヘッド14a内に格子状に配設された第1パンチヘッド供給路33、第2パンチヘッド供給路34に連通している。第1パンチヘッド供給路33及び第2パンチヘッド供給路34は、互いに独立している。
また、ガス吐出口30bは、パンチヘッド14a内に格子状に配設された第3パンチヘッド供給路35に連通している。第3パンチヘッド供給路35は、第1パンチヘッド供給路33及び第2パンチヘッド供給路34よりも上層に形成され、かつ第1パンチヘッド供給路33及び第2パンチヘッド供給路34に対して独立している。
図2〜図4に示されるように、液状潤滑剤の潤滑剤吐出口30aはパンチヘッド14aの側壁面の周方向に沿ってかつ直線上に配置されており、非酸化性ガスのガス吐出口30bは潤滑剤吐出口30aの配置位置よりも鉛直方向上方に所定間隔を隔てて直線上に配置されている。
【0023】
下パンチ14の基部14bからパンチヘッド14aにかけて、2つの潤滑剤供給路31及び1つのガス供給路32が形成されている。そして、パンチヘッド14aにおいて、第1パンチヘッド供給路33に一方の潤滑剤供給路31の上端が連通し、第2パンチヘッド供給路34に他方の潤滑剤供給路31の上端が連通している。また、パンチヘッド14aにおいて、第3パンチヘッド供給路35に、ガス供給路32の上端が連通している。したがって、一方の潤滑剤供給路31を通じて供給される液状潤滑剤は、第1パンチヘッド供給路33を介して各潤滑剤吐出口30aからダイ11の内壁面に向けて吐出される。また、他方の潤滑剤供給路31を通じて供給される液状潤滑剤は、第2パンチヘッド供給路34を介して各潤滑剤吐出口30aからダイ11の内壁面に向けて吐出される。さらに、ガス供給路32を通じて供給される非酸化性ガスは、第3パンチヘッド供給路35を介して各ガス吐出口30bからダイ11の内壁面に向けて吐出される。
【0024】
下パンチ14の潤滑剤供給路31には潤滑剤供給配管18が接続されている(図1参照)。潤滑剤供給配管18の他端には潤滑剤貯留槽24が接続されている。そして、潤滑剤供給配管18の経路上には、潤滑剤貯留槽24側から第1ポンプ22、第1バルブ20が配設されている。潤滑剤貯留槽24内に貯留されている潤滑剤は第1ポンプ22によって潤滑剤供給配管18上に供給される。そして、第1バルブ20が開いているときには下パンチ14の潤滑剤供給路31に対して供給されるが、第1バルブ20が閉じているときには潤滑剤供給配管18上に留まる。このように、第1バルブ20は、潤滑剤の下パンチ14への供給を制御する。
【0025】
下パンチ14に形成されたガス供給路32にはガス供給配管19が接続されている。ガス供給配管19の他端には非酸化性ガス貯留槽25が接続されている。そして、ガス供給配管19の経路上には、非酸化性ガス貯留槽25側から第2ポンプ23、第2バルブ21が配設されている。非酸化性ガス貯留槽25内に貯留されている非酸化性ガスは第2ポンプ23によってガス供給配管19上に供給される。そして、第2バルブ21が開いているときには下パンチ14のガス供給路32に対して供給されるが、第2バルブ21が閉じているときにはガス供給配管19上に留まる。このように、第2バルブ21は、非酸化性ガスの下パンチ14への供給を制御する。
【0026】
粉末成形装置10は、その動作を制御するためのコントローラ26を備えている。すなわち、コントローラ26は、ダイ11の昇降、上パンチ13の昇降及びフィーダボックス17のスライドの動作を、各々に付設されるアクチュエータを介して制御する。また、第1バルブ20及び第2バルブ21の開閉動作を制御する。
【0027】
以上のように構成された粉末成形装置10の動作を図5及び図6を参照しつつ説明する。この動作は、コントローラ26が制御する。
当初は、前回の一連の工程が終了し、図5(a)に示すように、ダイ11は下降端に位置しているとともに、上パンチ13は上昇端に退避している。この状態を、図6に示すように初期状態と呼ぶ。
初期状態においては、フィーダボックス17も退避しており、図5(a)には示されていない。
この初期状態において、潤滑剤供給配管18上の第1バルブ20を開き(図6では「ON」、以下同様)、また、ガス供給配管19上の第2バルブ21も開く。したがって、下パンチ14のパンチヘッド14aに設けられた潤滑剤吐出口30aから潤滑剤が吐出される。また、下パンチ14のパンチヘッド14aに設けられたガス吐出口30bから非酸化性ガスが吐出される。
この潤滑剤は、脂肪酸又は脂肪酸の誘導体、例えば、ステアリン酸系やオレイン酸系であるステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の助剤を用いることができ、溶剤はアセトン、エタノール、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール等を使用し、前記脂肪酸と混合して使用する。この溶剤の沸点は、200℃以下が好ましく、150℃以下、さらには100℃以下がより好ましい。溶剤に助剤が溶け込んでいても、いわゆる混合状態でも使用可能であり、本発明の液状の潤滑剤とは両者を包含している。本発明では、潤滑剤吐出口30aから潤滑剤が吐出されるため、潤滑剤と溶剤の混合状態のものを使用することができる。潤滑剤の供給圧力は、0.01〜0.5MPaとすることが好ましい。供給圧力が低すぎると所定量の潤滑剤を供給するのに時間が必要であり、逆に供給圧力が高すぎると潤滑剤がダイ11の内壁面へ吐出される際に飛散して供給が不安定になるためである。供給圧力は好ましくは、0.05〜0.3MPaである。
【0028】
次に、コントローラ26は、キャビティ16形成のためにダイ11を上昇端まで上昇させる(図5(b))。この過程で、潤滑剤供給配管18上の第1バルブ20及びガス供給配管19上の第2バルブ21は開いたままである。したがって、ダイ11の上昇に伴って、ダイ11の内壁面の所定領域に潤滑剤が塗布される。一方で、ガス吐出口30bは潤滑剤が吐出されるガス吐出口30bよりも下パンチ14の移動方向の下流側に位置しているため、ダイ11の上昇(下パンチ14の下降)の過程で、潤滑剤の塗布を追いかけるように非酸化性ガスがダイ11の内壁面に吹付けられる。非酸化性ガスの吹付けにより、塗布された潤滑剤は強制的に乾燥される。乾燥をより確実にするために、非酸化性ガスの吹付けを継続する一方潤滑剤の吐出を停止した状態で、ダイ11を上昇端まで上昇させた後に、下降端まで下降させ、再度上昇端まで上昇させるという動作を行うことも有効である。
【0029】
非酸化性ガスを用いると、磁性粉末PがR−T−B系焼結磁石の原料粉末のように酸化されやすいものに対して、酸化防止に有効となる。もっとも、耐酸化性の粉末組成物の場合には、空気等の酸化性ガスを用いることもできる。非酸化性ガスとしては、窒素ガスやアルゴンガスを用いることができる。ガス供給圧力が低いと潤滑剤の乾燥を迅速に行うことができず、また、ガス供給圧力が高いとダイ11の内壁に塗布された潤滑剤にムラが生じ、潤滑剤塗布による成形性向上効果が十分に得られない虞がある。したがって、ガス供給圧力は、0.03〜3MPaが好ましく、より好ましくは0.05〜2MPa程度とする。ガスを所定の温度(冷風、温風)とすることもできる。この温度は、液状潤滑剤に使用される溶媒によって適宜設定すればよいが、10〜40℃程度とすることができる。10℃未満であると通常環境下において結露する場合があり、40℃を超えると磁性粉末Pが加熱され、特に希土類磁石粉末では酸化が進むため好ましくない。成形時の加圧により金型発熱が生じるので、使用するガスはより室温より低温であることが好ましい。溶媒の乾燥と金型冷却の効果が期待できるためである。
【0030】
ダイ11を上昇端まで上昇させたタイミングで、コントローラ26は、第1バルブ20及び第2バルブ21をOFFにする。
キャビティ16形成の段階では、上パンチ13、フィーダボックス17は、退避位置に制御されている。
【0031】
ついで、ダイ11が上昇端に達した後に、図5(c)に示すように、コントローラ26は、フィーダボックス17をキャビティ16上までスライドさせる。そうすると、フィーダボックス17内に収容されていた磁性粉末Pがキャビティ16内に落下する。
このとき、コントローラ26は、第1バルブ20及び第2バルブ21のOFFの状態を維持することができる。
なお、この粉末充填の段階では、上パンチ13は、退避位置に制御されたままである。
【0032】
キャビティ16上へフィーダボックス17が移動して所定時間経過後、コントローラ26は、フィーダボックス17をキャビティ16上から退避させる。このとき、フィーダボックス17の下面で磁性粉末Pが摺り切られて、キャビティ16内に所定量の磁性粉末Pが充填される。
フィーダボックス17の退避完了後、磁性粉末Pは加圧成形される。加圧成形のために、コントローラ26は、上パンチ13を下降させる。上パンチ13は、図5(d) に示すように、ダイ11のダイホール12(キャビティ16)に挿入され、キャビティ16内の磁性粉末Pを下パンチ14と協働して加圧成形する。このときの加圧力は、30〜300MPa程度である。
【0033】
この加圧成形の過程において、コントローラ26は、第1バルブ20及び第2バルブ21のOFFの状態を維持する。
【0034】
所定の加圧成形が完了したならば、コントローラ26は、図5(e)に示すように、上パンチ13及び下パンチ14の位置を維持したまま、ダイ11を下降端まで下降させる。成形体Cはキャビティ16外に排出される。この時点では、コントローラ26は、第1バルブ20及び第2バルブ21のOFFの状態を継持する。
【0035】
その後、コントローラ26は、図5(f)に示すように、上パンチ13を所定位置まで退避させると、成形体Cを取り出すことができる。上パンチ13を所定位置まで退避させたときにも、コントローラ26は第1バルブ20及び第2バルブ21をOFFの状態に維持したままで、粉末成形装置10を初期状態に設定し、以後の加圧成形サイクルに備える。
【0036】
本実施の形態では、潤滑剤の潤滑剤吐出口30aよりも下パンチ14のダイ11に対する相対的な下降の方向の下流側に非酸化性ガスのガス吐出口30bを配置し、キャビティ16を形成する際に潤滑剤吐出口30a及びガス吐出口30bが形成された下パンチ14をダイ11に対して相対的に下降させる。このとき、潤滑剤吐出口30aから液状の潤滑剤を吐出させることにより、ダイ11内壁面に液状の潤滑剤が塗布されるが、潤滑剤が塗布された領域に下パンチ14の下降に伴って非酸化性ガスのガス吐出口30bが移動することにより、当該領域に非酸化性ガスが吐出される。したがって、液状の潤滑剤の乾燥を強制的に行うことができる。
【0037】
以上の例では、潤滑剤の塗布を初期状態からキャビティ16形成のために下パンチ14を下降する際に行っているが、本発明はこれに限定されない。例えば、加圧成形終了後に成形体Cをパンチアウトするために下パンチ14を上昇させるときに行ってもよい。ただし、この場合は、ガス吐出口30bよりも潤滑剤吐出口30aを下パンチ14の移動(上昇)方向の上流側、つまり上方に配置する。そうすると、下パンチ14の上昇に伴って潤滑剤が塗布された領域に非酸化性ガスのガス吐出口30bが移動して、当該領域に非酸化性ガスが吐出される。したがって、液状の潤滑剤の乾燥を強制的に行うことができる。
【0038】
本実施の形態による粉末成形装置10は、下パンチ14の構造に特徴を有するが、例えば図7〜図10に示す下パンチ40の構造とすることもできる。なお、図7は下パンチ40の正面図、図8は図7のC−C矢視断面図、図9は図7のD−D矢視断面図、図10は図7のE−E矢視断面図を示す。
下パンチ40は、ダイホール12に対応する矩形断面を有するパンチヘッド40aとパンチヘッド40aの下部に位置する矩形断面の基部40bとから構成される。パンチヘッド40aの側壁面の周方向には非酸化性ガスを供給するための開口である複数のガス吐出口50bが略同一平面上に形成されている。また、パンチヘッド40aの側壁面の周方向には潤滑剤を供給するための開口である複数の潤滑剤吐出口50aが略同一平面上に形成されている。さらに、パンチヘッド40aの側壁面の周方向には非酸化性ガスを供給するための開口である複数のガス吐出口50cが略同一平面上に形成されている。図7に示すように、ガス吐出口50b、潤滑剤吐出口50a及びガス吐出口50cは下から順に配設されている。
【0039】
ガス吐出口50bは、パンチヘッド40a内に配設された第1パンチヘッド供給路54、第2パンチヘッド供給路55に連通している。第1パンチヘッド供給路54及び第2パンチヘッド供給路55は、互いに独立している。
また、潤滑剤吐出口50aは、パンチヘッド40a内に配設された第3パンチヘッド供給路56、第4パンチヘッド57に連通している。第3パンチヘッド供給路56及び第4パンチヘッド57は、第1パンチヘッド供給路54及び第2パンチヘッド供給路55よりも上層に形成され、かつ第1パンチヘッド供給路54及び第2パンチヘッド供給路55に対して独立している。
さらに、ガス吐出口50cは、パンチヘッド40a内に配設された第5パンチヘッド供給路58に連通している。第5パンチヘッド供給路58は、第3パンチヘッド供給路56及び第4パンチヘッド供給路57よりも上層に形成され、かつ第1パンチヘッド供給路54〜第4パンチヘッド供給路57に対して独立している。
【0040】
下パンチ40の基部40bからパンチヘッド40aにかけて、ガス供給路51、53及び潤滑剤供給路52が形成されている。そして、パンチヘッド40aにおいて、第1パンチヘッド供給路54、第2パンチヘッド供給路55に各々ガス供給路51の上端が連通している。また、第3パンチヘッド供給路56、第4パンチヘッド供給路57に各々の潤滑剤供給路52の上端が連通している。さらに、パンチヘッド40aにおいて、第5パンチヘッド供給路58に、ガス供給路53の上端が連通している。
したがって、ガス供給路51を通じて供給される非酸化性ガスは、第1パンチヘッド供給路54、第2パンチヘッド供給路55を介して各ガス吐出口50bからダイ11の内壁面に向けて吐出される。また、潤滑剤供給路52を通じて供給される潤滑剤は、第3パンチヘッド供給路56、第4パンチヘッド供給路57を介して各潤滑剤吐出口50aからダイ11の内壁面に向けて吐出される。さらに、ガス供給路53を通じて供給される非酸化性ガスは、第5パンチヘッド供給路58を介して各ガス吐出口50cからダイ11の内壁面に向けて吐出される。
【0041】
下パンチ40を以上の構成とすることにより、下パンチ40が上昇するとき及び下降するときの両方で潤滑剤塗布及び潤滑剤の乾燥を行うことができる。
例えば、下パンチ40が上昇するときには、ガス供給路51への非酸化性ガスの供給をON、潤滑剤供給路52への潤滑剤の供給をON及びガス供給路53への非酸化性ガスの供給をOFFにする。そうすると、潤滑剤供給路52、第3パンチヘッド供給路56及び第4パンチヘッド供給路57を介して潤滑剤吐出口50aから吐出された潤滑剤がダイ11の内壁面に塗布される。内壁面に塗布された潤滑剤には、当該領域に移動してきたガス吐出口50bから吐出される非酸化性ガスが吹付けられ、強制的に乾燥される。
また、下パンチ40が下降するときには、ガス供給路51への非酸化性ガスの供給をOFF、潤滑剤供給路52への潤滑剤の供給をON及びガス供給路53への非酸化性ガスの供給をONにする。そうすると、潤滑剤供給路52、第3パンチヘッド供給路56及び第4パンチヘッド供給路57を介して潤滑剤吐出口50aから吐出された潤滑剤がダイ11の内壁面に塗布される。内壁面に塗布された潤滑剤には、当該領域に移動してきたガス吐出口50cから吐出される非酸化性ガスが吹付けられ、強制的に乾燥される。
粉末成形装置10において、下パンチ40の上昇は成形体Cのノックアウト時に行われ、下パンチ40の下降は初期状態からキャビティ16の形成の時に行われるが、下パンチ40を用いることにより潤滑剤の塗布、潤滑剤の乾燥の工程はいずれか一方又は双方で行うことができる。また、その際には、前述したように、上昇と下降を繰り返して行うこともできる。なお、下パンチ40の上昇、下降はダイ11との相対的な関係である。なお、図7〜図10に示す下パンチ40を使用する場合には、ガス供給配管19上に開閉バルブを2つ設け、各々、独立して非酸化性ガスの供給を制御する必要がある。
【0042】
本発明では、例えば図11〜図14に示す下パンチ60の構造とすることもできる。なお、図11は下パンチ60の正面図、図12は図11のF−F矢視断面図、図13は図11のG−G矢視断面図、図14は図11のH−H矢視断面図を示す。
下パンチ60は、ダイホール12に対応する矩形断面を有するパンチヘッド60aとパンチヘッド60aの下部に位置する矩形断面の基部60bとから構成される。パンチヘッド60aの側壁面の周方向には非酸化性ガスを供給するための開口である複数のガス吐出口70bが略同一平面上に形成されている。また、パンチヘッド60aの側壁面の周方向には潤滑剤を供給するための開口である複数の潤滑剤吐出口70aが略同一平面上に形成されている。さらに、パンチヘッド60aの側壁面の周方向には非酸化性ガスを供給するための開口である複数のガス吐出口70cが略同一平面上に形成されている。図11に示すように、ガス吐出口70b、潤滑剤吐出口70a及びガス吐出口70cは下から順に配設されている。
【0043】
ガス吐出口70bは、パンチヘッド60a内に配設された第1パンチヘッド供給路74に連通している。
また、潤滑剤吐出口70aは、パンチヘッド60a内に配設された第2パンチヘッド供給路75に連通している。第2パンチヘッド供給路75は、第1パンチヘッド供給路74よりも上層に形成され、かつ第1パンチヘッド供給路74に対して独立している。
さらに、ガス吐出口70cは、パンチヘッド60a内に配設された第3パンチヘッド供給路76に連通している。第3パンチヘッド供給路76は、第2パンチヘッド供給路75よりも上層に形成され、かつ第1パンチヘッド供給路74、第2パンチヘッド供給路75に対して独立している。
【0044】
下パンチ60の基部60bからパンチヘッド60aにかけて、ガス供給路71、73及び潤滑剤供給路72が形成されている。そして、パンチヘッド60aにおいて、第1パンチヘッド供給路74に、ガス供給路71の上端が連通している。また、第2パンチヘッド供給路75に、各々の潤滑剤供給路72の上端が連通している。さらに、パンチヘッド60aにおいて、第3パンチヘッド供給路76に、ガス供給路73の上端が連通している。
したがって、ガス供給路71を通じて供給される非酸化性ガスは、第1パンチヘッド供給路74を介して各ガス吐出口70bからダイ11の内壁面に向けて吐出される。また、潤滑剤供給路72を通じて供給される潤滑剤は、第2パンチヘッド供給路75を介して各潤滑剤吐出口70aからダイ11の内壁面に向けて吐出される。さらに、ガス供給路73を通じて供給される非酸化性ガスは、第3パンチヘッド供給路76を介して各ガス吐出口70cからダイ11の内壁面に向けて吐出される。
【0045】
下パンチ60を以上の構成とすることにより、下パンチ40と同様に、下パンチ60が上昇するとき及び下降するときの両方で潤滑剤塗布及び潤滑剤の乾燥を行うことができる。
下パンチ60は、潤滑剤を供給する潤滑剤供給路72を下パンチ60の長手方向の外側に配置している点が下パンチ40との相違点である。このように潤滑剤供給路72を下パンチ60の長手方向の外側に配置することにより、長手方向の側壁に設けた潤滑剤吐出口70aからの潤滑剤の吐出について、圧力損失を抑制することができる。したがって、ダイ11の内壁面への潤滑剤の塗布を円滑に行うことができる。
【0046】
以上、下パンチについて3つの具体例を示したが、本発明はこの例に限定されることはなく、潤滑剤供給路、ガス供給路、パンチヘッド供給路に適宜変更を加えることができることは言うまでもない。
次に本発明が適用される希土類焼結磁石について説明する。本発明は、特にR−T−B系焼結磁石に適用することが好ましい。
このR−T−B系焼結磁石は、希土類元素(R)を25〜37wt%含有する。ここで、RはYを含む概念を有しており、したがってY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuの1種又は2種以上から選択される。好ましいRの量は28〜35wt%、さらに好ましいRの量は29〜33wt%である。
【0047】
また、R−T−B系焼結磁石は、ホウ素(B)を0.5〜4.5wt%含有する。Bが0.5wt%未満の場合には高い保磁力を得ることができない。一方で、Bが4.5wt%を超えると残留磁束密度が低下する傾向がある。したがって、Bの上限を4.5wt%とする。好ましいBの量は0.5〜1.5wt%、さらに好ましいBの量は0.8〜1.2wt%である。
R−T−B系焼結磁石におけるTはFe又はFe及びCoを意味する。ここで、Coを含む場合には3.0wt%以下(0を含まず)、好ましくは0.1〜1.0wt%、さらに好ましくは0.3〜0.7wt%とする。CoはFeと同様の相を形成するが、キュリー温度の向上、粒界相の耐食性向上に効果がある。
【0048】
さらに、R−T−B系焼結磁石は、Al及びCuの1種又は2種を0.02〜0.5wt%の範囲で含有することができる。この範囲でAl及びCuの1種又は2種を含有させることにより、得られる焼結磁石の高保磁力化、高耐食性化、温度特性の改善が可能となる。Alを添加する場合において、好ましいAlの量は0.03〜0.3wt%、さらに好ましいAlの量は、0.05〜0.25wt%である。また、Cuを添加する場合において、好ましいCuの量は0.15wt%以下(0を含まず)、さらに好ましいCuの量は0.03〜0.12wt%である。
本発明が適用されるR−T−B系焼結磁石は、他の元素の含有を許容する。例えば、Zr、Ti、Bi、Sn、Ga、Nb、Ta、Si、V、Ag、Ge等の元素を適宜含有させることができる。一方で、酸素、窒素、炭素等の不純物元素を極力低減することが好ましい。特に磁気特性を害する酸素は、その量を5000ppm以下とする。酸素量が多いと非磁性成分である希土類酸化物相が増大して、磁気特性を低下させるからである。さらに高磁気特性を得る場合には、その量を3000ppm以下、好ましくは2000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下とする。本発明は、このように酸素量の少ないR−T−B系焼結磁石の加圧成形に適用することが好ましい。
【0049】
R−T−B系焼結磁石に本発明を適用することが好ましいが、他の希土類焼結磁石に本発明を適用することも可能である。例えば、R−Co系焼結磁石に本発明を適用することもできる。
R−Co系焼結磁石は、Rと、Fe、Ni、Mn及びCrから選ばれる1種以上の元素と、Coとを含有する。この場合、好ましくはさらにCu又は、Nb、Zr、Ta、Hf、Ti及びVから選ばれる1種以上の元素を含有し、特に好ましくはCuと、Nb、Zr、Ta、Hf、Ti及びVから選ばれる1種以上の元素とを含有する。これらのうち特に、SmとCoとの金属間化合物、好ましくはSmCo17金属間化合物を主相とし、粒界にはSmCo系を主体とする副相が存在する。
【0050】
以上のR−T−B系焼結磁石は以下のようにして製造される。
原料金属を真空又は非酸化性ガス、好ましくはAr雰囲気中でストリップキャスティングすることにより、原料合金を得ることができる。原料合金を得るための原料金属としては、希土類金属あるいは希土類合金、純鉄、フェロボロン、さらにはこれらの合金等を使用することができる。
【0051】
原料合金が作製された後、これらの原料合金は粉砕される。粉砕工程には、粗粉砕工程と微粉砕工程とがある。まず、各母合金をそれぞれ粒径数百μm程度になるまで粗粉砕する。粗粉砕性を向上させるために、水素を吸蔵させた後、粗粉砕を行なうことが効果的である。また、水素吸蔵を行った後に、水素を放出させることにより、機械的な手段を用いることなく、粗粉砕を行うこともできる。
【0052】
高磁気特性を得るために、粉砕処理(粉砕処理後の回収)から焼結(焼結炉に投入する)までの各工程の雰囲気を、100ppm未満の酸素濃度に抑えることが好ましい。そうすることにより、焼結体に含まれる酸素量を3000ppm以下に制御することができる。
【0053】
粗粉砕工程後、微粉砕工程に移る。微粉砕は、主にジェットミルが用いられ、粒径数百μm程度の粗粉砕粉を平均粒径1〜8μmになるまで粉砕される。本発明の原料合金を用いることにより、微細かつ粒度分布幅の狭い微粉砕粉を得ることができる。ジェットミルは、高圧の非酸化性ガス(例えば窒素ガス)を狭いノズルより開放して高速のガス流を発生させ、この高速のガス流により粗粉砕粉を加速し、粗粉砕粉同士の衝突やターゲットあるいは容器壁との衝突を発生させて粉砕する方法である。微粉砕時に、ステアリン酸亜鉛等の添加剤を0.01〜0.3wt%程度添加することにより、成形時に配向性の高い微粉を得ることができる。
【0054】
次いで、微粉砕された磁性粉末Pを、磁場印加によってその結晶軸を配向させた状態で磁場中成形する。なお、上述した粉末成形装置10では、磁場印加の要素であるコイル等の記載、言及は省略している。成形圧力は成形開始から終了まで一定であってもよく、漸増又は漸減してもよく、あるいは不規則変化してもよい。成形圧力が低いほど配向性は良好となるが、成形圧力が低すぎると成形体Cの強度が不足してハンドリングに問題が生じるので、この点を考慮して成形圧力を選択する。磁場中成形で得られる成形体Cの最終的な相対密度は、通常、50〜60%である。また、印加する磁場は静磁場に限定されず、パルス状の磁場とすることもできる。また、静磁場とパルス状磁場を併用することもできる。
【0055】
ここで、粉砕処理からの各工程の雰囲気を100ppm未満の酸素濃度に抑える場合、磁場中成形の対象である磁性粉末Pに含まれる酸素量も低い。このように酸素量の低い磁性粉末Pは、活性度が高いために、ダイ11に対するかじりが非常に発生しやすい。したがって、低酸素濃度にてR−T−B系焼結磁石を製造する場合に、本発明は特に有効である。
【0056】
磁場中成形後、その成形体Cを真空又は非酸化性ガス雰囲気中で焼結する。焼結温度は、組成、粉砕方法、粒度と粒度分布の違い等、諸条件により調整する必要があるが、1000〜1200℃で1〜10時間程度焼結すればよい。
焼結後、得られた焼結体に時効処理を施すことができる。時効処理は、保磁力を制御する上で重要である。時効処理を2段に分けて行なう場合には、800〜900℃近傍、600〜700℃近傍での所定時間の保持が有効である。
【実施例1】
【0057】
高純度の原料を用意して、ストリップキャスト法により原料合金を作製した。次いで、室温にて原料合金に水素を吸蔵させた後、Ar雰囲気中で600℃×1時間の脱水素を行う水素粉砕処理を行った。水素粉砕処理が施された合金に微粉砕を行い、平均粒径4μmの微粉砕粉を得た。なお、微粉砕はジェットミルで行った。該微粉砕粉末の組成は以下の通りである。
30.2wt%Nd−1.4wt%Dy−1wt%B−0.1wt%Cu−0.2wt%Al−0.5wt%Co−bal.Fe
【0058】
以上で得られた微粉砕粉を、図1〜図4に示す形態の粉末成形装置10を用い、図5〜図6で示した要領で40gの微粉砕粉を成形体密度が4.2g/ccとなるように連続成形した(実施例1)。キャビティ16(下パンチ14)のサイズは、60mm×10mmである。下パンチ14には、φ1.5mmの潤滑剤吐出口30aを、60mmの辺に4つ、10mmの辺に2つ設けてある。また、下パンチ14には、φ1.5mmのガス吐出口30bを、60mmの辺に5つ、10mmの辺に2つ設けてある。非酸化性ガスとしては窒素ガスを用い、潤滑剤としてはステアリン酸亜鉛をエタノール溶媒と混合したものを用いた。窒素ガスの供給圧力は0.05MPa、潤滑剤の供給圧力は0.1MPaである。
【0059】
比較例として、下パンチ14の各辺に潤滑剤供給用の供給口を1つずつ設けた以外は、上記と同様の条件で連続成形した(比較例1)。なお、この比較例1では窒素ガスの供給は行わずに、潤滑剤の供給のみを供給圧力=0.1MPaで行った。
【0060】
実施例、比較例で得られた成形体(100ショット実施)を1050℃、4時間焼結した(酸素量:4000ppm、炭素量:1000ppm)。得られた焼結体の変形量を、図15に示す要領で測定した。すなわち、焼結体SBを図15に示すように平面上に置き、その総高さ(変形を含めた高さ)をT1、焼結体SBの肉厚をT2、変形量T3(=T1−T2)とすると、T3/T1×100(%)を変形量とした。その結果、実施例で得られた焼結体の変形量(100個の平均)は0.9%、比較例で得られた焼結体の変形量(100個の平均)は2.6%であった。このように実施例の方が変形量が小さいのは、実施例は、ダイ内壁面の潤滑剤が乾燥しているため充填時に磁石粉末が均一にキャビティに充填され、1つの成形体内部の密度分布が均一化しているからと考えられる。また、液状である潤滑剤が成形体表面に染み込み炭素量が増加すると、この炭素量増加による焼結時の収縮に弊害をおこすことがあるが、これも液状潤滑剤の乾燥によって変形が低減されていると考えられる。
【実施例2】
【0061】
合金組成を以下としたこと及び粉砕処理から成形までの雰囲気を100ppm未満の酸素濃度に抑えることを除いて、実施例1、比較例1と同様に連続成形を行い、その後1020℃で8時間焼結した(実施例2、比較例2)。なお、得られた焼結体の酸素量は1000ppm、炭素量は1000ppmであった。
24.9wt%Nd−5.9wt%Pr−0.4wt%Dy−1wt%B−0.05wt%Cu−0.2wt%Al−0.5wt%Co−bal.Fe
実施例1、比較例1と同様に焼結体の変形量を測定した。その結果、実施例2の平均変形量は0.1%、比較例2の変形量は3.1%であった。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本実施の形態による粉末成形装置の概略構成図である。
【図2】本実施の形態による下パンチの構成を示す正面図である。
【図3】図2のA−A矢視断面図である。
【図4】図2のB−B矢視断面図である。
【図5】本実施の形態による粉末成形装置の動作を説明する図である。
【図6】本実施の形態による粉末成形装置の主要素の動作フローを示す図である。
【図7】本実施の形態による下パンチの他の構成を示す正面図である。
【図8】図7のC−C矢視断面図である。
【図9】図7のD−D矢視断面図である。
【図10】図7のE−E矢視断面図である。
【図11】本実施の形態による下パンチの他の構成を示す正面図である。
【図12】図11のF−F矢視断面図である。
【図13】図11のG−G矢視断面図である。
【図14】図11のH−H矢視断面図である。
【図15】実施例における変形量の測定方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0063】
10…粉末成形装置、11…ダイ、12…ダイホール、13…上パンチ、14,40,60…下パンチ、14a,40a,60a…パンチヘッド、14b,40b,60b…基部、15…基台、16…キャビティ、17…フィーダボックス、18…潤滑剤供給配管、19…ガス供給配管、20…第1バルブ、21…第2バルブ、22…第1ポンプ、23…第2ポンプ、24…潤滑剤貯留槽、25…非酸化性ガス貯留槽、26…コントローラ、30a,50a,70a…潤滑剤吐出口、30b,50b,50c,70b,70c…ガス吐出口、31,52,72…潤滑剤供給路、32,51,53,71,73…ガス供給路、33,54,74…第1パンチヘッド供給路、34,55,75…第2パンチヘッド供給路、35,56,76…第3パンチヘッド供給路、57…第4パンチヘッド供給路、58…第5パンチヘッド供給路、P…磁性粉末、C…成形体




 

 


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