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発明の名称 顆粒の製造方法、希土類焼結磁石の製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−231396(P2007−231396A)
公開日 平成19年9月13日(2007.9.13)
出願番号 特願2006−57129(P2006−57129)
出願日 平成18年3月3日(2006.3.3)
代理人 【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
発明者 馬場 文崇 / 榎戸 靖 / 増田 健
要約 課題
優れた流動性を有する顆粒を用い、成形体の寸法精度の向上及び生産性の向上を図ることができる希土類焼結磁石の製造方法を提供する。

解決手段
所定組成の合金粒子1に第1の有機液体2を添加、混合して顆粒前駆体100とする工程と、この顆粒前駆体100に対し、第1の有機液体2よりも飽和蒸気圧の低い第2の有機液体3を添加して顆粒200とする工程と、を備えるようにした。このように、第1の有機液体2と第2の有機液体3の添加タイミングを異ならせることで、先に添加された第1の有機液体2は主に顆粒200の内部に存在し、後で添加された第2の有機液体3は主に顆粒200の表面に存在することになる。
特許請求の範囲
【請求項1】
所定組成の原料粉に第1の有機液体を添加、混合して顆粒前駆体とする工程と、
前記顆粒前駆体に対し、前記第1の有機液体よりも飽和蒸気圧の低い第2の有機液体を添加、混合して顆粒とする工程と、
を備える顆粒の製造方法。
【請求項2】
前記第2の有機液体を添加、混合することにより、前記原料粉が前記顆粒前駆体の表面にさらに付着して前記顆粒を形成することを特徴とする請求項1に記載の顆粒の製造方法。
【請求項3】
前記第1の有機液体は主に前記顆粒の内部に存在し、前記第2の有機液体は主に前記顆粒の表面に存在することを特徴とする請求項1または2に記載の顆粒の製造方法。
【請求項4】
前記第2の有機液体は、前記第1の有機液体との混合液として添加されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の顆粒の製造方法。
【請求項5】
前記顆粒を減圧雰囲気に晒す工程を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の顆粒の製造方法。
【請求項6】
前記第2の有機液体により、前記顆粒の形態が維持されることを特徴とする請求項5に記載の顆粒の製造方法。
【請求項7】
前記原料粉に対して、前記第1の有機液体を15.0wt%以下(ただし、0を含まず)、前記第2の有機液体を4.0wt%以下(ただし、0を含まず)添加することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の顆粒の製造方法。
【請求項8】
転動造粒法または転動流動層造粒法により、前記顆粒前駆体及び前記顆粒を作製することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の顆粒の製造方法。
【請求項9】
前記原料粉は、R14B相(Rは希土類元素から選択される1種又は2種以上の元素、TはFe又はFe及びCoを含む遷移金属元素から選択される1種又は2種以上の元素)を含む組成を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の顆粒の製造方法。
【請求項10】
所定組成の合金粒子に第1の有機液体を添加、混合して顆粒前駆体とする工程と、
前記顆粒前駆体に対し、前記第1の有機液体よりも飽和蒸気圧の低い第2の有機液体を添加、混合して顆粒とする工程と、
前記顆粒から前記第1の有機液体の除去処理を行う工程と、
前記第1の有機液体が除去された前記顆粒を金型キャビティに投入する工程と、
前記顆粒に磁場を印加し、かつ加圧成形することにより成形体を得る工程と、
前記成形体を焼結する工程と、
を備えることを特徴とする希土類焼結磁石の製造方法。
【請求項11】
前記第1の有機液体の添加量が前記第2の有機液体の添加量よりも多いことを特徴とする請求項10に記載の希土類焼結磁石の製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、顆粒の製造方法に関し、特に原料粉体を顆粒化することにより希土類焼結磁石を得る方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
希土類焼結磁石を製造する際、焼結に供する原料粉を微細化することにより飽和磁束密度及び保磁力等の磁気特性を確保している。ところが、原料粉の微細化は、成形体の寸法精度、生産性を阻害する要因となる。
原料粉は磁場中での加圧成形により成形体を構成する。この磁場中成形において、静磁場又はパルス磁場を印加して原料粉の粒子を配向させる。この磁場中成形時、原料粉が微細であるほどその流動性が悪く、金型への充填性が問題となる。粉末の金型への充填性が劣ると、金型へ粉末を十分に充填することができないために成形体の寸法精度が得られない、あるいは金型への充填自体に時間がかかって生産性を阻害するという問題がある。特に薄肉形状や複雑形状の成形体を精度よくかつ効率的に作製することは困難である。
【0003】
原料粉末の流動性向上の手段の一つとして原料粉末の顆粒化が試みられている。例えば、特開平8−107034号公報(特許文献1)および特開平8−88111号公報(特許文献2)は希土類金属粉末にバインダを添加したスラリをスプレードライすることにより顆粒化する提案を行っている。
また、特公平7−6025号公報(特許文献3)は、希土類金属粉末に磁界を印加して顆粒化する提案を行っている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−107034号公報
【特許文献2】特開平8−88111号公報
【特許文献3】特公平7−6025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3によれば、加圧体作製時の磁界印加工程および顆粒を金型に充填後、磁気特性を向上させるための交流磁界印加工程を要する。また、磁界を印加した顆粒であるため残留磁化による流動性の低下が懸念される。
特許文献1及び2によれば、顆粒を作製することにより流動性を向上させることはできる。しかし、合金粒子同士を例えばPVA(ポリビニルアルコール)といったバインダで付着しているため、合金粒子同士の付着力が比較的強い。このように付着力の強い顆粒を磁場中成形に供しても、各合金粒子を配向させることは容易ではない。したがって、得られる希土類焼結磁石は配向度が低く磁気特性、特に残留磁束密度(Br)が低いものとなる。また、バインダに含まれる炭素が磁気特性低下の要因となることから、このバインダを除去する工程が必要となる。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、優れた流動性を有する顆粒を用い、成形体の寸法精度の向上及び生産性の向上を図ることができる希土類焼結磁石の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述したように、従来のバインダを用いる顆粒化技術では、バインダを溶解する溶媒として、また、合金粒子を分散する分散媒として、所謂有機溶媒を所定量含むスラリを作製していた。本発明者らは、この有機溶媒に着目した。その結果、有機溶媒のみで顆粒を作製することができ、この顆粒は金型充填時の流動性に優れること、さらに有機溶媒のみで作製されたこの顆粒は合金粒子同士の付着力が比較的弱いため、磁場中成形時に印加される磁場により合金粒子に分離して、良好な配向状態を実現できることを確認した。さらに有機溶媒(以下、有機液体)のみで顆粒を作製する場合、顆粒を作製するための湿分として必要とされる有機液体の量と、顆粒がその形態を維持するために必要な有機液体の量には差異があり、後者の方が少なくて済むことがわかった。有機液体は、従来のPVA等のバインダに比べて磁気特性に及ぼす影響は極めて小さいといえるが、顆粒を形成している状態の有機液体の量が希土類焼結磁石の磁気特性に影響を及ぼすことも確認された。
【0007】
顆粒形成に必要な湿分を付与するための量だけ有機液体を添加すると、少なからずとも磁気特性を害することになる。もちろん、顆粒形成後のいずれかの段階で有機液体を除去する工程を設けることにより、磁気特性の問題を解消することはできるが、製造コストの観点からすると、この有機液体の除去工程が簡易であることが望まれる。この要求を満足させるべく、有機液体を用いて顆粒を一旦作製した後に、顆粒の形態維持に必要な量を残してその他の有機液体を除去することが本発明の目的達成に有効であろうことを知見した。すなわち、顆粒形成後に除去の容易な有機液体と、この有機液体よりも除去の難しい有機液体を用いて顆粒を作製すれば、その後除去の容易な有機液体のみを優先的に顆粒から除去できる一方、除去の難しい有機液体を顆粒に残留させることができるのである。
【0008】
ここで、磁気特性の観点から、この除去の難しい有機液体の量を極力少なくすることが必要である。そこで、本発明者らは、除去の容易な有機液体(第1の有機液体)を用いて顆粒前駆体とも言うべきものを一旦作製し、次いで、この顆粒前駆体に対して除去の難しい有機液体(第2の有機液体)を添加することにより、顆粒前駆体の表面を第2の有機液体によって付着した合金粒子で覆うことを検討した。顆粒前駆体は主に顆粒前駆体を構成する粒子間に第1の有機液体が存在するため、後に加えられる第2の有機液体は顆粒前駆体の内部に浸透するよりも顆粒前駆体の表面にあらたに付着する合金粒子間に優先的に付着することになる。次いで、この顆粒前駆体から第1の有機液体を除去する処理を施したところ、顆粒の形態を維持することができた。このことは、顆粒の形態を維持するために、第2の有機液体は、顆粒中心部を構成する粒子間に密に存在する必要はなく、顆粒の表面に存在する合金粒子を付着させるために存在していればよいことを示唆している。また、第2の有機液体は主に顆粒の表面に存在する合金粒子を付着する程度の量があれば足りるのであるから、その添加量を低減することが可能となる。
【0009】
本発明は以上の知見に基づくものであって、所定組成の原料粉に第1の有機液体を添加、混合して顆粒前駆体とする工程と、この顆粒前駆体に対し、第1の有機液体よりも飽和蒸気圧の低い第2の有機液体を添加して顆粒とする工程と、を備えることを特徴とする顆粒の製造方法である。
このように、第1の有機液体と第2の有機液体の添加タイミングを異ならせることで、先に添加された第1の有機液体は主に顆粒の内部に存在し、後で添加された第2の有機液体は主に顆粒の表面に存在することになる。
【0010】
この顆粒の製造方法では、第1の有機液体と第1の有機液体よりも飽和蒸気圧の低い第2の有機液体を用いて顆粒を作製しているので、所定の減圧雰囲気もしくは加熱下(減圧下での加熱含む)に当該顆粒を晒すことにより、第1の有機液体を第2の有機液体よりも優先的に顆粒から除去することが可能となる。また、第1の有機液体の飽和蒸気圧を選択することにより、低度の減圧雰囲気で第1の有機液体を容易に除去することができるとともに、第2の有機液体を主に顆粒の表面に残留させることができる。
第1の有機液体が除去されると、顆粒の形態は第2の有機液体によって維持される。顆粒を形成している状態の第2の有機液体の量は希土類焼結磁石の磁気特性、特に残留磁束密度に影響を及ぼす。具体的には第2の有機液体の量が少ないほど高い残留磁束密度を得る上で有利となるが、本発明では上述の通り、第1の有機液体により顆粒前駆体を作製した後に第2の有機液体を添加するために、第2の有機液体を顆粒の表面に効果的に付着させることができる。これにより第2の有機液体の量を顆粒の形態維持に最低限必要な程度の量に抑えることができる。
【0011】
本発明の顆粒の製造方法において、原料粉に対して、第1の有機液体を15.0wt%以下(ただし、0を含まず)、第2の有機液体を4.0wt%以下(ただし、0を含まず)添加することが望ましい。
このように第2の有機液体の添加量は少ないため、予め第2の有機液体を溶剤で希釈してから顆粒前駆体に添加することが望ましい。これにより、第2の有機液体の添加量を少量に抑えつつ、顆粒前駆体の表面に第2の有機液体を均一に付着させることが容易となる。
顆粒前駆体及び顆粒を作製する際には、転動造粒法または転動流動層造粒法を用いることが好ましい。特に転動造粒法によれば、顆粒が良好に形成され、収量を多く確保できる。
【0012】
本発明の顆粒の製造方法は希土類焼結磁石の製造に好適に適用することができる。この場合、原料粉の組成はR14B相(Rは希土類元素から選択される1種又は2種以上の元素、TはFe又はFe及びCoを含む遷移金属元素から選択される1種又は2種以上の元素)を含むものとすることが望ましい。
本発明の顆粒の製造方法を希土類焼結磁石の製造に適用するには、まず上記した方法で第1の有機液体及び第2の有機液体を用いて顆粒を作製した後、顆粒から第1の有機液体を除去するための処理を行う。そして、第1の有機液体が除去された顆粒を金型キャビティに投入した後、顆粒に磁場を印加し、かつ加圧成形することにより成形体を得て、この成形体を焼結することにより、希土類焼結磁石を作製することができる。
第1の有機液体は顆粒作製後に除去されるものであり、主に顆粒化助剤として機能する。一方、第2の有機液体は顆粒作製後も残存し、顆粒の形態を維持するための保形剤として機能する。このように両者の機能が異なるため、本発明では第1の有機液体の添加量は第2の有機液体の添加量よりも多い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、優れた流動性を有する顆粒を効率よく作製することができる。この顆粒を成形すれば、成形体の寸法精度の向上及び生産性の向上を図るとともに、磁気特性を大きく低下させることなく希土類焼結磁石を製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明する。
はじめに本発明の特徴である、有機液体を用いた顆粒化技術について説明する。なお、特に断りがない場合には、第1の有機液体と第2の有機液体を総称して単に「有機液体」という。
従来、例えば、有機バインダを用いて顆粒を作製する場合、粒子間に有機バインダを存在させて粒子同士を付着させることを念頭においていた。本発明は、中間生成物である顆粒前駆体の段階では第1の有機液体を粒子間に存在させ、最終生成物である顆粒においては専ら顆粒の周囲の粒子間に第2の有機液体を存在させる。
有機液体による付着力は、従来のPVA等のバインダによる付着力に比べて極めて弱い。したがって、本発明により得られる顆粒は、磁場中成形時に印加される磁場によって容易に崩壊し、合金粒子に分離する。そのため、高い配向度を得ることができる。これまで、バインダを用いることが顆粒作製の前提として考えられてきたが、本発明のように有機液体を用いた場合でも、流動性の高い顆粒が得られることを見出した価値は大きい。しかも、有機液体が主に顆粒の表面に存在しているため、金型への顆粒の付着も防止される。加えて、この顆粒は、磁場印加により崩壊するため、磁場中成形を行う希土類焼結磁石にとって好適である。さらに、有機液体は、従来のバインダであるPVA等の樹脂に比べて、成形体からの除去が極めて容易であり、従来の顆粒技術を用いた場合には必須とされていた脱バインダ工程を省くことが可能であり、工程的な利点をも含んでいる。なおここで、有機液体は、一般に有機溶媒と呼ばれている物質を包含するが、本発明では溶媒として機能しないことから有機液体と呼んでいる。
【0015】
以下、図1を用いて希土類焼結磁石の製造工程順に、本発明を詳説する。図1に示すように、本発明の希土類焼結磁石の製造方法では微粉砕工程後に顆粒を作製するが、この顆粒の作製方法が本発明の特徴的部分である。
【0016】
<原料合金作製工程(S101)>
原料合金作製工程(S101)では、真空又は不活性ガス、望ましくはAr雰囲気中でストリップキャスト法、その他公知の溶解法により原料合金を作製することができる。ストリップキャスト法は、原料金属をArガス雰囲気などの非酸化性雰囲気中で溶解して得た溶湯を回転するロールの表面に噴出させる。ロールで急冷された溶湯は、薄板又は薄片(鱗片)状に急冷凝固される。この急冷凝固された合金は、結晶粒径が1〜50μmの均質な組織を有している。原料合金は、ストリップキャスト法に限らず、高周波誘導溶解等の溶解法によって得ることができる。なお、溶解後の偏析を防止するため、例えば水冷銅板に傾注して凝固させることができる。また、還元拡散法によって得られた合金を原料合金として用いることもできる。
R−T−B系焼結磁石を得る場合、R14B結晶粒を主体とする合金(低R合金)と、低R合金よりRを多く含む合金(高R合金)とを用いる所謂混合法を本発明に適用することもできる。
なお、原料合金の酸素量は、通常、300ppm以下であり、この段階の酸素量は低い。ところが、以降の粉砕工程、磁場中成形工程において酸素量が増大する。したがって、本発明では、この工程における酸素量の増大を抑えるため、焼結に供されるまでの工程では、その雰囲気(合金が直接触れる雰囲気)の酸素量を200ppm以下とすることが好ましい。より好ましい酸素量は100ppm以下、さらに好ましくは80ppm以下である。
【0017】
<粗粉砕工程(S103)>
粗粉砕工程(S103)では、原料合金作製工程(S101)で得られた原料合金を粗粉砕する。混合法による場合には、低R合金及び高R合金は別々に又は一緒に粉砕される。
まず、原料合金を、粒径数百μm程度になるまで粗粉砕する。粗粉砕は、スタンプミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル等を用い、不活性ガス雰囲気中にて行うことが好ましい。粗粉砕に先立って、原料合金に水素を吸蔵させた後に放出させることにより粉砕を行うことが効果的である。この水素放出処理は、希土類焼結磁石として不純物となる水素を減少させることを目的として行われる。水素放出のための加熱保持の温度は、200℃以上、望ましくは350℃以上とする。保持時間は、保持温度との関係、原料合金の厚さ等によって変わるが、少なくとも30分以上、望ましくは1時間以上とする。水素放出処理は、真空中又はArガスフローにて行う。なお、水素吸蔵処理、水素放出処理は必須の処理ではない。この水素粉砕を粗粉砕と位置付けて、機械的な粗粉砕を省略することもできる。
【0018】
<微粉砕工程(S105)>
粗粉砕工程(S103)後、微粉砕工程(S105)に移る。微粉砕には主にジェットミルが用いられ、粒径数百μm程度の粗粉砕粉末を、平均粒径2.5〜6μm、望ましくは3〜5μmとする。ジェットミルは、高圧の不活性ガスを狭いノズルより開放して高速のガス流を発生させ、この高速のガス流により粗粉砕粉末を加速し、粗粉砕粉末同士の衝突やターゲットあるいは容器壁との衝突を発生させて粉砕する方法である。
【0019】
混合法による場合、2種の合金の混合のタイミングは限定されるものではないが、微粉砕工程において低R合金及び高R合金を別々に粉砕した場合には、微粉砕された低R合金粉末及び高R合金粉末を窒素雰囲気中で混合する。低R合金粉末及び高R合金粉末の混合比率は、重量比で80:20〜97:3程度とすればよい。低R合金及び高R合金を一緒に粉砕する場合の混合比率も同様である。なお、成形時の潤滑及び配向性の向上を目的とした脂肪酸又は脂肪酸の誘導体や炭化水素、例えばステアリン酸系やオレイン酸系であるステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、炭化水素であるパラフィン、ナフタレン等を微粉砕時に0.01〜0.3wt%程度添加することができる。
【0020】
<顆粒前駆体作製工程(S107)、顆粒作製工程(S109)>
以上で得られた微粉砕粉末(原料粉、合金粒子)は、顆粒前駆体作製工程(S107)及び顆粒作製工程(S109)を経て顆粒化される。本発明では2種類の有機液体を用いて顆粒を作製するが、2種類の有機液体の添加タイミングを異ならせて最終的に有機液体の残存量が少ない顆粒を作製することを特徴とする。以下ではまず有機液体について説明した後に、本発明において特徴的な有機液体の添加タイミングについて説明する。
【0021】
本発明で用いる有機液体としては、炭化水素系化合物、アルコール系化合物、エーテル系(グリコールエーテル系を含む)化合物、エステル系(グリコールエステル系を含む)化合物、ケトン系化合物、脂肪酸系化合物、テルペン系化合物の1種又は2種から選択することができる。このような有機液体の具体例を挙げると、炭化水素系化合物としては、トルエン、キシレン、アルコール系化合物としては、エタノール、イソブチルアルコール、エーテル系化合物としては、ブチルセロソルブ、セロソルブ、カルビトール、ブチルカルビトール、エステル系化合物としては、酢酸エチル、ケトン系化合物としては、アセトン(ジメチルケトン)、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、テルペン系化合物としては、ピネン、ターピネオール等がある。
もちろん、ここに挙げた有機液体に限るものではなく、これ以外にも、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール等や、グリセリン等、他の有機液体を用いることも可能である。
【0022】
有機液体を用いて作製された顆粒は、有機液体が、少なくとも微粉砕粉末を構成する合金粒子同士の接点に存在し、その液体架橋力によって合金粒子同士が付着している。このとき、合金粒子同士の接点には、液体中に、合金粒子同士を付着させるためのバインダ等の固体成分を実質的に含まない。ただし、粉砕性の向上並びに成形時の配向性の向上のために潤滑剤を添加した場合、この潤滑剤の固体成分が液体中に存在することを許容するものとする。また、顆粒の表面にも有機液体が存在し、潤滑剤の役割を果たすことができる。
【0023】
有機液体を用いて作製された顆粒は、所定の工程までその形状を維持している必要がある。一旦作製された顆粒がその形状を維持できなくなると、顆粒から脱落した微細な合金粒子が顆粒の周囲に付着した形態を成し、この形態の顆粒は流動性を低下させる。したがって、本発明に用いる有機液体としては、容易に揮発しないことが好ましい。そこで本発明では、20℃における飽和蒸気圧が75mmHg(10kPa)以下の有機液体を用いることが好ましい。より好ましい20℃における飽和蒸気圧は20mmHg以下、さらに好ましい20℃における飽和蒸気圧は5mmHg以下である。
また、本発明に用いる有機液体は、室温では気化しないよう、沸点が50℃以上、より好ましくは100℃以上であるのが好ましい。
【0024】
本発明に用いる有機液体はまた、顆粒を維持するために十分な付着力、つまり保形力を合金粒子間に付与する必要がある。そのために、有機液体の表面張力、粘度を特定することが本発明では好ましい。好ましい有機液体の表面張力は、20℃において20dyn/cm以上である。より好ましい20℃における表面張力は25dyn/cm以上、さらに好ましい20℃における表面張力は30dyn/cm以上である。また、好ましい有機液体の粘度は、20℃において0.35cp以上である。より好ましい20℃における粘度は1cp以上、さらに好ましい20℃における粘度は2cp以上である。
【0025】
さらに、微粉砕粉末の酸化を防止するため、本発明に用いる有機液体は、酸素濃度が低く、また水への溶解度(水溶性)が低いものであるのが好ましい。
【0026】
本発明では、第1の有機液体と、第1の有機液体よりも飽和蒸気圧の低い第2の有機液体を用いて顆粒を作製する。各種有機液体の飽和蒸気圧を表1に示すが、この値を基準として第1の有機液体、第2の有機液体を選定すればよい。例えば、第1の有機液体としては、トルエン、キシレン、エタノール、アセトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、イソブチルアルコール、酢酸n−ブチル、ジブチルエーテルを用いることができる。また第2の有機液体としては、ピネン、メンタン、ターピネオールを含むテルペン系化合物、酢酸ブチルカルビトール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ブチルカルビトール、ジエチレングリコール、カルビトール、セロソルブ、ブチルセロソルブ、無水プロピオン酸を用いることができる。また、ただし、これはあくまで例示であって、本発明の範囲を確定するものではない。例えば、第1の有機液体として例示されたもののなかで、第1の有機液体、第2の有機液体を構成することもできるし、第2の有機液体として例示されたもののなかで、第1の有機液体、第2の有機液体を構成することもできる。なお、表1には水の物性も併せて示す。
【0027】
【表1】


【0028】
本発明では微粉砕粉末に対して第1の有機液体を添加、混合して顆粒前駆体とする工程(S107)と、顆粒前駆体に第2の有機液体を添加、混合して顆粒とする工程(S109)とを備えることを特徴とする。第1の有機液体は、顆粒作製に必要な湿分を微粉砕粉末に対して与える顆粒化助剤として主に機能するが、後述する減圧乾燥工程(S111)で除去される。一方、第2の有機液体は、顆粒の形態を維持するために十分な付着力を付与する保形剤として主に機能し、減圧乾燥工程(S111)後も顆粒中に残存する。このように、第1の有機液体及び第2の有機液体が担う機能を分担させることにより、顆粒に残存する有機液体の量を磁場中成形工程(S113)の前に低減することができる。これは焼結体中の残留炭素量を低減することにつながり、最終的に磁気特性の高い焼結磁石を得ることが可能となる。
【0029】
顆粒前駆体作製工程(S107)では、微粉砕粉末に対して第1の有機液体を添加、混合する。顆粒化助剤として機能する第1の有機液体の添加量は、微粉砕粉末に対して15.0wt%以下(ただし、0を含まず)とすることが望ましい。第1の有機液体がないと顆粒作製に必要な湿分を微粉砕粉末に対して与えることが難しく、15.0wt%を超えると湿分が多くなりすぎて、第1の有機液体除去に工数がかかることになる。そこで第1の有機液体の添加量は、15.0wt%以下(ただし、0を含まず)とすることが望ましい。第1の有機液体の好ましい添加量は5〜13wt%、さらに好ましい添加量は8〜12wt%である。
微粉砕粉末に対して第1の有機液体が添加、混合されることで、図2(a)に示すように、第1の有機液体2を介して微粉砕粉末を構成する合金粒子1同士が付着した顆粒前駆体100が形成される。
【0030】
顆粒作製工程(S109)では、顆粒前駆体に対し、第1の有機液体よりも飽和蒸気圧の低い第2の有機液体を添加、混合して顆粒とする。
保形剤として機能する第2の有機液体の添加量は、微粉砕粉末に対して4.0wt%以下(ただし、0を含まず)とすることが望ましい。第2の有機液体がないと液体架橋による顆粒形成が容易でなくなり、一方4.0wt%添加すれば形成された顆粒の形態維持に十分であり、それを超える添加は磁気特性を低下させる要因となる。そこで第2の有機液体の添加量は4.0wt%以下(ただし、0を含まず)とするのが望ましい。第2の有機液体の好ましい添加量は0.3〜3.0wt%、さらに好ましい添加量は0.5〜2.0wt%である。
第2の有機液体の添加量は少量であるため、第2の有機液体を顆粒前駆体の表面に効果的に付着させるには第2の有機液体を第1の有機液体またはその他の溶剤で希釈して添加することが好ましい。第2の有機液体を第1の有機液体で希釈して添加する場合には、顆粒前駆体作製工程(S107)及び顆粒作製工程(S109)における第1の有機液体の添加量の合計を15.0wt%以下(ただし、0を含まず)とすることが望ましい。
【0031】
顆粒前駆体に対して第2の有機液体が添加、混合されることで、図2(b)に示すように顆粒前駆体100の表面が第2の有機液体3により付着した合金粒子1によってコーティングされる。このとき、第2の有機液体3の一部が顆粒前駆体100の内部に浸透することもあるが、顆粒前駆体100の合金粒子1間に第1の有機液体2が存在し、かつ顆粒前駆体100の密度が高いために第2の有機液体3は主に顆粒前駆体100の表面に付着し、第2の有機液体3により付着した合金粒子1によるコーティング層が形成された顆粒200を構成することになる。なお、第2の有機液体3を第1の有機液体2で希釈して添加する場合には、コーティング層の合金粒子1が第2の有機液体3及び第1の有機液体2の混合液により付着される形態をとる。
【0032】
図2(b)は、図2(a)の顆粒前駆体100の表面が第2の有機液体3により付着した合金粒子1によってコーティングされたこととして示しているが、本発明はこの形態に限定されない。顆粒前駆体100に対して第2の有機液体3を添加、混合することにより、顆粒前駆体100が分裂すること、あるいは顆粒前駆体100同士が結合することもある。そのような場合にも、当該添加、混合後には第2の有機液体3によって付着した合金粒子1は、分裂又は結合された顆粒前駆体100の表面をコーティングすることになる。
【0033】
上記のタイミングで第1の有機液体及び第2の有機液体を微粉砕粉末に添加して顆粒を作製するには、転動造粒法を用いることが好ましい。
転動造粒法を用いて顆粒を作製するには、図3、図4に示すような造粒装置(顆粒作製装置)10を用いることができる。
図3および図4に示すように、造粒装置10は、チャンバ11内に、主回転翼(主翼、転動翼)12と、補助回転翼(補助翼)13とを備えた構成を有している。
チャンバ11は、図示しない開閉可能な蓋を備えており、蓋を閉じた状態で気密に密閉されるようになっている。また、チャンバ11には、図示しない2流体スプレーノズルや滴下ノズルにより、有機液体が添加できるようになっている。
主回転翼12は、回転軸12aに、複数の翼部材12bが設けられたもので、図示しない駆動モータによって回転軸12aの軸線回りに回転駆動されるようになっている。補助回転翼13も、同様に、回転軸13aに、複数の翼部材13bが設けられたもので、図示しない駆動モータ、あるいは主回転翼12を回転させるための駆動モータからギヤやタイミングベルト等の駆動力伝達機構を介して伝達される駆動力によって、回転軸13aの軸線回りに回転駆動されるようになっている。
【0034】
このような造粒装置10には、主回転翼12の設置形態により、図3に示すような縦型と、図4に示すような横型とがある。
図3に示す縦型の造粒装置(顆粒作製装置)10Vにおいては、主回転翼12は、回転軸12aが、チャンバ11内でほぼ鉛直方向に軸線を有するよう設けられている。そして、補助回転翼13は、主回転翼12の上方に設けられ、回転軸13aが、チャンバ11内でほぼ水平方向に軸線を有するよう設けられている。
また、図4に示す横型の造粒装置(顆粒作製装置)10Hにおいては、主回転翼12は、回転軸12aが、チャンバ11内でほぼ水平方向に軸線を有するよう設けられている。主回転翼12の翼部材12bは、チャンバ11の円周方向に連続する周壁11aに沿うように延出しており、補助回転翼13は、これら翼部材12bの内方に位置するよう設けられている。
【0035】
このような造粒装置10V、10Hでは、主回転翼12によってチャンバ11内で微粉砕粉末および有機液体を転動させることで、微粉砕粉末を、有機液体を介して凝集させて凝集物を形成し、補助回転翼13によって凝集物をほぐすことで、顆粒を作製するようになっている。より具体的には、チャンバ11内に、前記したような工程で得られた微粉砕粉末と第1の有機液体をそれぞれ所定量投入し、主回転翼12、補助回転翼13を回転駆動させることで、図2(a)に示したような顆粒前駆体100を作製する。その後、溶剤(例えば第1の有機液体)で希釈した第2の有機液体を所定量投入し、主回転翼12、補助回転翼13を回転駆動させることで造粒し、図2(b)に示したような顆粒200を作製する。
造粒装置10V、10Hにおいて、予め設定された所定時間の間、上記の造粒を行うことで、チャンバ11内で、微粉砕粉末が有機液体を介して凝集して造粒され、図2(b)に示したような顆粒200が作製される。
なお、チャンバ11に微粉砕粉末を投入した後には、微粉砕粉末の酸化を防ぐため、チャンバ11内を窒素等の不活性ガスに置換するのが好ましい。このとき、主回転翼12を一定時間回転させて微粉砕粉末をほぐすとともに、微粉砕粉末の空隙に存在するエアを追い出しながら、チャンバ11内を不活性ガスに置換するのがさらに好ましい。
【0036】
また、第1の有機液体の投入タイミングは、微粉砕粉末と同時でも良いが、前記のように微粉砕粉末の投入後に、主回転翼12を一定時間回転させてから、第1の有機液体を投入するのが好ましい。
さらに、第1の有機液体を所定量投入した後も、主回転翼12を一定時間回転させて、微粉砕粉末に第1の有機液体をなじませて造粒し、図2(a)に示したような顆粒前駆体100を形成した後に、溶剤(例えば第1の有機液体)で希釈した第2の有機液体を所定量投入し、再度、主回転翼12を一定時間回転させることが好ましい。第2の有機液体の添加量は上述したように第1の有機液体の添加量よりも少ない。よって、第2の有機液体を添加した後の混合時間(主回転翼12の回転時間)は、顆粒前駆体100を形成する際の混合時間より短時間で足りる。具体的には、前者の混合時間を1としたときに、主回転翼12の回転条件が同等であれば、後者の混合時間は2〜10、好ましくは2〜8、より好ましくは3〜5とすればよい。
【0037】
<減圧乾燥工程(第1の有機液体除去工程)(S111)>
本発明では、以上のようにして得られた顆粒を構成する第1の有機液体を除去する。第1の有機液体は、従来のPVA等のバインダに比べると磁気特性に与える影響は極めて小さく、かつ後述する焼結工程(S115)において容易に除去される。
第1の有機液体の除去を行う具体的な手段は特に限定されないが、減圧雰囲気に顆粒を晒して揮発させることが簡易かつ効果的である。本発明では、第2の有機液体の飽和蒸気圧が第1の有機液体よりも低いため、減圧雰囲気の圧力を調整することにより、第1の有機液体のみを除去することができる。減圧雰囲気は室温であってもよいが、加熱された減圧雰囲気とすることもできる。また、大気圧での加熱によっても第1の有機液体の除去を行うことができる。
【0038】
減圧雰囲気の圧力は、第1の有機液体の飽和蒸気圧、第2の有機液体の飽和蒸気圧に応じて定める必要があるが、高すぎると第1の有機液体の揮発が十分に進まない。一方、圧力が低すぎると有機液体の揮発が急激であるため顆粒に残留する有機液体の制御するのが難しくなる。そこで本発明は、減圧雰囲気の圧力を10〜10−2Torrの範囲とすることが好ましい。ただし、加熱された減圧雰囲気の場合は、7×10〜10−1Torrの範囲で足りる。
加熱温度が高すぎると顆粒を構成する合金粒子に酸化が生じ磁気特性の劣化を招くおそれがある。したがって加熱する場合には、加熱温度を40〜80℃とすることが好ましい。
【0039】
以上のようにして第1の有機液体が除去された顆粒に第2の有機液体が残留していないと顆粒の形態を維持することができない。一方、顆粒に残留する第2の有機液体の量が多すぎると磁気特性向上の効果を享受することができない。そこで本発明では、顆粒に残留する第2の有機液体の量は4.0wt%以下(ただし、0を含まず)の範囲とすることが好ましい。より好ましい顆粒に残留する第2の有機液体の量は0.3〜3.0wt%、さらに好ましい顆粒に残留する第1の有機液体の量は0.5〜2.0wt%である。この程度の量が残留していれば、次工程である磁場中成形時の金型への付着を防止することができる。
【0040】
図2(c)に第1の有機液体除去後の顆粒300の概念図を示す。この顆粒300が成形に供される最終生成物となる。この顆粒300は、第2の有機液体3が合金粒子1の集合体をその周囲を連続的に覆うことによって、顆粒の形態を維持することを可能とする。
【0041】
<磁場中成形工程(S113)>
以上のようにして得られた顆粒は磁場中成形に供される。
磁場中成形における成形圧力は0.3〜3ton/cmの範囲とすればよい。成形圧力は成形開始から終了まで一定であってもよく、漸増又は漸減してもよく、あるいは不規則変化してもよい。成形圧力が低いほど配向性は良好となるが、成形圧力が低すぎると成形体の強度が不足してハンドリングに問題が生じるので、この点を考慮して上記範囲から成形圧力を選択する。磁場中成形で得られる成形体の最終的な相対密度は、通常、50〜60%である。
印加する磁場は、12〜20kOe程度とすればよい。この程度の磁場を印加することにより、顆粒は崩壊して合金粒子に分解される。印加する磁場は静磁場に限定されず、パルス状の磁場とすることもできる。また、静磁場とパルス状磁場を併用することもできる。
【0042】
ここで、上記のようにして磁場中成形するに際し、成形体が形成された状態での有機液体の残留量は、45vol%以下(10wt%以下)であるのが好ましい。R−T−B系焼結磁石の製造工程における成形体密度は、55〜60%であり、残留する有機液体は成形体の空隙部分にのみ実質的に存在し得るからである。有機液体の残留量が45vol%程度より多くなると、成形時に、有機液体は金型キャビティ内で成形圧力によって圧縮され、これによって成形体がうまく成形できなくなる。より具体的には、成形圧力から解放された液体が元の容積に戻ろうとするため、成形体に割れが生じることがある。ここで、残留量は、顆粒を形成する粉の重量に対し、顆粒中に存在する有機液体の重量濃度(wt%)で規定される。残留量を正確に計測するには、顆粒から有機液体のみを揮発させ、その重量変化を測定する。このとき、顆粒の酸化による重量変動の影響を避けるため、容器内に顆粒を入れ、これを高真空にする、あるいは真空や不活性雰囲気下で加熱し、有機液体を揮発させて、そのときの重量変化を計測するのが好ましい。
【0043】
<焼結工程(S115)>
次いで、成形体を真空又は不活性ガス雰囲気中で焼結する。焼結温度は、組成、粉砕方法、平均粒径と粒度分布の違い等、諸条件により調整する必要があるが、1000〜1200℃で1〜10時間程度焼結すればよい。
【0044】
<時効処理工程(S117)>
焼結後、得られた焼結体に時効処理を施すことができる。この工程は、保磁力を制御する重要な工程である。時効処理を2段に分けて行う場合には、800℃近傍、600℃近傍での所定時間の保持が有効である。800℃近傍での熱処理を焼結後に行うと、保磁力が増大するため、混合法においては特に有効である。また、600℃近傍の熱処理で保磁力が大きく増加するため、時効処理を1段で行なう場合には、600℃近傍の時効処理を施すとよい。
【0045】
なお、転動造粒以外の造粒に本発明を適用することももちろん可能である。例えば、転動流動層造粒に本発明を適用することができる。一般の転動流動層造粒装置では造粒槽の上部に、水又はバインダ供給用のノズルが設置されており、このノズルにより一定の湿分を与えて、原料粉を流動化させて造粒を行う。このノズルから有機液体を所定のタイミングで噴霧することにより、本発明の有機液体顆粒を作製することができる。つまり、噴霧前半では第1の有機液体を添加し、噴霧後半で第2の有機液体を添加することによって本発明の有機液体顆粒を作製することができる。第1の有機液体及び第2の有機液体の噴霧条件は上記した転動造粒と同様とすればよい。
また、篩上で原料粉を振動させることにより造粒する方法に本発明を適用してもよい。この場合には、まず篩上の原料粉に第1の有機液体を適量添加、混合して篩を振動させて目的とする顆粒よりも小さいサイズの顆粒前駆体を作製する。次いで、溶剤(例えば第1の有機液体)で希釈した第2の有機液体を適量添加、混合した原料粉を顆粒前駆体に加えて、目的とする顆粒のサイズに応じたメッシュサイズの篩上で振動させる。後から加える原料粉は、顆粒前駆体の重量に対して5〜20wt%程度とすればよい。
【0046】
次に本発明が適用される希土類焼結磁石について説明する。
本発明は、特にR−T−B系焼結磁石に適用することが好ましい。このR−T−B系焼結磁石は、希土類元素(R)を25〜37wt%含有する。ここで、本発明におけるRはYを含む概念を有しており、したがってY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuの1種又は2種以上から選択される。Rの量が25wt%未満であると、R−T−B系焼結磁石の主相となるR14B相の生成が十分ではなく軟磁性を持つα−Feなどが析出し、保磁力が著しく低下する。一方、Rが37wt%を超えると主相であるR14B相の体積比率が低下し、残留磁束密度が低下する。またRが酸素と反応し、含有する酸素量が増え、これに伴い保磁力発生に有効なRリッチ相が減少し、保磁力の低下を招く。したがって、Rの量は25〜37wt%とする。好ましいRの量は28〜35wt%、さらに好ましいRの量は29〜33wt%である。
【0047】
また、本発明が適用されるR−T−B系焼結磁石は、ホウ素(B)を0.5〜4.5wt%含有する。Bが0.5wt%未満の場合には高い保磁力を得ることができない。一方で、Bが4.5wt%を超えると残留磁束密度が低下する傾向がある。したがって、Bの上限を4.5wt%とする。好ましいBの量は0.5〜1.5wt%、さらに好ましいBの量は0.8〜1.2wt%である。
本発明が適用されるR−T−B系焼結磁石は、Coを2wt%以下(0を含まず)、望ましくは0.1〜1wt%、さらに望ましくは0.3〜0.7wt%含有することができる。CoはFeと同様の相を形成するが、キュリー温度の向上、粒界相の耐食性向上に効果がある。
【0048】
また、本発明が適用されるR−T−B系焼結磁石は、Al及びCuの1種又は2種を0.02〜0.5wt%の範囲で含有することができる。この範囲でAl及びCuの1種又は2種を含有させることにより、得られるR−T−B系焼結磁石の高保磁力化、高耐食性化、温度特性の改善が可能となる。Alを添加する場合において、好ましいAlの量は0.03〜0.3wt%、さらに好ましいAlの量は、0.05〜0.25wt%である。また、Cuを添加する場合において、好ましいCuの量は0.15wt%以下(0を含まず)、さらに好ましいCuの量は0.03〜0.12wt%である。
本発明が適用されるR−T−B系焼結磁石は、他の元素の含有を許容する。例えば、Zr、Ti、Bi、Sn、Ga、Nb、Ta、Si、V、Ag、Ge等の元素を適宜含有させることができる。一方で、酸素、窒素、炭素等の不純物元素を極力低減することが好ましい。特に磁気特性を害する酸素は、その量を2500ppm以下、さらには2000ppm以下とすることが好ましい。より好ましくは、1500ppm以下である。酸素量が多いと非磁性成分である希土類酸化物相が増大して、磁気特性を低下させるからである。
【実施例】
【0049】
<第1実施例>
ストリップキャスト法により、27.4wt%Nd−4.6wt%Dy−0.25wt%Al−0.5wt%Co−0.07wt%Cu−1wt%B−Bal.Feの組成を有する原料合金を作製した。
次いで、室温にて原料合金に水素を吸蔵させた後、Ar雰囲気中で600℃×1時間の脱水素を行う水素粉砕処理を行った。
水素粉砕処理が施された合金に、粉砕性の向上並びに成形時の配向性の向上に寄与する潤滑剤を0.05〜0.1%混合した。潤滑剤の混合は、例えばナウターミキサー等により5〜30分間ほど行う程度でよい。その後、ジェットミルを用いて平均粒径が5μmの微粉砕粉末を得た。
【0050】
以上の微粉砕粉末を、造粒装置のチャンバ内に入れ、酸化防止のためチャンバ内部を窒素で満たした。このとき、造粒装置は、図4に示したような横型のもの(チャンバ容積は4リットル)を用いた。
その後、造粒装置の主回転翼を所定の速度で回し、微粉砕粉末を攪拌した。さらに、補助回転翼を回転させた。有機液体としては、第1の有機液体としてエタノールを用い、第2の有機液体としてターピネオールを用い、ノズルを用いてチャンバ内に所定時間(噴霧時間)をかけて噴霧した。噴霧のタイミングは以下の通りとした。
<実施例1〜4>
噴霧は2段階で行い、噴霧前半にはエタノールのみ噴霧し、噴霧後半にはエタノール及びターピネオールの混合溶液を噴霧した。噴霧量及び噴霧時間は表2に示した。
<比較例1>
噴霧は1段階で行い、エタノール及びターピネオールの混合溶液を180秒噴霧した。エタノールの噴霧量は微粉砕粉末に対し9.0wt%、ターピネオールの噴霧量は微粉砕粉末に対し1.0wt%とした。
<比較例2>
微粉砕粉末に対しターピネオールの噴霧量を2.0wt%、エタノールの噴霧量を8.0wt%とした以外は比較例1と同様の条件で有機液体の噴霧を行った。
【0051】
【表2】


【0052】
すべての有機液体を添加した後にも、有機液体と微粉砕粉末をなじませるため、主回転翼、補助回転翼を一定時間だけ回転させ続けた。その後、主回転翼、補助回転翼を停止し、顆粒をチャンバから取り出した。続いて、取り出した顆粒に含まれる第1の有機液体、つまりエタノールを蒸発させた。微粉砕粉末の酸化を防ぐため、蒸発には真空チャンバを用い、減圧雰囲気にて蒸発させた。なお、減圧雰囲気に晒した後のターピネオール、エタノールの残留量を確認したところ、ターピネオールは添加した量がほとんどそのまま残存し、エタノールのほとんどは揮発していた。
【0053】
有機液体を揮発させた後の顆粒について以下の方法に基づいて安息角を測定した。その結果を表3に併せて示す。なお、表3には顆粒化する前の微粉砕粉末の安息角も併せて示している。
安息角測定方法:60mmφの円のテーブルの上に、一定高さからふるいを通して少しずつ顆粒を落下させた。顆粒の山が崩壊する直前で顆粒の供給を停止した。円テーブルの上にできた顆粒の山の底角を測定した。円テーブルを120°ずつ回転し、計3箇所について角度を測定し、その平均を安息角とした。
【0054】
【表3】


【0055】
次いで、得られた顆粒を磁場中成形した。具体的には、15kOeの磁場中で1.4ton/cmの圧力で成形を行い、成形体を得た。
得られた成形体を真空中およびAr雰囲気中で1080℃まで昇温し4時間保持して焼結を行った。次いで得られた焼結体に800℃×1時間と560℃×1時間(ともにAr雰囲気中)の2段時効処理を施した。
【0056】
得られた焼結磁石の磁気特性を測定した結果を表3に示す。なお、表3には、微粉砕粉末を顆粒化することなく上記と同様にして磁場中成形、焼結及び時効処理を施して得られた焼結磁石、バインダとしてPVAを0.5wt%含むスラリをスプレードライして得られた顆粒を上記と同様にして磁場中成形、焼結及び時効処理を施して得られた焼結磁石の磁気特性も併せて示している。
【0057】
表3に示すように、有機液体を用い、転動方式で造粒された顆粒においては、安息角を50°以下とすることができる。このように、有機液体を用い、転動方式で造粒された顆粒においては、微粉砕粉末の安息角が62°であるのに対し、流動性を向上することができる。
また安息角は顆粒強度の指針にもなり、安息角が小さいほど顆粒は壊れにくい。ここで、保形剤として機能する第2の有機液体、つまりターピネオールの添加量が1.0wt%添加である比較例1と、ターピネオールの添加量が0.5wt%である実施例4を比較すると、実施例4はターピネオールの添加量が比較例1より少ないにもかかわらず、比較例1よりも小さい安息角が得られている。これは実施例4の顆粒の方が、顆粒表面付近のターピネオール濃度が高いため保形力が高く、顆粒表面からの微粉の発生が防止されるためである。
このように、本発明によれば、より少ない第2の有機液体の添加量で、強度の高い顆粒を得ることを可能とする。なお、実施例1、2は、ターピネオールの添加量が同じ比較例1よりも安息角が小さくなっているが、これは以下の理由による。つまり、安息角の測定時は顆粒を落下させるため、顆粒表面付近が剥がれ落ちて微粉が発生し安息角が増大するが、同じ添加量でも実施例1、2の方が顆粒表面付近のターピネオール濃度が高く、ターピネオールによる保形力が効果的に発揮されるため微粉の発生を抑えることができ、安息角が小さくなるのである。
【0058】
また磁気特性についてみると、第2の有機液体であるターピネオールの添加量が1.0wt%と同じ比較例1に比べて、実施例1、2は残留磁束密度(Br)が高くなっている。これは、実施例1、2の顆粒の方が第2の有機液体により配向しづらくなっている合金粒子の割合が低下するためである。
また、実施例1〜4の比較により、第2の有機液体の添加量が少ないほど、残留磁束密度(Br)が高くなるといえる。
【0059】
以上の通りであり、エタノール及びターピネオールの混合溶液を1段階で噴霧して添加するよりも、本発明が推奨する手法でエタノールを先行して噴霧し、次いでターピネオールを噴霧して添加することによって、顆粒の安息角を小さくすることができるとともに、高い残留磁束密度(Br)及び(BH)maxを得る上で有利であることが確認できた。特に本発明によれば、第2の有機液体の添加量を少なくしても安息角の小さな顆粒を作製することができるため、残留磁束密度(Br)の向上にとって有効である。有機液体により顆粒を作製した場合には、微粉砕粉末を磁場中成形して得られた焼結磁石よりも高い保磁力(HcJ)を示しており、本発明が推奨する方法は保磁力(HcJ)に悪影響を及ぼすものではない。
【0060】
特に、PVA等のバインダを用いた顆粒から焼結磁石を作製する場合、脱バインダ処理を行わなければ磁気特性の低下が著しく(表3の試料名「スプレードライ」の磁気特性参照)、製造工程を簡略化しつつ高い磁気特性を得ることができる本発明の効果は顕著である。
【0061】
なお、上記実施の形態では、第1の有機液体としてエタノールならびに第2の有機液体としてターピネオールを用いたが、この組み合わせに限るものではなく、他の有機液体を用いることも可能である。また、第1の有機液体に代えて水を用いてもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本実施の形態における希土類焼結磁石の製造工程を示すフローチャートである。
【図2】(a)は第1の有機液体を微粉砕粉末に添加、混合した後に得られる顆粒前駆体を模式的に示す図、(b)は顆粒前駆体に第2の有機液体を添加、混合した後に得られる顆粒を模式的に示す図、(c)は第2の有機液体を除去した後の顆粒を模式的に示す図である。
【図3】縦型の転動式造粒装置の構成を示す図であり、(a)は正断面図、(b)は平面図、(c)は(b)の右側面図である。
【図4】横型の転動式造粒装置の構成を示す図であり、(a)は正断面図、(b)は(a)の右側面図である。
【符号の説明】
【0063】
1…合金粒子、2…第1の有機液体、3…第2の有機液体、10、10H、10V…造粒装置(顆粒作製装置)、11…チャンバ、12…主回転翼(主翼、転動翼)、13…補助回転翼(補助翼)、100…顆粒前駆体、200…顆粒、300…顆粒




 

 


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