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発明の名称 磁歪材料粉末の製造方法及び磁歪素子の製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−162064(P2007−162064A)
公開日 平成19年6月28日(2007.6.28)
出願番号 特願2005−359179(P2005−359179)
出願日 平成17年12月13日(2005.12.13)
代理人 【識別番号】100105809
【弁理士】
【氏名又は名称】木森 有平
発明者 森 輝夫 / 高橋 淳一
要約 課題
特殊な粉砕法を用いることなく焼結体の密度を高め、しかも得られる焼結体において磁歪特性の低下を抑える。

解決手段
水素吸蔵処理が施された(TbDy−yFe(ただし、0≦y≦1である。)で表される原料粉末Bを真空中で加熱保持する脱水素工程と、脱水素工程後、原料粉末BをTbDy1−vFe(ただし、0≦v≦1であり、1.7≦w≦2.1である。)で表される原料粉末Aと混合し、TbDy1−xFe(ただし、0.27≦x≦0.35であり、1.27≦z≦2.1である。)で表される磁歪材料粉末を得る混合工程とを有する。脱水素工程における加熱温度を、450℃以上、原料粉末Bの共晶温度未満とすることが好ましい。
特許請求の範囲
【請求項1】
水素吸蔵処理が施された(TbDy1−yFe(ただし、0≦y≦1である。)で表される原料粉末Bを真空中で加熱保持する脱水素工程と、
前記脱水素工程後、前記原料粉末BをTbDy1−vFe(ただし、0≦v≦1であり、1.7≦w≦2.1である。)で表される原料粉末Aと混合し、TbDy1−xFe(ただし、0.27≦x≦0.35であり、1.27≦z≦2.1である。)で表される磁歪材料粉末を得る混合工程とを有することを特徴とする磁歪材料粉末の製造方法。
【請求項2】
前記脱水素工程における加熱温度を、450℃以上、前記原料粉末Bの共晶温度未満とすることを特徴とする請求項1記載の磁歪材料粉末の製造方法。
【請求項3】
前記脱水素工程における加熱温度を、550℃以上、750℃以下とすることを特徴とする請求項2記載の磁歪材料粉末の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法により得られた磁歪材料粉末を磁場中成形し、焼成することを特徴とする磁歪素子の製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁歪材料粉末の製造方法に関し、前記製造方法により得られた磁歪材料粉末を用いた粉末冶金法による磁歪素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、Tb−Dy−Fe系金属間化合物等からなる磁歪材料(いわゆる超磁歪材料)は、従来のフェライト系磁歪材料等に比べて高い磁歪特性を有することから、近年、その需要は益々拡大する傾向にある。具体的な用途としては、リニアアクチュエータ、振動子、圧力トルクセンサ、振動センサ、ジャイロセンサ等である。リニアアクチュエータや振動子等に用いた場合、磁歪素子は、付与する磁界の変化に伴い寸法が変化し、駆動力を発生する。圧力トルクセンサ、振動センサ、ジャイロセンサ等に用いた場合、磁歪素子は、外部から加わる力の変化に伴い透磁率が変化し、これをセンシングすることで圧力、トルク、振動等が検出される。
【0003】
このような磁歪材料の製造法としては、単結晶育成法が有効であることが従来から知られているが、単結晶育成法は極めて生産性が低く、形状の自由度も大幅に制限されるという欠点がある。そこで、単結晶育成法の欠点を改善し、低コストな製造を可能とするために、粉末冶金法による磁歪材料の製造が検討されている。粉末冶金法においては、基本的には、原料合金粉末を秤量及び混合し、所定の形状に加圧成形し、得られた成形体について焼結を行い、必要に応じて後加工処理を施すことにより磁歪材料が焼結体として製造される。
【0004】
超磁歪材料を粉末冶金法により製造する方法としては、例えば、最終組成の合金を粉砕し、磁場中成形した後、Arガス等の不活性ガス中で焼結する方法が提案されている(例えば、特許文献1等参照。)。しかしながら、最終組成の合金をそのまま粉砕して得られる原料粉末は磁場中での結晶の配向が悪く、磁歪値が低くなり、かつ焼結体密度が低くなるという不都合がある。
【0005】
この点を改善する手法としては、出発原料を、主相組成を与える原料粉末(例えばTbDy1−yFe(ただし、z:1.7〜2.1))と、希土類リッチな原料粉末((TbDy1−yFe)との2種類に分け、それぞれ粉砕した後、混合する方法が挙げられる。焼結体密度を高める観点では、前記希土類リッチな原料粉末を極力小さく粉砕することが望まれる。ただし、希土類リッチな合金粉末は展性及び延性に富むため、通常の機械的粉砕手法による微粉化は難しい。
【0006】
そこで、特許文献2等においては、希土類リッチな原料粉末をガスアトマイズ法等のような特殊な方法で粉砕し、粉砕後の2種類の粉末を混合した後にジェットミルで粉砕する技術が提案されている。具体的には、主相形成用合金粉末として、REFeなる組成の合金鋳塊を粉砕して得られる第一の粉末を用いる一方、液相組成合金粉末として、ガスアトマイズ法等によって調製された、前記REとFeの共晶組成を有する第二の粉末を用い、それらを混合せしめた後、微粉末と為し、磁場プレスにより圧粉体を形成した後、焼結している。
【特許文献1】米国特許第3949351号明細書
【特許文献2】特開平6−256912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献2に記載されるようにガスアトマイズ法を採用したとしても、REとFeの共晶組成を有するような希土類リッチな粉末を微粉砕することは難しい。例えば粒径50μm程度の粗大な粉末しか得られないのが実際であり、したがって、焼結体密度の向上には限界がある。また、不活性ガス中でのガスアトマイズ法等はコストが高いという欠点がある。
【0008】
また、前記希土類リッチな合金粉末における遷移金属Feの一部をCo又はNiで置換することにより、機械粉砕し易い状態とする技術も知られているが、Coは磁気異方性が大きくなるため磁歪特性を低下させ、Niはキュリー温度を低下させるという問題がある。また、Co及びNiのいずれも高価であるというデメリットもある。
【0009】
そこで本発明はこのような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、特殊な粉砕法を用いることなく密度の高い焼結体を得ることができ、しかも得られる焼結体において磁歪特性の低下を抑えることが可能な磁歪材料粉末の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、前記磁歪材料粉末の製造方法により得られた磁歪材料粉末を用いた磁歪素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の目的を達成するために、本発明に係る磁歪材料粉末の製造方法は、水素吸蔵処理が施された(TbDy1−yFe(ただし、0≦y≦1である。)で表される原料粉末Bを真空中で加熱保持する脱水素工程と、前記脱水素工程後、前記原料粉末BをTbDy1−vFe(ただし、0≦v≦1であり、1.7≦w≦2.1である。)で表される原料粉末Aと混合し、TbDy1−xFe(ただし、0.27≦x≦0.35であり、1.27≦z≦2.1である。)で表される磁歪材料粉末を得る混合工程とを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る磁歪素子の製造方法は、前記製造方法により得られた磁歪材料粉末を磁場中成形し、焼成することを特徴とする。
【0012】
出発原料として用いる原料粉末のうち、(TbDy1−yFeで表される希土類リッチな原料粉末Bについては、水素吸蔵処理により脆化させ、通常の機械粉砕により粉砕可能な状態とする。このことにより(TbDy1−yTで表される原料粉末の微粉砕が実現され、これを原料粉末A等と混合することで、密度の高い焼結体(磁歪素子)の作製に好適な磁歪材料粉末が得られる。
【0013】
ところで、前記水素吸蔵処理により(TbDy1−yTで表される原料粉末B中に水素が含まれることになるが、この水素は、結晶成長を抑制し、磁歪特性を低下させる原因となる。そこで、原料粉末Bから水素を除去する必要がある。例えば熱処理により水素を強制的に放出させることが考えられるが、通常の熱処理により原料粉末Bから水素を放出させることは難しい。また、水素量を充分に低減させるためには熱処理を高温で行えばよいものの、原料粉末Bは融点が低いため、加熱温度を高めると原料粉末Bが溶融することがある。
【0014】
そこで本発明では真空中で加熱して、原料粉末Bから水素を放出させる。このことにより、原料粉末Bが溶融しないような比較的低温にて水素を効率的に放出させることが可能となる。結果として、この原料粉末Bを含む磁歪材料粉末を用いた磁歪素子において、高い磁歪特性が実現される。
【0015】
また、本発明に係る磁歪材料粉末の製造方法においては、前記脱水素工程における加熱温度を、450℃以上、前記原料粉末の共晶温度未満とすることが好ましい。
【0016】
前記脱水素処理時の加熱温度が低いと脱水素に長時間を要するため、脱水素処理における加熱温度は450℃以上とする。ただし、(TbDy1−yTで表される原料粉末Bの溶融を防ぐため、加熱温度は当該原料粉末Bの共晶温度未満とする。以上のように、脱水素処理時の加熱温度を適正な範囲内とすることで、(TbDy1−yT中の水素量の低減効果が確実に発揮される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、超磁歪材料粉末を作製するに際し、特殊な粉砕法を用いることなく希土類リッチな原料粉末Bを微粉化することができる。そして、得られる磁歪材料粉末を用いることで、密度の高い焼結体を得ることができ、しかも、得られる焼結体において磁歪特性の低下を抑えることが可能である。したがって、製造コストを抑えながら磁歪特性等の特性に優れた磁歪素子を製造することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を適用した磁歪材料粉末の製造方法及び磁歪素子の製造方法について、詳細に説明する。
【0019】
先ず、粉末冶金法により製造される磁歪素子について説明する。粉末冶金法においては、磁歪素子は、例えば一般式TbDy1−xFe(ただし、0.27≦x≦0.35であり、1.7≦z≦2.1である。)で表される磁歪材料粉末(原料組成物)を焼結することによって焼結体として得られる。磁歪材料粉末は、TbDy1−vFe(ただし、0≦v≦1であり、1.7≦w≦2.1である。)で表される原料粉末Aと、(TbDy1−yFe(ただし、0≦y≦1である。)で表される原料粉末Bとを少なくとも含むものである。
【0020】
TbDy1−xFeで表される合金のうち、z=2であるRTラーベス型金属間化合物は、キュリー温度が高く、磁歪値が大きいため、磁歪素子に適する。ここで、zが1.7未満では、焼結後の熱処理でRT相が析出して磁歪値が低下する。また、zが2.1を上回ると、RT相又はRT相が多くなり、磁歪値が低下する。したがって、RT相を多くするために、zは1.7≦z≦2.1の範囲が好ましい。
【0021】
TbDy1−xFeで表される合金において、0.27≦x≦0.35とすることで、飽和磁歪定数が大きく、大きな磁歪値が得られる。ここで、xが0.27未満では室温以下では十分な磁歪値を示さず、逆に0.35を越えると室温付近では十分な磁歪値を示さない。
【0022】
前述の磁歪素子は、粉末冶金法により製造される。以下、本発明の磁歪材料粉末の製造方法及び磁歪材料粉末を用いた粉末冶金法による磁歪素子(焼結体)の製造方法について、図1を参照しながら説明する。
【0023】
磁歪素子の粉末冶金法による製造においては、例えば、3種類の原料A,B,Cをそれぞれ前処理した後、秤量・混合し、粉砕処理して得た磁歪材料粉末を、成形、焼成(焼結)等の工程を経て最終的な製品とされる。
【0024】
本実施形態で用いる原料の一部である原料Aは、TbDy1−vFe(ただし、0≦v≦1であり、1.7≦w≦2.1である。)なる組成を有するものである。先ず、A原料として、前記組成となるようにTb及び/又はDy、T等を秤量し、例えばArガスの不活性雰囲気中で溶融して合金を作製する。この合金を、1150℃〜1250℃程度の温度で熱処理する。前記熱処理により、合金作製時の各金属元素の濃度分布を一様にし、また、析出した異相を消滅させることができる。次に、例えばブラウンミル等の機械的粉砕手法により、平均粒径で5〜20μm程度まで粉砕処理することで、原料粉末Aが得られる。
【0025】
原料の一部である原料粉末Bは、(TbDy1−yFe(ただし、0≦y≦1である。)なる組成を有するものであり、水素吸蔵工程及び脱水素工程が施されたものである。先ず、B原料として、前記組成となるように、Tb及び/又はDy、Fe等を秤量し、例えばArガスの不活性雰囲気中で溶融して合金を作製し、機械的粉砕手法により粗粉砕する。
【0026】
次に、水素吸蔵処理を行い、原料粉末Bの結晶格子中に水素原子を進入させ、又は水素化物とする。水素吸蔵処理は、原料粉末Bを水素雰囲気中又は水素ガスと不活性ガス(例えばArガス)との混合ガス雰囲気中に所定時間加熱保持すればよい。水素吸蔵処理の際、水素ガスと不活性ガス(例えばArガス)との混合ガス雰囲気とすることが好ましく、また、温度は100℃〜200℃程度とすることが好ましい。
【0027】
原料粉末Bに水素を吸蔵させることにより、歪みが生じ、その内部応力によって割れが生ずる。この割れ又は水素吸蔵後の機械的粉砕により原料粉末Bはさらに微粉砕される。原料粉末Bは、細かく粉砕されることで焼結時に焼結助剤として働き、密度の高い焼結体を与える。さらに、Tb、Dy等の希土類元素は酸化されやすいために、わずかな酸素があっても表面に融点の高い酸化膜を形成して焼結の進行を抑制するが、水素を吸蔵することで、酸化され難くなるという利点もある。
【0028】
本発明では、原料粉末B中の水素量を低減する目的で、水素吸蔵処理に引き続いて、原料粉末Bを真空中で所定時間加熱保持する脱水素処理を行う。なお、ここで真空とは、例えば減圧により圧力10−2Torr以下とすることを言うものとする。真空中で加熱することにより、先の水素吸蔵処理により原料粉末Bに取り込まれた水素が効率よく放出(脱水素)される。希土類リッチな組成を持つ原料粉末Bは融点が低いため、脱水素処理での加熱による溶融が懸念されるが、脱水素処理を真空中で行うことで、原料粉末Bの融点より低い温度域にて水素を効率よく放出させることができる。したがって、原料粉末Bの溶融を起こすことなく原料粉末B中の水素量を限りなくゼロに近づけることができる。なお、原料A〜Cの混合粉末を磁場中成形した後、焼結時に原料粉末B中の水素を放出させることも考えられるが、この場合には脱水素が効率よく進まず、磁歪特性の低下を招く。また、常圧下での脱水素処理は、水素が放出されにくいため磁歪特性を低下させ、脱水素の効率を高める目的で加熱温度を高温とすると、融点の低い原料粉末Bが溶融することがあり、好ましくない。
【0029】
脱水素処理における加熱温度は、450℃以上、原料粉末Bである(TbDy1−yFeの共晶温度未満とすることが好ましい。加熱温度が低すぎると脱水素に長時間を要することから、加熱温度は450℃以上とする。一方、加熱温度を高温とすれば、脱水素処理に要する時間を短縮できるものの、原料粉末Bの共晶温度(例えば860℃程度)を上回ると原料粉末Bの溶融を引き起こす。したがって、脱水素処理の際の温度範囲は450℃以上、原料粉末Bの共晶温度未満とする。また、より好ましい加熱温度は、550℃以上、750℃以下の範囲である。加熱温度を550℃以上とすることで原料粉末Bの水素量をより効率的に低減することができる。また、750℃以下とすることで、原料粉末Bの溶融を確実に防止することができる。
【0030】
原料粉末Cは、Feを水素ガス雰囲気中で酸素を除去する還元処理を行うことにより得られる。
【0031】
以上のような原料粉末A〜Cを所定量秤量・混合し、粉砕処理することで、磁歪材料粉末が得られる。この磁歪材料粉末を磁場中で成形して成形体を作製する。このとき、例えば昇華性有機化合物等を成形助剤として用い、効率的な成形を可能とするようにしてもよい。成形は、所定形状のキャビティを有する金型内に磁歪材料粉末(前記原料A、原料B及び原料Cを混合したもの)を充填し、加圧することにより行う。
【0032】
前記により成形された成形体を焼結炉内に入れ、所定の条件で熱処理し、焼成(焼結)を行うことにより、焼結体(磁歪素子)を作製する。焼成は、成形体を焼結炉に入れた後に所定温度まで昇温する昇温過程、所定の温度(安定温度)をほぼ一定に保持する過程、及び降温過程を経ることにより行われる。
【0033】
前記焼成の最初の段階において、水素を含む雰囲気中で焼成を行うことが好ましい。水素を含む雰囲気中で前記焼成を行うことで、得られる焼結体の焼結密度を向上することができる。この場合、前記水素を含む雰囲気における水素濃度は任意であるが、低圧成形で十分に高い焼結密度を得るためには、水素濃度35容積%以上とすることが好ましく、50容積%以上とすることがより好ましい。
【0034】
前記水素を含む雰囲気とする場合、水素ガスと不活性ガスとを混合した混合ガスを炉内に導入する。不活性ガス、例えばArガスは希土類元素(R)を酸化することがなく、水素ガスと混合することにより還元作用を有する雰囲気を得ることができる。希土類元素Rは、酸素と極めて容易に反応し、安定な希土類酸化物を形成する。前記希土類酸化物は、実用となるような磁気特性は示さず、したがって前記希土類酸化物の形成は焼結体の磁気特性を大きく低下する要因となる。このような観点からも、前記焼成の際に水素雰囲気とすることが好ましい。なお、酸化を防ぐ雰囲気としては、不活性ガス雰囲気とすることも考えられるが、不活性ガスのみでは完全に酸化を防ぐことは難しく、水素を含む還元雰囲気とすることが好ましい。
【0035】
前記水素を含む雰囲気とするのは、焼成の前半、例えば昇温過程である。前記焼成により製造する磁歪材料がテルビウム系超磁歪材料の場合、820℃〜1200℃の区間(昇温過程)を前記水素を含む雰囲気として焼成を行う。
【0036】
昇温過程に続いて、例えば焼成の際の到達温度に到達後、1150℃〜1250℃の温度範囲で所定時間保持し、焼成を行えばよい。ただし、あまり温度が低いと焼結体の密度が十分に上昇せず、成形の際に成形圧を高く設定する必要が生ずるため、1250℃以上の温度で前記真空中での焼成を行うことが好ましい。このときの雰囲気は非酸化性雰囲気がよく、具体的には不活性ガス、水素ガス又は不活性ガスと水素ガスの混合ガスとすることが好ましい。保持時間は、1〜10時間の範囲で適宜選択すればよい。
【0037】
前記焼成により得られた焼結体に対し時効処理を行い、必要に応じて焼結体を所定サイズに切断することで、磁歪素子を得ることができる。
【0038】
以上のように、水素吸蔵処理を施した原料粉末Bに真空中、適正な加熱温度にて加熱保持する脱水素処理を行うことで、特殊な粉砕法を用いることなく微細な原料粉末Bが得られる。これを含む磁歪材料粉末を用いることで、焼結体(磁歪素子)の高密度化が実現されるとともに、原料粉末B中の水素に起因する結晶成長抑制の問題が解消され、得られる焼結体(磁歪素子)において優れた磁歪特性が実現される。
【実施例】
【0039】
次に、本発明の具体的な実施例について、実験結果を基に説明する。
【0040】
<実験1:真空又はArガス(常圧)条件での材料中水素量の推移>
B原料としてのDyFe合金に、150℃で1時間、水素を吸蔵させ、水素吸蔵処理を行った。水素吸蔵処理後の粉末を真空中又はArガス(常圧)中、所定温度で6時間保持し、脱水素を行った。以上の方法に従い、加熱温度を0〜1000℃の範囲内で変化させ、脱水素後のDyFe合金に含まれる水素量を測定した。結果を図2に示す。
【0041】
脱水素処理を常圧で行った場合、1000℃程度に高温加熱してもなお材料中に1000ppm程度の多量の水素が残留している。脱水素処理時の加熱温度をさらに高温として水素を強制的に放出させることも考えられるが、前記B原料の融点は低いため、溶融が懸念される。これに対し、真空中での脱水素処理は、原料粉末Bが溶融しないような低温で水素量の低減(300ppm程度)を実現している。
【0042】
<実験2:真空中での脱水素処理における温度と真空度の関係>
実験2においては、実験1と同様にして水素吸蔵処理を施した後のB原料(DyFe合金)粉末を密閉容器に入れ、真空中、昇温速度5℃/分にて昇温して脱水素処理を行った。そして、各温度における密閉容器内の真空度を測定した。結果を図3に示す。密閉容器内の真空度は原料粉末Bから放出される水素量に応じて変動し、真空度の劣化は原料粉末Bから水素が放出されていること意味する。
【0043】
図3によると、水素の放出量は450℃近辺から急激に増加し、500℃近辺でピークとなる。さらに温度を上げていくと徐々に収束していき、原料粉末Bの共晶温度未満で充分に水素を除去できることがわかる。また、脱水素を効率的に行うには、450℃以上とすることが好ましいことがわかる。
【0044】
<実験3:真空中での脱水素処理による効果の確認>
(実施例)
Tb0.4Dy0.6Fe1.93合金(A合金)を1150℃でアニールし、ブラウンミルを用いて粉砕し、A原料とした。B原料としてのDyFe合金に、150℃で1時間、水素を吸蔵させ、水素吸蔵処理を行った。水素吸蔵処理後の粉末を真空中、所定温度で6時間保持し、脱水素を行った。その後、2mmのメッシュを通してB原料とした。さらに、粒径5μmのFe粉を水素還元し、C原料とした。前記A原料、B原料、及びC原料を最終組成(Tb0.34Dy0.66Fe1.872)となるように秤量・混合し、アトマイザーで粉砕して磁歪材料粉末を得た。この磁歪材料粉末を1t/cm〜8t/cmの圧力で成形した。
【0045】
次いで、成形した成形体を焼成し、磁歪素子を作製した。焼成に際しては、先ず、Ar雰囲気として昇温を開始し、820℃に到達した時点で水素を導入した。さらに昇温を続け、焼結の到達温度1200℃に到達した後、35分経過した時点でAr雰囲気に切り換え、さらに3時間温度を維持し、降温して焼結体(磁歪素子)を得た。
【0046】
(比較例1)
原料粉末Bを得る際の脱水素処理をArガス(常圧)下で行ったこと以外は、前記実施例と同様にして焼結体を作製した。
【0047】
(比較例2)
B原料としてのDyFe合金中、Feの一部をCo又はNiで置換し、水素吸蔵処理及び脱水素処理に代えて機械的に粉砕した。また、焼成雰囲気をAr雰囲気とした。これらの点以外は、前記実施例と同様にして焼結体を作製した。
【0048】
(比較例3)
焼成雰囲気を水素雰囲気としたこと以外は、前記比較例2と同様にして焼結体を作製した。
【0049】
(比較例4)
B原料を得る際、水素吸蔵処理及び脱水素処理に代えて、不活性ガス中でガスアトマイズとすることによりB原料を粉砕した。前記A原料、B原料、及びC原料を最終組成(Tb0.34Dy0.66Fe1.872)となるように秤量・混合し、ジェットミルで粉砕して磁歪材料粉末を得た。これらの点以外は、前記実施例と同様にして焼結体を作製した。
【0050】
(比較例5)
比較例5では、原料組成物を原料A〜Cに分けなかった。すなわち、最終組成(Tb.34Dy0.66Fe1.872)の合金をジェットミルにより粉砕して磁歪材料粉末としたこと以外は、前記実施例と同様にして焼結体を作製した。
【0051】
得られた各焼結体について、焼結密度Dt(%)を測定した。また、各焼結体について、磁歪特性〔磁歪値(H=0.4kOe)及び磁歪値(H=1kOe)〕を測定した。結果を表1に示す。
【0052】
【表1】


【0053】
表1から明らかなように、水素吸蔵処理を施した原料Bに脱水素処理を行うことにより、密度の高い焼結体が得られており、焼結密度95%が達成されている。また、脱水素処理を真空中で実施した実施例は、常圧で実施した比較例1に比べて高い磁歪特性を実現している。なお、水素吸蔵処理を施し真空中で加熱保持する脱水素処理を行った後のB原料(実施例)と、不活性ガス中でガスアトマイズにより粉砕した後のB原料(比較例4)とについて、顕微鏡写真を比較したところ、実施例の原料粉末Bの表面には無数のクラックが入っており、機械粉砕可能な状態であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の磁歪素子の製造工程を示すフローチャートである。
【図2】脱水素工程における真空又はArガス(常圧)条件での材料中の水素量の推移を表す特性図である。
【図3】水素吸蔵処理を施したDyFeを真空中で昇温したときのプログラム温度と密閉容器内の真空度変化の関係を表す特性図である。




 

 


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