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発明の名称 軟磁性金属粉の熱処理方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−138197(P2007−138197A)
公開日 平成19年6月7日(2007.6.7)
出願番号 特願2005−330340(P2005−330340)
出願日 平成17年11月15日(2005.11.15)
代理人 【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
発明者 松川 篤人 / 若山 勝彦
要約 課題
扁平状の軟磁性金属粉の熱処理の処理量を上げ、生産性を向上することのできる軟磁性金属粉の熱処理方法を提供することを目的とする。

解決手段
Fe−Si系、Fe−Si−Cr系の軟磁性金属粉の扁平化処理に伴うひずみを除去し、表面酸化層を形成する熱処理工程で、安定温度を275〜450℃とし、さらに、安定温度までの昇温速度を10℃/hr以上180℃/hr未満にすることで、雰囲気中に含まれる酸素によって扁平状軟磁性金属粉の表面で生じる酸化反応による急激な発熱を抑え、扁平状軟磁性金属粉の熱処理温度以上への過熱を防ぐようにした。
特許請求の範囲
【請求項1】
Fe、Siを含む組成物からなる軟磁性金属粉を容器に収容する工程と、
前記容器を予め定めた安定温度に至るまでの少なくとも一部の過程で、10℃/hr以上180℃/hr未満の昇温速度で昇温し、熱処理を行う工程と、
を備えることを特徴とする軟磁性金属粉の熱処理方法。
【請求項2】
前記安定温度は、275〜450℃であることを特徴とする請求項1に記載の軟磁性金属粉の熱処理方法。
【請求項3】
前記熱処理は、複数のゾーンを有し、それぞれの前記ゾーンが所定の温度に設定された熱処理炉に、前記容器をコンベアに載せて通過させることで行うことを特徴とする請求項1または2に記載の軟磁性金属粉の熱処理方法。
【請求項4】
前記熱処理は、酸素分圧1%未満の雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の軟磁性金属粉の熱処理方法。
【請求項5】
前記熱処理を行っているときに、前記安定温度に至るまでの少なくとも一部の過程にて前記昇温速度で昇温することで、前記軟磁性金属粉の酸化反応による温度上昇を抑えることを特徴とする請求項4に記載の軟磁性金属粉の熱処理方法。
【請求項6】
前記熱処理により、X線回折したときのX線強度分布における面指数(110)の半値幅が0.45〜0.70°の前記軟磁性金属粉を得ることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の軟磁性金属粉の熱処理方法。
【請求項7】
Fe、Siを含む組成物からなる軟磁性金属粉を容器に収容する工程と、
前記軟磁性金属粉を、前記軟磁性金属粉の保磁力が一定以下となる温度領域内にて熱処理する工程と、
を備えることを特徴とする軟磁性金属粉の熱処理方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟磁性金属粉の熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ、携帯電話機等の電子機器の高速動作処理化、デジタル化の発展に従って、電磁波障害(EMI:Electromagnetic Interference)が増加している。特に、デジタル機器はノイズにより誤動作を起こすこともあることから、デジタル機器から発生するノイズの低減が重要である。
現在も普及率が伸び続けているパーソナルコンピュータについてみると、CPUのクロック周波数の高周波化により、発生するノイズの周波数も一段と高くなってきている。クロック周波数が1GHzを超えるCPUが実用化されており、ノイズ対策の対象周波数は、5GHz程度の高周波帯域まで広がってきた。
従来、ノイズ対策の1つの手段として磁性材料で構成したノイズフィルタによりノイズを吸収することが行われている。ノイズフィルタを構成する代表的な磁性材料としてスピネル型の結晶構造をもつフェライト材料がある。高周波帯域では電気抵抗の大きい材料ほど渦電流損失が小さくなりノイズ吸収に有利となるから高周波帯域に関してはフェライト材料の中でも電気抵抗の大きいNi系フェライト材料が用いられてきた。しかし、ノイズがギガヘルツの帯域となると、「Snoekの限界」が問題となる。つまり、フェライト材料のノイズ吸収帯域の上限は1GHzであり、近時の高周波ノイズに対応することは難しい。しかもフェライト材料は脆性材料であることから、落下、衝撃等で破壊されることがあった。
【0003】
1GHzを超える高周波領域でのノイズ吸収特性の優れた材料として、軟磁性金属粉を樹脂、ゴム中に分散させた複合軟磁性部材が提案されている。例えば、扁平状のFe−Si系軟磁性金属粉をゴム、樹脂中に配向・配列した複合磁性材料が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開平3−295206号公報
【0005】
この複合磁性材料は、高周波、かつ広帯域において優れたノイズ吸収特性を有している。しかも、ベースが可撓性のあるゴム、樹脂から構成されているため、フェライト材料のような落下、衝撃による破損の心配はない。したがって、この複合磁性材料は、極めて実用的なノイズ吸収体であるといえる。
【0006】
複合軟磁性部材は、軟磁性金属粉をゴム、プラスチック等の絶縁体マトリックスに混合分散させ、プレス成形・押出成形およびカレンダーロール成形等により作製される。マトリックスおよび加工法を選択することにより、0.25mm程度から数mm程度のシート状あるいはブロック状等種々の形態の部材を作製することができる。また、マトリックスを選択し、かつ厚さを制御することにより、可撓性を付与したり、逆に剛性を高めたりすることもできる。また、マトリックスを選択することにより、250℃程度の高温での使用も可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
扁平状のFe−Si系の軟磁性金属粉は、扁平化により反磁界が小さくされ、透磁率を向上しているが、扁平化処理の際に軟磁性金属粉に生じた残留応力(歪)を、熱処理によって低減している。残留応力により、保磁力が高くなり、透磁率が下がるからである。
このような熱処理は、量産の場合、扁平化した軟磁性金属粉を、所定の容積を有した容器に入れ、熱処理炉中に投入し、所定の温度条件で行っている。
しかしながら、従来、容器内に大量の軟磁性金属粉を入れた状態で熱処理を行うと、保磁力が増大してしまい、透磁率が低くなってしまっていた。このため、容器内に収容する軟磁性金属粉を少量とせざるを得ず、生産性の向上の大きな妨げとなっていた。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、扁平状の軟磁性金属粉の熱処理の処理量を上げ、生産性を向上することのできる軟磁性金属粉の熱処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく鋭意検討を行った本発明者らは、当初、容器内の軟磁性金属粉の温度が不均一であることが原因であろうと推測していた。使用している容器は略立方体状であるため、ここに大量の軟磁性金属粉を入れると、外周部と中央部とで、熱処理炉内で熱の伝わり具合が大きく異なるのではないか、と考えたのである。
そこで、通常、容器に1kgを収容している軟磁性金属粉を、6kg収容して、熱処理を行い、容器内の位置ごとに、保磁力Hcを計測した。
図9はその結果を示すものであり、容器内の上部、中間部、下部のそれぞれにおいて、外周部と中心部の複数箇所で計測した保磁力Hc(単位:A/m)を示している。上記の推測が正しければ、容器内の外周部の温度が高く、中央部の温度が低くなり、また通常、熱処理温度が高いほど保磁力Hcは下がる傾向にあるため、中央部の軟磁性金属粉の保磁力Hcが外周部よりも高くなるはずである。しかし、図9に示すように、計測した保磁力Hcの分布には、そのような傾向は認められず、むしろ、保磁力Hcは、容器内の上方ほど低く、下方に行くほど高くなる傾向が認められた。
【0009】
そこで、さらに検討を重ねた結果、本発明者らは、まず、Fe−Si系の軟磁性金属粉においては、他の軟磁性金属粉における、熱処理温度が高いほど保磁力Hcは下がる傾向とは異なり、図3に示すように、300℃近辺で保磁力Hcが極小値を取り、これより高温では保磁力Hcが上昇することを見出した。
【0010】
さらに、Fe−Si系の軟磁性金属粉においては、特性改善のために、熱処理炉内の雰囲気に、例えば1%以下といった酸素を導入し、軟磁性金属粉の表面に酸化膜を形成することが行われている(例えば、特許文献2参照。)。一定の熱処理条件下で、熱処理炉内の雰囲気の酸素分圧を変化させた場合、図10に示すように、酸素分圧を上げると軟磁性金属粉の酸素含有量(酸素分析値)が多くなり、それに反するように、保磁力Hcが低下することがわかる。ところが、熱処理量が多いと酸化膜を形成する際の酸化反応に伴う発熱により、軟磁性金属粉が、熱処理温度以上に過熱してしまい、これによって、図3に示した熱処理温度(この場合、軟磁性金属粉の温度)と保磁力Hcとの関係からわかるように、保磁力Hcが上昇してしまっていたのである。
【0011】
【特許文献2】特開平9−27693号公報
【0012】
上記現象は、図11に示すように、熱処理後の軟磁性金属粉の半値幅から推定した実効温度の分布からも裏付けられる(図中の数値の単位は℃)。この図11に示すように、推定される実効温度は、容器内の上方ほど低く、下方や中央に行くほど高くなり、熱処理温度以上に過熱している傾向が認められた。
【0013】
このような現象を把握した本発明者らは、保磁力Hcをいかに下げるかを検討した結果、まずは、上記の保磁力Hcが極小値を取る温度を含む温度領域で熱処理を行うことが、保磁力Hcを下げるのに有効であると知見した。さらには、軟磁性金属粉の過熱を抑え、保磁力Hcが極小値を取る温度領域を外れないように熱処理を行うのが好ましく、それには熱処理の際の昇温速度を適切に制御するのが有効であると考えるに至った。
【0014】
これらの知見に基づいてなされた本発明の軟磁性金属粉の熱処理方法は、Fe、Siを含む組成物からなる軟磁性金属粉を容器に収容する工程と、容器を予め定めた安定温度に至るまでの少なくとも一部の過程で、10℃/hr以上180℃/hr未満の昇温速度で昇温し、熱処理を行う工程と、を備えることを特徴とする。このとき、安定温度は、合金組成により異なるが275〜450℃とするのが好ましい。
このように、熱処理時における温度上昇を抑えることで、保磁力Hcが極小値を取る温度領域を外れないように熱処理を行うことができる。特に、熱処理を、酸素分圧1%未満の酸素を含む雰囲気下で行う場合、安定温度に至るまでの少なくとも一部の過程で前記の範囲内の昇温速度で昇温することで、軟磁性金属粉の酸化反応による温度上昇を抑えることができる。
熱処理は、いかなる方式で行っても良いが、量産において生産性を高めるには、複数のゾーンを有し、それぞれのゾーンが所定の温度に設定された熱処理炉に、容器をコンベアに載せて通過させることで行うのが好ましい。このとき、個々のゾーンの温度を、上記の昇温速度、安定温度となるように設定するのである。
Fe−Si系、Fe−Si−Cr系の軟磁性金属粉の場合、熱処理温度と、X線回折チャートにおける2θ=40〜50°に現れるピーク(bcc構造では面指数(110)、DO型結晶構造の場合には面指数(220))の半値幅とは、図12に示すような関係を有する。したがって、上記のように、安定温度を275〜450℃とし、さらに安定温度まで10℃/hr以上180℃/hr未満の昇温速度に抑えて軟磁性金属粉の過熱を抑えて熱処理を行うことにより、X線回折したときのX線強度分布における面指数(110)の半値幅が0.45〜0.70°の軟磁性金属粉を得ることができる。
【0015】
本発明は、Fe、Siを含む組成物からなる軟磁性金属粉を容器に収容する工程と、軟磁性金属粉を、軟磁性金属粉の保磁力が一定以下となる温度領域内にて熱処理する工程と、を備えることを特徴とする軟磁性金属粉の熱処理方法として捉えることもできる。すなわち、保磁力Hcが極小値を取る温度を含む所定の領域を外れないように熱処理を行うのである。これには、上記のように、275〜450℃の安定温度に至るまでの少なくとも一部の過程で、10℃/hr以上180℃/hr未満の昇温速度で昇温して熱処理を行うのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、安定温度を275〜450℃とし、さらに安定温度に至るまでの少なくとも一部の過程で、昇温速度を抑え、軟磁性金属粉の過熱を抑えて熱処理を行うことにより、軟磁性金属粉の温度が、保磁力Hcが極小値を取る温度を含む温度領域を外れないように熱処理を行うことができ、その結果、軟磁性金属粉の熱処理の処理量を上げ、生産性を向上することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明の実施の形態を説明する。
本実施の形態における磁性シートは、少なくとも一層の磁性層を有している。
ここで、磁性シートを構成する磁性層は、多数の扁平状軟磁性金属粉が結合材によって結合されることで、所定の厚さを有した構成となっている。磁性層の好ましい厚さは、全体として0.05〜2mmである。
【0018】
はじめに、扁平状軟磁性金属粉について説明する。
扁平状軟磁性金属粉は、Fe−Si合金、Fe−Si−Cr合金等からなる。
本発明において、Fe−Si合金、Fe−Si−Cr合金の好ましい組成は、Si:10〜28at%、Cr:0〜20at%(0を含む)、Fe:残部である。
図1に示すように、Si量が10〜28at%であると、X線回折チャート(X線回折したときのX線強度分布)における2θ=40〜50°付近(bcc構造では面指数(110)、DO型結晶構造の場合には面指数(220))に、明確なピークが現れる。なお、図1は、Fe75Si24Crの組成を有する合金を用いた場合のX線回折チャートである。
Siが28at%を超えると、飽和磁化Msが低下すると共に、合金が脆くなるため扁平化が困難となる。また、10at%を下回ると、扁平粉の保磁力Hcが増加する。このため、Si量の好ましい範囲は、10〜28at%である。
また、Crを添加すると、耐食性が向上するが、飽和磁化Msが低下する。このため、Cr量の好ましい範囲は、0〜20at%である。
【0019】
なお、本発明において、扁平状軟磁性金属粉には、Fe、Si、Crの他、種々の添加元素の含有を許容する。
【0020】
このような組成からなる粒径の好ましい範囲は平均粒径D50が10〜100μm、より好ましい範囲は20〜40μmである。D50が10μmより小さくなると保磁力Hcが増加し、100μmより大きくなると、シート化が困難となる。
扁平状軟磁性金属粉の厚さの好ましい範囲は0.1〜1.0μm、より好ましい範囲は0.2〜0.5μmである。扁平状軟磁性金属粉の厚さを0.1μm未満とすることは製造上困難であり、取り扱いも難しくなる。また、扁平状軟磁性金属粉の厚さが1.0μmを超えると、高周波での磁気特性の低下を招くことになるので好ましくない。
アスペクト比(=粒径/厚さ)の好ましい範囲は10〜1000、より好ましい範囲は40〜200である。アスペクト比が10以下になると反磁界が大きくなり、これをシートにしたときのみかけの透磁率μが低下し、1000以上になると充填率(=扁平状軟磁性金属粉の体積/シートの体積)が低下し透磁率が低下する。
【0021】
結合材としては、公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂、ゴム系材料等を用いることができる。具体的には、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース系樹脂、ABS樹脂、二トリル−ブタジエン系ゴム、スチレン−ブタジエン系ゴム、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミド系樹脂等である。
【0022】
次に、本実施の形態に係る磁性シートの製造方法を示す。
まず、扁平化処理工程において、平均粒径5〜40μmの軟磁性金属のアトマイズ粉をトルエン等の有機溶媒中、例えば攪拌ミル、転動ボールミル等を用いて扁平化処理し、D50:10〜100μm、厚さ0.1〜1.0μm、アスペクト比10〜1000の扁平状軟磁性金属粉を得る。このときの扁平状軟磁性金属粉の粒度分布は、必ずしもシャープである必要はなく、2山の分布を有していてもよい。
【0023】
扁平化処理工程後、熱処理工程に移る。この熱処理工程では、大気中で熱処理を行うこともできるし、扁平状軟磁性金属粉に対し、一定量(例えば酸素分圧1%以下)の酸素を含んだ不活性ガス(例えば窒素)中で、熱処理を行うこともできる。この熱処理により、扁平状軟磁性金属粉を乾燥し、さらには、扁平化に伴う歪みが除去されるとともに、扁平状軟磁性金属粉の表面に酸化層が形成される。
熱処理の温度は、安定温度を275〜450℃、より好ましくは300〜400℃とするのが好ましい。またその安定時間は、30〜180分とするのが好ましい。Fe−Si系の扁平状軟磁性金属粉では、上記の温度範囲を外れると、熱処理後に得られる扁平状軟磁性金属粉の保磁力Hcが高まるからである。保磁力Hcが極小値となる温度を含んだ温度範囲で熱処理を行うのが好ましい。
上記の安定温度は、扁平状軟磁性金属粉の組成により、適宜異ならせ、最適な条件とするのが好ましい。例えば、Fe98.5−XSiCr1.5合金において、X=15のときは、安定温度を325〜450℃とするのが好ましく、350〜400℃とするのがさらに好ましい。また、X=21、24のときは、安定温度を275〜375℃とするのが好ましく、300〜350℃とするのがさらに好ましい。X=26、28のときは、安定温度を300〜400℃とするのが好ましく、325〜375℃とするのがさらに好ましい。
【0024】
また、安定温度に至るまでの少なくとも一部の過程で、昇温速度は、10℃/hr以上180℃/hr未満とするのが好ましく、より好ましくは20〜150℃/hr、さらに好ましくは20〜120℃/hrである。熱処理の際、雰囲気中に含まれる酸素によって扁平状軟磁性金属粉の表面で生じる酸化反応による発熱を抑え、扁平状軟磁性金属粉の熱処理温度以上への過熱を防ぐためである。昇温速度は、遅すぎると、熱処理に時間がかかるため、生産性が低下する。このため、熱処理は、上記昇温速度の範囲で行うのが好ましい。
このとき、上記の範囲内の昇温速度とするのは安定温度に至るまでの全昇温過程とすることもできるし、安定温度に至るまでの一部の温度範囲内のみとすることもできる。その温度範囲は、扁平状軟磁性金属粉の表面に酸化層が形成される酸化反応が進む温度範囲、例えば、安定温度を310℃とする場合、220〜310℃の温度範囲内で、上記の昇温速度で昇温するのが好ましい。
【0025】
このような熱処理は、図2に示すように、一定速度で駆動されるコンベア40上に、扁平状軟磁性金属粉を収めた容器41を載せ、トンネル炉42を通過させることによって行う。トンネル炉42は、コンベア40の駆動方向に沿って複数のゾーンに区分され、それぞれのゾーンに設けられたヒータ(図示無し)の設定温度をコントロールすることで、上記のような温度プロファイルでの熱処理を扁平状軟磁性金属粉に施す。
表1は、各ゾーンにおけるヒータの設定温度の例である。このように、トンネル炉42の入り口側から出口側に向けて、各ゾーンのヒータの温度を設定し、コンベア40を一定速度で駆動させ、1ゾーンあたり15分で通過させることで、10〜180℃/hrの昇温速度で昇温し、275〜450℃の安定温度を30〜180分維持することで、熱処理を行う。
なお、この場合の昇温速度は(安定温度−220℃)/昇温時間とした。
【0026】
【表1】


【0027】
次いで、混合工程、シート化工程に移る。これらの工程では、扁平状軟磁性金属粉と結合材とを混練した後、プレス成形・押出成形によってシート状としたり、扁平状軟磁性金属粉と結合材とを有機溶媒に分散させ、これをドクターブレード法により所定の厚さに製膜したりした後、乾燥後にカレンダーロールによって圧延してシート状にする。このようにして、厚さ0.05〜2mmの磁性シートを得る。
磁性シートの厚さを0.05〜2mmとするのは以下の理由に基づく。すなわち、磁性シートの厚さが0.05mmよりも薄い場合は、十分なインダクタンスが得られない。一方、磁性シートの厚さが2mmを超えると、電気機器の筐体内部の狭い空間に磁性シートを収めることが困難になるという制約条件からである。
【実施例】
【0028】
ここで、上記のような工程で磁性シートを作製し、その特性を確認したのでその結果を示す。
軟磁性金属粉として水アトマイズによる平均粒径D50が14μmのFe75Si24Cr(at%)合金を、溶媒にトルエンを用いた媒体攪拌ミル中で扁平化処理し、分級することにより、平均粒径D50が9μm、厚さ0.1〜1μm、アスペクト比10〜1000の扁平状軟磁性金属粉(以下、適宜「扁平状粉」という。)と、平均粒径D50が23μm、厚さ0.1〜1μm、アスペクト比10〜1000の扁平状粉を得た。なお、平均粒径は日本電子製のHELOS SYSTEM(乾式法)を用いて測定した。
【0029】
その後、扁平状粉を、乾燥後、熱処理した。熱処理は、ステンレス製の容器(290×290×290mm)中に扁平状粉を収めて行い、熱処理温度を275〜540℃とした。なお、熱処理雰囲気は、いずれも、1%以下の酸素を有する窒素雰囲気とした。
その結果、図3に示すように、粒径に関わらず、熱処理温度が300℃近辺で保磁力Hcが極小値を取ることが確認された。これにより、熱処理温度は、275〜340℃とするのが好ましいことが確認された。
【0030】
続いて、前記と同様にして、平均粒径D50が約23μm、厚さ0.1〜1μm、アスペクト比10〜1000の扁平状粉を得た後、これを熱処理し、昇温速度の影響を確認した。
熱処理は、ステンレス製の容器(290×290×290mm)中に扁平状粉を収めて行い、トンネル炉の温度設定条件は表1の通りとした。このとき、容器への扁平状粉の収容量は、6kg/容器、1kg/容器の2通りとした。そして、安定温度は310℃とし、安定温度310℃に至るまでの昇温速度を、120、90、72、60、51、45、40℃/hrと変化させて熱処理を行った。また、比較例として、180℃/hrの昇温速度でも熱処理を行った。なお、熱処理雰囲気は、いずれも、1%以下の酸素を有する窒素雰囲気とした。
【0031】
熱処理後、VSMにて保磁力Hcの測定、およびX線回折チャートにおける面指数(110)の半値幅の測定を行った。X線の半値幅は、X線の強度分布において、面指数(110)のピークの高さの2分の1の高さにおける、ピークの広がり幅を示す。
図4、図5、表2は、熱処理を行った扁平状粉の保磁力Hc及びX線回折チャートにおける面指数(110)の半値幅である。
【0032】
【表2】


【0033】
図4に示すように、従来と同様の熱処理条件である場合、昇温速度を180℃/hrとした比較例では、容器への扁平状粉の収容量を1kg/容器とした場合には、保磁力Hcは500A/m程度であるが、収容量が6kg/容器になると700A/m程度に増加している。また、図5、表2に示すように、面指数(110)の半値幅は、熱処理量が増えると小さくなり、これにより、容器への扁平状粉の収容量、すなわち処理量が増えると、材料の過熱が生じていることが確認できた。
【0034】
昇温速度を、120℃/hr以下に下げると、容器への扁平状粉の収容量を1kg/容器とした場合には、昇温速度を180℃/hrとした比較例と、保磁力Hcに大差がない。一方、容器への扁平状粉の収容量を6kg/容器とした場合には、昇温速度を180℃/hrとした比較例に対し、保磁力Hcが大きく低下していることが確認された。
また、面指数(110)の半値幅についても、昇温速度を120℃/hr以下とした場合には、熱処理量によらず0.45〜0.70°の範囲にあり、材料の過熱が抑えられたことを示している。
【0035】
図6は、設定温度と、扁平状粉の温度変化を示す図である。この図6に示すように、昇温速度を抑え、設定温度の上昇を緩やかにすることで、熱処理時に生じる酸化反応によって扁平状粉が発熱しても十分に放熱するために、過熱を抑えることができることが分かる。
【0036】
また、上記とは組成が異なる扁平状粉についても、上記と同様に熱処理を行い、保磁力Hc、半値幅の測定を行った。このときの昇温速度は40℃/hrとした。
その結果、図7に示すように、Fe98.5−XSiCr1.5合金において、X=15のときは、安定温度が350〜400℃で保磁力Hcが極小値を取り、X=21、24のときは、300〜350℃で保磁力Hcが極小値を取り、X=26、28のときは、325〜375℃で保磁力Hcが極小値を取ることが確認された。これにより、組成により、最適な熱処理温度が異なることが確認された。
熱処理後に測定を行った、X線回折チャートにおける面指数(110)の半値幅は、図8に示すように、熱処理温度によって半値幅が異なり、また合金の組成によっても半値幅が異なることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】Fe−Si−Cr系の軟磁性金属粉の、X線回折チャートを示す図である。
【図2】熱処理炉の構成を示す図である。
【図3】Fe−Si−Cr系の軟磁性金属粉における、熱処理温度と保磁力との関係を示す図である。
【図4】Fe−Si−Cr系の軟磁性金属粉における、熱処理時の昇温速度と保磁力の関係を示す図である。
【図5】同、熱処理時の昇温速度と面指数(110)の半値幅の関係を示す図である。
【図6】熱処理時における経過時間と、熱処理設定温度および実際の扁平状粉(材料)の温度の関係を示す図である。
【図7】組成が異なるFe−Si−Cr系の軟磁性金属粉における、熱処理温度と保磁力との関係を示す図である。
【図8】組成が異なるFe−Si−Cr系の軟磁性金属粉における、熱処理温度と面指数(110)の半値幅との関係を示す図である。
【図9】従来の方法における、容器内での扁平状粉の保磁力の分布を示す図である。
【図10】熱処理時の雰囲気の酸素分圧と、保磁力および材料の酸素分析値の関係を示す図である。
【図11】面指数(110)の半値幅から推定される容器内での扁平状粉の温度の分布を示す図である。
【図12】熱処理温度と、面指数(110)の半値幅との関係を示す図である。




 

 


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