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発明の名称 粉末冶金用鉄基混合粉
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−211329(P2007−211329A)
公開日 平成19年8月23日(2007.8.23)
出願番号 特願2006−35384(P2006−35384)
出願日 平成18年2月13日(2006.2.13)
代理人 【識別番号】100099531
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 英一
発明者 尾▲崎▼ 由紀子 / 上ノ薗 聡
要約 課題
機械的特性の劣化を伴うことなく、焼結体の切削性を向上できる粉末冶金用鉄基混合粉を提供する。

解決手段
鉄基粉末として、質量%で、Mn:0.05〜0.5%、S:0.04〜0.2%、あるいはさらにSi:0.01〜0.1%を含み残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、好ましくは基地中に平均粒径:1〜10μmのMnS粒子が析出した組織とを有し、該MnS粒子のうち、MnS粒子の全個数に対する個数比率で5%以上のMnS粒子が酸素を含有しているアトマイズ鉄粉とし、該鉄基粉末に、合金用粉末と、切削性改善用粉末として平均粒径:1〜25μmのフッ化カルシウム粉を鉄基粉末と合金用粉末と切削性改善用粉末との合計量に対する質量%で0.1〜1.5%と、あるいはさらに結合材と、潤滑剤粉と、を混合する。なお、切削性改善用粉末は、鉄基粉末と合金用粉末と潤滑剤とを混合してなる鉄基混合粉を加圧成形し焼結して得られた鉄基焼結体の空孔の粒度分布と相似する粒度分布を有することが好ましい。これにより、切削性が改善され工具寿命が長寿命化する。
特許請求の範囲
【請求項1】
鉄基粉末と、合金用粉末と、切削性改善用粉末と、さらに潤滑剤と、を混合してなる鉄基混合粉であって、前記鉄基粉末を、質量%で、Mn:0.05〜0.5%、S:0.04〜0.2%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の粉末冶金用アトマイズ鉄粉とし、前記切削性改善用粉末を、平均粒径:1〜25μmのフッ化カルシウム粉とし、該切削性改善用粉末を、鉄基粉末と合金用粉末と切削性改善用粉末との合計量に対する質量%で0.1〜1.5%含有することを特徴とする粉末冶金用鉄基混合粉。
【請求項2】
前記鉄基粉末を、質量%で、Mn:0.05〜0.5%、S:0.04〜0.2%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、基地中に平均粒径:1〜10μmのMnS粒子が析出した組織とを有し、該MnS粒子のうち、MnS粒子の全個数に対する個数比率で5%以上のMnS粒子が酸素を含有する粉末冶金用アトマイズ鉄粉とすることを特徴とする請求項1に記載の粉末冶金用鉄基混合粉。
【請求項3】
前記組成に加えてさらに、質量%で、Si:0.01〜0.1%を含有する組成とすることを特徴とする請求項2に記載の粉末冶金用鉄基混合粉。
【請求項4】
前記鉄基粉末の一部または全部が、表面に前記合金用粉末および/または前記切削性改善用粉末を結合材により固着してなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の粉末冶金用鉄基混合粉。
【請求項5】
前記切削性改善用粉末が、鉄基粉末と合金用粉末と潤滑剤とを混合してなる鉄基混合粉を加圧成形し焼結して得られた密度6.0〜7.6Mg/m3の鉄基焼結体の空孔の粒度分布と相似する粒度分布である、粒径:45μm未満の粒子が88〜98個数%と、粒径:45μm以上75μm未満の粒子が1〜9.5個数%と、粒径:75μm以上106μm未満の粒子が0.1〜7.0個数%と、粒径:106μm以上150μm未満の粒子が0.1〜1.5個数%と、粒径:150μm以上の粒子が0.01〜0.5個数%と、からなる粒度分布を有する切削性改善用粉末であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の粉末冶金用鉄基混合粉。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の粉末冶金用鉄基混合粉を、加圧成形し、さらに焼結してなる切削性に優れた鉄基焼結体。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末冶金用鉄基混合粉に係り、とくに焼結体の切削性改善が可能で、かつ切削後表面性状の良好な焼結体を得ることが可能な、粉末冶金用鉄基混合粉に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末冶金技術の進歩により、高寸法精度の複雑な形状の部品をニアネット形状に製造することができるようになっており、粉末冶金技術を利用した製品が各種分野で利用されている。
鉄系粉末冶金製品では、鉄基粉末に、銅粉、黒鉛粉などの合金用粉末と、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム等の潤滑剤とを混合した鉄基混合粉を金型に充填したのち、加圧成形し、ついで焼結処理を施して焼結体とし、必要に応じ切削加工されて製品とされる。このようにして製造された焼結体は、空孔の含有比率が高く、溶解法による金属材料にくらべて、切削抵抗が高い。このため、従来から、焼結体の切削性を向上させる目的で、鉄基混合物に、Pb、Se、Te等を、粉末で添加、あるいは鉄粉あるいは鉄基粉末に合金化して添加することが行なわれてきた。
【0003】
しかし、Pbは融点が330℃と低いため、焼結過程で溶融し、しかも鉄中に固溶せず基地中に均一分散させることが難しいという問題があった。また、Se、Teは、焼結体を脆化させるため、焼結体の機械的特性の劣化が著しいという問題があった。これらの粉末以外にも、切削性改善のために種々の粉末を添加することが提案されている。
例えば、特許文献1には、鉄粉に、10μm以下の硫化マンガンを重量%で0.05〜5%混合した鉄粉混合物が提案されている。特許文献1に記載された技術では、寸法変化や強度変化を伴うことなく焼結材の被削性を改善できるとしている。
【0004】
また、特許文献2には、S:0.04〜0.2wt%、Mn:0.05〜0.5wt%、Si:0.01〜0.1wt%を含み、個数比率でMnS粒子の5%以上が酸素を含有しているアトマイズ鉄粉が提案されている。この鉄粉を用いて焼結体とすることにより、優れた切削性を有する粉末冶金製品を製造できるとしている。
また、特許文献3には、鉄基粉末に、黒鉛粉を含む合金用粉末と、潤滑剤とを含み、切削性改善用粉末としてアルカリ土類金属のフッ化物粉を鉄基粉末と合金用粉末と切削性改善用粉末の合計量に対し、0.1〜0.7質量%含有するとともに、黒鉛粉および切削性改善用粉末を結合材により鉄基粉末表面に固着して含む粉末冶金用鉄基混合粉が提案されている。特許文献3に記載された技術によれば、焼結体の機械的特性劣化を生じることなく切削性が向上できるとしている。
【0005】
また、特許文献4には、鉄または鉄基合金に切削性改善用粉末として硫酸バリウム、硫化バリウムを単独または合計で0.3〜3.0重量%添加した、粉末冶金法で製造された快削性金属材料が提案されている。
また、特許文献5には、鉄基粉末組成物において、焼結製品の切削性を改善する添加剤としてフッ化カルシウムとフッ化バリウムの粉末、好ましくはそれらの溶融物から作られた粉末を0.1〜1.0重量%含み、さらにMnSおよびMoSを含む1種またはそれ以上の従来の切削性改善剤を組み合わせた鉄基粉末組成物が提案されている。
【0006】
特許文献1〜5に記載された技術では、切削性改善用粉をチッピング促進材として、焼結体内に分散させ切削時に切削部位が塑性変形する際に、これら切削性改善用粉(粒子)が応力の集中点となり切屑を微細化する。この切屑の微細化により切削工具と切屑間の接触面積が低減し、摩擦抵抗を下げることにより工具摩耗を防止、或いは低減しようとするものである。しかしながら、これらチッピング促進材には工具表面を保護する機能はなく、切削に際し、工具表面と被削材とが直接接触し、大気中で摩擦による発熱が生じ、工具表面が酸化するとともに、切削に際し焼結体内部に内在する空孔により工具に断続的衝撃が負荷され、これにより工具内部に微細亀裂が発生し工具材質が劣化し、所望の切削性向上が得られないという問題があった。
【0007】
このような問題に対し、例えば特許文献6には、鉄粉を主体とし、アノールサイト相および/またはゲーレナイト相を有する平均粒径50μm以下のCaO−Al2O3−SiO2系複合酸化物の粉末を0.02〜0.3重量%含有する粉末冶金用鉄系混合粉末が提案されている。特許文献6に記載された技術では、被削材中に予め低融点のセラミックスを分散させ、切削時に加工面に露出したセラミックス粒子が工具表面に付着し工具保護膜(いわゆるベラーグ層)を形成し、工具の材質劣化を防止して、切削性を改善するとともに、焼結時の寸法変化を少なくできるとしている。
【特許文献1】特開昭61−147801号公報
【特許文献2】特許第3443911号公報
【特許文献3】特開2002−155301号公報
【特許文献4】特公昭46−39564号公報
【特許文献5】特許3073526号公報
【特許文献6】特開平9−279204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献6に記載された技術では、CaO−Al2O3−SiO2系複合酸化物を不純物が少なく、かつ粒度を制限した粉末とする必要がある。不純物が少なく、かつ粒度を制限した粉末を使用しないと、粉体特性、焼結体特性が低下するという問題があった。また、さらに切削条件によっては、工具と被削材との摩擦発熱が不十分で、低融点のセラミックスが軟化せず、工具保護膜を形成しない場合があり、所望の切削性向上が得られないという問題があった。また、特許文献2に記載された技術では、鉄粉中に生成したMnS粒子により切屑のチッピングが促進されるものの、焼結体中に空隙が存在するため工具に対する断続的衝撃が緩和されず、工具寿命の改善が不十分であるという問題があった。
【0009】
本発明は、かかる従来技術の問題を有利に解決し、機械的特性の劣化を伴うことなく、焼結体の切削性を向上できる粉末冶金用鉄基混合粉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記した課題を達成するために、まず、切削性に及ぼす各種要因の影響について鋭意考究した。 その結果、本発明者らは、切削性向上のためには、切削時に空孔を形成する自由表面と工具との衝突により生じる断続的衝撃を緩和し、工具表面の摩耗や工具内部の微細亀裂生成を抑制して、工具寿命を延長することが肝要であり、そのためには、切削性改善用粒子(粉末)で焼結体内に内在する空孔を充填し、空孔を実質的に減少させることが効率的であることに思い至った。そして、切削性改善用粉末として、平均粒径:1〜25μmのフッ化カルシウム粉を使用することにより、焼結体の切削性が顕著に向上することを見出した。とくに、このような大きさのフッ化カルシウム粉を使用することにより、25μmを超える粗大な空孔を充填することができ、切削時に生じる強い断続的衝撃を顕著に緩和できることを知見した。これは、切削性改善用粉末の平均粒径を1〜25μmの範囲とすることにより、切削性改善用粉末粒子により焼結体内の空孔が充填されやすくなり、焼結体の空孔が実質的に減少して、切削時に生じる断続的衝撃が緩和されるためであると、本発明者らは考えている。
【0011】
また、更なる検討により、本発明者らは、切削性改善用粉末粒子の粒度分布を、切削性改善用粉末を含まない、鉄基粉末と合金用粉末と潤滑剤とを混合し、さらに加圧成形し焼結して得られた鉄基焼結体に存在する空孔の粒度分布に相似するように調整することにより、切削性改善用粉末粒子による空孔の充填が効率的になることを知見した。
さらに本発明者らの更なる考究により、上記した切削性改善用粉末の粒径の調整に加えてさらに、焼結体の基地相を構成する鉄基粉末として、所定の大きさのMnS粒が析出したアトマイズ鉄粉を用いることにより、切屑のチッピング効果が更に増大し、焼結体の更なる切削性向上が達成できることを見出した。
【0012】
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
(1)鉄基粉末と、合金用粉末と、切削性改善用粉末と、さらに潤滑剤と、を混合してなる鉄基混合粉であって、前記鉄基粉末を、質量%で、Mn:0.05〜0.5%、S:0.04〜0.2%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の粉末冶金用アトマイズ鉄粉とし、前記切削性改善用粉末を、平均粒径:1〜25μmのフッ化カルシウム粉とし、該切削性改善用粉末を、鉄基粉末と合金用粉末と切削性改善用粉末との合計量に対する質量%で0.1〜1.5%含有することを特徴とする粉末冶金用鉄基混合粉。
【0013】
(2)(1)において、前記鉄基粉末を、質量%で、Mn:0.05〜0.5%、S:0.04〜0.2%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、基地中に平均粒径:1〜10μmのMnS粒子が析出した組織とを有し、該MnS粒子のうち、MnS粒子の全個数に対する個数比率で5%以上のMnS粒子が酸素を含有する粉末冶金用アトマイズ鉄粉とすることを特徴とする粉末冶金用鉄基混合粉。
【0014】
(3)(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Si:0.01〜0.1%を含有する組成とすることを特徴とする粉末冶金用鉄基混合粉。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記鉄基粉末の一部または全部が、表面に前記合金用粉末および/または前記切削性改善用粉末を結合材により固着してなることを特徴とする粉末冶金用鉄基混合粉。
【0015】
(5)(1)ないし(4)のいずれかにおいて、前記切削性改善用粉末が、鉄基粉末と合金用粉末と潤滑剤とを混合してなる鉄基混合粉を加圧成形し焼結して得られた密度6.0〜7.6Mg/m3の鉄基焼結体の空孔の粒度分布と相似する粒度分布である、粒径:45μm未満の粒子が88〜98個数%と、粒径:45μm以上75μm未満の粒子が1〜9.5個数%と、粒径:75μm以上106μm未満の粒子が0.1〜7.0個数%と、粒径:106μm以上150μm未満の粒子が0.1〜1.5個数%と、粒径:150μm以上の粒子が0.01〜0.5個数%と、からなる粒度分布を有する切削性改善用粉末であることを特徴とする粉末冶金用鉄基混合粉。
【0016】
(6)(1)ないし(5)のいずれかに記載の粉末冶金用鉄基混合粉を、加圧成形し、さらに焼結してなる切削性に優れた鉄基焼結体。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、機械的特性の劣化を伴うことなく焼結体の切削性を向上させることができ、切削加工を必要とする焼結部材の生産性を顕著に向上でき、産業上格段の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の粉末冶金用鉄基混合粉は、鉄基粉末と、合金用粉末と、切削性改善用粉末と、さらに潤滑剤と、を混合してなる鉄基混合粉である。
本発明では、鉄基粉末として、質量%で、Mn:0.05〜0.5%、S:0.04〜0.2%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の粉末冶金用アトマイズ鉄粉を使用する。
本発明では、アトマイズ鉄粉中のMn、Sは、MnS源として作用し、アトマイズ鉄粉中に所定量以上のMnSを析出させるために含有する。焼結体の基地を形成する鉄基粉末として、上記した範囲でMnおよびSを含有するアトマイズ鉄粉を使用することにより、焼結体の基地中に微細なMnSを均一に分散させることができ、焼結体の切削性を向上させることができる。さらにこの微細なMnSの存在により焼結体の組織が微細化され、強度も増加する。
【0019】
アトマイズ鉄粉中のMn含有量が0.05質量%未満では、MnSの形成量が少なく、切削性の向上が認められない。一方、Mn含有量が0.5質量%を超えて多量に含有すると、圧縮性が低下する。また、アトマイズ鉄粉中のS含有量が0.04質量%未満では、MnSの形成量が少なく、切削性の向上が認められない。また同時に、S含有量が0.04質量%未満では、焼結中のγ相の成長に対するMnSのピンニング効果が発現せず、組織が粗大化し強度が低下する。一方、S含有量が0.2質量%を超えて多量に含有しても、更なる切削性の向上は認められないうえ、圧縮性が低下する。
【0020】
上記した組成を有するアトマイズ鉄粉は、基地中に平均粒径:1〜10μmのMnS粒子が析出した組織とを有し、該MnS粒子のうち、MnS粒子の全個数に対する個数比率で5%以上のMnS粒子が酸素を含有することが好ましい。基地中に析出するMnS粒子が1μm未満では、切削性の向上が少なく、一方、MnS粒子が10μmを超えて大きくなると、MnS粒子個数が少なくなり、所期した切削性向上が期待できなくなる。そして、個数比率で5%以上のMnS粒子が酸素を含有することにより、焼結処理を施され焼結体となったのちも十分な切削性を有するようになる。酸素を含有するMnS粒子の個数比率が5%未満では、切削性の向上は少ない。このような微細なMnSは、焼結時のγ相の成長に対しピンニング効果を発揮するため、焼結体の組織が微細化し、強度が増加する。なお、本発明でいう「MnS粒子」とは、MnS粒子およびMnとSを含む介在物粒子を含むものとする。
【0021】
また、鉄基粉末として本発明で使用するアトマイズ鉄粉は、上記した範囲のMn、Sを含み、さらにSi:0.01〜0.1質量%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成のアトマイズ鉄粉としてもよい。Siは、MnSの析出サイトであるSiO源として作用し、MnSを微細でかつ均一に分散させることに有効に寄与する。Si含有量が0.01%未満では、MnSが均一に分散しにくいため、切削性の顕著な向上が認められにくい。一方、Si含有量が0.1質量%を超えると、SiOが単独で焼結体内に析出し、切削性が低下する。
【0022】
アトマイズ鉄粉が、上記した範囲のMn、Sと、さらに上記した範囲の適量のSiを含有することにより、SiOとしてMnS粒子の析出サイトが供給され、MnSが微細にかつより均一に分散するようになる。これにより、焼結処理を施され焼結体となったのちも切削性がさらに向上するとともに、焼結体の組織が微細化し、強度が増加する。
また、本発明では、上記したように、鉄基粉末として使用するアトマイズ鉄粉中に析出したMnSによる切削性改善に加えて、切削性改善用粉末として、フッ化カルシウム粉を使用し、切削性を更に向上させる。フッ化カルシウム粉は、焼結体の切削時に応力の集中点となり、切屑を微細化するチッピング作用を有し、切削工具と切屑との接触面を低減し摩擦抵抗を低減し、切削性を改善する効果に加え、さらに焼結体の空孔を充填し空孔を実質的に減少する効果も有する。
【0023】
このような効果を得るために、本発明では、フッ化カルシウム粉の平均粒径を1〜25μmの範囲に限定する。これにより、焼結体の空孔が実質的に減少し、切削時の断続的衝撃を緩和することができ、工具表面の摩耗や工具内部における微細亀裂発生を抑制し、工具寿命を増加させることができる。切削性改善用粉末の平均粒径が1μm未満では、粒子が細かすぎて、空孔を十分に充填することができない。一方、25μmを超えて大きくなると、粒子が大きすぎて空孔を充填することができなくなる。このため、切削性改善用粉末として使用するフッ化カルシウム粉の平均粒径を1〜25μmの範囲に限定した。これにより、20μmを超える粗大な空孔を充填することができる。なお、好ましくは平均粒径が5〜20μmである。
【0024】
さらに本発明では、切削性改善用粉末の粒度分布を、鉄基粉末と合金用粉末と潤滑剤とを混合してなる鉄基混合粉を加圧成形し焼結して得られた密度6.0〜7.6Mg/m3の鉄基焼結体の空孔の粒度分布と相似する粒度分布とすることが好ましい。これにより、焼結体中の粗大な空孔だけでなく、あらゆる大きさの空孔を、切削性改善用粉末により効率的に充填することができ、焼結体中の空孔を実質的に効率よく減少することができる。上記した鉄基焼結体の空孔の粒度分布と相似する粒度分布は、粒径:45μm未満の粒子が88〜98個数%と、粒径:45μm以上75μm未満の粒子が1〜9.5個数%と、粒径:75μm以上106μm未満の粒子が0.1〜7.0個数%と、粒径:106μm以上150μm未満の粒子が0.1〜1.5個数%と、粒径:150μm以上の粒子が0.01〜0.5個数%と、からなる粒度分布である。
【0025】
なお、ここでは、切削性改善用粉末の粒径は、レーザを用いたマイクロトラック法で測定した値を用いるものとし、平均粒径は、50%累積透過粒径(d50)を用いるものとする。また、焼結体中の空孔の粒径分布は、焼結体断面の光学顕微鏡写真をスキャナーにより電子画像化し、画像の明度を明部と暗部とに2値化し、暗部の画素数の比率を求めることにより求めるものとする。なお、空孔の粒径分布に相似する粒度分布を有する切削性改善用粉末とするには、篩を用いて分級し、空孔の粒径分布に相似する粒度分布になるように調整する。
【0026】
本発明では、上記したような平均粒径あるいはさらに上記したような粒度分布を有する切削性改善用粉末を、鉄基粉末と合金用粉末と切削性改善用粉末との合計量に対する質量%で0.1〜1.5%含有する。
切削性改善用粉末の含有量が、0.1質量%未満では、切削性の顕著な向上が認められない。一方、1.5質量%を超えると、圧縮性の低下、圧壊強さの低下が顕著となり好ましくない。また、この範囲内の切削性改善用粉末の含有量であれば、焼結体の寸法変化率も小さく、寸法精度上問題とならない。このようなことから、切削性改善用粉末の含有量は、鉄基粉末と合金用粉末と切削性改善用粉末との合計量に対し0.1〜1.5質量%とする。なお、好ましくは鉄基粉末と合金用粉末と切削性改善用粉末との合計量に対し0.3〜0.8質量%である。
【0027】
本発明で使用するアトマイズ鉄粉は、上記した組成の溶湯を、常用の溶製炉により溶製し、通常の水あるいはガスアトマイズ法を利用して噴霧しアトマイズ鉄粉とし、乾燥、解砕、分級、仕上還元等の通常の工程を経て製造されたものを使用することが好ましい。
また、本発明で使用する合金用粉末は、黒鉛粉、銅粉等が例示でき、所望の製品特性に応じて、適宜選定し所定量含有することが好ましい。
【0028】
また、本発明の鉄基混合粉中に含有される潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム等の金属石鹸、あるいはワックス等が好適である。潤滑剤の配合量は、本発明ではとくに限定されないが、鉄基粉末、合金用粉末、切削性改善用粉末の合計量100重量部に対し、0.2〜1.5重量部とすることが好ましい。潤滑剤の配合量が0.2重量部未満では、金型との摩擦が増加し抜出し力が増大し金型寿命が低下する。一方、1.5重量部を超えて多くなると、成形密度が低下し、焼結体密度が低下する。
【0029】
つぎに、本発明の鉄基混合粉の好ましい製造方法について説明する。
上記した鉄基粉末に、合金用粉末、切削性改善用粉末および潤滑剤を所定量配合し、Vブレンダ、ダブルコーンブレンダ等の通常公知の混合機を用いて、一度に、あるいは二回以上に分けて混合し鉄基混合粉とすることが好ましい。なお、鉄基粉末の一部または全部に、合金用粉末および/または切削性改善用粉末の一部または全部を結合材を用いて表面に固着させる偏析防止処理を施した鉄基粉末を用いて、鉄基混合粉としてもよい。これにより、より偏析が少なく、より流動性に優れた鉄基混合粉となる。
【0030】
偏析防止処理としては、特許第3004800号公報に記載の方法を用いることができる。すなわち、鉄基粉末に、合金用粉末および/または切削性改善用粉末を結合材とともに混合し、ついで結合材の融点のうちの最低値より10℃以上、好ましくは15℃以上に加熱することが好ましい。なお、結合材が2種以上の場合には、それら結合材の融点のうちの最低値より10℃以上、それら結合材の融点のうちの最高値以下の温度とすることが好ましい。この加熱により、少なくとも1種の結合材を溶融させたのち冷却固化させて、鉄基粉末表面に合金用粉末および/または切削性改善用粉末を固着させる。上記した下限温度未満では、結合材の結合機能が発揮されず、また上記した上限温度を超えると、熱分解等により結合機能が低下すると共に、ホッパ排出性能が低下する。
【0031】
結合材としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミドまたはワックスとすることが好ましい。高級脂肪酸または高級脂肪酸アミドとしては、ステアリン酸、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ステアリン酸アミドとエチレンビスステアリン酸アミドとの溶融混合物のうちから選ばれた1種または2種以上、あるいは、オレイン酸、スピンドル油、タービン油のうちから選ばれた1種または2種以上とステアリン酸亜鉛との加熱溶融物とすることが好ましい。本発明では、結合材の含有量は、鉄基粉末と合金用粉末と切削性改善粒子粉との合計量100重量部に対し、0.1〜1.0重量部とすることが好ましい。0.1重量部未満では、合金用粉末等の偏析防止効果が認められない。一方、1.0重量部を超えて含有すると、鉄基混合粉の充填性が低下する。
【0032】
なお、本発明の鉄基混合粉は、上記した製造方法に限定されるものでないことはいうまでもない。
本発明の鉄基混合粉は、一般の粉末冶金における工法を適用して、機械部品の製造に供することができる。具体的には、本発明の鉄基混合粉を、金型に充填し圧縮成形したのち、必要に応じてサイジングを行い、焼結し、焼結体とする。焼結後さらに浸炭焼入れ、光輝焼入れ、高周波焼入れ等の熱処理を施し、製品(機械部品等)とする。なお切削加工等の加工を随時施し、所定寸法の製品とすることは言うまでもない。
【実施例】
【0033】
表1に示す組成の溶湯を水アトマイズして生粉とした。ついで、これら生粉を窒素雰囲気中で140℃×60min乾燥したのち、仕上還元処理を施し、解砕、分級してアトマイズ鉄粉とした。これらアトマイズ鉄粉を鉄基粉末として、鉄基粉末100kgに、合金用粉末として表2に示す配合量の黒鉛粉(平均粒径:4μm)と、切削性改善用粉末として表2に示す平均粒径、粒度分布と配合量のフッ化カルシウム粉と、を潤滑剤とともに配合し、Vブレンダに装入し、均一混合し鉄基混合粉とした。なお、一部では、鉄基粉末に、合金用粉末、切削性改善用粉末を、表2に示す種類、配合量の結合材とともに混合し、表2に示す加熱温度に加熱する、偏析防止処理を施した。なお、結合材の配合量は鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合計量100重量部に対する重量部とした。
【0034】
合金用粉末および切削性改善用粉末の配合量は、鉄基粉末と合金用粉末と切削性改善用粉末の合計量に対する質量%とした。なお、潤滑剤はステアリン酸亜鉛(平均粒径:20μm)とし、鉄基粉末と合金用粉末と切削性改善用粉末の合計量100重量部に対し表2に示す配合量(重量部)とした。なお、一部の鉄基混合粉では、比較例として切削性改善用粉末の配合を行なわなかった。使用した切削性改善用粉末の粒度分布は表3に示す。
【0035】
なお、鉄基粉末として使用した仕上還元処理後のアトマイズ鉄粉について、粉末中に含まれるMnS粒子の平均粒径、および酸素を含むMnS粒子の個数比率を測定し、表1に付記した。なお、MnS粒子の平均粒径は、顕微鏡を用いて、MnとSを含む介在物粒子(MnS粒子)を撮像し、画像解析によりMnS粒子の面積を求め、円相当直径に換算し、それらの算術平均をMnS粒子の平均粒径とした。また、酸素を含むMnS粒子の個数比率は、鉄粉断面のEPMA分析を行い、Mn、SおよびOの各元素についてマッピング像を求めたのち、画像処理により各元素のマッピング像を重ね合わせて、MnとSを含む介在物中の酸素の有無を調査し、酸素を含むMnS粒子の個数をもとめ、全MnS粒子個数に対する比率として表示した。300個以上のMnとSを含む介在物について調査した。
【0036】
これら鉄基混合粉を金型に装入し、圧縮成形し、成形体(リング状試験片A、B、タブレット型試験片C、直方体型試験片D)とした。リング状試験片A(外径35mmφ×内径14mmφ×高さ10mm)は圧壊試験用とし、リング状試験片B(外径60mmφ×内径20mmφ×高さ25mm)は旋削試験用とし、タブレット型試験片C(外径60mmφ×高さ10mm)はドリル切削試験用とし、直方体試験片Dは密度測定用とした。なお、密度測定はアルキメデス法によった。
【0037】
ついで、これら成形体を5体積%H−窒素ガス雰囲気中でメッシュベルト炉を使用して1150℃×20minで焼結し焼結体とした。得られた焼結体について、圧壊試験、旋削試験、ドリル切削試験を実施した。
圧壊試験は、リング状試験片Aの焼結体を用いて、JIS Z 2507の規定に準拠して実施し、圧壊強さを求めた。
【0038】
旋削試験は、リング状試験片Bの焼結体を3個重ねて長さ75mmの円筒状として、その側面を超硬製(三菱マテリアル社製HT105T)バイトを用いて切削し、横逃げ面の摩耗深さが0.5mmに達するまでの旋削した距離を用いて焼結体の切削性を評価した。旋削条件は、切削速度:92m/min、送り量:0.03mm/rev、切込み深さ:0.89mmとした。なお、横逃げ面の摩耗形態を模式的に図1に示す。旋削試験後に、試験片の切削面を接触式表面粗さ計を用いて、JIS B 0601−2001の規定に準拠して、試験片切削面の表面粗さRzを測定した。
【0039】
ドリル切削試験は、タブレット型試験片Cの焼結体を用いて、該試験片Cの平面を、外径3.0mmの超硬製(三菱マテリアル社製 HT105T)ドリルで、回転速度:800rpm、送り量:0.02mm/revの条件でドリル切削を行った。200穴加工完了時のドリル外周部の摩耗深さを測定した。ドリル外周部の摩耗状況を図2に示す。また、200穴加工時の切削抵抗としてトルクおよびその振動幅を測定した。なお、トルクおよびその振動幅は、試験片(被削材)を切削動力計(キースラー)にセットし、図3に一例を示すように、ドリル切削時のトルクの経時変化を求め、矩形波の高さの平均値からトルクを、矩形波上の振動幅からトルクの振動幅を求めた。
【0040】
得られた結果を表4に示す。
【0041】
【表1】


【0042】
【表2】


【0043】
【表3】


【0044】
【表4】


【0045】
本発明例はいずれも、焼結体の圧壊強さが高く大きな強度低下がなく、また工具寿命までの旋削距離が長く、旋削性に優れた焼結体となっている。また、本発明例は、切削後の表面粗さRzが低減し、更なる仕上加工の負荷が低減している。また、本発明例は、ドリル摩耗量が少なく、切削抵抗が小さく、さらに切削抵抗の振動幅が小さい焼結体となっている。切削抵抗の振動幅は、断続的衝撃の発生に対応し、切削抵抗の振動幅が小さいことは、断続的衝撃の主たる原因となる焼結体内部の空孔が低減したことによるものと考えられる。このように、本発明例は鉄基混合粉として優れた特性を有する鉄基混合粉である。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、圧壊強さが低いか、工具摩耗が大きいか、切削抵抗が高いか、あるいは切削抵抗の振動が大きくなり、旋削性、切削性が低下している。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】切削工具横逃げ面の摩耗形態を模式的に示す説明図である。
【図2】ドリル外周部の摩耗状況を模式的に示す説明図である。
【図3】ドリル切削時のトルクの経時変化の1例を示すグラフである。




 

 


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