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発明の名称 溶接部特性の良好な電縫管の製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−160383(P2007−160383A)
公開日 平成19年6月28日(2007.6.28)
出願番号 特願2005−362722(P2005−362722)
出願日 平成17年12月16日(2005.12.16)
代理人 【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
発明者 剣持 一仁 / 岡部 能知 / 横山 泰康 / 杉本 祐二 / 村上 宗義
要約 課題
電縫溶接直前の幅端部形状を適切な形状とすることができ、それによって、電縫溶接時に十分な溶鋼排出がなされて、ペネトレータが確実に取り除かれ、溶接部特性の良好な電縫管を得ることができる電縫管の製造方法を提供する。

解決手段
フィンパス成形のフィン形状を2段階以上の角度を有する形状とし、そのフィン形状を帯材の幅端部に転写することによって、帯材の幅端部に所定のテーパ形状を付与する。
特許請求の範囲
【請求項1】
帯材をロール成形し幅端部を突き合わせて電縫溶接し管とする電縫管の製造方法であって、ロール成形中のフィンパス成形において、フィンを2段階以上の角度を有する形状とし、帯材の幅端部にそのフィン形状を転写することにより、帯材の幅端部にテーパ形状を付与することを特徴とする溶接部特性の良好な電縫管の製造方法。
【請求項2】
フィンパス成形において、管外面となる側の帯材幅端部または管内面となる側の帯材幅端部のいずれか一方にテーパ形状を付与することを特徴とする請求項1に記載の溶接部特性の良好な電縫管の製造方法。
【請求項3】
フィンパス成形において、前段で管内面となる側の帯材幅端部にテーパ形状を付与し、後段で管外面となる側の帯材幅端部にテーパ形状を付与することを特徴とする請求項1に記載の溶接部特性の良好な電縫管の製造方法。
【請求項4】
少なくともフィンパス成形最終スタンドを含んでテーパ形状を付与することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の溶接部特性の良好な電縫管の製造方法。
【請求項5】
前記テーパ形状は、帯材の幅端面から管外面となる表面あるいは管内面となる表面に向けての傾斜角度が25°〜50°であり、帯材の幅端面におけるテーパ開始位置と管外面となる表面あるいは管内面となる表面との帯材板厚方向の距離が帯材板厚の20%〜40%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに溶接部特性の良好な電縫管の製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接部特性の良好な電縫管の製造方法に関わり、特に、油井のラインパイプ向けなどの溶接部靭性が要求される管あるいは油井のケーシングパイプなどの溶接部強度が要求される管を製造する方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
通常、管は溶接管と継目無管に大別される。溶接管は、電縫鋼管を例とするように、板をロール成形等によって丸めて幅端部を突き合わせて溶接して製造し、継目無管は、材料の塊を高温で穿孔しマンドレルミル等で圧延して製造する。溶接管の場合、一般に溶接部の特性は母材より劣ると言われ、管の適用に当たって、用途ごとに溶接部の靭性や強度の保証が常に議論されて問題となってきた。
【0003】
例えば、原油や天然ガスなどを輸送するラインパイプでは、管を寒冷地に敷設されることが多いため低温靭性が重要であり、また、原油採掘の油井では採掘管を保護するためのケーシングパイプが必要とされ、管の強度が重要視される。
【0004】
通常、管の母材となる熱延板は、管製造後の母材特性を考慮して成分設計や熱処理等が行われて、母材の靭性や強度等の特性は確保される。
【0005】
しかし、溶接部の特性は、母材の成分設計や熱処理等以上に、溶接方法によって大きく左右されるため、特に、電縫溶接の場合は溶接技術の開発が重要であった。
【0006】
電縫溶接の不良原因としては、ペネトレータと呼ばれる被溶接帯材の幅端部に生成する酸化物が、電縫溶接時に溶鋼とともに端面から排出されずに残留し、この残留したペネトレータを原因として靭性が低下し強度不足になる例が多かった。
【0007】
そこで、従来、ペネトレータを溶接部から除くため、溶接部の被溶接帯材の幅端面から積極的に溶鋼を排出する技術が鋭意検討されてきた。例えば、特許文献1や特許文献2などに、帯材の幅端面の形状について検討した例が記載されている。通常、帯材の幅端面はスリットや端面研削によってほぼ矩形を呈しているが、この幅端面を電縫溶接までに加工して、加工した幅端部形状によって溶接時の溶鋼排出を良好にすることを目的としている。その概要は以下の如くである。
【0008】
すなわち、基本的な電縫管製造ラインは図1に示すようなものであり、この電縫管製造ラインは、帯材20を、アンコイラ1から払い出し、レベラー2で平坦に矯正し、ロール成形機4で帯材20を徐々に丸めていき、丸めた帯材20の左右両幅端部を、誘導加熱部5とスクイズロール(電縫溶接部)6からなる電縫溶接機で電縫溶接して管30となし、管30の溶接ビード部をビード部切削機7で切削し、切削後の管30を、サイザー8にて外径調整した後、管切断機9で所定長さに切断するという構成を有している。なお、ロール成形機4は、最後段に丸めた板端部を拘束して真円に近い形状とする所定台数のフィンパス成形スタンド3を備えており、ここでは、第1スタンド3aと第2スタンド3bよりなっている。
【0009】
そして、特許文献1に記載の技術では、図5(a)に横断面図、図5(b)にその部分詳細図を示すように、フィンパス成形第1スタンド3aにおいて、管状に成形された帯材20の幅端部の一部分をフィンパス孔型ロールのフィンに接触させることによって、図5(c)に示すように、管の内面側となる幅端部にテーパ形状を付与するとともに、図5(d)に横断面図、図5(e)にその部分詳細図を示すように、フィンパス成形第2スタンド3bにおいて、帯材20の幅端部の他の部分をフィンに接触させることによって、図5(f)に示すように、管の外面側となる幅端部にテーパ形状を付与することで、X型開先を形成するようにしている。なお、フィンパス成形第1スタンド3a、第2スタンド3bにおけるフィンの角度は通常の一段階の角度である。
【0010】
また、特許文献2に記載の技術では、図6(a)に横断面図を示すように、フィンパス成形スタンドの上流側にエッジャロール11を設置し、そのエッジャロール11を用いて、管状に成形された帯材20の幅端部を圧下することによって、図6(b)に示すように、帯材20の幅端部全体にテーパ形状を付与するとともに、図6(c)に横断面図、図5(d)にその部分詳細図を示すように、フィンパス成形スタンド3において、帯材20の幅端部の一部分をフィンパス孔型ロールのフィンに接触させることによって、図5(e)に示すように、管の外面側となる幅端部を垂直面に整形するようにしている。
【特許文献1】特開昭57−031485号公報
【特許文献2】特開昭63−317212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、本発明者らが特許文献1に記載の方法を検討したところ、フィンパス成形におけるアプセット量を大幅に変更しても、帯材20の幅端部の一部分のみをフィンパス孔型ロールのフィンに接触させることは著しく困難なことが判明した。これは、それまでの成形過程で帯材20の幅端部はわずかしか加工硬化していないために、帯材の幅端部全体がフィンに沿って変形してフィン部に完全充満し易く、帯材の幅端部にフィンの形状が転写されてしまうためである。その結果、電縫溶接直前には帯材20の幅端部が所望の形状になっていない。
【0012】
また、本発明者らが特許文献2に記載の方法を検討したところ、ロール成形途中(フィンパス成形スタンドの上流側)でエッジャロール11を用いて帯材20の幅端部全体にテーパ形状を付与するには、この特許文献2に記載されるとおり、管外面側から管内面側にかけて直径が徐々に大きくなるエッジャロールを用いて成形する必要があるため、管内面側となる幅端部がエッジャロールにより削り取られて、「ひげ」と称する余肉材が発生することがあって問題である。さらに、ロール成形される帯材20の横断面方向には管状の帯材20を外側に開く大きな反力が作用するため、エッジャロール11と帯材20の幅端部との圧力は必然的に小さくなる。その結果、前記特許文献1と同様に、エッジャロールでの幅端部の圧下では加工硬化しにくくなり、その後のフィンパス成形でアプセット量を軽減したとしても、帯材がフィン部にほぼ充満して、帯材20の幅端部に特許文献2に記載のような形状を付与することは困難なことが確認された。
【0013】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、電縫溶接直前の幅端部形状を適切な形状とすることができ、それによって、電縫溶接時に十分な溶鋼排出がなされて、ペネトレータが確実に取り除かれ、溶接部特性の良好な電縫管を得ることができる電縫管の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述のように、特許文献1、2に記載の従来技術においては、帯材の幅端面にテーパ形状を付与するために、フィンパス孔型ロールのフィンに帯材の幅端部の一部分を押し当ててテーパ形状を付与するようにしているが、本発明者らの検討によれば、フィンパス孔型ロールに帯材の円周方向全周が充満しなくとも、帯材がフィンパス孔型ロールに装入される際に、幅端部がフィンに強圧されて、幅端部がフィン部に完全充満することを把握した。すなわち、帯材がフィンパス孔型ロールに装入される場合、フィンに接触した帯料の幅端部およびそのほぼ180度反対側に位置する帯材の幅中央部(管状の底の部分)とが梁撓みの状態となって、横断面を円弧形状に曲げようとする帯材の反力が大きく作用して、たとえ帯料がフィンパス孔型ロールに充満しなくとも、帯材の幅端部には円周方向に大きな圧縮力が作用し、その結果、帯材の幅端部はフィンに強圧されてフィンの形状がそのまま帯材の幅端部に転写されることを把握した。
【0015】
そこで、本発明者らは、フィンパス成形において帯材の幅端部がフィンに強圧されることに着目して、この現象を積極的に活用することで、帯材の幅端部に所定のテーパ形状を付与する方法を着想した。すなわち、フィンに2段階以上のテーパを付与しておけば、フィンパス成形でのアプセット量が小さくとも、帯材の幅端部に所望のテーパ形状を付与でき、それによって電縫溶接直前の帯材の幅端部形状を適切なテーパ形状とすることができることを見出した。
【0016】
本発明は、上記のような考えに基づいており、以下の特徴を有している。
【0017】
[1]帯材をロール成形し幅端部を突き合わせて電縫溶接し管とする電縫管の製造方法であって、ロール成形中のフィンパス成形において、フィンを2段階以上の角度を有する形状とし、帯材の幅端部にそのフィン形状を転写することにより、帯材の幅端部にテーパ形状を付与することを特徴とする溶接部特性の良好な電縫管の製造方法。
【0018】
[2]フィンパス成形において、管外面となる側の帯材幅端部または管内面となる側の帯材幅端部のいずれか一方にテーパ形状を付与することを特徴とする前記[1]に記載の溶接部特性の良好な電縫管の製造方法。
【0019】
[3]フィンパス成形において、前段で管内面となる側の帯材幅端部にテーパ形状を付与し、後段で管外面となる側の帯材幅端部にテーパ形状を付与することを特徴とする前記[1]に記載の溶接部特性の良好な電縫管の製造方法。
【0020】
[4]少なくともフィンパス成形最終スタンドを含んでテーパ形状を付与することを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の溶接部特性の良好な電縫管の製造方法。
【0021】
[5]前記テーパ形状は、帯材の幅端面から管外面となる表面あるいは管内面となる表面に向けての傾斜角度が25°〜50°であり、帯材の幅端面におけるテーパ開始位置と管外面となる表面あるいは管内面となる表面との帯材板厚方向の距離が帯材板厚の20%〜40%であることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかに溶接部特性の良好な電縫管の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明においては、フィンパス成形のフィン形状を2段階以上の角度を有する形状とし、そのフィン形状を帯材の幅端部に転写するようにしているので、電縫溶接直前の帯材の幅端部形状を適切なテーパ形状とすることができる。その結果、電縫溶接時に十分な溶鋼排出がなされて、ペネトレータが確実に取り除かれるので、溶接部特性の良好な電縫管を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態において用いる電縫管製造ラインは、前述の図1に示したものである。すなわち、この電縫管製造ラインは、帯材20を、アンコイラ1から払い出し、レベラー2で平坦に矯正し、ロール成形機4で帯材20を徐々に丸めていき、丸めた帯材20の左右両幅端部を、誘導加熱部5とスクイズロール(電縫溶接部)6からなる電縫溶接機で電縫溶接して管30となし、管30の溶接ビード部をビード部切削機7で切削し、切削後の管30を、サイザー8にて外径調整した後、管切断機9で所定長さに切断するという構成を有している。なお、ロール成形機4は、最後段に丸めた板端部を拘束して真円に近い形状とする所定台数のフィンパス成形スタンド3を備えており、ここでは、第1スタンド3aと第2スタンド3bよりなっている。
【0025】
そして、この第1の実施形態においては、フィンパス成形第1スタンド3aのフィンは通常の1段階のテーパ形状になっているが、図2(a)に横断面図、図2(b)にその部分詳細図を示すように、第2スタンド3bのフィンが2段階のテーパ形状(2段目のテーパ傾斜角度α、2段目の傾斜部垂直長さβ)を備えており、その形状を帯材20の左右両幅端部に転写することによって、図2(c)に示すように、管外面となる側の左右両幅端部に所定のテーパ形状(幅端面から管外面となる表面に向けての傾斜角度α、幅端面における開始位置の管外面となる表面からの板厚方向距離β)を付与するようになっている。
【0026】
そして、帯材20の左右両幅端部に付与するテーパ形状については、帯材20の幅端面から管外面となる表面に向けての傾斜角度αが25°〜50°であり、幅端面におけるテーパ開始位置と管外面となる表面との帯材板厚方向の距離βが帯材板厚の20%〜40%となるようにしている。
【0027】
なぜなら、傾斜角度αが25°未満であると、帯材板厚中央部からの溶鋼排出が不十分となってペネトレータが残留して不良となり、電縫溶接後の靭性や強度が低下し、傾斜角度αが50度を超えると、電縫溶接後にもそのテーパ形状が製品の管の疵として残留し問題である。また、テーパ開始距離βが板厚に対して20%未満であると、板厚中央部の溶鋼排出が不十分となってペネトレータが残留しやすくなり、テーパ開始距離βが板厚に対して40%を超えると、電縫溶接後にもそのテーパ形状が製品の管の疵として残留し問題である。
【0028】
上記のようにして、この実施形態においては、フィンパス成形最終スタンド3bのフィン形状を2段階の角度を有する形状とし、そのフィン形状を帯材20の左右両幅端部に転写するようにしているので、電縫溶接直前の帯材20の幅端部形状を適切なテーパ形状とすることができる。その結果、電縫溶接時に十分な溶鋼排出がなされて、ペネトレータが確実に取り除かれるので、溶接部特性の良好な電縫管を得ることができる。
【0029】
なお、上記において、2段階のテーパ形状を変更することによって、管内面側となる左右両幅端部に所定のテーパ形状を付与することもできる。
【0030】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態において用いる電縫管製造ラインも、前述の図1に示したものである。
【0031】
そして、この第2の実施形態においては、フィンパス成形第1スタンド3aのフィンは通常の1段階のテーパ形状になっているが、図3(a)に横断面図、図3(b)にその部分詳細図を示すように、第2スタンド3bのフィンが3段階のテーパ形状(1段目の傾斜部垂直長さδ、2段目のテーパ傾斜角度γ、3段目のテーパ傾斜角度α、3段目の傾斜部垂直長さβ)を備えており、その形状を帯材20の左右両幅端部に転写することによって、図3(c)に示すように、管外面となる側の左右両幅端部に所定のテーパ形状(幅端面から管外面となる表面に向けての傾斜角度α、幅端面における開始位置の管外面となる表面からの板厚方向距離β)を付与するとともに、管内面となる側の左右両幅端部に所定のテーパ形状(幅端面から管内面となる表面に向けての傾斜角度γ、幅端面における開始位置の管内面となる表面からの板厚方向距離ψ)を付与するようになっている。ただし、3段階としたフィンのいずれかの角度がフィンパスロールの垂直方向より大きな角度になると、帯材の幅端部がフィンにより削り取られて、「ひげ」と称する余肉材が発生することがあり、フィンパス成形時に疵を発生させたり、電縫溶接のスパークの原因となったりするので、フィンの角度は垂直方向以下にしておくとよい。
【0032】
そして、帯材20の左右両幅端部に付与するテーパ形状については、帯材20の幅端面から管外面となる表面に向けての傾斜角度αおよび管内面となる表面に向けての傾斜角度γがそれぞれ25°〜50°であり、幅端面におけるテーパ開始位置と管外面となる表面との帯材板厚方向の距離βおよび管内面となる表面との帯材板厚方向の距離ψがそれぞれ帯材板厚の20%〜40%となるようにしている。
【0033】
なぜなら、傾斜角度α、γが25°未満であると、帯材板厚中央部からの溶鋼排出が不十分となってペネトレータが残留して不良となり、電縫溶接後の靭性や強度が低下し、傾斜角度α、γが50度を超えると、電縫溶接後にもそのテーパ形状が製品の管の疵として残留し問題である。また、テーパ開始距離β、ψが板厚に対して20%未満であると、板厚中央部の溶鋼排出が不十分となってペネトレータが残留しやすくなり、テーパ開始距離β、ψが板厚に対して40%を超えると、電縫溶接後にもそのテーパ形状が製品の管の疵として残留し問題である。
【0034】
上記のようにして、この実施形態においては、フィンパス成形最終スタンド3bのフィン形状を3段階の角度を有する形状とし、そのフィン形状を帯材20の左右両幅端部に転写するようにしているので、電縫溶接直前の帯材20の幅端部形状を適切なテーパ形状とすることができる。その結果、電縫溶接時に十分な溶鋼排出がなされて、ペネトレータが確実に取り除かれるので、溶接部特性の良好な電縫管を得ることができる。
【0035】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態において用いる電縫管製造ラインも、前述の図1に示したものである。
【0036】
そして、この第3の実施形態においては、図4(a)に横断面図、図4(b)にその部分詳細図を示すように、前段のフィンパス成形第1スタンド3aのフィンが2段階のテーパ形状(1段目の傾斜部垂直長さδ、2段目のテーパ傾斜角度γ)を備えており、その形状を帯材20の左右両幅端部に転写することによって、図4(c)に示すように、管内面となる側の左右両幅端部に所定のテーパ形状(幅端面から管内面となる表面に向けての傾斜角度γ、幅端面における開始位置の管内面となる表面からの板厚方向距離ψ)を付与するとともに、図4(d)に横断面図、図4(e)にその部分詳細図を示すように、後段の第2スタンド3bのフィンが2段階のテーパ形状(2段目のテーパ傾斜角度α、2段目の傾斜部垂直長さβ)を備えており、その形状を帯材20の左右両幅端部に転写することによって、図4(f)に示すように、管外面となる側の左右両幅端部に所定のテーパ形状(幅端面から管外面となる表面に向けての傾斜角度α、幅端面における開始位置の管外面となる表面からの板厚方向距離β)を付与するようになっている。
【0037】
ちなみに、フィンパス成形第1スタンド3aで管内面となる幅端部にテーパ形状を付与した場合、その部分は強圧によって著しく加工硬化するため、さらにフィンパス成形第2スタンド3bでテーパ形状を付与しても、第1スタンド3aで付与したテーパ形状は比較的潰れにくい。したがって、フィンパス成形終了後の帯材の幅端部には管内面側および管外面側とも所定のテーパ形状が付与できるわけである。
【0038】
そして、帯材20の左右両幅端部に付与するテーパ形状については、帯材20の幅端面から管外面となる表面に向けての傾斜角度αおよび管内面となる表面に向けての傾斜角度γがそれぞれ25°〜50°であり、幅端面におけるテーパ開始位置と管外面となる表面との帯材板厚方向の距離βおよび管内面となる表面との帯材板厚方向の距離ψがそれぞれ帯材板厚の20%〜40%となるようにしている。
【0039】
なぜなら、傾斜角度α、γが25°未満であると、帯材板厚中央部からの溶鋼排出が不十分となってペネトレータが残留して不良となり、電縫溶接後の靭性や強度が低下し、傾斜角度α、γが50度を超えると、電縫溶接後にもそのテーパ形状が製品の管の疵として残留し問題である。また、テーパ開始距離β、ψが板厚に対して20%未満であると、板厚中央部の溶鋼排出が不十分となってペネトレータが残留しやすくなり、テーパ開始距離β、ψが板厚に対して40%を超えると、電縫溶接後にもそのテーパ形状が製品の管の疵として残留し問題である。
【0040】
上記のようにして、この実施形態においては、フィンパス圧において、前段の第1スタンド3aのフィン形状および後段の第2スタンド3bのフィン形状をそれぞれ2段階の角度を有する形状とし、それらのフィン形状を帯材20の左右両幅端部に転写するようにしているので、電縫溶接直前の帯材20の幅端部形状を適切なテーパ形状とすることができる。その結果、電縫溶接時に十分な溶鋼排出がなされて、ペネトレータが確実に取り除かれるので、溶接部特性の良好な電縫管を得ることができる。
【0041】
なお、上述の第1〜第3の実施形態においては、フィンパス成形最終スタンド(ここでは、第2スタンド3b)で帯材の管外面側または/および管外面側の幅端部にテーパ形状を付与するようにしているのは、その直後に電縫溶接が行われるため、良好なテーパ形状を保持したまま電縫溶接が可能であるからである。しかし、フィンパス成形開始スタンドや中間スタンドにおいて帯材の幅端部にテーパ形状を付与し、フィンパス成形最終スタンドではテーパ形状を付与しないようにしてもよい。いったん帯材の幅端部にテーパ形状を付与すれば、その幅端面は強圧によって著しく加工硬化するため、その後にフィンパス成形を行ってもテーパ形状は比較的潰れにくく、フィンパス成形終了後もそのテーパ形状を付与した状態が保持できる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例に基づいて説明する。
【0043】
ここでは、板幅1920mm×19.1tmmの帯材(鋼帯)を用いて、φ600の電縫管を製造した。そして、製造した電縫管の溶接部から試験片を切り出してシャルピー試験を行い、性能を評価した。シャルピー試験片は、管長手方向の相違する10点から1本ずつ、試験片長さ方向を管円周方向に平行にし、ノッチ長さ中心を溶接部肉厚中心位置として採取し、JIS5号の2mmVノッチ衝撃試験片として、−46℃での衝撃試験を行い、吸収エネルギー、脆性破面率を測定した。なお、吸収エネルギーは125J以上、脆性破面率が35%以下を性能許容範囲とした。
【0044】
(本発明例1)本発明例1として、前述の第1の実施形態に基づいて上記の電縫管を製造した。すなわち、フィンが2段階の角度を有したフィンパス成形最終スタンド(フィンの第1段階の角度は85°)によって、管外面となる側の帯材幅端部にテーパ形状を付与した。なお、その傾斜角度αは30°とした。
【0045】
(本発明例2)本発明例2として、前述の第2の実施形態に基づいて上記の電縫管を製造した。すなわち、2スタンドフィンパス成形において、フィンが3段階の角度を有した第1スタンド(フィンの第2段階の角度は40°)によって、管外面となる側の帯材幅端部および管内面となる側の帯材幅端部にそれぞれテーパ形状を付与した。なお、管外面となる側の傾斜角度αおよび管内面となる側の傾斜角度γはともに25°とした。
【0046】
(本発明例3)本発明例3として、前述の第3の実施形態に基づいて上記の電縫管を製造した。すなわち、3スタンドフィンパス成形において、フィンが2段階の角度を有した第1スタンド(フィンの第1段階の角度は60°)によって、管内面となる側の帯材幅端部にテーパ形状を付与し、フィンが2段階の角度を有した第3スタンド(フィンの第1段階の角度は85°)によって、管外面となる側の帯材幅端部にテーパ形状を付与した。なお、管外面となる側の傾斜角度αは30°、管内面となる側の傾斜角度γは40°とした。
【0047】
(従来例1)従来例1として、前述の特許文献1に記載の方法に基づいて上記の電縫管を製造した。すなわち、フィンが1段階の角度を有したフィンパス成形第1スタンドにおいて、帯材幅端部を板厚のほぼ1/2までフィンに接触させることによって、管の内面側となる幅端部にテーパ形状を付与するとともに、フィンが1段階の角度を有したフィンパス成形第2スタンドにおいて、帯材幅端部を板厚の残りのほぼ1/2をフィンに接触させることによって、管の外面側となる幅端部にテーパ形状を付与することを狙った。なお、テーパ形状の傾斜角度は20°とした。
【0048】
(従来例2)従来例2として、前述の特許文献2に記載の方法に基づいて上記の電縫管を製造した。すなわち、フィンパス成形の上流側にエッジャロールを設置し、そのエッジャロールを用いて、帯材の幅端部を圧下することによって、帯材の幅端部全体にテーパ形状を付与するとともに、フィンが1段階の角度を有したフィンパス成形スタンドにおいて、帯材幅端部を板厚のほぼ1/2までフィンに接触させることによって、管の外面側となる幅端部を垂直面に整形することを狙った。なお、テーパ形状の傾斜角度は20°とした。
【0049】
(従来例3) 従来例3として、図1に示した製造ラインにおいて、帯材の幅端部を矩形に研磨しておき、フィンが1段階の角度となっているフィンパス成形スタンドを用いて上記の電縫管を製造した。
【0050】
これらにより製造した電縫管の溶接部におけるシャルピー衝撃値と脆性破面率を測定した結果を表1に示す。また。電縫溶接直前の帯材幅端部を切り出して採取し、その幅端部における形状を観察した結果も付記した。
【0051】
【表1】


【0052】
表1より、本発明例1〜3では、溶接部の衝撃強度が高く脆性破面率が小さくて、靭性が良好であって、製品の信頼性が高い。これに比較して、従来例1〜3では、溶接部の衝撃強度が低く脆性破面率が大きくて、靭性が低下しており、製品の信頼性に乏しかった。また、フィンパス成形後の電縫溶接直前における帯材幅端部形状を比較すると、本発明例1〜3では、管内面となる側の幅端部および管外面となる側の幅端部ともに、所望するテーパ形状が保持されていたのに対して、従来例1、2ではいずれも幅端部がフィンパス成形中に平滑化されてしまって、テーパ形状が保持されていなかった。
【0053】
したがって、本発明によって溶接部特性の良好な電縫管を製造できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】電縫管製造ラインの説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態を説明するための図である。
【図3】本発明の第2の実施形態を説明するための図である。
【図4】本発明の第3の実施形態を説明するための図である。
【図5】従来技術(特許文献1記載の技術)を説明するための図である。
【図6】従来技術(特許文献2記載の技術)を説明するための図である。
【符号の説明】
【0055】
1 アンコイラ
2 レベラ−
3 フィンパス成形スタンド
3a フィンパス成形第1スタンド
3b フィンパス成形第2スタンド
4 ロール成形機
5 誘導加熱装置
6 スクイズロール(電縫溶接部)
7 ビード切削バイト
8 サイザー
9 管切断機
20 帯材
30 管




 

 


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