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発明の名称 連続鋳造鋳片の製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−125575(P2007−125575A)
公開日 平成19年5月24日(2007.5.24)
出願番号 特願2005−319290(P2005−319290)
出願日 平成17年11月2日(2005.11.2)
代理人 【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
発明者 川端 悠介 / 荒牧 則親 / 久保田 淳 / 小平 悟史 / 加藤 朝行
要約 課題
スラブ鋳片の連続鋳造の際に、凝固シェルのロール間における非定常バルジングに起因して発生する鋳型内の湯面変動を抑制して、モールドパウダーの巻き込みの少ない高品質の鋳片を製造する。

解決手段
凝固シェルの非定常バルジングに起因して発生する鋳型内湯面変動を抑制しながら溶鋼を連続鋳造してスラブ鋳片を製造する方法であって、相対する一対の鋳型長辺2aと相対する一対の鋳型短辺2bとを備え、相対する鋳型短辺の上端の間隔をWu、下端の間隔をWl、鋳型短辺の鉛直方向の長さをLとしたときに下記の(1)式で定義されるテーパー量(ΔT)が1.1〜1.3%の範囲内となるように相対する鋳型短辺にテーパーの施された鋳型2を用いて連続鋳造して、鋳型内の凝固シェル厚みを均一化させ、かくして、前記鋳型内湯面変動を抑制する。
特許請求の範囲
【請求項1】
凝固シェルの非定常バルジングに起因して発生する鋳型内湯面変動を抑制しながら溶鋼を連続鋳造してスラブ鋳片を製造する連続鋳造鋳片の製造方法であって、相対する一対の鋳型長辺と相対する一対の鋳型短辺とを備え、相対する鋳型短辺の上端の間隔をWu、下端の間隔をWl、鋳型短辺の鉛直方向の長さをLとしたときに下記の(1)式で定義されるテーパー量(ΔT)が1.1〜1.3%の範囲内となるように相対する鋳型短辺にテーパーの施された鋳型を用いて連続鋳造して、鋳型内の凝固シェル厚みを均一化させ、かくして、前記鋳型内湯面変動を抑制することを特徴とする、連続鋳造鋳片の製造方法。
ΔT=(Wu−Wl)×100/L…(1)
【請求項2】
鋳型内の溶鋼湯面に、塩基度(CaO/SiO2 )が0.85〜1.00の範囲内であるモールドパウダーを添加することを特徴とする、請求項1に記載の連続鋳造鋳片の製造方法。
【請求項3】
スラブ鋳片の鋳造速度が2.0m/分以上であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の連続鋳造鋳片の製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラブ鋳片を連続鋳造する際に、凝固シェルのロール間バルジングを原因として発生する鋳型内の周期的な湯面変動を防止して、モールドパウダーの巻き込みの少ない高品質の連続鋳造鋳片を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼の連続鋳造においては、鋳型内の溶鋼湯面レベルを制御することは、安定操業上のみならず、鋳片の品質確保上も極めて重要なことである。従来、この鋳型内湯面のレベル制御方法としてPI制御が多く用いられている。この場合の制御方法は、鋳型内溶鋼の湯面レベルを計測し、この計測値に基づきスライディングノズルやストッパーなどの流量調整装置の開度をPI制御によって調整し、鋳型から引き抜かれて行く溶鋼とタンディッシュから注入される溶鋼とのマスバランスを釣合わせるという方法である。
【0003】
しかしながら、スラブ鋳片の連続鋳造においては上記のようなレベル制御を実施しても、長周期の鋳型内湯面変動が生じる場合がある。図1にスラブ鋳片の連続鋳造における鋳型内湯面変動及び鋳造速度(「鋳片引き抜き速度」ともいう)の例を示す。図1において、鋳造領域Aでは鋳型内の湯面変動は少なく湯面レベルは安定しているが、鋳造領域Bでは周期的な湯面変動が発生しており、この周期的な湯面変動の発生に応じて鋳造速度を低下させている。この周期的な鋳型内湯面変動の周期は数秒〜十数秒であり、その振幅は数mm〜数十mmに達する。このような現象が生じると、鋳型内溶鋼の上下動によって鋳型内に添加したモールドパウダーを巻き込んだり、また、湯面変動量が時間に伴って増大するような条件では溶鋼が鋳型からオーバーフローしたりする恐れもあるため、鋳片品質の低下のみならず鋳造そのものの続行が困難となる場合も発生する。
【0004】
従って、この周期的な湯面変動が発生した場合には、図1に示すように鋳造速度を下げて湯面変動量が減少するのを待つことが通常行なわれているが、鋳造速度を低下させることは生産能率の低下につながる。また、鋳造速度を低下させないで鋳造が続行できたとしても、上述のようにモールドパウダーの巻き込みによる鋳片品質の悪化が発生する。
【0005】
この周期的な湯面変動の発生原因は次のように考えることができる。即ち、図2に凝固シェルのバルジングと鋳型内湯面変動との関係を模式的に示すように、凝固シェル10が静鉄圧によって鋳片支持ロール8のロール間で凸状にバルジングし、このバルジング部(凸部)が鋳片の引き抜きによって次の鋳片支持ロール8に差し掛かった時に、バルジング部が鋳片支持ロール8に沿って元に戻ることなく、凝固シェル10の一部が変形することによってバルジング部を残したまま鋳片が未凝固部側に押し戻されるような現象が発生する。このようなバルジング現象は一般に「非定常バルジング」と呼ばれている。この非定常バルジングが、同一のロールピッチの連続する区間で且つ各ロール部位で一斉に生じると、鋳片の凝固シェルは広範囲に渡って一斉に未凝固部側に押し戻され、また、逆にロール間に押し出される動きが、鋳片の引抜きに伴って周期的に発生する。これによって図1に示すような長周期の湯面変動が生じると考えられている。これ以降、この湯面変動を「バルジング性湯面変動」と称する。尚、図2において、2aは鋳型長辺、8は鋳片支持ロール、10は凝固シェル、11は未凝固部、12は溶鋼湯面である。
【0006】
バルジング性湯面変動の解決手段としては、前述したように、鋳造速度を減速し、バルジングの生じている該当ロール間での凝固シェル厚みを増大させてバルジング量を低減させ、湯面変動量を小さくする方法がある。しかしながらこの方法では、鋳造速度をどこまで減速するかは鋳造操作員の経験によって行なわれることがほとんどであり、対策が定量的でない上に過度な減速は連続鋳造の生産性を下げることになる。
【0007】
また、特許文献1には、ピンチロールモーターの電流値の周期性と、湯面レベル値及び湯面制御信号値のうち何れかまたは双方の合成値の周期性とが一致したとき、非定常バルジングの発生と判断し、湯面レベル制御ゲインの変更、鋳造速度の変更、及び二次冷却条件の変更のうち、少なくとも1つの変更を行なうとしている。しかしながら、特許文献1では、これらの条件をどの程度変更すればバルジング性湯面変動を抑制できるかが明確でなく、一定量の変更を繰返して実施し、バルジング性湯面変動を収束させている。従って、この方法では一回の変更量が少なすぎるとバルジング湯面変動量の収束までに時間を要するし、一方、一回の変更量が多すぎるとオーバーシュートを生じる可能性がある。また、この方法は実操業において非定常バルジングが生じてから対策を講ずるわけであって、バルジング性湯面変動が生じにくいような鋳造条件に予め設定する手段としては用いることができない。
【0008】
また更に、特許文献2には、バルジング性湯面変動を生じさせないための二次冷却の条件が具体的な数値によって提案されているが、前提条件として鋳造速度が0.5〜1.2m/min、また、鋳片幅が700〜1380mm、鋳片厚みが150〜200mmなどの条件が付いているため、この範囲を外れる鋳造条件には適用が困難である。
【0009】
ところで、スラブ連続鋳造用の鋳型では、凝固シェルと鋳型との接触を向上させるために、鋳型長辺及び/または鋳型短辺には、相対する鋳型面が下方に向かって狭くなるように絞り込み(以下、「テーパー」と記す)を設ける場合が多いが(例えば、特許文献3,4,5,6参照)、鋳型テーパーとバルジング性湯面変動との関係を明らかにした報告は未だ成されていない。
【特許文献1】特開平11−170021号公報
【特許文献2】特開平7−303951号公報
【特許文献3】特開平4−258347号公報
【特許文献4】実開平5−70748号公報
【特許文献5】特開平10−128501号公報
【特許文献6】特開2003−305544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上説明したように、従来のバルジング性湯面変動の防止方法は、鋳造条件に基づいて予めバルジング性湯面変動を予測することが不可能であったり、予測できるものの幅広い鋳造条件には適用できないものであったりして、未だ改善の余地が十分に残されているのが現状である。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、鋼のスラブ鋳片を連続鋳造するに際し、高速鋳造条件であっても、特に鋳造速度が2.0m/分以上の高速鋳造であっても、凝固シェルのロール間における非定常バルジングに起因して発生する鋳型内のバルジング性湯面変動を抑制して、モールドパウダーの巻き込みの少ない高品質の連続鋳造鋳片を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究・検討を行った。以下に、研究・検討結果を説明する。
【0013】
種々の鋳造条件下で非定常バルジングに起因するバルジング性湯面変動を調査した結果、バルジング性湯面変動を抑制するためには、前述した特許文献2に提案されるように、凝固シェルの厚みを厚くしてロール間のバルジング量を減少させることも重要であるが、それにも増して、鋳片の幅方向及び鋳片の鋳造方向において凝固シェル厚みを均一にすることが重要であることが分かった。即ち、凝固シェル厚みを均一にすることにより、凝固シェルが静鉄圧によって鋳片支持ロールのロール間でバルジングしても、このバルジング部が鋳片の引き抜きによって次の鋳片支持ロールに差し掛かった時には鋳片支持ロールに沿って元の形状に戻り、非定常バルジングが起こり難くなることが分かった。これは、凝固シェル厚みが均一化することで、前述した図2に示すような凝固シェルの一部が変形する現象が起こり難くなるものと考えられる。換言すれば、凝固シェル厚みの不均一性が凝固シェルの変形の原因となり、非定常バルジングを誘発しているものと考えられる。
【0014】
この場合、二次冷却帯では鋳片の特定の位置の冷却能を鋳造中に任意に変えるなどとすることはできず、従って、鋳型直下の二次冷却帯において凝固シェル厚みを均一化しようとしても困難なことから、均一な凝固シェルを形成するためには鋳型内の冷却を均一にする必要のあることが分かった。つまり、鋳型内で凝固シェルと鋳型との間にエアーギャップを生成させずに均一に冷却する必要のあることが分かった。
【0015】
そこで、スラブ鋳片を連続鋳造するに当たり、鋳型内の冷却を均一化する方法を検討した。その際の鋳造速度は、高生産性を考慮して1.5m/分以上とした。その結果、相対する一対の鋳型長辺に挟まれて設置される鋳型短辺に、相対する鋳型短辺の面間隔が鋳造方向に向かって狭くなるようにテーパーを施し且つこのテーパー量を適切な値にして、鋳片短辺の凝固シェルと鋳型短辺との接触のみならず、鋳片長辺の短辺近傍の凝固シェルと鋳型長辺とが常に接触している状態にすることで、エアーギャップの生成が防止されて均一な冷却がなされると同時に、凝固シェル厚みも増大することが分かった。
【0016】
この場合の鋳型による凝固シェルの冷却は、モールドパウダーを介在して行なわれることは周知であり、従って、モールドパウダー自体も結晶性の高いモールドパウダーを使用することで、鋳型の冷却効果は低下するものの、均一な鋳型冷却が得られ、更に凝固シェル厚みの均一化が促進されることが分かった。
【0017】
即ち、鋳型短辺に適切なテーパーを施し、更に、好ましくは適切な特性のモールドパウダーを使用することで、鋳造速度が2.0m/分以上の高速鋳造であっても、凝固シェルのロール間における非定常バルジングに起因して発生する鋳型内の湯面変動を抑制することができるとの知見が得られた。この場合、鋳型長辺にもテーパーを施すことが好ましいが、鋳片の厚みに対して幅の大きいスラブ鋳片では、短辺凝固シェルの拘束力を受けない幅方向中央部位の長辺凝固シェルは、静鉄圧により常に鋳型長辺側に押し付けられた状態であることから、エアーギャップを防止するという観点からは鋳型長辺にテーパーを設けることは余り重要ではなく、鋳型短辺のテーパーのみで十分であるとの知見が得られた。
【0018】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、第1の発明に係る連続鋳造鋳片の製造方法は、凝固シェルの非定常バルジングに起因して発生する鋳型内湯面変動を抑制しながら溶鋼を連続鋳造してスラブ鋳片を製造する連続鋳造鋳片の製造方法であって、相対する一対の鋳型長辺と相対する一対の鋳型短辺とを備え、相対する鋳型短辺の上端の間隔をWu、下端の間隔をWl、鋳型短辺の鉛直方向の長さをLとしたときに下記の(1)式で定義されるテーパー量(ΔT)が1.1〜1.3%の範囲内となるように相対する鋳型短辺にテーパーの施された鋳型を用いて連続鋳造して、鋳型内の凝固シェル厚みを均一化させ、かくして、前記鋳型内湯面変動を抑制することを特徴とするものである。但し、(1)式において、ΔTはテーパー量(%)、Wuは相対する鋳型短辺の上端の間隔(m)、Wlは相対する鋳型短辺の下端の間隔(m)、Lは鋳型短辺の鉛直方向の長さ(m)である。
【0019】
【数1】


【0020】
第2の発明に係る連続鋳造鋳片の製造方法は、第1の発明において、鋳型内の溶鋼湯面に、塩基度(CaO/SiO2 )が0.85〜1.00の範囲内であるモールドパウダーを添加することを特徴するものである。
【0021】
第3の発明に係る連続鋳造鋳片の製造方法は、第1または第2の発明において、スラブ鋳片の鋳造速度が2.0m/分以上であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、相対する鋳型短辺に1.1〜1.3%のテーパーを施し、更に好ましくは、塩基度(CaO/SiO2 )が0.85〜1.00の範囲内である高結晶性のモールドパウダーを使用するので、鋳造速度が2.0m/分以上の高速鋳造であっても、鋳型内の冷却が均一化されて均一な厚みの凝固シェルが得られ、凝固シェルのロール間における非定常バルジングが抑制され、非定常バルジングに起因して発生する鋳型内のバルジング性湯面変動を抑制することができる。その結果、モールドパウダーの巻き込みのない高品質の鋳片を高生産性で安定して製造することが可能となり、工業上有益な効果がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明を具体的に説明する。図3は、本発明を実施する際に用いたスラブ連続鋳造機の鋳型周辺部の側面概略図、図4は、図3に示す鋳型の概略斜視図である。
【0024】
図3において、スラブ連続鋳造機の鋳型2の上方所定位置にはタンディッシュ1が配置され、このタンディッシュ1の底部には、スライディングノズル3及び浸漬ノズル4が配置されており、タンディッシュ1に一旦滞留した溶鋼9は、スライディングノズル3及び浸漬ノズル4を介して鋳型2へ注入されるようになっている。スライディングノズル3は、上部固定板3a、摺動板3b及び下部固定板3cからなる3枚板構造であり、摺動板3bがアクチュエータ7と連結されていて、摺動板3bが、アクチュエータ7の作動によって上部固定板3a及び下部固定板3cと密着した状態のまま摺動することで、スライディングノズル3の開度が増減し、タンディッシュ1から鋳型2への溶鋼9の流出量が制御されるようになっている。
【0025】
この場合、アクチュエータ7は、スライディングノズル3の開度を調整するためのPI制御装置などの制御装置6から入力される信号によって作動するようになっている。また、鋳型内の溶鋼湯面12の上方には、鋳型2における溶鋼湯面12の位置を計測するための湯面レベル計5が配置されており、湯面レベル計5の計測信号は制御装置6に入力されている。つまり、制御装置6は、湯面レベル計5から得られる湯面レベル検出信号と、予め設定されている湯面レベル設定値との偏差信号を連続的に入力し、この偏差信号に基づいて鋳型2における溶鋼湯面12の位置が一定となるように、アクチュエータ7にスライディングノズル3の開度指令を出力するようになっている。
【0026】
鋳型2は、図4に示すように、相対する一対の鋳型長辺2aと、この鋳型長辺2aに挟まれて内装された、相対する一対の鋳型短辺2bとを備えており、相対する鋳型短辺2bの上端の間隔をWu(m)、下端の間隔をWl(m)、鋳型短辺2bの鉛直方向の長さをL(m)としたときに、前述した(1)式で定義されるテーパー量(ΔT)が1.1〜1.3%の範囲内となるように、鋳型短辺2bには、相対する面間隔が鋳造方向に向かって狭くなるようなテーパーが施されている。この鋳型2では、鋳型短辺2bが鋳型長辺2aに挟まれて構成されており、従って、鋳型短辺2bの上端部よりも下端部を突出させるようにして配置することで、相対する鋳型短辺2bにテーパーが設置されている。この場合、両側の鋳型短辺2bのテーパー量は同等とする。つまり、(1)式で定義されるテーパー量(ΔT)の1/2程度とする。
【0027】
鋳型長辺2aにはテーパーが施されていないが、形成される凝固シェル10の厚みをより均一化する観点から、鋳型長辺2aにもテーパーを施すことが好ましい。テーパー量は、鋳型短辺2bのテーパー量(ΔT)と同程度でよい。但し、この鋳型長辺2aのテーパーは、本発明を実施する上では必ずしも必要ではない。
【0028】
ここで、鋳型短辺2bのテーパー量(ΔT)を1.1〜1.3%の範囲とした理由を説明する。図5は、鋳造速度を2.2m/分とした条件下で鋳型短辺2bのテーパー量(ΔT)を1.0%から1.4%の範囲とした鋳型2において、鋳型長辺2aにおける抜熱量を測定した結果を示す図である。図5に示すように、鋳型短辺2bのテーパー量(ΔT)が1.0%の場合には平均総括抜熱量は1.66Gcal/m2・hrであったが、テーパー量(ΔT)を1.1%とすることで平均総括抜熱量は1.85Gcal/m2・hrにまで上昇することが確認できた。つまり、鋳型短辺2bのテーパー量(ΔT)を1.1%以上とすることで、鋳型長辺2aと鋳片長辺の凝固シェル10との接触が改善され、1.0%のテーパー量(ΔT)の場合に比べて鋳型内冷却を格段に均一化できることが分かった。
【0029】
この結果から、鋳型短辺2bのテーパー量(ΔT)が1.0%の場合には、鋳型長辺2aと鋳片長辺の凝固シェル10との間には、特に鋳型短辺2bの近傍で、エアーギャップが生成していたものと推定される。また、テーパー量(ΔT)を1.1%よりも大きくすることで平均総括抜熱量は更に改善されるが、改善の程度はそれほど大きくないことも分かった。また更に、鋳型短辺2bのテーパー量(ΔT)が1.4%の場合には、絞り込みが強過ぎて、鋳型短辺2bの下端部の磨耗が激しくなったり、また、凝固シェル10が座屈する、或いは、鋳型短辺2bと凝固シェル10との焼き付きによるブレークアウトの発生率が高くなったりすることも分かった。
【0030】
従って、これらの結果から、鋳型内冷却を均一化するための条件として、鋳型短辺2bのテーパー量(ΔT)を1.1〜1.3%の範囲に決定した。
【0031】
このように構成されるスラブ連続鋳造機を用いて、以下のようにして本発明を実施する。先ず、取鍋(図示せず)からタンディッシュ1に溶鋼9を注入し、次いで、タンディッシュ1に注入された溶鋼9を、スライディングノズル3で流量を調整しながら、浸漬ノズル4を介して鋳型2へ注入する。その際に、鋳型内の溶鋼湯面12には、保温剤、酸化防止剤、鋳型2との潤滑剤などとなるモールドパウダー13を添加する。鋳型2へ注入された溶鋼9は、鋳型2により冷却されて鋳型2との接触面で凝固して凝固シェル10を形成し、外殻を凝固シェル10とし内部を未凝固部11とする鋳片はガイドロール及びピンチロールなどの鋳片支持ロール8に支持されながら、ピンチロールの駆動力によって鋳型2の下方へ引き抜かれる。溶鋼湯面12の位置制御は、湯面レベル計5、制御装置6、アクチュエータ7、スライディングノズル3からなる湯面レベル制御装置により実施する。
【0032】
この場合、使用するモールドパウダー13としては、塩基度(CaO/SiO2 )が0.85〜1.00の範囲内であるモールドパウダーを使用することが好ましい。ここで、塩基度(CaO/SiO2)が0.85〜1.00の範囲内であるモールドパウダー13を使用する理由を説明する。
【0033】
溶鋼湯面12に添加されたモールドパウダー13は未凝固部11からの熱によって溶融し、溶融したモールドパウダーは凝固シェル10と鋳型長辺2aとの間隙に流入する。同様に、凝固シェル10と鋳型短辺2bとの間隙にも流入する。従って、凝固シェル10は、流入したモールドパウダー13の薄膜層を介して鋳型2に冷却されることになる。この間隙に流入したモールドパウダーは鋳型2により冷却されて、鋳型壁面と接触する側は固化し、凝固シェル10と接触する側は溶融状態を保つ。溶融したモールドパウダーは固化する際に、ガラス状のまま固化する場合と結晶化して固化する場合の2種類の状態で固化することが知られており、そして、結晶化する場合には、ガラス状のまま固化する場合に比べて、輻射熱として抜熱される熱量が少なくなり、冷却が緩冷却化して均一な冷却になることが知られている。
【0034】
図6は、モールドパウダーの塩基度(CaO/SiO2 )と固化後のカスピダインの含有量との関係を示す図であり、塩基度(CaO/SiO2 )が高くなるほどカスピダインの含有量は高くなる。ここで、カスピダインの含有率が高くなるほど結晶化度は高くなることが知られている。つまり、モールドパウダーの塩基度(CaO/SiO2)が高くなるほど緩冷却となり、鋳型内の冷却は均一化する。
【0035】
そこで、この事象に基づき、モールドパウダー13の塩基度(CaO/SiO2 )を変更し、その時のバルジング性湯面変動との関係を試験調査した。その結果、塩基度(CaO/SiO2)が0.78のモールドパウダーを使用した場合にはバルジング性湯面変動が高い頻度で発生したが、塩基度(CaO/SiO2)が0.85のモールドパウダーを使用した場合にはバルジング性湯面変動は大幅に低減することが分かった。
【0036】
即ち、この試験結果から、バルジング性湯面変動を低減するためには、塩基度(CaO/SiO2 )が0.85以上のモールドパウダーを使用することが好ましいことが分かった。但し、モールドパウダー13は、冷却効率を左右する機能以外に潤滑機能などの他の重要な機能を果たす必要があり、塩基度(CaO/SiO2)を高くし過ぎると、高速鋳造の場合には、潤滑機能などの他の機能を損なうことが判明したので、塩基度(CaO/SiO2 )の上限値を1.00とした。本発明者等は、モールドパウダー13の塩基度(CaO/SiO2)が1.00以下であれば、モールドパウダーの他の機能を損なうことがないことを確認している。
【0037】
また、定常鋳造域における鋳造速度は、連続鋳造機の生産性を向上させる観点から、1.5m/分以上、望ましくは2.0m/分以上とすることが好ましい。また、低速鋳造の場合には、凝固シェル10の厚みが十分に厚くなってバルジング量が少なくなることから、バルジング性湯面変動の発生頻度が必然的に低くなる。このことからも、鋳造速度が1.5m/分以上の場合に、本発明を適用することが好ましい。鋳造速度が高速になるほどバルジング性湯面変動が激しくなることから、特に2.0m/分以上の高速鋳造において本発明の効果が顕著になる。鋳造速度の上限は特に規定する必要はないが、スラブ連続鋳造機における現在の最高速度は3.5m/分程度であり、この程度の鋳造速度においても、本発明の効果を発揮することができる。
【0038】
このようにして溶鋼9を連続鋳造することで、鋳型内の冷却が均一化されて均一な厚みの凝固シェル10が得られ、凝固シェル10のロール間における非定常バルジングが抑制され、非定常バルジングに起因して発生する鋳型内のバルジング性湯面変動を抑制することが可能となる。その結果、モールドパウダーの巻き込みのない高品質の鋳片を高生産性で安定して製造することが達成される。
【実施例1】
【0039】
以下、図3に示すスラブ連続鋳造機における本発明例を従来例とともに説明する。用いた連続鋳造機は、機長が42m、垂直部が2.5mである垂直曲げ型スラブ連続鋳造機であり、厚みが238mm、幅が1250mmである低炭素Alキルド鋼のスラブ鋳片を2.2m/分の鋳造速度で鋳造した。
【0040】
塩基度(CaO/SiO2 )が0.78のモールドパウダーを使用して、鋳型短辺のテーパー量(ΔT)を1.1%(本発明例1)及び1.2%(本発明例2)として鋳造した。また、鋳型短辺のテーパー量(ΔT)が1.1%の場合には、塩基度(CaO/SiO2)が0.86のモールドパウダーも使用(本発明例3)した。また、比較のために、鋳型長辺のテーパー量(ΔT)を1.0%として、塩基度(CaO/SiO2)が0.78のモールドパウダーを使用した鋳造(従来例)も実施した。
【0041】
鋳造中、湯面レベル計によって湯面変動を計測し、湯面変動量が10mm以上のバルジング性湯面変動が発生した鋳造期間の全鋳造期間に対する百分率を「湯面変動異常発生率」と定義して評価した。表1に、鋳造条件及び湯面変動異常発生率の調査結果を示す。
【0042】
【表1】


【0043】
表1に示すように、本発明例における湯面変動異常発生率は従来例の2/3以下になり、特に、塩基度の高いモールドパウダーを使用した本発明例3の場合には、1/3程度になることが分かった。即ち、本発明によって凝固シェルの非定常バルジングに起因して発生する鋳型内のバルジング性湯面変動が抑制され、モールドパウダーの巻き込みのない高品質の鋳片を高生産性で安定して製造できることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】鋼の連続鋳造における鋳型内湯面変動及び鋳造速度の例を示す図である。
【図2】凝固シェルのバルジングと湯面変動との関係を模式的に示す図である。
【図3】本発明で用いたスラブ連続鋳造機の鋳型周辺部の側面概略図である。
【図4】図3に示す鋳型の概略斜視図である。
【図5】鋳型短辺のテーパー量と鋳型長辺の抜熱量との関係を示す図である。
【図6】モールドパウダーの塩基度とカスピダイン含有量との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 タンディッシュ
2 鋳型
2a 鋳型長辺
2b 鋳型短辺
3 スライディングノズル
4 浸漬ノズル
5 湯面レベル計
6 制御装置
7 アクチュエータ
8 鋳片支持ロール
9 溶鋼
10 凝固シェル
11 未凝固部
12 溶鋼湯面
13 モールドパウダー




 

 


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