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発明の名称 ラインパイプ向け低YR電縫鋼管の製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−98397(P2007−98397A)
公開日 平成19年4月19日(2007.4.19)
出願番号 特願2005−287345(P2005−287345)
出願日 平成17年9月30日(2005.9.30)
代理人 【識別番号】100099531
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 英一
発明者 横山 泰康 / 長濱 拓也 / 岡部 能知 / 剣持 一仁 / 小出 竜男 / 江木 基明
要約 課題
ラインパイプ向けの低YR電縫鋼管を、設備の追加や生産能率の低下を伴わずして製造しうる方法を提供する。

解決手段
帯鋼20をレベラー2で入側矯正後、略円筒状のオープン管に連続成形し、該オープン管の円周方向端部同士を電縫溶接してなる鋼管30を回転矯正機10で回転矯正するにあたり、帯鋼をC:0.1%以下、Mn:1.8%以下の鋼組成とし、入側矯正で板厚方向平均歪み0.2〜7.0%、並びに、回転矯正で繰返し曲げ‐曲げ戻しによる管厚方向平均歪み0.2〜7.0%及び/又は管長方向圧縮歪み0.2〜7.0%を付与する。
特許請求の範囲
【請求項1】
帯鋼を連続的に送りつつ、入側矯正を施した後、略円筒状のオープン管に成形し、該オープン管の円周方向端部同士を電縫溶接して得た管に、回転矯正を施して外形寸法形状を整える電縫鋼管の製造方法において、前記帯鋼の組成を下記組成(1)〜(6)の何れかとし、前記入側矯正にて板厚方向平均で7.0%以下の歪みを付与し、かつ前記回転矯正にて管長方向に0.2〜7.0%の圧縮歪みを付与することを特徴とするラインパイプ向け低YR電縫鋼管の製造方法。

組成(1):質量%で、C:0.1%以下、Mn:1.8%以下を含有し、残部実質的にFeからなる組成。
組成(2):組成(1)において、Feの一部に代えて、質量%で、Si:0.01〜0.5%、P:0.01%以下、S:0.01%以下、Al:0.1%以下を含有するとし、かつ次式で示される炭素当量(Ceq.)が0.44%未満になる組成。
Ceq.=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
但し、右辺の元素記号項は同号元素の鋼中成分含有量(質量%)であり、含有されない成分元素の項は無視する。
組成(3):組成(1)又は(2)において、Feの一部に代えて、質量%で、Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下の中から選ばれる1種又は2種を含有するとした組成。
組成(4):組成(1)〜(3)の何れかにおいて、Feの一部に代えて、質量%で、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下の中から選ばれる1種又は2種を含有するとした組成。
組成(5):組成(1)〜(4)の何れかにおいて、Feの一部に代えて、質量%で、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下の中から選ばれる1種又は2種以上を含有するとした組成。
組成(6):組成(1)〜(5)の何れかにおいて、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.005%以下を含有するとした組成。
【請求項2】
帯鋼を連続的に送りつつ、入側矯正を施した後、略円筒状のオープン管に成形し、該オープン管の円周方向端部同士を電縫溶接して得た管に、回転矯正を施して外形寸法形状を整える電縫鋼管の製造方法において、前記帯鋼の組成を請求項1記載の組成(1)〜(6)の何れかとし、前記入側矯正にて板厚方向平均で7.0%以下の歪みを付与し、かつ前記回転矯正にて管厚方向に0.2〜7.0%の繰返し曲げ歪みを付与することを特徴とするラインパイプ向け低YR電縫鋼管の製造方法。
【請求項3】
帯鋼を連続的に送りつつ、入側矯正を施した後、略円筒状のオープン管に成形し、該オープン管の円周方向端部同士を電縫溶接して得た管に、回転矯正を施して外形寸法形状を整える電縫鋼管の製造方法において、前記帯鋼の組成を請求項1記載の組成(1)〜(6)の何れかとし、前記入側矯正にて板厚方向平均で7.0%以下の歪みを付与し、かつ前記回転矯正にて管長方向に0.2〜7.0%の圧縮歪みを付与すると共に管厚方向に0.2〜7.0%の繰返し曲げ歪みを付与することを特徴とするラインパイプ向け低YR電縫鋼管の製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラインパイプ向け低YR電縫鋼管の製造方法に関し、詳しくは、パイプラインとして敷設される際に座屈が発生し難く、敷設後において耐震性に優れるラインパイプ向け低YR電縫鋼管の製造方法に関する。
ここで、YRは降伏比であり、これは、引張試験により測定された降伏強さ(YS)の対引張強さ(TS)比(=YS/TS)で定義される。但しYSは、下降伏点応力(LYS)、オフセット法による0.2%耐力(0.2%PS)、アンダーロード法(全伸び法)による0.5%耐力(0.5%PS)の中の何れか1種であり、特にパイプの場合、前記引張試験は、API,JIS,ASTM等の鋼管に関する各種工業規格に定められる管長(パイプの長手(L))方向の全厚試験片を用いて行うものである。又、本発明にいう、「低YR電縫鋼管」とは、製品の全周、全長の何れの位置においても、YRが0.90以下(百分率表示では90%以下)である電縫鋼管を意味する。
【背景技術】
【0002】
敷設時に曲げ、曲げ戻しされるリールバージ向けのラインパイプには、従来、品質、強度の面からシームレス鋼管が多用されてきたが、近年品質および強度の問題が解消され、コストダウンを図る意味から電縫鋼管を使用する試みがなされるようになった。こういったリールバージ向けの電縫鋼管では、敷設する場合の曲げ歪みによる局部座屈発生と、これを起点とするパイプの破壊が問題となっている。またΦ200mmを超えるサイズの電縫鋼管は、リールバージ向け以外にも、UOE鋼管の代替として広く用いられるようになっており、敷設後の地震等の地盤変動による歪みで局部座屈が発生し、これを起点としてパイプが破断することが近年問題となっている。
【0003】
そこで、局部座屈による破断を防止するためのパイプの材質設計として、L方向引張特性におけるYRを下げることが要求されてきており、近年ではYR≦90%を満足することが必要となっている。
然し、電縫鋼管は、その造管成形段階においてL方向への引張歪が付与されるため、L方向YRは高くなる傾向にある。特に近年では対サワー性能の一層の向上が要求されているため、過去の電縫鋼管と比較して低C系の組成となり、素材段階のYRが著しく高く(80%以上)、その結果、造管後のYR≦90%を満足することが困難となりつつある。
【0004】
尚、ラインパイプ向けの低YR鋼管では、例えばリールバージ向けに、実質的に炭素量を0.1%以上とする方法が知られている(例えば特許文献1)。一方、UOE鋼管では、溶接後の拡管によりL方向の圧縮歪みを付与して低YR化する手法が用いられている(例えば特許文献2)。
【特許文献1】特開平3−211255号公報
【特許文献2】特開平10−310821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
然しながら、特許文献1記載の技術では、成分調整により電縫溶接部の特性を向上させているものの、近年顧客から要求のある優れた耐サワー性については考慮されていない。又その実施例に示される引張特性は、円周溶接部を含む溶接継手引張試験の結果であり、母材の引張特性とは異なるものであるため、参考にならない。
一方、一般に拡管を行わない電縫鋼管製造にUOE鋼管製造における拡管工程を適用しようとするのは、拡管設備の追加を要することに加え、拡管工程は造管成形後に1本毎に行うバッチ処理であり、又熱処理が必要な場合もあるため、電縫鋼管のような高速溶接による製造では著しい生産能率の低下に繋がるという難点がある。
【0006】
本発明は、かかる状況に鑑み、ラインパイプ向けの低YR電縫鋼管を、設備の追加や生産能率の低下を伴わずして製造しうる、ラインパイプ向け低YR電縫鋼管の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的達成のために、発明者らは、造管成形後のラインパイプ向け電縫鋼管を低YR化する観点から、造管成形前に行われる入側矯正工程における矯正条件、及び、造管成形‐電縫溶接後に適宜行われる回転矯正工程における矯正処理条件について鋭意検討した。その結果、耐サワー性の確保に適合するよう成分設計した組成の素材を用い、前記入側矯正工程において、歪みを付与してバウシンガー効果を発現させると共に、前記回転矯正工程において、管厚方向に繰り返し曲げ歪若しくは管長手方向に圧縮歪を付与してバウシンガー効果を発現させることにより、優れた耐サワー性具有と造管成形後の低YR化とが一挙に達成できることを見出した。
【0008】
更に具体的には、耐サワー性確保のため素材を低C系の特定の鋼組成のものとし、入側矯正で付与する歪みを、板厚(帯鋼の厚さ)方向平均歪みで7.0%とし、且つ電縫溶接後の回転矯正で付与する歪みを、管長方向圧縮歪みで0.2〜7.0%若しくは管の曲げ‐曲げ戻しによる管厚方向平均歪みで0.2〜7.0%として、これらを組合わせた条件とすることで、その効果を最大限に活用し得るという知見を得た。
【0009】
上記のような造管成形前の入側矯正と電縫溶接後の回転矯正により適切な歪みを付与されたラインパイプ向け電縫鋼管は、造管後の全周、全長の何れの位置においても、API、JIS、ASTM等の鋼管に関する各種工業規格に定められる管長手方向を引張方向とする全厚試験片を用いて引張試験を実施した際のYRを90%以下とすることができる。
本発明は、上記知見に基づいて成されたものであり、その要旨は次の通りである。
【0010】
[請求項1] 帯鋼を連続的に送りつつ、入側矯正を施した後、略円筒状のオープン管に成形し、該オープン管の円周方向端部同士を電縫溶接して得た管に、回転矯正を施して外形寸法形状を整える電縫鋼管の製造方法において、前記帯鋼の組成を下記組成(1)〜(6)の何れかとし、前記入側矯正にて板厚方向平均で7.0%以下の歪みを付与し、かつ前記回転矯正にて管長方向に0.2〜7.0%の圧縮歪みを付与することを特徴とするラインパイプ向け低YR電縫鋼管の製造方法。
【0011】

組成(1):質量%で、C:0.1%以下、Mn:1.8%以下を含有し、残部実質的にFeからなる組成。
組成(2):組成(1)において、Feの一部に代えて、質量%で、Si:0.01〜0.5%、P:0.01%以下、S:0.01%以下、Al:0.1%以下を含有するとし、かつ次式で示される炭素当量(Ceq.)が0.44%未満になる組成。
【0012】
Ceq.=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
但し、右辺の元素記号項は同号元素の鋼中成分含有量(質量%)であり、含有されない成分元素の項は無視する。
組成(3):組成(1)又は(2)において、Feの一部に代えて、質量%で、Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下の中から選ばれる1種又は2種を含有するとした組成。
組成(4):組成(1)〜(3)の何れかにおいて、Feの一部に代えて、質量%で、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下の中から選ばれる1種又は2種を含有するとした組成。
組成(5):組成(1)〜(4)の何れかにおいて、Feの一部に代えて、質量%で、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下の中から選ばれる1種又は2種以上を含有するとした組成。
組成(6):組成(1)〜(5)の何れかにおいて、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.005%以下を含有するとした組成。
【0013】
[請求項2] 帯鋼を連続的に送りつつ、入側矯正を施した後、略円筒状のオープン管に成形し、該オープン管の円周方向端部同士を電縫溶接して得た管に、回転矯正を施して外形寸法形状を整える電縫鋼管の製造方法において、前記帯鋼の組成を請求項1記載の組成(1)〜(6)の何れかとし、前記入側矯正にて板厚方向平均で7.0%以下の歪みを付与し、かつ前記回転矯正にて管厚方向に0.2〜7.0%の繰返し曲げ歪みを付与することを特徴とするラインパイプ向け低YR電縫鋼管の製造方法。
【0014】
[請求項3] 帯鋼を連続的に送りつつ、入側矯正を施した後、略円筒状のオープン管に成形し、該オープン管の円周方向端部同士を電縫溶接して得た管に、回転矯正を施して外形寸法形状を整える電縫鋼管の製造方法において、前記帯鋼の組成を請求項1記載の組成(1)〜(6)の何れかとし、前記入側矯正にて板厚方向平均で7.0%以下の歪みを付与し、かつ前記回転矯正にて管長方向に0.2〜7.0%の圧縮歪みを付与すると共に管厚方向に0.2〜7.0%の繰返し曲げ歪みを付与することを特徴とするラインパイプ向け低YR電縫鋼管の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、素材組成と、入側矯正条件及び回転矯正条件とを適正に組合せたことにより、設備追加を要さず生産能率の低下も伴わずに、ラインパイプ向け低YR電縫鋼管を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明のラインパイプ向け低YR電縫鋼管の製造方法について詳しく説明する。
本発明は、例えば、図1に示すような造管設備、及び図2に示すような回転矯正機10を用いて実施される。図1の造管設備は、アンコイラー1から払出した帯鋼(素材)20を通材方向40に沿って連続的に送りながら、レベラー(入側矯正機)2で入側矯正(平坦化)した後、ブレイクダウンロール3、ケージロール4、フィンパスロール5により、徐々に素材幅を丸めていって、オープン管に成形し、引続きオープン管の周方向両端を電縫溶接機6で電縫溶接して鋼管30となし、その後内外面ビード切削機7で内外面のビードを切削した後、必要に応じてサイジングロール8で鋼管30の外径を調整し(尚、このサイジングによる外径調整は、必須ではない)、更に切断機9で所定の長さに切断するよう構成されている。図2の回転矯正機10は、回転矯正ロール11を上下にクロス配置したロールスタンドを複数タンデムに配列し、上下の回転矯正ロール11間に鋼管を通して回転矯正を行うように構成されている。尚、12は回転矯正ロール11のロール回転方向である。
【0017】
まず、入側矯正条件について説明する。造管成形前の入側矯正機で曲げ‐曲げ戻しの繰り返し歪みを付与することにより、成形前の素材にバウシンガー効果が発現し、素材のYRは低減される。従来、成形前に付与された歪みによるバウシンガー効果は、造管後には成形歪により相殺され、その効果は残らないとされていたが、発明者らの詳細な検討により、造管成形前の歪み付与によるバウシンガー効果は、造管後においても残存することが確認された。従って、入側矯正により曲げ‐曲げ戻しの繰り返し歪みを付与してバウシンガー効果を発現させることにより、低YRを示す電縫鋼管を製造できる。歪の付与量は、板厚方向平均で7.0%を超える場合、加工硬化の影響が顕著に現れ、バウシンガー効果が発現しないため、板厚方向平均で7.0%以下とする必要がある。尚、好ましくは、0.05〜7.0%である。
【0018】
次に、回転矯正条件について説明する。回転矯正機では、従来より造管電縫溶接後の鋼管の寸法精度を向上させるため、各ロールスタンド間での縮径、曲げ‐曲げ戻しによる曲がり矯正を行っているが、その目的には鋼管の材質制御は含まれていなかった。然し、造管電縫溶接後、回転矯正機で繰り返し曲げ歪みを付与した場合、バウシンガー効果により、管長方向の引張試験におけるYRの低減が発生する。又、管長方向の圧縮歪みを付与することで、バウシンガー効果による管長方向の引張試験におけるYRの低減が発生する。繰り返し曲げ歪み量は、0.2%以上あればYRを低減させるのに十分であり、7.0%を超えた場合には、加工硬化によりその効果が相殺されるため、0.2%以上7.0%以下とすることが重要である。又、管長方向の圧縮歪み量は、0.2%以上であればYRを低減させるのに十分であり、7.0%を超えた場合加工硬化によりバウシンガー効果が相殺されるため、0.2%以上7.0%以下とすることが必要である。繰り返し曲げ歪み、管長方向の圧縮歪みの付与は、各々単独で実施した場合も、組合わせて実施した場合も同様にYR低減の効果が得られる。尚、管長方向の圧縮歪みの付与する手法には、ロールスタンド入側の送り速度を出側の送り速度よりも速くする方法、管長方向の長さを短くする方法、管長方向の長さを変化させずに縮径する方法等があるが、何れの手法を用いても構わない。
【0019】
尚、管厚方向平均歪又は管長方向圧縮歪を目標値に制御するに必要な、これら制御量と前記操作因子の設定操作量との定量的関係は、管の弾塑性変形理論に基いて適宜のモデル式を作成し、これを実験により検証したものを用いて決定することができる。
次に、素材の組成(化学成分)の限定理由を説明する。尚、化学成分含有量の単位には質量%を用いるが、以下では%と略記する。本発明か対象とするラインパイプ向け電縫鋼管は、種々の敷設環境での使用に耐えることを前提とし、特に近年顧客からの要求に応えるために、優れた耐サワー性を有する必要がある。従って本発明に係る素材組成は、耐サワー性適応組成を基本として成分設計された。
【0020】
Cは0.1%以下とする。Cは炭化物として析出強化に寄与する元素であるが、0.1%を超えるとパーライト、ベイナイト、マルテンサイト等の第二相の組織分率が増加し、ラインパイプとして必要な優れた耐サワー性を確保できなくなる。このため、Cは0.1%以下に限定した。尚、好ましくは0.02〜0.1%、より好ましくは0.02〜0.07%である。
Mnは1.8%以下とする。Mnは強度、靭性を確保するため添加するが、0.6%未満ではその効果が十分でなく、1.8%を超えると第二相分率が増加し、ラインパイプとして必要な優れた耐サワー性を確保できない。このため、Mnは1.8%以下に限定した。尚、好ましくは0.6〜1.8%、より好ましくは0.8〜1.6%である。
【0021】
上記以外の残部は実質的にFeからなる。残部が実質的にFeからなるとは、本発明の作用効果を無くさない限り、不可避的不純物をはじめ、他の微量添加元素を含有するものが本発明の範囲に含まれることを意味する。不可避的不純物の含有量は合計で0.05%以下であることが好ましい。他の微量添加元素の含有量は合計で5%以下であることが好ましい。
又、本発明では、Feの一部に代えて、Si、P、S、Alを以下の範囲で含有することができ、その場合、炭素当量(Ceq.)を以下の範囲とすることが好ましい。
【0022】
Siは0.01〜0.5%が好ましい。Siは脱酸のため添加するが、0.01%未満では脱酸効果が十分でなく、0.5%を超えると電縫溶接性を劣化させるため、Si含有量を0.01〜0.5%に規制するのが好ましい。
Pは0.01%以下が好ましい。Pは電縫溶接性を劣化させる元素であるため、P含有量の上限を0.01%に規制するのが好ましい。
【0023】
Sは0.01%以下が好ましい。Sは一般的に鋼中においてはMnS介在物となり、水素誘起割れ(HIC)の起点となるため少ないほどよい。然し、0.01%以下であれば問題ないため、S含有量の上限を0.01%に規制するのが好ましい。
Alは0.1%以下が好ましい。Alは脱酸剤として添加されるが、0.1%を超えると鋼の清浄度が低下し、靭性を劣化させるため、Al含有量は0.1%以下に規制するのが好ましい。
【0024】
炭素当量(Ceq.)は0.44%未満が好ましい。Ceq.は斜めy型ルート割れ試験を実施して、割れの発生しない限界の合金添加量を示した量であるが、0.44%未満であれば実際の電縫鋼管の各種溶接施工において割れ等の欠陥が生じ難いため、この範囲に規制するのが好ましい。尚、Ceq.は、式:Ceq.=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14、で表される。但し、右辺の元素記号項は同号元素の鋼中成分含有量(質量%)であり、含有されない成分元素の項は無視する。
【0025】
更に、本発明では、ラインパイプ向け電縫鋼管の強度や降伏比、靭性を更に改善する目的で、組成中のFeの一部に代えて、以下の(I)〜(IV)群のうちの何れか1群又は2群以上を選択添加し含有させることができる。
(I) Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下の内から選ばれた1種又は2種。
(II) Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下の内から選ばれた1種または2種。
(III) Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下の内から選ばれた1種又は2種以上。
(IV) Ca:0.005%以下。
【0026】
Cuは0.5%以下が好ましい。Cuは靭性の改善と強度の上昇に有効な元素であるが、多く添加すると溶接性が劣化するため、添加する場合は0.5%を上限とする。より好ましくは0.05〜0.5%である。
Niは0.5%以下が好ましい。Niは靭性の改善と強度の上昇に有効な元素であるが、多く添加すると硬化第二相が生成しやすくなり、耐サワー性の低下に繋がるため、添加する場合は0.5%を上限とする。より好ましくは0.05〜0.5%である。
【0027】
Crは0.5%以下が好ましい。CrはMnと同様に低Cでも十分な強度を得るために有効な元素であるが、多く添加すると第二相が生成しやすくなり耐サワー性を低下させるため、添加する場合は0.5%を上限とする。より好ましくは0.05〜0.5%である。
Moは0.5%以下が好ましい。MoはMn、Crと同様に低Cでも十分な強度を得るために有効な元素であるが、多く添加すると第二相が生成しやすくなり耐サワー性を低下させるため、添加する場合は0.5%を上限とする。より好ましくは0.05〜0.5%である。
【0028】
Nbは0.1%以下が好ましい。Nbは炭窒化物の微細析出と組織の微細粒化により強度と靭性を向上させる。然し、0.1%を超えると硬化した第二相が増加しやすくなり、耐サワー性が著しく劣化するため、添加する場合は0.1%以下に規制する。より好ましくは0.01〜0.1%である。
Vは0.1%以下が好ましい。VはNbと同様に炭窒化物の微細析出により強度上昇に寄与する。然し、0.1%を超えるとNbと同様に硬化した第二相分率が増加し、耐サワー性が著しく劣化するため、添加する場合は0.1%以下に規制する。より好ましくは0.05〜0.1%である。
【0029】
Tiは0.1%以下が好ましい。TiもNb、Vと同様に炭窒化物の微細析出により強度上昇に寄与する。然し、0.1%を超えるとNbと同様に硬化した第二相分率が増加し、耐サワー性が著しく劣化するため、添加する場合は0.1%以下に規制する。より好ましくは0.05〜0.1%である。
Caは0.005%以下が好ましい。Caは、水素誘起割れの起点となり易い伸長したMnSの形態制御に必要な元素である。然し、0.005%を超えて添加すると過剰なCa酸化物、硫化物が生成し、靭性劣化に繋がるため、添加する場合は0.005%以下に規制する。より好ましくは0.002〜0.005%である。
【実施例】
【0030】
表1に示す組成になる鋼種の鋼片を熱間圧延してコイル状に巻き取ってなる、表1に示す板厚、YS、TS、YRを有する帯鋼を、図1の造管設備にて連続的に払出しつつ、レベラーにて、表2中の何れかの条件で入側矯正し、引続き、造管成形‐電縫溶接‐内外面ビード切削‐サイジング‐切断し、得られた鋼管に、図2の回転矯正機にて、表3中の何れかの条件で回転矯正を施し、外径20インチ(508mmφ)のX65電縫鋼管を製造した。尚、本実施例ではサイジングを行ったが、本発明ではサイジングは必須ではなく、必要に応じて適宜行えばよい。
【0031】
【表1】


【0032】
【表2】


【0033】
【表3】


【0034】
得られた電縫鋼管(製品)の溶接シーム部から円周方向に180度離れた位置から試験方向がL方向になるように採取したJIS5号全厚引張試験片を用い、JIS Z 2241の規定に準拠した引張試験を行ってYS(LYS若しくは0.2%PS)、TSを測定し、YRを算出した。そして、製造上のばらつきを考慮して、製品のYRが88%以下のものを低降伏比性に優れる点で合格(○)、残りを不合格(×)と評価した。
【0035】
又、製品から採取した腐食試験片(サイズ:20W×全厚×100L[mm])を用い、NACE Standard TM0284の規定に準拠したHIC試験を行い、浸漬終了後同規定に準拠して試験片を切断し研摩し、割れ長さを測定し、割れ長さ比(CLR)を求めた。そしてCLRが10%以下のものを耐サワー性に優れる点で合格(○)、残りを不合格(×)と評価した。
更に、低降伏比性、耐サワー性の総合評価として、これら双方が合格であるものを○、残りを×とした。得られた結果を表4に示す。
【0036】
【表4】


【0037】
表4より、C含有量が請求範囲外である鋼種Aでは、組織がフェライト‐ベイナイト系で、降伏比は低いものの、何れの条件においても耐サワー性を満足しない。Mn或いはNb含有量が請求範囲外である鋼種B、Cでは、耐サワー性を満足しないだけでなく、降伏比も高く、何れの入側矯正、回転矯正条件の組合せにおいても造管後のYR≦88%を満足しない。
組成が請求範囲内である鋼種D,E,F,G,H,I,Jの場合、耐サワー性では何れも合格である。然しながら、矯正を実施していない条件、入側矯正による板厚方向平均歪みが0.2%未満若しくは7.0%超の条件、回転矯正による圧縮歪みが0.2%未満若しくは7.0%超の条件では、造管後のYR≦88%を満足できない。
【0038】
一方、入側矯正による板厚方向平均歪み付与量が0.2%以上7.0%以下で且つ回転矯正による管長方向の圧縮歪みが0.2%以上7.0%以下の条件、又は、入側矯正による板厚方向平均歪み付与量が0.2%以上7.0%以下で且つ回転矯正による繰返し曲げ歪み量が0.2%以上7.0%以下の条件、又は、入側矯正による板厚方向平均歪み付与量が0.2%以上7.0%以下で且つ回転矯正による0.2%以上7.0%以下の繰返し曲げ歪みと管長方向の0.2%以上7.0%以下の圧縮歪みを付与した条件では、YR≦88%の優れた特性を示している。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に好ましく用い得る造管設備の1例を示す概略図である。
【図2】本発明に好ましく用い得る回転矯正機の1例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0040】
1 アンコイラー
2 レベラー(入側矯正機)
3 ブレイクダウンロール
4 ケージロール
5 フィンパスロール
6 電縫溶接機
7 内外面ビード切削機
8 サイジングロール
9 切断機
10 回転矯正機
11 回転矯正ロール
12 ロール回転方向
20 帯鋼(素材)
30 鋼管
40 通材方向




 

 


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