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発明の名称 高圧縮性鉄粉、およびそれを用いた圧粉磁芯用鉄粉と圧粉磁芯
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−92162(P2007−92162A)
公開日 平成19年4月12日(2007.4.12)
出願番号 特願2006−3144(P2006−3144)
出願日 平成18年1月11日(2006.1.11)
代理人 【識別番号】100099531
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 英一
発明者 前谷 敏夫 / 上ノ薗 聡 / 植田 正輝
要約 課題
磁気特性に優れた部品や高密度焼結部品に用いて好適な、高圧縮性を有する鉄粉を提供する。

解決手段
不純物として、質量%で、C:0.005%以下,Si:0.01%超0.03%以下,Mn:0.03%以上0.07%以下,P:0.01%以下,S:0.01%以下,O:0.10%以下,N:0.001%以下を含み、鉄粉粒子が、平均で4個以下の結晶粒数と、マイクロビッカース硬さHVで平均で80以下の硬さを有する純鉄粉とする。また、鉄粉粒子が、大きさ:50nm以上のSiを含む介在物を、Siを含む介在物全個数に対する個数比率で70%以上含むことが好ましい。また、鉄粉の円形度を0.7以上とすることが好ましい。これにより、鉄粉の圧縮性が向上し、高密度の成形体が得られ、高強度の焼結部品、あるいは優れた磁気特性を有する圧粉磁芯等の部品が、低コストで製造可能となる。
特許請求の範囲
【請求項1】
不純物として、質量%で、C:0.005%以下、Si:0.01%超0.03%以下、Mn:0.03%以上0.07%以下、P:0.01%以下、S:0.01%以下、O:0.10%以下、N:0.001%以下を含む鉄粉であって、該鉄粉の粒子が、平均で4個以下の結晶粒数と、マイクロビッカース硬さHVで平均で80以下の硬さを有することを特徴とする高圧縮性鉄粉。
【請求項2】
前記鉄粉の粒子が、大きさ:50nm以上のSiを含む介在物を、Siを含む介在物全個数に対する個数比率で70%以上含むことを特徴とする請求項1に記載の高圧縮性鉄粉。
【請求項3】
前記鉄粉の円形度が0.7以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高圧縮性鉄粉。
【請求項4】
前記鉄粉が、水アトマイズ製であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の高圧縮性鉄粉。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の高圧縮性鉄粉に、絶縁被覆処理を施してなる圧粉磁芯用鉄粉。
【請求項6】
請求項5に記載の圧粉磁芯用鉄粉を加圧成形してなる圧粉磁芯。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末冶金用鉄粉に係り、とくに高い磁気特性が要求される部品用、あるいは高密度が要求される部品用として好適な高圧縮性鉄粉、およびそれを用いた圧粉磁芯用鉄粉と圧粉磁芯に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末冶金技術の進歩により、高寸法精度の複雑な形状の部品をニアネット形状に製造することができるようになり、粉末冶金技術を利用した製品が各種分野で利用されている。
粉末冶金技術では、金属粉末に、必要に応じて潤滑剤粉末や合金用粉末を混合したのち、金型で加圧成形して成形体として、ついで、焼結さらには熱処理を行って、所望の寸法形状、特性を有する焼結部品としている。また粉末冶金技術では、金属粉末に、樹脂等の結合剤を混合したのち、金型で加圧成形して成形体とし、部品とする場合もある。
【0003】
このような粉末冶金技術を利用して、優れた磁気特性や、高強度を有する部品を製造する場合には、一定の成形圧力で加圧成形した際に高密度の成形体が得られるように、使用する金属粉末(鉄粉)には高圧縮性を具備することが要求されている。
このような要求に対し、例えば特許文献1には、不純物含有量が、C:0.005%以下,Si:0.010%以下,Mn:0.050%以下,P:0.010%以下,S:0.010%以下,O:0.10%以下,N:0.0020%以下で残部が実質的にFeおよび不可避的不純物からなり、粒度構成がJIS Z 8801に定める篩を用いた篩わけ重量比で、−60/+83メッシュが4%以下,−83/+100メッシュが4%以上10%以下,−100/+140メッシュが10%以上25%以下,330メッシュ通過分が10%以上30%以下であり、−60/+200メッシュの平均結晶粒径がJIS G 0052に規定されるフェライト結晶粒径測定法で6.0以下の粗大結晶粒である粉末冶金用純鉄粉が提案されている。なお、−60/+83メッシュは、60メッシュ(呼び寸法(公称目開き)が250μm)の篩を通過し、かつ83メッシュ(呼び寸法が165μm)の篩を通過しない粒度のものを意味する。特許文献1に記載された純鉄粉では、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を0.75%配合し、5t/cm2(490MPa)の成形圧力で金型成形したとき、7.05g/cm3(7.05Mg/m3)以上の圧粉密度が得られるとしている。
【0004】
また、特許文献2には、鉄粉の粒度分布(粒度構成)が、JIS Z 8801に定める篩を用いた篩わけ質量%で、呼び寸法が1mmの篩を通過し、かつ呼び寸法が250μmの篩を通過しない粒度のものが0%を超え45%以下,呼び寸法が250μmの篩を通過し、かつ呼び寸法が180μmの篩を通過しない粒度のものが30%以上65%以下,呼び寸法が180μmの篩を通過し、かつ呼び寸法が150μmの篩を通過しない粒度のものが4%以上20%以下,呼び寸法が150μmの篩を通過する粒度のものが0%以上10%以下,呼び寸法が150μmの篩を通過しない粒度の鉄粉のマイクロビッカース硬度の上限値が110以下である高圧縮性鉄粉が提案されている。なお、この高圧縮性鉄粉では、不純物含有量を、質量%でC:0.005%以下,Si:0.01%以下,Mn:0.05%以下,P:0.01%以下,S:0.01%以下,O:0.10%以下,N:0.003%以下とすることが好ましいとしている。特許文献2に記載された鉄粉によれば、鉄粉に、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を0.75%配合し、490MPaの成形圧力で金型成形したとき、7.20Mg/m3 以上の圧粉密度が得られるとしている。
【0005】
また、特許文献3には、切断面において、1個の粒子における結晶粒の数が平均10個以下である軟磁性純鉄粉あるいは軟磁性合金鉄粉が提案されている。特許文献3に記載された軟磁性純鉄粉あるいは軟磁性合金鉄粉を得るためには、非酸化性雰囲気で好ましくは900℃以上の高温に加熱することが必要とされている。このような純鉄粉あるいは合金鉄粉を使用し圧粉磁芯を製造することにより、圧粉磁芯の透磁率が向上するとしている。
【0006】
また、特許文献4には、軟磁性金属の単結晶からなる金属粉末粒子を利用した軟磁性成形体の製造方法が提案されている。特許文献4に記載された技術では、多結晶からなる軟磁性の原料粉末粒子を高温、好ましくは1100〜1350℃に加熱して単結晶化する工程を採用している。このような金属粉末を使用して成形体を製造することにより、成形体の最大透磁率が向上するとしている。
【特許文献1】特公平8-921 号公報
【特許文献2】特開2002−317204 号公報
【特許文献3】特開2002−121601 号公報
【特許文献4】特開2002−275505 号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された純鉄粉では、得られる圧粉体密度は、たかだか7.12g/cm3(7.12Mg/m3)程度までであり、圧縮性が不足し、磁芯等の磁性部品用として使用する場合には、所望の磁束密度や透磁率といった磁気特性が得られない場合があるという問題がある。また、特許文献2に記載された鉄粉は、鉄粉粒子の粒径が大きく、焼結した場合の強度低下が懸念され、また、鉄粉の純度が高いため精錬コストが高くなるという問題があった。
【0008】
また、特許文献3に記載された技術では、1個の金属粉末粒子内の結晶粒の数は少ないほうが好ましいとしているが、5個以下まで低減するためには、非酸化性雰囲気中で1000℃以上の高温の加熱温度で処理を行う必要がある。また特許文献4に記載された技術では、金属粉末粒子を単結晶化するために還元性雰囲気中で1100℃以上の加熱温度で処理を行う必要がある。特許文献3および特許文献4に記載された技術ではいずれも高温に加熱できる非酸化性雰囲気の加熱炉を必要とし、製造コストが高騰するという問題があった。さらにこのような高温で加熱した金属粉末は粒子同士が結合されていると考えられ、加熱後の粒子分離作業により、粒子に過剰の応力が加えられ、粒子内に残留する応力により、十分な圧縮性が得られないことが推察された。
【0009】
本発明は、このような従来技術の問題を有利に解決し、磁気特性に優れた部品や高密度焼結部品に用いて好適な、高圧縮性を有する鉄粉、およびそれを用いた圧粉磁芯用鉄粉と圧粉磁芯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従来、高圧縮性鉄粉を得るためには、鉄粉を高純度化することが必須と考えられてきた。これに対し、本発明者らは、鉄粉を高純度化することなく、従来から一般的に製造されている純度で上記した課題を達成するために、鉄粉粒子の硬さに及ぼす各種要因について鋭意検討した。
その結果、従来から一般的に製造されている純度の純鉄粉であっても、鉄粉粒子内の結晶粒数を4個以内に調整し、マイクロビッカース硬さHVを平均で80以下の硬さに調整すること、あるいはさらに鉄粉粒子内に含まれる50nm以上、好ましくは100nm以上の大きさの、シリコンを含む介在物の個数を、シリコンを含む介在物全個数に対する個数比率で70%以上となるように調整することにより、圧縮性に富む純鉄粉となることを新たに知見した。またさらに、鉄粉の円形度を0.7以上、好ましくは0.9以上とすることにより、鉄粉の圧縮性が更に向上することを知見した。
【0011】
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。
すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
(1)不純物として、質量%で、C:0.005%以下,Si:0.01%超0.03%以下,Mn:0.03%以上0.07%以下,P:0.01%以下,S:0.01%以下,O:0.10%以下,N: 0.001%以下を含む鉄粉であって、該鉄粉の粒子が、平均で4個以下の結晶粒数と、マイクロビッカース硬さHVで平均で80以下、好ましくは75以下の硬さを有することを特徴とする高圧縮性鉄粉。
【0012】
(2)(1)において、前記鉄粉の粒子が、大きさ:50nm以上のSiを含む介在物を、Siを含む介在物全個数に対する個数比率で70%以上含むことを特徴とする高圧縮性鉄粉。
(3)(1)又は(2)のいずれかにおいて、前記鉄粉の円形度が0.7以上、好ましくは0.9以上であることを特徴とする高圧縮性鉄粉。
(4)(1)乃至(3)のいずれかにおいて、前記鉄粉が、水アトマイズ製であることを特徴とする高圧縮性鉄粉。
【0013】
(5)(1)乃至(4)のいずれかに記載の高圧縮性鉄粉に、絶縁被覆処理を施してなる圧粉磁芯用鉄粉。
(6)(5)に記載の圧粉磁芯用鉄粉を加圧成形してなる圧粉磁芯。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高密度の成形体を安価にしかも安定して製造することが可能となり、高強度の焼結部品、あるいは優れた磁気特性を有する圧粉磁芯等の部品を、低コストで製造できるという産業上格段の効果を奏する。また、本発明の高圧縮性鉄粉は、一般的な粉末冶金用純鉄粉に含まれる不純物含有量と同等の純度の鉄粉であり、高純度化のための特別な精錬を必要とすることがなく、製造コストの高騰を懸念する必要がないという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の高圧縮性鉄粉は、鉄粉の粒子が、平均で4個以下の結晶粒数と、マイクロビッカース硬さHVで平均で80以下、好ましくは75以下の硬さを有する鉄粉である。なお、本発明でいう「高圧縮性」とは、鉄粉1000gに、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を0.75質量%配合しV型ミキサーで15min間混合したのち、686MPaの成形圧力で、11mmφ×10mmの円筒形状に常温で1回で成形し、7.24Mg/m3以上の成形密度の成形体が得られる場合をいうものとする。
【0016】
なお、本発明の鉄粉は、JIS Z 8801に定める篩を用いた篩わけ質量%で、呼び寸法(公称目開き)が180μmの篩を通過しない粒度のものが0%を超え5%以下,呼び寸法が180μmの篩を通過し、かつ呼び寸法が150μmの篩を通過しない粒度のものが3%以上10%以下,呼び寸法が150μmの篩を通過し、かつ呼び寸法が106μmの篩を通過しない粒度のものが10%以上25%以下,呼び寸法が106μmの篩を通過し、かつ呼び寸法が75μmの篩を通過しない粒度のものが20%以上30%以下,呼び寸法が75μmの篩を通過し、かつ呼び寸法が63μmの篩を通過しない粒度のものが10%以上20%以下,呼び寸法が63μmの篩を通過し、かつ呼び寸法が45μmの篩を通過しない粒度のものが15%以上30%以下,呼び寸法が45μmの篩を通過する粒度のものが15%以上30%以下、である粒度構成を有するものとする。この粒度構成は、表1に示す市販の粉末冶金用アトマイズ鉄粉の粒度構成と同等である。
【0017】
本発明では、鉄粉粒子内の結晶数は、平均で4個以下に限定する。鉄粉粒子内の結晶数を4個以下とすることにより、鉄粉の圧縮性が向上する。鉄粉粒子内の結晶数が4個を超えて多くなると、鉄粉の圧縮性が低下する。鉄粉粒子内の結晶数の増加は、結晶粒界の増加を意味する。結晶粒界は、転位の集積場で一種の格子欠陥であり、結晶粒界の増加は、鉄粉粒子の硬さを増加させ、鉄粉の圧縮性を低下させることに繋がる。このため、本発明では、鉄粉粒子の結晶粒数を平均で4個以下に限定した。
【0018】
なお、本発明でいう「鉄粉粒子の結晶粒数」は、つぎのように測定し算出した値である。
まず、被測定物である鉄粉を、熱可塑性樹脂粉に混合し混合粉としたのち、該混合粉を適当な型に装入後、加熱し樹脂を溶融させたのち冷却固化させ、鉄粉含有樹脂固形物とする。ついで、該鉄粉含有樹脂固形物を適当な断面で切断し、該切断した面を研磨し腐蝕したのち、光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡(400倍)を用いて鉄粉粒子の断面組織を観察及び/又は撮像し、鉄粉粒子内の結晶粒数を測定する。なお、観察及び/又は撮像する鉄粉粒子の数は30個とし、対象とした鉄粉粒子の結晶粒数を平均し、平均値をその鉄粉粒子の平均結晶粒数とする。結晶粒数の測定は撮像した組織写真を画像解析装置を用いて行うことが好ましい。
【0019】
鉄粉粒子内の結晶粒を模式的に図1に示す。図1からわかるように、鉄粉粒子には、粒界のみに囲まれた結晶粒1と、粒界と鉄粉粒子表面とで囲まれた結晶粒2の2種類が含まれている。
また、本発明の高圧縮性鉄粉は、不純物として、質量%で、C:0.005%以下,Si:0.01%超0.03%以下,Mn:0.03%以上0.07%以下,P:0.01%以下,S:0.01%以下,O:0.10%以下,N:0.001%以下に制限して含み、残部Feおよび不可避的不純物である組成を有する鉄粉である。
【0020】
Cが、0.005質量%を超えて多量に含有されると、鉄粉硬さが増加し鉄粉の圧縮性が低下する。このため、Cは0.005質量%以下に限定した。
また、Siが、0.01質量%以下では、耐火物の溶損やアトマイズ時のノズル詰まり等を発生しやすく、精錬コストが高騰する要因となる。一方、0.03質量%を超える含有は、鉄粉硬さが増加し鉄粉の圧縮性を低下させる。このため、Siは0.01質量%超0.03質量%以下に限定した。
【0021】
また、Mnが、0.03質量%未満では、耐火物の溶損やアトマイズ時のノズル詰まり等を発生しやすく、精錬コストが高騰する要因となる。一方、0.07質量%を超える含有は、鉄粉硬さが増加し鉄粉の圧縮性を低下させる。このため、Mnは0.03質量%以上0.07質量%以下に限定した。
また、Pが、0.01質量%を超えて多量に含有されると、鉄粉硬さが増加し鉄粉の圧縮性が低下する。このため、Pは0.01質量%以下に限定した。
【0022】
また、Sが、0.01質量%を超えて多量に含有されると、鉄粉硬さが増加し鉄粉の圧縮性が低下する。このため、Sは0.01質量%以下に限定した。
また、Oが、0.01質量%を超えて含有されると、鉄粉硬さが増加し鉄粉の圧縮性が低下する。このため、Oは0.10質量%以下に限定した。
また、Nが、0.001質量%を超えて含有されると、鉄粉硬さが増加し鉄粉の圧縮性が低下する。このため、Nは0.001質量%以下に限定した。
【0023】
なお、上記した不純物量の範囲は、一般的な粉末冶金用純鉄粉に含まれる不純物含有量と同等の範囲である。
本発明鉄粉の粒子は、マイクロビッカース硬さHVで平均で80以下の硬さを有する。鉄粉の粒子の硬さが、マイクロビッカース硬さHVで80を超えると、鉄粉の圧縮性が低下し、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を0.75質量%配合し、686MPaの成形圧力で、常温で1回の成形後に、7.24Mg/m3以上の圧紛密度を有する成形体を得ることができなくなる。このため、焼結体とした場合の強度が低下し、また圧粉磁芯とした場合の磁気特性が低下する。なお、好ましくはマイクロビッカース硬さHVで75以下である。
【0024】
なお、鉄粉粒子の硬さは、「鉄粉粒子の結晶粒数」測定と同様に、鉄粉含有樹脂固形物としたのち、鉄粉含有樹脂固形物を適当な断面で切断し、該切断した面を研磨して、粒子断面についてマイクロビッカース硬度計(荷重25gf(0.245N))を用いて測定した。各粒子について1点測定し、測定粒子数は10個以上とし、各粒子の測定値の平均値をその鉄粉粒子の硬さとして用いた。
【0025】
本発明鉄粉では、大きさ:50nm以上のSiを含む介在物を、Siを含む介在物全個数に対する個数比率で70%以上に調整することが好ましい。鉄粉粒子の磁壁の厚さは40nm程度(近角聡信:強磁性体の物理(下)−磁気特性と応用−、第174頁、裳華房、1987参照)であると考えられ、Siを含む介在物の大きさが50nm未満では、磁界を印可した場合に鉄粉粒子内の磁壁の移動が阻害されると考えられる。このため、本発明では、鉄粉粒子中に含まれるSiを含む介在物のうち、磁気特性への影響の少ない大きさ:50nm以上のものを、Siを含む介在物全個数に対する個数比率で70%以上と多数、存在させるように調整することが好ましい。これにより、鉄粉の保磁力の増加が少なく、圧粉磁芯とした場合にも、圧粉磁芯の保磁力、透磁率、鉄損等の磁気特性の低下が少なくなる。鉄粉粒子中に、大きさ:50nm未満のSiを含む介在物が30%を超えて多く存在すると、磁気特性への影響が大きくなる。なお、Siを含む介在物の大きさは100nm以上とすることがより好ましい。
【0026】
本発明における、Siを含む介在物の大きさの測定方法は次の通りとする。鉄粉含有樹脂固形物を任意の断面で切断し、切断面を研磨、腐蝕したのち、EDX(Energy Dispersive X-ray fluorescence spectroscopy)により鉄粉粒子中の介在物に含まれる元素を同定し、Siを含む介在物についてその最大径を測定し、介在物の大きさとする。測定するSiを含む介在物の数は20個とした。
【0027】
なお、本発明鉄粉は、必要に応じ、Ni,Cu,Mo等の合金元素を鉄粉表面に部分合金化しても、また、Ni,Cu,Mo等の合金元素粉を結合材を介して鉄粉表面に付着させてもなんら問題はない。
また、本発明鉄粉では、鉄粉の円形度を0.7以上とすることが好ましい。鉄粉の円形度を0.7以上と、鉄粉粒子の形状を球形に近づけることにより、粒子間の接触点が少なく相互の接触抵抗が小さくなり、成形加圧時に金型内に充填された鉄粉粒子が移動しやすくなり、塑性変形が起こる前段階の粒子再配列が促進され、成形加圧初期での緻密化が進行するため、鉄粉の圧縮性が向上する。なお、好ましくは鉄粉の円形度は0.9以上である。
【0028】
なお、このような形状を有する鉄粉は、低圧の水アトマイズやガスアトマイズで製造することができる。すなわちアトマイズの水圧や冷却速度を調節することにより、鉄粉の円形度を制御できる。また、このような形状の鉄粉は、粉砕法や酸化物還元法、あるいは通常の高圧の水アトマイズで得られた不定形の鉄粉末を機械的に叩き、鉄粉粒子表面の凹凸を無くす方法でも製造できる。ただし、このような方法で製造された鉄粉は、鉄粉の粒子表面が加工硬化しているため、歪取り焼鈍を施すことが必要となる。
【0029】
なお、本発明でいう鉄粉の「円形度」は、次式
円形度=(相当円の外周長さ)/(粒子の実外周長さ)
で定義される値をいうものとする。鉄粉の円形度はつぎのようにして算出する。
まず、対象とする鉄粉の粉末粒子を樹脂に埋込して、その断面を研磨したのち、走査型電子顕微鏡を用いて各粒子の断面像を撮影する。得られた断面像から、各粒子の実外周長さと投影面積を測定する。つぎに、測定された各粒子の投影面積から、該投影面積に相当する円(相当円)の直径を算出する。そして、得られた直径を用いて計算で、該粒子の相当円の外周長さを算出する。得られた各粒子の相当円の外周長さおよび実外周長さから、上記した式を用いて円形度を算出する。なお、測定する粒子数は10個以上とし、それら粒子の円形度の平均値を鉄粉の円形度として用いるものとする。
【0030】
つぎに、本発明鉄粉の好ましい製造方法について説明する。
本発明鉄粉の製造に際しては、還元法、アトマイズ法等、通常公知の鉄粉製造法がいずれも適用でき、とくに限定する必要はないが、圧縮性の観点から、なかでも溶湯を水アトマイズして鉄粉とする水アトマイズ法を適用することが好ましい。以下、水アトマイズ法を適用する場合を例に、好ましい製造方法を説明するが、これに限定されないことは言うまでもない。
【0031】
通常の純鉄組成の溶湯を、水アトマイズ法で噴霧、急冷・凝固させるとともに高圧水で解砕して、水アトマイズ製鉄粉(生粉)とする。ついで、この生粉に、脱水・乾燥処理、さらに還元処理を施して、粒子表面の酸化皮膜を除去した製品(鉄粉)とする。
本発明では、還元処理は、水素を含む還元性雰囲気中での高負荷処理とすることが好ましく、例えば、水素を含む還元性雰囲気中で700℃以上1000℃未満、好ましくは800℃以上1000℃未満の温度で、保持時間を1〜7h、好ましくは3〜5hとする熱処理を1段または複数段施すことが好ましい。なお、雰囲気中の露点は、生粉中のC量に応じて選択すれば良く、とくに限定する必要はない。なお、還元処理後、解砕しさらに700〜850℃の温度で焼鈍し、鉄粉中の歪取りを行っても何ら問題はない。また、適宜、解砕、分級等の処理を含んでよいことはいうまでもない。
【0032】
このような高負荷処理を行うことにより、鉄粉の粒子中の結晶粒数を4個以下に低減できるとともに、Siを拡散させながら結晶粒界を介し鉄粉粒子外に排出し、鉄粉粒子内部のSi量を低減し、Siを含有する介在物量を少なくするとともに、その大きさを大きくすることができる。上記した還元処理を施すことにより、50nm以上の大きさのSiを含む介在物を全Siを含む介在物個数の70%以上に調整することができる。
【0033】
また、上記した本発明鉄粉を、圧粉磁芯のような磁性部品に適用する際には、鉄粉に絶縁被覆処理を施し、鉄粉粒子表面を層状に覆う皮膜構造の絶縁層を形成することが好ましい。絶縁被覆用の材料は、鉄粉を加圧成形し所望の形状に成形された後でも要求される絶縁性を保持できるものであればよく、とくに限定されない。このような材料としては、Al,Si,Mg,Ca,Mn,Zn,Ni,Fe,Ti,V,Bi,B,Mo,W,Na,K等の酸化物が例示できる。また、スピネル型フェライトのような磁性酸化物、水ガラスに代表される非晶質材を使用することもできる。また、絶縁被覆用材料として、リン酸塩化成処理皮膜やクロム酸塩化成処理皮膜なども挙げられる。リン酸塩化成処理皮膜にはホウ酸やMgを含むこともできる。
【0034】
また、絶縁材料としては、リン酸アルミニウム,リン酸亜鉛,リン酸カルシウムおよびリン酸鉄等のリン酸化合物を用いることもできる。また、エポキシ樹脂,フェノール樹脂,シリコン樹脂,ポリイミド樹脂等の有機樹脂を用いてもよい。また、特開2003−303711 号公報に開示された材料を絶縁被覆用材料に用いても何ら問題はない。
なお、絶縁材料の鉄粉粒子表面への付着力を高めるため、あるいは絶縁層の均一性を高める目的で、界面活性剤やシランカップリング剤を添加してもよい。界面活性剤やシランカップリング剤の添加量は、絶縁層全量に対し0.001〜1質量%の範囲とすることが好ましい。
【0035】
形成する絶縁層の厚さは、10〜10000nm程度とすることが好ましい。10nm未満では、絶縁効果が十分でなく、10000nmを超えると磁性部品の密度が低下し、高い磁束密度が得られなくなる。
鉄粉粒子表面に絶縁層を形成する方法は、従来から公知の皮膜形成方法(コーティング方法)がいずれも好適に適用できる。使用できるコーティング方法としては、流動層法、浸漬法、噴霧法などが例示できる。なお、いずれの方法においても、絶縁材料を溶解又は分散させる溶媒を乾燥する工程が、被覆工程の後又は被覆工程と同時に必要となる。また、絶縁層が鉄粉粒子に密着し、加圧成形時に剥離することを防止するために、絶縁層と鉄粉粒子表面との間に反応層を形成してもよい。反応層の形成は、化成処理を施すことによるのが好ましい。
【0036】
上記したような絶縁被覆処理を施し、鉄粉粒子表面に絶縁層を形成した鉄粉(絶縁被覆鉄粉)を加圧成形して、圧粉磁芯とすることができる。なお、加圧成形に先立ち、鉄粉には必要に応じ金属石鹸、アミド系ワックス等の潤滑剤を配合することもできる。潤滑剤の配合量は、鉄粉100質量部に対し0.5質量部以下とすることが好ましい。潤滑剤の配合量が多くなると、圧粉磁芯の密度が低下するためである。
【0037】
圧粉磁芯は、必要に応じて歪取りの目的で焼鈍を施すこともできる。この場合、絶縁層の耐熱性に応じて、200〜800 ℃の範囲内で焼鈍温度を決定することが好ましい。
また、加圧成形する方法は、従来公知の方法がいずれも適用できる。例えば、一軸プレスを用いて常温で加圧成形する金型成形工法、あるいは温間で加圧成形する温間成形工法、金型を潤滑して加圧成形する金型潤滑工法、それを温間で行う温間金型潤滑工法、あるいは高圧で成形する高圧成形工法、静水圧プレス法などである。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
電気炉で溶製された溶湯(鉄)を、水アトマイズ処理して、アトマイズ生粉とした。溶湯の精錬は特別な処理を施すことなく、通常とした。なお、水アトマイズ処理は噴霧圧力等を調整して実施した。得られた生粉に脱水・乾燥を施し、さらに還元処理、および解砕を行って、水アトマイズ純鉄粉とした。還元処理条件は、還元性雰囲気(水素濃度:100%,露点10〜40℃)中で、温度:800〜990℃,保持時間:3〜5hの範囲内で変化させた。さらにドライ水素雰囲気中で830℃で2h保持し、歪取り焼鈍を行った。
【0039】
まず、得られた純鉄粉について、JIS Z 8801に定める篩を用いた篩わけにより、鉄粉の粒度構成を測定した。いずれの純鉄粉も、表1に示すように通常の範囲の粒度構成を有する鉄粉となっていた。
【0040】
【表1】


また、得られた純鉄粉について、粒子中の不純物量、硬さ、結晶粒数、50nm以上および100nm以上の大きさのSiを含む介在物の個数,粒子の円形度を測定した。
鉄粉粒子の不純物量は、C,O,S,Nについては燃焼−赤外線吸収法、Si,Mn,Pについては高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法を用いて行った。鉄粉粒子の硬さ測定、およびSiを含む介在物の個数の測定、鉄粉粒子の円形度測定は前記した方法と同様とした。得られた結果を表2に示す。
【0041】
【表2】


得られた純鉄粉(1000g)に、ステアリン酸亜鉛粉を0.75質量%配合し、V型ミキサーで15min 間混合し、混合粉を得た。これら混合粉を、金型に装入し、室温(約25℃)で成形圧力:686MPaで加圧成形し、円柱(11mmφ×10mm)状の成形体とした。得られた成形体の密度(成形密度)をアルキメデス法で測定し、各鉄粉の圧縮性を評価した。
【0042】
成形体の成形密度を表2に併記した。
本発明例はいずれも、7.24Mg/m以上の高い成形密度を有する成形体となっており、高圧縮性の鉄粉であることがわかる。本発明の範囲を外れる比較例は、成形密度が7.24 Mg/m3 未満であり鉄粉の圧縮性が低下している。
(実施例2)
表2に示した鉄粉に、さらに噴霧法により絶縁被覆処理を施し、鉄粉粒子表面にリン酸アルミニウムからなる絶縁層を形成した。絶縁被覆処理は、P:Alがモル比で2:1となるように、オルトリン酸と塩化アルミニウムを配合し、総固形分濃度が5質量%の水溶液とした絶縁被覆処理液を用いて行い、該絶縁被覆処理液を、鉄粉および処理液固形分の合計量に対し、固形分質量が0.25質量%となるように噴霧して絶縁層を形成した。
【0043】
得られた絶縁被覆鉄粉を、金型内にステアリン酸亜鉛の5質量%アルコール懸濁液を塗布して金型潤滑を行った後、金型に装入し、室温(約25℃)で、成形圧力:980MPaで加圧成形し、リング状(外径38mmφ×内径20mmφ×高さ6mm)の成形体とした。得られた成形体に大気中で 200℃×1hの焼鈍を施して圧粉磁芯とした。
ついで、得られた圧粉磁芯について、密度、磁気特性を測定した。
【0044】
密度は、質量と圧粉磁芯の寸法(外径、内径および高さ)を測定して求めた。また、測定する磁気特性は、磁束密度、最大透磁率とし、圧粉磁芯に、コイルを 100ターン巻き付けて一次側コイルとし、同じ圧粉磁芯にコイルを20ターン巻き付けて二次側コイルとして、最大印可磁場:10kA/mの条件下で、直流磁化測定装置により測定した。
得られた結果を表3に示す。
【0045】
【表3】


本発明例はいずれも、成形密度が高く、高い磁束密度、高い最大透磁率を有する圧粉磁芯となっており、本発明の鉄粉を用いれば磁気特性に優れた圧粉磁芯の製造が可能であることがわかる。本発明の範囲を外れる比較例は、成形密度が低下し、磁束密度、最大透磁率のうちいずれか、あるいは両方が低くなっている。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】鉄粉粒子の断面組織を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1 粒界のみで囲まれた結晶粒
2 粒界と鉄粉粒子表面で囲まれた結晶粒




 

 


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