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発明の名称 高寸法精度管の高能率製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−54882(P2007−54882A)
公開日 平成19年3月8日(2007.3.8)
出願番号 特願2005−246186(P2005−246186)
出願日 平成17年8月26日(2005.8.26)
代理人 【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
発明者 剣持 一仁 / 長濱 拓也 / 坂田 敬
要約 課題
肉厚偏差等の良好な高寸法精度管を押し抜き加工によって製造するに際し、押し抜き荷重を低減して、座屈や焼き付き疵の発生を防止し、高寸法精度管を高能率に製造することができる高寸法精度管の高能率製造方法を提供する。

解決手段
予め管1の内外表面に潤滑被膜を形成させて、管1の内部にプラグ3を装入しフローティングさせながら、ダイス2の入側に設けられた管押し機4によって押し込み力5を加えて管1を送り、ダイス2で押し抜き加工を行う際に、ダイス2と管1の接触長さ6と素管外径7との比率を0.5〜1.0の範囲とするダイス2を用いて押し抜き加工を行う。
特許請求の範囲
【請求項1】
管の内面または/および外面に潤滑被膜を形成させて、管の内部にプラグを装入しフローティングさせながら、管を送ってダイスで押し抜き加工を行うに際し、ダイスと管の接触長さと素管外径との比率を0.5〜1.0の範囲とするダイスを用いて押し抜き加工することを特徴とする高寸法精度管の高能率製造方法。
【請求項2】
潤滑剤として、乾燥性樹脂を用いることを特徴とする請求項1に記載の高寸法精度管の高能率製造方法。
【請求項3】
樹脂、あるいは樹脂を溶剤で希釈した液、あるいは樹脂のエマルジョンを管に塗布して、温熱風をあてて管表面に潤滑被膜を形成させることを特徴とする請求項1または2に記載の高寸法精度管の高能率製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車駆動系部品などの高い寸法精度が要求される管を高能率に製造する方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
金属管、例えば鋼管は、通常溶接管と継目無管に大別される。溶接管は、例えば電縫鋼管のように、帯板の幅を丸めて、概丸めた幅の両端を突き合わせて溶接する方法で製造し、一方、継目無管は、材料の塊を高温で穿孔後にマンドレルミル等で圧延する方法で製造する。溶接管の場合、溶接後に溶接部分の盛り上がりを研削して管の寸法精度を向上させているが、その板厚偏差は3.0%を超える。また、継目無管の場合、穿孔工程で偏芯しやすくて、概偏芯により大きな肉厚偏差が生じやすい。この肉厚偏差は後工程で低減させる努力が払われているが、それでも充分低減することができず、製品の段階で8.0%以上残存する。
【0003】
自動車部品等の管には、肉厚、内径、外径の各偏差として3.0%以下、さらに厳しくは1.0%以下の高寸法精度が要求される。金属管の肉厚、内径、外径の精度を高める手段として、従来一般に、例えば特許文献1等に記載されるように、金属管(溶接管,継目無管とも)を造管後にダイスとプラグを用いて冷間で管を引き抜く製造方法(いわゆる冷牽法)がとられている。
【0004】
しかし、従来の冷牽法では、設備上の制約や管の肉厚・径が大きくて引き抜き応力が充分得られずに縮径率を低くせざるを得ない場合などでは、加工バイト(プラグとダイス孔内面との隙間)内で管の応力が引張力であるがゆえにダイスと管、および、引き抜きプラグと管の接触が不十分となり、管の内面、外面の平滑化が不足して凹凸が残留しやすい。そのため、冷牽で管の縮径率を大きくして加工バイト内で管の内外面とプラグ、ダイスの接触を向上させることが行われている。しかし、ダイスを用いて管を冷牽した場合、管の内面に凹凸が発生して管の縮径率が大きくなるほど凹凸による粗さが増加する。その結果、冷牽法では高寸法精度の管を得ることが難しく、寸法精度のさらに良好な管が強く求められていた。
【0005】
上記のように、従来、ダイスとプラグを用いて管を引き抜いた場合、管の寸法精度を向上することが困難である理由は、引き抜きであるがゆえに加工バイト中のダイスと管外面、プラグと管内面の接触が不十分となることに由来する。すなわち、図3に示すように、プラグ3を挿入してダイス2から管1を引き抜くことにより、ダイス2の出側で管引き抜き機8によって加えられた引き抜き応力9によって加工バイト中には張力が発生する。それによって、加工バイト入側では、管1の内面がプラグ3に沿って変形するため、管1の外面は接触しないかあるいは軽度にしか接触せず、逆に、加工バイト出側では、管1の外面がダイス2に接触して変形するため、管1の内面は接触しないかあるいは軽度にしか接触しない。そのため、管1の内面及び外面ともに加工バイト中に自由変形の部分が存在して凹凸を十分平滑化できずに、引き抜き後には精度の低い管しか得られていなかった。
【0006】
これに対して、発明者らは、外径偏差、内径偏差、円周方向肉厚偏差の良好な高寸法制度管を得るために、特許文献2において、管内にプラグを装入した状態で管をダイスの孔に押し込んで通過させる押し抜きを行うという高寸法精度管の製造方法を提案している。
【0007】
押し抜きの場合、図2に示すように、プラグ3を装入してダイス2に管1を押し込むことにより、ダイス2の入側で管押し込み機4によって加えられた押し抜き力5によって加工バイトの内部は全て圧縮応力が作用する。その結果、加工バイト入側、出側を問わずに、管1はプラグ3及びダイス2に十分接触できる。しかも、軽度の縮径率であっても、加工バイト内部は圧縮応力となるため、引き抜きに比較して管1とプラグ3、管1とダイス2が十分接触しやすくて、管1は平滑化しやすくなって高寸法精度の管が得られる。
【特許文献1】特開平07−032030号公報
【特許文献2】特開2004−314083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、押し抜き加工による高寸法精度管の製造においては、引き抜き加工と異なり、加工バイトが圧縮場であるため、ダイスと管、プラグと管との間の面圧が大きくなりやすく、プラグ表面と管内面、ダイス表面と管外面との摩擦力を可能な限り低減しないと、加工中に管が座屈したり、管表面に焼き付き疵が発生したりして、加工後の管の表面品質が低下し、その管は製品にならないだけでなく、加工時の荷重が著しく増加して加工そのものが不可能になる場合がある。その場合は、加工条件を変更するために、加工途中で一旦止めて管を抜き出して、ダイスを交換し、プラグを抜き出す必要がある。その結果,管の生産能率が著しく低下してしまう。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、肉厚偏差等の良好な高寸法精度管を押し抜き加工によって製造するに際し、押し抜き荷重を低減して、座屈や焼き付き疵の発生を防止し、高寸法精度管を高能率に製造することができる高寸法精度管の高能率製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、押し抜き荷重を低減する手段として、ダイス形状に着目した。すなわち、管の押し抜きにあたり、同一素管から所定サイズの管を加工するには、種々のダイス形状の適用が考えられる。そこで、荷重を最も低減できるダイス形状を鋭意検討したところ、素管の径の影響を受けて、素管の径が増加すると荷重が低減し、また、ダイスと管の接触長さの影響を受けて、この接触長さが減少すると荷重が低減することを把握した。その結果、これらの関係から汎用性を持たせて、種々の素管に対して荷重を低減できる適切なダイス形状を得るには、ダイスと管の接触長さと素管径との比率を特定範囲に限定するとよいことを見出した。具体的には、ダイスと管の接触長さと素管径との比率を0.5〜1.0の範囲にすると荷重が低減できて、押し抜きにおける座屈や焼き付きを防止できることを見出した。
【0011】
本発明は以上の観点に基づいてなされたものであり、以下の特徴を有する。
【0012】
[1]管の内面または/および外面に潤滑被膜を形成させて、管の内部にプラグを装入しフローティングさせながら、管を送ってダイスで押し抜き加工を行うに際し、ダイスと管の接触長さと素管外径との比率を0.5〜1.0の範囲とするダイスを用いて押し抜き加工することを特徴とする高寸法精度管の高能率製造方法。
【0013】
[2]潤滑剤として、乾燥性樹脂を用いることを特徴とする前記[1]に記載の高寸法精度管の高能率製造方法。
【0014】
[3]樹脂、あるいは樹脂を溶剤で希釈した液、あるいは樹脂のエマルジョンを管に塗布して、温熱風をあてて管表面に潤滑被膜を形成させることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の高寸法精度管の高能率製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、ダイスと管の接触長さと素管外径との比率が適切な範囲になるようなダイスを用いて押し抜き加工を行うことにより、押し抜き荷重を低減して、座屈や焼き付き疵の発生を防止し、高寸法精度管を高能率に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の一実施形態を図1に基づいて説明する。
【0017】
図1に示すように、この実施形態においては、予め管1の内外表面に潤滑被膜を形成させて、管1の内部にプラグ3を装入しフローティングさせながら、ダイス2の入側に設けられた管押し機4によって押し込み力5を加えて管1を送り、ダイス2で押し抜き加工を行うようにしている。
【0018】
そして、その際に、ダイス2と管1の接触長さ6と素管外径7との比率を0.5〜1.0の範囲とするダイス2を用いて押し抜き加工を行うようにしている。
【0019】
上記のようにすることによって、この実施形態においては、ダイス2の入側で管押し込み機4によって加えられた押し込み力5によって加工バイトの内部は全て圧縮応力が作用するため、管1とプラグ3、管1とダイス2が十分接触し、肉厚偏差等の良好な高寸法精度の管が得られるとともに、ダイス2と管1の接触長さ6と素管外径7との比率が適切な範囲になるようなダイス2を用いて押し抜き加工を行っているので、押し抜き荷重を低減して、座屈や焼き付き疵の発生を防止し、高寸法精度管を高能率に製造することができる。
【0020】
なお、用いる潤滑剤については、ダイスと管、プラグと管の間で潤滑剤の強固な膜を形成させるため、乾燥性樹脂がよく、ポリエチレンワックス、ポリアクリレートなどが良い。また、管表面に潤滑被膜を形成させるには、樹脂、あるいは樹脂を溶剤で希釈した液、あるいは樹脂のエマルジョンを管に塗布して、温熱風をあてるとよい。
【実施例】
【0021】
以下、実施例に基づいて説明する。
【0022】
一例として、φ34mm×7mmt×6mLの鋼管を素管として、鏡面のプラグと一体型固定ダイスを用いて、プラグをフローティングさせて鋼管内部に装入し、縮径率11.8%で鋼管を入側から押して、ダイス出側の管の径をφ30mm、管肉厚を入側と同じ7mmtとした。なお、この際にダイスの角度を変えることにより、ダイスと管の接触長さを変更し、各々の条件で10本ずつ押し抜き加工または引き抜き加工を行った。
【0023】
本発明例1として、上記の押し抜き加工において、ダイスと管との接触長さと素管外径との比率を0.5として、予め潤滑被膜を形成させるため、ポリエチレンワックスの樹脂エマルションを管内外面に塗布して、温熱風をあてて乾燥性樹脂被膜を付着させて10本連続して加工した。
【0024】
本発明例2として、上記の押し抜き加工において、ダイスと管との接触長さと素管外径との比率を0.9として、予め潤滑被膜を形成させるため、溶剤で希釈した樹脂を管内外面に塗布して、温熱風をあてて、ポリアクリレートからなる乾燥性樹脂被膜を付着させて10本連続して加工した。
【0025】
比較例1として、上記の押し抜き加工において、ダイスと管との接触長さと素管外径との比率を0.4として、潤滑被膜を形成させるため、ポリエチレンワックスの樹脂エマルションを管内外面に塗布して、温熱風をあてて乾燥性樹脂被膜を付着させて10本連続して加工した。
【0026】
比較例2として、上記の押し抜き加工において、ダイスと管との接触長さと素管外径との比率を1.1として、潤滑被膜を形成させるため、ポリエチレンワックスの樹脂エマルションを管内外面に塗布して、温熱風をあてて乾燥性樹脂被膜を付着させて10本連続して加工した。
【0027】
従来例として、引き抜き加工において、ダイスと管との接触長さと素管外径との比率を0.5として、潤滑被膜を形成させるため、ポリエチレンワックスの樹脂エマルションを管に塗布して、温熱風をあてて乾燥性樹脂被膜を付着させて10本連続して加工した。
【0028】
これらの鋼管製造時の荷重、および製造した鋼管の表面疵の発生状態、座屈発生の有無、加工能率について、結果を表1に示す。なお、加工能率は、1時間当たりの加工本数について、従来例の1時間当たりの加工本数を1(基準)として、その比率で示した。
【0029】
【表1】


【0030】
表1に示すように、比較例1および比較例2に示す押し抜き加工では、荷重が大きくて、加工後の鋼管表面に疵が発生してダイス及びプラグを交換せざるを得なくなり、特に、比較例2では素管が座屈して加工をやり直す必要が生じて、そのために加工能率が著しく低下した。
【0031】
また、従来例に示す引き抜きの場合は、荷重は低いが鋼管を単発で加工せざるを得ないため、加工能率が著しく低下した。
【0032】
これらに比べて、本発明例1および本発明例2の場合は、荷重が低くて焼き付き疵は全く発生せず良好な表面であり、加工能率も著しく良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態(ダイスと管との接触長さと素管径との比率を0.5〜1.0の範囲とするダイスでの押し抜き加工)の説明図である。
【図2】比較技術(ダイスと管との接触長さと素管径との比率を1.0を超える範囲とするダイスでの押し抜き加工)を示す図である。
【図3】従来技術(引き抜き加工)を行う方法を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 管
2 ダイス
3 プラグ
4 管押し込み機
5 押し抜き力
6 ダイスと管との接触長さ
7 素管径
8 管引き抜き機
9 引き抜き力




 

 


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