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発明の名称 圧延機
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−50420(P2007−50420A)
公開日 平成19年3月1日(2007.3.1)
出願番号 特願2005−236208(P2005−236208)
出願日 平成17年8月17日(2005.8.17)
代理人 【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
発明者 竹林 克浩
要約 課題
高次関数ロールを用いてクラウン制御能力の高い圧延を安定して行うに好適な圧延機を提供することを目的とする。

解決手段
バックアップロールのロールバレル外形が奇数次からなる関数で構成され、該関数の奇数次の係数が、ワークロールとこれに接触するバックアップロールとのすべり率と、ワークロールとこれに接触するバックアップロールとの間の線圧の1/2乗と、ミル中心からの距離との積を、ワークロールとバックアップロールとの接触域全幅にわたって積分した時の積分値に基づいて、決定されてなる。
特許請求の範囲
【請求項1】
ロールバレル外形がS字形状であって、軸方向位置で上下で互いに補完し合う形状のイニシャルロールカーブで形成された上下一対のワークロールを4重式の圧延スタンドに組み込み、互いに逆向きに軸方向に移動させ、ロールギャップの修正を行いつつ被圧延材を圧延する圧延機において、
バックアップロールのロールバレル外形が奇数次からなる関数で構成され、該関数の奇数次の係数が、前記ワークロールとこれに接触するバックアップロールとのすべり率と、前記ワークロールとこれに接触するバックアップロールとの間の線圧の1/2乗と、ミル中心からの距離との積を、ワークロールとバックアップロールとの接触域全幅にわたって積分した時の積分値に基づいて、決定されてなることを特徴とする圧延機。
【請求項2】
請求項1に記載の圧延機において、
前記積分値が、ワークロールの軸方向移動位置の全範囲にて0近傍となるように、前記関数の奇数次の係数が調整されてなることを特徴とする圧延機。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板等の被圧延材を圧延する圧延機に関し、特に、ロールバレル外形がS字形状に形成された上下一対のロールを互いに逆向きに該軸方向に移動させ、ロールギャップの修正を行いつつ前記被圧延材を圧延する圧延機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼板等の被圧延材の熱間圧延や厚板圧延、あるいは冷間圧延においては、被圧延材の板クラウンや形状を制御する方法として、凸や凹形状のイニシャルクラウンをワークロールに付与する方法、ワークロールを水平面内で互いにクロスさせる方法、ロールベンディングによる方法、ワークロールをロール軸方向に上下で互いに逆向きに移動させる方法が採用されている。
【0003】
このうち、図1に示すように、ロールバレル外形3、4がS字形状に形成された上下一対のロール1、2を圧延スタンドに組み込んで、ロール1、2の軸芯5、6の軸方向に互いに逆向きに移動させる方法が特許文献1に開示されている。図中、符号Bはロールバレル長、Lは圧下スクリュウ間距離であり、1A、2Aは圧下スクリュウの左圧下位置を示し、1B、2Bは圧下スクリュウの右圧下位置を示している。このようなロールは、一般にCVCロールと称され、ロール1、2をそれぞれ軸方向逆向きに移動すると、図1中符号Aで示す被圧延材位置のロールギャップAの形状が変化する上下で互いに補完し合うイニシャルロールカーブを有する。この場合、CVCロールは被圧延材と接触するワークロールであるが、CVCロールは4段圧延機のバックアップロール、あるいは6段圧延機の中間ロールにも適用されている。
【0004】
形状制御能力が高いCVCロールのイニシャルロールカーブとして、特許文献2には2次以下の項を含む3次関数曲線が、特許文献3には4次式以下の項を含む5次関数曲線が示されている。このような高次奇関数のイニシャルロールカーブで形成されたワークローロールは、形状制御能力が高いことで知られており、シフト量δに対応して2次曲線等の偶関数で表される左右対称な凸型のイニシャルクラウンから凹形のイニシャルクラウンにまで変更可能である。また、CVCロールによる被圧延材位置のロールギャップAの修正は、ロールシフト機構を設けることにより比較的簡易な設備で行える。
【0005】
なお、[発明の開示]において、下記の特許文献4〜6、非特許文献1〜3を引用するので、ここにあわせて記載しておく。
【特許文献1】特開昭57−091807号公報
【特許文献2】特開昭62−263805号公報
【特許文献3】特開平01−262008号公報
【特許文献4】特開昭63−020106号公報
【特許文献5】特開昭61−296904号公報
【特許文献6】特開平06−285518号公報
【非特許文献1】F.W.Carter, Proc. Roy. Soc. London, A112, 760 (1926) 151
【非特許文献2】J.Halling, Wear, 24 (1973) 127
【非特許文献3】日本鉄鋼協会、板圧延の理論と実際 (1984) 94
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようにワークロールに軸心方向で径差分布があると、バックアップロールとの間に周速差分布が生じ、水平面内でワークロールが微小に回転するいわゆるスキューが発生しやすくなる。スキューが発生すると、ワークロールギャップが左右非対称となり、製品が幅方向に楔状となって板厚偏差が悪化するばかりか、圧延中に曲がりを発生して圧延が不安定となる問題があった。また、ワークロールの周速方向とバックアップロールとの周速方向とが一致しなくなるため、ロール軸心方向にスラスト力が発生し、ワークロールおよびバックアップロールの軸受や、ワークロールのシフト機構の寿命が短くなったり、場合によっては破損するなどの設備上の問題もあった。
【0007】
かかる問題は高次関数ロールと接触ロールの間に発生する接線力に対し、ロール中心まわりのモーメントが0となれば解決できる。
【0008】
高次関数のロールカーブを上下で点対称に配置する場合、高次関数中の1次項はロールギャップの分布には影響しないため、クラウンや形状制御には無関係に決定される。例えば特許文献4にはロールの径差が最小となるように決定する方法が、特許文献5にはイニシャルクラウンの点対称の原点を中心に、その左右において摩擦力が釣り合うように、ロール軸に平行な直線との間に形成される間隔の面積またはこれのロール外周全体でとらえた体積の絶対値を同等とする方法などが提案されているが、これらはいずれもロール中心まわりの接線力のモーメントを0とする思想のものではなかった。
【0009】
特許文献6には3次以上の多項式関数をプロフィルとするロールについて、ロール半径と、ロール中心からのロール軸心方向距離との積を、このロールに接触しているロールとの軸心方向接触領域全長に渡って積分した時の積分値が0となるようにプロフィルを決定する方法が提案されている。このロール形状は、高次関数ロール半径と接触ロールの間の圧延方向動摩擦力が高次関数ロール半径と高次関数ロールと接触ロールとの接触域における軸心方向平均半径の差に比例するとの考えを元にロール中心まわりのモーメント0とするべく導出されたものである。
【0010】
この方法は従来の技術と比較してスキューを低減する効果があったが、特にクラウン制御能力を増大する目的でロール径差を拡大した場合に過大なスラスト力が発生してワークロールの軸受が損傷したり、圧延が不安定となる現象が依然発生するという欠点があるとともに、ワークロールの軸方向移動位置によっても過大なスラスト力が発生するという問題もあった。
【0011】
すなわち、ワークロールがある軸方向移動位置においてロール中心まわりのモーメントを0とできたとしても、ワークロールを軸方向に移動させると、ワークロールとバックアップロールとの接触範囲が変化するために、軸方向移動位置の全領域においてロール中心まわりのモーメントを0とすることは不可能であった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、高次関数ロールを用いてクラウン制御能力の高い圧延を安定して行うに好適な圧延機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者らはこの問題に対し弾性論を元に検討を加えた結果、ロール軸心方向にロール径偏差分布を有するロールの接触状態は微小すべり状態にあり、周速差に起因するトラクションを考慮することが不可欠であるという結論を得て、本発明に至った。
【0013】
すなわち本発明の請求項1に係る発明は、ロールバレル外形がS字形状であって、軸方向位置で上下で互いに補完し合う形状のイニシャルロールカーブで形成された上下一対のワークロールを4重式の圧延スタンドに組み込み、互いに逆向きに軸方向に移動させ、ロールギャップの修正を行いつつ被圧延材を圧延する圧延機において、バックアップロールのロールバレル外形が奇数次からなる関数で構成され、該関数の奇数次の係数が、前記ワークロールとこれに接触するバックアップロールとのすべり率と、前記ワークロールとこれに接触するバックアップロールとの間の線圧の1/2乗と、ミル中心からの距離との積を、ワークロールとバックアップロールとの接触域全幅にわたって積分した時の積分値に基づいて、決定されてなることを特徴とする圧延機である。
【0014】
また本発明の請求項2に係る発明は、請求項1に記載の圧延機において、前記積分値が、ワークロールの軸方向移動位置の全範囲にて0近傍となるように、前記関数の奇数次の係数が調整されてなることを特徴とする圧延機である。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、ワークロールとこれに接触するバックアップロールとのすべり率と、ワークロールとこれに接触するバックアップロールとの間の線圧の1/2乗と、ミル中心からの距離との積を、ワークロールとバックアップロールとの接触域全幅にわたって積分した時の積分値に基づいて、奇数次からなる関数で構成されるバックアップロールのロールバレル外形を決定するようにしたので、クラウン制御能力の高い圧延を安定して行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の形態について、以下具体的に説明を行う。
【0017】
まず、ワークロールとバックアップロールとの接触は、ワークロール駆動の圧延機で、ロール軸心方向にロール径の偏差分布がない場合は単純なころがり摩擦状態と見なせるが、ロール軸方向にロール径差分布が存在する場合には、局所的に周速の違うロール同士が接触している状態にあるため、ころがり−すべり接触状態にあると仮定するのが妥当である。
【0018】
ここで、完全なすべり状態の場合、ロール間に発生する接線力はいわゆるクーロン摩擦則に従うため、単位長さあたりの接線力Fは線圧pおよび摩擦係数μから式(1)で表される。
【0019】
【数1】


【0020】
線圧pは、ロール間のばね定数をk、ロール間の軸心接近量をδとして、式(2)で表される。
【0021】
【数2】


【0022】
ワークロールとバックアップロールのロール軸心が平行を保って接近するとすれば、軸心方向の無次元化座標x (-1≦x≦1)におけるワークロール半径r(x)、平均ワークロール半径rm、平均軸心接近量δmを用いて、式(3)で表される。
【0023】
【数3】


【0024】
したがって、式(1)は式(4)のように表される。
【0025】
【数4】


【0026】
この接線力Fによるロール中心まわりのモーメントMは、以下の式(5)のように表される。
【0027】
【数5】


【0028】
摩擦係数μとばね定数kが一定値であるとすれば、M=0を満足するロール外形はロール半径とロール中心からのロール軸心方向距離との積の積分値が0となる場合であって、これは従来技術の条件に他ならない。すなわち、従来技術の思想はロール間の接触状態がクーロン摩擦状態にあることを想定して導き出されたものと等価である。
【0029】
ところが、微小な周速差で接触しているころがり−すべり接触状態では、ロールの周速差をロールの弾性変形が吸収し、この弾性変形に基づく接線力、いわゆるトラクションが発生する。Carterによる理論(非特許文献1又は非特許文献2参照)によれば、半径rの2円筒間に接線力Fを与えた場合に発生する周速差率s(周速差/平均周速:すべり率、あるいはクリープ速度とも言われる)は式(6)で与えられ、式(7)が得られる。
【0030】
【数6】


【0031】
【数7】


【0032】
これは鉄道の駆動車輪のような駆動トルクを受ける円筒に適用される理論であり、半無限遠円筒を前提としたものであるが、この理論をロール軸心方向分布の各位置について適用できるものとして考える。図2に示すように高次関数のイニシャルロールクラウンよりなるワークロール1がδだけシフトした状態で、高次関数のイニシャルロールクラウンよりなるバックアップロール7と接触しているものとする。ミル中心よりロール軸心方向にxの位置における単位長さあたりのトラクションF(x)は、式(8)のように表される。
【0033】
【数8】


【0034】
ここで、RD(x)は等価ロール半径であり、ワークロールの半径rW(x)とバックアップロールの半径rB(x)を用いて式(9)で与えられる。
【0035】
【数9】


【0036】
弾性接触部の半幅a(x)は、Hertzによる半無限長円筒の解を用いて、以下のように表される。
【0037】
【数10】


【0038】
【数11】


【0039】
ここで、νWおよびνBはワークロールおよびバックアップロールのポアソン比,EWおよびEBはワークロールおよびバックアップロールの縦弾性係数である。
【0040】
ロール胴長方向の圧力分布p(x)は、ワークロールカーブおよびバックアップロールカーブを構成する高次関数のうち、2次以上の分布から計算できる。すなわち、ワークロールとバックアップロールとが圧延荷重Pを受けて接触する場合には、ロール間の線圧分布は式(12)の荷重の釣り合い条件と式(13)のモーメントの釣り合い条件を満たすようにワークロールは剛体回転する。
【0041】
【数12】


【0042】
【数13】


【0043】
したがって、線圧分布p(x)を求める際には、ロールカーブの1次項は未知の状態でよいことになる。線圧分布の計算には、例えば分割モデル(例えば、非特許文献3参照)などの公知の技術が用いられるが、熱延ミルのように比較的ワークロール径が大きい場合には、高次関数カーブによる線圧分布のみを考慮してもよい。すなわち、線圧分布を以下の式(14)および(15)として、式(12)および(13)の条件からワークロールおよびバックアップロールの平均ロール半径rWm,rBm,および線圧分布の傾きcpを決定することで式(14)から線圧分布が求められる。
【0044】
【数14】


【0045】
【数15】


【0046】
ロール間のばね定数kは、Fopplによる無限長2円柱の軸心接近量についての解を用いて式(16)で求められる。
【0047】
【数16】


【0048】
この場合のロール半径rW,rBは代表値を用いても問題ない。また、接触半幅aには式(10)に示したように線圧p(x)自体が含まれるが、式(16)を計算する上では式(15)に示した平均線圧pmを用いても問題ない。
【0049】
また、すべり率s(x)は、位置xにおけるワークロールおよびバックアップロールの周速をUW(x)およびUB(x)として、式(17)のように表される。
【0050】
【数17】


【0051】
ワークロールおよびバックアップロールの角速度をωWおよびωBとすれば、ワークロールおよびバックアップロールの周速をUW(x)およびUB(x)は以下のように表される。
【0052】
【数18】


【0053】
【数19】


【0054】
式(18)および式(19)を式(17)に代入すれば、下式(20)を得る。
【0055】
【数20】


【0056】
ここで、ワークロールロールとバックアップロールとの角速度比半径ωB/ωWは、トラクションの総和がロール間の伝達力に一致する条件から定められる。すなわち、伝達トルクをTとすれば、以下の式(21)であるので、一般的にワークロールロール駆動の場合にはT=0(厳密にはバックアップロールの転動トルク)の条件から角速度比が定められる。なお、バックアップロール駆動の場合には、T=圧延トルクの条件となる。
【0057】
【数21】


【0058】
以上により、式(8)を用いて軸方向x位置でのトラクションを計算することができる。ミル中心まわりのトラクションによるモーメント、すなわちスキューモーメントMsは式(22)で計算される。
【0059】
【数22】


【0060】
ワークロールのカーブrW(x)およびバックアップロールのカーブrW(x)が、Ms=0を満足した時にスキューを防止することができる。
【0061】
今、例として高次関数ワークロールのカーブΔrWおよび高次関数バックアップロールのカーブΔrBが、式(23)および式(24)のような3次関数である場合を考える。
【0062】
【数23】


【0063】
【数24】


【0064】
ワークロールをδだけシフトした場合の単純ロールギャップ(ワークロールがバックアップロールに倣うと考えた場合のロールギャップ)gは、式(25)のようになる。
【0065】
【数25】


【0066】
右辺第1項はロール軸心方向xとは無関係であり、クラウン・形状制御に影響するロール軸心方向のロールギャップの分布には右辺第2項のみが関係する。すなわち、クラウン・形状制御にはワークロールの2次および3次の係数およびバックアップロールの2次の係数が関係し、ワークロールの1次の係数CW1およびバックアップロールの奇数次の係数CB1,CB3は、要求されるクラウン・形状制御能力と無関係に定めることができる。したがって、本発明においてはワークロールの形状は要求されるクラウン制御能力から定め、バックアップロールの奇数次の係数をスキューモーメントが0となるように定めるのである。
【0067】
さて、本発明の本旨を明確化させるため、式(8)を吟味する。まず、等価ロール半径RD(x)は、ロール軸心方向で一定とおいても結果に及ぼす影響は少ない。すなわち、ワークロールおよびバックアップロールの代表半径をrWmおよびrBmとすれば、式(9)は式(26)となる。
【0068】
【数26】


【0069】
また、式(8)においてすべり率s(x)の2乗項を微小項として省略し、式(26)および式(10)を用いて、式(8)は以下の式(27)と表せる。
【0070】
【数27】


【0071】
したがって、スキューモーメントMsを求める式(22)は、最終的に式(28)のように表せる。
【0072】
【数28】


【0073】
すなわち、スキューモーメントが0となる条件は、高次関数からなるワークロールとこれに接触する高次関数からなるバックアップロールとのすべり率と、前記ワークロールとこれに接触する前記バックアップロールとの間の線圧の1/2乗と、ミル中心からの距離の積をワークロールとバックアップロールとの接触域全幅にわたって積分した時の積分値が0となることから決定できるのである。
この際、特定のワークロールの軸方向移動位置においては、ワークロールあるいはバックアップロールの1次の係数を調整することにより、クラウン制御能力と無関係にスキューモーメントを0とすることができるのであるが、ワークロールの軸方向移動位置が変化して、ワークロールとバックアップロールとの接触範囲が変化すると、スキューモーメントが0の条件を保つことは不可能である。これに対し、本発明においてはバックアップロールについては奇数次のカーブが高次であってもクラウン制御能力に関係ないことに着目し、バックアップロールの奇数次の係数を調整することによって、ワークロールがいかなる軸方向移動位置にあってもスキューモーメントをほぼ0近傍に保つことができるようになるのである。
【実施例】
【0074】
以降、実施例に沿って本発明による効果を説明する。適用する圧延機のロールは、表1に示す寸法および物性値のものである。また、高次関数からなるワークロール形状は式(23)に示したような3次関数とし、ワークロールを±100mmシフトした時に、単純な凹凸イニシャルロールカーブ換算として、+600μm/直径〜-400μm/直径を達成しうるように2次の係数と3次の係数を決定した。また、1次の係数は式(5)で表されるモーメント=0を満足するように定めた。その値を表2に合わせて示し、ロールカーブを図3に示す。なお、これらの係数はロールカーブを表す軸心方向の座標xに±B/2で±1となる無次元化座標を用いた時の値である。さらに、図中の軸心方向マイナス側の端部は過大なヘルツ圧を防止するために150mmの平坦部を設けてある。
【0075】
【表1】


【0076】
【表2】


【0077】
まず、比較例1として、通常のフラットなバックアップロールを用いる時のスキューモーメントを求める。図4は、圧延荷重2500tfの条件の下にワークロールシフト量を±100mmの範囲で変更したときのワークロールとバックアップロール間の線圧分布である。線圧分布は、600〜1600kgf/mmという大きい分布を呈する。このロールカーブに対し、本発明の式(28)によって計算されるスキューモーメントを図5に示す。約10〜22tf・mものスキューモーメントが発生するとともに、シフト量によって大きく変動することが分る。
【0078】
次に、比較例2として、本発明の一部によってスキューモーメントを0にするバックアップロールカーブを設定した。ただし、バックアップロールは1次の関数で表されるテーパ形状であり、高次の関数は含んでいない。ワークロールシフト量が±100mmの範囲内で極力スキューモーメントが最小となるように、1次の係数を決定した。また、線圧分布は1次の係数が変化しただけなので、図4と変化はない。この結果求められた1次の係数を表2に、スキューモーメントを図5にそれぞれ併せて示すとともに、ロールカーブを図6に示す。この例では、軸心方向マイナス座標側のバックアップロール半径を小径化することによってスキューモーメントは±7.5tf・m程度に低減でき、絶対値の最大値は比較例1の約1/3に低減されている。しかしながら、シフト量の変化によるスキューモーメントの変動量自体は比較例1とほとんど同様で15tf・mもあり、この点が問題であるのは前述のとおりである。
【0079】
次に、実施例として、バックアップロール形状を式(24)に示したような3次関数とし、スキューモーメントの変動を抑止できる係数を本発明の手法によって求めた。ただし、関数のうち、偶数次である2次の項はクラウン制御能力を変更することになってしまうため、CB2=0とした。3次の係数CB3を種々変更した時のスキューモーメントの変動量の変化を、図7に示す。ここで、スキューモーメント変動は、ワークロールシフト量±100mmの範囲内での最大スキューモーメントと最小スキューモーメントとの差である。3次の係数CB3によってスキューモーメント変動は大きく変化し、この例では-0.1以下とすることによって約5tf・mに変動量を抑制できることが分る。3次の係数CB3を-0.2とした時の係数を表2に、スキューモーメントを図5に、ロールカーブを図6にそれぞれ併せて示し、ワークロールとバックアップロール間の線圧分布を図8に示す。スキューモーメント変動の絶対値が最小となるように1次の係数を決定した結果、スキューモーメントは±2.5tf・mの範囲に収まっており、絶対値では比較例1の約1/10にも低減することになる。線圧分布は500〜1700kgf/mmの範囲で、比較例より若干変動が大きくなっているが、問題ないレベルである。
【0080】
なお、3次の係数をさらにマイナス側に大きくしていくとスキューモーメント変動は漸減するが、バックアップロールの凸部が大きくなるためにワークロールとの線圧分布はより大きくなる。図9は、3次の係数CB3を種々変更した時の線圧最大値の変化を示したものである。線圧の増大はロールのスポーリングなどの事故を招くため、極力抑制することが望ましく、本発明によってバックアップロールの形状を決定する際には線圧の増加を勘案することが重要である。
【0081】
なお、上記実施例に示したバックアップロールの関数は上記のワークロール形状やロール寸法などの条件下での最適化例であって、その他の実施適用に際してはワークロール形状や寸法などに応じて上記手法に従ってバックアップロールの形状を適宜定める必要がある。また、上記実施例ではバックアップロールの形状として1次および3次の奇数次からなる関数を例示したが、必要に応じて5次以上の奇数次項を追加してもよい。
【0082】
本発明を実機の圧延機を用いて検証した結果について、以下に述べる。図3に示した形状のワークロール、および図5に示した形状のバックアップロールを7スタンドからなる熱間圧延仕上ミルの第3スタンドに組み込み、それぞれほぼ同じ厚・幅構成からなる約200コイルの圧延を行い、ワークロールシフト用の油圧シリンダの圧力からスラスト力を測定した。
【0083】
この結果を図10に示す。比較例1では圧延荷重が大きくなるほどスラスト力が大きくなり、スキューが防止できていないことが分る。本発明の一部を適用した比較例2によれば圧延荷重によらずスラスト力はほぼ一定であるものの、シフトの変化によって大きいばらつきを示している。これらに対し、本発明による実施例によればばらつきも著しく改善されており、本発明による効果を明確に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】CVCロールによるロールギャップ形状の修正作用を示す模式図であって、(a)はシフト量δ=0の場合、(b)はシフト量δ>0の場合である。
【図2】上ロールのワークロールとバックアップロールの接触状態を示す模式図であって、(a)は正面図、(b)はミル中心から軸心方向にx位置での断面図である。
【図3】ワークロールのイニシャルロールカーブを例示したグラフである。
【図4】比較例のワークロールとバックアップロール間の線圧分布を例示したグラフである。
【図5】スキューモーメントを例示したグラフである。
【図6】バックアップロールのイニシャルロールカーブを例示したグラフである。
【図7】バックアップロールのカーブの係数とスキューモーメント変動量との関係を例示したグラフである。
【図8】実施例のワークロールとバックアップロール間の線圧分布を例示したグラフである。
【図9】バックアップロールのカーブの係数と線圧分布の最大値との関係を例示したグラフである。
【図10】スラスト力の実測値を例示したグラフである。
【符号の説明】
【0085】
1、2 ワークロール(CVCロール)
3、4 ワークロールバレル外形
5、6 軸心
7 バックアップロール
8 バックアップロールバレル外形
1A、2A 左圧下位置
1B、2B 右圧下位置
L 圧下スクリュウ間距離
CL ミル中心線
B ロールバレル長
A 被圧延材位置のロールギャップ
W 幅
δ シフト量
x ミル中心を原点とする軸心方向座標
0、x1 ミル中心からの位置を表す軸心方向座標
w、rB 半径
ωW、ωB 角速度
p ロール間線圧
a 接触半幅




 

 


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