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発明の名称 2ピース缶用ラミネート鋼板および2ピースラミネート缶
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−45116(P2007−45116A)
公開日 平成19年2月22日(2007.2.22)
出願番号 特願2005−234557(P2005−234557)
出願日 平成17年8月12日(2005.8.12)
代理人 【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
発明者 久保 啓 / 小島 克己 / 西原 友佳 / 安江 良彦 / 岩佐 浩樹
要約 課題
エアゾール2ピース缶のような高加工度の缶体であってもラミネート樹脂層の剥離と破断を防止できる加工度の高い2ピース缶の製造に好適なラミネート鋼板及び加工度の高い2ピースラミネート缶を提供する。

解決手段
最終成形体の高さh、最大半径r、最小半径d(rとdが同じ場合を含む)が、最終成形体と重量が等価となる成形前の円状板の半径Rに対して、0.1≦d/R≦0.25、かつ1.5≦h/(R−r)≦4の関係を満足する2ピース缶の製造に使用するラミネート鋼板であって、鋼板の少なくとも片面に、ポリエステルを主成分とする主相と、主相中に主相と非相溶で分散して存在し、ガラス転位点(Tg)が5℃以下の樹脂からなる副相が混合した混合樹脂からなり、前記混合樹脂中の副相の体積比率が3vol%以上30vol%以下であり、副相のラミネート方向の断面形状は、扁平率が0.50以下である樹脂被覆層を有する。
特許請求の範囲
【請求項1】
最終成形体の高さh、最大半径r、最小半径d(rとdが同じ場合を含む)が、最終成形体と重量が等価となる成形前の円状板の半径Rに対して、0.1≦d/R≦0.25、かつ1.5≦h/(R−r)≦4の関係を満足する2ピース缶の製造に使用するラミネート鋼板であって、鋼板の少なくとも片面に、ポリエステルを主成分とする主相と、主相中に主相と非相溶で分散して存在し、ガラス転位点(Tg)が5℃以下の樹脂からなる副相が混合した混合樹脂からなり、前記混合樹脂中の副相の体積比率が3vol%以上30vol%以下であり、副相のラミネート方向の断面形状は、扁平率が0.50以下である樹脂被覆層を有することを特徴とする2ピース缶用ラミネート鋼板。
【請求項2】
ガラス転位点(Tg)が5℃以下の樹脂は、ポリオレフィンを主成分とする樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の2ピース缶用ラミネート鋼板。
【請求項3】
ポリエステルを主成分とする主相がジカルボン酸成分とジオール成分の縮重合で得られ、ジカルボン酸成分がテレフタル酸、あるいはテレフタル酸及びあるいはイソフタル酸からなり、ジオール成分がエチレングリコールからなるポリエステルであることを特徴とする請求項1または2に記載の2ピース缶用ラミネート鋼板。
【請求項4】
ガラス転位点(Tg)が5℃以下の樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン及びアイオノマーのうちから選ばれる1種以上からなることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれかの項に記載の2ピース缶用ラミネート鋼板。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの項に記載のラミネート鋼板の円状板を多段成形して製造した2ピースラミネート缶であって、その最終成形体の高さh、最大半径r、最小半径d(rとdが同じ場合を含む)が、最終成形体と重量が等価となる成形前の円状板の半径Rに対して、0.1≦d/R≦0.25、かつ1.5≦h/(R−r)≦4の関係を満足することを特徴とする2ピースラミネート缶。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばエアゾール缶のような加工度の高い2ピース缶の製造に好適なラミネート鋼板及び2ピースラミネート缶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エアゾール用金属容器には、大別して2ピース缶と3ピース缶が存在する。2ピース缶は、シーム部(溶接部)が存在しないことで外観が美麗である反面、一般的に加工程度が高い。3ピース缶はシーム部が存在することで、2ピース缶に比較すると、外観性が劣るが、一般的に加工程度が低い。この為、市場においては小容量で高級品には2ピース缶が多く使用され、大容量で低価格品には3ピース缶が多く使用されている。
【0003】
エアゾール2ピース缶における金属素材は、一般的に、高価で板厚の厚いアルミニウムなどが用いられており、安価で板厚の薄いぶりきやティンフリースチールなどの鋼板素材はほとんど用いられていない。その理由は、エアゾール2ピース缶は加工度が高いため、絞り加工やDI加工の適用が難しく、アルミニウムでは軟質金属材料に対して適用可能なインパクト成形を適用して製造しているからである。このような状況下、安価で、薄くても強度の高いぶりきやティンフリースチールなどの鋼板素材を用いることができれば、産業的な意義は非常に大きい。
【0004】
従来、ラミネート鋼板の絞り加工及びDI加工法は一般的な低加工度の2ピース缶については種々提案されている。一般的な低加工度の2ピース缶の製造方法に用いられているラミネート鋼板素材は、ポリエステルが主であり、中でも、ポリエチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体、エチレンテレフタレート−ブチレンテレフタレート共重合体、飽和ポリエステルを主相としたアイオノマーコンパウンド材などが例示される。これらは、低加工度の2ピース缶の製造方法に応じて設計されたものであり、その範囲では好適である。しかし、エアゾール2ピース缶のように絞り加工後に加工度の高い縮径加工を行う缶体の製造方法は検討されていない。
【0005】
例えば、特許文献1〜3は、樹脂被覆金属板の絞り加工及び絞りしごき加工の加工方法を開示したものであるが、特許文献1〜3に記載の加工度(特許文献1〜3では絞り比)は本発明で規定するものよりも低い範囲にある。特許文献1〜3は飲料缶、食缶などをターゲットとしており、飲料缶、食缶は、本発明で規定する加工度の範囲より低い加工度の缶体であるためである。
【0006】
また、低加工度の2ピース缶の製造においても、加工後に熱処理を施すことで、加工によって生じた内部応力を緩和させたり、積極的に樹脂層を配向させたりするなどの開示がある。これらもまた、低加工度の2ピース缶の製造方法に応じて設計されたものであり、その範囲では好適である。例えば、特許文献2、3においては、樹脂層の剥離防止や加工後のバリア性を意図して、加工中、及びあるいは加工の途中段階、あるいは最終段階で熱処理を施すことが記載されており、特許文献2では配向性熱可塑性樹脂が用いられ、特許文献3では飽和ポリエステルとアイオノマーのコンパウンド材などが用いられている。
【0007】
特許文献4、5は、主として樹脂の融点以上で熱処理を施すことによって内部応力を緩和するものであり、缶成形後の段階で適用することが記載されている。また、その缶体の加工度は、明細書本文や実施例の記載を見る限り低い。
【0008】
また、特許文献2は、内部応力の緩和と配向結晶化促進の為の熱処理の提案であり、現在、飲料缶などで一般的に用いられる手法となっている。特許文献中に明確な記載はないが、配向結晶化は、融点以下の温度で促進する為、熱処理温度は融点以下だと推定される。また、本文、実施例の記載を見る限り、本発明で規定する加工度に比較するとそれより低い加工度のものを対象としていることがわかる。
【特許文献1】特公平7−106394号公報
【特許文献2】特許第2526725号公報
【特許文献3】特開2004−148324号公報
【特許文献4】特公昭59−35344号公報
【特許文献5】特公昭61−22626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術においては、ラミネート鋼板を用いてエアゾール2ピース缶のように高加工度の成形を行う缶体の製造法は提案されていなかった。そこで、発明者らは、ラミネート鋼板を用いて、絞りしごき加工によって有底筒状に成形後その開口部近傍部分を縮径加工する加工度の高い2ピース缶を製造したところ、高加工特有の問題が発生、具体的には、樹脂層の剥離と破断の問題があった。発明者らの検討の結果、定性的には熱処理が有効であったが、それだけでは十分ではなく、高加工度領域において樹脂層の剥離が避けられなかった。したがって、先行技術を単純に適用しても樹脂層剥離の問題は解決できなかった。
【0010】
本発明の課題は、上記問題点を解決し、エアゾール2ピース缶のような高加工度の缶体であってもラミネート樹脂層の剥離と破断を防止できる加工度の高い2ピース缶の製造に好適なラミネート鋼板及び加工度の高い2ピースラミネート缶を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明の手段は次のとおりである。
【0012】
(1)最終成形体の高さh、最大半径r、最小半径d(rとdが同じ場合を含む)が、最終成形体と重量が等価となる成形前の円状板の半径Rに対して、0.1≦d/R≦0.25、かつ1.5≦h/(R−r)≦4の関係を満足する2ピース缶の製造に使用するラミネート鋼板であって、鋼板の少なくとも片面に、ポリエステルを主成分とする主相と、主相中に主相と非相溶で分散して存在し、ガラス転位点(Tg)が5℃以下の樹脂からなる副相が混合した混合樹脂からなり、前記混合樹脂中の副相の体積比率が3vol%以上30vol%以下であり、副相のラミネート方向の断面形状は、扁平率が0.50以下である樹脂被覆層を有することを特徴とする2ピース缶用ラミネート鋼板(第1発明)。
【0013】
(2)ガラス転位点(Tg)が5℃以下の樹脂は、ポリオレフィンを主成分とする樹脂であることを特徴とする(1)に記載の2ピース缶用ラミネート鋼板(第2発明)。
【0014】
(3)ポリエステルを主成分とする主相がジカルボン酸成分とジオール成分の縮重合で得られ、ジカルボン酸成分がテレフタル酸、あるいはテレフタル酸及びあるいはイソフタル酸からなり、ジオール成分がエチレングリコールからなるポリエステルであることを特徴とする(1)または(2)に記載の2ピース缶用ラミネート鋼板(第3発明)。
【0015】
(4)ガラス転位点(Tg)が5℃以下の樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン及びアイオノマーのうちから選ばれる1種以上からなることを特徴とする(1)〜(3)のうちのいずれかに記載の2ピース缶用ラミネート鋼板(第4発明)。
【0016】
(5) (1)〜(4)のいずれかの項に記載のラミネート鋼板の円状板を多段成形して製造した2ピースラミネート缶であって、その最終成形体の高さh、最大半径r、最小半径d(rとdが同じ場合を含む)が、最終成形体と重量が等価となる成形前の円状板の半径Rに対して、0.1≦d/R≦0.25、かつ1.5≦h/(R−r)≦4の関係を満足することを特徴とする2ピースラミネート缶(第5発明)。
【発明の効果】
【0017】
本発明のラミネート鋼板を素材として2ピース缶を製造することで、樹脂層の剥離と破断を防止して高加工度の2ピース缶を製造することができる。本発明法で製造された2ピース缶は、高加工度が必要なエアゾール2ピース缶等の用途に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施の形態と限定理由について説明する。
【0019】
図1は本発明の缶体の製造工程の一実施形態を説明する図で、円形状ブランクを絞り加工(DI加工を含む)で有底筒状の成形体に成形し、さらに前記の成形体の開口部近傍を縮径加工して、開口部付近が縮径された2ピース缶を製造する工程順を示している。
【0020】
図1において、1は加工前の円板状ブランク(ブランクシート)、2は基体部で成形体のストレート壁部分(工程Dでは縮径加工されていないストレート壁部分)、3はドーム形状部、4はネック形状部で縮径加工されたストレート壁部分、5はテーパ形状部で、縮径加工後のテーパ壁部分である。
【0021】
まず円状板ブランク1に1段または複数段の絞り加工(DI加工を含む)を行い、所定の缶径(半径r;缶外面の半径)を有する有底筒状の成形体に成形する(工程A)。次に成形体の底部を上方に凸状形状に成形してドーム形状部3を形成するドーム加工を行い(工程B)、さらに成形体の開口側端部をトリムする(工程C)。次に成形体の開口側部分に1段または複数段の縮径加工を行い成形体の開口部側部分を所定の缶径(半径d;缶外面の半径)に縮径加工し、所望の最終成形体(2ピース缶)を得る。図中、R0は成形前円状板ブランク1の半径、h、r、dは、各々、成形途中の段階の成形体または最終成形体の高さ、最大半径、最小半径、Rは最終成形体と重量が等価となる成形前の円状板の半径R最終成形体と重量が等価となる成形前の円状板の半径である。本2ピース缶の製造工程では、工程Aは最大半径と最小半径が同一、すなわちr=dであり、工程Dはr>dである。
【0022】
最終成形体と重量が等価となる成形前の円状板の半径Rは、最終成形体の測定重量に基づき決定される。すなわち、最終成形体の重量を測定し、この重量と同じにな重量になる成形前の円状板の寸法(半径)を求め、これを最終成形体と重量が等価となる成形前の円状板の半径Rとする。缶体の製造工程の途中で缶端部がトリムされるが、最終成形体と重量が等価となる成形前の円状板の半径Rは、トリムの影響が排除されているので、より適切な加工度の評価が可能になる。
【0023】
このように円状板ブランクに絞り加工(DI加工を含む)、縮径加工を適用して作成される2ピース缶においては、樹脂層は、高さ方向に伸ばされ周方向に縮むこととなる。加工度が高い場合、樹脂の変形量が大きくなり、樹脂層の破断につながる。本発明では加工度の指標として、縮み程度を表すパラメータd/Rだけでなく、さらに缶高さ方向の伸びと関連するパラメータh/(R−r)を用いる。これは、高加工度領域において、加工度を表現するのに、絞り比に加えて、伸び量も加味する必要があるからである。即ち、縮みの程度と伸びの程度で加工度を規定することで、樹脂層の変形度合いを定量化していることとなる。樹脂層は高さ方向に伸び、周方向に縮むことで、剥離しやすくなるので、縮みの程度に加えて、高さ方向の伸び量も重要な因子となる。
【0024】
本発明では、最終的に製造された缶体(最終成形体)の加工度について、最終成形体の高さh、最大半径r、最小半径dを、最終成形体と重量が等価となる成形前円状板の半径Rに対して、0.1≦d/R≦0.25、かつ1.5≦h/(R−r)≦4の缶径を満足する範囲に規定する。
【0025】
前述したように、本発明の目的は、ラミネート鋼板を用いて、従来技術では困難であった高加工度の缶体を製造できるようにすることである。従来技術では、ラミネート鋼板を用いて、縮みの程度を規定するパラメータd/Rが0.25以下を満足し、かつ伸びの程度を規定するパラメータh/(R−r)が1.5以上を同時に満足する高加工度の缶体を製造することが困難であった。そのため、本発明では、製造する缶体の加工度d/Rを0.25以下、かつh/(R−r)を1.5以上に規定した。
【0026】
縮みの程度を規定するパラメータd/Rが0.1以下になり、または伸びの程度を規定するパラメータh/(R−r)が4を超える高い加工度であると、成形が可能であってもいたずらに成形段数が増加したり、または加工硬化に伴い板の伸び限界に達し、板破断する問題が生じたりするためである。そのため、本発明では、製造する缶体の加工度について、0.1≦d/R、かつh/(R−r)≦4と規定した。
【0027】
なお、本発明が対象とする多段成形は、絞り加工、絞り・しごき加工、縮径加工のうちのいずれかの加工またはこれらを組み合わせた加工である。縮径加工を含む場合は、最終成形体の寸法dは、r>dである。縮径加工を含まない場合は、最終成形体の寸法はr=d(r、dは最終成形体の缶径)である。
【0028】
本発明で規定する前述の高加工度の加工においては、内部応力の蓄積や、配向による加工硬化の作用によって、樹脂の加工性が大きく劣化していくことが判明した。具体的には、配向によって加工方向と垂直方向の結合が弱まる事で生じる縦割れや、加工方向の伸び限界に達し、破断する横割れ、内部応力の上昇によって生じる樹脂層の剥離などが観察された。
【0029】
これらの諸問題に対して様々な樹脂種を様々な製造方法で作成し、適用を検討した結果、ある特殊な条件下でのオレフィンコンパウンドポリエステル系樹脂が有望であることが判明した。オレフィンコンパウンドポリエステル系樹脂とは、ポリエステルの母相(主相)に副相として柔軟なオレフィン樹脂が分散した樹脂である。この樹脂の変形挙動を調査すると、加工されると、分散樹脂が大きく変形していることが判明した。この効果によって、樹脂層全体の変形に伴う応力が緩和されるものと推定される。また、加工による配向の程度も、単相のものに比較すると緩やかであることも判明した。しかしながら、オレフィンコンパウンドポリエステル系樹脂が、全てが良好な特性を示したわけではなかった。
【0030】
樹脂層を鋼板の上層に配置する手法を大別すると、樹脂フィルムを圧着法によってラミネートする方法と、Tダイなどを用いて樹脂層を鋼板上に直接成形する直接押し出し法に分かれる。また、フィルム圧着法におけるフィルムの製造方法も、2軸延伸などの延伸法にて調製される場合と、押し出し法により無延伸(あるいは巻き取り方向に僅かの延伸を伴う)状態で作製される方法に大別される。
【0031】
オレフィンコンパウンドポリエステル系樹脂を被覆したラミネート鋼板の一連の検討を行った結果、押し出し法(直接押し出し法)によって作製されたもの、2軸延伸フィルムを鋼板に熱圧着する際に、樹脂層を十分融解してラミネートしたものが有望であることが判明した。更に詳細な調査を行うと、副相の扁平率が大きく関与していることが明らかとなった。
【0032】
延伸などにより母相の樹脂が変形すると、副相のオレフィン樹脂もこれに伴い変形する。溶融状態のコンパウンド樹脂に延伸を加えず、冷却すると、副相樹脂は、ほぼ球状となる。延伸法は、半溶融状態の樹脂を引き伸ばして薄くする手法であるが、この手法によって副相樹脂は変形し、扁平状となる。具体的には、変形は延伸に伴う膜厚の減少に応じて厚さ方向に縮み、延伸方向に伸びる。等倍延伸の2軸延伸法の場合、副相の樹脂は延伸面内では等方的に円状となり、厚さ方向に縮む。製膜方向に一軸延伸をかけた場合は、厚さ方向に縮み、製膜方向に伸ばされる為、フィルム面と平行なフィルム断面を観察した場合は、製膜方向に長い楕円状となる。製膜方向のフィルム断面を観察した場合も製膜方向に長い楕円状となる。製膜直角方向のフィルム断面を観察した場合は、略円状〜やや厚さ方向に縮んだ形状となる。即ち、延伸などの加工を受けることで、副相は扁平化するのである。そして、その扁平の程度が、加工性や剥離性に影響を与えることが判明したのである。
【0033】
副相の扁平率が低いものは、加工性や加工後の密着性が優れる傾向にあった。即ち、高加工度の加工に対しては、オレフィンコンパウンドポリエステル系樹脂を被覆したラミネート鋼板の中で、副相の扁平率が低いほど良好な加工性や加工後密着性を発現することが判った。製缶加工における延伸方向と加工方向の関係は、缶の位置に応じて、平行から垂直まで連続的に変化する。副相の扁平率が高い場合は、加工に伴う副相の変形余地が少ない方位が生ずることとなる。即ち、もともと加工方向に伸びた状態にある副相は、その後の加工においては、伸びる余地が少ないと考えられ、この事が副相本来の効果を減じているものと推定される。いずれにしても、扁平率が0.50を上回ると加工性や加工後密着性に影響が出始めるため、本発明では、副相の扁平率を0.50以下と規定した。ここで、扁平率は、扁平率=(長軸−短軸)/(長軸)で定義される。
【0034】
副相のガラス転移点を5℃以下と決めた理由は5℃を上回るものは、加工の際に、容易に変形しないことがあるためであり、このことにより、副相の効果が発現しないためである。
【0035】
主相と副相が混合した混合樹脂中の副相の体積比率を3vol%以上30vol%以下に規定したのは、副相の体積比率が3vol%未満になると副相の効果が発現されず、30vol%を超えると、副相粒が樹脂層中に安定的して存在できなくなるためである。
【0036】
主相のポリエステルを主成分とする樹脂は、加工に必要な伸びと強度のバランスの観点から、ジカルボン酸成分とジオール成分の縮重合で得られ、ジカルボン酸成分がテレフタル酸、あるいはテレフタル酸及びあるいはイソフタル酸からなり、ジオール成分がエチレングリコールからなるポリエステルが好適である。
【0037】
副相のガラス転位点(Tg)が5℃以下の樹脂は、変形性の点から、ポリオレフィンを主成分とする樹脂が好ましく、また汎用性、分散性、コストの点から、ポリエチレン、ポリプロピレン及びアイオノマーのうちから選ばれる1種以上が好ましい。
【0038】
本発明のラミネート鋼板は、樹脂層中に顔料や滑剤、安定剤などの添加剤を加えて用いても良いし、本発明で規定する樹脂層に加えて他の機能を有する樹脂層を上層または下地鋼板との中間層に配置しても良い。
【0039】
樹脂層の膜厚は特に限定されないが、10μm以上50μm以下が好ましい。フィルムラミネートの場合、10μm未満のフィルムコストは一般的に高価になり、また、膜厚は厚いほど加工性に優れるが高価になり、50μmを超えた場合は、加工性に対する寄与は飽和しており、高価となるためである。
【0040】
本発明で規定するラミネート鋼板は、鋼板の少なくとも片面に本発明で規定する樹脂層が被覆されていればよい。
【0041】
また、鋼板へのラミネート方法は特に限定されないが、2軸延伸フィルム、あるいは無延伸フィルムを熱圧着させる熱圧着法、Tダイなどを用いて鋼板上に直接樹脂層を形成させる押し出し法など適宜選択すればよく、いずれも十分な効果が得られることが確認されている。
【0042】
本発明のラミネート鋼板は、下地金属板は鋼板であるので、アルミニウムなどに比較して安価であり、経済性に優れるからである。鋼板は、一般的なティンフリースチールやぶりきなどを用いると良い。ティンフリースチールは、例えば、表面に付着量50〜200mg/mの金属クロム層と、金属クロム換算の付着量が3〜30mg/mのクロム酸化物層を有することが好ましい。ぶりきは0.5〜15g/mのめっき量を有するものが好ましい。板厚は、特に限定されないが、例えば、0.15〜0.30mmの範囲のものを適用できる。また、経済性を考慮に入れなければ、本技術はアルミニウム素材にも単純に適用できる。
【0043】
本発明のラミネート鋼板を用いて多段成形して2ピース缶を製造する際は、樹脂層の剥離を防止するために、加工途中の段階や最終工程で成形体をポリエステル樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱する熱処理を施し、樹脂内の内部応力を緩和することも好適である。更には、ポリエステル樹脂の融点以上の温度に加熱して処理することで加工による配向を消失させることも適宜実施してよい。
【0044】
熱処理の方法については、特に限定されるものではなく、電気炉、ガスオーブン、赤外炉、インダクションヒーターなどで同様の効果が得られることが確認されている。また、加熱速度、加熱時間、冷却速度は効果に応じて適宜選択すればよいが、加熱速度は速いほど効率的であり、加熱時間の目安は15秒〜60秒程度であるが、この範囲に限定されるものでない。また、冷却時間が遅いと球晶の生成量が増大する為、品質的には好ましくない。従って、熱処理終了後ポリエステル樹脂のガラス転移点以下の温度に冷却する冷却時間は短いほど良い。
【実施例1】
【0045】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0046】
「ラミネート鋼板の作製」
下地金属板として厚さ0.20mmのT4CA、TFS(金属Cr層:120mg/m、Cr酸化物層:金属Cr換算で10mg/m)を用い、この原板に対して、フィルムラミネート法(フィルム熱圧着法)、あるいはダイレクトラミネート法(直接押し出し法)を用いて種々の樹脂層を形成させた。尚、フィルムラミネートについては、2軸延伸フィルムを用いたものと無延伸フィルムを用いたものの2通りを実施した。金属板の両面に各々厚さ25μmのフィルムをラミネートした。
【0047】
作製したラミネート鋼板の樹脂中の分散粒子の形状をつぎのようにして測定した。
【0048】
<分散粒の形状測定>
作製されたラミネート鋼板を樹脂に埋め込み、ラミネート長手方向の断面が観察できるように研磨を行った。続いて、研磨面を1N−NaOH溶液中に10分ほど浸漬した後、水洗を行った。この断面を走査型電子顕微鏡にて分散しているオレフィン粒を50個観察し、それぞれの長径、短径を測定し、扁平率を求め、その平均値を扁平率とした。
【0049】
ラミネート鋼板の製造方法と作製したラミネート鋼板の内容を表1及び表2に示す。
【0050】
ラミネート法は次のとおりである。
熱圧着法1:2軸延伸法で作成したフィルムを、鋼板を樹脂の融点+10℃まで加熱した状態で、ニップロールにて熱圧着し、次いで7秒以内に水冷によって冷却した。
熱圧着法2:無延伸フィルムを、鋼板を樹脂の融点+10℃まで加熱した状態でニップロールにて熱圧着し、次いで7秒以内に水冷によって冷却した。
押し出し法:樹脂ペレットを押し出し機にて混練、溶融させ、Tダイより、走行中の鋼板上に被覆し、次いで樹脂被覆された鋼板を80℃の冷却ロールにてニップ冷却させ、更に、水冷によって冷却した。
【0051】
【表1】


【0052】
【表2】


【0053】
「缶体成形」
作製した供試鋼板を用いて、図1に示した製造工程に準じて、以下の手順で缶体(最終成形体)を作製した。中間成形体(工程C)及び最終成形体(工程D)の形状を表3に示す。工程Aの絞り加工は5段階で行い、工程Dの縮径加工は7段階で行った。
【0054】
表3において、最終成形体(工程D)のh、r、d、ha、hc、Rは、各々最終成形体の開口端部までの高さ、基体部2の直径、ネック形状部3の直径、基体部2の高さ、ネック形状部3の高さ、最終成形体と重量が等価となる成形前の円状板ブランクの半径である(図1参照)。円状板ブランクの半径Rは、次のようにして求めた。成形前のブランクシートの重量及びトリム工程後の最終成形体の重量を測定し、この測定結果に基づき、最終成形体と重量が等価となる成形前ブランクシートの半径を求め、この半径を最終成形体と重量が等価となる成形前の円状板ブランクの半径Rとした。
【0055】
【表3】


【0056】
1)ブランキング(66〜94mmφ)
2)絞り加工及びしごき加工(工程A)
5段の絞り加工にて、缶体の半径r、高さhが、r/R:0.24〜0.34、h/(R−r):1.84〜3.09の範囲の缶体(中間缶体)を作製した。また、所望の缶体を作製する為に、適宜、しごき加工も併用した。
3)缶底部のドーム形状加工(工程B)
缶底部に、深さ6mmの半球状の張り出し加工を行った。
4)トリム加工(工程C)
缶上端部を2mmほどトリムした。
5)円筒上部の縮径加工(工程D)
円筒上部に縮径加工を施し、具体的には、内面テーパ形状のダイに開口端部を押し当てて縮径を行うダイネック方式にて実施し、表3に示した最終的な缶体形状の缶体を作製した。
【0057】
上記手順で作製した缶体のフィルム層の密着性、加工性、外観を以下のようにして評価した。評価結果を表4に記載した。
【0058】
【表4】


【0059】
<密着性試験>
缶体を周方向巾15mmになるように缶高さ方向に略長方形に剪断し、その缶高さ方向で底面から10mmの位置を、周方向に直線状に、鋼板のみを剪断した。結果、剪断位置を境に缶高さ方向底面側に10mm部分と残余の部分からなる試験片が作成された。10mmの部分に巾15mm、長さ60mmの鋼板を繋ぎ(溶接)、60mm鋼板部分を持って、残余部分のフィルムを破断位置から10mmほど剥離させる。フィルムを剥離した部分と60mm鋼板部分を掴みしろとして180°方向にピール試験を実施した。観測されたピール強度の最小値を密着性の指標とした。
「ピール強度」
5N/15mm未満:×
5N/15mm以上7N/15mm未満:○
7N/15mm以上:◎
【0060】
<フィルム加工性評価>
成缶後の樹脂層外面側を目視及び光顕観察を行い、フィルムに破断があるかないかを確認した。外観が正常なものを○、破断や亀裂が確認されたものを×とした。
【0061】
「評価結果」
缶体C1〜C20は、本発明の実施例であり、フィルム密着性、加工性ともに良好な値を示した。
【0062】
缶体C21〜C23は、本発明の実施例ではあるが、扁平率が比較的高く密着性の評価は○に留まった。
【0063】
缶体C27は、副相の体積比率が本発明下限を外れるものであり、加工性、密着性ともに評価は×であった。
【0064】
缶体C28、C31は、副相のTgが本発明上限を外れるものであり、加工性、密着性ともに評価は×であった。
【0065】
缶体29は、PET単相であり、加工性、密着性ともに評価は×であった。
【0066】
缶体C30は、酸変性エチレンメタクリル酸メチル共重合体50%Zn中和物単相であり、加工性、密着性ともに評価は×であった。
【0067】
缶体C32〜34は、扁平率が本発明範囲を外れるものである。密着性、加工性伴に×となった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のラミネート鋼板は、ラミネート樹脂層の剥離と破断を防止できる高加工度の2ピース缶の素材として利用することができる。本発明法の2ピースラミネート缶は、高加工度が要求されるエアゾール缶等の用途に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の缶体の製造工程の一実施形態を説明する図である。
【符号の説明】
【0070】
1 ブランクシート
2 基体部
3 ドーム形状部
4 ネック形状部
5 テーパ形状部




 

 


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