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2ピース缶用ラミネート鋼板、2ピース缶の製造方法および2ピースラミネート缶 - JFEスチール株式会社
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発明の名称 2ピース缶用ラミネート鋼板、2ピース缶の製造方法および2ピースラミネート缶
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−45115(P2007−45115A)
公開日 平成19年2月22日(2007.2.22)
出願番号 特願2005−234553(P2005−234553)
出願日 平成17年8月12日(2005.8.12)
代理人 【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
発明者 久保 啓 / 小島 克己 / 西原 友佳 / 安江 良彦 / 岩佐 浩樹
要約 課題
エアゾール2ピース缶のような高加工度の缶体を製造してもラミネート樹脂層の剥離と破断を防止できる2ピース缶用ラミネート鋼板を提供する。

解決手段
最終成形体の高さh、最大半径r、最小半径dが最終成形体と重量が等価となる成形前の円状板の半径Rに対して、0.1≦d/R≦0.25かつ1.5≦h/(R−r)≦4の関係を満足する2ピース缶用ラミネート鋼板で、ジカルボン酸成分とジオール成分の縮重合で得られ、ジカルボン酸成分はテレフタル酸を主成分とし、その他の共重合成分に、イソフタル酸成分を含み、あるいは含まず、ジオール成分として、エチレングリコール及び/または、ブチレングリコールを主成分として、その他の共重合成分に、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオ−ルを含み、あるいは含まない樹脂であって、共重合成分がモル比で8mol%未満で、面配向係数が0.06以下のポリエステル樹脂被覆層を有する。
特許請求の範囲
【請求項1】
最終成形体の高さh、最大半径r、最小半径d(rとdが同じ場合を含む)が、最終成形体と重量が等価となる成形前の円状板の半径Rに対して、0.1≦d/R≦0.25、かつ1.5≦h/(R−r)≦4の関係を満足する2ピース缶の製造に使用するラミネート鋼板であって、鋼板の少なくとも片面に、ジカルボン酸成分とジオール成分の縮重合で得られ、ジカルボン酸成分はテレフタル酸を主成分とし、その他の共重合成分に、イソフタル酸成分を含み、あるいは含まず、ジオール成分として、エチレングリコール及び/または、ブチレングリコールを主成分として、その他の共重合成分に、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオ−ルを含み、あるいは含まない樹脂であって、共重合成分がモル比で8mol%未満であり、面配向係数が0.06以下のポリエステル樹脂被覆層を有することを特徴とする2ピース缶用ラミネート鋼板。
【請求項2】
ラミネート鋼板の円状板を多段成形して、最終成形体の高さh、最大半径r、最小半径d(rとdが同じ場合を含む)が、最終成形体と重量が等価となる成形前の円状板の半径Rに対して、0.1≦d/R≦0.25、かつ1.5≦h/(R−r)≦4の関係を満足する最終成形体を製造する際に、ラミネート鋼板として請求項1に記載のラミネート鋼板を使用することを特徴とする2ピース缶の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の最終成形体を製造する際に、成形の中間段階において、成形体をその温度が150℃以上、ポリエステル樹脂の融点以下となるように加熱する熱処理を1回以上行うことを特徴とする2ピース缶の製造方法。
【請求項4】
前記熱処理は、中間段階の成形体の高さh、最大半径r、最小半径d(rとdが同じ場合を含む)が、最終成形体の開口部先端に対応する絞り加工前の円状板位置の半径Rに対して、0.2≦d/R≦0.5、かつ1.5≦h/(R−r)≦2.5の関係を満足する中間段階において行うことを特徴とする請求項3に記載の2ピース缶の製造方法。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれかに記載の方法により製造した2ピースラミネート缶。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばエアゾール缶のような加工度の高い2ピース缶の製造に好適なラミネート鋼板、2ピース缶の製造方法および加工度の高い2ピースラミネート缶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エアゾール用金属容器には、大別して2ピース缶と3ピース缶が存在する。2ピース缶は、シーム部(溶接部)が存在しないことで外観が美麗である反面、一般的に加工程度が高い。3ピース缶はシーム部が存在することで、2ピース缶に比較すると、外観性が劣るが、一般的に加工程度が低い。この為、市場においては小容量で高級品には2ピース缶が多く使用され、大容量で低価格品には3ピース缶が多く使用されている。
【0003】
エアゾール2ピース缶における金属素材は、一般的に、高価で板厚の厚いアルミニウムなどが用いられており、安価で板厚の薄いぶりきやティンフリースチールなどの鋼板素材はほとんど用いられていない。その理由は、エアゾール2ピース缶は加工度が高いため、絞り加工やDI加工の適用が難しく、アルミニウムでは軟質金属材料に対して適用可能なインパクト成形を適用して製造しているからである。このような状況下、安価で、薄くても強度の高いぶりきやティンフリースチールなどの鋼板素材を用いることができれば、産業的な意義は非常に大きい。
【0004】
従来、ラミネート鋼板の絞り加工及びDI加工法は種々提案されているが、エアゾール2ピース缶のように、絞り加工比が高く、缶高さ方向の延伸度が大きな缶体の製造法は提案されていない。
【0005】
例えば、特許文献1〜3は、樹脂被覆金属板の絞り加工及び絞りしごき加工の加工方法を開示したものであるが、特許文献1〜3に記載の加工度(特許文献1〜3では絞り比)は本発明で規定するものよりも低い範囲にある。特許文献1〜3は飲料缶、食缶などをターゲットとしており、飲料缶、食缶は、本発明で規定する加工度の範囲より低い加工度の缶体であるためである。
【0006】
特許文献2、3においては、樹脂層の剥離防止や加工後のバリア性を意図して、加工中、及びあるいは加工の途中段階、あるいは最終段階で熱処理を施すことが記載されており、特許文献2では配向性熱可塑性樹脂が用いられ、特許文献3では飽和ポリエステルとアイオノマーのコンパウンド材などが用いられている。
【0007】
特許文献4、5は、主として樹脂の融点以上で熱処理を施すことによって内部応力を緩和するものであり、缶成形後の段階で適用することが記載されている。また、その缶体の加工度は、明細書本文や実施例の記載を見る限り低い。
【0008】
また、特許文献2は、内部応力の緩和と配向結晶化促進の為の熱処理の提案であり、現在、飲料缶などで一般的に用いられる手法となっている。特許文献中に明確な記載はないが、配向結晶化は、融点以下の温度で促進する為、熱処理温度は融点以下だと推定される。また、本文、実施例の記載を見る限り、本発明で規定する加工度に比較するとそれより低い加工度のものを対象としていることがわかる。
【特許文献1】特公平7−106394号公報
【特許文献2】特許第2526725号公報
【特許文献3】特開2004−148324号公報
【特許文献4】特公昭59−35344号公報
【特許文献5】特公昭61−22626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術においては、ラミネート鋼板を用いてエアゾール2ピース缶のように高加工度の成形を行う缶体の製造法は提案されていなかった。そこで、発明者らは、ラミネート鋼板を用いて、絞りしごき加工によって有底筒状に成形後その開口部近傍部分を縮径加工する加工度の高い2ピース缶を製造したところ、高加工特有の問題が発生、具体的には、樹脂層の剥離と破断の問題があった。発明者らの検討の結果、定性的には熱処理が有効であったが、それだけでは十分ではなく、高加工度領域において樹脂層の剥離が避けられなかった。したがって、先行技術を単純に適用しても樹脂層剥離の問題は解決できなかった。また、熱処理工程以降の工程で樹脂層の加工性が劣化する問題もあった。
【0010】
本発明の課題は、上記問題点を解決し、エアゾール2ピース缶のような高加工度の缶体を製造してもラミネート樹脂層の剥離と破断を防止できる2ピース缶用ラミネート鋼板および2ピース缶の製造方法を提供することである。また本発明の課題は、ラミネート鋼板を用いたエアゾール2ピース缶の如き高加工度の缶体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
高加工度の加工において樹脂層に求められる重要な特性は、変形のし易さであると考える。発明者らの検討によると、ポリエチレンテレフタレート共重合系、あるいはポリブチレンテレフタレート共重合系が有望であることがわかった。そして、この樹脂を被覆したラミネート鋼板を多段成形して2ピース缶を製造する際に、成形の途中段階で特定の条件で熱処理することで、樹脂層の剥離と破断を防止でき、高加工度の2ピース缶を製造できることがわかった。本発明はこの知見に基づく。
【0012】
上記課題を解決する本発明の手段は次のとおりである。
【0013】
(1)最終成形体の高さh、最大半径r、最小半径d(rとdが同じ場合を含む)が、最終成形体と重量が等価となる成形前の円状板の半径Rに対して、0.1≦d/R≦0.25、かつ1.5≦h/(R−r)≦4の関係を満足する2ピース缶の製造に使用するラミネート鋼板であって、鋼板の少なくとも片面に、ジカルボン酸成分とジオール成分の縮重合で得られ、ジカルボン酸成分はテレフタル酸を主成分とし、その他の共重合成分に、イソフタル酸成分を含み、あるいは含まず、ジオール成分として、エチレングリコール及び/または、ブチレングリコールを主成分として、その他の共重合成分に、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオ−ルを含み、あるいは含まない樹脂であって、共重合成分がモル比で8mol%未満であり、面配向係数が0.06以下のポリエステル樹脂被覆層を有することを特徴とする2ピース缶用ラミネート鋼板(第1発明)。
【0014】
(2)ラミネート鋼板の円状板を多段成形して、最終成形体の高さh、最大半径r、最小半径d(rとdが同じ場合を含む)が、最終成形体と重量が等価となる成形前の円状板の半径Rに対して、0.1≦d/R≦0.25、かつ1.5≦h/(R−r)≦4の関係を満足する最終成形体を製造する際に、ラミネート鋼板として請求項1に記載のラミネート鋼板を使用することを特徴とする2ピース缶の製造方法(第2発明)。
【0015】
(3) (2)に記載の最終成形体を製造する際に、成形の中間段階において、成形体をその温度が150℃以上、ポリエステル樹脂の融点以下となるように加熱する熱処理を1回以上行うことを特徴とする2ピース缶の製造方法(第3発明)。
【0016】
(4)前記熱処理は、中間段階の成形体の高さh、最大半径r、最小半径d(rとdが同じ場合を含む)が、最終成形体の開口部先端に対応する絞り加工前の円状板位置の半径Rに対して、0.2≦d/R≦0.5、かつ1.5≦h/(R−r)≦2.5の関係を満足する中間段階において行うことを特徴とする(3)に記載の2ピース缶の製造方法(第4発明)。
【0017】
(5) (2)〜(4)のいずれかに記載の方法により製造した2ピースラミネート缶(第5発明)。
【発明の効果】
【0018】
本発明のラミネート鋼板を用いて2ピース缶を製造すると樹脂層の剥離と破断を防止して高加工度の2ピース缶を製造することができる。本発明のラミネート鋼板を多段成形して本発明で規定する高加工度の2ピース缶を製造する際に、成形の中間段階において、成形体をその温度が150℃以上、ポリエステル樹脂の融点以下となるように加熱する熱処理を1回以上行うことで樹脂層の剥離と破断を防止できる。本発明法で製造された2ピース缶は、高加工度が必要なエアゾール2ピース缶等の用途に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態と限定理由について説明する。
【0020】
図1は本発明の缶体の製造工程の一実施形態を説明する図で、円形状ブランクを絞り加工(DI加工を含む)で有底筒状の成形体に成形し、さらに前記の成形体の開口部近傍を縮径加工して、開口部付近が縮径された2ピース缶を製造する工程順を示している。
【0021】
図1において、1は加工前の円板状ブランク(ブランクシート)、2は基体部で成形体のストレート壁部分(工程Dでは縮径加工されていないストレート壁部分)、3はドーム形状部、4はネック形状部で縮径加工されたストレート壁部分、5はテーパ形状部で、縮径加工後のテーパ壁部分である。
【0022】
まず円状板ブランク1に1段または複数段の絞り加工(DI加工を含む)を行い、所定の缶径(半径r;缶外面の半径)を有する有底筒状の成形体に成形する(工程A)。次に成形体の底部を上方に凸状形状に成形してドーム形状部3を形成するドーム加工を行い(工程B)、さらに成形体の開口側端部をトリムする(工程C)。次に成形体の開口側部分に1段または複数段の縮径加工を行い成形体の開口部側部分を所定の缶径(半径d;缶外面の半径)に縮径加工し、所望の最終成形体(2ピース缶)を得る。図中、R0は成形前円状板ブランク1の半径、h、r、dは、各々、成形途中の段階の成形体または最終成形体の高さ、最大半径、最小半径、Rは最終成形体と重量が等価となる成形前の円状板の半径R最終成形体と重量が等価となる成形前の円状板の半径である。本2ピース缶の製造工程では、工程Aは最大半径と最小半径が同一、すなわちr=dであり、工程Dはr>dである。
【0023】
最終成形体と重量が等価となる成形前の円状板の半径Rは、最終成形体の測定重量に基づき決定される。すなわち、最終成形体の重量を測定し、この重量と同じにな重量になる成形前の円状板の寸法(半径)を求め、これを最終成形体と重量が等価となる成形前の円状板の半径Rとする。缶体の製造工程の途中で缶端部がトリムされるが、最終成形体と重量が等価となる成形前の円状板の半径Rは、トリムの影響が排除されているので、より適切な加工度の評価が可能になる。
【0024】
このように円状板ブランクに絞り加工(DI加工を含む)、縮径加工を適用して作成される2ピース缶においては、樹脂層は、高さ方向に伸ばされ周方向に縮むこととなる。加工度が高い場合、樹脂の変形量が大きくなり、樹脂層の破断につながる。本発明では加工度の指標として、縮み程度を表すパラメータd/Rだけでなく、さらに缶高さ方向の伸びと関連するパラメータh/(R−r)を用いる。これは、高加工度領域において、加工度を表現するのに、絞り比に加えて、伸び量も加味する必要があるからである。即ち、縮みの程度と伸びの程度で加工度を規定することで、樹脂層の変形度合いを定量化していることとなる。樹脂層は高さ方向に伸び、周方向に縮むことで、剥離しやすくなるので、縮みの程度に加えて、高さ方向の伸び量も重要な因子となる。
【0025】
本発明では、最終的に製造された缶体(最終成形体)の加工度について、最終成形体の高さh、最大半径r、最小半径dを、最終成形体と重量が等価となる成形前の円状板の半径Rに対して、0.1≦d/R≦0.25、かつ1.5≦h/(R−r)≦4の缶径を満足する範囲に規定する。
【0026】
前述したように、本発明の目的は、ラミネート鋼板を用いて、従来技術では困難であった高加工度の缶体を製造できるようにすることである。従来技術では、ラミネート鋼板を用いて、縮みの程度を規定するパラメータd/Rが0.25以下を満足し、かつ伸びの程度を規定するパラメータh/(R−r)が1.5以上を同時に満足する高加工度の缶体を製造することが困難であった。そのため、本発明では、製造する缶体の加工度d/Rを0.25以下、かつh/(R−r)を1.5以上に規定した。
【0027】
縮みの程度を規定するパラメータd/Rが0.1以下になり、または伸びの程度を規定するパラメータh/(R−r)が4を超える高い加工度であると、成形が可能であってもいたずらに成形段数が増加したり、または加工硬化に伴い板の伸び限界に達し、板破断する問題が生じたりするためである。そのため、本発明では、製造する缶体の加工度について、0.1≦d/R、かつh/(R−r)≦4と規定した。
【0028】
なお、本発明が対象とする多段成形は、絞り加工、絞り・しごき加工、縮径加工のうちのいずれかの加工またはこれらを組み合わせた加工である。縮径加工を含む場合は、最終成形体の寸法dは、r>dである。縮径加工を含まない場合は、最終成形体の寸法はr=d(r、dは最終成形体の缶径)である。
【0029】
本発明では、前述の2ピース缶の製造に使用する素材金属板として、ポリエステル樹脂を被覆したラミネート鋼板を規定している。
【0030】
下地金属素材が、鋼板であるのは、アルミニウムなどに比較して安価であり、経済性に優れるからである。鋼板は、一般的なティンフリースチールやぶりきなどを用いると良い。ティンフリースチールは、例えば、表面に付着量50〜200mg/mの金属クロム層と、金属クロム換算の付着量が3〜30mg/mのクロム酸化物層を有することが好ましい。ぶりきは0.5〜15g/mのめっき量を有するものが好ましい。板厚は、特に限定されないが、例えば、0.15〜0.30mmの範囲のものを適用できる。また、経済性を考慮に入れなければ、本技術はアルミニウム素材にも単純に適用できる。
【0031】
前述の高加工度の加工において樹脂層に求められる重要な特性は、変形のし易さであると考えられ、発明者らの検討によると、カルボン酸成分とジオール成分の縮重合で得られ、ジカルボン酸成分はテレフタル酸を主成分とし、その他の共重合成分に、イソフタル酸成分を含み、あるいは含まず、ジオール成分として、エチレングリコール及び/または、ブチレングリコールを主成分として、その他の共重合成分に、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオ−ルを含み、あるいは含まないポリエステル樹脂が有望であることがわかった。そのため、本発明では、樹脂層の樹脂種を上記の樹脂に規定した。
【0032】
しかし、このポリエステル樹脂は、共重合比率が高い場合は、低い場合に比較すると、内部応力が発生し易い傾向にあり、結果として樹脂の剥離が生じやすい傾向にあることがわかった。詳細原因は不明であるが、配向のし易さ、し難さが関与しているものと考えられる。缶成形によって樹脂は周方向に縮み変形、高さ方向に伸び変形を受け、缶高さ方向に配向する傾向がある。この時、分子形状が単純な方が複雑なものに比較してスムーズに並びやすく、結果として内部応力が生じ難いのではないかと考えている。即ち、同等の変形を受けた時、分子形状が単純な低共重合化比率のものの方が、高いものに比べて、変形の際に生じる内部応力が増加し難いと考えられつのである。この観点から、本発明では、共重合成分の比率を8mol%未満と規定した。
【0033】
また、本発明で規定する高加工度の成形に樹脂層が追随する為には、ラミネート鋼板の樹脂層の初期の配向も重要であることが判明した。即ち、2軸延伸等で作成されたフィルムは面方向に配向しているが、ラミネート後も配向が高い状態にあると、加工に追随できず、破断にいたる。このような観点から、本発明では面配向係数を0.06以下と規定した。面配向係数の高い2軸延伸フィルムを用いてこのようなラミネート鋼板を作成するには、ラミネート時の温度を上げ、十分に配向結晶を融解してやればよい。あるいは、押出し法によって作成されたフィルムは、ほとんど無配向であるので、この観点からは好適である。同様に、鋼板に直接溶融樹脂をラミネートするダイレクトラミネート法も同様の理由で好適となる。
【0034】
本発明で規定するラミネート鋼板は、樹脂層中に顔料や滑剤、安定剤などの添加剤を加えて用いても良いし、本発明で規定する樹脂層に加えて他の機能を有する樹脂層を上層または下地鋼板との中間層に配置しても良い。
【0035】
樹脂層の厚みが厚くなると内部応力の増大が大きく、剥離性は厳しくなるが、本発明で規定する樹脂層を用いると、厚い樹脂層であっても好適に用いることができる。樹脂厚は加工程度やその他要求特性に応じて適宜選択すればよいが、例えば、10μm以上50μm以下のものが好適に使用できる。特に20μm以上の樹脂層が厚い範囲においては、本発明の効果の寄与が大きい領域である。
【0036】
本発明で規定するラミネート鋼板は、鋼板の少なくとも一方の面に本発明で規定する樹脂層が被覆されていればよい。
【0037】
また、鋼板へのラミネート方法は特に限定されないが、2軸延伸フィルム、あるいは無延伸フィルムを熱圧着させる熱圧着法、Tダイなどを用いて鋼板上に直接樹脂層を形成させる押し出し法など適宜選択すればよく、いずれも十分な効果が得られることが確認されている。
【0038】
本発明で規定する高加工度の缶体を作製する場合に、加工条件や樹脂種によっては密着力の低下が生じる。したがって、缶体の用途や仕様に応じて必要な密着力を確保する必要があるが、この場合、多段成形の途中の段階で、成形体をその温度が150℃以上、ポリエステル樹脂の融点以下となるように加熱する熱処理を1回以上行うことが有効である。この熱処理は、加工によって生じる内部応力を緩和する為のものであるが、内部応力を緩和することで密着性を高める効果がある。即ち、本発明で定める高加工度の缶体は、樹脂層において歪の程度が大きく、大きな内部応力が生じやすい傾向にある。その結果、この内部応力を駆動力として樹脂層の剥離が生じてしまう場合がある。成形の途中段階で適切な熱処理を施すと、その内部応力が緩和され、密着力の低下が抑制できる。しかしながらこの熱処理によって、樹脂の配向結晶化が進んで樹脂層の加工性を低下させる負の側面がある。特に、本発明が規定する高加工度の領域では、熱処理後にも加工が必要な場合があり、その加工においては、樹脂の配向結晶化によって樹脂は破断しやすくなるので、配向結晶は有害である。
【0039】
このような観点から、本発明では樹脂種の限定に加えて熱処理条件及び熱処理のタイミングを定めている。
【0040】
本発明では、熱処理条件として、中間段階において、成形体をその温度が150℃以上、ポリエステル樹脂の融点以下となるように加熱することを規定する。熱処理温度がポリエステル樹脂の融点を超えると、表層の肌荒れや、樹脂が接触物に付着したりするなどの弊害が現れる。一方、熱処理温度の下限は、内部応力緩和の効率を考慮して定められたものである。即ち、ポリエステル樹脂のガラス転移点Tg以上の温度では内部応力の緩和が進むが、低すぎると緩和に要する時間がかかりすぎる。この観点から下限温度を150℃と定めている。従って、処理時間が問題にならないような生産プロセスにおいては本発明の技術思想を用いて150℃未満の熱処理温度を選択できるが、一般的には生産性が悪化する。より望ましい熱処理温度は170℃以上、ポリエステル樹脂の融点−20℃以下である。
【0041】
本発明では、熱処理を行うタイミングを、中間段階の成形体の高さh、最大半径r、最小半径d(rとdが同じ場合を含む)が、最終成形体の開口部先端に対応する絞り加工前の円状板位置の半径Rに対して、0.2≦d/R≦0.5、かつ1.5≦h/(R−r)≦2.5の関係を満足する中間段階で行うことを規定する。
【0042】
熱処理のタイミングを上記のように定めたのは、加工度が前記範囲にあると熱処理が最も効果的に行なわれるからである。即ち、加工度が緩やかな段階で熱処理を行うのは、内部応力が高くない段階での内部応力緩和であるため前述の効果が小さい。また、加工度が高すぎる段階で熱処理を行うのは、密着力が落ちてその結果として、剥離が生じてしまう可能性があるため、遅きに失する場合がある。このような観点から加工度の上限と下限を前記のように定めた。
【0043】
熱処理は、工程A、工程Dのいずれか一方または両方で行うことができる。上述の熱処理のタイミングに関し、rとdが同じ場合を含むのは、縮径加工を含む缶の製造工程において、工程Aで熱処理を行う場合が含まれることがあり、あるいは縮径加工を含まない缶の製造工程では、rとdが同じ径になるためである。熱処理は、内部応力緩和の必要性に応じて2以上の中間段階で行ってもよい。
【0044】
熱処理の方法については、特に限定されるものではなく、電気炉、ガスオーブン、赤外炉、インダクションヒーターなどで同様の効果が得られることが確認されている。また、加熱速度、加熱時間、冷却時間は内部応力の緩和によるプラス効果と配向結晶化によるマイナス効果の双方を考慮して適宜選択すればよいが、加熱速度は速いほど効率的であり、加熱時間の目安は15秒〜60秒程度であるが、この範囲に限定されるものでない。また、冷却時間が遅いと球晶の生成量が増大する為、品質的には好ましくない。従って、冷却時間は速いほど良い。
【実施例1】
【0045】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0046】
「ラミネート鋼板の作製」
下地金属板として厚さ0.20mmのT4CA、TFS(金属Cr層:120mg/m、Cr酸化物層:金属Cr換算で10mg/m)を用い、この原板に対して、フィルムラミネート法(フィルム熱圧着法)、あるいはダイレクトラミネート法(直接押し出し法)を用いて種々の樹脂層を形成させた。尚、フィルムラミネートについては、2軸延伸フィルムを用いたものと無延伸フィルムを用いたものの2通りを実施した。金属板の両面に各々厚さ25μmのフィルムをラミネートした。
【0047】
前記で作製したラミネート鋼板のラミネートフィルムの面配向係数を以下のようにして算出した。
【0048】
「面配向係数の測定」
アッベ屈折計を用い、光源はナトリウム/D線、中間液はヨウ化メチレン、温度は25℃の条件で屈折率を測定して、フィルム面の縦方向の屈折率Nx、フィルム面の横方向の屈折率Ny、フィルムの厚み方向の屈折率Nzを求め、下式から面配向係数Zsを算出した。
面配向係数(Ns)=(Nx+Ny)/2−Nz
【0049】
ラミネート鋼板の製造方法と作製したラミネート鋼板の内容を表1に示す。表1に記載の樹脂種は次のとおりである。
PET:ポリエチレンテレフタレート
PET−I:ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体(イソフタル酸共重合比率12mol%)
PET−PBT(60):ポリエチレンテレフタレート−ブチレンテレフタレート共重合体(ブチレンテレフタレート共重合比率60mol%)
PET−DEG:ポリエチレンテレフタレート−ジエチレングリコール共重合体
PET−CHDM:ポリエチレンテレフタレート−シクロヘキサンジオール共重合体。
【0050】
ラミネート法は次のとおりである。
フィルム熱圧着法1:2軸延伸法で作成したフィルムを、鋼板を樹脂の融点+10℃まで加熱した状態で、ニップロールにて熱圧着し、次いで7秒以内に水冷によって冷却した。
フィルム熱圧着法2:無延伸フィルムを、鋼板を樹脂の融点+10℃まで加熱した状態でニップロールにて熱圧着し、次いで7秒以内に水冷によって冷却した。
直接押し出し法:樹脂ペレットを押し出し機にて混練、溶融させ、Tダイより、走行中の鋼板上に被覆し、次いで樹脂被覆された鋼板を80℃の冷却ロールにてニップ冷却させ、更に、水冷によって冷却した。
【0051】
【表1】


【0052】
「缶体成形」
作製した供試鋼板を用いて、図1に示した製造工程に準じて、以下の手順で缶体(最終成形体)を作製した。中間成形体(工程C)及び最終成形体(工程D)の形状を表2に示す。工程Aの絞り加工は5段階で行い、工程Dの縮径加工は7段階で行った。熱処理は工程A〜工程Dの途中段階で行い、赤外線式加熱炉を用いて缶体を加熱し、熱処理終了後水冷した。熱処理のタイミング(熱処理実施時の缶体の加工度)及び熱処理条件を表3に示す。
【0053】
表2において、最終成形体(工程D)のh、r、d、ha、hc、Rは、各々最終成形体の開口端部までの高さ、基体部2の直径、ネック形状部3の直径、基体部2の高さ、ネック形状部3の高さ、最終成形体と重量が等価となる成形前の円状板ブランクの半径である(図1参照)。円状板ブランクの半径Rは、次のようにして求めた。成形前のブランクシートの重量及びトリム工程後の最終成形体の重量を測定し、この測定結果に基づき、最終成形体と重量が等価となる成形前ブランクシートの半径を求め、この半径を最終成形体と重量が等価となる成形前の円状板ブランクの半径Rとした。
【0054】
【表2】


【0055】
【表3】


【0056】
1)ブランキング(66〜94mmφ)
2)絞り加工及びしごき加工(工程A)
5段の絞り加工にて、缶体の半径r、高さhが、r/R:0.24〜0.34、h/(R−r):1.84〜3.09の範囲の缶体(中間成形体)を作製した。また、所望の缶体を作製するために、適宜しごき加工も併用した。
【0057】
3)缶底部のドーム形状加工(工程B)
缶底部に、深さ6mmの半球状の張り出し加工を行った。
4)トリム加工(工程C)
缶上端部を2mmほどトリムした。
5)円筒上部の縮径加工(工程D)
円筒上部に縮経加工を施し、具体的には、内面テーパ形状のダイに開口端部を押し当てて縮径を行うダイネック方式にて実施し、表2に示した最終的な缶体形状の缶体を作製した。
【0058】
上記手順で作製した缶体のフィルム層の密着性、加工性、外観を以下のようにして評価した。評価結果を表3に併せて記載した。
【0059】
「密着性試験」
缶体を周方向巾15mmになるように缶高さ方向に略長方形に剪断し、その缶高さ方向で底面から10mmの位置を、周方向に直線状に、鋼板のみを剪断した。結果、剪断位置を境に缶高さ方向底面側に10mm部分と残余の部分からなる試験片が作成された。10mmの部分に巾15mm、長さ60mmの鋼板を繋ぎ(溶接)、60mm鋼板部分を持って、残余部分のフィルムを破断位置から10mmほど剥離させる。フィルムを剥離した部分と60mm鋼板部分を掴みしろとして180°方向にピール試験を実施した。観測されたピール強度の最小値を密着性の指標とした。
「ピール強度」
5N/15mm未満:×
5N/15mm以上、7N/15mm未満:○
7N/15mm以上:◎
【0060】
「フィルム加工性評価」
成缶後の樹脂層外面側を目視及び光顕観察を行い、フィルムに破断があるかないかを確認した。外観が正常なものを○、破断や亀裂が確認されたものを×とした。
【0061】
「評価結果」
缶体C1〜C15及びC21〜C33は、本発明の実施例で、フィルム加工性及び密着性は良好な値を示した。
【0062】
缶体C16〜C20は、本発明の実施例であるが、第3発明または第4発明で規定する熱処理理が施されていないものである。フィルム加工性、密着性ともに合格ではあるが、評価は○に留まった。
【0063】
缶体C34〜C36は、イソフタル酸の共重合化比率が本発明範囲を外れる比較鋼板である為、密着性が×となった。
【0064】
缶体C37は、面配向係数が本発明範囲を外れる比較鋼板であるため、加工性が×となった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のラミネート鋼板は、ラミネート樹脂層の剥離と破断を防止できる高加工度の2ピース缶を製造するために利用することができる。本発明の2ピース缶の製造方法は、ラミネート樹脂層の剥離と破断を防止して、高加工度の2ピース缶を製造する方法として利用することができる。本発明法で製造された2ピースラミネート缶は、高加工度が要求されるエアゾール缶等の用途に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の缶体の製造工程の一実施形態を説明する図である。
【符号の説明】
【0067】
1 ブランクシート
2 基体部
3 ドーム形状部
4 ネック形状部
5 テーパ形状部




 

 


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