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発明の名称 ラミネート金属板の製造方法およびラミネート金属板
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−44943(P2007−44943A)
公開日 平成19年2月22日(2007.2.22)
出願番号 特願2005−230426(P2005−230426)
出願日 平成17年8月9日(2005.8.9)
代理人 【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
発明者 大島 安秀 / 岩佐 浩樹 / 安江 良彦 / 久保 啓 / 山中 洋一郎
要約 課題
容器材料としての機械的物性に優れ、かつ再生可能で環境へのダメージが少なく、コスト的にも有利な再生樹脂を用いたラミネート金属板の製造方法およびラミネート金属板を提供する。

解決手段
カルボン酸で変性したポリオレフィン樹脂を5質量%以上30質量%以下含有した再生ポリエステル樹脂を25質量%以上含有するポリエステル系樹脂層を、Tダイより溶融押出ししてフィルムとし、前記フィルムを少なくとも金属板の片面にラミネートすることを特徴とするラミネート金属板の製造方法。
特許請求の範囲
【請求項1】
カルボン酸で変性したポリオレフィン樹脂を5質量%以上30質量%以下含有した再生ポリエステル樹脂を25質量%以上含有するポリエステル系樹脂層を、Tダイより溶融押出ししてフィルムとし、前記フィルムを少なくとも金属板の片面にラミネートすることを特徴とするラミネート金属板の製造方法。
【請求項2】
カルボン酸で変性したポリオレフィン樹脂において、カルボン酸を含むモノマーの割合が6〜16質量%であることを特徴とする請求項1に記載のラミネート金属板の製造方法。
【請求項3】
カルボン酸で変性したポリオレフィン樹脂を5質量%以上30質量%以下含有した再生ポリエステル樹脂を25質量%以上含有するポリエステル系樹脂層を、少なくとも金属板の片面にTダイより直接溶融押出ししてラミネートすることを特徴とするラミネート金属板の製造方法
【請求項4】
カルボン酸で変性したポリオレフィン樹脂において、カルボン酸を含むモノマーの割合が6〜16質量%であることを特徴とする請求項3に記載のラミネート金属板の製造方法
【請求項5】
カルボン酸で変性したポリオレフィン樹脂を5質量%以上30質量%以下含有した再生ポリエステル樹脂を25質量%以上含有するポリエステル系樹脂層を、金属板の少なくとも片面にラミネートしたことを特徴とするラミネート金属板
【請求項6】
カルボン酸で変性したポリオレフィン樹脂において、カルボン酸を含むモノマーの割合が6〜16質量%であることを特徴とする請求項5に記載のラミネート金属板。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、薬品等を詰める容器や内装パネル等に使用される建材等に最適な高品質のラミネート金属板の製造方法およびラミネート金属板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食缶や飲料缶用の素材としてラミネート金属板が用いられるようになってきた。ラミネート金属板は、ブリキ、ティン・フリー・スチール(以下、TFSと略す)、アルミニウム板などの金属板上に熱可塑性樹脂層が被覆されたもので、製造時に塗装で使用されるような溶剤の揮発がなく、また、缶加工後の缶洗浄も不要で排水の発生もないため環境に配慮した商品としてニーズが高まっている。
【0003】
このようなラミネート金属板に使用される樹脂としては、ポリエステル樹脂やポリプロピレン等ポリオレフィン樹脂が主に使用されるが、特に食缶や飲料缶用には風味の保存性に優れるポリエステル系樹脂が使用される傾向にある。また、容器に使用されるポリエステル樹脂としては、一般に使用されるホモタイプのポリエチレンテレフタレート樹脂の他に、加工性の厳しい用途にはイソフタル酸、ブチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等の成分が共重合された共重合タイプのポリエチレンテレフタレート樹脂が使用される。さらに、最近では、加工性や耐衝撃性などの機械的物性に優れ、容器材料に適切なポリエステル系樹脂として、アイオノマーを複合したポリエステル樹脂が検討されている。例えば、特許文献1や特許文献2には、樹脂組成を限定したポリエステル樹脂にアイオノマーを含有させた樹脂が提案されている。また、特許文献3や特許文献4には、樹脂組成や物性を特定したアイオノマーを含むポリエステル樹脂が提案されている。さらに、特許文献5には、ポリエステル樹脂に、アイオノマーとともにラジカル禁止剤を混合して樹脂の熱劣化を抑制する技術も開示されている。
【特許文献1】特開平7-195617号公報
【特許文献2】特開平7-195618号公報
【特許文献3】特開2003-320615号公報
【特許文献4】特開2003-165177号公報
【特許文献5】特許第3545771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1〜4に記載されるようなアイオノマーを複合したポリエステル樹脂は、アイオノマーがポリエステル樹脂と反応してゲル化することにより劣化するため、押出した後に生じるフィルムエッジ等の不要となった樹脂(肩と称される)に対し通常行われるような破断→乾燥→新樹脂に添加という再生処理ができず、コスト増とともに、樹脂ゴミを増やして環境への悪影響を招く。また、特許文献5に記載のようにラジカル禁止剤を混合しても熱劣化を完全に抑制することは困難であった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑み、アイオノマーを複合したポリエステル系樹脂と同等の優れた機械的物性を有し、かつ再生可能で、コスト的にも有利で環境へのダメージが少ない再生樹脂を用いたラミネート金属板の製造方法およびラミネート金属板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、再生可能で、容器材料としての機械的物性に優れる再生ポリエステル樹脂について検討したところ、カルボン酸で変性したポリオレフィン樹脂を含むポリエステル樹脂を再生ポリエステル樹脂として使用することが好適であることを見出した。
【0007】
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、カルボン酸で変性したポリオレフィン樹脂を5質量%以上30質量%以下含有した再生ポリエステル樹脂を25質量%以上含有するポリエステル系樹脂層を、Tダイより溶融押出ししてフィルムとし、前記フィルムを少なくとも金属板の片面にラミネートすることを特徴とするラミネート金属板の製造方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、カルボン酸で変性したポリオレフィン樹脂を5質量%以上30質量%以下含有した再生ポリエステル樹脂を25質量%以上含有するポリエステル系樹脂層を、少なくとも金属板の片面にTダイより直接溶融押出ししてラミネートすることを特徴とするラミネート金属板の製造方法を提供する。
【0009】
上記いずれの方法においても、カルボン酸で変性したポリオレフィン樹脂において、カルボン酸を含むモノマーの割合が6〜16質量%であることが好ましい。
【0010】
本発明の製造方法により、カルボン酸で変性したポリオレフィン樹脂を5質量%以上30質量%以下含有した再生ポリエステル樹脂を25質量%以上含有するポリエステル系樹脂層を、金属板の少なくとも片面にラミネートしたことを特徴とするラミネート金属板が製造できる。
【0011】
本発明のラミネート金属板においては、カルボン酸で変性したポリオレフィン樹脂において、カルボン酸を含むモノマーの割合が6〜16質量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、再生可能で、ゴミが出ないため環境にもダメージが少なく、容器材料としての機械的物性に優れる再生ポリエステル樹脂を用いたラミネート金属板が製造できるようになった。本発明のラミネート金属板は、容器や缶、さらに建材等の用途に最適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
アイオノマーを含むポリエステル樹脂は、アイオノマーがポリエステル樹脂と反応しゲル化したり加水分解したりするので、溶融押出しして製造したフィルムなどに欠陥を生じやすい。また、その反応性のために溶融押出しを行う間にもポリエステル樹脂との反応が進み、樹脂を劣化させる。そのため、アイオノマーを含むポリエステル樹脂では、押出し後の不要な樹脂を乾燥して再生することができない。たとえ再生したとしても新しい樹脂に混合できる量は低く抑える必要がある。
【0014】
そこで、本発明者らは、ポリエステル樹脂と反応せず、しかもポリエステル樹脂と混合して機械的物性を向上させる樹脂の組成について検討した。その結果、カルボン酸で変性したポリオレフィン樹脂を5質量%以上30質量%以下含有したポリエステル樹脂は、溶融押出しによる劣化がほとんどなく、また、再生して新しい樹脂に大量に混ぜても悪影響を及ぼさないことを見出した。このカルボン酸で変性したポリオレフィン樹脂を含有した再生ポリエステル樹脂は、同じ組成の新しい樹脂と混合して、あるいはカルボン酸変性オレフィン樹脂を含まない他の新しいポリエステル系樹脂と混合してラミネート金属板のポリエステル系樹脂層として使用可能である。いずれの場合でも、このカルボン酸で変性したポリオレフィン樹脂を含有した再生ポリエステル樹脂をラミネート金属板の樹脂層中に25質量%以上含有させることが、容器材料として優れた機械的物性を確保する上で必要である。このとき、カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂の再生ポリエステル樹脂中の重量比率は、5質量%未満ではポリエステル系樹脂層の機械的物性を向上させるのに不十分であり、30質量%を超えると樹脂層の加工性や耐熱性等を低下させる。
【0015】
また、カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂を含む再生ポリエステル樹脂は、ラミネート金属板の樹脂層として単層で使用されても、複数の層の一部の層として使用されてもよいが、トータルとしてカルボン酸変性オレフィン樹脂の量が上記の範囲を満たしていれば良い。さらに、再生して新しい樹脂と混合する場合も、新しい樹脂と混合された樹脂はラミネート金属板の樹脂層として単層で使用されても、複数の層の一部の層として使用されてもよいが、いずれの場合も樹脂層中に25質量%以上の再生したカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂を含む再生ポリエステル樹脂が含有される必要がある。
【0016】
このようにカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂がポリエステル樹脂と反応せず、樹脂を劣化させることがない理由は、この樹脂がポリエステル樹脂と親和性が高く、アイオノマーのような金属を含まないので、金属がポリエステル樹脂と反応して樹脂を劣化させることがないためである。また、カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂はポリエステル樹脂中で微細な粒状に分散するので、加工時や衝撃時のストレスを緩和して機械的物性を向上させる。カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂は、等価球換算計で0.1〜5μmの粒子の状態でポリエステル樹脂中に分散して存在することが好ましい。
【0017】
カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂を含む再生ポリエステル樹脂は、例えばエッジ部などをカッターや破砕機で細かく砕いた後に、80℃以上、好ましくは120℃以上で3時間以上乾燥することで再生可能となる。乾燥後に新しいポリエステル系樹脂と混合し、Tダイより溶融押出ししてフィルムとした後、またはそのまま押出して金属板にラミネートすれば、ラミネート金属板を製造できる。
【0018】
このような変性オレフィン樹脂のガラス転移温度は0℃以下が好ましく、より好ましくは-30℃以下である。ガラス転移温度が0℃を超えと耐衝撃性がやや劣り、特に低温の耐衝撃性に劣る。また、室温でのヤング率は250MPa以下、および破断伸びが200%以上であることが好ましく、より好ましくはヤング率が100MPa以下、および破断伸びが500%以上である。分子量は特に限定しないが、数平均分子量で2×103以上1×106以下が好ましい。2×103未満や1×106を超えると機械的物性が劣り、耐衝撃性が低下したり、加工しにくくなる場合がある。
【0019】
カルボン酸を含むモノマーの割合は6〜16%が適当である。この組成範囲においてポリエステル樹脂との親和性が高く、また、ポリエステル樹脂中での分散性が高く、ポリエステル樹脂との反応性も十分に小さい。カルボン酸含有モノマー量が6%未満ではポリエステル樹脂の機械的物性が向上せず、16%を超えるとポリエステル樹脂と反応して樹脂が劣化する可能性がある。
【0020】
カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂は、カルボン酸を含むモノマーをポリオレフィン樹脂中に共重合することにより製造できる。カルボン酸を含むモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチルエステル等の炭素数3〜8の不飽和カルボン酸等が挙げられるが、アクリル酸またはメタクリル酸が機械的物性の点から優れる。このようなカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂としては、市販の樹脂も使用可能で、例えば三井デュポンポリケミカル(株)社製のニュクレル等が挙げられる。
【0021】
次に、ラミネート金属板の樹脂層の主成分となる熱可塑性ポリエステル樹脂について説明する。炭酸飲料用缶などの用途で使用されるポリエステル系樹脂には、金属板との密着性に優れ、製缶時の加工による伸びや圧縮等の変形および摩擦による劣化や金属板との密着性の低下がないこと、製缶後の乾燥、印刷焼付け、レトルト殺菌処理等の加熱によって剥離、収縮、クラック、ピンホール等を生じないこと、缶への衝撃によってクラックが発生したり、剥離したりしないこと、各種内容物に接した時に腐食や剥離が生じないこと、白濁しないこと等の性能が要求される。さらに、缶の内容物の香り成分が樹脂層に吸着したり、樹脂層中の溶出成分や臭いによって内容物の風味が損なわれないことも求められる。
【0022】
本発明では、こうした要求を満足する熱可塑性ポリエステル樹脂として、酸成分として各種の芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸が、グリコール成分として各種の脂肪族ジオール、芳香族ジオールが任意に重合または共重合されたものや、2種類以上の組成の異なる共重合ポリエステル樹脂を混合したものが用いられる。
【0023】
酸成分としては、テレフタル酸またはイソフタル酸が好ましい。テレフタル酸、イソフタル酸以外の酸成分としては、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、ジフェン酸、ジフェニルエーテルカルボン酸、5-スルホイソフタル酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、グルタル酸、ダイマー酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セパシン酸、ドデカジオン酸、trans-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などが使用できる。
【0024】
グリコール成分としては、各種の脂肪族ジオール、芳香族ジオールが任意に重合または共重合されたものが用いられ、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、trans-1,4-シクロヘキサンジメタノール、cis-1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール類、p-キシレングリコール、ハイドロキノン、2,2-ビス(4-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、水添ビスフェノールAなどが用いられる。特に、エチレングリコールおよび/または1,4-ブタンジオールおよび/または1,4-シクロヘキサンジメタノールを主成分としたものが、機械的物性とフレーバー性等のバランスの点から好適である。
【0025】
よって、テレフタル酸とエチレングリコールが主成分のもの、および/またはテレフタル酸およびイソフタル酸とエチレングリコールが主成分のもの、および/またはテレフタル酸とエチレングリコールおよび1,4-ブタンジオール、および/またはテレフタル酸とエチレングリコールおよび1,4-シクロヘキサンジメタノールを主成分とするものが、混合樹脂状態での機械的物性の点からポリエステル樹脂としては適する。
【0026】
さらに、発明の目的を損なわない範囲で、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールメタン、ペンタエリスリトールなどの多官能化合物から誘導される構成単位を少量、例えば2重量%以下の量で含んでいてもよい。
【0027】
カルボン酸変性オレフィン樹脂をポリエステル樹脂中に添加することにより原料としての樹脂が得られる。分散の方法としては、例えばあらかじめ1次粒径を1μm以下に微細化した変性オレフィン樹脂とポリエステル樹脂構成モノマーを含む溶液中においてモノマーを重合させポリエステル樹脂を製造するとともに変性オレフィン樹脂がポリエステル中に分散した状態にする方法、2つの樹脂を溶融混合して機械的なせん断力で変性オレフィン樹脂を微細化する方法等があり、また樹脂の押出し時に混合して押出し機中で溶融混合することも可能である。混合、溶融する装置としては、タンブラーブレンダー、ヘンシェルミキサー、V形ブレンダーなどの混合装置や、1軸または2軸の押出し機、ニーダー、バンバリーミキサーなどの溶融混合装置が使用できる。
【0028】
本発明に用いられるポリエステル樹脂の固有粘度は、0.3〜2.0dl/g、好ましくは0.3〜1.5dl/g、より好ましくは0.5〜1.0dl/gである。2.0dl/gを越えると、粘度が非常に高いため本発明に使用される変性オレフィン樹脂との混合が著しく困難となり、樹脂が均一に分散しない結果、本発明の効果が不充分となる可能性がある。一方、固有粘度が0.3dl/g未満だと、ポリエステル樹脂の機械的強度が低いために不適である。この固有粘度は、JIS K7367-5に基づき、25℃のo-クロロフェノール中で0.005g/mlの濃度で測定され、固有粘度=(T-T0)/(T0*C)の式から求められる。ここで、Cは溶液100ml当たりの樹脂濃度をグラム数で表わした濃度を、T0およびTは、それぞれ溶媒および樹脂溶液の毛細管形粘度計内の流下時間を表す。
【0029】
また、本発明に使用するポリエステル樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が50〜100℃であることが好ましい。より好ましくは60〜80℃である。ガラス転移温度が50℃未満の場合は、ポリエステル樹脂の耐熱性が劣るため加工時の温度上昇で傷等が入りやすくなり、一方、ガラス転移温度が100℃を超える場合には逆に加工性に劣ることがある。また、低温結晶化温度(Tc)については、通常120〜210℃、好ましくは140〜200℃であり、融点(Tm)は、通常210〜265℃、好ましくは220〜260℃である。低温結晶化温度が120℃未満では結晶化が起こりやすいためレトルト殺菌処理(120℃程度の高温高湿処理)時等に結晶化が起こりポリエステル樹脂にクラックが入ったり剥離が生じやすくなる。一方、低温結晶化温度が210℃を超えるものはポリエステル樹脂の加工性、耐衝撃性等の機械的強度に劣ることがある。融点が210℃未満では加工時の熱で樹脂が劣化し、クラックやピンホールの発生が起こりやすくなる。一方、融点が265℃を超えるものは加工時の乾燥、印刷焼付等の加熱処理によって結晶化が進行し、やはりクラックやピンホールの発生が起こりやすくなる。上記ガラス転移温度、低温結晶化温度、結晶融解温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、サンプル量10mg、昇温速度10℃/分の条件で、昇温時の吸熱ピーク温度を測定した値である。
【0030】
樹脂フィルム中には、滑り性、加工性、耐衝撃性等の向上を目的として無機粒子、有機粒子、有機高分子粒子を含有することができる。無機粒子としては、乾式法および湿式法で製造されたシリカ、多孔質シリカ、コロイド状シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、スピネル、酸化鉄、リン酸カルシウム等が挙げられ、また、有機粒子あるいは有機高分子粒子としては、ポリスチレン粒子、架橋ポリスチレン粒子、スチレン−アクリル系架橋粒子、アクリル系架橋粒子、スチレン-メタクリル酸系樹脂架橋粒子、メタクリル酸樹脂系架橋粒子などのビニル樹脂系粒子や、シリコーン、ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニルエステル、フェノール樹脂等を構成成分とする有機高分子粒子が挙げられる。これら粒子の粒子径、含有量は特に限定しないが、性能を最大限に発揮するためには粒子径は0.01〜5.0μmの範囲が好ましく、0.1〜2.5μmの範囲がより好ましい。また、それらの粒径分布は鋭く、標準偏差0.5以下が好ましい。さらに、粒子の形状は真球に近いものが望ましく、長径/短径の比が1.0〜1.2であることがより望ましい。
【0031】
また、樹脂フィルム中には、本発明の効果を妨げない限り、光安定剤、耐衝撃性改良剤、相溶化剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、反応触媒、着色防止剤、ラジカル禁止剤、可塑剤、酸化防止剤、末端封鎖剤、熱安定剤、離型剤、難燃剤、抗菌剤、抗黴剤等の添加剤がさらに添加されていても良い。これらの添加剤の含有量としては、樹脂100重量部に対して、0.005重量部以上15重量部以下が好ましい。より好ましくは0.01重量部以上2重量部以下、特に好ましくは0.05重量部以上0.5重量部以下である。0.005重量部未満では効果が不十分で、15重量部を超えると添加剤が過剰となり樹脂層の機械的性能を低下させる。また、樹脂加工中に劣化しないような200℃以上の耐熱性が必要である。
【0032】
反応触媒としては、例えばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物等が、着色防止剤としては、例えばリン化合物等が挙げられる。ラジカル禁止剤としては、フェノール系ラジカル禁止剤、リン系ラジカル禁止剤、スルフィド系ラジカル禁止剤、および窒素系ラジカル禁止剤から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0033】
樹脂中にはポリエステル樹脂の重合触媒を添加することも可能である。重合触媒としては、ゲルマニウム、アンチモン、チタンから選ばれる少なくとも1種以上の元素を1ppm以上500ppm以下含有することが好ましい。より好ましくは3ppm以上、さらに好ましくは10ppm以上である。ゲルマニウム、アンチモン、チタンから選ばれる少なくとも1種以上の元素量が1ppmに満たないとフレーバー性向上の効果が十分でない場合があり、500ppmを越えるとポリエステル樹脂に異物が発生し結晶核となって結晶化しやすくなるため、耐衝撃性が悪化したり、耐熱性が低下したりする場合がある。また、これらの元素の中ではフレーバー性の点からゲルマニウム元素が特に好ましい。
【0034】
ゲルマニウム化合物としては、例えば二酸化ゲルマニウム、結晶水含有水酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム酸化物、水酸化物、あるいはゲルマニウムテトラメトキシド、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラブトキシド、ゲルマニウムエチレングリコキシド等のゲルマニウムアルコキシド化合物、ゲルマニウムフェノレート、ゲルマニウムβ-ナフトレート等のゲルマニウムフェノキシド化合物、リン酸ゲルマニウム、亜リン酸ゲルマニウム等のリン含有ゲルマニウム化合物、酢酸ゲルマニウム等が挙げられる。アンチモン化合物としては、三酸化二アンチモン、三弗化アンチモン、酢酸アンチモン、硼酸アンチモン、ギ酸アンチモン、亜アンチモン酸等が挙げられ、またチタン化合物としては、二酸化チタン等の酸化物、水酸化チタニウム等の水酸化物、テトラメトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、テトライソプロポキシチタネート、テトラブトキシチタネート等のアルコキシド化合物、テトラヒドロキシエチルチタネート等のグリコキシド化合物、フェノキシド化合物、酢酸塩等の化合物が挙げられる。
【0035】
次いで、樹脂フィルムを被覆する金属板について説明する。本発明の金属板は特に限定しないが、加工性の点で鉄およびアルミニウムを素材とする金属板が好ましい。鉄を素材とする金属板の場合、その表面に樹脂密着性や耐食性を改善するため、無機酸化物皮膜層、例えばクロム酸処理、リン酸処理、クロム酸/リン酸処理、電解クロム酸処理、クロムクロメート処理などで代表される化成処理被覆層を設けてもよい。また、展延性金属メッキ層、例えばニッケル、スズ、亜鉛、アルミニウム、砲金、真ちゅうなどのメッキ層を設けてもよい。さらに、スズメッキの場合は、0.5〜15g/m2、ニッケルまたはアルミニウムの場合1.8〜20g/m2のメッキ量を有するものが加工性および樹脂密着性の点から特に好ましい。このような金属板の厚さは、通常0.01〜5mmであり、好ましくは0.1〜2mmである。そして、金属板の片面または両面上に、本発明の樹脂組成物を被覆した樹脂被覆層が形成される。
【0036】
鉄を素材とする金属板の場合、電解クロメート処理鋼板が、本発明の樹脂フィルムとの密着性、耐食性、製造コストの観点から特に好ましい。金属クロム層の金属クロム量は50〜200mg/m2が適当であり、50mg/m2未満では耐食性、加工後の密着性が不十分な場合があり、200mg/m2を超えると耐食性、加工後の密着性の向上効果が飽和し、製造コストが上昇する。また、クロム酸化物中のクロム量の金属クロム換算量は3〜30mg/m2が適当である。その量が3mg/m2未満になると密着性が劣る場合があり、30mg/m2を超えると色調が悪化する他、密着性も劣る。
【0037】
樹脂フィルムを金属板にラミネートする方法については、ポリエステル樹脂の融点-70℃〜(融点+30)℃の範囲に加熱した金属板に、回転するロールによって樹脂フィルムを押付けてラミネートする方法が好ましい。
【0038】
また、押出しラミネートする方法についても、金属板の両面にロールを配置し、溶融状態の樹脂を金属板に押付けてラミネートする方法が好ましい。
【実施例1】
【0039】
表1に示す配合の、テレフタル酸とイソフタル酸比率が90:10のエチレンフタレート-エチレンイソフタレート共重合樹脂(固有粘度0.6dl/g、Tg70℃、Tc170℃、Tm230℃、Ge含有量10ppm)と変性ポリオレフィン樹脂からなるポリエステル複合樹脂の製造工程で発生する不要(肩)樹脂を120℃の真空乾燥機中で5時間乾燥した後に、表1に示す複合樹脂と混合して押出し機に供給し、1軸押出し機でTダイより押出し、冷却ドラムを使用して25μmの厚みの無延伸フィルムを作製した。ここで、変性オレフィン樹脂としては以下のものを使用した。
1) E1:LLDPE((株)プライムポリマー社製エボリューSP4030)
2) M2:エチレン-メタクリル酸共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)社製ニュクレルAN4214C)
3) M3:エチレン-メタクリル酸共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)社製ニュクレルN0903HC)
4) M4:エチレン-メタクリル酸共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)社製ニュクレルN1525)
5) M5:エチレン-メタクリル酸共重合体Zn中和物(三井デュポンポリケミカル(株)社製ハイミラン1705)
金属板としては、薄肉化深絞り缶用として厚さ0.18mm、テンパー度DR9、金属クロム層80mg/m2、クロム酸化物層15mg/m2(金属クロム換算)のTFSを用いた。
【0040】
そして、上記のようにして得られた樹脂フィルムを、誘導加熱方式で加熱したこの金属板の両面に熱圧着した後、水中急冷する熱接着法でラミネートしてラミネート金属板を作製した。
【0041】
こうして作製したラミネート金属板を、以下の方法により、製缶加工し、歪取り熱処理を施して薄肉化深絞り缶とした。
(1)製缶加工
上記のラミネート金属板を、次の条件で第1段絞り、再絞りを行い薄肉化深絞り缶を得た。
・第1段絞り
ブランク径:150〜160mm
絞り比:1.65
・再絞り
第1次再絞り:絞り比1.25
第2次再絞り:絞り比1.25
再絞り工程のダイスコーナー部の曲率半径:0.4mm
再絞り時のしわ押さえ加重:39227N(4000kg)
・缶胴部の平均薄肉化率
加工前の樹脂ラミネート金属板の厚さに対し40〜55%
(2)歪取り熱処理
製缶加工に伴い導入されたフィルムの加工歪を、220℃で30秒間加熱保持した後に急冷して除去した。
【0042】
そして、以下の方法で、薄肉化深絞り缶体のフィルムの加工性、耐衝撃性、加工後の密着性を評価した。
(i)加工性
フィルムの損傷を伴うことなく製缶加工できる限界加工度(薄肉化率)を、下記のごとく評価した。なお、合格は○以上の評価のものである。
薄肉化率40%の加工不可 : ×(劣)
薄肉化率40%まで加工可 : △ ↑
薄肉化率45%まで加工可 : ○
薄肉化率50%まで加工可 : ◎ ↓
薄肉化率55%まで加工可 : ◎◎ (優)
(ii)耐衝撃性
歪取り熱処理を施した缶体(薄肉化率50%)にネック加工を施し、缶体中に、蒸留水を充填して蓋を取りつけ巻き締めた後、缶底に、30cmの高さから0.5kgの鉄球を落下させて衝撃を与えた。次に蓋をあけ、缶内部に、被衝撃部が浸るように、1%の食塩水を充填し、5分浸漬後、液中に浸した白金電極と缶金属部に6Vの負荷をかけ、さらに1分後の電流値を読み取り、以下のように評価した。なお、合格は○以上の評価のものである。
電流値が30mA以上 : ×(劣)
電流値が10mA以上30mA未満 : △ ↑
電流値が5mA以上10mA未満 : ○
電流値が1mA以上5mA未満 : ◎ ↓
電流値が1mA未満 : ◎◎ (優)
(iii)加工後の密着性
歪取り熱処理を施した缶体の内面を洗浄し、クエン酸1.5重量%-食塩1.5重量%の水溶液に24時間浸漬した後、缶先端部の樹脂のはがれ長さを観察し、以下の通り評価した。なお、合格は○以上の評価のものである。
10mmを超えるはがれ : ×(劣)
5mmを超えて10mm以下のはがれ : △ ↑
2mmを超えて5mm以下のはがれ : ○
2mm以下のはがれ : ◎ ↓
はがれ無し : ◎◎ (優)
結果を表1に示す。
【0043】
表1より、本発明のラミネート金属板は、欠陥が少なく、製膜性に優れるため、加工性、耐衝撃性、加工後の密着性に優れる。また、アイオノマーを複合したポリエステル系樹脂と同等の優れた機械的物性を有する。
【0044】
【表1】


【実施例2】
【0045】
表2に示す配合の、テレフタル酸とイソフタル酸比率が90:10のエチレンフタレート-エチレンイソフタレート共重合樹脂(固有粘度0.6dl/g、Tg70℃、Tc170℃、Tm230℃、Ge含有量10ppm)と変性ポリオレフィン樹脂からなるポリエステル複合樹脂の製造工程で発生する不要(肩)樹脂を120℃の真空乾燥機中で5時間乾燥した後に、表2に示す複合樹脂と混合して押出し機に供給し、1軸押出し機でTダイより押出し、金属板の両面に25μmの厚みで溶融押出しすることによりラミネート金属板を作製した。樹脂の記号等は実施例1と同様である。
【0046】
金属板としては、薄肉化深絞り缶用として厚さ0.18mmで、テンパー度DR9、金属クロム層80mg/m2、クロム酸化物層15mg/m2(金属クロム換算)のTFSを用いた。
【0047】
このように作製したラミネート金属板を、実施例1と同様に薄肉化深絞り缶とし、実施例1と同様な評価を行った。
【0048】
結果を表2に示す。本発明のラミネート金属板は、欠陥が少なく、製膜性に優れるため、加工性、耐衝撃性、加工後の密着性に優れる。
【0049】
【表2】






 

 


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