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耐摩耗性に優れた鋳鉄品の製造方法 - JFEスチール株式会社
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発明の名称 耐摩耗性に優れた鋳鉄品の製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−30037(P2007−30037A)
公開日 平成19年2月8日(2007.2.8)
出願番号 特願2005−221215(P2005−221215)
出願日 平成17年7月29日(2005.7.29)
代理人 【識別番号】100099531
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 英一
発明者 曽我部 ▲暁▼ / 市野 健司 / 柴田 浩光
要約 課題
靭性および耐摩耗性に優れた鋳鉄品およびその製造方法を提供する。

解決手段
C:1.5〜5.5%、Si:1.5%以下、Mn:1.2%以下、Cr:4.0〜20%、Mo:2〜12%、V:3.0〜20%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の溶湯を、鋳型注入直前温度T(℃)が、TA−0.5(TA−TS)< T < TMC ( ここで、T:鋳型注入直前温度(℃)、TA:γ相の晶出開始温度(℃)、TS:固相線温度(℃)、TMC=1170+64.5C+24.6Si+5.0Mn−11.1Cr−1.4Mo+18.0V+60.0Nb(℃))を満足するように調整したのちに、鋳型に注入し、凝固させる。なお、溶湯の鋳型注入直前温度を調整するに当たり、溶湯を、一旦TMC(℃)以上の温度にしたのち、10℃/min以上の冷却速度で冷却することが好ましい。また、注入前に、溶湯を攪拌してもよい。前記組成に加えてさらに、Ni、Co、Cu、W、Nb、Ti、Zr、Bのうちから選ばれた1種又は2種以上を含有してもよい。
特許請求の範囲
【請求項1】
質量%で、
C:1.5〜5.5%、 Si:1.5%以下、
Mn:1.2%以下、 Cr:4.0〜20%、
Mo:2〜12%、 V:3.0〜20%
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の溶湯を、予め溶湯中に初晶MC型炭化物を晶出させたのち、鋳型に注入し、凝固させることを特徴とする耐摩耗性鋳鉄品の製造方法。
【請求項2】
質量%で、
C:1.5〜5.5%、 Si:1.5%以下、
Mn:1.2%以下、 Cr:4.0〜20%、
Mo:2〜12%、 V:3.0〜20%
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の溶湯を、鋳型注入直前温度T(℃)が、下記(1)式を満足するように調整したのち、鋳型に注入し、凝固させることを特徴とする耐摩耗性鋳鉄品の製造方法。

TA−0.5(TA−TS)< T < TMC ………(1)
ここで、T:鋳型注入直前温度(℃)、
TA:オーステナイト相の晶出開始温度(℃)、
TS:固相線温度(℃)、
TMC:次(2)式で定義される温度(℃)
TMC=1170+64.5C+24.6Si+5.0Mn−11.1Cr−1.4Mo+18.0V+60.0Nb ……(2)
(ここで、C、Si、Mn、Cr、Mo、V、Nb:各元素の含有量(質量%))
【請求項3】
前記溶湯の鋳型注入直前温度を調整するに当たり、前記溶湯の温度を前記TMC(℃)以上の温度にしたのち、該溶湯を10℃/min以上の冷却速度で冷却し、前記(1)式を満足する前記鋳型注入直前温度T(℃)に調整することを特徴とする請求項2に記載の耐摩耗性鋳鉄品の製造方法。
【請求項4】
前記注入前に、前記(1)式を満足する範囲の温度で前記溶湯を攪拌することを特徴とする請求項2または3に記載の耐摩耗性鋳鉄品の製造方法。
【請求項5】
前記組成に加えてさらに、質量%で、Ni:5.5%以下、Co:10.0%以下、Cu:2.0%以下、W:1.0%以下、Nb:2.0%以下、Ti:2.0%以下、Zr:2.0%以下、B:0.1%以下のうちから選ばれた1種又は2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の耐摩耗性鋳鉄品の製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱石、岩石等の粉砕用クラッシャー、粉砕用ミルや建設機械、あるいはレールや各種ライナー類等の耐摩耗性を要求される部材に用いて好適な鋳鉄品に係り、とくに鋳鉄品の耐摩耗性向上に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉱石、岩石等の粉砕用クラッシャーやミル等の耐摩耗性を要求される部材には、耐摩耗性に優れた高マンガン鋳鋼や高クロム鋳鉄が使用されてきた。高マンガン鋳鋼は、通常、C:1.0〜1.4%、Mn:10〜14%を含み、水靭処理により、炭化物を固溶し完全オーステナイト組織とされて使用される。そのため、高マンガン鋳鋼は、優れた靭性を示すとともに、さらに繰返し打撃等により加工硬化を生じ表面硬度が上昇するため、優れた耐摩耗性を示す。しかし、高マンガン鋳鋼は、引張強さにくらべて降伏強さが低く変形しやすく、また、水靭処理を必須としているため変形が生じやすく、また加工硬化深度が浅いという問題もあった。
【0003】
また、高クロム鋳鉄は、通常例えば、C:2〜3%、Cr:15〜35%程度含む鋳鉄であり、Cr含有量が高いことに起因して優れた耐食性、耐熱性および耐摩耗性を示す。しかし、高クロム鋳鉄は、靭性が低いうえ、とくに砂型鋳型を利用し冷却速度が低下する方法で製造される鋳物では、初晶として晶出するオーステナイト(γ)粒が粗大化し、その結果凝固末期に初晶粒の粒界に生成される共晶炭化物が粗大化するため、硬さや靭性、耐摩耗性も低下するという問題があった。
【0004】
このような問題に対し、例えば特許文献1には、高Cr系鋳鉄溶湯を、金属粒で構成された鋳型に注湯する高Cr系耐摩耗白鋳鉄鋳物の製造方法が提案されている。特許文献1に記載された技術によれば、共晶炭化物が微細に析出し、耐摩耗性が向上するとしている。しかし、特許文献1に記載された技術では、品質面において金型鋳造品を超えることができず、その上、鋳物表面の欠陥発生傾向が増大し、製造コストが増大するという問題があった。
【0005】
また、特許文献2には、白鋳鉄などの共晶合金系の合金鋳造方法が提案されている。特許文献2に記載された技術は、合金溶湯を液相線温度以上で鋳造鋳型への流れとして注湯する工程と、微粒子物質を合金溶湯の流れに添加して合金溶湯を液相線温度と固相線温度との間の一次相凝固温度範囲まで過冷却する工程からなる合金鋳造方法である。特許文献2に記載された技術によれば、微粒子物質の添加により、合金溶湯からの抜熱による急冷が可能となるとともに、微粒子物質が一次相の核として作用し、一次相の微細化を容易にするとしている。しかしながら、特許文献2に記載された技術では、注湯中に微粒子物質を添加する設備を必要とし、製造コストが増大するという問題に加えて、微粒子物質を均一に添加することが困難であるため、共晶炭化物の均一生成に問題を残していた。
【0006】
また、特許文献3には、粗大炭化物のない高炭素合金鋼の製造方法が提案されている。特許文献3に記載された技術は、C:0.4〜1.5%を含有し、Cr、Mo、W及びVのうちから選んだ1種または2種以上の合計が1%以上を含む高炭素合金鋼の溶湯を,冷却下に攪拌を加えて半凝固スラリーとしたのち、鋳型に供給し鋳造する高炭素合金鋼の製造方法である。特許文献3に記載された技術によれば、非樹枝状の初晶粒(フェライト)が懸濁した固液混相の半凝固スラリーとすることにより、その後に初晶粒の粒界に生成する共晶炭化物の粗大化を防止できるとしている。しかし特許文献3に記載された技術では、初晶γの微細化により、残存融液中に晶出する炭化物を微細分散し、その後の熱処理における炭素の固溶・拡散を促進できるが、羽毛状炭化物を変形させることはできず、高温での圧延・鍛造等の処理を必要とし、製造コストが増大するという問題が残されている。
【特許文献1】特開平2−55659号公報
【特許文献2】特表平8−510298号公報
【特許文献3】特開平7−278727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これとは別に、鋳鉄品の更なる耐摩耗性向上のためには、V等を多量に添加し、VC等の炭化物を多量に分散させた鋳鉄材とすることが考えられる。このような鋳鉄材は、MC型炭化物を初晶として晶出する特徴を有し、VC等の硬質なMC型炭化物が多量に分散させることができるため、耐摩耗性が顕著に向上することが期待される。しかし、このような鋳鉄材を砂型鋳造した場合には、凝固過程で初晶であるMC型炭化物の浮上・沈降による、いわゆる重力偏析が顕著となるという問題があった。また、MC型炭化物量が増加すると、MC型炭化物が粗大化しやすく、さらに引け巣、ポロシティーなどの鋳造欠陥の発生傾向が大きくなり、さらには靭性が低下するという問題があった。
【0008】
本発明は、上記した従来技術の問題を有利に解決し、MC型炭化物の重力偏析、引け巣等の鋳造欠陥の発生等を低減でき、耐摩耗性に優れた鋳鉄品を安価でかつ容易に製造できる、耐摩耗性鋳鉄品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記した課題のうち、まず耐摩耗性を格段に向上させるために、鋳鉄品の組成を、高Cr系鋳鉄組成に加えてさらに、硬質な炭化物を形成するVあるいはさらにNb、W等を多量含有させたハイス系組成とすることに着目した。そして、ハイス系組成の鋳鉄品について、MC型炭化物の粗大化や、引け巣等の鋳造欠陥の発生、炭化物の重力偏析等に影響する各種要因について鋭意考究した。その結果、溶湯中に初晶MC型炭化物を晶出させて溶湯の見掛粘度を適正レベルに調整して、鋳型に注入し凝固させること、具体的には溶湯を好ましくは急冷して、溶湯の鋳込み温度(鋳型注入直前温度)T(℃)を所定温度範囲内に調整し、あるいはさらに該所定温度範囲内の温度で溶湯を攪拌したのち、鋳型に注入し凝固させることが、MC型炭化物の重力偏析の軽減、MC型炭化物の粗大化防止および引け巣発生の軽減に有効であることを見出した。
【0010】
本発明は、上記した知見に基き、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)質量%で、C:1.5〜5.5%、Si:1.5%以下、Mn:1.2%以下、Cr:4.0〜20%、Mo:2〜12%、V:3.0〜20%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の溶湯を、予め溶湯中に初晶MC型炭化物を晶出させたのち、鋳型に注入し、凝固させることを特徴とする耐摩耗性鋳鉄品の製造方法。
【0011】
(2)質量%で、C:1.5〜5.5%、Si:1.5%以下、Mn:1.2%以下、Cr:4.0〜20%、Mo:2〜12%、V:3.0〜20%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の溶湯を、鋳型注入直前温度T(℃)が、次(1)式
TA−0.5(TA−TS)< T < TMC ………(1)
(ここで、T:鋳型注入直前温度(℃)、TA:オーステナイト相の晶出開始温度(℃)、 TS:固相線温度(℃)、TMC:次(2)式で定義される温度(℃)、
TMC=1170+64.5C+24.6Si+5.0Mn−11.1Cr−1.4Mo+18.0V+60.0Nb ……(2)
(ここで、C、Si、Mn、Cr、Mo、V、Nb:各元素の含有量(質量%)))
を満足するように調整したのち、鋳型に注入し、凝固させることを特徴とする耐摩耗性鋳鉄品の製造方法。
【0012】
(3)(2)において、前記溶湯の鋳型注入直前温度を調整するに当たり、前記溶湯の温度を前記TMC(℃)以上の温度にしたのち、該溶湯を10℃/min以上の冷却速度で冷却し、前記(1)式を満足する前記鋳型注入直前温度T(℃)に調整することを特徴とする耐摩耗性鋳鉄品の製造方法。
(4)(2)または(3)において、前記注入前に、前記(1)式を満足する範囲の温度で前記溶湯を攪拌することを特徴とする耐摩耗性鋳鉄品の製造方法。
【0013】
(5)(1)ないし(4)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ni:5.5%以下、Co:10.0%以下、Cu:2.0%以下、W:1.0%以下、Nb:2.0%以下、Ti:2.0%以下、Zr:2.0%以下、B:0.1%以下のうちから選ばれた1種又は2種以上を含有する組成とすることを特徴とする耐摩耗性鋳鉄品の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、引け巣等の鋳造欠陥の発生もなく、炭化物の重力偏析が抑制できるとともに、硬質なMC型炭化物を微細に分散でき、耐摩耗性に優れた鋳鉄品を安価でかつ容易に製造でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、耐摩耗性に優れた薄肉鋳鉄品の製造も可能であるという効果もある。なお、本発明になる鋳鉄品は、ジョークラッシャー、製鉄用ライナー、建設機械等の耐摩耗部材用として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
まず、本発明で使用する溶湯の組成限定理由について説明する。以下、組成における質量%は、単に%で記す。
C:1.5〜5.5%
Cは、耐摩耗性を向上させる硬質な炭化物を形成するための必須元素であり、本発明では1.5%以上の含有を必要とする。一方、5.5%を超える多量の含有は靭性を劣化させる。このため、Cは1.5〜5.5%の範囲に限定した。なお、好ましくは1.5%超4.5%以下、より好ましくは2.0〜3.5%である。
【0016】
Si:1.5%以下
Siは、脱酸剤として作用するとともに、鋳造性を向上させる元素であり、0.1%以上含有することが望ましいが、1.5%を超えて含有しても効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できないため、経済的に不利となる。このため、Siは1.5%以下に限定した。なお、好ましくは0.2〜0.5%である。
【0017】
Mn:1.2%以下
Mnは、Siと同様の作用を有する元素であり、0.1%以上含有することが望ましいが、1.2%を超えて含有しても効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できないため、経済的に不利となる。このため、Mnは1.2%以下に限定した。なお、好ましくは0.2〜0.5%である。
Cr:4.0〜20%
Crは、共晶炭化物を形成し、耐摩耗性を向上させるとともに、基地中に固溶して基地組織を強化し、さらに耐食性を向上させる重要な元素である。このような効果は4.0%以上の含有で顕著となるが、20%を超えて含有しても効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となる。このため、Crは4.0〜20%の範囲に限定した。なお、好ましくは6〜15%である。
【0018】
Mo:2〜12%
Moは、Crと同様に,炭化物を形成して耐摩耗性の向上に有効に作用するとともに、炭化物中に固溶して炭化物を強化する作用を有する元素であり、本発明では2%以上の含有を必要とする。一方、12%を超えて含有しても効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となる。このため、Moは2〜12%の範囲に限定した。なお、好ましくは3〜7%である。
【0019】
V:3.0〜20%
Vは、硬質なMC型炭化物を形成し、耐摩耗性の向上に寄与する元素であり、このような効果は3.0%以上の含有で顕著となる。一方、20%を超えて含有しても効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となる。このため、Vは3.0〜20%の範囲に限定した。なお、好ましくは4〜15%である。
【0020】
本発明では、上記した組成を溶湯の基本組成とするが、必要に応じて、この基本組成に加えて、さらに、Ni:5.5%以下、Cu:2.0%以下、W:1.0%以下、Co:10.0%以下、Nb:2.0%以下、Ti:2.0%以下、Zr:2.0%以下、B:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することができる。
Ni、Cu、Wは、いずれも基地組織を強化する作用を有する元素であり、必要に応じ1種または2種以上を選択して含有できる。
【0021】
Niは、焼入れ性の向上を介して基地組織の強化に寄与する元素であり、このような効果は0.5%以上の含有で顕著となる。一方、5.5%を超える含有は残留オーステナイト(γ)量が増加するなど不安定な組織が形成されやすくなる。このため、Niは5.5%以下に限定することが好ましい。
Coは、高温における組織を安定化させる作用を有する元素であり、必要に応じて含有できる。このようなCoの効果は0.1%以上の含有で顕著となるが、10.0%を超えて含有しても効果が飽和し,含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となる。このため、Coは10.0%以下に限定することが好ましい。
【0022】
Nbは、Vと同様に,硬質なMC型炭化物を形成し,耐摩耗性を向上する作用を有する元素であり、必要に応じて含有できる。このようなNbの効果は、0.2%以上の含有で顕著となる。一方、2.0%を超える含有は、炭化物が粗大化する傾向が強くなり、所望の耐摩耗性向上が得られなくなる恐れがある。このため、Nbは2.0%以下に限定することが好ましい。
【0023】
Ti、Zr、Bはともに、粗大な共晶炭化物の形成を抑制し、耐摩耗性を向上させる作用を有する元素であり、必要に応じ1種または2種以上を選択して含有できる。このような効果は、Ti:0.01%以上、Zr:0.01%以上、B:0.01%以上の含有で顕著となる。一方、Ti:2.0%、Zr:2.0%を超える含有は、介在物が増加し材質を脆くするため、かえって耐摩耗性を低下させる。また、B:0.1%を超える含有は粒界への偏析が顕著になり靭性が低下する。このため、Ti:2.0%以下、Zr:2.0%以下、B:0.1%以下にそれぞれ限定することが好ましい。
【0024】
なお、本発明では鋳造欠陥防止の観点から溶湯の流動性を確保するために、および、耐摩耗性を向上させる観点から所定値以上の基地硬さを確保するために、C、V、あるいはさらにNb含有量を上記した範囲内でさらに、下記式
0.6 < {C−0.24V−0.13Nb} < 2.0
(ここで、C、V、Nb:各元素の含有量(質量%))
を満足するように調整することが好ましい。なお、Nbを含有しない場合にはNbの項は零として計算するものとする。
【0025】
上記した成分以外の溶湯の残部は、Feおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としては、P:0.05%以下、S:0.03%以下が許容できる。
本発明では、上記した組成の溶湯を溶製し、所定の鋳型に注入(注湯)し、凝固させて、鋳鉄品とする。溶湯の溶製方法はとくに限定する必要はなく、公知の溶製法がいずれも適用できる。
【0026】
本発明では、鋳型に注湯する直前の溶湯温度、すなわち鋳型注湯直前温度T(℃)を、次(1)式
TA−0.5(TA−TS)< T < TMC ………(1)
( ここで、T:鋳型注入直前温度(℃)、TA:γ相の晶出開始温度(℃)、TS:固相線温度(℃)、TMC:(2)式で定義される温度(℃))
を満足するように調整する。なお、(2)式は、
TMC=1170+64.5C+24.6Si+5.0Mn−11.1Cr−1.4Mo+18.0V+60.0Nb ……(2)
(ここで、C、Si、Mn、Cr、Mo、V、Nb:各元素の含有量(質量%))
である。
【0027】
本発明で使用する溶湯組成では、初晶として晶出する炭化物はMC型炭化物であり、(1)式におけるTMCは、MC型炭化物が晶出することにより、溶湯の見掛粘度が適正範囲に増加する温度で、(2)式を用いて算出するものとする。なお、含有しない元素は零として計算するものとする。
TMC(℃)=1170+64.5C+24.6Si+5.0Mn−11.1Cr−1.4Mo+18.0V+60.0Nb……(2)
(ここで、C、Si、Mn、Cr、Mo、V、Nb:各元素の含有量(質量%))
また、(1)式におけるTAはγ相の晶出開始温度(℃)、TSは固相線温度(℃)であり、それぞれ次式を用いて算出するものとする。なお、含有しない元素は零として計算するものとする。
【0028】
TA(℃)=1055−61.5C−17.1Si−4.0Mn−0.7Cr−5.0Mo+11.4Nb−4.0Ni
TS(℃)=1099−12.7C+0.4Si−6.5Mn−5.1Cr+2.7Mo+8.6V+7.5Nb−4.3Ni
(ここで、C、Si、Mn、Cr、Mo、V、Nb、Ni:各元素の含有量(質量%))
鋳型注湯直前温度T(℃)を、(1)式を満足するような温度に調整することにより、注湯前の溶湯中に微細な初晶炭化物(MC型炭化物)が多数晶出し、溶湯の粘度が適正範囲内に増加した状態が得られ、鋳型注入時の自然攪拌と温度降下の過程で初晶であるMC型炭化物の浮上・沈降,すなわち重力偏析が抑制され、凝固後に炭化物が均一に分散した組織が得られ、耐摩耗性が向上するとともに、MC型炭化物の密度増加に伴う引け巣やミクロポロシティーなどの鋳造欠陥のない健全な鋳鉄品が得られる。一方、(1)式を満足せず、鋳型注湯直前温度T(℃)がTMC以上の高温である場合には、鋳型注入時の凝固過程で未凝固溶湯の温度上昇に伴う粘度の低下により、凝固界面近傍で晶出するMC型炭化物が容易に浮上しMC型炭化物の偏析が発生する。また、鋳型注湯直前温度T(℃)が、(1)式を満足しないような低温では、デンドライト状に成長するγ相の影響で溶湯の流動性が顕著に低下し、ミクロポロシティーや引け巣の発生など鋳造欠陥が多発する。このため本発明では、鋳型注湯直前温度T(℃)は、(1)式を満足するような温度に調整し、鋳型に注湯するものとする。
【0029】
鋳型注湯直前温度T(℃)を、(1)式を満足するような温度に調整する好ましい方法としては、溶湯の注入時に湯道(樋、タンディッシュ等)に冷却板等を配設して急冷する方法や、溶湯を水冷モールド内を通過させて急冷する方法や、微細な粒状又は板状の冷材を添加して溶解する方法等があるが、本発明ではこれらに限定されるものではない。
なお、溶湯を急冷する場合は、溶湯の温度がTMC(℃)以下に低下している場合には、一旦、溶湯をTMC(℃)以上の温度に昇温したのち、溶湯を10℃/min以上の冷却速度で、(1)式を満足する温度域まで、冷却することが好ましい。溶湯温度がTMCより高温の場合には、昇温することなく上記した冷却速度で急冷することができる。これにより、晶出したMC型炭化物の成長が抑制され、微細なMC型炭化物が生成・分散し、MC型炭化物の重力偏析が抑制され、引け巣等の鋳造欠陥の発生が防止できる。とくに、MC型炭化物が粗大化しやすい、Vが8%以上の場合に有効となる。なお、冷却速度が10℃/min未満では、冷却中にMC型炭化物が成長し、粗大化する恐れがある。冷却速度のより好ましい範囲は50℃/min以上である。
【0030】
また、(1)式を満足する温度域のうち、γ相の晶出開始温度であるTA以下の温度域まで急冷すると、MC型炭化物の微細化に加えて樹枝状のγ相をも微細化し、粒状化することができる。なお、溶湯を攪拌にないで、TA以下の温度まで冷却すると、溶湯の粘度が急激に増加し、鋳造性が低下する傾向となる。このため、溶湯をTA以下の温度まで冷却する場合には、攪拌を併用することが好ましい。攪拌を併用することにより、鋳造欠陥の発生を抑制することができる。
【0031】
また、鋳型に注入する前に、(1)式を満足する範囲の温度で溶湯を攪拌することが好ましい。(1)式を満足する温度で、溶湯を攪拌することにより、MC型炭化物が粒状化しやすく、これによりさらに鋳造性、靭性が向上する。なお、攪拌方法としては、インペラ−による機械的攪拌、ガスバブリングによる攪拌、あるいは電磁力を利用した攪拌など、公知の攪拌方法がいずれも適用可能である。
【0032】
また、使用する鋳型は金型とすることが好ましい。冷却速度が速い金型を使用することにより、凝固速度が加速され、MC型炭化物の更なる微細化や、共晶炭化物の微細化等が可能となる。
上記した製造方法で得られた鋳鉄品は、さらに適正な温度(例えば、固液共存域)に再加熱したのち、圧縮等の加工を施すと、共晶炭化物等が多い液相が表層に滲み出やすく、表層が炭化物相が濃縮した層となる一方、内層が炭化物相が少なく靭性に富む層となり、傾斜機能を有する鋳鉄品とすることができる。
【0033】
上記した製造方法で得られた鋳鉄品は、上記した溶湯組成と略同じ組成を有し、さらに基地中に粒径:5〜30μmの粒状のMC型炭化物が面積率で5〜30%分散した組織を有する鋳鉄品となる。このような組織とすることにより、耐摩耗性、研削性、靭性等が顕著に向上する。
上記した製造方法で製造された鋳鉄品いずれも、所望の硬さに調整するため、必要に応じて調質処理を施してもよい。なお、調質処理としては、オーステナイト化したのち、ベイナイト変態開始温度以下でマルテンサイト変態開始温度以上の温度まで急冷し、その後保持または徐冷し、基地組織をベイナイト組織化する焼入れ処理と、ついで所定の適正硬さに調整する焼戻処理とを施す処理とすることが好ましい。
【実施例】
【0034】
表1に示す組成の溶湯を電気炉で溶製したのち、溶湯温度を表2に示す鋳型注湯直前温度に調整したのち、硅砂を用いた自硬性鋳型に注湯し、凝固させ、鋳鉄品(重さ:30kg、大きさ:60mmφ×150mm高さ)とした。鋳鉄品はついで、焼入れ温度:1000℃、焼戻温度:500℃で調質処理を施した。なお、一部では、注湯直前に、注湯部に冷却板付きの樋を設置して急冷、および/またはインペラによる攪拌を行った。
【0035】
表1のTMA、TA、TSの各温度は前記した式を用いて算出した値である。
得られた鋳鉄品について、外観および断面観察試験、硬さ試験、耐摩耗性試験を実施した。試験方法はつぎの通りとした。
(1)外観および断面観察検査
得られた鋳鉄品について、目視観察により、引け巣等の表面欠陥、さらには得られた鋳鉄品の中央縦断面サンプルを採取し、該中央縦断面サンプルを全面研磨し、目視および光学顕微鏡(100倍)で、引け巣、ポロシティー等の鋳造欠陥の有無、およびMC型炭化物の重力偏析の有無を調査した。これら鋳造欠陥が無い場合を○、これら鋳造欠陥が軽微で光学顕微鏡によって認識可能な場合を△、これら鋳造欠陥が多量に存在し、目視で存在が確認できる場合を×とした。また、MC型炭化物の重力偏析が有る場合を×、無い場合を○として評価した。
【0036】
(2)硬さ試験
得られた鋳鉄品から採取した中央縦断面サンプルについて、シヨア硬度計を用いて硬さHsを測定した。測定位置は、鋳鉄品の高さ方向中央とし、両表面(両側面)から中心方向に0、5、10、15、20mmの各点、計10点を測定し、それらの算術平均をその鋳鉄品の硬さとした。
【0037】
(3)耐摩耗性試験
得られた鋳鉄品から採取した中央縦断面サンプルの高さ方向中央部の表面近傍から、10mmφ×50mm長さの丸棒状試験片を切り出し、回転式摩耗試験を実施した。回転式摩耗試験は、試験片を珪砂、珪石と水とを混合し泥状とした液中で回転摩耗(回転数:640rpm、試験片速度:10m/s)させる試験とし、試験時間:20時間後の試験片の摩耗減量を測定し,耐摩耗性を評価した。耐摩耗性は、高Cr鋳鉄(従来例)の摩耗減量を基準(1.00)とし、従来例の摩耗減量に対する比(試験材の摩耗減量/従来例の摩耗減量)で表示した。耐摩耗比が小さいほど、耐摩耗性が向上していることを表す。なお、鋳造性が劣化した比較例は耐摩耗性試験を実施しなかった。得られた結果を表3に示す。
【0038】
【表1】


【0039】
【表2】


【0040】
【表3】


本発明例はいずれも、鋳造欠陥もなく、MC型炭化物の重力偏析もなく、従来例に比べて耐摩耗性に優れた鋳鉄品となっている。一方、本発明の範囲を外れる比較例は鋳造欠陥が発生しているか、あるいはMC型炭化物の重力偏析が発生しているか、耐摩耗性が劣化している。




 

 


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