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発明の名称 ステンレス鋼板の溶接後処理方法および溶接装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−30007(P2007−30007A)
公開日 平成19年2月8日(2007.2.8)
出願番号 特願2005−219019(P2005−219019)
出願日 平成17年7月28日(2005.7.28)
代理人 【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
発明者 蛭田 敏樹 / 中世古 誠 / 冨田 省吾 / 小野 一哉
要約 課題
連続処理ラインに通板した場合に、溶接部が破断するのを抑制することができ、しかも、先行材と後行材のステンレス鋼種や成分が異なる場合でも、破断させずに通板することのできるステンレス鋼板の溶接後処理方法を提供する。

解決手段
溶接部3をグラインダー5で処理した後、溶接部3の上側または下側の一方または両方から溶接部3をガスで加熱する。
特許請求の範囲
【請求項1】
ステンレス鋼板を突き合わせて溶接し、溶接部を加熱するステンレス鋼板の溶接後処理方法において、
溶接部をグラインダー処理した後、溶接部の上側または下側の一方または両方から溶接部をガスで加熱することを特徴とするステンレス鋼板の溶接後処理方法。
【請求項2】
請求項1記載のステンレス鋼板の溶接後処理方法において、
突き合わせて溶接する先行材および後行材の化学成分を用いて、
以下の式で求められる最高加熱温度を、該先行材および該後行材それぞれについて計算により求め、
該先行材および該後行材のうち、該最高加熱温度が低い方の温度を目標に、
前記グラインダー処理後の溶接部を加熱することを特徴とするステンレス鋼板の溶接後処理方法。
最高加熱温度(Tmax)=860-45×C(mass%)-2.5×Cr(mass%)+6.8×Ni(mass%)
なおここで、C:炭素、Cr:クロム、Ni:ニッケルを表す。
【請求項3】
請求項2記載のステンレス鋼板の溶接後処理方法において、ガスで加熱する側あるいはそれと反対側の溶接部表面温度を測定し、その測定した温度を基に、ガス流量を制御することを特徴とするステンレス鋼板の溶接後処理方法。
【請求項4】
金属板を突き合わせて溶接し、溶接部をグラインダー処理した後、溶接部をガスで加熱することを特徴とする溶接装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステンレス鋼板(鋼帯を含む意味とする)の溶接後処理方法および溶接装置に関し、特に、ステンレス鋼板などの金属板の酸洗ライン、連続焼鈍酸洗ラインの入側において、先行する金属板(以下、先行材)と後行する金属板(以下、後行材)を溶接する際に好適な、溶接後の処理方法および溶接装置に関するものである。ここでステンレス鋼板とは、Crを10mass%以上含有する鋼板を指す。
【背景技術】
【0002】
一般に、フェライト系、マルテンサイト系ステンレス鋼板は、熱間圧延の後、箱焼鈍または連続焼鈍を施され、酸洗される。一方、オーステナイト系ステンレス鋼板は、焼鈍されずに酸洗される。
【0003】
ステンレス鋼板の表面にスケールが存在したままでは、本来ステンレス鋼板が持つ耐食性を発揮できないばかりか、その美観を損なうからである。
【0004】
図6は、ステンレス熱延鋼板の連続焼鈍酸洗ライン100を全体概略的に示した図であり、20は溶接機、30は入側ルーパー、31は払出し機、40はショットブラスト設備、50は焼鈍炉、60は酸洗槽、70はブライドルロール、80は出側ルーパー、90は巻取り機を示し、酸洗槽60は、硫酸を満たした酸洗槽60aと、混酸を満たした酸洗槽60bから構成される。
【0005】
熱間圧延後のステンレス鋼板は、一般的に上記100のような連続焼鈍酸洗ライン、あるいはまた別のタイプである連続酸洗ラインなどの入側において、先行材の尾端と後行材の先端がフラッシュバット溶接またはレーザー溶接などの溶接方法により溶接された上、酸を満たした酸洗槽内を連続して通板されることにより、全長が酸洗される。
【0006】
フラッシュバット溶接とは、先行材の尾端、後行材の先端を突き合わせ、突き合わせた状態で電流を流し、発生したジュール熱、および、接触部が溶融飛散して発生するアーク熱を利用して溶融し、先行材と後行材の両者を加圧する(アップセットするとも言う。突き合わせて押し付けることを意味する)ことにより溶接する溶接方法である。
【0007】
また、レーザー溶接とは、先行材の尾端と後行材の先端を突き合わせ、突き合わせ部にレーザー光を照射して溶融させ、一体化させるか、場合によっては、溶材(インコネル、SUS301Sなどの材質)を用い、レーザー光によりその溶材を溶融させ、突き合わせ部に流し込んで溶融一体化させることにより、溶接する溶接方法である。
【0008】
レーザー光は、被照射部に投入されるエネルギー密度が高いため、溶接速度が速い。したがって、20〜80kW内外の出力で溶接が可能である。また、レーザー溶接は、フラッシュバット溶接に比べ、溶接される金属板の側への入熱量が少なくて済むほか、溶材を使用する場合は酸化物の発生も少なく、良好な溶接が期待できる。
【0009】
上記のような溶接方法を用いて、先行材の尾端と後行材の先端を溶接した後、溶接部は、上記した連続焼鈍酸洗ライン100、あるいは別の連続酸洗ラインなどの連続処理ラインを通板されることになる。
【0010】
連続処理ライン内には、例えば、上記した連続焼鈍酸洗ライン100の場合の例でもわかる通り、ルーパーロール(32や82)、ブライドルロール(70)などの種々のロールがあり、それらのロールを通過するたびに、溶接部には、繰り返し曲げ歪みが付与される。
【0011】
また、連続処理ラインを通板される際には、通板される金属板に20〜30MPa内外の張力(ライン張力)が付与され、当然、溶接部にもその張力が作用するため、溶接部は、引張応力の作用下で曲げ加工を受けることになる。
【0012】
ところで、上記のフラッシュバット溶接を用い、溶接部をグラインダー処理した後、溶接部を加熱する方法が、特許文献1に記載されている。
【0013】
特許文献1には、突き合わせたステンレス鋼板をフラッシュバット溶接する際に、アップセット量(突き合わせて押し付ける量)を板厚の2倍以上とすることや、溶接部を850℃以上に加熱することなどが記載されており、これによれば、フェライト系、マルテンサイト系ステンレス鋼板の溶接部に生成したマルテンサイトを消滅させることができ、溶接部の靭性および機械的性質は良好なため、溶接部を連続処理ラインに通板しても、破断するのを抑制できるようになることが記載されている。
【0014】
さらに、溶接前または溶接中に溶接部を加熱してもマルテンサイト化による靭性低下に伴う破断を抑制することができるが、その方法として、特許文献2に記載の誘導加熱のような方法が提案されている。
【特許文献1】特開2003−170274号公報
【特許文献2】特許第3492408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1に記載の方法により、溶接部が連続処理ラインを通板される際に破断するのをある程度抑制できるようにはなったが、以下に述べるような問題があり、溶接部が破断するのを完全に防止するには至っていない。
【0016】
先行材と後行材が同一のステンレス鋼種の場合、板厚が3mm以下だと、確かに、特許文献1に記載の方法でも、破断を抑制できることがわかったが、板厚が4mm以上の場合、先行材の尾端および後行材の先端を溶接(溶接方法はフラッシュバット、レーザーのどちらでも良い)後、850℃以上に加熱すると、溶接部が破断する場合があった。
【0017】
これは、溶接部をグラインダー処理していないため、連続処理ラインの各種ロールにて曲げられる際に、板厚が厚いほど大きくなってくる、金属板表面の長さ方向に作用する引張の力により、金属板の溶接の際に表層に生じることのある、微細な亀裂が進展するため、と推定される。
【0018】
先行材と後行材のステンレス鋼種や成分が異なる場合には、溶接部の加熱温度を850℃以上にしたとしても、冷却時にマルテンサイトが生成したり、溶接時の入熱により、溶接部に隣接する部位(溶接熱影響部)の結晶粒が粗大化したりして靭性が低下してか、破断する場合があった。
【0019】
このため、先行材と後行材のステンレス鋼種や成分が異なる、異材(例えばオーステナイト系とフェライト系ステンレス鋼板の間の溶接)の溶接の場合に、破断させずに通板するのが困難であった。
【0020】
特許文献1に記載の溶接後の加熱方法については、LPGまたは誘導加熱と記載されているが、具体的な装置の構成や制御方法についての記載がなく、多くの点で改善の余地があった。
【0021】
ところで、特許文献2に記載の誘導加熱で溶接部を加熱する方法では、加熱域と非加熱域の境にて、冷却される過程でマルテンサイトが生成し、その後も生成したマルテンサイトが残存してか、そこを起点に亀裂が発生し、破断に至る場合があった。
【0022】
また、誘導加熱で溶接部を加熱する方法では、設備が大掛かりになる問題があった。また、目的とする温度に達するまでに時間がかかる問題があった。
【0023】
これは、誘導加熱する際に金属板の突き合わせ端面に生成する誘導電流の浸透深さが、例えば、10kHzの周波数でオーステナイト系ステンレス鋼を誘導加熱する場合を例に挙げると、3〜5mm内外にしかならず、この浸透深さを例えば3倍にしようとすると、周波数を約10分の1にする必要があり、そのためには、電源装置のコンデンサ容量を100倍にしなければならない、との関係があり、それを避けようとすると、時間を要しても、熱の伝播を待つしかないことによる。
【0024】
ちなみに、上記の関係は、式に表すと、以下のようになる。
δ=1/√(πμσf)・・・(1)
f=1/{2π√(LC)}・・・(2)
ここに、
δ:誘導電流の浸透深さ
μ:透磁率
σ:導電率
f:周波数
L:インダクタンス(誘導加熱装置ならびに被加熱物を含む系全体の)
C:電源装置のコンデンサ容量
を表す。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものである。すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)ステンレス鋼板を突き合わせて溶接し、溶接部を加熱するステンレス鋼板の溶接後処理方法において、溶接部をグラインダー処理した後、溶接部の上側または下側の一方または両方から溶接部をガスで加熱することを特徴とするステンレス鋼板の溶接後処理方法。
(2)(1)記載のステンレス鋼板の溶接後処理方法において、突き合わせて溶接する先行材および後行材の化学成分を用いて、以下の式で求められる最高加熱温度を、該先行材および該後行材それぞれについて計算により求め、該先行材および該後行材のうち、該最高加熱温度が低い方の温度を目標に、前記グラインダー処理後の溶接部を加熱することを特徴とするステンレス鋼板の溶接後処理方法。
最高加熱温度(Tmax)=860-45×C(mass%)-2.5×Cr(mass%)+6.8×Ni(mass%)
なおここで、C:炭素、Cr:クロム、Ni:ニッケルを表す。
(3)(2)記載のステンレス鋼板の溶接後処理方法において、
ガスで加熱する側あるいはそれと反対側の溶接部表面温度を測定し、その測定した温度を基に、ガス流量を制御することを特徴とするステンレス鋼板の溶接後処理方法。
(4)金属板を突き合わせて溶接し、溶接部をグラインダー処理した後、溶接部をガスで加熱することを特徴とする溶接装置。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、板厚が厚くなっても、連続処理ラインに通板した場合に、溶接部が破断するのを抑制することができ、しかも、先行材と後行材のステンレス鋼種や成分が異なる場合でも、破断させずに通板することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の実施の形態の一例を模式的に図1に示す。図1は連続処理ライン(連続酸洗ライン、連続焼鈍ラインまたは、連続焼鈍と連続酸洗を兼ね備えた連続焼鈍酸洗ラインなど)の入側を図示している。
【0028】
図1(a)に先行材の尾端と後行材の先端の溶接状況を、(b)に溶接部をグラインダー処理する状況を、(c)にガス加熱する状況を示す。
【0029】
図において、1は先行材、2は後行材、3は溶接部、4はレーザー溶接機、5はグラインダー、6はガスバーナーノズル、7は温度計、8はリトラクト装置、15は溶接部加熱装置、16は溶接装置を示す。本発明に係る溶接装置16は、レーザー溶接機などの溶接機4、グラインダー5のほか、ガスバーナーノズル6や放射温度計7やリトラクト装置8を含む溶接部加熱装置15などを一切全て含むものとする。尚、グラインダー5は、砥石を回転させる方式や、図とは異なる回転しない固定式の刃物を板幅方向に移動させる押し切りの方式などのものが考えられ、これら全てを含む意味とする。
【0030】
図1に示す先行材1または後行材2として、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼SUS304:18Cr−8Ni(数値はmass%。以下同じ)、SUS316:18Cr−12Ni−2.5Mo−0.6C、フェライト系ステンレス鋼SUS430:17Cr−0.03〜0.06C、マルテンサイト系ステンレス鋼SUS410:13Cr−0.08C、SUS420J1:13Cr−0.2C、SUS420J2:13Cr−0.3C、SUS429J1:17Cr−0.3Cなどの各種のステンレス鋼板を例に挙げることができる。
【0031】
先行材1と後行材2は、図示しないせん断機により先行材1の尾端部および後行材2の先端部を切断され、突き合わされた後、レーザー溶接機4により溶接される。先行材1および後行材2の板幅は700〜1600mm、板厚は2〜6mm内外である。
【0032】
レーザー溶接機は、40〜70kWのものを用いるのが好ましい。その程度の出力の場合、レーザー溶接機は、1〜2m/分の板幅方向速度で移動しながら溶接を行うことができ、φ1〜3mmのインコネル、あるいはSUS301Sなどを溶材として用いても良い。
【0033】
その後、図1(b)のように、グラインダー5により溶接部が切削されて処理される。グラインダーは直径200〜300mmの直径の砥石を有し、回転数600〜3000回転/分でモータにより駆動される。
【0034】
砥石間の距離を調整することにより、溶接部に盛り上がった、地金、溶材、あるいは溶融した金属の飛散痕を除去する。盛り上がった部分を除去する理由は、金属板の溶接の際に表層に生じることのある、微細な亀裂を切削して除去することで、連続処理ラインの各種ロールにて曲げられる際に、板厚が厚いほど大きくなってくる、金属板表面の長さ方向に作用する引張の力によっても、溶接部が破断してしまわないようにすることである。
【0035】
このほか、連続処理ラインを通板中にロールと溶接部が接触することによってすり疵が発生するのを防止するため、という理由もある。
【0036】
図2にその状況を模式的に示す。ここで、9は溶材、10は溶接熱影響部を示し、図2(a)にはグラインダー処理前の溶接部長手方向断面形状、同(b)にはグラインダー処理後の同形状を示す。溶接熱影響部10は、溶接によって結晶粒が粗大化することで、硬化するなど、機械的性質が低下した部分である。
【0037】
図1(c)にグラインダー処理された溶接部を加熱する方法を模式的に示す。ガスバーナーノズル6は、例えば、ガスとしてLPGを用い、酸素を燃焼助剤として使用するなどしても良い。溶接部とガスバーナーノズルの間隔は、20〜40mm内外とするのが好ましい。20mm未満でも、40mmを超えても、有効に溶接部を加熱することが困難になる。
【0038】
ガスを供給する圧力は、LPGが0.05〜0.1MPa、酸素が0.1〜0.3MPaとするのが好ましい。ガスを供給する圧力は、溶接する先行材、後行材の板厚によって調整するのが好ましい。この範囲未満あるいはこの範囲を超えると燃焼が困難になるからである。
【0039】
また、ガスで加熱する際に、ガスで加熱する側あるいはそれと反対側の溶接部表面温度を放射温度計7により測定し、その測定した温度を基に、ガス流量を制御するようにしても良い。
【0040】
放射温度計7は、供用開始に先立って、あるいは、毎月など定期的に、放射率を校正するのが好ましい。ガスバーナーノズル6および放射温度計7は、リトラクト装置8により、溶接方向に移動できるようにし、その速度は1〜3m/分内外とするのが好ましい。
【0041】
図3にガスで加熱する際の制御ブロック図を示す。図において、12はガスレギュレータ、13はガスとしてLPGを用いた場合のLPG配管、14は酸素配管である。
【0042】
放射温度計7により測定された温度T0が制御装置11に入力され、制御装置11内では、図示しない上位計算機から伝送される、先行材の成分に関するデータから決まる、最高加熱温度Tmax1と、後行材の成分に関するデータから決まる、Tmax2とを、例えば、最高加熱温度の実績を後述の実施例に述べるような方法で、C,Cr,Niの成分含有量(mass%)にて一次回帰して得られる以下の式(3)を用いるなどして、計算により求める。
【0043】
Tmaxi=860-45×C(mass%)-2.5×Cr(mass%)+6.8×Ni(mass%)・・・(3)
ここで、添字i=1,2は、それぞれ、先行材、後行材を意味する。
得られたTmax1、Tmax2の小さい方の値をTmaxとして、測定温度T0との差を以下の式(4)で求める。
ΔT=Tmax-T0・・・(4)
制御装置11は、ΔTを基に、Tmaxを目標に、レギュレータ12の圧力調整弁の開度などを調整して供給されるガスの圧力を制御する。具体的には、例えば以下の式(5)を用いるなどして、Paを目標値として、ΔTの絶対値が小さくなるように制御すれば良い。
Pa=P0+a×ΔT・・・(5)
ここで、
Pa:制御上目標とするガスの圧力、
P0:目標とするガスの圧力(0.05〜0.1MPa)、
a:比例ゲイン(0.0001〜0.0005)
である。なお、Paは0.1MPaを超えないようにするなど予めリミットを設定しておくようにするなどしても良い。このような方法によれば、溶接部を最適な温度に加熱するよう制御することができる。
【0044】
例えば、マルテンサイト系ステンレス鋼板を溶接後の溶材と隣接する部位には、溶接後の冷却過程でマルテンサイトが生成しやすい。マルテンサイトは、硬度は高いものの、靭性は低いので、亀裂の起点となり、連続処理ラインを通板する際、溶接部あるいは溶接熱影響部が破断しやすくなる。
【0045】
発明者らは、含有する成分によって、このマルテンサイトを消滅させるための、適切な溶接後の加熱温度が存在することを見出した。さらに、C(炭素)含有量の多いマルテンサイト系ステンレス鋼を850℃以上の高温でガス加熱すると、せっかく加熱しても、その後の冷却過程で再びマルテンサイトが生成することも見出した。
【0046】
また、極めてC(炭素)含有量の低いフェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼であっても、溶接により発生する熱歪みに伴う残留応力も加わることから、連続処理ラインを通板する際に各種ロールから受ける繰り返し曲げによって溶接部あるいは溶接熱影響部に亀裂が発生し、破断する場合がある。
【0047】
特に、板厚が厚くなるほど、金属板表面の長さ方向に作用する引張の力も大きくなってくるので、亀裂が発生しやすくなる。
【0048】
また、溶接部を加熱すると、溶接により発生する熱歪みに伴う残留応力は解消に向かうが、過度に加熱すると、溶接熱影響部の結晶粒が粗大化するため、靭性が低下し、却って亀裂が発生しやすくなり、破断の原因になる場合もある。
【0049】
以上のような結果を総合し、発明者らは、さらに研究を進めた結果、含有する成分によって、適切な溶接後の加熱温度が存在することを見出した。
【0050】
適切な溶接後の加熱温度は、上述の式(3)としたものがそれである。式(3)を回帰して求めるにあたっては、種々の成分組成のステンレス鋼を用いて以下に説明するような実験を行った。ここで、連続処理ラインを通板可能か否かの判断は、曲げ試験にて行った。これは連続処理ラインを通板した際の、ロールによる曲げを想定している。
【0051】
まず、レーザー溶接、グラインダー処理した溶接部を含む30mm幅、300mm長さの試験片を切り出し、曲げ加工用試験片とした。この溶接部を試験片ごとガス加熱したのち、r=40mmの工具で、曲げ曲げ戻し加工を施し、溶接部の亀裂発生状況を観察した。
【0052】
曲げ曲げ戻し加工のようすを図4に模式的に示す。3は溶接部である。なお、板厚は5mmとした。
【0053】
各鋼種を試験片として実験した結果を、表1に示す。ここで、×は、曲げ曲げ戻し加工時に亀裂が発生し、破断した場合、△は、破断しなかったが、溶接部の表面に亀裂が発生した場合、○は、亀裂が発生しかなった場合である。このようにして、曲げ曲げ戻し加工で○が得られる加熱温度のうちの最高温度を、最高加熱温度(Tmax)とした。最高加熱温度を、各鋼種の各成分含有量(mass%)を用いて一次回帰処理することによって式(3)が得られた。
【0054】
【表1】


【実施例】
【0055】
(本発明例)図1に示した溶接方法にて、レーザー溶接機として出力55kWのものを用い、溶材としてインコネルのφ1mmのものを用いた。板幅方向速度は、1.5m/分とした。グラインダーで余分な溶材を除去した後、本発明の加熱方法によりグラインダー処理した溶接部を加熱した。
【0056】
ガスの供給圧力は、板厚が3mmの場合には0.06MPa、流量は0.110m/min、4mmの場合には0.07MPa、流量は0.122 m/min、を目標とした。酸素の供給圧力は、0.2MPaで一定とした。また、比例ゲインaは0.0008として、LPGの供給圧力を制御した。
【0057】
(従来例1)
従来例1では、特許文献1に記載のフラッシュバット溶接(出力130kVA)を行い、グラインダー処理後、850℃以上になるように溶接部を加熱した。放射温度計による測定では、855〜900℃の範囲であった。なお、アップセット量は板厚の2倍とした。
【0058】
(従来例2)
従来例2では、図1に示した溶接方法にて、レーザー溶接機として出力55kWのものを用い、溶材としてインコネルのφ1mmのものを用いた。溶接速度は、板幅方向に1.5m/分とした。グラインダーで余分な溶材を除去した後、加熱なしの条件とした。
【0059】
(1)板厚の影響
板厚2〜6mm、板幅700〜1600mmのステンレス鋼板(オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系の割合が1:6:3)1000本を対象として、上記の本発明例および従来例1,2に則り、図6に示した連続焼鈍酸洗ライン100に通板した。なお、本発明例では、溶接後の加熱温度は、750〜840℃に制御され、溶接熱影響部の結晶粒の粗大化は認められなかった。
【0060】
表2に、板厚2〜6mmの範囲で、しかも、先行材、後行材の鋼種を同一とした条件下で、溶接した場合の、連続焼鈍酸洗ラインを通板した際の破断割合(%)を示す。
【0061】
本発明例では、連続焼鈍酸洗ラインにおいて、溶接部あるいは溶接熱影響部の破断は発生せず、良好な結果が得られたが、従来例1,2とも、板厚が厚い条件では、破断割合が高くなった。本発明により、適切な溶接部の加熱処理が行われることがわかる。
【0062】
【表2】


【0063】
(2)異材溶接の影響
板厚3mm、板幅700〜1600mmのステンレス鋼板(オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系)100本を対象として、異材溶接(例えばオーステナイト系とフェライト系など)を行い、上記の本発明例および従来例1,2に則り、図6に示した連続焼鈍酸洗ライン100に通板した。
【0064】
なお、本発明例では、溶接後の加熱温度は、750〜840℃に制御され、溶接熱影響部の結晶粒の粗大化は認められなかった。
【0065】
破断割合(%)を表3に示す。本発明例では、連続焼鈍酸洗ラインにおいて、溶接部あるいは溶接熱影響部の破断は発生せず、良好な結果が得られたが、従来例1,2とも、板厚が厚い条件では、破断割合が高くなった。
【0066】
【表3】


【0067】
次に、本発明例と、誘導加熱装置を用いて、溶接前に加熱を行う方法(比較例)とを比較した結果について示す。なお、誘導加熱装置は、周波数10kHz、出力200kWのものを用いた。
【0068】
板厚2〜6mm、板幅700〜1600mmのステンレス鋼板(オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系の割合が1:6:3)1000本を対象として上記の本発明例および誘導加熱装置を用いた例、双方について、図6に示した連続焼鈍酸洗ライン100に通板した。
【0069】
表4に、板厚2〜6mmの範囲で、しかも、先行材、後行材の鋼種を同一とした条件下で、溶接した場合の、連続焼鈍酸洗ラインを通板した際の破断割合(%)を示す。
【0070】
本発明例では、連続焼鈍酸洗ラインにおいて、溶接部あるいは溶接熱影響部の破断は発生せず、良好な結果が得られたが、誘導加熱装置を用いた場合には、板厚が厚い条件では、破断割合が高くなった。本発明により、適切な溶接部の加熱処理が行われていることがわかる。
一方、誘導加熱装置を用いた場合には、板厚が厚い場合に破断割合が増加した。
【0071】
また、本発明例での加熱時間は、平均42秒であったのに対し、誘導加熱装置を用いた場合には、63秒であり、本発明ではより簡単な装置でしかもより短時間で加熱処理可能であることがわかる。
【0072】
【表4】


【0073】
以上の通りであるが、本発明は、上記の実施の形態に限るものではない。例えば、ガスバーナーノズル6は、溶接部の上側ではなくて下側から溶接部をガスで加熱してもよいし、両方から加熱してもよい。また、ガスバーナノズル6は、1本のものを板幅方向に移動させるタイプのものに限らず、図5に示すごとく、複数列のものが板幅方向に移動させるタイプのものであってもよいし、あるいは、カーテンウォール状の火炎が全幅をカバーするように燃焼するタイプのものを板幅方向に移動させないで用いるなどしてもよい。
【0074】
また、先行材および後行材が同じ材質であれば必ずしも式(3)での計算結果によらずに経験的に定めた材質別のテーブル値に従ってガスや酸素の流量、あるいはさらに溶接機の板幅方向速度などを決めてもよい。
【0075】
さらに、放射温度計7とその測定した温度を基にガス流量を制御する仕組みも必須というわけではなく経験的に定めたテーブル値に従ってガスや酸素の流量、あるいはさらに溶接機の板幅方向速度などで決めても良い。
【0076】
そして、本発明は、レーザ溶接のみならず、誘導加熱のように、加熱域と非加熱域の境にて、冷却される過程でマルテンサイトが生成するような溶接方法に適用しても、同部を加熱することでマルテンサイトを消滅させることができ、破断の抑制に同様に効果があるのはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一つの実施の形態を説明するための斜視図
【図2】溶接部の模式図
【図3】本発明の実施の形態に係る溶接部をガスで加熱する際の制御ブロック図
【図4】曲げ試験のようすを模式的に示す図
【図5】本発明の別の実施の形態を説明するための図
【図6】本発明を用いるのに好適な連続焼鈍酸洗ラインを全体概略的に示した図
【符号の説明】
【0078】
1:先行材
2:後行材
3:溶接部
4:レーザー溶接機
5:グラインダー
6:ガスバーナーノズル
7:放射温度計
8:リトラクト装置
9:溶材
10:溶接熱影響部
11:制御装置
12:ガスレギュレータ
13:LPG配管
14:酸素配管
15:溶接部加熱装置
16:溶接装置
20:溶接機
30:入側ルーパー
31:払出し機
40:ショットブラスト設備
50:焼鈍炉
60:酸洗槽
70:ブライドルロール
80:出側ルーパー
90:巻取り機
100:連続焼鈍酸洗ライン




 

 


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