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発明の名称 熱間圧延用複合ロールの製造方法および熱間圧延用複合ロール
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−29968(P2007−29968A)
公開日 平成19年2月8日(2007.2.8)
出願番号 特願2005−214191(P2005−214191)
出願日 平成17年7月25日(2005.7.25)
代理人 【識別番号】100099531
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 英一
発明者 柴田 浩光 / 市野 健司 / 坂田 敬 / 平岡 久
要約 課題
耐折損性に優れた熱間圧延用複合ロールの製造方法を提案する。

解決手段
遠心力鋳造法でC:2.5〜4.0%、Cr:6.0〜20.0%、Mo:2.0〜12.0%、V:3.0〜10.0%、Nb:5.0%以下を含む組成のハイス系合金鋳鉄材からなる外層を形成し、あるいはさらに中間層を形成した
特許請求の範囲
【請求項1】
遠心力鋳造法で外層、あるいはさらに中間層を鋳造したのち、内層を静置鋳造し、二層構造、あるいは三層構造の熱間圧延用複合ロールとする熱間圧延用複合ロールの製造方法であって、前記外層が、mass%で、
C:2.5〜4.0%、 Si:1.5%以下、
Mn:1.2%以下、 Cr:6.0〜20.0%、
Mo:2.0〜12.0%、 V:3.0〜10.0%、
Nb:5.0%以下、
を含み、あるいはさらにNi:0〜5.5%、W:0〜1.0%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有するハイス系合金鋳鉄材からなり、前記内層を、mass%で、
C:3.0〜4.0%、 Si:1.5〜3.0%、
Mn:0.2〜1.0%、 Mg:0.02〜0.1%、
あるいはさらにCa:0〜0.1%、Ni:0〜4.0%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する内層材溶湯を、該内層材溶湯の溶湯過熱度ΔT(℃)および内層材溶湯により溶解する外層または内間層の厚みx(m)が下記(1)式を満足し、かつ混入するCrおよびMoの合計が0.8%以下となるように調整し、注湯して形成することを特徴とする熱間圧延用複合ロールの製造方法。

100 < [ΔT−400×{R−(R−x)}/R]/100 < 250 ………(1)
ここで、ΔT:内層材溶湯の溶湯過熱度(℃)、
R:内層の半径(m)
x:内層材溶湯により溶解する外層または中間層の厚み(m)
【請求項2】
外層と内層からなる二層構造、あるいは外層、中間層と内層からなる三層構造を有する熱間圧延用複合ロールであって、前記外層が、mass%で、
C:2.5〜4.0%、 Si:1.5%以下、
Mn:1.2%以下、 Cr:6.0〜20.0%、
Mo:2.0〜12.0%、 V:3.0〜10.0%、
Nb:5.0%以下
を含み、あるいはさらにNi:0〜5.5%、W:0〜0.1%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有するハイス系合金鋳鉄材からなり、前記内層が、mass%で、
C:3.0〜4.0%、 Si:1.5〜3.0%、
Mn:0.2〜1.0%、 Mg:0.02〜0.1%、
Cr:0.1〜0.8%、 Mo:0.05〜0.8%、
あるいはさらにCa:0〜0.1%、Ni:0〜4.0%、W:0〜0.5%を、CrとMoの合計が0.8%以下となるように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、共晶炭化物を面積率で12%未満とした組織とを有する球状黒鉛鋳鉄材からなることを特徴とする熱間圧延用複合ロール。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材の熱間圧延に好適な熱間圧延用複合ロールの製造方法に係り、とくに遠心力鋳造製複合ロールの耐折損性向上に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材の熱間圧延に用いられる熱間圧延用ロールには、耐摩耗性、耐熱亀裂性、強靭性等の特性を有することが要求される。しかし、これらの特性すべてを単一の材料で満足させることは困難であり、熱間圧延用ロールとして、従来から、内層と外層、あるいは外層、中間層と内層と、複数の異なる材料で構成される複合ロールが使用されている。このような熱間圧延用複合ロールの製造方法としては、遠心力鋳造法を用いた製造方法が一般的となっている。例えば、特許文献1には、重量比で、C:2.5〜4.0%、Cr:6.0〜20%、V:3.0〜10.0%、Nb:0.6〜5.0%、Mo:2.0〜15%、Si:3.0%以下、Mn:3.0%以下を含み、C,Nb、Vからなる関係式を所定範囲とする高V−Nb系合金鋳鉄を遠心力鋳造して外層となし、C:0.5%以上を含有する黒鉛鋼を遠心力鋳造して中間層とし、球状黒鉛鋳鉄を軸材(内層)として静置鋳造する熱間圧延用ロールの製造方法が開示されている。特許文献1に記載された技術では、各層を溶着させて一体化し複合ロールとしている。
【0003】
しかし、特許文献1に記載された技術では、外層と中間層、中間層と内層と、各層間の溶着に際して、外層材に含まれるCr、Mo等の合金元素が中間層、内層へと順次混入してゆく。内層材である、例えば球状化黒鉛鋳鉄にCr、Mo等の合金元素が混入すると炭化物量が増加し脆化し、強度が低下して、鋳造後の冷却に際して、あるいはその後のロール使用に際して、折損事故が生じ易くなるという問題があった。
【0004】
このような問題に対して、例えば、特許文献2には、重量%で、C:1.0〜3.0%、Si:0.1〜2.0%、Mn:0.1〜2.0%、Cr:3.0〜10.0%、Mo:0.1〜9.0%、W:1.5〜10.0%、V、Nbのうち一種又は二種の合計:3.0〜10.0%を含む外層と、C:2.8〜4.0%、Si:1.0〜4.0%、Mn:0.2〜1.0%、S:0.06%以下、Ni:0.5〜4.0%、Cr:0.05〜1.0%、Mo:0.05〜1.0%、W:0.5%以下、V+Nb:0.5%以下、Mg:0.01〜0.1%を含む軸芯材を有する遠心力鋳造複合ロールが開示されている。特許文献2に記載された技術では、強靭性を確保するためには、軸芯材の炭化物形成元素である、Cr、Mo、W、V、Nbを好ましくは1.5%以下に低減することが好ましいとしている。
【特許文献1】特許第2902328号公報
【特許文献2】特開平5−5155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、炭化物形成元素の含有量を低く調整した特許文献2に記載された熱間圧延用複合ロールでも、ロールの折損は完全には防止できず、耐折損性に問題を残しているという問題があった。
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑み、耐折損性に優れた熱間圧延用複合ロールおよび熱間圧延用複合ロールの製造方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記した課題を達成するために、耐折損性に影響する内層の強度に及ぼす各種要因について鋭意考究した。その結果、本発明者らは、内層材を球状黒鉛鋳鉄とする場合、内層の強度は共晶炭化物量と極めて強い相関を示すことを見出し、内層中の共晶炭化物量が12面積%以上となると、内層強度の低下が著しくなり、熱間圧延中のロール折損事故が発生しやすくなることを知見した。そして、共晶炭化物量は、含有する合金元素量に加えてさらに、内層材溶湯の注湯温度や、内層鋳造時の外層あるいは中間層の溶け込み量などの、内層の鋳造条件に強く影響されることも見出した。
【0007】
本発明は、上記した知見に基づいて、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
(1)遠心力鋳造法で外層、あるいはさらに中間層を鋳造したのち、内層を静置鋳造し、二層構造、あるいは三層構造の熱間圧延用複合ロールとする熱間圧延用複合ロールの製造方法であって、前記外層が、mass%で、C:2.5〜4.0%、Si:1.5%以下、Mn:1.2%以下、Cr:6.0〜20.0%、Mo:2.0〜12.0%、V:3.0〜10.0%、Nb:5.0%以下、さらにNi:0〜5.5%、W:0〜1.0%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有するハイス系合金鋳鉄材からなり、前記内層を、mass%で、C:3.0〜4.0%、Si:1.5〜3.0%、Mn:0.2〜1.0%、Mg:0.02〜0.1%、Cr:0.1〜0.8%、Mo:0.05〜0.8%、あるいはさらに、Ca:0〜0.1%、Ni:0〜4.0%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する内層材溶湯を、該内層材溶湯の溶湯過熱度ΔT(℃)および内層材溶湯により溶解する外層または内間層の厚みx(m)が次(1)式
100 < [ΔT−400×{R−(R−x)}/R]/100 < 250 ……(1)
(ここで、ΔT:内層材溶湯の溶湯過熱度(℃)、R:内層の半径(m)x:内層材溶湯により溶解する外層または中間層の厚み(m))
を満足し、かつ混入するCrおよびMoの合計が0.8%以下となるように調整し、注湯して形成することを特徴とする熱間圧延用複合ロールの製造方法。
【0008】
(2)外層と内層からなる二層構造、あるいは外層、中間層と内層からなる三層構造を有する熱間圧延用複合ロールであって、前記外層が、mass%で、C:2.5〜4.0%、Si:1.5%以下、Mn:1.2%以下、Cr:6.0〜20.0%、Mo:2.0〜12.0%、V:3.0〜10.0%、Nb:5.0%以下、さらにNi:0〜5.5%、W:0〜1.0%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有するハイス系合金鋳鉄材からなり、前記内層が、mass%で、C:3.0〜4.0%、Si:1.5〜3.0%、Mn:0.2〜1.0%、Mg:0.02〜0.1%、Cr:0.1〜0.8%、Mo:0.05〜0.8%、あるいはさらにCa:0〜0.1%、Ni:0〜4.0%、W:0〜0.5%を、CrとMoの合計が0.8%以下となるように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、共晶炭化物を面積率で12%未満とした組織とを有する球状黒鉛鋳鉄材からなることを特徴とする熱間圧延用複合ロール。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、外層材を多量の炭化物形成元素を含有するハイス系合金鋳鉄としても、内層中の炭化物量を安定して低位に調整でき、耐折損性に優れた熱間圧延用複合ロールを容易に、かつ安価に製造でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、熱間圧延時のロール折損事故を顕著に低減できるという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の熱間圧延用複合ロールは、外層と内層からなる二層構造、あるいは外層、中間層と内層からなる三層構造を有する。外層は耐摩耗性に優れたハイス系合金鋳鉄材とする。また、内層は、強度靭性に優れた球状黒鉛鋳鉄材とする。なお、中間層は、C:1.0%以上の黒鉛鋼とすることが好ましい。
まず、本発明の熱間圧延用複合ロールの製造方法について説明する。
【0011】
本発明の複合ロールは遠心力鋳造法を利用して製造する。
まず外層を遠心力鋳造する。外層は、ハイス系合金鋳鉄組成の溶湯を、電気炉等の通常の溶解炉で溶製し、回転する鋳型内に注湯し、通常の遠心力鋳造法で所定厚さに鋳造されることが望ましい。適用する遠心力は100G以上とすることが好ましい。なお、遠心力鋳造法としては、回転軸が水平である横型、あるいは回転軸が傾斜した傾斜型、あるいは立て型のいずれでもよい、
本発明では、外層となる溶湯は、mass%で、C:2.5〜4.0%、Si:1.5%以下、Mn:1.2%以下、Cr:6.0〜20.0%、Mo:2.0〜12.0%、V:3.0〜10.0%、Nb:5.0%以下、あるいはさらにNi:0〜5.5%、W:0〜1.0%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有するハイス系合金鋳鉄組成の溶湯とする。
【0012】
外層を鋳造したのち、あるいは外層と中間層を鋳造したのち、内面が未凝固あるいは凝固直後に、鋳型を起立させて、内層を静置鋳造する。内層は球状黒鉛鋳鉄組成とする。内層材組成の溶湯を、電気炉等の通常の溶解炉で溶製し、外層の内部に注湯し内層を形成する。溶湯を注湯することにより、外層の内面側、あるいは中間層の内面側の一部が再溶解し、内層と外層、または内層と中間層とが溶着一体化される。
【0013】
本発明では内層となる溶湯は、C:3.0〜4.0%、Si:1.5〜3.0%、Mn:0.2〜1.0%、Mg:0.02〜0.1%、Cr:0.1〜0.8%、Mo:0.05〜0.8%、あるいはさらにCa:0〜0.1%、Ni:0〜4.0%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する溶湯とする。内層材溶湯の組成限定理由はつぎのとおりである。
C:3.0〜4.0%
内層では大部分のCを球状黒鉛として晶出させる。このためには、Cは3.0%以上とする必要がある。Cが3.0%未満では、鋳造性が低下するとともに、セメンタイトとなる量が増加し内層が脆化する。一方、4.0%を超えると、黒鉛量が過多となり強度が低下する。このため、Cは3.0〜4.0%の範囲に限定した。
【0014】
Si:1.5〜3.0%
Siは、Cの黒鉛化を促進する作用を有する元素であり、本発明では外層等からの白銑化作用を有する元素の混入による球状黒鉛の生成阻害を防止するために、1.5%以上の含有を必要とする。1.5%未満では、炭化物量が過多となり、内層が脆化する。一方、3.0%を超えると、基地(フェライト)中に固溶するSi量が多くなりすぎて基地が脆くなり延性が低下する。このため、Siは1.5〜3.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは2.0〜2.8%である。
【0015】
Mn:0.2〜1.0%
Mnは、Sの悪影響を抑制するとともに、焼入れ性を増加させ、内層の強靭化に寄与する。このような効果を得るためには、0.2%以上の含有を必要とする。一方、1.0%を超えて含有すると、内層が硬く、脆くなる。このため、Mnは0.2〜1.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.2〜0.5%である。
【0016】
Mg:0.02〜0.1%
Mgは、黒鉛を球状化する作用を有する元素であり、0.02%以上の含有を必要とする。0.02%未満の含有では黒鉛の球状化が不足する。一方、0.1%を超える含有は、炭化物量が増加し過ぎて内層が脆くなる。このため、Mgは0.02〜0.1%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.03〜0.07%である。
【0017】
Ca: 0〜0.1%
Caは、Mgと同様に、黒鉛を球状化する作用を有する元素であり、本発明では必要に応じてMgと複合して含有させることができる。このような効果は0.01%以上の含有で顕著となる。一方、0.1%を超える含有は、炭化物量が増加し過ぎて内層が脆くなる。このため、含有する場合には、Caは0.1%以下に限定した。なお、好ましくは0.01〜0.05%である。
【0018】
Ni: 0〜4.0%
Niは、焼入れ性を増大させる元素であり、必要に応じ含有することができる。含有する場合には内層の強度確保のため0.2%以上含有することが望ましいが、4.0%を超えて含有すると焼入れ組織が残存するようになり、内層が脆くなる。そのため、含有する場合には、Niは4.0%以下に限定することが好ましい。
【0019】
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
本発明では、上記した組成の内層材溶湯を、外層(中間層を有する場合は中間層)の内部に注湯し、内層を形成し、外層(または中間層)と溶着一体化させる。その際、注湯する内層材溶湯の溶湯過熱度ΔTおよび内層材溶湯により溶解する外層または内間層の厚みxを次(1)式
100 < [ΔT−400×{R−(R−x)}/R]/100 < 250 ……(1)
(ここで、ΔT:内層材溶湯の溶湯過熱度(℃)、R:内層の半径(m)、x:内層材溶湯により溶解する外層または中間層の厚み(m))
を満足するように、かつ、内層材溶湯により溶解する外層または中間層から内層に混入するCrおよびMoの合計量が0.8%以下となるように溶解する外層または中間層の厚みxを調整して注湯する。なお、xは鋳型形状、内層材溶湯の温度および注湯タイミングなどの操業因子によって変化するものであり、これらの因子の調整により制御が可能である。これにより、内層中に生成する炭化物量を、好ましくは面積率で12%未満まで、効果的に低減することができ、圧延中のロール折損事故を回避できるロールとすることができる。なお、ΔT(℃)は、内層材溶湯注湯時の溶湯過熱度であり、(溶湯温度−凝固温度)(℃)で定義される。なお、[ΔT−400×{R−(R−x)}/R]は、実質的な溶湯過熱度を意味する。ここで、[400×{R−(R−x)}/R]は、外層(あるいは中間層)の溶け込みによる溶湯温度の低下量を意味する。
【0020】
本発明者らの研究によれば、内層材溶湯の注湯時の外層(または中間層を有する場合は中間層)の内面温度は、1000〜1300℃程度と予想され、実際に外層(または中間層を有する場合は中間層)の溶け込みによる、内層材溶湯の温度低下は、概ね、[400×{R−(R−x)}/R]で表現できることが明らかとなっている。したがって、[ΔT−400×{R−(R−x)}/R]が、内層注湯時の実質的な溶湯過熱度を意味することになる。実質的な溶湯過熱度と実際の鋳型内の溶湯の溶湯過熱度との関係を図3に示す。なお、図3における「実質的な溶湯過熱度」は、注湯時の溶湯加熱度△Tと、外層(または中間層)の溶け込み厚みxから予測した計算値であり、また「鋳型内溶湯の溶湯過熱度」は、鋳型内溶湯の溶湯過熱度の実測値である。また溶湯の凝固温度は次(2)式
凝固温度=1534−{91C−0.24V−0.13Nb+21Si+3.5Mn+34.4P+38S+4Ni+0.65Cr+3.0Mo}……(2)
(ここで、C、V、Nb、Si、Mn、P、S、Ni、Cr、Mo:溶湯中の各元素含有量(mass%))
を用いて計算した。
なお、鋳型内溶湯の溶湯過熱度(実測値)は、内層材溶湯の注湯完了の1分後に測定した値を用いた。
【0021】
図3から、鋳型内溶湯の溶湯過熱度は、[ΔT−400×{R−(R−x)}/R]で計算される実質的な溶湯過熱度によって概ね予測できることがわかる。
実質的な溶湯過熱度が100℃未満では溶湯過熱度が低すぎて部分的な溶着不良を生じやすくなる。一方、実質的な溶湯過熱度が250℃以上では、外層からのCr、Moの混入量が多くなり、CrとMoの合計量(Cr+Mo)量が0.8%を超えるため、生成する炭化物量が12面積%以上となって、圧延中のロール折損事故が発生しやすくなる。内層中の共晶炭化物量に及ぼす内層中の(Cr+Mo)量と実質的な溶湯過熱度との関係を図1に、熱間圧延中のロール折損と内層中の(Cr+Mo)量と実質的な溶湯過熱度との関係を図2に示す。図1および図2から、実質的な溶湯過熱度が250℃以上となると、内層中に生成する炭化物量が12面積%以上となり、圧延中のロール折損事故が発生しやすくなることがわかる。
【0022】
なお、外層を鋳造後、中間層を鋳造する場合には、中間層組成の溶湯を外層鋳造時と同様に溶製したのち、該溶湯を回転する鋳型内に注湯し、通常の遠心力鋳造法で所定の中間層厚さに鋳造する。その際、外層の内面側の一部が再溶解し、中間層と外層とが溶着一体化される。
なお、中間層はC:1.0〜2.0%を含有する黒鉛鋼とすることが好ましい。注湯する好ましい黒鉛鋼としては、C:1.0〜2.0%、Si:1.5〜2.5%、Mn:0.2〜0.5%、その他、Al:0.01〜0.05%を含有し残部Feおよび不可避的不純物からなる組成とすることが好ましい。
【0023】
次に、好ましくは上記した製造方法で製造された熱間圧延用複合ロールの構成について説明する。
本発明熱間圧延用複合ロールの外層は、上記したような組成のハイス系合金鋳鉄材からなる。外層組成の限定理由について説明する。
C:2.5〜4.0%
Cは、硬質な炭化物を形成し、ロール外層の耐摩耗性向上に寄与する有効な元素であり、本発明では、2.5%以上含有する必要がある。2.5%未満では、炭化物量が不足し、耐摩耗性向上効果が認められないうえ、摩耗が増加し肌荒れと呼ばれるロール表面粗度劣化を引き起こす。一方、4.0%を超えて含有すると、脆くなるため、かえって耐摩耗性が低下する。このため、外層のCは2.5〜4.0%に限定した。
【0024】
Si:1.5%以下
Siは、脱酸剤として作用するとともに、鋳造性の確保に寄与する元素であり、本発明では、0.1%以上含有することが好ましい。一方、1.5%を超えて含有しても効果が飽和する。このため、Siは1.5%以下に限定した。なお、好ましくは0.2〜0.5%である。
Mn:1.2%以下
Mnは、Sと結合してMnSを形成しSの悪影響を除去する作用を有するとともに、基地中に固溶して強度確保に寄与する元素であり、0.2%以上の含有で効果が顕著となる。一方、1.2%を超えて含有しても効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなる。このため、Mnは1.2%以下に限定した。なお、好ましくは0.2〜0.6%である。
【0025】
Cr:6.0〜20.0%
Crは、強靭な共晶炭化物の形成に寄与し、耐摩耗性向上に有効に作用する。本発明では、6.0以上の含有を必要とする。また、Crは基地中に固溶し、基地強化に寄与し、耐疲労特性を向上させるとともに、表面に形成され圧延時の潤滑特性を改善する黒皮の密着性向上に寄与する。このような効果を得るためには、6.0以上の含有を必要とする。一方、20%を超えて含有しても、効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなく経済的に不利となる。このため、Crは6.0〜20.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは7.0〜15.0%である。
【0026】
Mo:2.0〜12.0%
Moは、Crと同様に炭化物を形成し、耐摩耗性向上に寄与する。また、Moは炭化物中に固溶し炭化物を強化する。このような効果は2.0%以上の含有で認められる、一方、12.0%を超えて含有しても、含有量に見合う効果が得られない。このため、Moは2.0〜12.0%に限定した。なお、好ましくは4.0〜7.0%である。
【0027】
V:3.0〜10.0%
Vは、硬いMCまたはM炭化物を形成し耐摩耗性向上に有効に寄与する。このような効果を得るためには3.0%以上の含有を必要とするが、10.0%を超える含有は、上記した耐摩耗性向上効果が飽和するうえ、溶解時にV合金の溶解不良等の製造上の問題が生じる。このため、Vは3.0〜10.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは4.0〜6.0%である。
【0028】
Nb:5.0%以下
Nbは、Vと同様に、MC炭化物を形成し耐摩耗性向上に有効に寄与する。また、NbはV炭化物の偏析を抑制する作用があるため、遠心力鋳造時にMC炭化物の均一拡散に寄与する。このような効果を得るためには0.6%以上含有することが望ましい。一方、5.0%を超えて含有すると、効果が飽和するうえ、溶解時にNb合金の溶解不良等の製造上の問題が生じる。このため、Nbは5.0%以下に限定した。なお、好ましくは1.0〜1.6%である。また、NbはVとの複合含有とする必要がある。というのは、Nb単独含有では粗大な塊状炭化物が形成されやすく、上記した効果が十分に得られない。
【0029】
Ni:0〜5.5%
Niは、焼入れ性を向上させる元素であり、大径ロールの場合など所望の硬さを確保する必要がある場合に含有することができる。一方、5.5%を超える含有は、不安定組織である残留オーステナイト相が生成しやすくなる。このため、Niは含有しないか、含有する場合には5.5%以下に限定することが好ましい。
【0030】
W:0〜1.0%
Wは、基地を強化する作用が有するが、その効果はわずかであり、1.0%を超えて含有してもそれに見合う効果が期待できないため、含有しないか、含有する場合でも1.0%以下に限定することが好ましい。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
【0031】
つぎに、本発明熱間圧延用複合ロールの内層組成および組織の限定理由について説明する。内層は球状黒鉛鋳鉄組成を有する。内層組成の限定理由はつぎのとおりである。
C:3.0〜4.0%
内層では大部分のCを球状黒鉛として晶出させる。このためには、Cは3.0%以上とする必要がある。Cが3.0%未満では、鋳造性が低下するとともに、セメンタイトとなる量が増加し内層が脆化する。一方、4.0%を超えると、黒鉛量が過多となり強度が低下する。このため、Cは3.0〜4.0%の範囲に限定した。
【0032】
Si:1.5〜3.0%
Siは、Cの黒鉛化を促進する作用を有する元素であり、本発明では外層等からの白銑化作用を有する元素の混入による球状黒鉛の生成阻害を防止するために、1.5%以上の含有を必要とする。1.5%未満では、炭化物量が過多となり、内層が脆化する。一方、3.0%を超えると、基地(フェライト)中に固溶するSi量が多くなりすぎて基地が脆くなり延性が低下する。このため、Siは1.5〜3.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは2.0〜2.8%である。
【0033】
Mn:0.2〜1.0%
Mnは、Sの悪影響を抑制するとともに、焼入れ性を増加させ、内層の強靭化に寄与する。このような効果を得るためには、0.2%以上の含有を必要とする。一方、1.0%を超えて含有すると、内層が硬く、脆くなる。このため、Mnは0.2〜1.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.2〜0.5%である。
【0034】
Mg:0.02〜0.1%
Mgは、黒鉛を球状化する作用を有する元素であり、0.02%以上の含有を必要とする。0.02%未満の含有では黒鉛の球状化が不足する。一方、0.1%を超える含有は、炭化物量が増加し過ぎて内層が脆くなる。このため、Mgは0.02〜0.1%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.03〜0.07%である。
【0035】
Cr:0.1〜0.8%
Crは、強い白銑化作用を有し、黒鉛、フェライトの形成を抑制する元素であり、内層では外層等から混入するMo量を含め、0.8%以下に限定する。0.8%を超えて含有すると、炭化物量が増加しすぎて内層が脆くなる。一方、0.1%未満ではフェライトの析出量が増加し強度が低下する。このため、Crは0.1〜0.8%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.5%以下である。
【0036】
Mo:0.05〜0.8%
Moは、Crと同様に、強い白銑化作用を有し、さらに焼入れ性を増加させる元素であり、内層では外層等から混入するCrを含め、0.8%以下に限定する。0.8%を超えて含有すると、炭化物量が増加しすぎて内層が脆くなる。一方、0.05%未満では焼入れ性が低下し、強度が不足する。このため、Moは0.05〜0.8%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.5%以下である。
【0037】
なお、外層等から混入するCrとMoの合計が0.8%を超えると、内層の炭化物量が面積率で12%以上となり、ロールの折損事故が発生しやすくなる。このため、本発明では上記したCr、Mo含有量の範囲内でかつCrとMoの合計量(Cr+Mo)を、0.8%以下に調整する。
Ca:0〜0.1%
Caは、Mgと同様に、黒鉛を球状化する作用を有する元素であり、本発明では必要に応じて、Mgと複合して含有させることができる。このような効果は0.01%以上の含有で顕著となる。一方、0.1%を超える含有は、炭化物量が増加し過ぎて内層が脆くなる。このため、含有する場合には、Caは0.1%以下に限定することが好ましい。なお、好ましくは0.01〜0.05%である。
【0038】
Ni: 0〜4.0%
Niは、焼入れ性を増大させる元素であり、必要に応じ含有することができる。含有する場合には、内層の強度確保のため0.2%以上含有することが望ましい。一方、4.0%を超えて含有すると焼入れ組織が残存するようになり、内層が脆くなる。そのため、含有する場合には、Niは4.0%以下に限定することが好ましい。
【0039】
W:0〜0.5%
Wは、強い白銑化作用を有する元素であり、黒鉛の晶出を阻害する。そのため、Wは含有しないことが望ましい。外層等からの混入がある場合であってもできるだけ低減することが望ましく、0.5%以下に限定することが好ましい。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
【0040】
本発明の熱間圧延用複合ロールの内層は、上記した組成を有し、かつ共晶炭化物を面積率で12%未満とした組織を有する。共晶炭化物の面積率が12%以上になると、ロールの折損事故が発生しやすくなるため、本発明では、内層の共晶炭化物を面積率で12%未満に限定した。
なお、外層と内層との中間に中間層を形成する場合は、中間層はC:1.0〜2.0%を含有する黒鉛鋼とすることが好ましい。注湯する好ましい黒鉛鋼としては、C:1.0〜2.0%、Si:1.5〜2.5%、Mn:0.2〜0.5%、その他Al:0.01〜0.05%を含有し残部Feおよび不可避的不純物からなる組成とすることが好ましい。外層の内側に中間層を遠心力鋳造することにより、外層の一部を溶解し、中間層を外層と溶着・一体化する。これにより、中間層には、外層の再溶解により外層成分の一部が混入する。このため、中間層は上記した成分範囲に加えてさらに外層材の成分の一部が加算される。加算される量は外層の再溶解量に依存する。
【実施例】
【0041】
表1に示す組成の外層材の溶湯を電気炉で溶製したのち、回転する鋳型内に注湯し、遠心力鋳造法(遠心力:140G)で外層を形成し、凝固がほぼ完了した後に、電気炉で溶製した表2に示す組成の中間層材の溶湯を、外層内部に注湯し、外層と同様に遠心力鋳造法(遠心力:140G)で中間層を形成した。なお、外層の中間層材溶湯による溶解する外層の厚みは10〜14mmの範囲とした。
【0042】
ついで、中間層材溶湯の注湯終了から表5に示す時間経過後、すなわち中間層の凝固がほぼ完了した後に、鋳型の回転を停止し、鋳型を直立させたのち、中間層の内側に表3に示す組成の内層材の溶湯を注湯し、静置鋳造により内層を形成し、三層構造の熱間圧延用複合ロールとした。なお、内層材溶湯の注湯時には、表5に示すように溶湯過熱度ΔT等を変化し、溶解する中間層の厚みxを変化させた。なお、内層材溶湯により溶解した中間層の厚みxは、製品ロールの中間層と内層の境界位置を、超音波探傷で測定し、注湯量から換算した中間層と内層の境界位置との比較から算出した。
【0043】
また、得られた複合ロールについて、ロール軸の製品端部近傍の内層からサンプルを採取し、断面を研磨し、Nital液でエッチングして、光学顕微鏡(25倍)で約4.5mm2の視野を20視野観察し、画像解析装置により1視野につき、640×512画素のデータとして取り込み、炭化物面積率を測定した。なお、内層中のCr、Mo含有量についても化学分析法により分析した。また、製品端近傍の各層から、サンプルを採取して各層の組成を化学分析法により分析し、表4示す。
【0044】
また、得られた複合ロールを熱間圧延機の仕上げ圧延機に装入し、熱間圧延に供し、ロール寿命完了までの、折損事故の発生の有無について調査した。得られた結果を表5に示す。
【0045】
【表1】


【0046】
【表2】


【0047】
【表3】


【0048】
【表4】


【0049】
【表5】


【0050】
【表6】


【0051】
本発明例はいずれも、熱間圧延中に、ロール折損事故の発生はなく、ロール寿命を終了し廃却された。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、ロール折損事故が発生し廃却された。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】内層中の共晶炭化物量に及ぼす内層中のCr、Mo含有量の合計(Cr+Mo)と実質的な溶湯過熱度(計算値)との関係を示すグラフである。
【図2】熱間圧延中の折損事故の発生に及ぼす内層中のCr、Mo含有量の合計(Cr+Mo)と実質的な溶湯過熱度(計算値)との関係を示すグラフである。
【図3】鋳型内溶湯の溶湯過熱度(実測値)と実質的な溶湯過熱度(計算値)との関係を示すグラフである。




 

 


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