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発明の名称 切削インサートおよびインサート着脱式転削工具
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−144625(P2007−144625A)
公開日 平成19年6月14日(2007.6.14)
出願番号 特願2007−69308(P2007−69308)
出願日 平成19年3月16日(2007.3.16)
代理人 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
発明者 大宮司 久
要約 課題
転削工具を段階的に移動させて深い垂直加工面を形成する場合でも、個々の加工面同士の継ぎ目を目立たなくすることができて、垂直加工面全体として高い精度や面品位を得る。

解決手段
工具本体外周に後端側に向かうに従い回転方向後方側に延びるように取り付けられるインサートの主切刃7を、平面視においてすくい面2の外側に凸となる凸曲線状とするとともに、工具本体への取付状態において、この主切刃7の工具回転軸線回りの回転軌跡の投影線を凸円弧状とする。
特許請求の範囲
【請求項1】
略多角形平板状をなすインサート本体の一方の多角形面にすくい面が形成され、このすくい面の角部には上記一方の多角形面に対向する平面視に略円弧状をなすコーナ刃が形成されるとともに、このコーナ刃の一端に連なる上記すくい面の辺稜部には上記インサート本体の側面を逃げ面とする主切刃が形成されていて、軸線回りに回転される工具本体に、上記すくい面を工具回転方向に向けて、上記コーナ刃を上記工具本体の先端外周側に位置させ、かつ上記主切刃が該工具本体外周において後端側に向かうに従い上記回転方向の後方側に延びるように取り付けられる切削インサートであって、
上記主切刃は、上記平面視において上記すくい面の外側に凸となる凸曲線状とされるとともに、上記工具本体への取付状態において、この主切刃の上記軸線回りの回転軌跡の投影線が凸円弧状とされていることを特徴とする切削インサート。
【請求項2】
上記取付状態において、上記主切刃の上記軸線回りの回転軌跡の投影線は、その中間部において該軸線を中心とする円筒面に滑らかに接するとともに両端に向かうに従いこの円筒面の内側に向かう凸円弧状とされていることを特徴とする請求項1に記載の切削インサート。
【請求項3】
上記取付状態において、上記主切刃は、上記中間部における外径が切刃外径とされることを特徴とする請求項2に記載の切削インサート。
【請求項4】
上記主切刃の投影線の両端が上記円筒面の内側に向かう後退量は、上記コーナ刃の一端に連なる該主切刃の一端において、上記工具本体の外周後端側に位置する該主切刃の他端よりも小さくされていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の切削インサート。
【請求項5】
上記主切刃は、上記逃げ面に対向する側面視においても、上記コーナ刃の一端に連なる該主切刃の一端から他端側に向かうに従い凸曲しつつ、上記工具本体への着座面とされる上記インサート本体の他方の多角形面側に向かう凸曲線状とされていることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項6】
上記すくい面の内側には、上記工具本体への着座面とされる上記インサート本体の他方の多角形面側に凹む断面凹円弧状の凹面が、上記平面視において上記主切刃と略等間隔に上記すくい面の全周に渡って形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項7】
上記主切刃に連なる逃げ面は、該主切刃に連なって上記工具本体への着座面とされる上記インサート本体の他方の多角形面側に向かうに従い漸次後退するように傾斜する第1逃げ面と、この第1逃げ面の上記着座面側に連なって該第1逃げ面よりも大きな傾斜角で漸次後退するように傾斜する第2逃げ面とを備え、これら第1、第2逃げ面は上記逃げ面に対向する側面視において、上記コーナ刃の一端に連なる該主切刃の一端から他端側に向かうに従い凸曲しつつ上記着座面側に向かうように形成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項8】
上記主切刃の少なくとも上記一端側においては、上記第2逃げ面のさらに上記着座面側に連なって該着座面に垂直とされた平面状の第3逃げ面が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の切削インサート。
【請求項9】
上記コーナ刃の他端に連なる上記すくい面の辺稜部には、上記取付状態において該コーナ刃の他端から上記工具本体内周側に延びる副切刃と、この副切刃に連なって上記コーナ刃が形成された上記角部とは反対の上記すくい面の他の角部に達し、上記平面視における上記副切刃の延長線に対して該すくい面の内側に凹む凹部とが形成されており、
上記平面視において、この凹部の両端に接する接線が上記コーナ刃の延長線に対してなす角度が、上記工具本体への着座面とされる上記インサート本体の他方の多角形面において、上記副切刃と凹部とが形成された上記すくい面の辺稜部の反対側に位置する辺稜部が上記延長線に対してなす角度よりも、5°〜20°の範囲で大きくされていることを特徴とする請求項1から請求項8のうちいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項10】
請求項1から請求項9のうちいずれか一項に記載の切削インサートが、軸線回りに回転される工具本体に、上記すくい面を工具回転方向に向けて、上記コーナ刃を上記工具本体の先端外周側に位置させ、かつ上記主切刃が該工具本体外周において後端側に向かうに従い上記回転方向の後方側に延びるように取り付けられていることを特徴とするインサート着脱式転削工具。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート着脱式転削工具(以下、単に転削工具と称する。)の工具本体に取り付けられて該転削工具の切刃を構成する切削インサート(以下、単にインサートと称する。)、およびかかるインサートを取り付けた転削工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のインサートおよび転削工具としては、例えば特許文献1に、円筒形保持器(工具本体)とインサートとを有する回転式フライス(転削工具)に使用される、インサートのすくい面と逃げ面との間に規定された少なくとも一つの切削縁(主切刃)を備えている切削インサートにおいて、すくい面と逃げ面とが連続的に湾曲され、その結果円筒形保持器に関して規定されたすくい角と逃げ角、すなわち工具本体への取付状態におけるすくい角と逃げ角とが切削縁の長さに沿って実質的に不変である切削インサートおよび回転式フライスが提案されている。また、本発明の発明者等も、特許文献2において、すくい面の角部に形成されたノーズ部の切刃の一端につながるように形成される主切刃が、ノーズ部の切刃につなげられたテーパ切刃と、該テーパ切刃のノーズ部と反対側の一端の接合点につなげられた湾曲切刃とを有し、このうち湾曲切刃は、ノーズ部を先端外側に位置させるように当該インサートを工具本体に装着した状態でこの工具本体の回転軸線を中心軸線とする所定の円筒面上に含まれるように形成されているとともに、テーパ切刃は、この湾曲切刃からノーズ部に向かうにしたがって円筒面からその内側に向かうように形成されたインサート、および該インサートを装着した転削工具を提案している。
【特許文献1】特開平2−298414号公報
【特許文献2】特開2003−334716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、これら特許文献1、2のように転削工具の工具本体回転軸線を中心とする円筒面上に主切刃や主切刃のうちの湾曲切刃が含まれるように構成されたインサートでは、例えば該インサートが工具本体に精度良く取り付けられていなかったりして、この円筒面上に湾曲切刃が正確に含まれずに、湾曲切刃の上記軸線回りの回転軌跡をこの軸線を含む平面に投影した投影線が、該湾曲切刃が含まれるべき円筒面に対して傾いて配置されてしまうと、垂直加工面の精度が損なわれるおそれがあった。特に、こうして湾曲切刃が正確に上記円筒面上に含まれるように配置されていないと、例えば主切刃の有効切刃長よりも深い垂直加工面を形成するのに、この切刃長分ずつ転削工具を段階的にその回転軸線方向先端側に移動させて切削を行うような場合には、各段において切削される個々の垂直加工面には高い面品位を与えることができるものの、隣接する垂直加工面同士の繋ぎ目に段差が目立つようになり、切削後に仕上げ加工を要したりすることにもなる。これは、例えば切削時に工具本体に撓みが生じたりして、各段の切削時に湾曲切刃が含まれる上記円筒面同士が一致しなくなった場合も同様である。
【0004】
しかるに、この点、特許文献2に記載のインサートおよび転削工具によれば、上記テーパ切刃が、ノーズ部に向かうに従って湾曲切刃が含まれる上記円筒面からその内側に向かうように形成されているので、このような延性の高い材料を高速切削する場合でもインサート先端のノーズ部に対して外周側に位置する材料が他の部分の切屑の排出に伴い引っ張られるように毟り取られてインサート先端部が外周側に喰い込むような傾向が抑えられ、また、上記湾曲切刃とテーパ切刃とが、その接合点においてそれぞれの接線が所定の角度をなすようにしてつなげられており、これによって両切刃によって形成された切屑が接合点を境に異なる方向に成長して互いに分離され易くなるため、湾曲切刃で形成される切屑によってノーズ部外周側に位置する材料が一層引っ張られないようにすることができるが、その反面、上述のように湾曲切刃が正確に上記円筒面に含まれるように配置されていなかったりすると、転削工具を段階的に移動させて切削を行ったときの垂直加工面同士の繋ぎ目がより目立ちやすくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、このような背景の下になされたもので、上述のように転削工具を段階的に移動させて深い垂直加工面を形成する場合でも、個々の加工面同士の継ぎ目を目立たなくすることができて、垂直加工面全体として高い精度や面品位を得ることが可能なインサートおよび転削工具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のインサートは、略多角形平板状をなすインサート本体の一方の多角形面にすくい面が形成され、このすくい面の角部には上記一方の多角形面に対向する平面視に略円弧状をなすコーナ刃が形成されるとともに、このコーナ刃の一端に連なる上記すくい面の辺稜部には上記インサート本体の側面を逃げ面とする主切刃が形成されていて、軸線回りに回転される工具本体に、上記すくい面を工具回転方向に向けて、上記コーナ刃を上記工具本体の先端外周側に位置させ、かつ上記主切刃が該工具本体外周において後端側に向かうに従い上記回転方向の後方側に延びるように取り付けられるインサートであって、上記主切刃を、上記平面視において上記すくい面の外側に凸となる凸曲線状とするとともに、上記工具本体への取付状態において、この主切刃の上記軸線回りの回転軌跡の投影線を凸円弧状としたことを特徴とするものである。また、本発明の転削工具は、このようなインサートを、軸線回りに回転される工具本体に、上記すくい面を工具回転方向に向けて、上記コーナ刃を上記工具本体の先端外周側に位置させ、かつ上記主切刃が該工具本体外周において後端側に向かうに従い上記回転方向の後方側に延びるように取り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このように、主切刃が、転削工具の工具本体回転軸線を中心とした円筒面上に含まれることなく、この軸線回りの回転軌跡の投影線(該軸線を含む平面への投影線)が凸円弧状となるように、平面視に凸曲線状に形成されたインサートおよび転削工具においては、主切刃が所定の位置から傾くようにインサートが工具本体に取り付けられてしまっても、その傾きが上記投影線のなす凸円弧に沿った方向であれば、切削される垂直加工面に転写されるこの投影線自体は変化することがない。その一方で、上述のように転削工具を軸線方向に段階的に移動させて切削を行う場合の加工面同士の継ぎ目は、この凸円弧状の投影線を軸線方向にずらして重ね合わせたもの転写した断面山型形状となるが、該投影線がなす円弧の半径を十分に大きく設定することにより、その高さを抑えて目立たなくすることが可能となるとともに、個々の加工面もより平坦に近い垂直面とすることができる。しかも、こうして段階的に移動させた際の上記円筒面同士が工具本体の撓み等により一致しなくなっても、継ぎ目が大きくなることはないので、結果的に高精度で継ぎ目の目立たない高い面品位の垂直加工面を得ることができる。
【0008】
なお、ここで、上記取付状態において、上記主切刃の上記軸線回りの回転軌跡の投影線を、その中間部において該軸線を中心とする円筒面に滑らかに接するとともに両端に向かうに従いこの円筒面の内側に向かう凸円弧状とすれば、この取付状態において、当該主切刃は、この中間部における外径が切刃外径とされることになるが、このとき、例えば上記垂直加工面の底側にこれと直交する底面を形成する場合には、上記主切刃の投影線の両端が上記円筒面の内側に向かう後退量を、上記コーナ刃の一端に連なる該主切刃の上記一端において、上記工具本体の外周後端側に位置する該主切刃の他端よりも小さくすることにより、この底面側の垂直加工面が上記円筒面から内側に向かう大きさも小さくなるので、これら垂直加工面と底面とが交差するコーナ部の周囲をより直角交差に近い状態に形成することができ、一層高品位の加工面を得ることができる。
【0009】
一方、特許文献1に記載のインサートおよび転削工具では、上記切削縁が、湾曲され、かつフライスにおけるインサートの軸方向すくい角に対応する角度において、該切削縁の回転表面を構成するシリンダーに交差する平面の湾曲側部の部分を形成するようにされており、すなわち転削工具の回転軸線を中心とした円筒面とこれに一定の上記軸方向すくい角をなして交差する平面との交差稜線上に位置するように主切刃が形成されているので、主切刃は工具本体の取り付けられた状態においてやはり一定の上記軸方向すくい角をなして上記平面に沿った方向からの側面視に直線状を呈することとなる。このため、主切刃によって生成された切屑はすくい面にベタ当たりしながら流れ出ることとなって切屑離れが悪く、切削抵抗の増大を招くとともに、特にアルミニウムのような延性の高い金属材料を高速切削しようとすると、主切刃の先端側(特許文献2におけるノーズ部側)において上記円筒面よりも外側に位置する材料が離れの悪い切屑に引っ張られるように毟り取られることにより、インサートがこの円筒面を越えて外周側に喰い込むような傾向となり、これによっても主切刃の回転軌跡が正確に転削工具の回転軸線を中心とした円筒面とならずに却って加工面の垂直度を損なう結果となる。
【0010】
そこで、このような切屑離れの向上を図って一層の高速切削が可能なインサートおよび転削工具を提供するには、上記主切刃は、上記逃げ面に対向する側面視においても、上記コーナ刃に連なる該主切刃の一端から他端側に向かうに従い凸曲しつつ、上記工具本体への着座面とされる上記インサート本体の他方の多角形面側に向かう凸曲線状とされるのが望ましく、これに伴い該主切刃に連なるすくい面も同様に凸曲する凸曲面状に形成されるのに加え、この主切刃の上記投影線が凸円弧状をなすように平面視においても主切刃が凸曲線状とされているので、この主切刃によって垂直加工面を切削する際には、上記投影線を転写した凹状により大きく湾曲した切屑が凸曲したすくい面上に流れ出ることとなる。従って、切屑をより一層すくい面から離れ易くして速やかに処理することが可能となり、さらなる高速切削を促して切削効率の著しい向上を図ることができる。しかも、このように側面視に一端から他端側に向かうに従い凸曲しつつ着座面側に向かう主切刃が、工具本体の後端側に向かうに従いその回転方向の後方側に延びるように取り付けられるため、この主切刃の他端側すなわち深切り込み時に使用される工具後端側でそのアキシャルレーキ角を大きくすることができ、かかる深切り込み時に幅広の切屑が生成される場合でも、優れた切屑離れ性を維持することができる。
【0011】
また、上記すくい面の内側に、上記工具本体への着座面とされる上記インサート本体の他方の多角形面側に凹む断面凹円弧状の凹面を、上記平面視において上記主切刃と略等間隔に上記すくい面の全周に渡って形成すれば、すくい面上を流れた切屑がこの凹面に至ったところでより確実に切屑を離れ易くすることができる。
【0012】
一方、上述のような主切刃に連なる上記逃げ面は、該主切刃に連なって上記工具本体への着座面とされる上記インサート本体の他方の多角形面側に向かうに従い漸次後退するように傾斜する第1逃げ面と、この第1逃げ面の上記着座面側に連なって該第1逃げ面よりも大きな傾斜角で漸次後退するように傾斜する第2逃げ面とを備えたものとして、これら第1、第2逃げ面を上記側面視において、上記コーナ刃の一端に連なる該主切刃の一端から他端側に向かうに従い凸曲しつつ上記着座面側に向かうように形成することにより、逃げ角が小さくなる上記第1逃げ面によって主切刃の刃先角を確保して欠損等の発生を防止することができるとともに、この主切刃によって形成された上記垂直加工面との間の逃げ量は第1逃げ面より逃げ角の大きくなる第2逃げ面によって十分に確保することが可能となり、しかもこれら第1、第2逃げ面が主切刃と同様に側面視において凸曲するように形成されているので、主切刃の全長に渡って第1、第2逃げ面の幅を略一定として部分的に逃げ量が不足するような事態を防ぐことができる。
【0013】
また、このようなインサートは一般的に、逃げ面の形状に合わせた内周面を有するプレス金型のダイに、すくい面および着座面の形状にそれぞれ合わせたパンチ面を有する上下パンチを挿入し、これらダイの内周面とパンチ面とによって画成されるキャビティー内で超硬合金等のインサート原料粉末を圧縮して圧粉体を成形し、これを焼結することにより製造されるが、このとき上記逃げ面にこのような第1、第2逃げ面を形成しておけば、圧粉体の第2逃げ面を成形するダイの内周面部分とすくい面を成形する上パンチのパンチ面外周側部分とで原料粉末が密に圧縮されることとなり、こうして成形された圧粉体を焼結した際の主切刃部分の焼結変形を抑制して、特にこの主切刃の精度の高いインサートを得ることができるという利点も得られる。
【0014】
そして、さらにこうして主切刃に連なる逃げ面にこのような第1、第2逃げ面を形成した場合には、上記主切刃の少なくとも上記一端側において、第2逃げ面のさらに上記着座面側に連なって該着座面に垂直とされた平面状の第3逃げ面を形成することにより、例えばこの第2逃げ面から着座面にかけてを単に着座面側に向かうに従い漸次後退する逃げ面とした場合に比べ、第2逃げ面の直ぐ着座面側においてインサート本体側面により大きな肉厚を確保することができる。従って、工具本体への取付状態においてその回転方向側に位置して主切刃中最初に加工物に食い付くこととなる上記主切刃の一端側に特に高い切刃強度を確保することができ、このような食い付き時の衝撃によってこの主切刃の一端側やこれに連なるコーナ刃に欠損が生じたりするのを防止することができる。
【0015】
一方、このようなインサートを取り付けた上記転削工具では、その工具本体を上記軸線に対して斜め先端側に送り出すことにより、傾斜した底面を有する溝や凹所を加工物に形成する、いわゆるランピング加工が行われることがあるが、このようなランピング加工に用いる場合において上記インサートには、工具本体先端側に配設されることになる上記コーナ刃の他端に連なる上記すくい面の辺稜部に、上記傾斜した底面を切削するための上記取付状態において該コーナ刃の他端から上記工具本体内周側に延びる副切刃と、この副切刃に連なって上記コーナ刃が形成された上記角部とは反対の上記すくい面の他の角部に達し、副切刃によって加工された底面との干渉を避けるために上記平面視における上記副切刃の延長線に対して該すくい面の内側に凹む凹部とが形成される。しかして、さらにこのようなインサートでは、上記平面視において、この凹部の両端に接する接線が上記コーナ刃の延長線に対してなす角度を、上記工具本体への着座面とされる上記インサート本体の他方の多角形面において、上記副切刃と凹部とが形成された上記すくい面の辺稜部の反対側に位置する辺稜部が上記延長線に対してなす角度よりも、5°〜20°の範囲で大きくすることにより、ランピング加工により形成される傾斜した底面とインサート本体との干渉をより確実に防いで、この底面の傾斜角をより大きく設定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1ないし図4は本発明のインサートの一実施形態を示すものであり、図5ないし図9はこの実施形態のインサートを取り付けた本発明の転削工具の一実施形態を示すものである。本実施形態のインサートは、そのインサート本体1が超硬合金等の硬質材料により概略四角形、より具体的には横長の概略平行四辺形の平板状をなし、その一方の平行四辺形面の外周側にすくい面2が形成されるとともに、他方の平行四辺形面は上記転削工具の後述する工具本体への着座面3とされ、さらに4つの側面には逃げ面4が形成されていて、上記すくい面2とこれら逃げ面4との交差稜線部に切刃が形成され、この切刃に対して逃げ面4に逃げ角が付されたポジティブインサートとされている。また、双方の平行四辺形面の中央には、インサート本体1をその厚さ方向に貫通する断面円形の取付孔5が開口させられており、着座面3はこの取付孔5の中心線Cに垂直な方向に延びる面一な平坦面とされるとともに、インサート本体1自体はこの中心線C回りに180°回転対称形状とされている。
【0017】
上記すくい面2外周の角部のうち、上記一方の平行四辺形面の鋭角端部分に位置する角部には、上記中心線C方向にこの一方の平行四辺形面に対向する平面視において図1に示すように約1/4の略凸円弧状をなすコーナ刃6が上記切刃として形成されている。さらに、このコーナ刃6の一端6Aに連なるすくい面2の辺稜部には、上記一方の平行四辺形面の長辺部分に主切刃7が切刃として形成されるとともに、コーナ刃6の他端6Bに連なるすくい面2の辺稜部には、上記一方の平行四辺形面の短辺部分に副切刃8がやはり切刃として形成されており、これら主、副切刃7,8はコーナ刃6とそれぞれその両端6A,6Bにおいて互いに滑らかに連なるようにされている。なお、これらコーナ刃6および主、副切刃7,8には、それぞれの切刃に直交する断面において中心線Cに垂直となる幅の極小さいランドが形成されている。また、すくい面2が形成される上記一方の平行四辺形面の鈍角端部分に位置する角部2Aも上記平面視には約1/4の略凸円弧状とされ、ただしその半径はコーナ刃6がなす凸円弧の半径よりも小さくされている。
【0018】
ここで、上記副切刃8は、上記平面視においてインサート本体1の長手方向(図1における左右方向)に垂直な直線状とされるとともに、コーナ刃6ともども中心線Cに垂直な一の平面上に延びるようにされている。また、この副切刃8が形成されたすくい面2の辺稜部において該副切刃8とは反対側の、副切刃8の他端8Aから上記鈍角端角部2Aに向かう部分は、この角部2Aに向かうに従い上記平面視においてインサート本体1の内側に凹曲するように凹んだ後、やはりインサート本体1の長手方向に垂直に延びて該角部2Aに達する凹部8Bとされている。
【0019】
従って、この凹部8Bは、該平面視における副切刃8の延長線Lに対してすくい面2の内側に凹むように形成されることとなる。そして、さらに本実施形態では、上記平面視においてこの凹部8Bの両端に接する接線M、すなわち上記副切刃8の他端8Aと角部2Aの凹部8B側の端部2Bとに接する接線Mは、その上記延長線Lに対してなす角度θが、図1に破線で示す上記着座面3とされたインサート本体1の他方の平行四辺形面の辺稜部のうち、上記副切刃8と凹部8Bとが形成されたすくい面2の辺稜部の上記厚さ方向反対側に位置する辺稜部3Aが同平面視において上記延長線Lに対してなす角度δよりも、5°〜20°の範囲で大きくなるようにされている。
【0020】
なお、本実施形態ではこの凹部8Bは、上記平面視において副切刃8の上記他端(コーナ刃6の他端6Bとは反対側の端部)8Aで該副切刃8に鈍角の角度をもって折れ曲がるように交差し、この他端8Aから上記角部2Aに向けて概略凹円弧状をなしてすくい面2の内側に凹むようにされている。ただし、この凹円弧の半径はコーナ刃6や角部2Aがなす凸円弧の半径よりは十分大きく、かつ後述する主切刃7が平面視になす凸曲線の曲率半径よりは十分小さくされている。また、この凹部8Bの副切刃8側の上記凹円弧は、上記角部2A側の端部2Bから上述のようにインサート本体1の長手方向に垂直に延びる直線部分に滑らかに接するようにされており、従ってこの凹部8Bは図1に示すように上記接線Mに対してもすくい面2の内側に凹曲することになる。
【0021】
また、上記着座面3とされるインサート本体1の他方の平行四辺形面は、図1に破線で示したとおり上記辺稜部3Aも含めた4つの辺稜部が直線状とされるとともに、各角部はこれらの辺稜部に滑らかに連なる凸円弧状とされている。ただし、すくい面2側のコーナ刃6が形成された角部の裏側(インサート本体1の厚さ方向において反対側)に位置する着座面3の鋭角端角部の半径は、すくい面2の上記鈍角端角部2Aの裏側に位置する着座面3の鈍角端角部の半径よりも大きくされている。ちなみに、本実施形態では、この着座面3がなす他方の平行四辺形面の上記辺稜部3Aが平面視において延長線Lに対してなす上記角度δは5°とされる一方、上記接線Lが同平面視において延長線Lに対してなす上記角度θは12°とされており、従ってその角度差は7°とされている。
【0022】
さらに、上述のようにすくい面2の辺稜部において副切刃8の上記他端8Aと該すくい面2の鈍角端角部2Aとの間に形成された上記凹部8Bは、該副切刃8に連なる逃げ面4に対向する側面視には、この鈍角端角部2Aに向けて、コーナ刃6および副切刃8が延びる上記一の平面から凸曲線を描きつつ着座面3側に向かうように後退した後、該鈍角端角部2Aともどもこの一の平面よりも着座面3側に位置する中心線Cに垂直な他の一の平面上に延びるようにされている。なお、このうち少なくとも上記副切刃8の他端8Aに連なる部分は、図2に示すように上記1の平面に滑らかに接するように形成されている。
【0023】
一方、上記主切刃7は、上記平面視において上記すくい面2の外側すなわちインサート本体1の外側に凸となる緩やかな凸曲線状に形成されるとともに、該主切刃7に連なる逃げ面4に対向する側面視においても、図2に示すようにコーナ刃6の一端6Aに連なる該主切刃7の一端7Aから上記鈍角端角部に位置するその他端7B側に向かうに従い緩やかに凸曲しつつ着座面3側に向かう凸曲線状とされている。なお、この主切刃7の任意の1点において該主切刃7が平面視になす凸曲線の曲率半径は、主切刃7が側面視になす凸曲線のこの1点における曲率半径よりも大きくされ、すなわち主切刃7はいずれの部分でも平面視の凸曲線が側面視の凸曲線よりも緩やかとされ、さらにこれらの曲率半径は上記コーナ刃6が平面視になす凸円弧の半径や凹部8Bの半径よりも十分に大きくされている。
【0024】
さらに、これらコーナ刃6および主、副切刃7,8に連なる上記すくい面2は、平面視にすくい面2の内側に向かうに従い図3および図4に示すように着座面3側に向かう傾斜面とされており、この内側に向かう方向でのすくい面2の着座面3に対する傾斜角は略一定とされ、従って該内側に向かう方向に沿って切刃(コーナ刃6,主、副切刃7,8)に交差する断面では、すくい面2は着座面3側に傾斜した略直線状を呈することとなる。ただし、このうち主切刃7に連なるすくい面2は、その着座面3に対する傾斜角が、該主切刃7の上記一端7Aから他端7Bに向かうに従い漸次小さくなるようにされており、しかもその減少率は、主切刃7の一端7Aから他端7Bに向かうに従い漸次小さくなった後に途中から漸次大きくなるようにされている。なお、インサート本体1の表面のうち、少なくともこのすくい面2、望ましくは上記一方の平行四辺形面の全体には、ラップ仕上げが施されている。
【0025】
また、このように傾斜面とされたすくい面2のさらに内側には、断面が上述のように略直線状とされたこの傾斜面から、図4に示すようにこの傾斜面がなす直線に鈍角に交差して該傾斜面に対し上記着座面3側に凹む断面凹円弧状の凹面9が形成されている。この凹面9は、平面視には、すくい面2が形成されるインサート本体1の上記一方の平行四辺形面の平面視の外周形状を概ね一回り小さくしたような形状寸法で、すくい面2の内側に全周に渡って形成されたものであり、上記断面におけるすくい面2との交点からの深さが略一定となるように、切刃の中心線C方向における凹凸やすくい面2の起伏に合わせて周回りに該中心線C方向に起伏しつつ連続するように形成されている。
【0026】
このような凹面9のうち主切刃7に沿う部分は、該主切刃7と略等間隔に延びるように形成され、従ってこの凹面9との間の主切刃7に連なるすくい面2の幅(中心線Cに垂直な平面に沿った幅)Wは、両端7A,7B周辺を除いて、略一定とされる。また、この主切刃7に沿う部分では凹面9の幅も略一定とされている。なお、この一定とされた主切刃7に連なるすくい面2の幅Wは0.5mm〜0.8mm程度と狭くされるのが望ましく、本実施形態では0.6mmとされている。これに対して、コーナ刃6およびこれに連なる部分の副切刃8内側のすくい面2および凹面9の幅は、主切刃7の内側部分よりも大きくされている。さらに、この凹面9よりも内側は、一旦隆起した後に、中心線C方向において主切刃7の両端7A,7B間に位置する該中心線Cに垂直な平面状のボス面10とされており、取付孔5はその上記一方の平行四辺形面側の開口部がこのボス面10内に形成されている。
【0027】
一方、逃げ面4が形成されるインサート本体1の側面は、インサート本体1の全周に渡って、上記切刃6〜8および凹部8Aや鈍角端角部2Aから着座面3に至る間にインサート本体1の外側に向けて傾斜したり凸となったりすることのない形状とされており、特に本実施形態ではすくい面2に連なる部分が着座面3側に向けて漸次インサート本体1の内側に後退するようにされたポジティブインサートとされている。このうち、上記コーナ刃6、副切刃8、凹部8B、および鈍角端角部2Aが形成された辺稜部に連なる側面部分は、インサート本体1の周回り方向には上記平面視に上述のように凹凸曲するこの辺稜部に合わせて凹凸曲するように形成されており、さらにこのうちコーナ刃6および副切刃8に連なる逃げ面4は、これらコーナ刃6および副切刃8側で逃げ角が小さく、着座面3側で逃げ角が大きくされた折れ曲がり面とされている。そして、本実施形態では上述のように凹部8Bの接線Lがなす上記角度θが、その反対側の着座面3の辺稜部3Aがなす上記角度δよりも大きくされることにより、この凹部8Bに連なる側面の逃げ角は、上記鈍角端角部2A側から副切刃8の他端8Aに向けて漸次大きくなり、従ってコーナ刃6から鈍角端角部2Aに連なる上記側面部分の逃げ角は上記コーナ刃6および副切刃8に連なる逃げ面4部分で最大となる。
【0028】
これに対して、上記主切刃7に連なる逃げ面4には、その主切刃7側に、該主切刃7に連なって着座面3側に向かうに従い漸次後退するように傾斜する第1逃げ面4Aと、この第1逃げ面4Aの着座面3側に連なって該第1逃げ面4Aよりも大きな傾斜角で漸次後退するように傾斜する第2逃げ面4Bとが、主切刃7の上記一端7Aから他端7Bに渡って形成されており、これら第1、第2逃げ面4A,4Bにより、この主切刃7に連なる逃げ面4の主切刃7側には図3および図4に示すように着座面3側に対して外周側に一段突出する段部が形成されることとなる。ここで、これら第1、第2逃げ面4A,4Bは、主切刃7に沿った方向においては、平面視に該主切刃7がなす上記緩やかな凸曲線に合わせてインサート本体1の外側に緩やかに凸となる凸曲面状とされて、該主切刃7の一端7Aから他端7Bに向かうに従いそれぞれの傾斜角が漸次大きくなるように、すなわち一端7A側よりも他端7B側の方がより大きな傾斜で着座面3側に向けてインサート本体1の内側に後退するようにされている。
【0029】
また、これら第1、第2逃げ面4A,4Bは、主切刃7から着座面3に向かう方向においては、それぞれ一定の傾斜角でインサート本体1の内側に漸次後退するようにされており、従って主切刃7に直交する断面においては図3や図4に示されるように直線状を呈することとなる。さらにまた、これら第1、第2逃げ面4A,4Bの幅(中心線C方向の幅)は、それぞれ主切刃7の一端7Aから他端7Bに渡って略一定となるようにされており、従ってこれら第1、第2逃げ面4A,4Bも主切刃7と同様に上記側面視において図2に示すように、その一端7Aから他端7Bに向かうに従い凸曲しつつ漸次着座面3側に向かうように延びることとなる。
【0030】
さらに、この主切刃7に連なる逃げ面4の着座面3側は、上記第2逃げ面4Bよりは小さな一定の傾斜角(第1逃げ面4Aと略同等の傾斜角)で着座面3側に向かうに従い漸次後退する傾斜平面とされており、すなわち主切刃7に沿った方向にも真っ直ぐ延びる平面とされていて、後述する工具本体への取付の際の拘束面4Cとされている。ここで、この拘束面4Cの主切刃7側の縁部は、上記側面視において図2に示すように、主切刃7の一端7A側から他端7B側に向けて中心線Cに垂直に延びるように(着座面3に平行に延びるように)されるとともに、他端7B側に至る途中で、上述のように側面視において上記一端7Aから他端7Bに向かうに従い凸曲しつつ漸次着座面3側に向かう第2逃げ面4Bの着座面3側の縁部に交差するようにされている。
【0031】
従って、これら第2逃げ面4Bの着座面3側の縁部と拘束面4Cの主切刃7側の縁部との間には、これらの縁部同士の交点よりも主切刃7の一端7A側に、側面視にこの一端7A側に向かうに従い中心線C方向の幅が漸次幅広となる間隙部分が、第2逃げ面4Bのさらに着座面3側に連なるように形成されることとなる。そして、この間隙部分は着座面3に垂直な平面状とされて、本実施形態における第3逃げ面4Dとされており、拘束面4Cはその上記主切刃7側の縁部でこの第3逃げ面4Dと鈍角に交差することとなって、この縁部が上述のように中心線Cに垂直に延びるようにされていることから、本実施形態ではこれら拘束面4Cと第3逃げ面4Dとは、主切刃7の一端7Aから他端7B側に向かう方向には互いに平行に延びるようにされる。
【0032】
このように構成された本実施形態のインサートは、図5ないし図7に示すように工具本体11に着脱可能に取り付けられて本実施形態の転削工具を構成する。この工具本体11は鋼材等によって軸線Oを中心とする概略円柱状に形成され、その後端側(図5および図6において上側)が工作機械の主軸等に把持されて軸線O回りに工具回転方向Tに回転させられて切削に使用される。ここで、この工具本体11の先端部外周には、その先端面に開口して後端側に延びるチップポケット12が形成されており、さらにこのチップポケット12の回転方向T側を向く壁面先端側にはインサート取付座13が形成されていて、このインサート取付座13に上記実施形態のインサートのインサート本体1が取り付けられている。なお、このチップポケット12は、図6に示すように工具本他11の後端側に向かうに従い、回転方向Tに向けて凸曲しつつ回転方向Tの後方側に延びるように形成されている。
【0033】
上記インサート取付座13は、チップポケット12の上記壁面から回転方向Tの後方側に一段凹むように形成された凹所で、この工具回転方向Tを向いて工具後端側に向かうに従い回転方向T後方側に向かうように傾斜する着座面3と略同形同大の平面状の取付座底面13Aと、この取付座底面13Aの工具後端側に屹立して上記壁面に連なるように工具先端側を向く取付座壁面13B、および取付座底面13Aの工具内周側に屹立して工具外周側を向く取付座壁面13Cとから構成されている。また、取付座底面13Aの中央にはインサート本体1の上記取付孔5に挿通されたクランプネジ14がねじ込まれるネジ孔(図示略)が形成されるとともに、取付座壁面13B,13Cの形状および取付座底面13Aに対する傾斜角は、インサート本体1の副切刃8に連なる逃げ面4の形状および着座面3に対する傾斜角と、主切刃7に連なる逃げ面4のうち上記拘束面4Cの形状および着座面3に対する傾斜角とにそれぞれ合わされている。
【0034】
このようなインサート取付座13に、上記インサート本体1は、上記すくい面2が形成された一方の平行四辺形面を工具回転方向Tに向けて着座面3を取付座底面13Aに着座させ、また1の副切刃8に連なる逃げ面4を取付座壁面13Bに、この1の副切刃8にコーナ刃6を介して交差する1の主切刃7に連なる逃げ面4の拘束面4Cを取付座壁面13Cに、それぞれ当接させて中心線C回りの回転を拘束された上で、上記クランプネジ14によって固定されて取り付けられる。なお、上記取付座壁面13B,13Cが交差する角部には、上記1の主切刃7と副切刃8とが交差する1のコーナ刃6およびこれに連なる逃げ面4との干渉を防止するための凹所が形成されている。
【0035】
従って、こうして取り付けられたインサート本体1においては、上記1のコーナ刃6とは反対のコーナ刃6が工具本体11の先端外周側に位置させられ、かつこのコーナ刃6の一端6Aに一端7Aが一致する主切刃7が、工具本体11の先端部外周において後端側に向かうに従い回転方向Tの後方側に延びるように取り付けられる。また、このコーナ刃6の他端6Bに連なる副切刃8は、工具本体11の軸線Oに垂直な平面上に位置するように配置されるとともに、この副切刃の他端8Aに連なる凹部8Bは該平面に対して後退するようにされる。そして、上記実施形態のインサートでは、このような工具本体11への取付状態において、この工具本体11先端部外周に延びる主切刃7は、その上記軸線O回りの回転軌跡の該軸線Oを含む平面への投影線が、図8に示すようにその一端7Aと他端7Bとの中間部7Cにおいて該軸線Oを中心とする円筒面Pに滑らかに接するとともに、その両端すなわち一端7Aと他端7Bとにそれぞれ向かうに従いこの円筒面Pの内側に向かう凸円弧状とされている。
【0036】
すなわち、上記実施形態のインサートでは、上述のようにインサート本体1の上記平面視にすくい面2の外側に凸となる凸曲線状とされた主切刃7を工具本体11の後端側に向かうに従い回転方向Tの後方側に延びるように配置してインサート本体1を取り付けることにより、この主切刃7を特許文献1の切削縁や特許文献2の湾曲切刃のように軸線Oを中心とした円筒面Pに含まれるようにするのではなく、つまりその投影線が、軸線Oを含む上記平面において円筒面Pがなす軸線Oに平行な直線と一致するのではなく、図8に示すように円筒面Pの内側から上記中間部7Cにおいてこの直線に接する凸円弧をなすようにされている。なお、この主切刃7の投影線がなす凸円弧の半径Rは十分に大きくされるとともに、こうして凸円弧をなす主切刃7の投影線の両端が円筒面Pの内側に向かう後退量は、該主切刃7の上記一端7Aの後退量Aが他端7Bの後退量Bよりも小さくなるようにされており、例えばこの主切刃7に連なる上記すくい面2の幅Wを上述のように0.6mmとした本実施形態では後退量Bが0.02mm程度であるのに対して後退量Aは0.01mm程度と、約1/2程度とされている。
【0037】
さらにまた、上記実施形態のインサートでは、この主切刃7に連なるすくい面2の着座面3に対する傾斜角が、上述のように主切刃7の上記一端7Aから他端7Bに向かうに従い漸次小さくなるようにされているものの、その減少率は一端7Aから他端7Bに向かうに従い漸次小さくなった後に途中から漸次大きくなるようにされており、このようなインサート本体1の着座面3が工具本体11の後端側に向かうに従い回転方向Tの後方側に傾斜したインサート取付座13の取付座底面13Aに着座させられて取り付けられることにより、この取付状態において該すくい面2がなすすくい角は、主切刃7の一端7Aから他端7Bに向かうに従い漸次小さくなった後に漸次大きくなるようにされている。すなわち、図9に断面を示すように、主切刃7の一端7Aと、両端7A,7Bの略中間と、他端7Bとにおけるすくい面2のすくい角α,β,γは、α>β<γなる関係となる。ただし、この図9において主切刃7の一端7Aと他端7Bとにおける切刃外径は、この主切刃7の上記投影線が上述のような凸円弧状をなしていることから、それぞれ上記後退量A,Bの2倍分だけ中間部7Cにおける外径Dよりも小さくなる。
【0038】
なお、本実施形態の転削工具では、工具本体11先端部に複数ずつ(図では3つずつ)のチップポケット12およびインサート取付座13が周方向に等間隔、かつ軸線O回りに回転対称に形成されており、これらのインサート取付座13それぞれにインサート本体1が、その切刃(コーナ刃6、主切刃7、および副切刃8)の回転軌跡を互いに一致させるように取り付けられている。また、工具本体11には後端側から軸線Oに沿ってクーラント供給孔11Aが形成されており、このクーラント供給孔11Aは工具本体11先端部で分岐して、インサート本体1の上記すくい面2に向けられるように各チップポケット12の内壁面に開口されている。さらに、チップポケット12内壁面を含めた少なくとも工具本体11先端部表面は、旋盤加工、研磨、およびラッピングにより表面粗度がRy3.2μm以下とされ、さらにNi等のめっきやDLC、WCC、MoS2、CrN、TiN、Al2O3等の潤滑性コーティングが施されている。また、工具本体11の外周面や先端面には、上記切刃外径Dをマスターインサートに基づいて測定した寸法をレーザーマーキング等のマーキングや刻印等によって表示してもよい。
【0039】
このように構成されたインサートおよび転削工具においては、その主切刃7が、上述の特許文献1の切削縁や特許文献2の湾曲切刃のように工具本体11の軸線Oを中心とした上記円筒面P上に含まれることなく、この軸線O回りの回転軌跡の投影線が両端7A,7Bに向かうに従いこの円筒面Pから内側に向かう凸円弧状とされているので、たとえインサート本体1が上記平面視において主切刃7が所定の位置から傾くように工具本体11に取り付けられてしまっても、その傾きが上記投影線がなす凸円弧に沿った方向であれば、この投影線すなわち主切刃7の回転軌跡自体が大きく変化することはなく、従って所望の垂直加工面を形成することができる。特に、本実施形態のようにインサート本体1の厚さ方向に貫設された取付孔5にクランプネジ14を通して工具本体11にねじ込むことにより固定されるインサートでは、上記取付座壁面13B,13Cの当接にも関わらず、この取付孔5の中心線C回りにインサートが傾いて取り付けられ易いが、この傾きは概ね上記投影線がなす凸円弧に沿った方向となるので、垂直加工面の精度が著しく損なわれてしまうのを防ぐことができる。
【0040】
さらに、この主切刃7の有効切刃長以上の深さの垂直加工面を形成する場合には、上述のように工具本体11をその軸線O方向先端側に段階的に移動させて垂直加工面を順次掘り下げるように切削を行うこととなり、このような場合において上記構成のインサートおよび転削工具により形成される垂直加工面は、主切刃7の上記投影線がなす凸円弧を軸線O方向にずらして転写した形状となる。従って、各段の垂直加工面同士の繋ぎ目Qは、先の切削において主切刃7の一端7A側により形成された上記円筒面Pからその内側に後退する部分と、その次に工具本体11を移動させた切削において主切刃7の他端7B側により形成されたやはり円筒面Pからその内側に後退する部分とが重なり合った形状となり、すなわち図10に示すように凹円弧同士を両斜面とする断面山型形状を呈することとなるが、上述のように主切刃7の投影線がなす円弧の半径Rを十分に大きく設定することにより、この断面がなす山型の斜面の傾斜を極めて緩やかとしてその高さを抑え、上記円筒面Pに沿った平坦面同士を連続させたような断面形状に近づけることができる。
【0041】
このため、上記インサートおよび転削工具によれば、こうして深い垂直加工面を段階的に形成する場合でも、各段の垂直加工面同士の継ぎ目Qが大きくなって工具本体11の送り方向に延びる筋が形成されてしまったりするのを防ぐことができ、継ぎ目Qの目立たない面品位の高い垂直加工面を形成することが可能となる。しかも、こうして工具本体11を段階的に移動させた場合において、切削時の負荷等によって該工具本体11に撓みが生じたりすることにより、各段の切削において上記円筒面P同士にずれが生じて厳密に一致しなくなったりしても、上記継ぎ目Qは上述のような断面凹円弧同士が重なり合った形状のままであって上記山型の高さや斜面の傾斜が著しく大きくなることはなく、従ってこのような工具本体11の撓みが生じても継ぎ目Qが目立ってしまうのを防いで、面品位の高い高精度の垂直加工面を形成することが可能となる。
【0042】
さらに、本実施形態のインサートおよび転削工具では、こうして上記主切刃7の投影線において上記円筒面Pから内側に後退するようにされたその両端7A,7Bのうち、工具本体11外周の先端側に配置される一端7Aの円筒面Pからの後退量Aが、後端側に配置される他端7Bの後退量Bよりも小さくされている。しかるに、上述のように切削された垂直加工面の底側(工具本体11の先端側)に、主切刃7にコーナ刃6を介して連なる上記副切刃8によって図10に示すように該垂直加工面に直交する底面を形成したりする場合には、コーナ刃6やこの副切刃8に連なる主切刃7の一端7Aが上述のように円筒面Pから内側に後退していると、これら垂直加工面と底面とが交差する角隅部も円筒面Pから内側に傾斜してしまうことは避けられないが、この一端7A側での主切刃7の後退量Aが上述のように小さくされているので、この角隅部が円筒面Pから内側に向かう大きさや傾斜を小さく抑えて垂直加工面と底面とをより直角に交差する状態に近いものとすることができる。このため、本実施形態によれば、こうして垂直加工面の底に底面を形成する場合でもより高品位の加工面を得ることが可能となる。
【0043】
一方、上記インサートの主切刃7は、上記逃げ面4に対向する側面視において、その上記一端7Aから他端7B側に向かうに従い凸曲しつつ着座面3側に向かう凸曲線状とされており、この着座面3が着座するインサート取付座13の取付座底面13Aが上述のように傾斜していることにより、このような主切刃7が、工具本体11の後端側に向かうに従いその回転方向Tの後方側に延びるように取り付けられている。このため、上記有効切刃長の略全体を使用するような深切り込み時において、工具後端側の主切刃7の他端7B側でそのアキシャルレーキ角を大きくすることができるので、このような深切り込み時に幅広の切屑が生成される場合でも、切屑を速やかにすくい面2から離間させて処理することが可能となる。
【0044】
そして、このように主切刃7が側面視に凸曲線状とされるのに伴い、この主切刃7に連なる上記すくい面2も同様に回転方向Tに凸曲する凸曲面状に形成されるのに対し、上記構成のインサートおよび転削工具では、この主切刃7が、上記平面視において凸曲線状とされているのに加え、上記投影線においても凸曲線をなす円弧とされているので、このような主切刃7によって生成される切屑は、主切刃7の両端7A,7B側に対して中間部7C側が凹むようにより大きく湾曲した断面凹状を呈することとなる。すなわち、上記構成のインサートおよび転削工具によれば、凹状により大きく湾曲した切屑が、その最も凹んだ部分を凸状のすくい面2の最も凸となる部分に沿わせるようにして該すくい面2上に流れ出ることとなるので、切屑をすくい面2から一層離れ易くすることができ、従って上述のように他端7B側でアキシャルレーキ角を大きくすることができるのとも相俟って、たとえ深切り込み・高速切削でも切屑詰まりや噛み込み等が生じるのを確実に防ぐことができ、これらにより切削効率のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0045】
さらに、この主切刃7に連なるすくい面2は、その内側に向かっても着座面3側に向かう傾斜面とされており、これによりすくい面2のラジアルレーキ角も正角側に設定することができるので、上述のような深切り込み・高速切削時でも切削抵抗の低減を図ることができ、かかる切削抵抗によって工具本体11に撓みやびびりが生じたりするのも防ぐことができる。しかも、このすくい面2の幅Wも、本実施形態においては上述のように小さな幅とされているので、一層の切削抵抗の低減を図ることができる。また、この傾斜面とされたすくい面2がその内側に向けてなす傾斜角は、着座面3に対しては主切刃7の一端7Aから他端7Bに向けて漸次小さくなるようにされており、従って上記すくい角(ラジアルレーキ角)が工具先端側の主切刃7の一端7Aと後端側の他端7Bとで著しく異なってしまったりするのを防いで、安定した切屑の生成による円滑な切削を促すことができる。
【0046】
そして、その一方で、このすくい面2の傾斜角は、インサート本体1を工具本体11に取り付けた状態では、図9に示したように一端7Aから他端7Bに向けて、すくい角αから一旦漸次小さくなるようにされてすくい角βとなり、その後に漸次大きくなるようにされて他端7Bですくい角γとなるようにされており、従って上述のように安定した切屑の生成を図りつつも、このすくい面2の内側では上述のように凸曲する該すくい面2を主切刃7の両端7A,7Bの内側よりもその間の部分の内側の方がより大きく凸となるように湾曲させることができる。このため、上記投影線が凸円弧状をなす主切刃7によってより凹状に生成された切屑が、内側に向けてより大きく凸状に湾曲したすくい面2上を流れることとなるので、さらに一層の切屑離れの向上を図ることができ、延性の高いアルミニウム等の金属材料を高速切削する場合でも、優れた切屑処理性を得ることが可能となる。なお、このすくい角が最も小さくなる位置が、主切刃7の投影線の上記円筒面Pと接する中間部7Cと一致させられていれば、さらに効果的である。
【0047】
また、これらに加えて、本実施形態では、このすくい面2のさらに内側に、該すくい面2がなす上記傾斜面から着座面3側に凹む断面凹円弧状の凹面9がすくい面2の全周に渡って形成されており、この凹面9は、主切刃7の内側では上記平面視において主切刃7と略等間隔に該主切刃7に沿って延びるように形成されている。従って、図11に示すように、上記すくい面2上を流れ出た切屑Sは、この凹面9に至ったところで強制的にすくい面2から離されることとなるので、一層確実な切屑離れの向上を図ることが可能となる。また、特に本実施形態ではこのような凹面9がすくい面2の内側に、上記一方の平行四辺形面の全周に渡って形成されており、従ってコーナ刃6や副切刃8によって生成される切屑に対しても、優れた切屑離れを促すことが可能となる。
【0048】
一方、本実施形態では、上記主切刃7に連なる逃げ面4において、その主切刃7側に、該主切刃7に連なって着座面3側に向かうに従い小さな傾斜角で漸次後退するように傾斜する第1逃げ面4Aと、この第1逃げ面4Aの着座面3側に連なって該第1逃げ面4Aよりも大きな傾斜角で漸次後退するように傾斜する第2逃げ面4Bとが形成されており、従って主切刃7の刃先側では傾斜が小さくされて逃げ角も小さくなる上記第1逃げ面4Aにより刃先角を確保することができ、特に本実施形態のようにすくい面2が内側に向かうに従い着座面3側に向かう傾斜面とされている場合に、この刃先部分に欠損等が生じたりするのを防ぐことができる。これに対して、この刃先から離れた側では大きく傾斜する第2逃げ面4Bによって十分な逃げ量を確保することができるので、上記垂直加工面とのいわゆる二番当たりによって切削抵抗が増大したりするのを防ぐことができる。しかも、これら第1、第2逃げ面4A,4Bは主切刃7と同様に上記側面視においてこの主切刃7の一端7Aから他端7B側に向かうに従い凸曲しつつ着座面3側に向かうように形成されているので、図2に示すように第1、第2逃げ面4A,4Bの主切刃7からの幅をこの主切刃7の全長に亙って略一定とすることができ、例えば第1逃げ面4Aが部分的に幅広となって上述のような二番当たりを生じてしまったり、あるいは逆に第1逃げ面4Aが部分的に幅狭となって欠損が生じ易くなったりするような事態も防ぐことができる。
【0049】
また、このようなインサート本体1を上述のように超硬合金等によって形成するときには、上記逃げ面4は、プレス金型のダイ側に形成されるキャビティ内周面をこの逃げ面4に応じた形状としておいて、キャビティに充填された超硬合金等の原料粉末を上下パンチによって圧縮した粉末成形体を焼結することにより成形されるが、本実施形態のように逃げ面4が上記第1、第2逃げ面4A,4Bを備えて、外周側に一段突出するような段部が逃げ面4の主切刃7側に形成される場合には、上記原料粉末の圧縮の際に、この段部を形成するキャビティ内周面の第2逃げ面4Bに対応した部分とすくい面2に対応した上パンチのパンチ面との間で、原料粉末がより密に圧縮されることとなる。従って、そのように圧縮された粉末成形体を焼結すると、こうして密に圧縮された主切刃7周辺の段部では焼結による変形が抑えられ、所望の寸法、形状の主切刃7を備えたインサート本体1を得ることができるので、本実施形態によれば特にこの主切刃7に高い精度を有するインサートを提供することができ、該主切刃7による上述の効果を一層確実に奏することが可能となる。
【0050】
さらに、本実施形態では、主切刃7の上記一端7A側において、このように段部状に形成された第1、第2逃げ面4A,4Bの着座面3側に、大きな傾斜角(逃げ角)で傾斜する第2逃げ面4Bに連なって着座面3に垂直とされた第3逃げ面4Dが形成されていて、この第3逃げ面4Dと着座面3までの間が着座面3側に向かうに従いインサート本体1内側に後退するように傾斜する拘束面4Cとされており、例えば主切刃7の他端7B側のように第2逃げ面4Bに拘束面4Cが直接連なっていたりするのに比べ、これら第1、第2逃げ面4A,4Bによって形成される上記段部の直下において、インサート本体1に大きな肉厚を確保することができる。しかるに、この主切刃7の一端7A側やこれに連なるコーナ刃6周辺は、インサート本体1の工具本体11への取付状態においてその回転方向T側に位置して主切刃7のうちで最初に加工物に食い付くことになるため、この食い付きの際に衝撃的負荷が作用してチッピングや欠損等が生じ易いが、本実施形態によればそのような部分にインサート本体1の肉厚を確保することにより、かかる衝撃的負荷に対しても十分な強度を得ることが可能となり、これによりインサート寿命の延長を図ることが可能となる。加えて、この逃げ面4は、第1、第2逃げ面4A,4Bおよび拘束面4Cが着座面3側に向けてインサート本体1の内側に後退する傾斜面とされるとともに、上記第3逃げ面4Dも着座面3に垂直とされていて、上述のようにインサート本体1の全周に渡って切刃6〜8から着座面3に至る間にインサート本体1の外側に向けて傾斜したり凸となったりすることのない形状とされ、すなわちいわゆるアンダーカット部を有さない側面形状とされているので、上述のようにプレス金型によって粉末成形体をプレス成形して当該インサートを製造する場合でも、確実かつ比較的簡略な金型によってプレス成形が可能であるという利点も得られる。
【0051】
さらにまた、本実施形態のインサートでは、コーナ刃6の他端6Bに連なるすくい面2の辺稜部に副切刃8が形成されており、この副切刃8が工具本体11への取付状態では軸線Oに垂直な平面上に位置させられるため、加工物に形成される垂直加工面と底面とをさらに確実に直交する状態に近いものとすることができる。そして、さらにこの副切刃8の工具本体11内周側に位置することとなる他端8B側には、該副切刃8の延長線Lに対してすくい面2の内側に凹む凹部8Bが形成されており、従ってこの凹部8Aは上記軸線Oに垂直な平面に対しても後退するように凹むことになるので、該工具本体11を軸線O方向先端側に斜めに送り出して加工物に傾斜した底面を有する溝や凹所を形成するランピング加工においても、副切刃8により形成されたこの底面にその他端8Bよりも工具本体11内周側の部分が干渉するのを防ぐことができる。
【0052】
そして、さらに本実施形態のインサートでは、そのインサート本体1の中心線C方向にすくい面2に対向する平面視において、この凹部8Bに接する接線Mが副切刃8の延長線Lに対してなす角度θが、該凹部8Bの形成された辺稜部とは反対側の着座面3の辺稜部3Aが上記延長線Lに対してなす角度δより5°〜20°の範囲で大きくされているので、このランピング加工の際に底面の傾斜角を大きくしても、凹部8Bやこれに連なるインサート本体1の側面部分がこの底面に干渉するのをより確実に防ぐことができ、これにより自由度の高い切削加工を加工物に施すことが可能となる。すなわち、上記角度θ,δの差が5°に満たないと副切刃8の延長線Lに対する凹部8Bの後退量が不足するおそれがある一方、角度θ,δの差が20°を上回るほど大きくても凹部8Bに連なるインサート本体1の側面の特に鈍角端角部2A側の逃げ角が不足するおそれがあり、いずれの場合も、ランピング加工時における工具本体11の軸線O方向に直交する方向への送り量に対して該軸線O方向への送り量を大きくし、すなわち上記底面の傾斜角を大きくしたときには、インサート本体1が形成された底面と干渉して該底面を傷付けたり、抵抗の増大やインサート本体1の破損を招いたりするおそれがある。
【0053】
さらに、本実施形態では、こうして副切刃8の延長線Lに対する凹部8Bの接線Mの角度θが着座面3の辺稜部3Aの角度δよりも大きくされることにより、これら副切刃8や凹部8Bが形成されたインサート本体1の側面逃げ角は、上述のように凹部8Bに沿って上記鈍角端角部2A側から副切刃8の他端8Aに向け漸次大きくなり、副切刃8に連なる逃げ面4で最大となるので、ランピング加工の際に上記傾斜角を大きくしても、この副切刃8に連なる逃げ面4が上記底面と干渉するような事態も防止することができる。加えて、本実施形態では、この凹部8Bが上記平面視に凹円弧をなすように凹んでいるので、副切刃8に連なるその他端8A側でインサート本体1の強度を確保することができ、この部分における欠損等も防止することができるという利点も得られる。
【0054】
なお、本実施形態ではインサート本体1を平面視に概略平行四辺形をなす平板状に形成しているが、すくい面が形成される面が、コーナ刃が形成される角部とこれに連なって主切刃が形成される辺稜部とを少なくとも1つずつ有する多角形面であれば、他の形状であっても構わない。また、上記第1、第2逃げ面4A,4Bを、着座面3側に向けてインサート本体1の内側に後退するように形成するにしても、主切刃7に直交する断面においてインサート本体1の外側に凸曲しつつ着座面3側に向かうに従い後退する凸曲面状に形成したりしてもよい。さらに、本実施形態の転削工具では、工具本体11先端部外周に形成されたチップポケット12が、上記取付状態におけるインサートの主切刃7の側面視形状と同様に、回転方向T側に凸曲しつつ工具本体11後端側に向かうに従い回転方向Tの後方に向かうように湾曲しているので、この主切刃7によって切屑離れよく生成された切屑を、さらに工具本体11の後端側に効率的かつ速やかに排出することができ、上述のように有効切刃長以上の深さの垂直加工面を切削する場合や、あるいは当該転削工具により溝加工を行うような場合でも、切屑の滞留による噛み込み等の発生を未然に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のインサートの一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1に示すインサートの側面図である。
【図3】図1および図2におけるZZ断面図である。
【図4】図3に示す断面図の主切刃7周辺の拡大図である。
【図5】図1に示すインサートを取り付けた本発明の転削工具の一実施形態を示す平面図である。
【図6】図5に示す転削工具の側面図である。
【図7】図5に示す転削工具の正面図である。
【図8】図1に示すインサートの取付状態における主切刃7の回転軌跡を軸線Oを含む平面に投影した投影線を示す図である。
【図9】図6における(イ)XX断面、(ロ)YY断面、(ハ)ZZ断面におけるインサート本体1の断面図である。
【図10】図1に示すインサートを取り付けた転削工具により、有効切刃長よりも深い垂直加工面を形成する場合の、主切刃7の回転軌跡の投影線を示す図である。
【図11】図1に示すインサートにより生成される切屑Sを示す、図1および図2におけるZZ断面に相当する拡大断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 インサート本体
2 すくい面
2A すくい面2の鈍角端角部(他の角部)
3 着座面
3A 着座面3の辺稜部
4 逃げ面
4A 第1逃げ面
4B 第2逃げ面
4C 拘束面
4D 第3逃げ面
5 取付孔
6 コーナ刃
7 主切刃
7A 主切刃7の一端
7B 主切刃7の他端
7C 主切刃7の中間部
8 副切刃
8B 凹部
9 凹面
11 工具本体
13 インサート取付座
C 取付孔5の中心線
O 工具本体11の回転軸線
P 軸線O回りの回転軌跡において主切刃7が滑らかに接する円筒面
A 主切刃7の投影線において一端7Aが円筒面Pから後退する後退量
B 主切刃7の投影線において他端7Bが円筒面Pから後退する後退量
R 主切刃7の投影線がなす凸円弧の半径
D 転削工具の切刃外径
W すくい面2の幅
L 副切刃8の延長線
M 凹部8Bに接する接線
α,β,γ すくい面2のすくい角(ラジアルレーキ角)
θ 平面視に接線Mが延長線Lに対してなす角度
δ 平面視に辺稜部3Aが延長線Lに対してなす角度




 

 


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