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コンポジットドリル - 三菱マテリアル株式会社
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発明の名称 コンポジットドリル
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−105801(P2007−105801A)
公開日 平成19年4月26日(2007.4.26)
出願番号 特願2005−295995(P2005−295995)
出願日 平成17年10月11日(2005.10.11)
代理人 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
発明者 岡田 義一 / 小林 勝己 / 藤澤 隆史 / 丸山 大祐
要約 課題
シャンクの取付孔に切刃部材後端部が挿入されて接着剤により固着、取り付けられたコンポジットドリルにおいて、切削熱によって接着剤に軟化が生じても切刃の位置に変位が生じるのを抑えて安定した高精度の穴加工を可能とする。

解決手段
シャンク11の先端部に形成された取付孔12に、先端側に切刃部15が設けられた切刃部材16の後端部17が挿入されて、接着剤18により固着されて取り付けられたコンポジットドリルにおいて、取付孔12の孔底部14と切刃部材16の後端面21との間には、孔底部14の中央部に、孔底部14から突出して切刃部材16の後端面21に当接可能な当接部材22を介装する。
特許請求の範囲
【請求項1】
シャンクの先端部に形成された取付孔に、先端側に切刃部が設けられた切刃部材の後端部が挿入されて、接着剤により固着されて取り付けられたコンポジットドリルにおいて、上記取付孔の孔底部と上記切刃部材の後端面との間には、上記孔底部の中央に、該孔底部から突出して上記切刃部材の後端面に当接可能な当接部材が介装されていることを特徴とするコンポジットドリル。
【請求項2】
上記取付孔の孔底部が凹円錐面状であり、上記当接部材が球状であることを特徴とする請求項1に記載のコンポジットドリル。
【請求項3】
上記当接部材の外径が、上記切刃部材の後端部の外径の0.3〜1.0の範囲とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンポジットドリル。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、別体に成形されたシャンクと切刃部材とが接着剤によって固着されて組み立てられたコンポジットドリルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばプリント基板の穴明け加工などに用いられる切刃径が小径のドリルにおいては、切刃径よりも大径となる鋼製のシャンクの先端部に取付孔を形成し、この取付孔に、先端側に切刃部が設けられた超硬合金等からなる切刃部材の後端部を挿入して取り付けたコンポジットドリルが用いられる。そして、この種のコンポジットドリルにおいては、例えば特許文献1〜3に記載されているように、取付孔に挿入された切刃部材の後端部を接着剤によって固着して、シャンクと一体化したものが提案されている。なお、このような切刃部材の切刃部は、こうして切刃部材をシャンクに接着して一体化した後に外径研磨や切屑排出溝、切刃が形成されて、シャンクの軸線を中心としたものとされる。
【特許文献1】特表2002−501836号公報
【特許文献2】特開2002−210607号公報
【特許文献3】米国特許第3751176号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、このような小径のコンポジットドリルによるプリント基板の穴明け加工などにおいても、近年では加工の高能率化が求められてきており、加工時のドリルの回転速度も高速化する傾向にあるが、こうして加工時のドリル回転速度が高速化すると、発生する切削熱も大きくなり、これが切刃部から熱伝導率の高い切刃部材を伝播して取付孔と切刃部材後端部との間の接着剤を軟化させ、接着強度が低下するおそれがある。そして、このように接着強度が低下すると、穴加工時の送り分力により切刃部材が取付孔内をシャンクの軸線方向後端側に移動しようとしてしまって安定した加工が困難になるのは勿論、例えば所定の深さの止まり穴を穿孔しようとしても、切刃部先端の切刃の位置が変化してしまうため、穴深さ等の精度が低下するおそれもある。
【0004】
一方、シャンク先端部の取付孔は通常ドリルによる穴加工によって成形されるが、通常のドリルの切刃には先端角が付されていて回転軌跡が凸円錐面状となるため、図3に示すようにシャンク1の取付孔2の孔底部3は凹円錐面状となる(例えば、特許文献2の図1、図3参照。)。しかしながら、このような形状の孔底部3を有する取付孔2に、同じく特許文献2に記載されているような円柱状の切刃部材4の後端部5を挿入して接着剤6により接着した場合に、上述のように切削熱の伝播によって接着剤6が軟化して切刃部材4が取付孔2内をシャンク1の軸線O方向後端側に押し込まれると、上記凹円錐面の中心軸すなわち上記軸線Oと切刃部材4の後端部5の円柱の中心軸Xとが高精度に一致していない場合には、孔底部3の周方向における一部分に、切刃部材4の後端部5における後端面7周縁の円周の一部分が先に当たって、いわゆる片当たりした状態となり、さらに切刃部材4が押し込まれることにより、孔底部3がなす凹円錐面の傾斜によって後端部5の中心軸Xがシャンク1の軸線Oに対して傾いてしまう。そして、これに伴い切刃部材4先端側の切刃部8における切刃9の位置もシャンク1の軸線Oすなわち当該コンポジットドリルの回転軸線から大きく変位してしまい、加工穴精度を著しく劣化させたり、場合によっては切刃部8に折損が生じたりするおそれもある。
【0005】
本発明は、このような背景の下になされたもので、上述のようにシャンクの取付孔に切刃部材後端部が挿入されて接着剤により固着、取り付けられたコンポジットドリルにおいて、切削熱によって接着剤に軟化が生じても切刃の位置に変位が生じるのを抑えて安定した高精度の穴加工が可能なコンポジットドリルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、シャンクの先端部に形成された取付孔に、先端側に切刃部が設けられた切刃部材の後端部が挿入されて、接着剤により固着されて取り付けられたコンポジットドリルにおいて、上記取付孔の孔底部と上記切刃部材の後端面との間には、上記孔底部の中央部に、該孔底部から突出して上記切刃部材の後端面に当接可能な当接部材を介装したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
従って、このように構成されたコンポジットドリルでは、切削熱による接着剤の軟化によって切刃部材が取付孔の孔底部側に押し込まれようとしても、この切刃部材の後端面と孔底部との間には、上記当接部材が該孔底部から突出するように介装されているので、切刃部材の後端面がこの当接部材を介して取付孔の孔底部に当接した状態からそれ以上は切刃部材が孔底部側すなわちシャンクの軸線方向後端側に移動することがなくなり、安定した穴明け加工が可能となる。また、こうして切刃部材が当接部材を介して取付孔底部に当接して位置決めされることにより、切刃部材先端の切刃の位置が変動することもなくなり、従って所定の深さの止まり穴を精度よく穿孔することも可能となる。
【0008】
そして、さらにこの当接部材が、孔底部の中央部において切刃部材の後端面に当接可能に介装されているため、取付孔の孔底部が凹円錐面状であっても、この切刃部材の後端面はその周縁が孔底部に当接するより先に中央部が当接部材に当接することになる。このため、該後端面が孔底部に片当たりすることがなくなって切刃部材が傾くのを抑えることができるので、上記構成のコンポジットドリルによれば、この切刃部材の傾きによる切刃位置の変位も防ぐことができ、より高精度の穴明け加工を促すことが可能となる。
【0009】
ここで、このようにシャンクの上記取付孔の孔底部が凹円錐面状である場合には、上記当接部材を球状とすることにより、このような球状の当接部材が凹円錐面に当接する際には、該当接部材が確実に凹円錐面の中央に位置して、この凹円錐面の中心軸に垂直な一の平面が該凹円錐面に交差してなす円周の全周に亙って接することになる。そして、こうして孔底部に接した球状の当接部材に切刃部材の後端面が当接して位置決めされるので、一層安定して切刃部材を支持して切刃位置の変位を防止することができる。
【0010】
なお、上記当接部材の外径(当接部材が球状である場合にはその直径)は、上記切刃部材の後端部の外径の0.3〜1.0の範囲とされるのが望ましい。すなわち、これよりも外径が小さいと、特に取付孔底部が上述のような凹円錐面状である場合に、切刃部材の後端面が当接部材よりも先に孔底部に当接してしまうおそれが生じ、逆に当接部材の外径がこれよりも大きいと切刃部材の後端面と取付孔の孔底部との間に大きな間隔があいてしまって、より多くの接着剤が必要となったり、切刃部材の安定性が損なわれたりするおそれが生じる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の一実施形態のコンポジットドリルを示す断面図である。本実施形態においてシャンク11は、例えばステンレス鋼等の鋼材により軸線Oを中心とした外形略円柱状に形成され、その先端部は先端側(図1において左側)に向かうに従い漸次縮径するテーパ部12とされるとともに、該先端部の中央からは上記軸線Oに沿って後端側に向かう取付孔13が形成されている。この取付孔13は、軸線Oを中心とする一定内径Aの断面円形に形成されたものであって、本実施形態では通常のドリルにより穿孔されたものであり、従ってその孔底部14は軸線Oを中心として後端側(図1において右側)に凹む凹円錐面とされている。なお、この凹円錐面のテーパ角θは、取付孔13を穿孔するドリルの切刃先端角と等しく、通常は110°〜150°程度の鈍角とされる。
【0012】
この取付孔13には、先端側に切刃部15が形成される切刃部材16の後端部17が挿入されて、接着剤18により固着されている。この切刃部材16は、シャンク11よりも高硬度な超硬合金等の硬質材料により形成されたものであって、後端部17は上記取付孔13の内径Aより僅かに小径(例えば0.90〜0.99×A)の外径Bを有する概略円柱状に形成されるとともに、切刃部15はその先端に形成される切刃19の外径Cに応じた外径の上記後端部17より小径な略円柱軸状に形成され、さらにこれら切刃部15と後端部17との間には、シャンク11の上記テーパ部12と等しいテーパ角で面一に連なるようなテーパ部20が形成されている。
【0013】
なお、上記切刃19の外径Cは、当該コンポジットドリルが上述のようなプリント基板の穴明け加工用のものである場合には、0.1〜1.6mm程度とされる。ただし、本実施形態ではこの切刃19は図示が簡略化されているほか、切刃部15の外周には、この切刃19に連なる通常は捩れ溝状の図示されない切屑排出溝が形成される。また、円柱状の後端部17においては、その後端面21は該後端部17の中心軸Xに直交する平坦な円形とされる。
【0014】
ここで、このような切刃部15は、例えば上記後端部17と同径の超硬合金よりなる円柱状部材をシャンク11の取付孔13に挿入して接着剤18により固着した後に、この円柱状部材のシャンク11の先端側に突出した部分を研削等により上記外径Cにまで縮径させるとともにテーパ部20を形成し、さらに上記切屑排出溝や切刃19を研ぎ付けることにより形成される。従って、図1に示すように切刃部材16の後端部17の中心軸Xがシャンク11の軸線Oから多少偏心して固着されていても、切刃部15は軸線Oを中心として形成することができる。また、上記接着剤18としては、例えば嫌気性固着剤等が好適に用いられる。
【0015】
そして、こうして接着剤18により固着される切刃部材16の後端部17における後端面21と、シャンク11の取付孔13における孔底部14との間には、この孔底部14の中央部にシャンク11よりも当接部材22が介装されている。この当接部材22は、例えば超硬合金や、あるいは鋼材などの金属材料によって形成されたものであって、本実施形態では円柱状をなす上記後端部17の外径Bに対して0.3〜1.0×Bの範囲内の直径Dを有する球状とされ、孔底部14に当接した状態でその先端側部分が該孔底部14よりも先端側に突出するように、すなわちこの孔底部14がなす凹円錐面と取付孔13の円筒状の内周面との交差稜線部よりも軸線O方向先端側に突き出るようにされている。なお、接着剤18は、孔底部14部分においてはこの当接部材22の周囲を満たすように充填され、また切刃部材16の後端部17外周と取付孔13内周との間にも全周に亙って両者の間に介在するように充填されている。
【0016】
このように構成されたコンポジットドリルにおいては、穴明け加工時の切削熱が切刃部15から切刃部材16全体に伝播することにより接着剤18が軟化して、送り分力により切刃部材16が取付孔13内を軸線O方向後端側に押し込まれるように移動しようとしても、取付孔13の孔底部14と切刃部材16の後端部17における後端面21との間に当接部材22が介装されているので、後端面21が当接部材22に当接するとともに該当接部材22が孔底部14に当接した状態で、切刃部材16は軸線O方向に位置決めされて後端側への移動が拘束される。しかも、この当接部材22は上述のような比較的硬質の金属材料によって形成されているので、こうして切刃部材16が後端側に押し込まれるように押圧力を受けても潰れてしまうようなことはない。従って、切刃部材16先端の切刃部15における切刃19の軸線O方向の位置に変位が生じることもなく、例えば所定の深さの止まり穴を形成するような場合でも高精度の加工を促すことが可能となる。
【0017】
さらに、この当接部材22は、取付孔13の孔底部14においてその中央部に配設されて切刃部材16の後端面21との間に介装されるので、この後端面21に対してもその中央部に当接させられることになる。このため、上述のように切刃部材16の後端部17の中心軸Xがシャンク11の軸線Oから多少偏心して接着剤18により固着されていても、従来のように後端面の周縁において切刃部材が孔底部に片当たりする場合に比べて、接着剤18が軟化したときに切刃部材16が後端側に押し込まれるように押圧された際に、切刃部材16が軸線Oに対して傾いてしまうのを抑えることができ、これにより切刃部材16先端の上記切刃19が径方向に変位するのも防ぐことができる。従って、上記構成のコンポジットドリルによれば、加工孔の内径精度や真円度などについても高い精度を確保することができるとともに、切刃部15に無理な力が作用することがないために折損等が生じるのも確実に防止することが可能となる。
【0018】
しかも、本実施形態では、上述のように取付孔13が通常のドリルによって穿設されて形成されていて、その孔底部14が凹円錐面状をなしているのに対し、上記当接部材22が球状とされており、この当接部材22が孔底部14に当接する際には、孔底部14の最も底側すなわち中央部に当接部材12が確実に位置して、該孔底部14がなす上記凹円錐面の中心軸に直交する平面と該凹円錐面とが交差する円周の全周で当接部材12が孔底部14に接することになる。従って、このように孔底部14に当接した球状の当接部材22に、切刃部材16の後端部17における後端面21が当接することにより、該切刃部材16は軸線O方向後端側に向けてより安定的に位置決めされて支持されることになるので、本実施形態によれば一層確実に切刃19の変位を防いで高精度の穴明け加工を図ることが可能となる。
【0019】
ただし、本実施形態ではこのように取付孔13の孔底部14が凹円錐面状とされているのに対して当接部材22が球状とされているが、例えば取付孔13が放電加工などによって形成されて、図2に示す変形例のようにこの取付孔13の孔底部14が軸線Oに垂直な平面状とされている場合には、当接部材22は、この孔底部14と切刃部材16の後端面21に当接するその両端面が互いに平行な平面状に形成された、例えば円柱状や円板状あるいは立方体状や直方体状のものであってもよい。また、このように取付孔13が平面状とされていても、その中央部において切刃部材16との間に当接部材22を確実に介装することが可能であれば、上記実施形態のような球状の当接部材22であってもよい。
【0020】
なお、このように介装される当接部材22は、これがあまり小さすぎると取付孔13の孔底部14や切刃部材16の後端面21への当接が不安定となって、切刃部材16の支持も不安定となるおそれがあるとともに、特に上記実施形態のように孔底部14が凹円錐面状である場合には、上記テーパ角θなどにもよるが、後端部17の後端面21周縁が孔底部14の凹円錐面に当たりやすくなってしまうおそれもある。その一方で、この当接部材22が大きすぎても、孔底部14と後端面21との間に軸線O方向に大きな間隔があいてしまって、この間隔を埋めるためにより多くの接着剤18を充填しなければならなくなったり、接着剤18が不足すると当接部材22を孔底部14の中央部に確実に保持することができなくなって、やはり切刃部材16の支持が不安定となるおそれがある。
【0021】
このため、上記当接部材22の大きさは、その外径、すなわち上記実施形態のように当該当接部材22が球状である場合にはその上記直径Dが、上述のように切刃部材16の後端部17の外径Bに対して0.3〜1.0×Bの範囲内とされるのが望ましい。また、図2に示した変形例のように当接部材22が互いに平行な平面状の両端面を有する円柱状や円板状あるいは立方体状や直方体状である場合には、これら両端面間の間隔と該端面の外形寸法とが上記範囲内とされるのが望ましい。さらに、この当接部材22は、上記実施形態のように球状である場合にその中心が厳密に上記軸線O上に位置して孔底部14の中央に配設されていなくてもよく、例えば該軸線O上に当接部材22の少なくとも一部が位置するようにして孔底部14の中央部において切刃部材16との間に介装されていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1に示す実施形態の変形例を示す断面図である。
【図3】従来のコンポジットドリルを示す断面図である。
【符号の説明】
【0023】
11 シャンク
13 取付孔
14 取付孔13の孔底部
15 切刃部
16 切刃部材
17 切刃部材16の後端部
18 接着剤
19 切刃
21 切刃部材16の後端面
22 当接部材
A 取付孔13の内径
B 後端部17の外径
C 切刃19の外径
D 当接部材22の外径
O シャンク11の軸線
X 後端部17の中心軸




 

 


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