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発明の名称 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する回転切削工具用表面被覆サーメット製スローアウエイチップ
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−75930(P2007−75930A)
公開日 平成19年3月29日(2007.3.29)
出願番号 特願2005−265130(P2005−265130)
出願日 平成17年9月13日(2005.9.13)
代理人 【識別番号】100076679
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 和夫
発明者 本間 尚志 / 長田 晃 / 中村 惠滋
要約 課題
高速切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮する回転切削工具用スローアウエイチップを提供する。

解決手段
チップ基体の表面に、下部層がTi化合物層、上部層がAl層、の硬質被覆層を形成してなる回転切削工具用スローアウエイチップにおいて、前記Ti化合物層のうちの1層を、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、0〜10度および25〜35度の範囲内の傾斜角区分にピークが存在すると共に、前記0〜10度および25〜35度の範囲内に存在する度数の合計がそれぞれ35〜45%、を占める傾斜角度数分布グラフを示す改質TiCN層、で構成する。
特許請求の範囲
【請求項1】
炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成されたチップ基体の表面に、
(a)下部層が、いずれも化学蒸着形成された炭化チタン層、窒化チタン層、炭窒化チタン層、炭酸化チタン層、および炭窒酸化チタン層のうちの2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層が、1〜15μmの平均層厚を有する化学蒸着形成された酸化アルミニウム層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を形成してなる回転切削工具用表面被覆サーメット製スローアウエイチップにおいて、
上記(a)の2層以上のTi化合物層のうちの1層を、2.5〜15μmの平均層厚を有し、かつ、
電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、0〜10度の範囲内および25〜35度の範囲内の傾斜角区分にそれぞれピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の35〜45%、前記25〜35度の範囲内に存在する度数の合計が、同じく傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の35〜45%の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示す炭窒化チタン層、
で構成したことを特徴とする高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する回転切削工具用表面被覆サーメット製スローアウエイチップ。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
この発明は、特に鋼や鋳鉄などの高速切削加工で、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する回転切削工具用表面被覆サーメット製スローアウエイチップ(以下、被覆チップという)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般に、回転切削工具として、図4(a)に半部縦断側面図、また、同(b)に要部拡大側面図で示される正面フライス工具や、図5(a)に側面図、同(b)に頭部正面図で示されるスローアウエイエンドミルが知られており、これらの回転切削工具は、図示される通り、工具本体の正面部に所定間隔をもって複数個の被覆チップを着脱自在に取り付けた構造をもち、平面削り加工、溝削り加工、肩削り加工、座ぐり加工、そして穴あけ加工などの切削加工に用いられることも良く知られるところである。
さらに、上記の被覆チップが、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成されたチップ基体の表面に、
(a)下部層が、いずれも化学蒸着形成された、炭化チタン(以下、TiCで示す)層、窒化チタン(以下、TiNで示す)層、炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)層、炭酸化チタン(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化チタン(以下、TiCNOで示す)層のうちの2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層が、1〜15μmの平均層厚を有する化学蒸着形成された酸化アルミニウム(以下、Al23で示す)層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を形成したものからなることも知られている。
【特許文献1】特開平6−31503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年の切削加工装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は一段と高速化の傾向にあるが、上記の従来被覆チップにおいては、これを通常の切削加工条件で用いた場合には問題はないが、特にこれを切削速度が300m/min.を越える高速切削条件で用いた場合、これを構成する硬質被覆層は下部層のTi化合物層による高温強度、同上部層のAl23層による高温硬さおよび耐熱性を具備するものの、前記Ti化合物層による高温強度が不十分であるために、硬質被覆層にはチッピング(微小欠け)が発生し易くなることから、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、上記の被覆チップを構成する硬質被覆層の耐チッピング性向上をはかるべく、これの下部層であるTi化合物層のうちのTiCN層に着目し、研究を行った結果、
(a−1)通常、上記の従来被覆チップの硬質被覆層の下部層であるTi化合物層を構成するTiCN層(以下、従来TiCN層という)は、通常の化学蒸着装置で、
反応ガス組成−体積%で、TiCl:2〜10%、CHCN:0.5〜3%、N:10〜30%、H:残り、
反応雰囲気温度:850〜950℃、
反応雰囲気圧力:3〜13kPa、
の条件で形成されるが、上記従来TiCN層を形成するに先立って、
(a−2)同じく通常の化学蒸着装置で、
反応ガス組成−体積%で、TiCl:0.2〜1%、C(メチルエチレン):1〜5%、N:20〜40%、H:残り、
反応雰囲気温度:700〜800℃、
反応雰囲気圧力:3〜13kPa、
処理時間:0.5〜1時間、
の条件で、TiCN結晶核を層形成表面に分散分布させた状態で形成し、この場合、前記TiCN結晶核の分散割合を、走査型電子顕微鏡を用い、1万倍の倍率で観察して、平均値で80〜150個/μmの割合とし、
(a−3)このようにTiCN結晶核が存在する表面に、上記の従来TiCN層の形成条件と同じ条件でTiCN層を形成すると、この結果のTiCN層(以下、改質TiCN層という)は、層形成時に前記TiCN結晶核の結晶配列に著しく影響を受け、これを十分に履歴しながら層形成が行なわれるようになること。
【0005】
(b)上記の従来TiCN層と改質TiCN層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、図1(a),(b)に概略説明図で示される通り、表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフを作成した場合、前記従来TiCN層は、図3に例示される通り、{112}面の測定傾斜角の分布が0〜45度の範囲内で不偏的な傾斜角度数分布グラフを示すのに対して、前記改質TiCN層は、図2に例示される通り、TiCN層形成に先立って形成される上記TiCN結晶核の分布割合を平均値で80〜150個/μmの割合とすることによって、0〜10度の範囲内および25〜35度の範囲内の傾斜角区分にそれぞれピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の35〜45%、前記25〜35度の範囲内に存在する度数の合計が、同じく傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の35〜45%の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すようになること。
【0006】
(c)硬質被覆層の上部層が前記Al23層、下部層が上記Ti化合物層で構成され、かつ前記Ti化合物層のうちの1層が前記改質TiCN層からなる被覆チップは、前記改質TiCN層がすぐれた高温強度を具備するようになることから、高速切削加工でも、前記硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮し、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を示すようになること。
以上(a)〜(c)に示される研究結果を得たのである。
【0007】
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、WC基超硬合金またはTiCN基サーメットで構成されたチップ基体の表面に、
(a)下部層が、いずれも化学蒸着形成された、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層、およびTiCNO層のうちの2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層が、1〜15μmの平均層厚を有する化学蒸着形成されたAl層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を形成してなる被覆チップにおいて、上記(a)の2層以上のTi化合物層のうちの1層を、2.5〜15μmの平均層厚を有し、かつ、
電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、0〜10度の範囲内および25〜35度の範囲内の傾斜角区分にそれぞれピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の35〜45%、前記25〜35度の範囲内に存在する度数の合計が、同じく傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の35〜45%の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示す改質TiCN層、で構成してなる、高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する被覆チップに特徴を有するものである。
【0008】
つぎに、この発明の被覆チップの硬質被覆層の構成層について、上記の通りに数値限定した理由を以下に説明する。
(a)Ti化合物層(下部層)
Ti化合物層は、自体が高温強度を有し、これの存在によって硬質被覆層が高温強度を具備するようになるほか、チップ基体と上部層であるAl23層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層のチップ基体に対する密着性向上に寄与する作用をもつが、その合計平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その合計平均層厚が20μmを越えると、高熱発生を伴なう高速切削加工では熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その合計平均層厚を3〜20μmと定めた。
【0009】
(b)改質TiCN層
上記の通り、改質TiCN層形成に先立って形成される上記TiCN結晶核の分布割合を平均値で80〜150個/μmの割合とすることによって、改質TiCN層は、0〜10度の範囲内および25〜35度の範囲内の傾斜角区分にそれぞれピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の35〜45%、前記25〜35度の範囲内に存在する度数の合計が、同じく傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の35〜45%の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すようになり、この結果としてすぐれた高温強度を具備するようになるものであり、したがって、TiCN結晶核の分布割合が平均値で80個/μm未満であったり、また同分布割合が150個/μmを越えたりすると、2つのピークの現れる傾斜角が前記範囲外になったり、傾斜角度数分布グラフに2つのピークが現れなくなったり、さらに前記範囲内にある度数全体の割合が前記範囲から外れたりするようになり、このような場合はいずれも所望の高強度が得られず、チッピングが発生し易くなるものである。
また、その平均層厚が2.5μm未満では所望のすぐれた高温強度を硬質被覆層に具備せしめることができず、一方その平均層厚が15μmを越えると、偏摩耗の原因となる熱塑性変形が発生し易くなり、摩耗が加速するようになることから、その平均層厚を2.5〜15μmと定めた。
【0010】
(c)Al23層(上部層)
Al23層は、すぐれた高温硬さと耐熱性を有し、硬質被覆層の耐摩耗性向上に寄与するが、その平均層厚が1μm未満では、硬質被覆層に十分な耐摩耗性を発揮せしめることができず、一方その平均層厚が15μmを越えて厚くなりすぎると、チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を1〜15μmと定めた。
【0011】
なお、切削工具の使用前後の識別を目的として、黄金色の色調を有するTiN層を、必要に応じて蒸着形成してもよいが、この場合の平均層厚は0.1〜1μmでよく、これは0.1μm未満では、十分な識別効果が得られず、一方前記TiN層による前記識別効果は1μmまでの平均層厚で十分であるという理由からである。
【発明の効果】
【0012】
この発明被覆チップは、高速切削加工でも、硬質被覆層の下部層のうちの1層である改質TiCN層がすぐれた高温強度を有し、すぐれた耐チッピング性を発揮することから、硬質被覆層にチッピングの発生なく、すぐれた耐摩耗性を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
つぎに、この発明の被覆サーメット工具を実施例により具体的に説明する。
【実施例】
【0014】
原料粉末として、いずれも0.5〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、TiN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で72時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、研削加工と、すくい面と逃げ面の交わる切刃刃稜線部に幅:0.12mmのホーニング加工を施すことにより、WC基超硬合金製のISO規格・SEEN1203AFTNに規定する正面フライス工具用、およびISO規格・OEMX1705ETRに規定するスローアウエイエンドミル用のチップ基体A〜Fをそれぞれ製造した。
【0015】
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、Mo2C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1540℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、同じく研削加工と、すくい面と逃げ面の交わる切刃刃稜線部に幅:0.12mmのホーニング加工を施すことにより、TiCN基サーメット製のISO規格・SEEN1203AFTNに規定する正面フライス工具用、およびISO規格・OEMX1705ETRに規定するスローアウエイエンドミル用のチップ基体a〜fを形成した。
【0016】
つぎに、これらのチップ基体A〜Fおよびチップ基体a〜fのそれぞれを、TiCN結晶核分布割合測定用試験片と共に、通常の化学蒸着装置に装入し、まず、表3に示される条件にて、硬質被覆層の下部層として改質TiCN層を含むTi化合物層を、表4に示される組み合わせで、かつ目標層厚で蒸着形成し、この場合前記改質TiCN層の形成に必要なTiCN結晶核の分布割合は処理時間を調製することにより行ない、また、前記TiCN結晶核分布割合測定用試験片は、改質TiCN層の形成に先立って行なわれるTiCN結晶核の形成後に取り出し、ついで同じく表3に示される条件にて、上部層としてAl23層を同じく表4に示される組み合わせで、かつ目標層厚で蒸着形成することにより本発明被覆チップ1〜13をそれぞれ製造した。
なお、上記のTiCN結晶核分布割合測定用試験片については、走査型電子顕微鏡を用い、1万倍の倍率で観察して、3μm×3μmの範囲内に存在するTiCN結晶核の数を任意5ヶ所について測定し、この測定結果を表4に単位面積(μm2)当りの平均値で示した。
【0017】
また、比較の目的で、表6に示される通り、改質TiCN層に代って、同じく表3に示される条件で、表6に示される目標層厚の従来TiCN層を形成する以外は同一の条件で従来被覆チップ1〜13をそれぞれ製造した。
【0018】
ついで、上記の本発明被覆チップと従来被覆チップの硬質被覆層を構成する改質TiCN層および従来TiCN層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用いて、傾斜角度数分布グラフをそれぞれ作成した。
すなわち、上記傾斜角度数分布グラフは、上記の改質TiCN層および従来TiCN層の表面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定結果に基づいて、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計することにより作成した。
【0019】
この結果得られた各種の改質TiCN層および従来TiCN層の傾斜角度数分布グラフにおいて、{112}面が最高ピークを示す傾斜角区分、並びに0〜10度の範囲内の傾斜角区分内に存在する傾斜角度数の傾斜角度数分布グラフ全体の傾斜角度数に占める割合をそれぞれ表5,7にそれぞれ示した。
【0020】
上記の各種の傾斜角度数分布グラフにおいて、表5,7にそれぞれ示される通り、本発明被覆チップの改質TiCN層は、いずれも{112}面の測定傾斜角の分布が0〜10度および25〜35度の範囲内の傾斜角区分にピークが現れ、かつ0〜10度および25〜35度の範囲内の傾斜角区分内に存在する傾斜角度数の割合がいずれも35〜45%である傾斜角度数分布グラフを示すのに対して、従来被覆サーメット工具の従来TiCN層は、いずれも{112}面の測定傾斜角の分布が0〜45度の範囲内で不偏的で、ピークが存在せず、0〜10度および25〜35度の範囲内の傾斜角区分内に存在する傾斜角度数の割合もそれぞれ25%以下である傾斜角度数分布グラフを示すものであった。
なお、図2は、本発明被覆チップ3の改質TiCN層の傾斜角度数分布グラフ、図3は、従来被覆チップ3の従来TiCN層の傾斜角度数分布グラフをそれぞれ示すものである。
【0021】
さらに、上記の本発明被覆チップ1〜13および従来被覆チップ1〜13について、これの硬質被覆層の構成層を電子線マイクロアナライザー(EPMA)およびオージェ分光分析装置を用いて観察(層の縦断面を観察)したところ、前者および後者とも目標組成と実質的に同じ組成を有するTi化合物層とAl23層からなることが確認された。また、これらの被覆チップの硬質被覆層の構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(同じく縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
【0022】
(1)つぎに、正面フライス加工に関しては、直径が125mmの工具本体正面部に上記被覆チップを種類毎に6個取り付け、
(a)被削材:幅:100mm×長さ:1000mmの寸法をもったJIS・SCM440の板材、
回転数:866r.p.m.、
切削速度:340m/min、
切り込み(軸方向):2.5mm、
1刃当りの送り:0.2mm/刃、
切削時間:30分、
の条件(切削条件Aという)での合金鋼の湿式高速平面削り削試験(通常の切削速度は160m/min)、
(b)被削材:幅:100mm×長さ:1000mmの寸法をもったJIS・S10Cの板材、
回転数:955r.p.m.、
切削速度:375m/min、
切り込み(軸方向):2.5mm、
1刃当りの送り:0.2mm/刃、
切削時間:30分、
の条件(切削条件Bという)での炭素鋼の湿式高速平面削り切削試験(通常の切削速度は200m/min)、
(c)被削材:幅:100mm×長さ:1000mmの寸法をもったJIS・FCD350の板材、
回転数:892r.p.m.、
切削速度:350m/min、
切り込み(軸方向):2.5mm、
1刃当りの送り:0.2mm/刃、
切削時間:30分、
の条件(切削条件Cという)でのダクタイル鋳鉄の湿式高速平面削り切削試験(通常の切削速度は200m/min)を行い、
(2)また、エンドミル加工に関しては、直径が50mmの頭部正面に上記被覆チップを種類毎に3個取り付け、
(a)被削材:幅:100mm×長さ:1000mmの寸法をもったJIS・SCM440の板材、
回転数:2038r.p.m.、
切削速度:320m/min、
切り込み(軸方向):5mm、
1刃当りの送り:0.2mm/刃、
切削時間:15分、
の条件(切削条件Dという)での合金鋼の湿式高速溝削り切削試験(通常の切削速度は200m/min)、
(b)被削材:幅:100mm×長さ:1000mmの寸法をもったJIS・S10Cの板材、
回転数:2166r.p.m.、
切削速度:340m/min、
切り込み(軸方向):5mm、
1刃当りの送り:0.2mm/刃、
切削時間:15分、
の条件(切削条件Eという)での炭素鋼の湿式高速溝削り切削試験(通常の切削速度は240m/min)、
(c)被削材:幅:100mm×長さ:1000mmの寸法をもったJIS・FCD350の板材、
回転数:1911r.p.m.、
切削速度:300m/min、
切り込み(軸方向):5mm、
1刃当りの送り:0.2mm/刃、
切削時間:15分、
の条件(切削条件Fという)でのダクタイル鋳鉄の湿式高速溝削り切削試験(通常の切削速度は200m/min)を行い、いずれの切削試験でも切削試験毎に用いた被覆チップのうちの最大逃げ面摩耗幅を測定した。これらの測定結果を表8,9にそれぞれ示した。
【0023】
【表1】


【0024】
【表2】


【0025】
【表3】


【0026】
【表4】


【0027】
【表5】


【0028】
【表6】


【0029】
【表7】


【0030】
【表8】


【0031】
【表9】


【0032】
表4〜9に示される結果から、本発明被覆チップ1〜13は、いずれも硬質被覆層の下部層のうちの1層が、{112}面の傾斜角が0〜10度および25〜35度の範囲内の傾斜角区分でそれぞれピークを示すと共に、前記0〜10度の傾斜角区分範囲内に存在する度数の合計割合、並びに25〜35度の傾斜角区分範囲内に存在する度数の合計割合がそれぞれ35〜45%を占める傾斜角度数分布グラフを示す改質TiCN層で構成され、これがすぐれた高温強度を有することから、回転切削工具に取り付けて鋼や鋳鉄の高速切削加工を行なった場合にも、切刃部におけるチッピングの発生が著しく抑制され、すぐれた耐摩耗性を示すのに対して、硬質被覆層の下部層のうちの1層が、{112}面の測定傾斜角の分布が0〜45度の範囲内で不偏的で、ピークが存在しない傾斜角度数分布グラフを示す従来TiCN層で構成された従来被覆チップ1〜13においては、いずれも高速切削加工では硬質被覆層の高温強度不足が原因で切刃部にチッピングが発生し、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
【0033】
上述のように、この発明の被覆チップは、回転切削工具に取り付けて、通常の条件で切削加工を行なった場合は勿論のこと、特に高温強度が要求される高速切削加工でもすぐれた耐チッピング性を示し、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮するものであるから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】硬質被覆層を構成する各種TiCN層における結晶粒の{112}面の傾斜角の測定範囲を示す概略説明図である。
【図2】本発明被覆チップ3の硬質被覆層の下部層を構成する改質TiCN層の{112}面の傾斜角度数分布グラフである。
【図3】従来被覆チップ3の硬質被覆層の下部層を構成する従来TiCNの{112}面の傾斜角度数分布グラフである。
【図4】回転切削工具としての正面フライス工具を示し、(a)が半部縦断側面図、(b)が要部拡大側面図である。
【図5】回転切削工具としてのスローアウエイエンドミルを示し、(a)が側面図、(b)が頭部正面図である。




 

 


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