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作業補助装置 - 国立大学法人 名古屋工業大学
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発明の名称 作業補助装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−98507(P2007−98507A)
公開日 平成19年4月19日(2007.4.19)
出願番号 特願2005−291153(P2005−291153)
出願日 平成17年10月4日(2005.10.4)
代理人 【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
発明者 佐野 明人 / 望山 洋 / 武居 直行 / 菊植 亮 / 藤本 英雄 / 村山 英之 / 佐藤 博 / 山岡 正明
要約 課題
対象物を小さな操作力で移動させることができ、かつ対象物が設定された許容範囲を外れた場合でも安定して対象物を許容範囲内へ戻すことができる作業補助装置を提供する。

解決手段
作業補助装置10は、対象物30を取り付ける多関節アーム11を備える。モータ36が発生するトルクがワイヤ32を介してリンク12aを鉛直上方に引っ張ることで重力によって多関節アーム11が鉛直方向に揺動することを抑制する。各関節14はリンク12が揺動する際の抵抗力を調整可能に付与する抵抗力付与機構16を備える。コントローラ22は対象物が許容範囲50内のときは抵抗力付与機構16が各関節に付与する抵抗力を小さくする。対象物が許容範囲50外のときは抵抗力を大きくする。抵抗力は多関節アーム11の動かし難さを調整するので各関節に付与する抵抗力を大きくしても対象物が操作力の方向とは反対の方向に移動することを防止できる。
特許請求の範囲
【請求項1】
作業者が多関節アームの一部に操作力を加えることによって、多関節アームに取り付けられている対象物を移動させる装置であり、
2以上の関節を有するとともに、先端に対象物を取り付けることが可能な多関節アームと、
対象物と多関節アームに作用する重力を補償し、重力によって多関節アームが鉛直方向に揺動することを抑制する重力補償機構と、
前記操作力によって生じる関節周りの揺動に抵抗力を付与するとともに、付与する抵抗力を増減調整可能な抵抗力付与機構と、
対象物の位置を検出する位置検出装置と、
対象物が位置することが許容される範囲を記憶する許容範囲記憶装置と、
位置検出装置で検出された対象物の位置が、許容範囲記憶装置に記憶されている許容範囲を外れた場合に、抵抗力付与機構が付与する抵抗力を増加させるように抵抗力付与機構を制御する第1制御装置と、
を備えることを特徴とする作業補助装置。
【請求項2】
作業者が多関節アームの一部に操作力を加えることによって、多関節アームに取り付けられている対象物を移動させる装置であり、
水平面内で揺動する2以上の関節を有するとともに、先端に対象物を取り付けることが可能な多関節アームと、
前記操作力によって生じる関節周りの揺動に抵抗力を付与するとともに、付与する抵抗力を増減調整可能な抵抗力付与機構と、
対象物の位置を検出する位置検出装置と、
対象物が位置することが許容される範囲を記憶する許容範囲記憶装置と、
位置検出装置で検出された対象物の位置が、許容範囲記憶装置に記憶されている許容範囲を外れた場合に、抵抗力付与機構が付与する抵抗力を増加させるように抵抗力付与機構を制御する第1制御装置と、
を備えることを特徴とする作業補助装置。
【請求項3】
第1制御装置は、対象物の位置から許容範囲までの距離が長くなるほど抵抗力付与機構が付与する抵抗力を増加させることを特徴とする請求項1又は2に記載の作業補助装置。
【請求項4】
第1制御装置は、対象物の位置が許容範囲から離れる速度が大きいほど抵抗力付与機構が付与する抵抗力を増加させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の作業補助装置。
【請求項5】
対象物の移動方向を検出する移動方向検出装置と、
移動方向検出装置によって検出された対象物の移動方向が、許容範囲に近づく方向である場合には、抵抗力付与機構が付与する抵抗力を、第1制御装置によって調整される抵抗力から低減させる第2制御装置と、
が付加されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の作業補助装置。
【請求項6】
前記抵抗力付与機構は、可変粘性ダンパ、ER流体ダンパ、MR流体ダンパ、磁性流体ダンパのいずれかであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の作業補助装置。
【請求項7】
前記抵抗力付与機構は、摩擦抵抗力が調整可能な摩擦ブレーキ、パウダブレーキ、ヒステリシスブレーキ、ER流体ブレーキ、MR流体ブレーキ、磁性流体ブレーキのいずれかであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の作業補助装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を取り付けるための多関節アームを備えており、その多関節アームを利用して、作業者が対象物を移動させる作業を補助する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークや作業器具等の対象物を取り付けるための多関節アームを備えており、その多関節アームを利用して、作業者が対象物を移動させる作業を補助する装置が知られている。
ひとつの形式の作業補助装置は、対象物と多関節アームに作用する重力を補償し、重力によって多関節アームが鉛直方向に揺動することを抑制する重力補償機構を備えている。重力補償機構を備えている多関節アームを利用すると、作業者には対象物に作用する重力を支える力が必要とされない。実際には重い対象物であっても、作業者は軽い操作力で対象物を移動させることができる。
他の一つの形式の作業補助装置は、水平面内でしか揺動できない多関節アームを利用する。水平面内でしか揺動できない多関節アームを利用すると、対象物と多関節アームに作用する重力は多関節アームを水平面内に維持する機構によって支えられる。作業者には対象物に作用する重力を支える力が必要とされない。実際には重い対象物であっても、作業者は軽い操作力で対象物を水平面内で移動させることができる。
多関節アームの関節にモータ等のアクチュエータを配置して、操作力を低減する作業補助装置も提案されており、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1の技術では、作業補助装置の制御装置内に対象物の質量よりも軽い質量を有する仮想物体の運動方程式を記述するモデルを構築しておく。そして作業者が操作子に加える操作力を検出し、検出された操作力を前記運動方程式に代入して検出された操作力を仮想物体に加えたときに生じる運動を計算する。計算された運動が対象物の位置で実現されるように多関節アームの各関節に配置されたアクチュエータを制御する。特許文献1の技術は、作業者の操作力が仮想物体に加わったときの運動を対象物が実現するように多関節アームを制御する、いわゆるインピーダンス制御が行われる。
【0003】
【特許文献1】特開2005−14133号公報
【0004】
多関節アームを用いる作業補助装置の場合、対象物が存在する範囲を拘束したい場合がある。例えば、比較的に重い接着剤塗布器具を移動するために作業補助装置を利用する場合、ワークに形成されている接着剤の塗布ラインに沿って塗布器具を移動させることが求められており、塗布ラインから大きく離れた位置に塗布器具が移動しないように拘束したい場合がある。あるいは、作業空間に隣接して他の物体が存在する場合には、対象物が他の物体と干渉しないように、対象物が作業空間に留まるように拘束したい場合がある。
特許文献1の技術では、対象物が存在することが許容される許容範囲と、その外側にあって対象物が存在することが許容されない非許容範囲を設ける。対象物が許容範囲内にある間は仮想物体が小さな操作力で移動するように仮想物体の運動方程式のパタメータ(仮想物体の質量、粘性係数、バネ係数など)の値を小さく設定する。作業者が加える小さな操作力によって多関節アームのアクチュエータが対象物を大きく移動させるように制御される。対象物が許容範囲から外れた場合には、仮想物体の運動方程式中のパラメータの値を大きな値に設定する。具体的には対象物の位置から許容範囲までの距離に比例して対象物を許容範囲に移動させるようなバネ定数が仮想物体の運動方程式中のパラメータに設定される。この運動方程式により仮想物体の位置を計算すると、仮想物体の位置はそれまでの位置より許容範囲へ近づいた位置となる。多関節アームは仮想物体の位置が対象物で実現されるように多関節アームのアクチュエータを制御する。作業者が許容範囲から外れる方向に操作力を加えると、操作力の方向とは逆の方向に対象物が移動する。その結果、対象物の位置が許容範囲から大きく外れることが防止される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術によれば、対象物が許容範囲から外れた場合には、作業者が操作力を加えた方向と反対向きに対象物が移動してしまう。対象物が許容範囲から大きく外れることを防止するために必要であるとはいえ、作業者が操作力を加えた方向と反対向きに対象物が移動する動きはいかにも不自然であり、作業者は強い違和感を覚える。
特許文献1の技術では、対象物が許容範囲から外れた際、仮想物体の運動方程式中に移動範囲と対象物との距離に応じた弾性項を設定する。運動方程式中の弾性項の作用によって、許容範囲から外れた対象物を許容範囲の方向に移動させるようにアクチュエータが多関節アームを作動させる。
またインピーダンス制御(コンプライアンス制御)では、仮想物体の運動方程式中の粘性係数や摩擦係数や弾性係数を適切に設定しないと、作業者が操作力を加える多関節アームの部位で、アクチュエータが発生する力と操作力との微妙な差によりその部位が振動する、いわゆる振動現象が生じてしまう可能性がある。この場合も特許文献1の技術と同様に作業者が操作力を加えた方向と反対向きに対象物が移動する結果となる。そのような対象物の動きはいかにも不自然であり、作業者は強い違和感を覚える。
本発明は、対象物が許容範囲から大きく外れることを防止するに当たって、作業者が強い違和感を覚えないように拘束する技術を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、重力によって多関節アームが鉛直方向に揺動することを抑制する重力補償機構を採用するか、あるいは、多関節アームの可動範囲を水平面内に拘束することによって、対象物と多関節アームに作用する重力によっては多関節アームが揺動しない機構を利用する。すなわち、多関節アームの関節周りの揺動には重力が影響せず、作業者が加える操作力によって関節周りの揺動が生じる機構を利用する。
本発明では、作業者が加える操作力によって生じる関節周りの揺動に対して物理的な抵抗力を付与する抵抗力付与機構を利用する。本発明では、対象物が許容範囲を外れた場合に、抵抗力付与機構を作動させ、対象物が許容範囲内に位置するときよりも多関節アームを物理的に揺動し難くする。
【0007】
本発明では、対象物が許容範囲から大きく外れてしまうことを抑制するためには、アクチュエータが多関節アームを動作させて対象物の位置を能動的に制御するよりも、多関節アームを物理的に揺動し難くする方が、自然な操作感がもたらされるという事実を利用する。物理的に揺動し難くする方式であると、作業者が操作力を加えた方向と反対向きに対象物が移動する動きは生じず、作業者は強い違和感を覚えない。対象物が許容範囲から外れた場合に、対象物が許容範囲内に位置するときよりも多関節アームを物理的に揺動し難くすると、作業者は対象物がさらに許容範囲から外れる方向に移動させ難くなる。作業者は、許容範囲内では重力から開放されたように自在に対象物を移動させることができる一方、対象物が許容範囲から外れた場合には、対象物が許容範囲内に位置するときよりも多関節アームを物理的に揺動し難くすることによって、許容範囲内では自在に対象物を移動させることができるとともに対象物が許容範囲から大きく外れることを防止することができる。
【0008】
本発明のひとつの作業補助装置は、2以上の関節を有するとともに先端に対象物を取り付けることが可能な多関節アームと、対象物と多関節アームに作用する重力を補償して重力によって多関節アームが鉛直方向に揺動することを抑制する重力補償機構と、前記操作力によって生じる関節周りの揺動に抵抗力を付与するとともに付与する抵抗力を増減調整可能な抵抗力付与機構と、対象物の位置を検出する位置検出装置と、対象物が位置することが許容される範囲を記憶する許容範囲記憶装置と、位置検出装置で検出された対象物の位置が許容範囲記憶装置に記憶されている許容範囲を外れた場合に抵抗力付与機構が付与する抵抗力を増加させるように抵抗力付与機構を制御する第1制御装置を備える。
【0009】
重力補償機構は、対象物と多関節アームの質量と同じ質量のカウンタウエイトによってバランスをとる機構でよい。または、空気圧やモータの動力により、対象物と多関節アームに作用する重力に起因するトルクをバランスさせる機構でもよい。また、重力補償機構は、多関節アームの一部に作用するものでもよい。例えば多関節アームが、鉛直方向に揺動可能な第1リンクと、その第1リンクの先端に対して水平面内で揺動可能に連結されている第2リンクを有しており、その第2リンクの先端に対象物が取り付けられる場合、重力補償機構は第1リンクに対してのみ作用するものであればよい。第1リンクに重力補償機構が作用すれば、重力によって多関節アームが鉛直方向に揺動することを抑制することができる。
抵抗力付与機構は、関節周りの揺動に抵抗力を付与するものであればよく、特に限定されない。例えば、粘性あるいは摩擦力を利用するものであってもよい。
【0010】
この作業補助装置を利用する場合は、対象物を多関節アームに取り付ける。作業者は、多関節アームの一部に操作力を加える。多関節アームに取り付けられている対象物に操作力を加えることによって、多関節アームの一部に操作力を加えてもよい。
この作業補助装置は、重力補償機構を備えていることから、作業者には、対象物と多関節アームに作用する重力を支えることが求められない。操作力を加えない限り、多関節アームが鉛直方向に揺動することがなく、対象物の位置が維持される。作業者は、小さな操作力を加えることで、対象物を移動させることができる。
対象物が許容範囲を外れて移動する場合には、抵抗力付与機構と第1制御装置とによって、多関節アームの関節に強い抵抗力が作用する。作業者は対象物が許容範囲内にあるときよりも対象物を移動させ難くなる。対象物はそれまでに作業者が加えていた操作力では移動し難くなる。対象物が許容範囲から外れる方向には対象物を移動し難くすることができる。また、大きな抵抗力を受けた作業者は、対象物が許容範囲から外れる操作をしていることを認識し、自然に操作力を弱める操作を行なう。両者が相俟って、対象物が許容範囲から大きく外れることを抑制することができる。
上記装置では、多関節アームの揺動のし易さ乃至は揺動のし難さを調整可能な抵抗力を付与する抵抗力付与機構を用いる。抵抗力付与機構は、アクチュエータのように力を能動的に発生させるものではなく、物理的な粘性抵抗力や摩擦抵抗力のように物体の運動に対してその物体の運動エネルギを散逸させる機構を用いる。従って抵抗力付与機構とは例えば関節の物理的な粘性抵抗を調整可能な粘性ダンパなどが相当する。関節の物理的な抵抗力を調整する(即ち多関節アームが揺動する際の運動エネルギを散逸させる程度を調整する)ことで多関節アームを揺動し易くすることもできればし難くすることもできる。抵抗力付与機構は、多関節アームが揺動する際の運動エネルギを散逸させるものなので、対象物が許容範囲から外れた際に抵抗力を大きくしても作業者が操作力を加えた方向と反対向きに対象物が移動する不自然な動作は生じない。作業者は強い違和感を覚えることがない。
【0011】
対象物を水平方向に移動させればよい場合には、下記の作業補助装置を利用することができる。この作業補助装置は、水平面内で揺動する2以上の関節を有するとともに先端に対象物を取り付けることが可能な多関節アームと、前記操作力によって生じる関節周りの揺動に抵抗力を付与するとともに付与する抵抗力を増減調整可能な抵抗力付与機構と、対象物の位置を検出する位置検出装置と、対象物が位置することが許容される範囲を記憶する許容範囲記憶装置と、位置検出装置で検出された対象物の位置が許容範囲記憶装置に記憶されている許容範囲を外れた場合に抵抗力付与機構が付与する抵抗力を増加させるように抵抗力付与機構を制御する第1制御装置を備える。
【0012】
水平面内でのみ揺動する多関節アームを利用すれば、その多関節アーム自身が、重力によって多関節アームが鉛直方向に揺動することを抑制する重力補償機構を内蔵していることになる。多関節アームとは別に重力補償機構を用意する必要がない。作業者には、対象物と多関節アームに作用する重力を支えることが求められない。作業者は、小さな操作力を加えることで、対象物を水平面内で自在に移動させることができる。
この作業補助装置でも、対象物が許容範囲を外れて移動する場合には、抵抗力付与機構と第1制御装置とによって、多関節アームが揺動する際に関節に強い抵抗力が作用する。作業者は対象物が許容範囲内にあるときよりも対象物を移動させ難くなる。それまでに作業者が加えていた操作力では対象物が移動し難くなる。対象物が許容範囲から外れる方向には対象物を移動し難くすることができる。また大きな抵抗力を受けた作業者は、対象物が許容範囲から外れる操作をしていることを認識し、自然に操作力を弱める操作を行なう。両者が相俟って、対象物が許容範囲から大きく外れることを抑制することができる。
上記構成では、多関節アームの揺動のし易さ乃至は揺動のし難さを物理的に付与する抵抗力付与機構を用いる。抵抗力付与機構は、多関節アームが揺動する際の運動エネルギを散逸させるものなので、対象物が許容範囲から外れた際に抵抗力を大きくしても作業者が操作力を加えた方向と反対向きに対象物が移動する不自然な動作は生じない。作業者は強い違和感を覚えることがない。
【0013】
第1制御装置は、対象物の位置から許容範囲までの距離が長くなるほど抵抗力付与機構が付与する抵抗力を増加させることが好ましい。この場合、対象物の位置から許容範囲までの距離が長くなるほど、対象物を移動させ難くなるので、対象物が許容範囲から大きく外れることを防止できる。
【0014】
また、第1制御装置は、対象物の位置が許容範囲から離れる速度が大きいほど抵抗力付与機構が付与する抵抗力を増加させることが好ましい。
対象物の位置が許容範囲から離れる速度が大きいほど、対象物は移動し難くなるので、対象物が許容範囲から大きく外れることを防止することができる。
【0015】
上記の作業補助装置は、対象物の移動方向を検出する移動方向検出装置と、移動方向検出装置によって検出された対象物の移動方向が許容範囲へ近づく方向の場合には、抵抗力付与機構が付与する抵抗力を第1制御装置によって調整される抵抗力から低減させる第2制御装置をさらに備えることが好ましい。
上記構成によれば、対象物の移動方向が許容範囲へ近づく方向である場合には、対象物の位置が許容範囲外であっても、抵抗力付与機構が多関節アームの関節に付与する抵抗力を低減するように制御される。従って対象物が許容範囲外にあっても許容範囲へ戻す方向には小さな操作力で対象物を移動させることができる。許容範囲から外れた対象物を小さな操作力で許容範囲内に戻すことができる。
【0016】
抵抗力付与機構は、可変粘性ダンパ、ER流体ダンパ、MR流体ダンパ、磁性流体ダンパのいずれかであってよい。また摩擦抵抗力が調整可能な摩擦ブレーキ、パウダブレーキ、ヒステリシスブレーキ、ER流体ブレーキ、MR流体ブレーキ、磁性流体ブレーキのいずれかであってもよい。これらのダンパやブレーキは能動的な力を発生させるものではない。いずれの場合も多関節アームが揺動する際の運動エネルギを散逸させることによって、関節の揺動のし難さを調整するものである。アクチュエータによって関節に能動的なトルクを加えるものでないために、作業者が操作力を加えた方向と反対向きに対象物が移動する不自然な動作は生じない。また、上記ダンパやブレーキは、関節に能動的なトルクを加えるものでないために誤作動時における安全性が高い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、作業者には対象物に作用する重力を支える操作が必要とされない。対象物が許容範囲にある限り、軽い操作力で重量のある対象物を簡単に移動させることができる。作業者が対象物を許容範囲から外れた方向に移動する操作を行なうと、多関節アームを揺動させる操作に強い抵抗力が作用する。対象物が許容範囲から外れた場合には作業者は対象物を移動させ難くなる。さらに、作業者は強い抵抗力を受けることで対象物が許容範囲から外れたことを認識し、その操作を自然に停止することができる。両者が相俟って、対象物が許容範囲から大きく外れることを抑制することができる。
本発明の作業補助装置によると、作業者は許容範囲内では重力から開放されたように自在に対象物を移動させることができる一方、対象物の位置が許容範囲から外れた場合には作業者は強い抵抗力を受ける。対象物が許容範囲から大きく外れることを防止するとともに許容範囲内で自在に対象物を移動させることができる。
本発明の作業補助装置によると、対象物が許容範囲から外れた場合に、作業者が加える操作力の方向とは反対の方向に対象物が移動することがない。作業者が操作力を加えた方向と反対向きに対象物が移動する不自然な動作は生じない。作業者は強い違和感を覚えることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
実施例の主要な特徴を列記する。
(第1形態) 作業補助装置は、作業者が加える操作力の方向を検出する操作力方向検出装置を有し、抵抗力付与機構の制御装置は、操作力の方向が許容範囲へ近づく方向の場合には、対象物の位置が許容範囲外であっても多関節アームの関節に付与する抵抗力を弱めるように制御する。
(第2形態) 操作力方向検出装置は、多関節アームに設けられているとともに作業者が操作する操作子に取り付けられているに力センサで実現される。
(第3形態) 操作力方向検出装置は、多関節アームに設けられているとともに作業者が操作するジョイスティックタイプの操作子によって実現される。
【実施例】
【0019】
図1に本発明の一実施例に係わる作業補助装置10の概略図を示す。この作業補助装置10は、塗布器具30を用いてフロントガラスWの周囲に設定されている塗布ラインLに沿って接着剤を塗布する作業を補助する装置である。フロントガラスWはワーク支持装置24によって支持されている。フロントガラスWの周囲に設定されている接着剤を塗布すべき塗布ラインLを以下では塗布器具30の目標軌道Lと称する。
作業補助装置10は、対象物である塗布器具30を支持する多関節アーム11と、多関節アーム11を制御するコントローラ22を備える。
【0020】
多関節アーム11の基部13は床に固定されている。基部13は鉛直方向に固定されている鉛直ポール13bを備えている。多関節アーム11は、リンク12a、12b、12cを備えている。鉛直ポール13bに対して関節14aによってリンク12aが連結されている。関節14aはリンク12aが水平面内で揺動するようにリンク12aを支えている。リンク12aに対して関節14bによってリンク12bが連結されている。関節14bはリンク12bが水平面内で揺動するようにリンク12bを支えている。リンク12bに対して関節14cによってリンク12cが連結されている。関節14cはリンク12cが水平面内で揺動するようにリンク12cを支えている。
関節14aはまた、鉛直ポール13bに沿って鉛直方向にも揺動可能である。即ち、関節14aは水平面内での回転と鉛直方向への直動の2自由度を有する関節である。従ってリンク12a、12b、12cの水平面の高さは、可変である。
リンク12b、12cは水平面内でのみ揺動可能である。また、リンク12aは水平面内で回転方向に揺動可能である。従って、リンク12aが鉛直ポール13に沿った鉛直方向に揺動しない限り、リンク12a、12b、12cと対象物30に作用する重力によって、リンク12b、12cが鉛直方向に揺動することはない。
【0021】
多関節アーム11の基部13にはモータ36が固定されている。モータ36の回転軸Cには巻き車34が固定されている。巻き車34には、ワイヤ32の一端近傍が巻き付けられている。鉛直ポール13bの上端にはプーリ26が配置されている。ワイヤ32の他端近傍はプーリ26に掛けられた後でリンク12aに固定されている。ワイヤ32は、リンク12aを上方に引っ張っている。モータ36はワイヤ32を介してリンク12aに、多関節アーム11のリンク12aから先端までの質量に加わる重力と、リンク12cに取り付けられている塗布器具30の質量に加わる重力を足し合わせた重力に等しい力を加えるだけのトルクを発生するように制御されている。すなわち、多関節アーム11のリンク12aが重力によって下降する力と、ワイヤ32がリンク12aを上方に引き上げる力が等しい。リンク12a、12b、12cと、塗布器具30には、重力によって下降しようとする力と、モータ36によって引きあげられようとする力が作用している。両者はバランスしており、作業者が操作力を加えない限り、リンク12a、12b、12cと塗布器具30は、下降も上昇もしない。すなわち、モータ36とワイヤ32等によって、リンク12a、12b、12cと、塗布器具30に作用する重力を補償する重力補償機構が構成されており、その重力補償機構によって、多関節アーム11が重力によって鉛直方向に揺動することを抑制している。リンク12b、12cは、水平面内でしか揺動できないことから、重力補償機構がリンク12b、12cに直接的に作用する必要はない。
ここで、塗布器具30に鉛直方向下向きの操作力が加わると、モータ36が発生するトルクがワイヤ32を介して塗布器具30を含むリンク12aから先の質量(「塗布器具30を含むリンク12aから先の質量」を以下では塗布器具30等の質量と称する)を鉛直上方に引っ張る力が、重力と操作力の合力より相対的に小さくなる(モータ36がワイヤ32を引っ張る力と、塗布器具30等の質量に加わる重力と操作力との合力とのバランスが崩れる)。モータ36がワイヤ32を引っ張る力が前記合力より相対的に小さくなると、モータ36は発生しているトルクの方向とは逆方向に回転させられる。モータ36がトルクの方向とは逆向きに回転した分だけ巻き車34に巻かれているワイヤが巻き車34から解かれる。その結果、塗布器具30は操作力の方向、即ち鉛直下方に移動することになる。逆に塗布器具30に鉛直方向上向きの操作力が加わると、モータ36が発生するトルクがワイヤ32を介して塗布器具30等の質量を鉛直上方に引っ張る力が、重力と操作力の合力より相対的に大きくなる(モータ36がワイヤ32を引っ張る力と、塗布器具30等に加わる重力と操作力との合力とのバランスが崩れる)。モータ36がワイヤ32を引っ張る力が前記合力より相対的に大きくなると、モータ36は発生しているトルクによりトルク方向に巻き車34を回転させる。ワイヤ32は巻き車34に巻かれていく。その結果、塗布器具30は操作力の方向、即ち鉛直上方に移動することになる。
塗布器具30を鉛直方向に移動させる際の操作力には、塗布器具30等に作用する重力を支える力が含まれない。小さな操作力で塗布器具30を鉛直方向に移動させることができる。
【0022】
関節14bはリンク12bを水平方向に回転させる関節である。同様に関節14cはリンク12cを水平方向に回転させる関節である。作業者が塗布器具30に対して水平方向の操作力を加えると、塗布器具30は水平方向に移動する。塗布器具30の鉛直方向の位置は変わらない。
多関節アーム11は、作業者が加える操作力に従って、塗布器具30を鉛直方向にも水平方向にも移動させることができる。このときモータ36が塗布器具30等の質量に加わる重力を補償している。作業者には塗布器具30の自重等を支える力が要求されない。作業者は軽い操作力で、塗布器具30を鉛直方向にも水平方向にも移動させることができる。
【0023】
多関節アーム11の関節14a、14b、14cの夫々には位置センサ15a、15b、15cが備えられている。位置センサ群15はエンコーダ等である。なお、回転と直動の2自由度を有する関節14aに取り付けられた位置センサ15aは、鉛直ポール13bに対するリンク12aの回転角度と、鉛直ポール13bに対するリンク12aの鉛直方向の位置を検出する。位置センサ群15が出力する値と多関節アーム11のリンク群12の寸法データから、幾何学的な計算によって、絶対座標系における塗布器具30の位置Pの座標を求めることができる。以下、位置センサ群や関節群などを総称する場合は、符号の添え字a,b,cを省略して説明する。
【0024】
関節14a、14b、14cの夫々には、夫々の関節を揺動させることに対して抵抗力を付与する可変ダンパ16a、16b、16cが配置されている。可変ダンパ群16が関節群14の夫々に付与する抵抗力を調整することによって、リンク先端に支持された塗布器具30を作業者が移動させる際の移動のし易さ乃至は移動のし難さを調整できる。本実施例の作業補助装置10では、多関節アーム11によって塗布器具30等の質量に加わる重力を補償しているので、作業者は塗布器具30の自重を支える力を要することなく小さな操作力で塗布器具30を移動させることができる。その一方で、可変ダンパ群16が各関節14に付与する抵抗力を調整することで、作業者が塗布器具30を移動させる際の移動のし易さ乃至は移動のし難さを調整することができる。
【0025】
次に本実施例の作業補助装置10の動作についてその概要を説明する。
コントローラ22には、塗布器具30が位置することが許容される許容範囲50を示すデータが設定されている。許容範囲50は、目標軌道Lを包含する範囲に設定されている。許容範囲50の両側には、移動制限範囲52Lと52Rが設定されている。移動制限範囲52Lと52Rは、塗布器具30がその範囲内になるべく入らないようにしたい範囲である。なお、図1では移動制限範囲52Lと52RはフロントガラスWの面に沿った面として描いてあるが、実際には鉛直方向に伸びる壁のように設定されている。
作業者は塗布器具30を目標軌道Lに沿って許容範囲50内で自由に移動させることができる。塗布器具30の位置が許容範囲50内にあるときは、コントローラ22は可変ダンパ群16が関節群14に付与する抵抗力の値を小さく設定する。これにより作業者は小さな力で塗布器具30を移動させることができる。
一方、塗布器具30が許容範囲50から外れた際には(即ち塗布器具30の位置が移動制限範囲52L又は52Rに位置する際には)、コントローラ22は可変ダンパ群16が関節群14に付与する抵抗力の値を大きく設定する。これにより塗布器具30が許容範囲50から外れた際には作業者は塗布器具30を移動させ難くなる。従って塗布器具30を許容範囲から大きく外れることを防止することができる。
【0026】
次に図2のブロック図を用いて作業補助装置10を説明する。
多関節アーム11の先端には塗布器具30が取り付けられている。また多関節アーム11は、位置センサ群15と可変ダンパ群16を有する。なお図2には多関節アーム11のリンク群12は図示を省略してある。
コントローラ22の内部には、位置センサ群15の出力値が入力される位置/速度算出部40と、ダンパ制御部42と許容範囲データ記憶部44を有する。
許容範囲データ記憶部44には、図1に示した許容範囲50と、移動制限範囲52Lと52Rの位置関係のデータが記憶されている。
位置/速度算出部40では、まず位置センサ群15から送られた各関節14の回転角(及び鉛直ポール13bに対するリンク12aの鉛直方向の位置)と多関節アーム11のリンクの幾何学的構造から塗布器具30の位置を算出する。次に塗布器具30の位置の経時的変化から塗布器具30の速度を算出する。
算出された塗布器具30の位置と速度はダンパ制御部42へ送られる。ダンパ制御部42は、許容範囲データ記憶部44に記憶されたデータを参照して現在の塗布器具30の位置が許容範囲50内にあるか否かを判断する。塗布器具30の位置が許容範囲50内である場合には、可変ダンパ群16に対して、各関節14に付与する抵抗力が小さくなるように指令値を出力する。一方、塗布器具30の位置が許容範囲50外である場合には、可変ダンパ群16に対して、各関節14に付与する抵抗力が大きくなるように指令値を出力する。このときダンパ制御部42は可変ダンパ群16に対して、塗布器具30と許容範囲50との距離が大きくなるほど各関節14に付与する抵抗力が大きくなるような指令値を出力する。なお、可変ダンパ制御部42は、塗布器具30の移動速度の方向が許容範囲50の方向へ向いている場合には、塗布器具30が許容範囲50外であっても各関節14の抵抗力が小さくなるように可変ダンパ群16に対して指令値を出力する。
【0027】
次にコントローラ22内での上記の処理を図3のフローチャート図により説明する。
まずステップS300で塗布器具30の位置と速度を取得する。次にステップS302で塗布器具30の位置は許容範囲50外であるか否かを判断する。
塗布器具30の位置が許容範囲50外であると判断された場合(ステップS302:YES)、次にステップS304で塗布器具30の移動方向(即ち塗布器具30の速度の方向)が許容範囲50から離れる方向であるか否かが判断される。塗布器具30の移動方向が許容範囲50から離れる方向である場合(ステップS304:YES)、ステップS306により塗布器具30に対する抵抗力FAを設定する。抵抗力FAについては図4を用いて後述する。
次にステップS308では、ステップS306で設定された抵抗力FAを各可変ダンパ16が発生すべき抵抗力に変換する。そしてステップS310により変換された抵抗力を指令値として各可変ダンパ16へ出力する。
一方、ステップS302で塗布器具30の位置が許容範囲50内であると判断された場合(ステップS302:NO)又はステップS304で塗布器具30の移動方向が許容範囲50から離れる方向でないと判断された場合(ステップS304:NO)、次にステップS312に移り塗布器具30に対する抵抗力FBを設定する。設定された抵抗力FBはステップS308により各可変ダンパ16が発生すべき抵抗力に変換される。そしてステップS310により変換された抵抗力は各可変ダンパ16への指令値として出力される。以上の処理を制御周期毎に繰り返す。
なお、ステップS306で設定される塗布器具30に対する抵抗力FAはステップS312で設定される抵抗力FBよりも大きな値に設定される。
また図3のステップS300の塗布器具30の位置と速度を取得する処理は位置センサ群15(図1参照)とコントローラ22内の位置/速度算出部(図2参照)により実行される。図3のステップS300以外の処理は図2に示すダンパ制御部42で実行される。
【0028】
次に図4によって塗布器具30が許容範囲50外にある場合の塗布器具30に対する抵抗力について説明する。なお、図4は説明を簡単にするために塗布器具の移動方向を紙面上の2次元に限定した。また絶対座標系としてx軸、y軸の方向を図4に示す通りに設定した。また図4では目標軌道Lを含み目標軌道Lに沿って塗布器具30の位置の許容範囲50が設定されており、許容範囲50の両側に移動制限範囲52Lと52Rが設定されている。目標軌道Lの方向は図4のx軸と平行にとってある。また移動制限範囲52L、52Rと許容範囲50との境界もx軸と平行にとってある。
図4では塗布器具30の位置を点Pで代表させてある。図4の状態では、塗布器具30の位置Pは、許容範囲50から距離dPyだけ外れた位置にある。
また、作業者が塗布器具30に加える操作力をFIで示してある。図4では操作力FIが加えられる塗布器具30の位置を点Sで示してある。塗布器具30に操作力FIが加えられると多関節アーム11の関節群14は操作力FIに従って揺動する。その結果、塗布器具30は操作力FIと同じ方向であるVPの方向へ移動する。矢印VPはまた、塗布器具30の移動速度も表す。VPyは塗布器具30の速度VPのy軸方向の速度成分を表している。従って図4の状態は、塗布器具30が許容範囲50から速度成分VPyで離れていく状態を示してある。
【0029】
図4の状態における作業補助装置10の動作を図3のフローチャートと対比させて説明する。図4では塗布器具30の位置Pは許容範囲からdPyだけ外れた位置にある。従って図3のステップS302の判断はYESとなる。また塗布器具30は速度成分VPyで許容範囲50から離れる方向に移動している。従って図3のステップS304での判断もYESとなる。よって次に図3のステップS306により塗布器具30に対する抵抗力FAが設定される。抵抗力FAは次の第1式で設定される。
FA=−(a1×dPy+a2×VPy+Fc) ・・・(1)
ここでa1、a2は所定の正の値を有する係数である。またFcは所定の正の値を有する定数である。右辺全体がかっこで括られてマイナスの符号が付してあるのは、塗布器具30の位置Pの移動方向を正にとった場合に、抵抗力FAは、塗布器具30の位置Pの移動方向とは逆の方向に作用するからである。
第1式の右辺第1項は、塗布器具30の位置Pから許容範囲50までの距離dPyに比例した大きさの抵抗力成分を示す。第2項は、塗布器具30が許容範囲50から離れていく方向の速度成分VPyに比例した大きさの抵抗力成分を示す。従って塗布器具30と許容範囲50との距離が大きくなるほど塗布器具30に加えられる操作力FIに対する抵抗力FAは大きい値となる。同様に塗布器具30が許容範囲50から離れる方向の速度成分が大きくなるほど塗布器具30に加えられる操作力FIに対する抵抗力FAは大きい値となる。
本実施例では、作業者が塗布器具30を操作する位置Sで、設定された抵抗力FAが発生するように可変ダンパ群16を制御する。これにより作業者は、塗布器具30が許容範囲50から外れた場合に塗布器具30を移動させ難くすることができる。
抵抗力FAの大きさと発生させるべき位置が決まると図3のステップS308によって、塗布器具30を作業者が操作する位置Sで抵抗力FAを実現するために各可変ダンパ16が各関節14に付与すべき抵抗力の大きさに変換される。この変換は、良く知られている多関節アーム11の所定の位置(図4では位置S)に発生させる力と各関節が発生させる力(本実施例の場合は抵抗力に相当する)の変換式により算出することができる。そしてステップS310により、変換された抵抗力を指令値として各可変ダンパ16への指令値が出力される。その結果、図4に示すように塗布器具30を作業者が操作する位置Sで操作力FIとは反対の方向を向く抵抗力FAが実現される。
なお抵抗力FAは、可変ダンパ群16によって、各関節14に物理的な粘性抵抗力や摩擦抵抗力を塗布器具30が許容範囲50内に位置するときよりも強く付与することによって実現される。各関節14に付与する物理的な粘性抵抗力や摩擦抵抗力は多関節アーム11の運動エネルギを散逸させるものなのでインピーダンス制御における反力のように塗布器具30を能動的に移動させる力とはならない。同様の理由で抵抗力FAは操作力FI以上とはならない。それゆえ、インピーダンス制御の際に発生する可能性がある反力と操作力の差による振動現象を生ずることなく作業者は塗布器具30を安定して操作することが可能となる。また、操作力と逆方向に塗布器具30が移動する現象も生じない。さらに可変ダンパ群16は各関節14に物理的な粘性抵抗力や摩擦抵抗力を付与するものであるので可変ダンパ16やコントローラ22に不具合が生じても多関節アーム11が予想外の力を発生することがない。より安全性の高い作業補助装置10を実現することができる。
【0030】
次に図5により別の状態にある塗布器具30に対して作業補助装置10が発生する抵抗力について説明する。図5において図4と同じ符号は同じ部品を示す。図5の状態は、塗布器具30の位置Pは図4と同じ位置であるが、塗布器具30に加えられる操作力FIの方向が図4とは異なる。図5では操作力FI2は許容範囲50の方向を向いている。従ってこの操作力FI2によって塗布器具30の位置Pの速度VP2は許容範囲50へ近づく方向の速度成分VPy2を有する。この場合には塗布器具30の位置Pが許容範囲50外にあっても図3のステップS304の判断がNOとなる。従って次に図3のステップS312により塗布器具30に対する抵抗力FBが設定される。抵抗力FBは次の第2式で設定される。
FB=−Fc ・・・(2)
ここでFcは第1式で用いたFcと同じ定数である。即ち、図3のステップS312で設定される抵抗力FBは常にステップS306で設定される抵抗力FAより小さく設定される。なお、右辺にマイナスの符号が付してあるのは、第1式と同様に、塗布器具30の位置Pの移動方向を正にとった場合に、抵抗力FAは、塗布器具30の位置Pの移動方向とは逆の方向に作用するからである。
ステップS312で設定された抵抗力FBは抵抗力FAのときと同様に図3のステップS308によって、抵抗力FBを実現するために各可変ダンパ16が各関節14に付与すべき抵抗力の大きさに変換される。そしてステップS310により、変換された抵抗力を指令値として各可変ダンパ16への指令値が出力される。その結果、図5に示すように、操作子18の位置Sで操作力FI2とは反対の方向を向く抵抗力FBが実現される。抵抗力FBは抵抗力FAより小さいので作業者はFAに抗するより小さな操作力で塗布器具30を許容範囲50の方向へ移動させることができる。
【0031】
なお、塗布器具30の位置Pが許容範囲内にある場合には図3に示すステップS302の判断がNOとなりステップS312が実行される。従って塗布器具30の位置Pが許容範囲内にある場合にも塗布器具30に対する抵抗力FBは第2式と同じ値となる。抵抗力FB(=Fc)は予め小さい値に設定されており、作業者は小さい操作力で塗布器具30を移動させることができる。
【0032】
以上により作業者は塗布器具30を目標軌道Lに沿って移動させる場合、塗布器具30の位置Pが許容範囲50から外れると作業者は塗布器具30の位置Pが許容範囲50内に位置する場合よりも大きな抵抗力を受けることになる。よって作業補助装置10は、作業者が塗布器具30を許容範囲50から大きく外すことを防止することができる。
その際、抵抗力FAは、各関節14に付与される粘性や摩擦抵抗などの物理的な特性によって生じさせるものであるので、インピーダンス制御における反力のように塗布器具30を能動的に移動させる力とはならない。従ってインピーダンス制御の際に発生する可能性がある反力と操作力の差による振動現象を生ずることなく作業者は塗布器具30を安定して操作することが可能となる。また、操作力と逆方向に塗布器具30が移動する現象も生じない。作業者は塗布器具30の位置が許容範囲50から外れた場合でも上述したインピーダンス制御による振動現象を生じることなく、対象物を安定して許容範囲50内に移動させることができる。
さらに図3に示したフローチャートの処理は制御周期毎に実行される。よって作業者は図4に示すように塗布器具30の位置Pが許容範囲を外れたことを認識した場合には図5に示すように操作力FI2を許容範囲50側へ向けることによって、操作力FI2に対する抵抗力を図4に示した状態での抵抗力FAよりも小さな抵抗力FBとすることができる。従って小さな抵抗力FBに抗するだけの小さな操作力によって対象物を許容範囲50内に移動させることができる。
【0033】
なお、図4と図5の説明は2次元に限定したが塗布器具30が移動する方向を3次元に拡張しても同様である。図1に示すモータ36によって、塗布器具30は重力に対してバランスされて多関節アーム11に取り付けられている。従って鉛直方向の移動についても上記図4と図5で説明した作用と同じ作用を得ることができる。
また、上記実施例の可変ダンパ群16とは、より具体的にはER流体ダンパやMR流体ダンパを用いることができる。または摩擦ブレーキを用いてもよい。摩擦ブレーキの一種としてはパウダブレーキなどがある。
【0034】
上記実施例では、図1に示すモータ36と巻き車34とワイヤ32とプーリ26と関節群14とリンク群12によって、塗布器具30等の質量に作用する重力を補償するように構成されている。従って図1に示すモータ36と巻き車34とワイヤ32とプーリ26と関節群14とリンク群12が請求項の「重力補償機構」の一態様に相当する。即ち本実施例の「重力補償機構」は、多関節アーム11の一部を共用する構成である。また図3のフローチャートにおけるステップS306を実行する際のダンパ制御部42(図2参照)が請求項の「第1制御装置」の一態様に相当する。さらに図3のフローチャート図におけるステップS304の判断がNOとなりステップS312を実行する際のダンパ制御部42が請求項の「第2制御装置」の一態様に相当する。また、図2に示す位置センサ群15と、塗布器具30の位置を算出する際の位置/速度算出部40が請求項の「位置検出装置」の一態様に相当する。図2に示す許容範囲データ記憶部44が請求項の「許容範囲記憶装置」の一態様に相当する。さらに図2に示す可変ダンパ群16が請求項の「抵抗力付与機構」の一態様に相当する。また、図2に示す位置センサ群15と、塗布器具30の移動速度(即ち塗布器具30の移動方向)を算出する際の位置/速度算出部40が請求項の「移動方向検出装置」の一態様に相当する。
なお、図2に示すコントローラ22内の位置/速度算出部40やダンパ制御部42は、夫々独立した装置として実現してもよいし、コンピュータによって処理されるプログラムとして実現してもよい。
【0035】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0036】
例えば、塗布器具30を水平面内で移動させればよい場合には、図1の多関節アーム11の関節14aを鉛直ポール13bに沿った方向に直動揺動せずに水平方向の回転揺動のみを許容する1自由度の回転関節に変更する。これによって塗布器具30は鉛直方向には移動しない。この場合、塗布器具30は、回転関節14a、14b、14cおよびリンク12a、12b、12cによって水平方向のみ移動が可能である。この場合には、多関節アーム自身が、重力によって塗布器具30が鉛直方向に揺動することを抑制する重力補償機構を内蔵していることになる。独立した重力補償機構は不要となる。
また、目標軌道Lに対して塗布器具(対象物)30の方向が決まっている場合には、塗布器具30が回転してもよい角度範囲を記憶する記憶部を設けても良い。そして塗布器具30の回転角が上記角度範囲を外れた場合に塗布器具30を回転させる方向に対して各関節に付与する抵抗力を増加させるように制御してもよい。
また本実施例では、重力補償機構としてモータ36と巻き車34の代わりにワイヤ32のリンク12aに固定されている端部とは反対の端部に関節群14とリンク群12と塗布器具30の質量と同じ質量のカウンタウエイトを固定してもよい。そのような構成によっても、重力によって対象物を取り付けた多関節アームが鉛直方向に揺動することを抑制する重力補償機構を構成することができる。またモータ36の代わりに空気圧を用いることによって、重力によって対象物を取り付けた多関節アームが鉛直方向に揺動することを抑制する重力補償機構を構成してもよい。
【0037】
また実施例では塗布器具30の位置に発生させるべき抵抗力FAとFBを第1式と第2式で与えたが、抵抗力FAとFBを与える式はこれらの式に限られない。対象物が許容範囲外にあるときの抵抗力FAが対象物が許容範囲内にあるときの抵抗力FBより小さい値となるように設定されるものであればよい。
例えば、抵抗力FAを目標軌道Lに沿った方向の成分と目標軌道Lに直交する成分とに分解する。例えば図4を例とすると、図4の抵抗力FAを、目標軌道Lに沿った方向、即ち図4に示すx軸方向の成分FAxと、目標軌道Lと直交する方向、即ち図4に示すy軸方向の成分FAyに分解する。そして、FAx=0、FAy=−(a1×dPy+a2×VPy+Fc)とすることも好適である。あるいは上記FAx=0を、FAx=−Fcとしてもよい。ここで記号a1、dPy、a2、VPy、Fcは、第1式で説明したものと同じ意味である。上記式のように抵抗力FAを設定すると、目標軌道Lに沿った方向には塗布器具30を移動させ易くなる一方、目標軌道Lと直交する方向には塗布器具30を移動させ難くすることができる。即ち塗布器具30を、目標軌道から外れ難くすると同時に目標軌道に沿った方向には移動させ易くすることができる。
【0038】
また、作業補助装置は、作業者が加える操作力の方向を検出する操作方向検出装置をさらに有し、第2制御装置は、操作力の方向が許容範囲へ近づく方向の場合には対象物の位置が許容範囲外であっても各揺動部に付与する抵抗力を弱めるように抵抗力付与機構を制御するように構成することも好ましい。
操作方向検出装置は、例えば作業者が多関節アームを操作する際に操作する操作子に力センサを取り付けることで実現できる。力センサよって、作業者が操作子に加える操作力の方向を検出することができる。または操作子がジョイスティックのように各方向に揺動可能になっている構造によっても実現できる。操作子の揺動した方向が作業者が加える操作力の方向に相当する。従って操作子が揺動した方向を検出することで作業者が加える操作力の方向を検出することができる。
上記構成によれば、対象物が許容範囲外に位置して抵抗力が強まった場合でも、対象物が移動しない程度の小さな操作力を許容範囲の方向に加えるだけで抵抗力付与機構が揺動部に付与する抵抗力を弱めることができる。抵抗力付与機構が付与する抵抗力が弱くなれば作業者は対象物を容易に許容範囲へ戻すことができる。
【0039】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施例の作業補助装置10の概略図である。
【図2】作業補助装置10のブロック図である。
【図3】作業補助装置10の処理を示すフローチャート図である。
【図4】塗布器具が許容範囲外にあるときの様子を模式的に示した図である(1)。
【図5】塗布器具が許容範囲外にあるときの様子を模式的に示した図である(2)。
【符号の説明】
【0041】
10:作業補助装置
11:多関節アーム
12a、12b、12c:リンク
13:多関節アーム基部
13b:鉛直ポール
14a、14b、14c:関節
15a、15b、15c:位置センサ
16a、16b、16c:可変ダンパ
22:コントローラ
24:ワーク支持装置
30:塗布器具(対象物)
50:許容範囲
52R、52L:移動制限範囲
40:位置/速度算出部
42:ダンパ制御部
48:許容範囲データ記憶部
W:フロントガラス
L:塗布ライン(目標軌道)




 

 


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