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発明の名称 チタン多孔質体及びその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−31738(P2007−31738A)
公開日 平成19年2月8日(2007.2.8)
出願番号 特願2005−212416(P2005−212416)
出願日 平成17年7月22日(2005.7.22)
代理人 【識別番号】100079142
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 祥泰
発明者 川畑 博之 / 古田 忠彦 / 山口 登士也
要約 課題
高気孔率で、かつ優れた強度を発揮できるチタン多孔質体及びその製造方法を提供する。

解決手段
スラリー調整工程と、成形工程と、発泡工程と、脱脂工程と、焼成工程とを有するチタン多孔質体の製造方法である。スラリー調整工程においては、下記の式(1)で算出されるTcの値が0.5以下となるように、チタン粉末、発泡剤、水溶性樹脂結合材、界面活性剤、及び水を含有する発泡性スラリーを調整する。発泡工程においては、発泡性スラリーを成形して成形体を作製する。脱脂工程においては、発泡成形体を脱脂させて発泡脱脂体を作製する。焼成工程においては、発泡脱脂体を焼成してチタン多孔質体1を作製する。またチタンからなる構造体の内部に多数の空孔12を有するチタン多孔質体である。チタン多孔質体1は、炭素(C)濃度が0.5mass%以下である。
特許請求の範囲
【請求項1】
チタンからなる構造体の内部に多数の空孔を有するチタン多孔質体を製造する方法において、
チタン粉末、発泡剤、水溶性樹脂結合材、界面活性剤、及び水を混合して発泡性スラリーを作製するスラリー調整工程と、
上記発泡性スラリーを成形して成形体を作製する成形工程と、
上記成形体を発泡させて発泡成形体を作製する発泡工程と、
上記発泡成形体を脱脂させて発泡脱脂体を作製する脱脂工程と、
上記発泡脱脂体を焼成してチタン多孔質体を作製する焼成工程とを有し、
上記スラリー調整工程においては、上記発泡性スラリーを構成する上記チタン粉末以外のn種類の各成分Ai(iは1〜nの自然数)を昇温速度10℃/minで温度500℃まで加熱したときに生じる残さ量の割合をそれぞれai(mass%)とし、上記チタン粉末中の炭素濃度をα(mass%)とし、上記発泡性スラリー中の上記チタン粉末以外の上記各成分Aiの配合量をそれぞれbi(g)とし、上記発泡性スラリー中の上記チタン粉末の配合量をβ(g)としたとき、下記の式(1)で算出されるTcの値が0.5以下となるように上記発泡性スラリーを調整することを特徴とするチタン多孔質体の製造方法。
【数1】


【請求項2】
請求項1において、上記スラリー調整工程においては、上記発泡性スラリー中の上記チタン粉末の含有量が20〜80重量%、上記発泡剤の含有量が0.1〜10重量%、上記水溶性樹脂結合材の含有量が1〜20重量%、上記界面活性剤の含有量が0.1〜10重量%となるように上記発泡性スラリーを調整することを特徴とするチタン多孔質体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記スラリー調整工程においては、濃度0.1〜10重量%となるように可塑剤を混合することを特徴とするチタン多孔質体の製造方法。
【請求項4】
チタンからなる構造体の内部に多数の空孔を有するチタン多孔質体であって、
該チタン多孔質体は、炭素(C)濃度が0.5mass%以下であることを特徴とするチタン多孔質体。
【請求項5】
請求項4において、上記チタン多孔質体の炭素(C)濃度は0.3mass%以下であることを特徴とするチタン多孔質体。
【請求項6】
請求項4又は5において、上記チタン多孔質体は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されたものであることを特徴とするチタン多孔質体。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタンからなり、多数の空孔を有するチタン多孔質体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、多孔質の金属からなる金属多孔質体は、軽量化部材、衝撃吸収材、各種フィルター等に広く用いられている。上記金属多孔質体としては、軽量化や高機能化を目的として、より微細な空孔を有し、高気孔率のものが望まれている。
上記金属多孔質体は、一般に、金属粉末、発泡剤、結合材、及び水等を含むスラリーを成形し、発泡後、金属粉末を焼結させることにより製造することができる。このとき、スラリーの組成を調整したり、発泡条件等を調整したりすることにより、空孔が微細で高い気孔率をの金属多孔質体を作製することができる(特許文献1及び2参照)。
【0003】
ところで、金属多孔質体の用途は、近年ますます広がり、例えば二次電池の集電体や生体材料等のように腐食環境の厳しい用途にも適用されるようになってきた。このような腐食環境が特に厳しい用途においては、金属成分として耐腐食性に優れたチタンを用いたチタン多孔質体が適している。
【0004】
しかしながら、チタン粉末を金属粉末として用い、上記従来の製造方法によって金属多孔質体(チタン多孔質体)を製造すると、得られるチタン多孔質体が脆くなり易いという問題があった。そのため、従来のチタン多孔質体は、わずかな変形応力で破壊され易い。また、上述のごとく金属多孔質体としては高気孔率のものが望まれているが、チタン多孔質体は、気孔率を高くするとますます脆くなり易い。
したがって、高気孔率でかつ強度に優れたチタン多孔質体を製造することは困難であった。
【0005】
【特許文献1】特開平9−87704号公報
【特許文献2】特開平7−331302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、高気孔率で、かつ優れた強度を発揮できるチタン多孔質体及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、チタンからなる構造体の内部に多数の空孔を有するチタン多孔質体を製造する方法において、
チタン粉末、発泡剤、水溶性樹脂結合材、界面活性剤、及び水を混合して発泡性スラリーを作製するスラリー調整工程と、
上記発泡性スラリーを成形して成形体を作製する成形工程と、
上記成形体を発泡させて発泡成形体を作製する発泡工程と、
上記発泡成形体を脱脂させて発泡脱脂体を作製する脱脂工程と、
上記発泡脱脂体を焼成してチタン多孔質体を作製する焼成工程とを有し、
上記スラリー調整工程においては、上記発泡性スラリーを構成する上記チタン粉末以外のn種類の各成分Ai(iは1〜nの自然数)を昇温速度10℃/minで温度500℃まで加熱したときに生じる残さ量の割合をそれぞれai(mass%)とし、上記チタン粉末中の炭素濃度をα(mass%)とし、上記発泡性スラリー中の上記チタン粉末以外の上記各成分Aiの配合量をそれぞれbi(g)とし、上記発泡性スラリー中の上記チタン粉末の配合量をβ(g)としたとき、下記の式(1)で算出されるTcの値が0.5以下となるように上記発泡性スラリーを調整することを特徴とするチタン多孔質体の製造方法にある(請求項1)。
【数2】


【0008】
本発明のチタン多孔質体の製造方法においては、上記スラリー調整工程と、上記成形工程と、上記発泡工程と、上記脱脂工程と、上記焼成工程とを行う。本発明において特に注目すべき点は、上記スラリー調整工程において、上記式(1)で算出されるTcの値が0.5以下となるように上記発泡性スラリーを調整していることにある。
そのため、本発明においては、上記焼成工程後に得られる上記チタン多孔質体中の炭素濃度を低減し、上記チタン多孔質体中にTiCが生成することを抑制することができる。それ故、上記チタン多孔質体は、高い気孔率で作製しても優れた強度を発揮することができる。
【0009】
即ち、上述の従来の製造方法によって得られるチタン多孔質体においては、該チタン多孔質体中に多くのTiCが生成しており、このTiCがチタン多孔質体の強度を低下させる要因になっていた。
本発明の製造方法においては、上記式(1)で表されるTcの値が0.5以下となるように調整した上記発泡性スラリーを用いている。そして該発泡性スラリーにおいては、上記焼成工程において上記チタン多孔質体中にTiCを形成しうる炭素、即ち加熱時に残さとして残る炭素の含有割合が非常に小さい。そのため、上記焼成工程後に、上記チタン多孔質体中に炭素が残留し、残留炭素とTiとが反応してTiCを形成することを抑制することができる。それ故、高気孔率のチタン多孔質体を作製しても、該チタン多孔質体が脆くなることを抑制することができる。したがって、高気孔率で強度に優れたチタン多孔質体を製造することができる。
【0010】
また、一般に例えば1000℃以上という高温で加熱する焼成工程に比べて、上記スラリー調整工程においては、500℃という比較的低温度の加熱によって、上記式(1)で表されるTcの値を決定することができる。そのため、上記スラリー調整工程におけるTcの決定は、実際の焼成工程の加熱に比べて省エネルギーで行うことができる。
【0011】
第2の発明は、チタンからなる構造体の内部に多数の空孔を有するチタン多孔質体であって、
該チタン多孔質体は、炭素(C)濃度が0.5mass%以下であることを特徴とするチタン多孔質体にある(請求項4)。
【0012】
上記第2の発明のチタン多孔質体は、炭素(C)濃度が0.5mass%以下である。
即ち、上記チタン多孔質体においては、該チタン多孔質体の強度を低下させる要因となるTiCをほとんど有していない。
そのため、上記チタン多孔質体は、高気孔率にしても、優れた強度を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
本発明のチタン多孔質体の製造方法においては、上記スラリー調整工程と、上記成形工程と、上記発泡工程と、上記脱脂工程と、上記焼成工程とを行う。
上記スラリー調整工程においては、上記式(1)で表されるTcの値が0.5以下となるように上記発泡性スラリーを調整する。
Tcの値が0.5を越える場合には、上記焼成工程後に得られる上記チタン多孔質体に多くのTiCが生成し、チタン多孔質体の強度が低下するおそれがある。
【0014】
上記式(1)について説明する。
上記式(1)において、ai(a1、a2、a3、…ai(iは1〜nの自然数))は、上記発泡性スラリーを構成する上記チタン粉末以外のn種類の各成分Ai(例えば発泡剤、水溶性樹脂結合材、界面活性剤、可塑剤、及び水等)を加熱したときに生じる残さ量の割合(mass%)である。
具体的には、aiは、例えば示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA)等により、各成分Aiを昇温速度10℃/minで温度500℃まで加熱したときに残留する残さ量(g)を、加熱に用いた各成分(Ai)量で除算した値を100分率で表した値である。例えば、10mgのスラリー成分(A1)を、上記のごとく加熱したときに、1mgの残さが分解せずに残った場合には、残さ量(a1)は10mass%となる。
i(g)は、上記発泡性スラリー中における上記各成分Aiの配合量である。
【0015】
また、上記式(1)中における下記の式(2)で表される数式は、aiとbiとの積の総和を表し、具体的には下記の式(3)のように表すことができる。
【数3】


【数4】


【0016】
また、上記式(1)のai及びbiの右下に付してある「i」は1〜nの自然数であり、スラリー成分の種類によって決まる。例えばa1とb1や、a2とb2等のようにiが同じ数字のaiとbiは、同じスラリー成分に関する残さ量の割合(ai)と配合量(bi)とを表す。例えば、発泡性スラリー成分を構成する成分のうち、チタン粉末(A1)の残量の割合をa1とすると、配合量b1は、チタン粉末(A1)の配合量を示す。同様に、例えば水溶性樹脂結合材(A2)の残さ量をa2とすると、配合量b2は水溶性樹脂結合材(A2)の配合量である。
また、a1×b1やa2×b2は、同じスラリー成分についての残さ量の割合と配合量との積を示すものである。
【0017】
また、上記式(1)において、α(mass%)は、チタン粉末中の炭素濃度であり、β(g)は、上記発泡性スラリー中のチタン粉末の配合量である。α×βは、チタン粉末の炭素濃度と配合量との積である。
上記チタン粉末として、例えば炭素含有率40ppm以下という高純度のチタン粉末を用いる場合には、α×βを0として上記式(1)を取り扱うことができる。
【0018】
また、上記式(1)中における「×59−0.017」は、温度による補正値を示すものである。
即ち、上記スラリー調整工程においては、昇温速度10℃/min、温度500℃まで加熱して得られる残さ量の割合(ai)を用いてTcを規定しているが、上記焼成工程においては、例えば1500℃というより高温度での焼成を行うことが多い。よって実際には、高温度の加熱によって生じる残さが問題となる。このように上記焼成工程における加熱(焼成)温度と、上記スラリー調整工程において残さ量の割合(ai)を測定する際の加熱温度には、大きな差が生じやすい。そのため、上記式(1)においては、上述のごとく温度補正を行っている。この温度補正により、焼成工程において例えば1500℃まで1℃/minで昇温させて焼成する場合等のように、残さ量の割合(ai)を測定する際の加熱条件(昇温速度10℃/minで500℃まで加熱)とは異なる温度履歴で焼成を行う場合においても、上記式(1)を適用することができる。
【0019】
また、上記スラリー調整工程において残さ量の割合(ai)を測定する際には、大気雰囲気、真空雰囲気(無酸素雰囲気)、及びAr雰囲気等の雰囲気条件を、上記脱脂工程や上記焼成工程における雰囲気条件と同じ条件にすることもできるが、異なる条件にすることもできる。
【0020】
次に、上記式(1)を適用してTcを算出する具体的な例について説明する。
例えば、炭素濃度が0.00(mass%)の純チタン粉末28.9(g)と、残さ量が12.25(mass%)の水溶性樹脂結合材3.8(g)と、残さ量が7.67(mass%)の水溶性樹脂結合材7.0(g)と、残さ量が0.00(mass%)の可塑剤2.7(g)と、残さ量が39.55(mass%)のラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.2(g)とを水に混ぜてスラリーとし、残さ量が0.00mass%の発泡剤1.1gを添加して調整した発泡性スラリーについて、上記式(1)を適用すると、Tcは下記の式(4)のようにして算出することができる。なお、この場合にはTc=3.57(mass%)である。また、この例のように、残さ量が明らかに0となる例えば水等の成分については、上記式(1)に適用するスラリー成分Aiから除外することもできる。
【0021】
【数5】


【0022】
また、Tcの値は、上記のごとく、上記発泡性スラリーを構成するチタン粉末以外の各成分毎に、残さ量の割合(ai)と配合量(bi)とを算出し、これらの積(ai×bi)の総和を求めて式(1)を適用することによって算出することができるが、簡易的には、発泡性スラリー全体について、チタン粉末以外の残さ量の割合(ai)とチタン粉末量を除いた発泡性スラリーの量(bi)との積を算出し、これを上記式(1)における上記式(2)の部分に当てはめることによっても求めることができる。
即ち、この場合には、上記発泡性スラリーを昇温速度10℃/minで温度500℃まで加熱して生じたチタン粉末以外の残さ量(g)を、チタン粉末の量を除いた発泡性スラリーの量(g)で除算して100分率で表した値と、チタン粉末の量を除いた発泡性スラリーの量との積が上記式(2)の部分と同義となる。
【0023】
また、上記スラリー調整工程において、上記チタン粉末としては、平均粒径が0.3〜200μmのものが好ましい。平均粒径が0.3μm未満のチタン粉末は、その入手、加工、及び製造が困難である。一方、上記チタン粉末の平均粒径が200μmを越える場合には、均一で微細な気孔を形成することが困難になるおそれがある。
【0024】
また、発泡剤としては、例えば揮発性の有機溶剤等を用いることができる。具体的には、例えば常温で液体の炭素数5〜8の炭化水素系有機溶剤等があり、より具体的には例えばペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、イソペンタン、ベンゼン、オクタン、及びトルエン等から選ばれる1種以上を用いることができる。上記発泡剤は、上記発泡性スラリー中においては上記界面活性剤の作用によってミセルを形成することができ、発泡時においては例えば加熱等によって気化して気泡を形成することができる。
【0025】
上記水溶性樹脂結合材は、上記発泡性スラリーを成形してなる成形体の形状を保持する役割を果たすことができる。また、上記発泡性スラリーの粘度を調整する粘度調整剤としての役割を果たすこともできる。
上記水溶性樹脂結合材としては、例えばセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースアンモニウム、エチルセルロース、及びポリビニルアルコール等から選ばれる1種以上を用いることができる。
【0026】
また、上記界面活性剤は、上記発泡性スラリー中において上記発泡剤とミセルを形成し、発泡工程において生じる微細な気泡(空孔)を安定化させることができる。上記界面活性剤としては、例えばアニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤等がある。アニオン系界面活性剤としては、例えばラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、及びアルカンスルホン酸塩等がある。非イオン系界面活性剤としては、例えばポリエチレングリコール誘導体、多価アルコール誘導体等がある。
【0027】
また、上記スラリー調整工程においては、上記発泡性スラリー中の上記チタン粉末の含有量が20〜80重量%、上記発泡剤の含有量が0.1〜10重量%、上記水溶性樹脂結合材の含有量が1〜20重量%、上記界面活性剤の含有量が0.1〜10重量%となるように上記発泡性スラリーを調整することが好ましい(請求項2)。
【0028】
上記発泡性スラリー中の上記チタン粉末の含有量が20重量%未満の場合には、上記焼成工程後に得られる上記チタン多孔質体の強度が低下するおそれがある。一方、80重量%越える場合には、上記チタン多孔質体の高気孔率化が困難になるおそれがある。より好ましくは、上記チタン粉末の含有量は30重量%〜70重量%がよく、さらに好ましく50重量%〜70重量%がよい。
【0029】
また、上記発泡剤の含有量が0.1重量%未満の場合には、上記発泡工程において空孔が充分に形成され難くなり、上記チタン多孔質体の気孔率を高めることが困難になるおそれがある。一方、10重量%を越える場合には、上記チタン多孔質体の空孔が大きくなり易くなる。より好ましくは、上記発泡剤の含有量は0.3重量%〜5重量%がよく、さらに好ましくは0.3重量%〜2重量%がよい。
【0030】
上記水溶性樹脂結合材の含有量が1重量%未満の場合には、上記成形工程後の上記成形体、上記発泡成形体、上記発泡脱脂体の強度が低下し、取り扱いが困難になるおそれがある。一方、20重量%を越える場合には、粘度が高くなりすぎて、上記発泡性スラリーを所望の形状に成形することが困難になるおそれがある。より好ましくは、上記水溶性樹脂結合材の含有量は、2重量%〜15重量%がよく、さらに好ましくは2.5重量%〜10重量%がよい。
また、上記界面活性剤の含有量が0.1重量%未満の場合には、上記発泡剤のミセルの形成が不安定となり、微細で径の揃った空孔を形成することが困難になるおそれがある。一方、10重量%を越えて添加しても特に顕著な利点がなく、ムダにコストを増大させてしまうおそれがある。より好ましくは、上記界面活性剤の含有量は、0.3重量%〜5重量%がよく、さらに好ましくは0.5〜2重量%がよい。
【0031】
また、上記発泡性スラリー中の水の含有量は、15〜60重量%であることが好ましい。水の含有量が15重量%未満の場合には、上記発泡性スラリーの粘度が高くなりすぎて、上記発泡性スラリーを所望の形状に成形することが困難になるおそれがある。一方、60重量%を越える場合には、上記発泡性スラリーの粘度が低くなりすぎて、この場合にもやはり所望の形状に成形することが困難になるおそれがある。より好ましくは、水の含有量は25〜50重量%がよく、さらに好ましくは25〜40重量%がよい。
【0032】
また、上記スラリー調整工程においては、濃度0.1〜10重量%となるように可塑剤を混合することが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記発泡性スラリーの成形性をより向上させることができると共に、成形後の成形体の取り扱いをより容易にすることができる。
上記可塑剤の含有量が0.1重量%未満の場合には、上述の成形性及び取り扱い性の向上効果が充分に得られないおそれがある。一方、10重量%を越える場合には、上記焼成後の上記チタン多孔質体の強度が低下するおそれがある。より好ましくは、上記可塑剤の含有量は0.3〜5重量%がよい。
【0033】
上記可塑剤としては、例えば多価アルコール、油脂、エーテル、及びエステル等がある。上記多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等がある。上記油脂としては、例えばイワシ油、菜種油、オリーブ油等がある。上記エステルとしては、例えばフタル酸ジエチル、フタル酸ジNブチル、フタル酸ジエチルヘキシル、フタル酸ジNオクチル、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート、ソルビタンパルミテート、及びソルビタンステアレート等がある。
【0034】
次に、上記成形工程においては、上記発泡性スラリーを成形して成形体を作製する。
上記発泡性スラリーの成形は、例えばドクターブレード法、押出、及びロール圧延等によって行うことができる。
【0035】
また、上記発泡工程においては、上記成形体を発泡させて発泡成形体を作製する。
上記成形体の発泡は、例えば上記発泡剤を揮発させること等により行うことができる。より具体的には、例えば上記成形体を加熱したり、低圧状態したりすることにより行うことができる。
【0036】
次に、上記脱脂工程においては、加熱等によって上記発泡成形体を脱脂させて発泡脱脂体を作製する。
この脱脂工程を行うことにより、上記発泡成形体中に含まれる有機物を除去することができる。その結果、空孔形状を維持したままの発泡脱脂体を得ることができる。
【0037】
また、上記発泡工程と上記脱脂工程との間には、上記発泡成形体を乾燥させる乾燥工程を行うことが好ましい。
この場合には、上記発泡成形体中に含まれる空孔(気泡)が破壊されることを防止することができる。そのため、この場合には、上記焼成工程後に得られる上記チタン多孔質体の空孔の形状及び径をより均一なものにすることができる。
【0038】
次に、上記焼成工程においては、上記発泡脱脂体を焼成してチタン多孔質体を作製する。上記焼成工程においては、上記発泡脱脂体中に含まれる上記チタン粉末を焼結させて上記チタン多孔質体を作製することができる。
【0039】
上記焼成工程においては、上記発泡脱脂体を温度1000〜1600℃で焼成することができる。温度1000℃未満の場合には、上記チタン粉末が充分に焼結できなくなるおそれがある。一方、1600℃を越える温度で焼成しても、得られるチタン多孔質体の焼結性の向上にはほとんど影響がなく、ムダに製造コストを増大させてしまうおそれがある。また、焼成温度が1600℃を越えるとチタンが溶融してしまうおそれがある。
上記のように1000〜1500℃という温度範囲で焼成する場合においても、上記スラリー調整工程におけるTcの値を0.5以下に調整することにより、焼成後のチタン多孔質体にTiCが発生することを抑制し、高気孔率で強度に優れたチタン多孔質体を製造することができる。より好ましくは、上記焼成工程における焼成温度は、1300〜1500℃がよい。
【0040】
また、上記チタン多孔質体は、気孔率60%以上であることが好ましい。
この場合には、上記チタン多孔質体の軽量化及び高機能化を図ることができる。また、この場合には、高気孔率であっても高い強度を示すという本発明の上記作用効果をより顕著に発揮することができる。気孔率が60%未満の場合には、上記チタン多孔質体を充分に軽量化することできず、上記チタン多孔質体は、多孔質体としての利点を充分に発揮できないおそれがある。より好ましくは、気孔率は70%以上がよい。
上記気孔率は、例えば上記調整工程における上記発泡性スラリーの配合を調整したり、上記発泡工程における温度や湿度等の発泡条件、上記脱脂工程や上記焼成工程における加熱条件や雰囲気条件等を変えることにより調整することができる。
【0041】
次に、上記第2の発明において、上記チタン多孔質体は、その炭素濃度(炭素原子含有率)が0.5mass%である。
炭素濃度が0.5mass%を越える場合には、TiCの含有量が多くなり、上記チタン多孔質体の強度が低下するおそれがある。
【0042】
好ましくは、上記チタン多孔質体の炭素(C)濃度は0.3mass%以下であることがよい(請求項5)。
この場合には、上記チタン多孔質体の強度をより一層向上させることができる。
【0043】
また、上記第2の発明の上記チタン多孔質体は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されたものであることが好ましい(請求項6)。
この場合には、炭素濃度0.5mass%以下という上記チタン多孔質体を容易に作製することができる。
【実施例】
【0044】
(実施例1)
次に、本発明の実施例について説明する。
本例においては、チタンからなる構造体の内部に多数の空孔を有するチタン多孔質体を製造する。本例の製造方法においては、スラリー調整工程と、成形工程と、発泡工程と、脱脂工程と、焼成工程とを行う。
【0045】
スラリー調整工程においては、チタン粉末、発泡剤、水溶性樹脂結合材、界面活性剤、及び水を混合して発泡性スラリーを作製する。また、スラリー調整工程においては、上記発泡性スラリーを構成するチタン粉末以外のn種類の各成分Ai(iは1〜nの自然数)を昇温速度10℃/minで温度500℃まで加熱したときに生じる残さ量の割合をそれぞれai(mass%)とし、上記チタン粉末中の炭素濃度をα(mass%)とし、上記発泡性スラリー中のチタン粉末以外の上記各成分Aiの配合量をそれぞれbi(g)とし、上記発泡性スラリー中の上記チタン粉末の配合量をβ(g)としたとき、下記の式(1)で算出されるTcの値が0.5以下となるように上記発泡性スラリーを調整する。
【数6】


【0046】
成形工程においては、上記発泡性スラリーを成形して成形体を作製する。
発泡工程においては、上記成形体を発泡させて発泡成形体を作製する。
脱脂工程においては、上記発泡成形体を脱脂させて発泡脱脂体を作製する。
また、焼成工程においては、上記発泡脱脂体を焼成してチタン多孔質体を作製する。
【0047】
以下、本例の製造方法につき、詳細に説明する。
まず、チタン粉末として、炭素濃度0.00mass%、平均粒径20μmの低酸素チタン粉末(チタニウム(Titanium) ロウ(Law) オキシゲン(Oxigen) パウダー(Powder)、TILOP)を準備した。また、発泡剤としてヘキサンを準備し、水溶性樹脂結合材としてメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を準備した。さらに界面活性剤としては日本油脂社製のST221を準備し、可塑剤としてグリセリンを準備した。
【0048】
次に、チタン粉末(TILOP)、ヘキサン、メチルセルロース、HPMC、ST221、グリセリン、及び水という7種類の成分を混合して発泡性スラリーを作製する。
発泡性スラリーの調整にあたっては、まず、示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA)により、チタン粉末以外の一定量の各成分を昇温速度10℃/minで温度500℃まで加熱し、残留する残さ量を測定した。次いで、得られた残さ量を測定に用いた成分の量で除算し、100分率とすることにより残さ量の割合(ai)を算出した。
その結果、ヘキサンを成分A1とすると、その残さ量a1は0mass%であった。同様に、メチルセルロース(A2)の残さ量a2は12.25mass%、HPMC(A3)の残さ量a3は7.67mass%、ST221(A4)の残さ量a4は2.24mass%、グリセリン(A5)の残さ量a5は0mass%、水(A6)の残さ量a6は0mass%であった。また、上述のごとく、チタン粉末の炭素濃度αは、0.00mass%である。
【0049】
各成分の残さ量の割合及びチタン粉末の炭素濃度を上記式(1)に当てはめて、Tcが0.5以下となるように、チタン粉末、ヘキサン、メチルセルロース、HPMC、ST221、グリセリン、及び水を混合し、発泡性スラリーを調整した。具体的には、チタン粉末を75.3g(β=75.3)、ヘキサンを0.6g(b1=0.6)、メチルセルロースを1.9g(b2=1.9)、HPMCを3.5g(b3=3.5)、ST221を1.1g(b4=1.1)、グリセリンを1.4g(b5=1.4)、及び水を36.6g(b6=36.6)混合して、Tcの値が0.392(mass%)の発泡性スラリーを調整した。
本例の発泡性スラリーのTcを算出する式を下記の式(5)に示し、本例の発泡性スラリーの配合及びTcの値を後述の表1に示す。

【数7】


【0050】
次いで、このようにして得られた発泡性スラリーをドクターブレード法により板状に成形して成形体を作製した。次に、この成形体を温度40℃、湿度90%という条件で発泡させ、発泡成形体を作製した後、温度45℃に設定した遠赤外線乾燥機を用いて乾燥させた。
乾燥後の発泡成形体を空気中で温度500℃で30分間保持して脱脂し、発泡脱脂体を得た。
次いで、この発泡脱脂体を焼成してチタン多孔質体を作製した。
焼成は、昇温速度1℃/minで温度1500℃まで昇温させて、その温度1500℃で2時間保持するという条件で行った。
このようにして、チタンからなり、多数の空孔を有するチタン多孔質体を得た。
【0051】
なお、本例においては、上記発泡性スラリーを構成する成分の全てについて、残さ量の割合(ai)を測定し上記式(1)に適用したが、例えば水等のように加熱によって残さを生じないことがほとんど明らかな構成成分については、残さ量の割合(ai)を測定する成分Aiから除外することができる。即ち、上記スラリー調整工程においては、上記発泡性スラリーを構成する成分のうち、加熱により残さを生じ得る構成成分Aiについて上記式(1)を適用することができる。
【0052】
(実施例2〜5及び比較例1〜6)
次に、実施例1の発泡性スラリーとは、配合が異なる10種類の発泡性スラリーを作製した。
各実施例2〜5の発泡性スラリーの配合及びTcの値を後述の表1に示し、比較例1〜6の発泡性スラリーの配合及びTcの値を後述の表2に示す。また、各発泡性スラリーを用いて実施例1と同様にしてチタン多孔質体を作製した。
【0053】
(実験例)
次に、実施例1〜5及び比較例1〜6において作製した11種類のチタン多孔質体について、C(炭素)濃度及び気孔率を測定し、また曲げ試験を行って強度を調べた。
【0054】
「C濃度の測定」
チタン多孔質体のC濃度(mass%)は、次のようにして測定した。
即ち、まず、各チタン多孔質体を酸素中で加熱して溶融させる。これにより、各チタン多孔質体に含まれる炭素(C)と酸素とを反応させてガス(CO及びCO2)を生成させる。そのガス量を赤外線吸収法により、ブランクの状態と比較することによって、定量化し、C濃度を得た(酸素燃焼赤外線吸収法)。
その結果を表1及び表2に示す。
【0055】
「気孔率」
チタン多孔質体の気孔率(%)は、パラフィンを用いたアルキメデス法にて測定した。
即ち、まずチタン多孔質体を一定の寸法(30mm×30mm×0.3mm)に切り出し、その重量(W1[g])を測定した。測定後、融解させたパラフィンに浸漬し、空孔部分を閉口させ、再度重量(W2[g])を測定した。次いで、水中にてチタン多孔質体の重量(W3[g])を測定した。
ここで、水の密度をρ0[g/cm3](本例においてはρ0=1とする)とすると、チタン多孔質体のみかけの密度(ρ[g/cm3])を、ρ=ρ0・W1/(W2−W3)という式から算出することができる。そして、気孔率(x[%])は、チタン(Ti)の密度をρ1[g/cm3](本例においてはρ1=4.5とする)とすると、x=100×(1−ρ/ρ1)という式から算出することができる。
その結果を表1及び表2に示す。
【0056】
「曲げ試験」
チタン多孔質体の曲げ試験は、次のようにして行った。
即ち、各実施例及び比較例において作製した各チタン多孔質体をそれぞれ厚さ0.5mm、幅30mm、長さ200mmの板状にし、これをφ70mmの丸棒に巻き付けた。さらに巻き付けたチタン多孔質体を丸棒からはずし、その形状を元の板状に戻した。このとき、クラックや割れの有無を目視により観察した。その結果を表1及び表2に示す。
【0057】
【表1】


【0058】
【表2】


【0059】
表1及び表2より知られるごとく、Tcが0.5mass%以下となるように調整した実施例1〜5の発泡性スラリーを用いて作製したチタン多孔質体においては、C濃度が0.5mass%以下となっていた。そのため、70%以上という比較的高い気孔率を有するにもかかわらず、実施例1〜5において作製したチタン多孔質体は、曲げ試験においてもクラックや割れの発生がなく、強度に優れていた。
【0060】
一方、Tcが0.5mass%を越えるように調整した比較例1〜6の発泡性スラリを用いて作製したチタン多孔質体においては、C濃度が0.5mass%を越えていた。そのため、比較例1〜5において作製したチタン多孔質体は、実施例1〜5と同条件で作製し、同程度の気孔率を有するにもかかわらず、曲げ試験においてクラックや割れが発生し、強度が低いものであった。
また、表1及び表2から知られるごとく、実施例1〜5及び比較例1〜6においては、スラリー調整工程において得られるTcの値が、実際の焼成後のチタン多孔質体の炭素濃度とほぼ同じ値になっていることがわかる。
【0061】
次に、実施例4のチタン多孔質体と比較例4のチタン多孔質体について、断面を電子顕微鏡で観察した。その顕微鏡写真を図1及び図2に示す。図1が実施例4のチタン多孔質体の断面を示し、図2が比較例4のチタン多孔質体の断面を示す。
【0062】
図1及び図2に示すごとく、実施例4及び比較例4のチタン多孔質体1、2は、いずれにおいても内部に多くの空孔12、22を有し、空孔12、22の周囲には、チタンの焼結体が空孔壁11、21を形成するように配されていた。
図1より知られるごとく、実施例4のチタン多孔質体1においては、空孔壁11中にTiCの生成はほとんど観察されなかった。
これに対し、図2より知られるごとく、比較例4のチタン多孔質体2においては、チタンの焼結体からなる空孔壁21中にTiCが生成していた。このTiCが比較例4のチタン多孔質体の強度の低下の要因となっている(表2参照)。なお、図2おいては、TiCが生成している部分を明示するために、その部分を点線で囲って示してある。
【0063】
以上のように、スラリー調整工程におけるTcの値と焼成工程後に得られるチタン多孔質体のC濃度とはほぼ同程度の値を示し、Tcを0.5以下に下げることにより、C濃度が0.5以下のチタン多孔質体を得ることができる。そしてC濃度が0.5以下のチタン多孔質体は、高気孔率であっても高い強度を発揮できることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実験例にかかる、実施例4のチタン多孔質体の断面組織を示す写真代用図。
【図2】実験例にかかる、比較例4のチタン多孔質体の断面組織を示す写真代用図。
【符号の説明】
【0065】
1 チタン多孔質体
11 空孔壁
12 空孔




 

 


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